屋上エレベーター機械室の構造
【課題】建物屋上にあるエレベーター機械室までの機器の搬出入の便宜を図る。
【解決手段】エレベーターかごの昇降路7の上方に位置する機械室床13に設けられた開口スペースを着脱可能にふさぐマンホール蓋34と、巻上機等重量機器が載置される機械台8と、機械台8の両端に取り付けられた滑車23と、開口スペースの挟むように配置され、機械室1の幅の長さを持つ浮せ台11と、浮せ台11に取り付けられた滑車用レール24とを有する。重量機器の機械室1への搬出入の際、巻上機等を機械室1の空くスペースに移動させ、機械台8を滑車用レール24に沿って移動させ、開口スペース上方を開放し、マンホール蓋34を取り外す。機械室の天井に取り付けられた揚重クレーンで重量機器を吊り下げることで昇降路7を通じて機器の搬出入を行う。
【解決手段】エレベーターかごの昇降路7の上方に位置する機械室床13に設けられた開口スペースを着脱可能にふさぐマンホール蓋34と、巻上機等重量機器が載置される機械台8と、機械台8の両端に取り付けられた滑車23と、開口スペースの挟むように配置され、機械室1の幅の長さを持つ浮せ台11と、浮せ台11に取り付けられた滑車用レール24とを有する。重量機器の機械室1への搬出入の際、巻上機等を機械室1の空くスペースに移動させ、機械台8を滑車用レール24に沿って移動させ、開口スペース上方を開放し、マンホール蓋34を取り外す。機械室の天井に取り付けられた揚重クレーンで重量機器を吊り下げることで昇降路7を通じて機器の搬出入を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルディングの屋上に設けられるエレベーター機械室(以下、単に「機械室」)の構造、特に機械室内にある大型重量機器の搬出入に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、ビルディングの屋上に設けられるエレベーター機械室内に大型重量機器を据え付けたときの状態を示した平面図であり、図12は、図11に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図、図13は、図12に示した要部の概略正面図である。
【0003】
機械室1には、エレベーターを走行させるために用いる巻上機2、制御盤3、電動機4、ソラセ車5、調速機6等の大型重量機器が設置され、昇降路7の上方からつり下げたエレベーターかご(図示せず)を昇降路7内で昇降させる。昇降路7の上方に配設される機器は、機械台8に載せられた状態で設置される。機械台8は、機械台固定ボルト、座金、ナット等からなる固定金具10によって浮せ台11に固定される。浮せ台11は、アンカーボルト、座金、ナット等からなる固定金具12によって機械室床13に固定される。各機械台8は、機械台開き止め14によって連結され、機械台開き止め14は、開き止め用ボルト、座金、ナット等からなる固定金具15によって各機械台8に固定される。なお、機械室床13は、建築梁16によって支持される。図11には、階段17、踊り場18、階段17の手すり19が示される。作業員等は、階段17を上って出入口扉20から機械室1に出入りすることができる。
【0004】
次に、機械室1にある重量機器を地上へ降ろす従来の作業手順について説明すると、図14に示したように、まず機械台8の上に載置された巻上機2などの重量機器4〜6を機械台8から降ろし機械室床13の空いている場所に置く。そして、重量機器を出入口扉20から踊り場18に出し、階段17から降ろしビルの屋上まで搬送する。そして、クレーン車等を利用して地上まで降ろす。一方、重量機器を機械室1に搬入するときは、その逆の手順に従い実施される。
【0005】
【特許文献1】特開平7−251925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、上記の通り重量機器を出入口扉20から搬出入させているが、搬出入経路が狭い、例えば出入口扉20や階段17の幅が狭い、階段17や踊り場18の天井の高さが低く、重量機器が搬出入できない場合があった。この場合、重量機器を搬出入できるように幅員、高さ確保等の工事を行う必要があった。
【0007】
また、高層及び超高層ビルの場合、ビルの周囲環境によっては、大型クレーン車が使用できない場合や、大型クレーン車の吊り部先端が屋上等の重量機器搬出入場所まで届かない場合があった。
【0008】
