説明

局所適用型経皮吸収テープ剤

【課題】汗による接着力の低下を防止でき、皮膚接着性に優れた局所適用型経皮吸収テープ剤の提供。
【解決手段】裏打ち材とその上に感圧性接着剤層を設けてなる経皮吸収テープ剤であって、該感圧性接着剤層はスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を主成分とし、さらに抗炎症成分としてサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコール、並びに、10mL/g以下の見掛比容及び100m2/g以上の比表面積を有する多孔性金属化合物を含有することを特徴とする局所適用型経皮吸収テープ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症成分としてサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールを含有し、皮膚適用時に汗による接着力の低下を防止するとともに、凝集力低下による使用上の問題点を改善した感圧性接着剤層を有する経皮吸収テープ剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、経皮吸収テープ剤は、裏打ち材(支持体)上に薬物を含有する感圧性接着剤(粘着剤)層を設けたものである。
感圧性接着剤には低皮膚刺激性などの特長を有するアクリル系粘着剤が広く使用されているが、該粘着剤を用いると、経皮吸収テープ剤の製造工程において該粘着剤の溶剤を乾燥させる工程が必要となるため、融点又は沸点の低い薬剤であると揮発してしまうという弱点がある。したがって、上記のように融点又は沸点の低い薬剤を用いる場合には、一般には溶剤を必要としないカレンダー塗工法又はホットメルト塗工法が可能であるゴム系粘着剤が用いられており、さらに、天然ゴムのラテックスアレルギーを回避するために合成ゴム系エラストマー(例えばスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)を主成分としたゴム系粘着剤が多く用いられている。例えば、カレンダー塗工法では、高温で合成ゴム系エラストマーを素練し、粘着付与樹脂等を加えてさらに混練を行い、最後に温度を下げてから有効成分(サリチル酸メチルなど)を加えて混練を行うことが多く用いられている。
しかし、上記合成ゴム系エラストマーは疎水性であり、該エラストマーを主成分とした感圧性接着剤を用いた経皮吸収テープ剤においては、患部に適用(貼付)した際、適用部位の発汗等による体液の感圧性接着剤層への付着によって接着力が低下し、捲れ、更には適用部位からの脱落などが起こることが問題となっている。
このような発汗による経皮吸収テープ剤の接着力の低下を改善する方法として、様々な技術が公開されている。
たとえば、ゴム系粘着剤中に吸水性樹脂粉末及び/又は水溶性高分子粉末を分散させたプラスター基剤を用いた経皮吸収製剤(特許文献1)、並びに粘着層を担持する担持体が支持体と、この支持体と粘着層の間に介在された吸水層からなる構造を有する貼付剤(特許文献2)などが提案されている。
【特許文献1】特開平8−295624号公報
【特許文献2】特開平8−175979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の水溶性高分子粉末等を分散させたプラスター基剤からなる経皮吸収製剤にあっては、皮膚に適用した際に該高分子粉末が汗を吸収して膨張し、製剤を除去する際に皮膚表面に膨張した高分子粉末が付着して残りやすく、きれいに剥がれないという使用上の問題があった。
一方、前述の粘着層と支持体の間に吸水層を別に設けた貼付剤にあっては、粘着層が通水性を有する必要があり、この通水性を得るために一般に発泡等によって多数の微細な連通孔を粘着層に形成する方法などが取られる。しかし、熱可塑性のゴム系粘着剤からなる粘着層においては発泡安定性が悪く、時間経過とともに通水性の低下が起こることに問題があった。
【0004】
また、代表的な合成ゴム系エラストマーであるスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体からなる感圧性接着剤は、サリチル酸系抗炎症剤、特にサリチル酸メチルと配合すると凝集性が著しく低下し、時間の経過とともに感圧性接着剤層の裏打ち材からのは
み出しが起こるといった使用上の問題が発生する傾向があった。
さらに、感圧性接着剤層の充填剤として一般に使用されるケイ酸塩類は、親水性を示して汗を吸収することはできるが、粒子径が極めて小さく比表面積が大きい反面嵩高いために、感圧性接着剤層中に占める容積が大きくなること、さらに、ケイ酸塩類は一般的な貼付剤やテープ剤の表面材に用いる剥離可能な保護フィルムの処理剤として多用されるシリコンとの親和性が高いことから、時間の経過とともに感圧性接着剤層と保護フィルムが密着して剥がし難くなるという欠点があった。
