説明

屋根構造

【課題】太陽電池モジュールを設置するための広い傾斜面を確保できるとともに、防水性に優れる屋根構造を提供することを目的とする。
【解決手段】建物凸部2の上部と、この建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって所定長さ分進出した部分の陸屋根領域3に陸屋根5が設けられており、建物本体1の上部のうち、建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分の勾配屋根領域4に凹部7aを有する勾配屋根7,7Aが設けられており、パラペット6のうちの陸屋根領域3の一部に立設された部分と、勾配屋根7,7Aの凹部7aの縁部との間には、これらパラペット6と凹部7aの縁部との間を防水する防水手段が設けられている。これにより、建物の外形に合わせて屋根を形成する必要がなく、建物の上部に設けられる屋根を、陸屋根と、比較的単純な勾配屋根とで構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体と、平面視で、この建物本体の外壁面との間に入隅部を介し、該外壁面から外側に突出する建物凸部とを備えた建物の上部に設けられる屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
平面視において略L字型や略凸字型、略凹字型等に建築された建物の外形に合わせて勾配屋根を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に記載の勾配屋根では、平面視矩形状の切妻屋根や寄棟屋根等のような比較的単純な屋根よりも棟の数が増え、屋根形状が複雑化する。そして、屋根形状が複雑化すると、その分、防水処理に手間がかかることになる。
さらに、太陽電池モジュールを屋根に設置する際に、隣り合う屋根間の谷部に、特殊な形状の太陽電池モジュールを用いる場合がある。このような特殊な形状の太陽得電池モジュールを用いて屋根の施工を行うと、一般的な矩形状の太陽電池モジュールを用いて屋根の施工を行う場合に比してコスト高になる、という問題がある。
【0003】
そこで、特許文献2に記載のように、陸屋根上に、この陸屋根の周縁部から間隔をあけて配置された勾配屋根の傾斜面に、一般的な矩形状の太陽電池モジュールを設置したいという要望がある。
このような屋根に太陽電池モジュールを設置すれば、上述のように棟の数が増え、屋根形状が複雑化してしまうようなことはないため、防水処理に係る手間を省くことができる。また、太陽電池モジュールを屋根に設置する際に、特殊な形状の太陽電池モジュールを用いる必要が無いため、コスト高になることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235401号公報
【特許文献2】特開2003−301519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献2に記載のような勾配屋根は陸屋根の上に、この陸屋根の周縁部から間隔をあけて設置されるため、平面視において、傾斜方向下端部と外壁とが略重なるようにして設けられる勾配屋根や、傾斜方向下端部が外壁よりも外側に突出するようにして設けられる勾配屋根に比して傾斜面の面積が狭い。そして、このように傾斜面の面積が狭いので、太陽電池モジュールを設置する数が、建物の大きさの割に少なくなるという問題がある。
そこで、平面視において略L字型や略凸字型、略凹字型等に建築された建物に、太陽電池モジュールが設置される勾配屋根を設ける場合に、上述のような諸問題を解決し得る技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、太陽電池モジュールを設置するための広い傾斜面を確保できるとともに、防水性に優れる屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図12に示すように、建物本体1と、平面視で、この建物本体1の外壁面1aとの間に入隅部2aを介し、該外壁面1aから外側に突出する建物凸部2とを備えた建物の上部に設けられる屋根構造において、
前記建物凸部2の上部と、この建物凸部2の上部に連続し、かつ、この建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって所定長さ分進出した部分とが陸屋根領域3とされており、
前記建物本体1の上部のうち、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分が勾配屋根領域4とされており、
前記陸屋根領域3には、周縁部に所定高さに設定されたパラペット6が立設される陸屋根5が設けられており、
前記勾配屋根領域4には、傾斜方向下端部に、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部に対応して形成された凹部7aを有する勾配屋根7,7Aが設けられており、
