説明

屋外用ポリウレタン系接着剤

【課題】屋外暴露時における経時的な接着強度の低下を抑制して、長期間にわたって接着強度を維持できる接着剤を提供することである。
【解決手段】 主剤と硬化剤とを用いる屋外用ポリウレタン系接着剤であって、前記主剤が、芳香族二塩基酸40〜80モル%と炭素数9以上の脂肪族二塩基酸20〜60モル%とを含む二塩基酸成分と、炭素数5以上の脂肪族多価アルコール20〜100モル%を含む多価アルコール成分とを含むポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリウレタンポリオールからなるポリオール(A)を含み、前記硬化剤が、イソシアヌレートを重量比で50〜100%含有するポリイソシアネート(B)を含むものである、屋外用ポリウレタン系接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外産業用途に適したポリウレタン系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外産業用途向け、たとえば、防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板、ステッカーなどに用いられる多層(複合)フィルムとして、アルミニウムや銅、鋼板などの金属箔や金属板あるいは金属蒸着フィルムと、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂などのプラスティックフィルムとを貼り合わせて積層(ラミネート)フィルムにしたものが使用されてきた。これらの多層フィルムにおける、金属箔、金属板または金属蒸着フィルムとプラスティックフィルムとを貼り合わせる接着剤としては、ポリエポキシ系接着剤およびポリウレタン系接着剤が知られている。
【0003】
特開平10−218978号公報(特許文献1)には、優れた初期凝集力と接着力等を与えることができる、バランスを考慮したポリエステル樹脂と、これを用いたポリウレタン樹脂接着剤が開示されている。
【0004】
特開平06−116542号公報(特許文献2)には、食品包装におけるレトルト殺菌時の耐熱水性に優れるポリウレタン系接着剤が開示されている。
【0005】
特開2008−4691号公報(特許文献3)には、太陽電池裏面封止用シートにおいて、耐加水分解性を有するポリウレタン系接着剤を使用することが開示されている。
【0006】
さらに、特開2007−136911号公報(特許文献4)には、ポリエステル系樹脂またはポリエステルポリウレタン系樹脂で構成された接着改善層を備えた太陽電池裏面封止用シートが開示されている。
【特許文献1】特開平10−218978号公報
【特許文献2】特開平06−116542号公報
【特許文献3】特開2008−4691号公報
【特許文献4】特開2007−136911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年は地球温暖化対策に向けた取り組みが急務となり、長期耐久性のある素材を開発・提供することが、省材につながり環境保全の対策となる。
【0008】
しかし、上記従来技術の接着剤では、屋外暴露時に加水分解等による経時的な接着強度の低下が起こり、長期間にわたって強い接着強度を維持できず、その結果、外観不良およびデラミネーションが引き起こされ、水蒸気などに対するバリア性が低下して多層フィルムの機能が失われてしまうという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、屋外暴露時における経時的な接着強度の低下を抑制して、長期間にわたって接着強度を維持できる接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、主剤と硬化剤とを用いる屋外用ポリウレタン系接着剤であって、前記主剤が、芳香族二塩基酸40〜80モル%と炭素数9以上の脂肪族二塩基酸20〜60モル%とを含む二塩基酸成分と、炭素数5以上の脂肪族多価アルコール20〜100モル%を含む多価アルコール成分とを含むポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリウレタンポリオールからなるポリオール(A)を含み、前記硬化剤が、イソシアヌレートを重量比で50〜100%含有するポリイソシアネート(B)を含むものである、屋外用ポリウレタン系接着剤である。
【0011】
また、前記主剤がさらに、数平均分子量が1,000〜3,000のビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、上記の屋外用ポリウレタン系接着剤である。
【0012】
また、前記主剤がさらに、シランカップリング剤を0.5〜5重量%含む、上記の屋外用ポリウレタン系接着剤である。
【0013】
また、前記ポリオール(A)のエステル結合度が、0.75〜0.99である、上記の屋外用ポリウレタン系接着剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、芳香族二塩基酸及び一定の炭素数以上の脂肪族二塩基酸と、一定の炭素数以上の脂肪族多価アルコールとを組み合わせたポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリウレタンポリオールからなるポリオール(A)と、一定量のイソシアヌレートを含有するポリイソシアネート(B)とを用いることを特徴とし、この構成により、ポリウレタン系接着剤において、主剤であるポリオール(A)における耐加水分解性を高め、屋外暴露時の経時的な接着強度の低下を抑制することができる。したがって本発明は、屋外産業用途向け多層フィルム用の接着剤として非常に適しており、長期間にわたって多層フィルムの機能を維持し、かつ、デラミネーションおよび外観不良の発生を抑制できる。
【0015】