このため、余計な時間、コスト等がかかってしまうなどの問題が発生していた。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、建物の屋上にあるエレベーター機械室まで機器の搬出入に便宜な屋上エレベーター機械室の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る屋上エレベーター機械室の構造は、建物の屋上に設けられるエレベーター装置の機械室床面の少なくともエレベーターかごの昇降路上方位置に、昇降路まで貫通した状態に形成される開口部と、前記開口部を挟み対向した位置に平行に配置され、前記開口部が配設された位置から配設されていない位置まで敷設される1対の滑車用レールと、前記各滑車用レール上を回動する1対の滑車と、
【0011】
前記1対の滑車が両端に取り付けられ、前記滑車用レールに沿って平行移動可能に設けられた、エレベーター機械が載置される機械台と、機械室天井のエレベーターかごの昇降路の上方位置に取り付けられたクレーン機構とを有し、前記機械台を前記開口部が配設されていない位置まで移動させ、搬出入対象の機器を前記クレーン機構に吊り下げ、荷上げ若しくは荷下しすることによってエレベーターかごの昇降路から前記機器を搬出入させるものである。
【0012】
また、前記開口部をふさぐと共に前記機器を搬出入させる際には取り外させられる1乃至複数枚の蓋を有するものである。
【0013】
また、前記クレーン機構は、搬出入対象の機器を吊り下げるフック部と、エレベーターかごの昇降路の上方位置から昇降路の上方以外の位置まで前記フック部を水平移動させるトロリービーム部材とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械台を移動可能に設置し、エレベーターかごの昇降路に貫通した開口部を設けるように構成したので、昇降路を利用して機械室への搬出入を行うことができる。これにより、機械室に通じる階段や通路が狭く、あるいは天井が低く、大型重量機器を機械室に搬出入できないような場合でも、有効通路を確保するための建物の通路改造を行うことが不要になる。また、超高層ビルなどのように揚重用クレーンを利用して荷上げ作業があるいは荷下ろし作業ができないような場合でも、昇降路を利用することによって機械室への搬出入を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、従来と同じ構成要素には同じ符号を付ける。
【0016】
図1は、本発明に係る屋上エレベーター機械室の構造の一実施の形態を示した平面図であり、本実施の形態において大型重量機器の据付状態を示した図である。図2は、図1において機械室床13の構造をわかりやすくするために大型重量機器を機械台から降ろした状態を示した図、図3は、図2におけるA−A断面図、図4は、図1に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図、図5は、図4に示した要部の概略正面図である。以下、これらの図を用いながら機械室1内における構成を説明する。
【0017】
機械室1には、エレベーターを走行させるために用いる巻上機2、制御盤3、電動機4、ソラセ車5、調速機6等の大型重量機器が設置され、昇降路7の上方からつり下げたエレベーターかご(図示せず)を昇降路7内で昇降させる。昇降路7の上方に配設される機器は、機械台8に載せられた状態で設置される。機械台8は、機械台固定ボルト、座金、ナット等からなる固定金具10によって浮せ台11に固定される。このとき、機械台8と浮せ台11との間に座21を挟み込んだ状態にて固定する。浮せ台11は、アンカーボルト、座金、ナット等からなる固定金具12によって機械室床13に固定される。
【0018】
各機械台8の両端には、それぞれ両端の辺の長さより若干長く、そして断面をL字形状とする滑車取付器具22が溶接にて取り付けられ、その滑車取付器具22のほぼ中央部分に滑車23が取り付けられる。なお、機械台8の両端それぞれには、同じ構成が設けられるので一方についてのみ説明する。浮せ台11には、機械台8に取り付けられた滑車23を案内する滑車用レール24を取り付けるレール取付金具25が溶接にて取り付けられ、このレール取付金具25には、L字に屈曲された滑車用レール24の下端部分をレール取付ボルト、座金、ナットで構成する固定金具26にて強固に固定される。なお、この滑車用レール24の下端部分とレール取付金具25との間には、滑車用レール24の芯出し用として座27を挟み込む。更に、レール取付金具25の下方には、浮せ台11に溶接にて取り付けられたレール取付金具25を確実に支持できるようにレール取付金具補強板28が設けられる。本実施の形態では、機械台8を昇降路7の上方から上方以外の位置まで移動可能に設置することを特徴としているが、機械台8の移動範囲は、浮せ台11、滑車用レール24、レール取付金具25の長さに依存することになる。本実施の形態では、機械台8を最大限移動できるように浮せ台11、滑車用レール24、レール取付金具25を、機械室1の間口いっぱいまで延長して形成した。
【0019】