前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部に立設された部分と、前記勾配屋根7,7Aの凹部7aの縁部とは近接して配置されており、
前記パラペット6のうちの陸屋根領域3の一部に立設された部分と、前記勾配屋根7,7Aの凹部7aの縁部との間には、これらパラペット6と凹部7aの縁部との間を防水する防水手段(例えば、サイディング20,20a,21、耐水シート28,29、水切り部材35等)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、平面視において略L字型や略凸字型、略凹字型等に建築された建物に勾配屋根を設ける場合に、前記建物凸部2の上部と、この建物凸部2の上部に連続し、かつ、この建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって所定長さ分進出した部分とが陸屋根領域3とされ、この陸屋根領域3に、周縁部に所定高さに設定されたパラペット6が立設される陸屋根5が設けられており、前記建物本体1の上部のうち、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分が勾配屋根領域4とされ、この勾配屋根領域4に、傾斜方向下端部に、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部に対応して形成された凹部7aを有する勾配屋根7,7Aが設けられているので、建物の外形に合わせて屋根を形成する必要がなく、建物の上部に設けられる屋根を、陸屋根5と、比較的単純な勾配屋根7,7Aとで構成することができる。
これによって、建物凸部2を有する建物の外形に合わせて屋根を形成する場合に比して、屋根に設けられる棟の数を格段に少なくすることができるので、屋根形状を単純化することができる。
また、このように棟の数を少なくできるので、前記陸屋根5と勾配屋根7,7Aとの取り合い部分を重点的に防水すればよく、防水処理に係る手間を省略することができる。さらに、前記パラペット6のうちの陸屋根領域3の一部に立設された部分と、前記勾配屋根7,7Aの凹部7aの縁部との間には、これらパラペット6と凹部7aの縁部との間を防水する防水手段が設けられているので、前記陸屋根5と勾配屋根7,7Aとの取り合い部分からの雨水の浸入を確実に防ぐことができる。
また、このように棟の数を少なくし、屋根形状を単純化できるので、前記勾配屋根7,7Aの傾斜面に太陽電池モジュールを設置する際に、従来とは異なり、特殊な形状の太陽電池モジュールを用いる必要がなく、低コストで太陽電池付き屋根の施工を行うことができる。
さらに、前記勾配屋根7,7Aは、従来の陸屋根の周縁部から間隔をあけて設置される勾配屋根とは異なり、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分の勾配屋根領域4に設けられるので、傾斜面の面積を広くすることができ、より多くの数の太陽電池モジュールを設置することができる。
また、前記勾配屋根7,7Aの傾斜方向下端部に凹部7aを形成せず、前記陸屋根5と勾配屋根7,7Aとが噛み合わないような構成とした場合は、例えば前記建物凸部2を、前記建物本体1よりも、前記パラペット6の高さ分低くしなければならない等の問題があり、外観だけでなく、建物の内部空間や間取り等にも影響が及ぶ場合がある。このため、以上のように陸屋根5を勾配屋根7,7A側に進出させ、これら陸屋根5と勾配屋根7,7Aとを噛み合わせる構成とすることによって、外観や建物の内部空間や間取り等に影響を与えることなく屋根の施工を行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1〜図7に示すように、請求項1に記載の屋根構造において、
前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、平面視において近接する勾配屋根7,7Aの傾斜方向に沿って立設された両側部の勾配屋根側端部には、前記近接する勾配屋根7,7Aの傾斜角度と略等しい傾斜面6bを有する傾斜壁6aが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、平面視において近接する勾配屋根7,7Aの傾斜方向に沿って立設された両側部の勾配屋根側端部には、前記近接する勾配屋根7,7Aの傾斜角度と略等しい傾斜面6bを有する傾斜壁6aが設けられているので、前記パラペット6と勾配屋根7,7Aとに連続性を持たせることができる。
これによって、前記勾配屋根7,7Aの傾斜面と、前記傾斜壁6aの傾斜面6bとを面一にすることができるので、これら勾配屋根7,7Aと傾斜壁6aとの間の防水処理を容易かつ確実に行うことができるとともに、前記陸屋根5と勾配屋根7,7Aとの取り合い部分における外観性を向上させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図1,図4〜図11に示すように、請求項1または2に記載の屋根構造において、