より詳細には、特定の二塩基酸と多価アルコールを用いる構成により、主剤であるポリオール(A)における加水分解を起こすエステル結合度を小さくすることができ、かつ、硬化剤であるポリイソシアネートが耐熱性の高いイソシアヌレート骨格を含むことにより、架橋密度を高めて高温下での樹脂の膨潤を抑えることで樹脂への水分の浸入を抑制して、接着剤硬化皮膜の耐湿熱性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、主剤と硬化剤とを用いるポリウレタン系接着剤であり、主剤と硬化剤とを使用時に混合する、いわゆる2液混合タイプの接着剤であってもよいし、主剤と硬化剤とが予め混合された1液タイプの接着剤であってもよい。さらに、複数の主剤および/または複数の硬化剤を使用時に混合するタイプであってもよい。
【0017】
主剤は、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリウレタンポリオールからなるポリオール(A)を含む。
【0018】
このポリオール(A)を構成する二塩基酸およびそのエステル化合物としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸およびそのエステル化合物を例示できる。これらを適宜組み合わせて使用できるが、二塩基酸全量に対し、芳香族二塩基酸が40〜80モル%、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸が20〜60モル%となるように組み合わせて使用する。芳香族二塩基酸が40モル%以下であると、充分な耐熱性および粘弾性が得られない恐れがあり、80モル%以上であると接着力が低下する恐れがある。また、脂肪族二塩基酸が炭素数8以下の化合物で構成されているか、または、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸が20モル%以下であると、ポリオール(A)のエステル結合度が上がって加水分解基点が増加し、長期耐湿熱性に悪影響を与える恐れがある。
【0019】
上記例示化合物のなかでも、芳香族二塩基酸としては、エステル交換反応における反応性の観点から、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、無水フタル酸が好ましい。炭素数9以上の脂肪族二塩基酸としては、親油性が高く疎水性を有し、ポリマーへの吸水を抑制する観点から、炭素数9のアゼライン酸および炭素数10のセバシン酸が好ましい。炭素数11以上の脂肪族二塩基酸では、芳香臭が強くなるため、加工作業環境への配慮を行なうことが好ましい。
【0020】
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9−ナノンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらを単独で、あるいは2種以上で使用できるが、多価アルコール全量に対し炭素数5以上の脂肪族多価アルコールを20モル%以上の割合で使用する。脂肪族多価アルコールが炭素数4以下のアルコールで構成されていたり、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールの割合が20モル%以下であったりすると、ポリオール(A)のエステル結合度が上がって加水分解基点が増加し、長期耐湿熱性に影響する恐れがある。
【0021】
上記例示化合物のなかでも、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールとして、側鎖を有し溶解安定性を向上させる炭素数5のネオペンチルグリコールおよび炭素数6の3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ならびに、親油性が高く疎水性を有しポリマーへの吸水を抑制する1,6−ヘキサンジオールなどが好ましい。
【0022】
ポリエステルポリオールの重量平均分子量は、凝集力と接着強度を確保する観点から、10,000以上であることが好ましく、樹脂の溶解性、粘度および接着剤の塗工性(取り扱い性)の観点から、150,000以下であることが好ましく、10,000〜100,000であることが一層好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオールと反応させてポリエステルポリウレタンポリオールの合成に用いられる有機ジイソシアネートとしては、特に限定されず、周知の原料を使用できる。具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートなどがあり、これらを単独で、あるいは2種以上で使用できる。なかでも、屋外用途であるために、経時的な黄変を低減させる目的で、ウレタン架橋部には脂肪族または脂環族のイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0024】
ポリエステルポリオールをウレタン化して用いることにより、ポリオール自身のエステル結合度(後述)を下げることができ、その結果、加水分解起点を減らして耐湿熱性を高めることができる。
【0025】
ポリエステルポリウレタンポリオールの重量平均分子量は、上記ポリエステルポリオールと同様の理由から、10,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜70,000であることが一層好ましい。
【0026】
ポリオール(A)として、上記のポリエステルポリオールとポリエステルポリウレタンポリオールをそれぞれ単独で使用することが可能であるが、両者を混合して使用することが接着力と耐湿熱性のバランスをとる観点から好ましい。その場合のポリエステルポリオールとポリエステルポリウレタンポリオールの混合比は、特に限定されないが、凝集力が高く、延伸性が高い重量平均分子量70,000以上のポリエステルポリオールを使用して接着力を向上させる場合は、このポリエステルポリオールを、ポリオール(A)全量に対し60〜80重量%使用することが好ましい。この場合は、ポリエステルポリオールは重量平均分子量が大きく粘度が高くなるため、併用するポリエステルポリウレタンポリオールの重量平均分子量は40,000以下に抑えて、接着剤としての粘度を調整することが塗工の上で好ましい。