以上のように、皮膚適用時に汗による接着力の低下を改善し、且つ、薬効成分としてサリチル酸系抗炎症剤を含有した場合においても裏打ち材からの粘着剤層のはみ出しといった粘着剤の凝集力低下による問題が生ずることがなく、さらに保護フィルムとの好適な剥離性をも有する感圧性接着剤層を有する経皮吸収テープ剤の開発がのぞまれていた。
【0005】
本発明は上記問題点を鑑みなされたものであって、抗炎症成分としてサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールを含み、汗による接着力の低下防止(優れた皮膚接着性)と凝集力低下防止に優れる感圧性接着剤層を有する局所適用型経皮吸収テープ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、裏打ち材の上に、合成ゴム系エラストマーからなる感圧性接着剤、抗炎症成分としてサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールを含有するとともに、多孔性金属化合物を配合した感圧性接着剤層を設けて経皮吸収テープ剤となすことによって、該感圧性接着剤層が適用時に汗による接着力の低下を起こさず、保護フィルムとの剥離性に優れ、且つ、裏打ち材からのはみ出しがなく、患部に適用した場合に優れた使い易さを実現することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
また前記経皮吸収テープ剤において、多孔性金属化合物として特にケイ酸アルミニウムを採用することによって、さらに好ましくは、感圧性接着剤層中に粘着付与樹脂としてロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂を含有させることによって、前述の汗による接着力の低下、保護フィルムの剥離性、裏打ち材からのはみ出し等に関する改善点をより改良することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は裏打ち材とその上に感圧性接着剤層を設けてなる経皮吸収テープ剤であって、該感圧性接着剤層はスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を主成分とし、さらに抗炎症成分としてサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコール、並びに、10mL/g以下の見掛比容及び100m2/g以上の比表面積を有する多孔性金属化合
物を含有することを特徴とする、局所適用型経皮吸収テープ剤に関する。
【0009】
また本発明は前記多孔性金属化合物がケイ酸アルミニウム、より好ましくは軽質のケイ酸アルミニウムであることを特徴とする上記の局所適用型経皮吸収テープに関する。
さらに本発明は前記感圧性接着剤層には粘着付与樹脂としてロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂を含有することを特徴とする上記の局所適用型経皮吸収テープに関する。
【発明の効果】
【0010】
一般に経皮吸収テープ剤は皮膚への適用が容易であり、かつ薬物を持続的に投与するのに適した剤型である。そして感圧性接着剤として合成ゴム系エラストマーを採用することによって、サリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールを含有させた場合においても、成分を揮発させることなく経皮吸収テープ剤の形態と為すことができる。
そして本発明によれば、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を主成分とする合成ゴム系エラストマーと多孔性金属化合物を組み合わせることによって、サリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールを含有した場合であっても、裏打ち材からの感圧性接
着剤層のはみ出しを防止でき、且つ、汗による感圧性接着剤層の接着力の低下を起こさず、保護フィルムの剥離性に優れた経皮吸収テープ剤と為すことができる。
また好ましくは多孔性金属化合物として特にケイ酸アルミニウムを採用することによって、及び/又は、感圧性接着剤層中に粘着付与樹脂としてロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂を含有させることによって、前述の汗による接着力の低下、保護フィルムの剥離性、裏打ち材からのはみ出し等をさらに改善した経皮吸収テープ剤と為すことができる。
【0011】
而して、本発明のサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコール含有の経皮吸収テープ剤は、患部に長時間貼付しても発汗による接着力低下、特に捲れ、脱落が起きず、且つ裏打ち材からの感圧性接着剤層のはみ出しが起こることなく使用でき、持続的な薬剤の投与と優れた使い勝手の双方が実現可能となる。