前記陸屋根5の周縁部とパラペット6との間に排水溝8が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記陸屋根5の周縁部とパラペット6との間に排水溝8が形成されているので、この排水溝8と排水管(例えば、排水管8a)等とを接続させることで、前記勾配屋根7,7Aから陸屋根5へと流れ込む雨水等や陸屋根5へと降り注いだ雨水等を確実に排水することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1〜図11に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、前記陸屋根領域3の勾配屋根側縁部に沿って設けられる立上りの部分の上端部の高さ位置と、前記パラペット6のその他の部分の上端部の高さ位置とが略等しくなるように設定されており、
前記勾配屋根7は、陸屋根領域3を挟むようにして勾配屋根7の勾配方向に向けて突出する突出部7bを有しており、
これら突出部7bの傾斜方向下端部の高さ位置は、建物本体1の外周の軒先納まりの高さと等しくなるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、前記陸屋根領域3の勾配屋根側縁部に沿って設けられる立上りの部分の上端部の高さ位置と、前記パラペット6のその他の部分の上端部の高さ位置とが略等しくなるように設定されているので、前記勾配屋根7の傾斜角度に関わらず前記陸屋根5を、前記陸屋根領域3に設けることができる。すなわち、例えば現場毎に勾配屋根7の傾斜角度と合うように、その全体の高さや角度を調節しながらパラペット6を設置するような必要がないので、前記勾配屋根7の傾斜角度が何度であっても対応することができる。
また、前記勾配屋根7は、陸屋根領域3を挟むようにして勾配屋根7の勾配方向に向けて突出する突出部7bを有しており、これら突出部7bの傾斜方向下端部の高さ位置は、建物本体1の外周の軒先納まりの高さと等しくなるように設定されているので、前記建物本体1に建物凸部2を設けるとともに、この建物凸部2の上部に前記陸屋根5を設けたとしても、建物外周の軒先の高さが揃うことになる。したがって、建物全体に統一感を持たせることができ、外観性を向上させることが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図1〜図12に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記建物本体1および建物凸部2は、四隅の柱、上梁および下梁から略直方体状に形成された骨組みを有する建物ユニット10,11を複数配置して構成されており、
前記陸屋根5は、略平坦な屋根面を構成するスラブ12と、このスラブ12を支持する支持フレーム13,14と、周縁部に立設される前記パラペット6とを有し、かつ前記陸屋根領域3に対応する建築ユニット11,11上に配置されており、
前記勾配屋根7,7Aは、矩形枠状の小屋パネル15と、この小屋パネル15上に配置される複数の屋根束と、これら複数の屋根束によって所定の角度に傾斜するように支持される屋根パネル16とを有し、かつ前記勾配屋根領域4に対応する建築ユニット10,11上に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記建物本体1および建物凸部2は建物ユニット10,11によって構成されており、前記陸屋根5は、略平坦な屋根面を構成するスラブ12と、このスラブ12を支持する支持フレーム13,14と、周縁部に立設される前記パラペット6とを有し、かつ前記陸屋根領域3に対応する建築ユニット11,11上に配置されており、前記勾配屋根7,7Aは、矩形枠状の小屋パネル15と、この小屋パネル15上に配置される複数の屋根束と、これら複数の屋根束によって所定の角度に傾斜するように支持される屋根パネル16とを有し、かつ前記勾配屋根領域4に対応する建築ユニット10,11上に配置されているので、前記建物ユニット10,11を工場等で予め製造しておき、建設現場において、前記建物ユニット10,11や、陸屋根5および勾配屋根7,7Aを構成する各部材をクレーンで順次吊り込む作業を行うことにより、前記建物本体1および建物凸部2と、陸屋根5と、勾配屋根7,7Aとを建築することができ、建設現場で異種の工法作業を行う必要がなく、作業の容易化を図ることができる。したがって、工期の短縮、コストダウン等を達成できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図1〜図12に示すように、請求項5に記載の屋根構造において、
