説明

屋上施設の構築工法及びバルコニー

【課題】 簡単、安価かつ工期の短縮化が図れるリフォーム工事によるルーフバルコニーの構築工法を提供する。
【解決手段】 建物の骨組の所定領域における梁上に、高さ方向に隙間を置いて複数の桁からなる桁ブロックを配置し、この桁ブロックの桁間に床梁材を配設し、これらを床下地材としてその上に直接剛床を取付け、さらに剛床上に防水・断熱材を設け、周囲の桁ブロック上に手摺を設けてルーフバルコニーを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上に設けられたルーフバルコニー(以下単にバルコニーともいう)やルーフガーデン等の屋上施設の構築構造及び工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存建物の屋根部分を防水型ルーフバルコニーに改造することが種々試みられている。例えば屋根を撤去し、梁や柱を補強し、その上に床下地材を配置し、防水と床仕上げを行い、手摺を取付けるという順序で施工するものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の工法では、構造、建築法規、工期が長期化すると雨仕舞等の問題があり、解決しなければならない課題が山積していて容易に目的を達成することができなかった。
本発明は前記課題を解決するために考えられたものであり、リフォームや新築の際に簡単かつ安価に、しかも短期間でルーフバルコニーやルーフガーデン等の屋上施設を構築することができる工法及び、この工法によって構築されたルーフバルコニーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、建物の骨組の所定領域における梁上に、高さ方向に隙間を置いて複数の桁を配置するとともに、前記骨組の所定の柱位置に調整束を介在させた状態で前記各桁を前記骨組に対して固定し、前記各桁を床下地材とすることを特徴とするものである。
【0005】
請求項2記載の発明は、前記骨組の梁が所定建物の小屋梁であることを特徴とするものである。
【0006】
請求項3記載の発明は、前記隙間内に換気用部材を通したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、対向する桁内に床梁材を配置し、床梁材の端部を対応する桁により金物を介して支承することを特徴とするものである。
【0008】
請求項5記載の発明は、前記屋上施設をバルコニーとしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項6記載の発明は、建物の骨組の所定領域における梁上に高さ方向に隙間を置いて配置された複数の桁及び床梁材と、前記骨組の所定の柱位置上に前記隙間に介在するように配置された調整束と、前記桁及び床梁材上に直接取付けられた構造用合板からなる剛床と、前記桁上に設けられた手摺とからなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項7記載の発明は、前記複数の桁における対向する桁内に配置された床梁材と、この床梁材を対応する桁に支承させる金物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれは、簡単かつ安価で、しかも工期の短縮化が図れる工法及び屋上施設を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図を参照して本発明の実施の形態を説明する。
この実施の形態の説明では、既存の建物の屋根等を解体してそこにルーフバルコニーを構築するリフォーム段階での工法を例として日程順に説明することとする。
【実施例1】
【0013】
[準備段階]
1.事前に既存建物のチェックを行う。
(1)構造チェック
基本的には建築基準法の新耐震法に適合した建物として、建築確認が下付され、検査済み証が取得されている事、又は耐震診断を行い、耐震補強の工事を同時に行う事が前提である。補強金物が基準通り取付けられているかのチェックを行う。
(2)伏せ図作成
既存建物の小屋梁の位置や階段位置等をチェックして図面を作成する。1階と2階の柱が上下一致している柱を基準に桁で構造ブロックを構成する(3640mm×4550mm以内に区画する)。そのブロック内に床梁を910mm間隔で配置する。
(3)建築法規のチェック
北側斜線のチェック、道路斜線をチェック、階段室の面積をチェックする。
【0014】
[施工手順]
1.第1日目
図1に示すように仮設工事で足場1を掛け、養生シートなどの準備を行う。材料搬入路及び荷上げ方法を検討する。
【0015】
2.第2日目
図2に示すように、既存屋根2、樋、外壁の一部の解体・撤去をする。このとき、小屋束より上を撤去し、小屋梁3までを残しておく。そして雨養生のためのシートを掛ける。
【0016】
3.第3日目
図3に示すように、既存建物の小屋梁3上に調整束5を介在させて隙間4を開けた状態で、予めプレカットされた桁6を取付ける。詳細は図7に示すように、既存建物の柱位置に対応させて前記調整束5(○印部分)を配置し、この調整束5に支承されるように前記構造ブロックを構成した桁ブロック6Aを配置する。そして、この桁ブロック6A内に複数の床梁6Bを架け渡す。前記桁ブロック6Aと床梁6Bとの連結構造を図8及び図9を参照して説明する。両者の連結には図8のようなU字状の受金物7を使用し、図9に示すように、床梁材6Bの底面をU字状受金物7の底部で支持させた状態で、受金物7の上端部を隣接する桁6Aに支承させてボルト締めにより固定する。なお、既存梁3と新たに設けた桁6とは、通しボルト又は特殊接合部材を用いて固定する。そして、桁6上に剛床8となる構造用合板(厚28mm)を直接止め付ける。このように,既存梁3と新たな桁6とは直接接触させない方式(台輪方式ともいう)とすれば既存の梁に荷重をかけなくて済む。この段階では工期短縮のために雨仕舞用の勾配は設けない。雨養生のためのシートを掛けておく。このように、桁6上に直接剛床8を設ける方式(根太レス工法)を採用することにより防水までの工期を短縮できる。