機械台8に取り付けられた滑車23は、滑車用レール24に沿って回動することになるが、滑車取付器具22の滑車23を挟む位置には、滑車23の円滑回動、滑車23の滑車用レール24からの脱輪防止のためにガイドシュー取付ボルト、座金、ナットからなる固定金具30にて1対のガイドシュー29が取り付けられる。なお、滑車取付器具22と各ガイドシュー29との間に座31を挟み込む。なお、図5には、便宜的にガイドシュー29は図示していない。また、機械台8の浮せ台11への取付側には、いずれかの方向に回すことで機械台8を上下動させるジャッキボルト32が設けられている。
【0020】
また、各機械台8は、機械台開き止め14によって連結され、機械台開き止め14は、開き止め用ボルト、座金、ナット等からなる固定金具15によって各機械台8に固定される。なお、機械室床13は、建築梁16によって支持される。更に、図1,2には、従来と同様に階段17、踊り場18、階段17の手すり19が示される。
【0021】
以上は、主に重量機器の取付構造についての説明であったが、次に、機械室床13の構造について説明する。
【0022】
本実施の形態では、昇降路7の上方に位置する機械室床13を開口し、昇降路7から機械室1まで貫通したスペースを荷上げ、荷下ろし用の開口スペースとして利用するようにした。一般に、開口スペースは、昇降路7の断面形状に合わせて矩形形状で形成され、ほぼ断面積と同様の大きさであることが荷上げ、荷下ろし作業の観点から好適である。前述した1対の滑車用レール24等は、この開口スペースを挟んで並行に設けられる。開口スペースには、マンホール外枠33が設けられる。また、機械室1からの昇降路7への騒音防止、作業員や物の落下防止等のために、開口スペースを取り外し可能なマンホール蓋34で塞ぐように構成した。つまり、この開口スペース部分に位置する機械室床13は、マンホール蓋34によって形成されることになる。図1,2には、4枚のマンホール蓋34で構成した例が示されている。外周にマンホール蓋枠35が設けられた各マンホール蓋34は、マンホール外枠33に固着されたマンホール支工板36によって支持され、昇降路7への落下を防止する。また、各マンホール蓋34両端近傍のマンホール蓋枠35の配設部分には、開口スペースへの着脱の際に利用される1つの吊り金具37が取り付けられる。
【0023】
図6は、本実施の形態における機械室1の天井部分に設けられた構成を示した天井伏図、図7は、図6におけるB−B断面図であり、これらの図を用いて天井部分に設けられたクレーン機構について説明する。
【0024】
クレーン機構は、重量機器を吊り下げるフックを有する揚重クレーン38と、揚重クレーン38を水平移動させるトロリービーム39とを有している。トロリービーム39は、開口スペースでない機械室床13に載置された重量機器を揚重クレーン38に吊り下げて昇降路7から搬出する、若しくは昇降路7から搬入され、揚重クレーン38に吊り下げられた重量機器を、開口スペースでない機械室床13に載置できるように、間口方向に沿って敷設された滑車用レール24とは異なる奥行き方向、具体的には昇降路7の上方から滑車用レール24と垂直方向に延長させて、トロリービーム取付鋲41によって機械室天井40に取り付ける。
【0025】
次に、本実施の形態における動作について説明する。ここでは、機械室1から重量機器を地上に下ろすまでの作業手順について説明する。
【0026】
まず、図1に示したように機械台8に巻上機2等大型重量機器が載置され、エレベーター装置を運行させている間、滑車23は、巻上機2等を載せた機械台8が動かないように滑車用レール24から外されている。つまり、機械台8は、座21を介して浮せ台11に載っている状態にある。
【0027】
巻上機2等の大型重量機器を地上に下ろすとき、作業員は、大型重量機器2,4〜6を揚重クレーン38に順番に吊り下げ、機械台8から降ろし、図2に示したように機械室床13の開口していない空きスペースへ移動させ一時保管する。そして、機械台8を連結していた機械台開き止め14を各機械台8から外す。次に、各機械台8のジャッキボルト32を、各機械台8が持ち上がる方向に廻すことで機械台8が浮き上がらせる。これにより、機械台8の重量がかかっていない状態になった座21を抜き取る。そして、滑車23を滑車用レール24にのせる。これにより、各機械台8は、滑車用レール24に沿って移動可能な状態になるので、作業員は、手押しにより昇降路7の上方から外れる位置まで機械台8を移動させる。以上のようにして、機械室床13に設けられた開口スペースの上方が開放される。このときの状態を図8に示す。
【0028】
続いて、作業員は、マンホール蓋34を全て機械室1の空きスペースに移動する。マンホール蓋34には、吊り金具37が設けられているので、持ち運びが容易にできる。また、揚重クレーン38を利用してもよい。これにより、開口スペース42が確保される。このときの状態を図9に示す。
【0029】