前記建物ユニット10,11の製作時の基準となる長さの単位を1モジュールと設定した時、前記陸屋根領域3のうち、前記建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって進出した部分の進出方向の長さは0.5モジュールに設定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、前記建物ユニット10,11の製作時の基準となる長さの単位を1モジュールと設定した時、前記陸屋根領域3のうち、前記建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって進出した部分の進出方向の長さは0.5モジュールに設定されているので、前記陸屋根5の前記勾配屋根7,7A側に進出する分の長さは基準化されることになる。これによって、前記建物凸部2の上部の大きさを決めることで、前記陸屋根5の大きさを決定することができるので、前記建物凸部2の上部に陸屋根5を構成する各部材を適宜配置するだけで、前記勾配屋根7,7A側に進出する部分を、前記建物本体1の上部に確実かつ正確に配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、平面視において略L字型や略凸字型、略凹字型等に建築された建物に勾配屋根を設ける場合に、前記建物凸部の上部と、この建物凸部の上部に連続し、かつ、この建物凸部の上部側から建物本体の上部側に向かって所定長さ分進出した部分とが陸屋根領域とされ、この陸屋根領域に、周縁部に所定高さに設定されたパラペットが立設される陸屋根が設けられており、前記建物本体の上部のうち、前記建物凸部の上部側から進出する陸屋根領域の一部を除く部分が勾配屋根領域とされ、この勾配屋根領域に、傾斜方向下端部に、前記建物凸部の上部側から進出する陸屋根領域の一部に対応して形成された凹部を有する勾配屋根が設けられているので、建物の外形に合わせて屋根を形成する必要がなく、建物の上部に設けられる屋根を、陸屋根と、比較的単純な勾配屋根とで構成することができる。
これによって、建物凸部を有する建物の外形に合わせて屋根を形成する場合に比して、屋根に設けられる棟の数を格段に少なくすることができるので、屋根形状を単純化することができる。
また、このように棟の数を少なくできるので、前記陸屋根と勾配屋根との取り合い部分を重点的に防水すればよく、防水処理に係る手間を省略することができる。さらに、前記パラペットのうちの陸屋根領域の一部に立設された部分と、前記勾配屋根の凹部の縁部との間には、これらパラペットと凹部の縁部との間を防水する防水手段が設けられているので、前記陸屋根と勾配屋根との取り合い部分からの雨水の浸入を確実に防ぐことができる。
また、このように棟の数を少なくし、屋根形状を単純化できるので、前記勾配屋根の傾斜面に太陽電池モジュールを設置する際に、従来とは異なり、特殊な形状の太陽電池モジュールを用いる必要がなく、低コストで太陽電池付き屋根の施工を行うことができる。
さらに、前記勾配屋根は、従来の陸屋根の周縁部から間隔をあけて設置される勾配屋根とは異なり、前記建物凸部の上部側から進出する陸屋根領域の一部を除く部分の勾配屋根領域に設けられるので、傾斜面の面積を広くすることができ、より多くの数の太陽電池モジュールを設置することができる。
また、前記勾配屋根の傾斜方向下端部に凹部を形成せず、前記陸屋根と勾配屋根とが噛み合わないような構成とした場合は、例えば前記建物凸部を、前記建物本体よりも、前記パラペットの高さ分低くしなければならない等の問題があり、外観だけでなく、建物の内部空間や間取り等にも影響が及ぶ場合がある。このため、以上のように陸屋根を勾配屋根側に進出させ、これら陸屋根と勾配屋根とを噛み合わせる構成とすることによって、外観や建物の内部空間や間取り等に影響を与えることなく屋根の施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の屋根構造を示す平面図であり、(a)は切妻屋根を示し、(b)は寄棟屋根を示している。
【図2】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図3】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図4】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図5】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図6】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図7】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図8】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図9】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図10】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図11】本発明の屋根構造の施工手順を示す斜視図である。