【0027】
さらに、このポリオール(A)におけるカルボキシル基と水酸基の反応(カルボキシル基と水酸基の反応比を1対1とする)によるエステル結合の割合を、分子中のエステル結合度(モル/100g)として表した際、1未満になるように設計することが望ましい。すなわち、本発明者らの知見によれば、エステル結合度を1未満とすることで、エステル結合の割合を小さくして耐加水分解性を高め、経時的な接着強度劣化をさらに抑制して長期の耐湿熱性を向上させることができる。
【0028】
たとえば、多塩基酸の中で、分子量の大きい(炭素数の多い)二塩基酸を選択することで、単位重量中(100g中)のエステル結合度を小さくすることができる。好ましくは、炭素数が9以上の脂肪族二塩基酸であり、たとえば、炭素数が9のアゼライン酸、炭素数10のセバシン酸が挙げられる。ただし、炭素数が15程度以上の脂肪族二塩基酸を使用する場合は、接着剤中のソフトセグメントである脂肪族炭素鎖の割合が大きくなり、接着剤の耐熱性が低くなる傾向があるので、他に耐熱性を考慮した設計をする必要もある。
【0029】
さらにそれに加えて、分子量の大きい(炭素数の多い)多価アルコールを選択することにより、ポリオール(A)の単位重量中(100g中)のエステル結合度をさらに小さくすることができる。好ましくは、炭素数が5以上の脂肪族多価アルコールであり、たとえば、炭素数5のネオペンチルグリコール、炭素数6の3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。炭素数が多く直鎖状の多価アルコールは疎水性のものが多く、これらを選択することで分子鎖の親水度を下げる効果も期待できる。ただし、炭素数が10程度以上の脂肪族多価アルコールを使用する場合は、上記と同様に、他に耐熱性を考慮した設計をする必要がある。
【0030】
特に、工業用接着剤としての基本性能、たとえば室温での接着強度および高温(80〜150℃など)下での接着強度の両立を考慮すると、ポリオール(A)のエステル結合度は0.75〜0.99の範囲が好ましい。このエステル結合度が0.75以上であるということはすなわち、本発明で規定するように、耐熱性を担う成分である芳香族二塩基酸の二塩基酸成分中における割合が適切であり、かつ、多価アルコールの分子量も適切である、ということである。
【0031】
食品用途におけるレトルトパウチ向け接着剤では、無水カルボン酸をポリオール末端の水酸基と反応させて酸変性させる例がある。しかし、本発明者らの検討によると、この酸変性は長期の耐湿熱性を低下させるため、屋外用途の接着剤の場合には適さないことが判明した。すなわち、このようなレトルトパウチ向け接着剤に適した酸変性は、屋外暴露環境下ではエステル結合の経時的な加水分解を助長してしまうため、屋外用に用いられる本発明においては、ポリオール(A)の酸価(mgKOH/g)は5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0032】
主剤は、上記ポリオール(A)に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を含むことができる。主剤中のポリオール成分として、上記ポリオール(A)以外のポリオールを含むこともできるが、ポリオール成分中の90重量%以上がポリオール(A)であることが好ましい。
【0033】
たとえば主剤は、耐加水分解性の観点から、エポキシ樹脂を含むことが好ましく、エポキシ基がエステル結合の加水分解により発生したカルボキシル基と反応することにより、分子量低下を制御することが期待される。その場合、せん断強度保持の観点から、脂肪族エポキシ樹脂ではなく、芳香族エポキシ樹脂を配合することが好ましい。なかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格による疎水性を有することから、エステル結合の加水分解を抑制する効果が期待される。これらのエポキシ樹脂は、それぞれ単独で、または2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
【0034】
さらに、接着剤硬化皮膜の耐熱性・粘弾性調整と溶液粘度の調整の観点から、数平均分子量1,000〜3,000のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。数平均分子量が1,000以下であると、十分な耐熱性が得られない恐れがあり、一方、数平均分子量が3,000以上であると、接着剤としての粘弾性が損なわれてしまう恐れがある。また、高分子量のポリオールを使用する場合には、低分子量のエポキシ樹脂は、接着剤溶液粘度を低下させて塗工適正を向上させるとの効果が得られるが、数平均分子量が3,000以上であると、溶液粘度を低下させる効果が小さくなってしまう。
【0035】
主剤にエポキシ樹脂を配合する場合の配合量は、接着剤硬化皮膜の粘弾性調整の観点から、主剤全量に対し50重量%以下が好ましい。さらに好ましい範囲は、接着力を考慮して20〜40重量%である。
【0036】
主剤は、金属箔に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
【0037】
シランカップリング剤の添加量は、主剤全量に対し、0.5〜5重量%であることが好ましく、1〜3重量%であることがより好ましい。0.5重量%未満では、シランカップリング剤を添加することによる金属箔に対する接着強度向上効果に乏しく、5重量%以上添加しても、それ以上の性能の向上は認められない。
【0038】
その他、接着剤用として公知の添加剤を主剤に配合することができ、たとえば、反応促進剤を使用することができる。たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0039】
ラミネート外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤または消泡剤を、主剤に配合することもできる。
