説明

屋外機器

【課題】この発明は、構成簡易にして、小形化の促進を図り得、且つ、設計を含む製作の自由度の向上を図り得るようにすることにある。
【解決手段】外周壁に外部側からの水を遮蔽する水切り部172を有した筒状の弾性部材17に水を遮断し、且つ、気体が通過するフィルタ173を取付けたグロメット16を機器筐体10の扉部11に取付けて構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば屋外基地局を含む通信機器等の電子機器システムに係り、特に、その電子ユニット等の発熱体及びバッテリが収容配置される屋外機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電子機器システムにおいては、発熱体である複数種の電子ユニットを組み合わせて所望の性能特性を有するシステムを構築する方法が採用されている。このような電子機器システムに用いられる屋外機器は、例えば電子ユニットと共に、バッテリが機器筐体に収容配置され、この鉛蓄電池などのバッテリを電源として電子ユニット等の駆動制御が行われている。このため、屋外機器にあっては、電子ユニットの冷却を行うための排熱構造と共に、防水や換気構造が要求されている。
【0003】
このような屋外機器としては、キャビネット状の本体部にルーバ付きファンカバーを設けて内部の熱を排熱し、この本体部を、バッテリ収容部を設けたベース部に設置することで、バッテリの過充電時などにバッテリ内部から発生した水素ガスを逃がすと共に、バッテリ収容部に雨水が浸入しないように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3529977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される筐体構成では、電子ユニットを本体部に収容して、バッテリをベース部に別体に収容配置する構成上、大形となると共に、電子ユニットの排熱構造と、バッテリの防水及び換気構造を備えなければならないうえ、電子ユニット及びバッテリの収容配置に制約を有するために、設計の自由度が劣るという問題を有する。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、構成簡易にして、小形化の促進を図り得、且つ、設計を含む製作の自由度の向上を図り得るようにした屋外機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、少なくとも発熱体及びバッテリが収容配置された機器筐体と、この機器筐体に着脱自在に設けられるものであって、外周壁に外部側からの水を遮蔽する水切り部を有した筒状の弾性部材に水を遮断し、且つ、気体が通過するフィルタが取付けられた複数のグロメットとを備えて屋外機器を構成した。
【0007】
上記構成によれば、グロメットは、弾性部材の弾性を利用して、その水切り部が外部側に位置するように機器筐体に装着されることにより、そのフィルタが機器筐体内の空気を含む気体を外部側に排気して排熱及びガスの換気を行うと共に、外部からの水の侵入を阻止する。同時に、外部からの水は、弾性部材の水切り部により、外部に戻され、フィルタと協働して内部への侵入が阻止される。これにより、機器筐体内の発熱体の熱制御と共に、機器筐体の防水及び内部換気を効率よく実現したうえで、そのシステム設計を含む製作の簡略化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、この発明によれば、構成簡易にして、小形化の促進を図り得、且つ、設計を含む製作の自由度の向上を図り得るようにした屋外機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の一実施の形態に係る屋外機器を示すもので、機器筐体10には、例えば前面側に扉部11が、開閉自在に設けられている。そして、この機器筐体10及び扉部11は、その周壁に日除け部材12が必要に応じて取付けられ、取付具13を用いて図示しないコンクリート柱等に設置されて外界にさらされる。この機器筐体10には、例えば図2及び図3に示すように少なくとも発熱体である複数の電子ユニット14、電源を構成するバッテリ、例えば鉛蓄電池15が収容配置されて所望の電子システムが構築される。
【0011】
上記扉部11には、図4に示すように上部側に複数の円形状の開口111が形成され、この開口には、グロメット16が着脱自在に取付けられる。この開口111は、例えば電子ユニット14の発熱量及び鉛蓄電池15に要求される換気面積Sに基づいて設定される。この換気面積Sは、鉛蓄電池15の最大電流に基づいて設定され、充電電流(A)をi、単電池(セル)の個数をn、安全係数をs、密閉反応効率(シール形蓄電池はa=0.2)をaとすると、
水素ガス発生に費やされる電流値:In=i×n×s×(1−a)…(1)
の式に基づいて電流値Inを算出し、既知の電池工業会換算グラフにより、換気面積Sを求める。この開口としては、例えば過充電時などにバッテリ内部から発生した水素ガスを排出する場合には、なるべく扉部の上部に配置することが望ましい。
【0012】
例えば単電池(セル)の個数n=12、安全係数s=1.5以上、密閉反応係数a=0.2とした場合には、上記(1)式に基づいてIn=17.3A・セルとなり、上記電池工業会換算グラフにより、換気面積S=37cm2が求められる。
【0013】
上記グロメット16は、例えばシリコンゴム等の弾性材料を用いて図5及び図6に示すように断面円形をした筒状の弾性部材17が形成される。この弾性部材17は、内壁部が空気路171として構成され、その先端部(機器筐体外部側)の外周壁には、溝状の水切り部172が設けられる。
【0014】
そして、弾性部材17の基端部(機器筐体内部側)には、フィルタ固定部(図の都合上、図示せず)が埋設され、このフィルタ固定部(図示せず)には、フィルタ173が固定リング174及び螺子部材175を用いて交換可能に取付けられる。このフィルタ173は、先端部側面が防水性を有すると共に、基端部側から先端部側方向に空気、水素を含む気体が通過可能な特性を有し、螺子部材175を螺合調整して固定リング174を外すことで、容易に弾性部材17より離脱させて交換することができる。
【0015】
上記弾性部材17の空気路171は、例えば内径が先端部側から基端部方向に小径に形成された傾斜状に設けられ、この空気路171の内壁を伝わって機器筐体10内に雨水等の水の侵入を防止するように形成されている。これにより、外部からの水が弾性部材17の内壁を伝ってフィルタ173まで到達するのを最小限に設定することが可能となり、防水の確実化の促進を図ることができる。
【0016】