【図12】本発明の屋根構造における陸屋根のパラペットと勾配屋根との取り合い部分を示しており、(a)は側断面図であり、(b)はA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1(a),(b)は本発明に係る屋根構造の一例を示す平面図である。
図1(a),(b)において符号1は建物本体を示し、符号2は建物凸部を示す。この建物凸部2は、前記建物本体1の外壁面1aとの間に入隅部2aを介し、該外壁面1aから外側に突出するようにして設けられている。そして、これら建物本体1および建物凸部2の上部に屋根が設けられている。
この屋根は、前記建物凸部2の上部と建物本体1の上部の一部とに設けられる陸屋根5と、前記建物本体1の上部に設けられる勾配屋根7,7Aとを備えている。
また、図1(a)に示す勾配屋根7は切妻屋根であり、図1(b)に示す勾配屋根7Aは寄棟屋根であり、比較的単純な構造の屋根が採用されている。なお、以下、図1(a)に示す切妻屋根形状の勾配屋根7に基づいて説明を行うものとする。
【0022】
また、前記建物本体1および建物凸部2は、四隅の柱と、これらの柱の上端部同士を結合する4本の上梁と、下端部同士を結合する4本の下梁とを含む骨組みを有し、この骨組みが略直方体状に形成された金属製の建物ユニット10,11によって構成されている。すなわち、前記建物ユニット10,11の上梁および下梁は、前記柱を介して矩形枠状に組まれている。
さらに、図示しないが、上梁は各2本の長辺上梁および短辺上梁で構成され、下梁は各2本の長辺下梁および短辺下梁で構成されている。また、2本の長辺上梁間、および2本の長辺下梁間には、複数本の天井小梁、複数本の根太がそれぞれ架け渡されている。
【0023】
そして、図1(a)に示すように、建物の建物凸部2が形成されない部分には、建物ユニット10が配置され、建物の建物凸部2が形成される部分には、建物ユニット11が配置されている。さらに、これら建物ユニット10,11は、その長辺同士が隣り合うようにして並設されており、平面視において略凸字型に形成されている。
【0024】
前記陸屋根5は、前記建物凸部2の上部と、この建物凸部2の上部に連続し、かつ、この建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって所定長さ分進出した部分とからなる陸屋根領域3に設けられている。
また、この陸屋根5は、図4に示すように、略平坦な屋根面を構成するスラブ12と、このスラブ12を支持する支持フレーム13,14と、周縁部に立設されるパラペット6とを有している。
【0025】
前記スラブ12としてはALC(autoclaved light concrete;高温高圧蒸気養生の軽量気泡コンクリート)板が採用されている。
また、前記支持フレーム13は、前記建物ユニット11の長辺上梁の上面に沿って設けられており、前記支持フレーム14は、前記陸屋根領域3の勾配屋根側の辺と、前記陸屋根領域3の外部側の辺とに沿って、互いに平行に設けられている。つまり、これら支持フレーム14は、前記支持フレーム13に直交するようにして設けられている。
【0026】
そして、これら支持フレーム13と支持フレーム14とで形成される枠内に前記スラブ12が設けられている。
この時、前記スラブ12は所定の水勾配となるように支持されている。また、このように前記スラブ12を所定の水勾配となるように支持すると同時に、図1(a)および図4に示すように、前記陸屋根5の両側縁部とパラペット6との間に排水溝8を形成することで、前記勾配屋根7から陸屋根5へと流れ込む雨水等や陸屋根5へと降り注いだ雨水等を確実に排水することができ、好ましい。
【0027】
また、この排水溝8は、排水溝8に流れ込んだ雨水等をさらに外部に排出する排水管8aと接続されている。
また、この排水溝8は、図1(a)に示すように、前記スラブ12の両側縁部を直線状に切り欠くことによって形成された切欠部12aに嵌め込まれている。
なお、この排水溝8は、前記スラブ12の両側縁部に設けられるものに限られず、前記スラブ12の勾配屋根7とは反対側の縁部に沿って設けるものとしてもよい。
【0028】
また、前記パラペット6は、前記陸屋根5の周縁部に沿って立設された壁体であり、図11に示すように、その上部に、後述する笠木38が設けられる。この笠木38の下部とパラペット6との隙間には陸屋根5の下方の空間へと通じる換気孔が設けられており、換気性の向上を図ることができるようになっている。
また、このパラペット6のうち、平面視において、勾配屋根7の傾斜方向に沿って立設された両側部の勾配屋根側端部には、図2,3,7に示すように、前記勾配屋根7の傾斜角度と略等しい傾斜面6bを有する傾斜壁6aが設けられており、前記パラペット6と勾配屋根7とに連続性を持たせることができるようになっている。