【0040】
レベリング剤としては、たとえば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンなどが挙げられる。
【0041】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物などの公知のものが挙げられる。
【0042】
次に、上述の主剤と組み合わせて使用される硬化剤について説明する。
【0043】
硬化剤は、ポリイソシアネート(B)成分を含む。このポリイソシアネート(B)成分は、イソシアヌレートを50〜100重量%含む。ポリイソシアネート(B)がイソシアヌレートを含むことにより、接着剤の長期にわたる耐湿熱性を得ることができる。
【0044】
このイソシアヌレートは、樹脂の経時的な黄変を低減させる観点から、脂肪族または脂環族のジイソシアネート由来の化合物が用いられることが好ましい。
【0045】
より具体的には、イソシアヌレートとしては、長期高温下での樹脂膨潤を抑えてポリマーへの吸水を低減させるのに有効な耐熱性を有するものとして、脂環族のジイソシアネートである3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネート(以下、イソホロンジイソシアネート)や、脂肪族のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレートが好ましく、さらに好ましくは、より耐熱性の高いイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートである。これらのイソシアヌレートは、ポリオール(A)と混合した後のポットライフが長く、溶液安定性が良好である点からも好ましい。
【0046】
ポリイソシアネート(B)は、上記イソシアヌレートの他に、任意のポリイソシアネートを50重量%未満の量で含むことができる。屋外用途向けの接着剤であるため、低黄変型の脂肪族または脂環族のポリイソシアネートであることが好ましい。
【0047】
具体的には、低分子量ポリイソシアネート、低分子量ポリイソシアネートと水または多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンイソシアネート、および低分子量イソシアネートの二量体等から選ばれる1種以上を併用することができる。
【0048】
低分子量ポリイソシアネートとしては、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、2,4−あるいは2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらの混合物が挙げられる。これらの低分子量ポリイソシアネートと反応させる多価アルコールとしては、たとえば、上記ポリエステルポリウレタンポリオールを製造する前段階のポリエステルポリオールの原料として前記したものが挙げられる。
【0049】
硬化剤は、上記ポリイソシアネート(B)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意に、周知のオキサゾリン化合物、たとえば、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,2−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)またはヒドラジド化合物、たとえば、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドを含むことができる。
【0050】
ポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリウレタンポリオールからなるポリオール(A)とポリイソシアネート(B)は、ポリオール(A)中の水酸基の合計に対して、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基が当量比にして1.0〜10.0になるように配合されることが好ましい。
【0051】
本発明に係る接着剤を用いて多層フィルムを製造するには、通常用いられている方法を採用できる。たとえば、一方のラミネート基材の片面に、コンマコーターやドライラミネーターによって接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、他方のラミネート基材と貼り合わせ、常温もしくは加温下で硬化させれば良い。ラミネート基材表面に塗布される接着剤量は、1〜50g/m2程度であることが好ましい。ラミネート基材としては、用途に応じて任意の基材を、任意の数で選択することができ、3層以上の多層構成とする際には、各層の貼り合わせの全てまたは一部に本発明に係る接着剤を使用できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ示す。
<ポリオールAの製造>
テレフタル酸ジメチル119.5部、エチレングリコール92.2部、ネオペンチルグリコール72.2部、および酢酸亜鉛0.02部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜210℃に加熱し、エステル交換反応を行なった。理論量の97%のメタノールが留出した後、イソフタル酸93.0部、アゼライン酸130.0を仕込み、160〜270℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が80,000のポリエステルポリオール(エステル結合度0.93モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールAとする。
<ポリオールBの製造>