加えて、長期保存後の使用においても感圧性接着剤層からの保護フィルムを容易に剥離できるため、優れた保存安定性をも実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の経皮吸収テープ剤は、裏打ち材によって保持されている感圧性接着剤層の上に通常その全面を覆うように剥離可能な保護フィルムを貼り合わせてなる経皮吸収テープ剤であり、以下に本発明の各構成要素及びその機能に関してさらに説明する。
なお本発明において「感圧性接着剤層総量基準」とは、合成ゴム系エラストマー、サリチル酸メチル又はサリチル酸グリコール(抗炎症成分)、多孔性金属化合物、所望によりロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂からなる粘着付与樹脂、及びその他の成分(その他の有効成分(薬剤)、軟化剤、無機充填剤、溶解補助剤など)からなる感圧性接着剤層の総量を基準とすることを意味するものとする。
【0013】
1)感圧性接着剤層
本発明の経皮吸収テープ剤の構成要素である感圧性接着剤層は、抗炎症成分、合成ゴム系エラストマー、粘着付与樹脂、さらに多孔性金属化合物を必須の成分として含む。
所望により、経皮吸収テープ剤の感圧性接着剤層に一般に用いられるその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0014】
(1)抗炎症成分
本発明の経皮吸収テープ剤の感圧性接着剤層に含まれる抗炎症成分はサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールである。
前記サリチル酸メチル又はサリチル酸グリコールの配合量は、感圧性接着剤層総量基準で好ましくは0.1乃至20質量%、より好ましくは3乃至10質量%であることが望ましい。配合量が過少であると目的とする薬効を十分に得られない場合があり、また、過多であると皮膚刺激を生じたり、或いは凝集力低下などのテープ剤としての物性を損なう場合がある。
【0015】
(2)合成ゴム系エラストマー
本発明の経皮吸収テープ剤の感圧性接着剤層に含まれる合成ゴム系エラストマーは、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(以下、SISブロック共重合体という)からなる。
さらに所望により、上記SISブロック共重合体に加えて、その他の合成ゴム系エラストマー、例えばポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどを組み合わせて用いることもできる。
【0016】
上記合成ゴム系エラストマー、及び所望によりその他の合成ゴム系エラストマーの感圧性接着剤層への配合量は、感圧性接着剤層総量基準で好ましくは10乃至60質量%、より好ましくは20乃至50質量%であることが望ましい。
【0017】
上記合成ゴム系エラストマー及びその他の合成ゴム系エラストマーの具体的な市販品の例としては、SIS5000(JSR(株)製 SISブロック共重合体)、ニポールIR−2200(日本ゼオン(株)製 ポリイソプレンゴム)、ビスタネックスMML−80(エクソン化学(株)製 ポリイソブチレン)、HV−300(新日本石油化学(株)製 HV−300)などが挙げられ、これらを用いることが好適である。
【0018】
(3)多孔性金属化合物
本発明の経皮吸収テープ剤の感圧性接着剤層に配合される多孔性金属化合物は、比表面積が大きく且つ見掛比容(嵩高さ)が小さいという特徴を有するものであり、例えば金属化合物からなり、二次凝集粒子を形成する粉体或いは表面から内部にかけて微小多孔構造を有する粒体又は粉体の形態であり得る。
該多孔性金属化合物は、汗等の湿気を吸う吸湿作用を示す一方で、吸湿した際にそれ自体は膨潤しない性質のものであることが必要とされ、本発明においては、特に10mL/g以下の見掛比容、且つ100m2/g以上の比表面積を有する多孔性金属化合物が用い
られる。該多孔性金属化合物の比表面積が100m2/g未満であると汗を十分に吸着す
ることができず接着力の低下につながり、また、見掛比容が10mL/gより大きい、或いは該金属化合物が水を吸収した際に膨潤するものであると、汗を吸着した際に感圧性接着剤層の凝集力を低下させることにつながる。
したがって、これらの条件を満たす前記多孔性金属化合物を感圧性接着剤層へ含有させることにより、時間経過による感圧性接着剤層の裏打ち材(支持体)からのはみ出しを抑制し、且つ皮膚適用時に汗による接着力の低下を防止できる。加えて、保護フィルムとの好適な密着性を保ち、テープ剤の安定化にも寄与する。
上記条件を全て満たす多孔性金属化合物は、合成物ではリン酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(例えば、ノイシリンUFL2:富士化学工業(株)製)、ケイ酸アルミニウム(例えば、合成ケイ酸アルミニウム:協和化学工業(株)製)などがあり、天然物ではゼオライトなどがある。