開口スペース42が確保されることで、機械室1と昇降路7とが貫通されることで、重量機器の荷下ろしが可能な状態になる。この荷下ろし作業の実施状態を説明するための概念図を図10に示す。図10に示したように、空きスペースに載置しておいた重量機器、例えば制御盤3を揚重クレーン38に吊り下げ、トロリービーム39に沿って開口スペース42まで移動させ、そして、昇降路7から搬出階まで下ろす。そして、エレベーター扉43を開け、エレベーターの出入口にて制御盤3を重量物運搬車44に載せ、外部へ搬出する。重量機器を機械室1に搬入するときの作業手順は、上記と逆を行えばよい。
【0030】
以上のようにして、荷下ろし作業若しくは荷上げ作業が終了すると、落下防止のためにマンホール蓋34を元の開口スペース42を塞ぐ位置に戻す。
【0031】
本実施の形態によれば、機械室1にある重量機器等の製品または部品を搬出入するにあたり、機械台8を移動可能に設置し、昇降路7に貫通した開口スペース42を設けるように構成したので昇降路7を利用することができる。これにより、機械室1に通じる階段や通路が狭く、あるいは天井が低く、大型重量機器を機械室1に搬出入できないような場合でも、有効通路を確保するための通路改造を行うことが不要になる。また、超高層ビルのように揚重用クレーンを利用して荷上げ(荷下ろし)作業ができないような場合でも、昇降路7を利用することで、機械室1への搬出入を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る屋上エレベーター機械室の構造の一実施の形態を示した平面図であり、大型重量機器の据付状態を示した図である。
【図2】図1において大型重量機器を機械台から降ろした状態を示した図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図1に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図である。
【図5】図4に示した要部の概略正面図である。
【図6】本実施の形態における機械室の天井部分に設けられた構成を上方から見たときの平面図である。
【図7】図6におけるB−B断面図である。
【図8】機械室床に設けられた開口スペースの上方が開放されたときの状態を示した平面図である。
【図9】機械室床に設けられた開口スペースが確保されたときの状態を示した平面図である。
【図10】本実施の形態において荷下ろし作業の実施を説明するために用いる概念図である。
【図11】従来の屋上エレベーター機械室の構造の一実施の形態を示した平面図であり、大型重量機器の据付状態を示した図である。
【図12】図11に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図である。
【図13】図12に示した要部の概略正面図である。
【図14】図11において大型重量機器を機械台から降ろした状態を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 機械室、2 巻上機、3 制御盤、4 電動機、5 ソラセ車、6 調速機、7 昇降路、8 機械台、9 機械室壁、10,12,15,26,30 固定金具、11 浮せ台、13 機械室床、16 建築梁、17 階段、18 踊り場、19 手すり、20 出入口扉、21,27,31 座、22 滑車取付器具、23 滑車、24 滑車用レール、25 レール取付金具、28 レール取付金具補強板、29 ガイドシュー、32 ジャッキボルト、33 マンホール外枠、34 マンホール蓋、35 マンホール蓋枠、36 マンホール支工板、37 吊り金具、38 揚重クレーン、39 トロリービーム、40 機械室天井、41 トロリービーム取付鋲、42 開口スペース、43 エレベーター扉、44 重量物運搬車。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルディングの屋上に設けられるエレベーター機械室(以下、単に「機械室」)の構造、特に機械室内にある大型重量機器の搬出入に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、ビルディングの屋上に設けられるエレベーター機械室内に大型重量機器を据え付けたときの状態を示した平面図であり、図12は、図11に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図、図13は、図12に示した要部の概略正面図である。
【0003】