テレフタル酸ジメチル99.6部、エチレングリコール92.2部、ネオペンチルグリコール72.2部、および酢酸亜鉛0.02部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜210℃に加熱し、エステル交換反応を行なった。理論量の97%のメタノールが留出した後、イソフタル酸77.5部、アジピン酸129.6部を仕込み、160〜240℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が60,000のポリエステルポリオール(エステル結合度1.03モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールBとする。
<ポリオールCの製造>
テレフタル酸ジメチル59.8部、エチレングリコール92.2部、ネオペンチルグリコール72.2部、酢酸亜鉛0.02部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜210℃に加熱し、エステル交換反応を行なった。理論量の97%のメタノールが留出した後、イソフタル酸46.5部、アゼライン酸233.7部を仕込み、160〜270℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が80,000のポリエステルポリオール(エステル結合度0.91モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールCとする。
<ポリオールDの製造>
エチレングリコール38.4部、ジエチレングリコール153.1部、イソフタル酸224.1部、アジピン酸84.5部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が32,000のポリエステルポリオール(エステル結合度0.93モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールDとする。
<ポリオールEの製造>
ネオペンチルグリコール94.2部、1,6−ヘキサンジオール91.7部、エチレングリコール37.6部、イソフタル酸211.5部、セバシン酸122.9部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜250℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が1mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が6,000の前段階のポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールにイソホロンジイソシアネート22.9部を徐々に加え、100〜150℃で加熱反応させた。6時間反応後に、重量平均分子量35,000のポリエステルポリウレタンポリオール(エステル結合度0.79モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールEとする。
【0053】
<ポリオールFの製造>
ポリオールA100部とポリオールE40部を70℃で加熱・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液をポリオールFとする。
<ポリオールGの製造>
エチレングリコール72.8部、イソフタル酸83.0部、アジピン酸73.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が32,000のポリエステルポリオール(エステル結合度1.10モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールGとする。
<ポリオールHの製造>
エチレングリコール72.8部、アジピン酸146.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が35,000のポリエステルポリオール(エステル結合度1.16モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールHとする。
<ポリオールIの製造>
エチレングリコール58.3部、ネオペンチルグリコール24.4部、イソフタル酸83.0部、セバシン酸30.3部、アジピン酸51.1部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃に加熱し、エステル化反応を行なった。更に、このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧した。酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が35,000のポリエステルポリオール(エステル結合度1.01モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールIとする。
<ポリオールJの製造>
1,6−ヘキサンジオール118.0部、セバシン酸202.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜270℃に加熱し、エステル化反応を行なった。更に、このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧した。酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が75,000のポリエステルポリオール(エステル結合度0.70モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールJとする。
<主剤1>
ポリオールA単独の樹脂溶液を、主剤1とする。
<主剤2>
ポリオールA140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YD−012、以下同)30部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤2とする。
<主剤3>