これら多孔性金属化合物はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、感圧性接着剤層総量基準で好ましくは0.1乃至30質量%、より好ましくは2乃至20質量%であることが望ましい。配合量が過少であるとテープ剤適用部位の発汗によって生ずるテープ剤の脱落や捲れ等を防ぐことが困難となるだけでなく、テープ剤保存時や適用時に裏打ち材から感圧性接着剤層のはみ出しが起こり、使用感を損なう恐れがある。また、配合量が過多であると皮膚に対する適度なタック性を保持することが困難となり、保護フィルムの剥離性を低下させることにつながる。
【0019】
(4)粘着付与樹脂
前記合成ゴム系エラストマーからなる接着剤に適度な粘着性を付与する粘着付与樹脂としては、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明において、粘着力を向上する目的としては、ロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂を用いることが好ましい。
これら粘着付与樹脂の配合量は、感圧性接着剤層総量基準で好ましくは10乃至70質量%、より好ましくは20乃至50質量%であることが望ましい
【0020】
(5)その他添加剤
本発明の経皮吸収テープ剤の感圧性接着剤層には、上記成分の他に、その他の有効成分(薬剤)、さらには、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、流動パラフィン及び中鎖脂肪酸グリセリンエステル等の軟化剤、炭酸カルシウム、酸化亜鉛及び二酸化チタン等の無機充填剤、並びに、クロタミトン及びプロピレングリコール等の溶解補助剤(経皮
吸収促進剤)などをさらに含むことができる。
本発明の経皮吸収テープ剤の適用時に冷感効果や温感効果を得るために、L−メントール、DLメントール、DL−カンフル、D−カンフル、ハッカ油、ユーカリ油、カプサイシン、トウガラシ抽出物及びノニル酸ワニリルアミド等の刺激効果を有する成分を添加することができる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら刺激効果を有する成分の配合量に特に制限はないが、感圧性接着剤層全質量基準で、L−メントール、DL−メントール、DL−カンフル、D−カンフル、ハッカ油及びユーカリ油の場合、好ましくは合計0.01乃至30質量%、より好ましくは合計0.1乃至15質量%にて配合することが望ましい。また、カプサイシン、トウガラシ抽出物及びノニル酸ワニリルアミドの場合には、好ましくは合計0.001乃至5質量%、より好ましくは合計0.01乃至1質量%にて配合することが好ましい。
さらに、本発明の経皮吸収テープ剤はその他の有効成分(薬剤)として、サリチル酸メチル及びサリチル酸グリコール以外の抗炎症成分、例えば、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、ジクロロフェナックなどを含有することもできる。
【0021】
2)裏打ち材
本発明の経皮吸収テープ剤は、抗炎症成分(サリチル酸メチルなど)、合成ゴム系エラストマー(SISブロック共重合体)及び多孔性金属化合物(ケイ酸アルミニウムなど)、粘着付与樹脂(ロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂)、さらに必要に応じてその他添加剤を配合して得られた混合物(感圧性接着剤層)を適当な保護フィルム上に塗布し、その上から適当な裏打ち材を貼り合わせ、必要により適当な大きさに切断して、最終的な製品とすることができる。
上記裏打ち材は、患部への追従性ならびに貼付時の自己支持性などを加味して、柔軟性、伸縮性ならびに厚さなどを考慮し、目的に応じて適宜選択する。
このような支持体として、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアセテート共重合体フィルム及びセロハンフィルムなどのプラスチックフィルム、発泡体、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維及びポリプロピレン繊維などからなる不織布、織布及び編布などの布基材、これらの積層体などが挙げられる。これらの中でも伸縮性の点では不織布、織布及び編布が、使い勝手のよさの面では透明性を有するプラスチックフィルムが好ましい。
用いる裏打ち材の厚さは、不織布、織布及び編布では好ましくは100μm乃至1000μm、より好ましくは400μm乃至700μmである。また、プラスチックフィルムであれば好ましくは10μm乃至200μm、より好ましくは30μm乃至100μmである。
また上記裏打ち材は、所望により撥水処理や、感圧性接着剤層との密着性を改善する目的にてプライマー処理を施すこともできる。
【0022】
3)保護フィルム
本発明の経皮吸収テープ剤に用いられる剥離可能な保護フィルム、感圧性接着剤層からの容易な剥離性、通気性、通水性ならびに柔軟性などを考慮して、目的に応じて適宜選択する。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びセルロース等の高分子材料からなるフィルムが使用され、剥離性を高めるためにフィルム表面をシリコン処理、又はフルオロカーボン処理して、或いは、フィルム中に周知の添加剤を添加して用いることもできる。