機械室1には、エレベーターを走行させるために用いる巻上機2、制御盤3、電動機4、ソラセ車5、調速機6等の大型重量機器が設置され、昇降路7の上方からつり下げたエレベーターかご(図示せず)を昇降路7内で昇降させる。昇降路7の上方に配設される機器は、機械台8に載せられた状態で設置される。機械台8は、機械台固定ボルト、座金、ナット等からなる固定金具10によって浮せ台11に固定される。浮せ台11は、アンカーボルト、座金、ナット等からなる固定金具12によって機械室床13に固定される。各機械台8は、機械台開き止め14によって連結され、機械台開き止め14は、開き止め用ボルト、座金、ナット等からなる固定金具15によって各機械台8に固定される。なお、機械室床13は、建築梁16によって支持される。図11には、階段17、踊り場18、階段17の手すり19が示される。作業員等は、階段17を上って出入口扉20から機械室1に出入りすることができる。
【0004】
次に、機械室1にある重量機器を地上へ降ろす従来の作業手順について説明すると、図14に示したように、まず機械台8の上に載置された巻上機2などの重量機器4〜6を機械台8から降ろし機械室床13の空いている場所に置く。そして、重量機器を出入口扉20から踊り場18に出し、階段17から降ろしビルの屋上まで搬送する。そして、クレーン車等を利用して地上まで降ろす。一方、重量機器を機械室1に搬入するときは、その逆の手順に従い実施される。
【0005】
【特許文献1】特開平7−251925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、上記の通り重量機器を出入口扉20から搬出入させているが、搬出入経路が狭い、例えば出入口扉20や階段17の幅が狭い、階段17や踊り場18の天井の高さが低く、重量機器が搬出入できない場合があった。この場合、重量機器を搬出入できるように幅員、高さ確保等の工事を行う必要があった。
【0007】
また、高層及び超高層ビルの場合、ビルの周囲環境によっては、大型クレーン車が使用できない場合や、大型クレーン車の吊り部先端が屋上等の重量機器搬出入場所まで届かない場合があった。
【0008】
このため、余計な時間、コスト等がかかってしまうなどの問題が発生していた。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、建物の屋上にあるエレベーター機械室まで機器の搬出入に便宜な屋上エレベーター機械室の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る屋上エレベーター機械室の構造は、建物の屋上に設けられるエレベーター装置の機械室床面の少なくともエレベーターかごの昇降路上方位置に、昇降路まで貫通した状態に形成される開口部と、前記開口部を挟み対向した位置に平行に配置され、前記開口部が配設された位置から配設されていない位置まで敷設される1対の滑車用レールと、前記各滑車用レール上を回動する1対の滑車と、
【0011】
前記1対の滑車が両端に取り付けられ、前記滑車用レールに沿って平行移動可能に設けられた、エレベーター機械が載置される機械台と、機械室天井のエレベーターかごの昇降路の上方位置に取り付けられたクレーン機構とを有し、前記機械台を前記開口部が配設されていない位置まで移動させ、搬出入対象の機器を前記クレーン機構に吊り下げ、荷上げ若しくは荷下しすることによってエレベーターかごの昇降路から前記機器を搬出入させるものである。
【0012】
また、前記開口部をふさぐと共に前記機器を搬出入させる際には取り外させられる1乃至複数枚の蓋を有するものである。
【0013】
また、前記クレーン機構は、搬出入対象の機器を吊り下げるフック部と、エレベーターかごの昇降路の上方位置から昇降路の上方以外の位置まで前記フック部を水平移動させるトロリービーム部材とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械台を移動可能に設置し、エレベーターかごの昇降路に貫通した開口部を設けるように構成したので、昇降路を利用して機械室への搬出入を行うことができる。これにより、機械室に通じる階段や通路が狭く、あるいは天井が低く、大型重量機器を機械室に搬出入できないような場合でも、有効通路を確保するための建物の通路改造を行うことが不要になる。また、超高層ビルなどのように揚重用クレーンを利用して荷上げ作業があるいは荷下ろし作業ができないような場合でも、昇降路を利用することによって機械室への搬出入を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、従来と同じ構成要素には同じ符号を付ける。
【0016】
図1は、本発明に係る屋上エレベーター機械室の構造の一実施の形態を示した平面図であり、本実施の形態において大型重量機器の据付状態を示した図である。図2は、図1において機械室床13の構造をわかりやすくするために大型重量機器を機械台から降ろした状態を示した図、図3は、図2におけるA−A断面図、図4は、図1に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図、図5は、図4に示した要部の概略正面図である。以下、これらの図を用いながら機械室1内における構成を説明する。