【0029】
このパラペット6は、図2および図3に示すように、前記支持フレーム13の上面に沿って設けられるとともに前記建物凸部2の上方に位置する腰壁フレーム17と、前記支持フレーム13の上面に沿って設けられるとともに前記建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって所定長さ分進出した部分の上方に位置し、前記傾斜壁6aを構成する特殊腰壁フレーム18と、前記支持フレーム14の上面に沿って設けられる防水立上りフレーム19とを骨組みとする。そして、これら腰壁フレーム17、特殊腰壁フレーム18、防水立上りフレーム19の表面に、後述するサイディング20,20a,21等の外装材が取り付けられるとともに、防水処理が施されている。
【0030】
なお、前記腰壁フレーム17、特殊腰壁フレーム18、防水立上りフレーム19は、水平・垂直または斜めに設けられる金属製の軸組によって枠状に形成されたものである。
また、前記腰壁フレーム17は、前記支持フレーム13の上面の幅寸法と略等しい幅寸法に設定されている。
また、前記特殊腰壁フレーム18は、前記支持フレーム13の上面の幅寸法よりも大きな幅寸法に設定されており、その大きい分が、前記支持フレーム13よりも外側に突出するようにして配置されている。
また、前記防水立上りフレーム19は、前記支持フレーム14の上面のうち、陸屋根側に隙間をあけるようにして勾配屋根側に配置されている。この支持フレーム14の上面の陸屋根側には前記スラブ12の端部が載せられるようになっている。
【0031】
また、このパラペット6のうち、前記陸屋根領域3の勾配屋根側縁部に沿って設けられる立上りの部分の上端部の高さ位置と、前記パラペット6のその他の部分の上端部の高さ位置とが略等しくなるように設定されている。
すなわち、前記腰壁フレーム17の上端部の高さ位置と、前記防水立上りフレーム19の上端部の高さ位置とが略等しくなるように設定されている。また、このように周方向に略等しい高さに設定されたパラペット6と、勾配屋根7の傾斜角度とは、所定角度の傾斜面6bを有する前記傾斜壁6aによって合わせることができるようになっている。
【0032】
前記勾配屋根7は、前記建物本体1の上部のうち、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分である勾配屋根領域4に設けられている。
本実施の形態の勾配屋根7は上述のように切妻屋根であり、この勾配屋根7の棟から傾斜方向下端部までの長さは、平面視において、前記勾配屋根7の傾斜方向下端部が、前記建物本体1の外壁1aの上端部よりも若干外側に突出する長さに設定されている。
なお、勾配屋根7の棟から傾斜方向下端部までの長さは、これに限られるものではなく、前記勾配屋根7の傾斜方向下端部と、前記建物本体1の外壁1aの上端部とが略重なる程度の長さに設定されていてもよい。
【0033】
また、この勾配屋根7は、図6および図7に示すように、矩形枠状の小屋パネル15と、この小屋パネル15上に配置される複数の屋根束と、これら複数の屋根束によって所定の角度に傾斜するように支持される屋根パネル16とを有している。
【0034】
前記小屋パネル15は、前記建物ユニット10の上梁と略等しい大きさに形成された矩形枠状体であり、この建物ユニット10の上梁に沿って設けられている。
そして、この小屋パネル15の上面には、図示はしないが、前記勾配屋根7の棟の下方に位置する箇所に最も上下に長い屋根束が配置されており、勾配屋根7の傾斜方向下端部に向かうにつれて、徐々に上下に短い屋根束が配置されている。
また、このように配置された複数の屋根束上に屋根パネル16を設けることによって、勾配屋根7の傾斜面を形成できるようになっている。
【0035】
なお、前記勾配屋根7の棟の下方には、前記建物ユニット10だけでなく、前記建物ユニット11も配置されているため、前記複数の屋根束は、図示はしないが、前記小屋パネル15上だけでなく、前記建物ユニット11の上部に設けられる支持フレーム13の上面にも設けられているものとする。
また、前記屋根パネル16と、前記建物本体1の外周の上端部との間に設けられる屋根束は、図示はしないが、傾斜面を有する三角形状に形成されたものが用いられている。
【0036】
また、前記勾配屋根7は、図1(a)及び図7〜図11に示すように、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域5の一部に対応して形成された凹部7aを有している。
すなわち、この凹部7aは、前記勾配屋根7を構成する屋根パネル16のうち、前記建物ユニット11の上方に位置するとともに、勾配屋根7の棟よりも陸屋根5側に設けられる屋根パネル16の傾斜方向の長さを、その他の屋根パネル16の傾斜方向の長さよりも短くすることによって形成されている。