【0017】
4.第4日目
図4に示すようにルーフバルコニーの壁手摺9を設け、また、既存屋根との取り合い工事を行う。雨養生のためのシートを掛ける。
【0018】
5.第5日目
前記剛床8上に、複合FRP防水、断熱材10を設置する。この防水断熱材は、下地、勾配スタイロ、面材、ハウタンプライマー、ハウタンシート、ハウタンポリマー、ハウタンマット等の材料を積層した構造を有するものである。その後、壁手摺部分に雨養生のためのシートを掛ける。このような勾配付きスタイロ断熱材とFRP複合防水材を用いることにより水勾配が確保でき断熱と結露に対応でき、かつ工期短縮が図れる。
【0019】
6.第6日目
前記防水断熱材10の表面仕上を施工する。仕上材にFウォーク(不燃仕上材)11を使用する。次に隙間部分に室内天井とバルコニー床との間の換気を行う部材(専用パイプ)12を取付ける。最後に壁手摺9の壁仕上とアルミ笠木13を取付けて完成となる。以上のように、6日間でルーフバルコニーを構築することができる。
【0020】
以上のような本発明をまとめると以下のような種々の特徴を有している。
1.構造の考え方を明確化
(1)既存の梁に、新たな荷重を掛けない台輪方式とする。
(2)バルコニーの荷重は、1.2階で一致している柱に直接伝達させる。
(3)台輪方式の考え方は、構造ブロック割りの中に、910mm間隔に床梁を配置し、直接構造用合板を取り付け、剛床とする。そうすることで、更に耐震性も増すことになる。
【0021】
2.工期短縮
(1)台輪方式を採用することで、既存の梁に手を加えることなく、新たにプレカットされた桁ブロックと、構造用合板で構成された剛床が、早期に組める。又、桁ブロック上に直接構造用合板を取り付ける根太レス工法を採用しているため、防水までの工期が短縮されている。(防水で勾配がとれる為、木工事で水勾配は不用)
(2)短期間で施工可能な防水システムを採用。
3.優れた防水システム採用(複合FRP防水/断熱工法)
(1)勾配付き台輪方式スタイロ断熱材とFRP複合防水工法の一体化で、断熱と結露に対応している。(*複合防水とは、改質アスファルト系シートと、FRPを複合した防水仕様をいう。)
(2)不燃認定取得済で、防火・準防火地域に対応している。
(3)一日の工事で、防水の機能までの施工が可能。その後、不燃材のトップコートを貼って完了。
【0022】
以上の実施形態はリフォーム工事での工法を説明したが、新築の建物の屋上にバルコニーを構築する場合にも適用できることは、言うまでもない。また、ルーフバルコニーのみならず,ルーフガーデンのような屋上施設に適用可能である。
さらに、上記工法によって構築された屋上施設の構造も新規なもので産業上利用性の高いものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明工法を説明するための図である。
【図2】本発明工法を説明するための図である。
【図3】本発明工法を説明するための図である。
【図4】本発明工法を説明するための図である。
【図5】本発明工法を説明するための図である。
【図6】本発明工法を説明するための図である。
【図7】本発明の工法による構造部分を説明するための図である。
【図8】本発明の工法による構造部分を説明するための図である。
【図9】本発明の工法による構造部分を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
2 既存屋根
3 小屋梁
4 隙間
5 調整束
6 桁
7 受金物
8 剛床
9 手摺
10 防水・断熱材
11 仕上材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の骨組の所定領域における梁上に、高さ方向に隙間を置いて複数の桁を配置するとともに、前記骨組の所定の柱位置に調整束を介在させた状態で前記各桁を前記骨組に対して固定し、前記各桁を床下地材とすることを特徴とする屋上施設の構築工法。
【請求項2】
前記骨組の梁が所定建物の小屋梁であることを特徴とする請求項1記載の屋上施設の構築工法。
【請求項3】
前記隙間内に換気用部材を通したことを特徴とする請求項1記載の構築工法。
【請求項4】
対向する桁内に床梁材を配置し、床梁材の端部を対応する桁により金物を介して支承することを特徴とする請求項1記載の構築工法。
【請求項5】
前記屋上施設をバルコニーとしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の構築工法。
【請求項6】
建物の骨組の所定領域における梁上に高さ方向に隙間を置いて配置された複数の桁及び床梁材と、前記骨組の所定の柱位置上に前記隙間に介在するように配置された調整束と、前記桁及び床梁材上に直接取付けられた構造用合板からなる剛床と、前記桁上に設けられた手摺とからなることを特徴とするバルコニー。
【請求項7】
前記複数の桁における対向する桁内に配置された床梁材と、この床梁材を対応する桁に支承させる金物を有することを特徴とする請求項6記載のバルコニー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−2477(P2006−2477A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181376(P2004−181376)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(594109727)株式会社ペイントハウス (2)
【出願人】(502196267)株式会社ホーメスト (1)
【Fターム(参考)】