【0017】
機械室1には、エレベーターを走行させるために用いる巻上機2、制御盤3、電動機4、ソラセ車5、調速機6等の大型重量機器が設置され、昇降路7の上方からつり下げたエレベーターかご(図示せず)を昇降路7内で昇降させる。昇降路7の上方に配設される機器は、機械台8に載せられた状態で設置される。機械台8は、機械台固定ボルト、座金、ナット等からなる固定金具10によって浮せ台11に固定される。このとき、機械台8と浮せ台11との間に座21を挟み込んだ状態にて固定する。浮せ台11は、アンカーボルト、座金、ナット等からなる固定金具12によって機械室床13に固定される。
【0018】
各機械台8の両端には、それぞれ両端の辺の長さより若干長く、そして断面をL字形状とする滑車取付器具22が溶接にて取り付けられ、その滑車取付器具22のほぼ中央部分に滑車23が取り付けられる。なお、機械台8の両端それぞれには、同じ構成が設けられるので一方についてのみ説明する。浮せ台11には、機械台8に取り付けられた滑車23を案内する滑車用レール24を取り付けるレール取付金具25が溶接にて取り付けられ、このレール取付金具25には、L字に屈曲された滑車用レール24の下端部分をレール取付ボルト、座金、ナットで構成する固定金具26にて強固に固定される。なお、この滑車用レール24の下端部分とレール取付金具25との間には、滑車用レール24の芯出し用として座27を挟み込む。更に、レール取付金具25の下方には、浮せ台11に溶接にて取り付けられたレール取付金具25を確実に支持できるようにレール取付金具補強板28が設けられる。本実施の形態では、機械台8を昇降路7の上方から上方以外の位置まで移動可能に設置することを特徴としているが、機械台8の移動範囲は、浮せ台11、滑車用レール24、レール取付金具25の長さに依存することになる。本実施の形態では、機械台8を最大限移動できるように浮せ台11、滑車用レール24、レール取付金具25を、機械室1の間口いっぱいまで延長して形成した。
【0019】
機械台8に取り付けられた滑車23は、滑車用レール24に沿って回動することになるが、滑車取付器具22の滑車23を挟む位置には、滑車23の円滑回動、滑車23の滑車用レール24からの脱輪防止のためにガイドシュー取付ボルト、座金、ナットからなる固定金具30にて1対のガイドシュー29が取り付けられる。なお、滑車取付器具22と各ガイドシュー29との間に座31を挟み込む。なお、図5には、便宜的にガイドシュー29は図示していない。また、機械台8の浮せ台11への取付側には、いずれかの方向に回すことで機械台8を上下動させるジャッキボルト32が設けられている。
【0020】
また、各機械台8は、機械台開き止め14によって連結され、機械台開き止め14は、開き止め用ボルト、座金、ナット等からなる固定金具15によって各機械台8に固定される。なお、機械室床13は、建築梁16によって支持される。更に、図1,2には、従来と同様に階段17、踊り場18、階段17の手すり19が示される。
【0021】
以上は、主に重量機器の取付構造についての説明であったが、次に、機械室床13の構造について説明する。
【0022】
本実施の形態では、昇降路7の上方に位置する機械室床13を開口し、昇降路7から機械室1まで貫通したスペースを荷上げ、荷下ろし用の開口スペースとして利用するようにした。一般に、開口スペースは、昇降路7の断面形状に合わせて矩形形状で形成され、ほぼ断面積と同様の大きさであることが荷上げ、荷下ろし作業の観点から好適である。前述した1対の滑車用レール24等は、この開口スペースを挟んで並行に設けられる。開口スペースには、マンホール外枠33が設けられる。また、機械室1からの昇降路7への騒音防止、作業員や物の落下防止等のために、開口スペースを取り外し可能なマンホール蓋34で塞ぐように構成した。つまり、この開口スペース部分に位置する機械室床13は、マンホール蓋34によって形成されることになる。図1,2には、4枚のマンホール蓋34で構成した例が示されている。外周にマンホール蓋枠35が設けられた各マンホール蓋34は、マンホール外枠33に固着されたマンホール支工板36によって支持され、昇降路7への落下を防止する。また、各マンホール蓋34両端近傍のマンホール蓋枠35の配設部分には、開口スペースへの着脱の際に利用される1つの吊り金具37が取り付けられる。
【0023】
図6は、本実施の形態における機械室1の天井部分に設けられた構成を示した天井伏図、図7は、図6におけるB−B断面図であり、これらの図を用いて天井部分に設けられたクレーン機構について説明する。
【0024】