ポリオールA140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBE−403、以下同)3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤3とする。
<主剤4>
ポリオールB140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤4とする。
<主剤5>
ポリオールC140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤5とする。
<主剤6>
ポリオールD200部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤6とする。
<主剤7>
ポリオールE単独の樹脂溶液を、主剤7とする。
<主剤8>
ポリオールE200部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤8とする。
<主剤9>
ポリオールE140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤9とする。
<主剤10>
ポリオールF140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤10とする。
<主剤11>
ポリオールG140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤11とする。
<主剤12>
ポリオールH140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤12とする。
<主剤13>
ポリオールI140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤13とする。
<主剤14>
ポリオールJ140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤14とする。
【0054】
上記ポリオールA、E、F、およびIは、本発明で規定する構成を充たすポリオール(A)に相当するものである。したがって、これらのポリオールを含む主剤1〜3(ポリオールAを含む)、主剤7〜9(ポリオールEを含む)、主剤10(ポリオールFを含む)、および主剤13(ポリオールI)は、本発明の実施例の主剤である。
【0055】
なお、以下のポリオールは、それぞれ記載の理由により、本発明のポリオール(A)には含まれない。
【0056】
ポリオールB:脂肪族二塩基酸が炭素数6のアジピン酸である。
【0057】
ポリオールC:芳香族二塩基酸(テレフタル酸とイソフタル酸)の配合量が40モル%未満である。
【0058】
ポリオールD:脂肪族二塩基酸が炭素数6のアジピン酸であり、かつ、脂肪族多価アルコールが炭素数4のジエチレングリコールと炭素数2のエチレングリコールである。
【0059】
ポリオールGおよびH:脂肪族二塩基酸が炭素数6のアジピン酸であり、かつ、脂肪族多価アルコールが炭素数2のエチレングリコールである。
<硬化剤1>
イソホロンジイソシアネートの三量体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤1とする。
<硬化剤2>
ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤2とする。
<硬化剤3>
ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤3とする。
<硬化剤4>
ヘキサメチレンジイソシアネートの水とのアダクト体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤4とする。
<硬化剤5>
硬化剤1の100部と硬化剤3の100部を70℃で混合し、酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤5とする。
【0060】
上記硬化剤1、2、および5は、本発明で規定するポリイソシアネート(B)に相当するものである。一方、硬化剤3および4は、イソシアヌレートを含まないため、本発明で規定するポリイソシアネート(B)に相当しない。
<接着剤組成>
各種主剤と硬化剤を100:14(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈して固形分30%に調整した溶液を接着剤溶液とする。
【0061】
表1に、実施例1〜10および比較例1〜8として各組み合わせを記載する。
<性能試験1>
実施例および比較例の各接着剤溶液を用い、以下に示すようにポリエステルフィルムとアルミニウム箔とを貼り付けて多層フィルム(複合ラミネート材)を作製し、以下の性能試験を行なった。
【0062】
ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラーX−10S、厚み50μm)に接着剤を、塗布量:4〜5g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、アルミニウム箔(厚み50μm)を積層した。その後、60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させた。
【0063】
得られた多層フィルムをガラス瓶に入れ、蒸留水で多層フィルムを満たし、容器を密閉した。これを85℃で10日間、20日間、または30日間経時させた。
【0064】
経時させた上記各多層フィルムを200mm×15mmの大きさに切断し、6時間室温乾燥後、ASTM D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。ポリエステルフィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度(N/15mm巾)を、5個の試験片の平均値で示した。
<性能試験2>
実施例および比較例の各接着剤溶液を用い、以下に示すようにポリエステルフィルムとアルミニウム箔とフッ素系フィルムとを貼り付けて多層フィルム(複合ラミネート材)を作製し、以下の性能試験を行なった。