また、上記弾性部材17の中間部の外周部には、取付溝176が上記扉部11の開口111に対応して形成され、その弾性力を利用して取付溝176が扉部11の開口111に嵌合されてグロメット16が扉部11に装着される。
【0017】
ここで、グロメット16は、雨水等の水が、弾性部材17の内壁を伝わって扉部11の開口111から機器筐体10内に侵入が防止されるように形成されると共に、その水切り部172の作用により、弾性部材17の外周壁から扉部11の開口111に伝わって機器筐体10内に侵入が阻止される。
【0018】
また、グロメット16のフィルタ173が目詰まりしたような場合には、螺子部材175を外して固定リング174を弾性部材17から一旦、外し、新しいものと交換することで、再び、使用に供される。この際、弾性部材17は、その弾性力を利用して扉部11の開口111から取外して行うことも可能である。
【0019】
なお、上記グロメット16は、例えば経年変化した場合等、必要に応じてその取付溝176と扉部11の開口111との間に防水性シール材等を充填することで、その開口111に対する所望の防水性能の確実化を図ることができる。
【0020】
上記構成において、グロメット16を扉部11の開口111に装着する場合には、弾性部材17の取付溝176が弾性力に抗して弾性変形させて開口111に嵌合させる。すると、弾性部材17は、その水切り部172が扉部11の外部側に位置され、フィルタ173が機器筐体10内に位置されて扉部11に装着される。
【0021】
ここで、グロメット16は、扉部11を含む機器筐体10の外面側を伝わって来た雨水等の水が弾性部材17の水切り部172により機器筐体10内への侵入が阻止される。同時に、機器筐体10の外面側から伝わって来た水は、弾性部材17の空気路171の作用と共に、フィルタ173の作用により、弾性部材17の内壁部位からの浸入が阻止され、電子ユニット14及び鉛蓄電池15が水に濡れたりすることが防止される。
【0022】
この状態で、機器筐体10の電子ユニット14で発生した熱は、グロメット16のフィルタ173を通って機器筐体10外に排出されて電子ユニット14の熱制御が行われる。同時に、機器筐体10は、その鉛蓄電池15が過充電時などに内部から発生した水素ガスがフィルタ173を通って機器筐体10外に排出され、換気が行われる。
【0023】
このように、上記屋外機器は、外周壁に外部側からの水を遮蔽する水切り部172を有した筒状の弾性部材17に水を遮断し、且つ、気体が通過するフィルタ173を取付けたグロメット16を機器筐体10の扉部11に取付けて構成した。
【0024】
これによれば、グロメット16を、弾性部材17の弾性を利用して、その水切り部172が外部側に位置するように機器筐体10の扉部11に取付けられることにより、そのフィルタ173が外部からの水の侵入を阻止しながら機器筐体10内の空気を含む気体を外部側に排気して排熱及びガスの換気を行い、扉部11を含む機器筐体10の外面を伝わる水を、弾性部材17の水切り部172により、外部に戻して、フィルタ173と協働して内部への侵入を阻止する。この結果、機器筐体10内の電子ユニット14の熱制御と共に、機器筐体10の防水及び内部換気を効率よく実現したうえで、簡易な構成が実現され、そのシステム設計を含む製作の簡略化を図ることができる。
【0025】
なお、上記実施の形態では、グロメット16を機器筐体10の扉部11に設けるように構成した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、扉部11以外の機器筐体10の壁面に設けるように構成することも可能である。
【0026】
また、上記実施の形態では、グロメット16を、断面円形をした筒状の弾性部材17を用いて構成した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、例えば断面形状を楕円、あるいは長円をした筒状の弾性部材を用いて構成することも可能で、同様に有効な効果が期待される。
【0027】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0028】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施の形態に係る屋外機器の要部を透視して示した平面図である。
【図2】図1の機器筐体から扉部を機器筐体から外して正面から見た状態を示した平面図である。
【図3】図1を側面から見た状態を示した平面図である。
【図4】図1の扉部からグロメットを取外した状態を示した分解斜視図である。
【図5】図1のグロメットを取出して側面から見た状態を示した平面図である。
【図6】図1のグロメットをフィルタ側から見た状態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10…機器筐体、11…扉部、111…開口、12…日除け部材、13…取付具、14…電子ユニット、15…鉛蓄電池、16…グロメット、17…弾性部材、171…空気路、172…水切り部、173…フィルタ、174…固定リング、175…螺子部材、176…取付溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発熱体及びバッテリが収容配置された機器筐体と、
この機器筐体に着脱自在に設けられるものであって、外周壁に外部側からの水を遮蔽する水切り部を有した筒状の弾性部材に水を遮断し、且つ、気体が通過するフィルタが取付けられた複数のグロメットと、
を具備することを特徴とする屋外機器。
【請求項2】
前記機器筐体は、開閉自在な扉を有し、該扉に前記グロメットを着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1記載の屋外機器。
【請求項3】
前記グロメットには、内径が外部側から内部方向に小径に形成された空気路を有することを特徴とする請求項1又は2記載の屋外機器。
【請求項4】
前記グロメットは、機器筐体の上部側に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の屋外機器。
【請求項5】
前記グロメットは、フィルタが弾性部材に交換可能に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の屋外機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−161115(P2010−161115A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−939(P2009−939)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】