クレーン機構は、重量機器を吊り下げるフックを有する揚重クレーン38と、揚重クレーン38を水平移動させるトロリービーム39とを有している。トロリービーム39は、開口スペースでない機械室床13に載置された重量機器を揚重クレーン38に吊り下げて昇降路7から搬出する、若しくは昇降路7から搬入され、揚重クレーン38に吊り下げられた重量機器を、開口スペースでない機械室床13に載置できるように、間口方向に沿って敷設された滑車用レール24とは異なる奥行き方向、具体的には昇降路7の上方から滑車用レール24と垂直方向に延長させて、トロリービーム取付鋲41によって機械室天井40に取り付ける。
【0025】
次に、本実施の形態における動作について説明する。ここでは、機械室1から重量機器を地上に下ろすまでの作業手順について説明する。
【0026】
まず、図1に示したように機械台8に巻上機2等大型重量機器が載置され、エレベーター装置を運行させている間、滑車23は、巻上機2等を載せた機械台8が動かないように滑車用レール24から外されている。つまり、機械台8は、座21を介して浮せ台11に載っている状態にある。
【0027】
巻上機2等の大型重量機器を地上に下ろすとき、作業員は、大型重量機器2,4〜6を揚重クレーン38に順番に吊り下げ、機械台8から降ろし、図2に示したように機械室床13の開口していない空きスペースへ移動させ一時保管する。そして、機械台8を連結していた機械台開き止め14を各機械台8から外す。次に、各機械台8のジャッキボルト32を、各機械台8が持ち上がる方向に廻すことで機械台8が浮き上がらせる。これにより、機械台8の重量がかかっていない状態になった座21を抜き取る。そして、滑車23を滑車用レール24にのせる。これにより、各機械台8は、滑車用レール24に沿って移動可能な状態になるので、作業員は、手押しにより昇降路7の上方から外れる位置まで機械台8を移動させる。以上のようにして、機械室床13に設けられた開口スペースの上方が開放される。このときの状態を図8に示す。
【0028】
続いて、作業員は、マンホール蓋34を全て機械室1の空きスペースに移動する。マンホール蓋34には、吊り金具37が設けられているので、持ち運びが容易にできる。また、揚重クレーン38を利用してもよい。これにより、開口スペース42が確保される。このときの状態を図9に示す。
【0029】
開口スペース42が確保されることで、機械室1と昇降路7とが貫通されることで、重量機器の荷下ろしが可能な状態になる。この荷下ろし作業の実施状態を説明するための概念図を図10に示す。図10に示したように、空きスペースに載置しておいた重量機器、例えば制御盤3を揚重クレーン38に吊り下げ、トロリービーム39に沿って開口スペース42まで移動させ、そして、昇降路7から搬出階まで下ろす。そして、エレベーター扉43を開け、エレベーターの出入口にて制御盤3を重量物運搬車44に載せ、外部へ搬出する。重量機器を機械室1に搬入するときの作業手順は、上記と逆を行えばよい。
【0030】
以上のようにして、荷下ろし作業若しくは荷上げ作業が終了すると、落下防止のためにマンホール蓋34を元の開口スペース42を塞ぐ位置に戻す。
【0031】
本実施の形態によれば、機械室1にある重量機器等の製品または部品を搬出入するにあたり、機械台8を移動可能に設置し、昇降路7に貫通した開口スペース42を設けるように構成したので昇降路7を利用することができる。これにより、機械室1に通じる階段や通路が狭く、あるいは天井が低く、大型重量機器を機械室1に搬出入できないような場合でも、有効通路を確保するための通路改造を行うことが不要になる。また、超高層ビルのように揚重用クレーンを利用して荷上げ(荷下ろし)作業ができないような場合でも、昇降路7を利用することで、機械室1への搬出入を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る屋上エレベーター機械室の構造の一実施の形態を示した平面図であり、大型重量機器の据付状態を示した図である。
【図2】図1において大型重量機器を機械台から降ろした状態を示した図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図1に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図である。
【図5】図4に示した要部の概略正面図である。
【図6】本実施の形態における機械室の天井部分に設けられた構成を上方から見たときの平面図である。
【図7】図6におけるB−B断面図である。
【図8】機械室床に設けられた開口スペースの上方が開放されたときの状態を示した平面図である。
【図9】機械室床に設けられた開口スペースが確保されたときの状態を示した平面図である。
【図10】本実施の形態において荷下ろし作業の実施を説明するために用いる概念図である。