【0065】
ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、E−5100、厚み100μm)に接着剤を、塗布量:4〜5g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、アルミニウム箔(厚み50μm)を積層した。さらにアルミニウム箔に接着剤を、塗布量:4〜5g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、ポリフッ化ビニリデンフィルム(デュポン製テドラー、厚み38μm)を積層した。その後、60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させた。
【0066】
得られた多層フィルムを恒温恒湿槽に入れ、85℃85%RH雰囲気下で密閉した。これを1か月、2か月、3か月、または4か月経時させた。
【0067】
経時させた上記多層フィルムを200mm×15mmの大きさに切断し、6時間室温乾燥後、ASTM D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。ポリエステルフィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度(N/15mm巾)およびアルミニウム箔とポリフッ化ビニリデンフィルムとの間の剥離強度(N/15mm巾)を、それぞれ5個の試験片の平均値で示した。
【0068】
各剥離強度の平均値に応じて、次の4段階の評価を行なった。
【0069】
A:5N/15mm以上かつラミネート基材破壊(実用上優る)
B:4〜5N/15mmかつラミネート基材と接着剤の界面剥離(実用域)
C:2〜4N/15mmかつラミネート基材と接着剤の界面剥離(実用下限)
D:2N/15mm未満かつ接着剤の凝集破壊
以上の結果を表1に併せて示す。
【0070】
【表1】

表1に示されるように、実施例の接着剤は、耐湿熱性に優れ、長期にわたり接着強度を維持することができた。特に、実施例3および実施例6〜9では良好な結果が得られ、なかでも実施例7〜9のように、ポリエステルポリオールとポリエステルポリウレタンポリオールを組み合わせた接着剤が、温水経時後および高温多湿経時後の接着強度が高く、さらに良好な結果であった。この試験法は加水分解を促進させることから、屋外に放置する屋外暴露試験よりも、耐湿熱性に関しては厳しい試験法と考えられる。したがって、これらの実施例の接着剤は、屋外用途向けの長期耐湿熱性に優れていると考えられる。
【0071】
たとえば、JIS C 8917(結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久試験方法)には、85℃85%RH下で1000時間に耐久すること、という耐湿性試験B−2が定められており、特に過酷な試験方法として知られている。上記性能試験2は、85℃85%RH雰囲気下での2000時間以上(24時間×90日)の経時による耐性を評価したものであるため、この性能試験2で良好な結果が得られたということは、長期の耐湿熱性を有するこれらの実施例の接着剤は、多層構造を有する太陽電池裏面保護シートのシート層間に用いられる接着剤として適した接着剤であることを意味する。
【0072】
太陽電池裏面保護シートがこのような長期耐湿熱試験において、十分な層間接着強度(ラミネート強度)を保持し、シート層間にデラミネーションを発生させないことにより、太陽電池素子の保護、発電効率の維持、さらに太陽電池の寿命延長に寄与することができる。太陽電池の寿命延長は、太陽電池システムの普及につながり、化石燃料以外でのエネルギー確保の観点から、環境保全に寄与することにもなる。
【0073】
本発明に係る接着剤は、建造物など屋外産業用途向け多層積層材(防壁剤、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、証明保護材、自動車部材等)用の接着剤として強い接着強度を提供することができ、屋外暴露時に加水分解等による経時的な接着強度の低下を抑え、長期間にわたって強い接着強度を維持できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とを用いる屋外用ポリウレタン系接着剤であって、
前記主剤が、芳香族二塩基酸40〜80モル%と炭素数9以上の脂肪族二塩基酸20〜60モル%とを含む二塩基酸成分と、炭素数5以上の脂肪族多価アルコール20〜100モル%を含む多価アルコール成分とを含むポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルポリウレタンポリオールからなるポリオール(A)を含み、
前記硬化剤が、イソシアヌレートを重量比で50〜100%含有するポリイソシアネート(B)を含むものである、
屋外用ポリウレタン系接着剤。
【請求項2】
前記主剤がさらに、数平均分子量が1,000〜3,000のビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、請求項1記載の屋外用ポリウレタン系接着剤。
【請求項3】
前記主剤がさらに、シランカップリング剤を0.5〜5重量%含む、請求項1または2記載の屋外用ポリウレタン系接着剤。
【請求項4】
前記ポリオール(A)のエステル結合度が、0.75〜0.99である、請求項1〜3のいずれか1項記載の屋外用ポリウレタン系接着剤。

【公開番号】特開2010−43238(P2010−43238A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293982(P2008−293982)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【特許番号】特許第4416047号(P4416047)
【特許公報発行日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】