【0023】
4)経皮吸収テープ剤の製法
本発明の経皮吸収テープ剤は、一般的なテープ製剤の製造方法であるカレンダー塗工法より製造することができる。
カレンダー塗工法では、まずはじめに、合成ゴム系エラストマー(SISブロック共重合体及び所望によりその他の合成ゴム系エラストマーを含む)に多孔性金属化合物及び粘着付与樹脂を加えて混練を行う。次に、必要に応じて軟化剤を加えてさらに混練を行い、最後に温度を下げてから抗炎症成分(サリチル酸メチルなど)を加えて混練を行う。
上記手順にて得られた混練物を、たとえばシリコン処理したポリエステルフィルム(保護フィルム)上に均一に塗工し、感圧性接着剤層を完成させ、該層の上に裏打ち材をラミネートすることにより、経皮吸収テープ剤を得ることができる。裏打ち材の種類によっては、裏打ち材に感圧性接着剤層を形成した後、接着剤層の表面に保護フィルムをラミネートしても良い。
上記感圧性接着剤層は、通常5乃至500μm、好ましくは50乃至300μm、より好ましくは100乃至200μmの厚さで塗工することが好ましい。
このようにして得られた経皮吸収テープ剤は、使用用途に応じて楕円形、円形、正方形、長方形などの形状に適宜裁断する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
なお実施例中、「%」「部」とはそれぞれ「質量%」「質量部」を意味するものである。
【0025】
以下の実施例、比較例で用いた合成ゴム系エラストマー、粘着付与樹脂、多孔性金属化合物、酸化防止剤、軟化剤、保護フィルム及び裏打ち材を以下の表1に、用いた多孔性金属化合物の比表面積及び見掛比容を表2に、又、配合割合を表3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【0026】
[経皮吸収テープ剤の作成]
表1の各物質及び表3の配合割合にて、カレンダー塗工法により、厚さ180μmの感圧性接着剤層を有する実施例1乃至8及び比較例1乃至5の経皮吸収テープ剤を作製した。
【0027】
[ヒト皮膚接着性]
前述の通りに作製した経皮吸収テープ剤を、それぞれ28mmφの円形に打ち抜き、この円形テープ剤を肩部に貼付した。約6時間経過した後のテープ剤の浮きを目視にて観察し、その後、剥離した時の皮膚への付着性を評価した。なお付着性は、剥離時にしっかりと皮膚に良く付いていたものを良好(◎)、若干悪いものを(△)、悪いものを(×)で評価した。
評価結果を表4に示す。
【0028】
[保護フィルム剥離性]
前述の通りに作製した経皮吸収テープ剤を、それぞれアルミ包装した状態で40℃、75%RH条件下で6ヶ月間放置した。放置後、保護フィルムの感圧性接着剤層からの剥離性を評価した。
評価結果を表4に示す。
【0029】
[感圧性接着剤層の凝集力]
前述の通りに作製した経皮吸収テープ剤を、それぞれ25mm幅に裁断し、ステンレスパネルに貼付した後、40℃、75%RH条件下で500gの重りを架けて30分間放置した。放置後、感圧性接着剤層からの裏打ち材のずれを測定し、実用上好適な凝集力であるかを評価した。
評価結果を表4に示す。
【0030】
【表4】

【0031】
[評価の結果]
表4に示す結果より判るように、本発明の経皮吸収テープ剤は汗による接着力の低下防止に優れ、剥離した時の皮膚への付着性も良く、長期経過後の保護フィルムの剥離性に優れ、並びに該粘着テープ剤の感圧性接着剤層の凝集力も優れるものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち材とその上に感圧性接着剤層を設けてなる経皮吸収テープ剤であって、該感圧性接着剤層はスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を主成分とし、さらに抗炎症成分としてサリチル酸メチル又はサリチル酸グリコール、並びに、10mL/g以下の見掛比容及び100m2/g以上の比表面積を有する多孔性金属化合物を含有することを
特徴とする、局所適用型経皮吸収テープ剤。
【請求項2】
前記多孔性金属化合物がケイ酸アルミニウムであることを特徴とする、請求項1記載の局所適用型経皮吸収テープ剤。
【請求項3】
前記感圧性接着剤層は粘着付与樹脂としてロジン系樹脂及び/又はテルペン樹脂を含有することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の局所適用型経皮吸収テープ剤。


【公開番号】特開2007−269753(P2007−269753A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100698(P2006−100698)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】