【図11】従来の屋上エレベーター機械室の構造の一実施の形態を示した平面図であり、大型重量機器の据付状態を示した図である。
【図12】図11に示した大型重量機器据付部分の要部の見取り図である。
【図13】図12に示した要部の概略正面図である。
【図14】図11において大型重量機器を機械台から降ろした状態を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 機械室、2 巻上機、3 制御盤、4 電動機、5 ソラセ車、6 調速機、7 昇降路、8 機械台、9 機械室壁、10,12,15,26,30 固定金具、11 浮せ台、13 機械室床、16 建築梁、17 階段、18 踊り場、19 手すり、20 出入口扉、21,27,31 座、22 滑車取付器具、23 滑車、24 滑車用レール、25 レール取付金具、28 レール取付金具補強板、29 ガイドシュー、32 ジャッキボルト、33 マンホール外枠、34 マンホール蓋、35 マンホール蓋枠、36 マンホール支工板、37 吊り金具、38 揚重クレーン、39 トロリービーム、40 機械室天井、41 トロリービーム取付鋲、42 開口スペース、43 エレベーター扉、44 重量物運搬車。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上に設けられるエレベーター装置の機械室床面の少なくともエレベーターかごの昇降路上方位置に、昇降路まで貫通した状態に形成される開口部と、
前記開口部を挟み対向した位置に平行に配置され、前記開口部が配設された位置から配設されていない位置まで敷設される1対の滑車用レールと、
前記各滑車用レール上を回動する1対の滑車と、
前記1対の滑車が両端に取り付けられ、前記滑車用レールに沿って平行移動可能に設けられた、エレベーター機械が載置される機械台と、
機械室天井のエレベーターかごの昇降路の上方位置に取り付けられたクレーン機構と、
を有し、前記機械台を前記開口部が配設されていない位置まで移動させ、搬出入対象の機器を前記クレーン機構に吊り下げ、荷上げ若しくは荷下しすることによってエレベーターかごの昇降路から前記機器を搬出入させることを特徴とする屋上エレベーター機械室の構造。
【請求項2】
前記開口部をふさぐと共に前記機器を搬出入させる際には取り外させられる1乃至複数枚の蓋を有することを特徴とする請求項1記載の屋上エレベーター機械室の構造。
【請求項3】
前記クレーン機構は、
搬出入対象の機器を吊り下げるフック部と、
エレベーターかごの昇降路の上方位置から昇降路の上方以外の位置まで前記フック部を水平移動させるトロリービーム部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載の屋上エレベーター機械室の構造。
【請求項1】
建物の屋上に設けられるエレベーター装置の機械室床面の少なくともエレベーターかごの昇降路上方位置に、昇降路まで貫通した状態に形成される開口部と、
前記開口部を挟み対向した位置に平行に配置され、前記開口部が配設された位置から配設されていない位置まで敷設される1対の滑車用レールと、
前記各滑車用レール上を回動する1対の滑車と、
前記1対の滑車が両端に取り付けられ、前記滑車用レールに沿って平行移動可能に設けられた、エレベーター機械が載置される機械台と、
機械室天井のエレベーターかごの昇降路の上方位置に取り付けられたクレーン機構と、
を有し、前記機械台を前記開口部が配設されていない位置まで移動させ、搬出入対象の機器を前記クレーン機構に吊り下げ、荷上げ若しくは荷下しすることによってエレベーターかごの昇降路から前記機器を搬出入させることを特徴とする屋上エレベーター機械室の構造。
【請求項2】
前記開口部をふさぐと共に前記機器を搬出入させる際には取り外させられる1乃至複数枚の蓋を有することを特徴とする請求項1記載の屋上エレベーター機械室の構造。
【請求項3】
前記クレーン機構は、
搬出入対象の機器を吊り下げるフック部と、
エレベーターかごの昇降路の上方位置から昇降路の上方以外の位置まで前記フック部を水平移動させるトロリービーム部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載の屋上エレベーター機械室の構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−1509(P2008−1509A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175329(P2006−175329)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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