さらに、この勾配屋根7は、陸屋根領域3を挟むようにして勾配屋根7の勾配方向に向けて突出する突出部7bを有している。そして、これら突出部7bの傾斜方向下端部の高さ位置は、建物本体1の外周の軒先納まりの高さと等しくなるように設定されている。
なお、実施例では、前記突出部7bの間に、陸屋根領域3を囲むようにして凹部7aが形成されている。
【0037】
そして、この凹部7aの縁部と、前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域5の一部に立設された部分とは近接して配置されており、これら陸屋根5と勾配屋根7とは互いに噛み合うような構成となる。
例えば、これとは反対に、前記勾配屋根7の傾斜方向下端部に凹部7aを形成せず、前記陸屋根5と勾配屋根7とが噛み合わないような構成とした場合は、外観だけでなく、建物の内部空間や間取り等にも影響が及ぶ場合があり、好ましくない。したがって、このように陸屋根5を勾配屋根7側に進出させれば、例えば前記建物凸部2の高さを低くする等の不具合が生じることを防ぐことができるので、建物の内部空間や間取り等に悪影響を与えることなく屋根の施工を行うことができる。
【0038】
なお、前記建物ユニット10,11の製作時の基準となる長さの単位を1モジュールと設定されている。前記陸屋根5および勾配屋根7、その他の建物の構成要素も、この単位に基づいて設計・製造されており、製造時や施工時におけるシステム化が図られている。
そして、前記陸屋根領域3のうち、前記建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって進出した部分の進出方向の長さは0.5モジュールに設定されている。これによって、前記陸屋根5の前記勾配屋根7側に進出する分の長さは基準化されることになるので、前記建物凸部2の上部の大きさを決めることで、前記陸屋根5の大きさを決定することができる。したがって、前記建物凸部2の上部に陸屋根5を構成する各部材を適宜配置するだけで、前記勾配屋根7側に進出する部分を、前記建物本体1の上部に確実かつ正確に配置することができる。
【0039】
そして、前記パラペット6のうちの陸屋根領域3の一部に立設された部分と、前記勾配屋根7の凹部7aの縁部との間には、これらパラペット6と凹部7aの縁部との間を防水する防水手段が設けられている。
以下、この防水手段と、この防水手段を用いた防水の手順と、この防水の手順を含む屋根の施工方法について説明する。
【0040】
まず、図2に示すように、前記建物ユニット11の上面に沿って設けられた支持フレーム13,14の上面に、前記腰壁フレーム17、特殊腰壁フレーム18、防水立上りフレーム19をそれぞれ設置する。
【0041】
続いて、図3に示すように、前記腰壁フレーム17の陸屋根側面および特殊腰壁フレーム18の陸屋根側面にサイディング20を取り付け、前記防水立上りフレーム19の陸屋根側面にサイディング20aを取り付け、前記特殊腰壁フレーム18の外側面にサイディング21を取り付ける。
前記サイディング20は、前記腰壁フレーム17の陸屋根側面および特殊腰壁フレーム18の陸屋根側面に対応した形状となっており、前記サイディング20aは矩形状に形成されている。また、前記サイディング21は、前記特殊腰壁フレーム18の外側面に対応した形状となっている。
さらに、前記腰壁フレーム17および支持フレーム13の外側面に、所定の厚みに設定されたパルク(PALC;precast autoclaved light weight concrete;プレキャストオートクレーブド軽量気泡コンクリート)22を取り付ける。
このパルク22は、このパルク22の前記特殊腰壁フレーム18側を座堀加工することによって、前記サイディング21が取り付けられた状態の特殊腰壁フレーム18が前記支持フレーム13から外側に突出する分と略等しい厚みに設定された座堀加工部22aを備えている。したがって、この座堀加工部22aの表面と、前記特殊腰壁フレーム18のサイディング21の表面とは面一になっている。
【0042】
続いて、図4に示すように、前記支持フレーム13,14とで形成される枠内に、前記スラブ12を、所定の水勾配となるように設ける。なお、このスラブ12の下方には、このスラブ12を支持する支持部材を設けるようにしてもよい。その際、この支持部材は、前記建物ユニット11の天井小梁等に固定する。
さらに、前記スラブ12とパラペット6との間に、前記排水溝8を設ける。
ここで、前記排水溝8は、前記パラペット6のサイディング20に当接する当接板部8bと、この当接板部8bと一体形成されるとともに前記スラブ12の切欠部12aに嵌め込まれる断面コ字型の溝本体8cと、この溝本体8cと一体形成されるとともに前記スラブ12の切欠部12aの縁部に係止する係止部8dとを備えるものである。
【0043】
さらに、前記パルク22の上面と前記腰壁フレーム17の上面とに跨って、これらパルク22および腰壁フレーム17の上部に被設される笠木38を取り付けるための笠木下地材23を、パラペット6の両側部と外側縁部とに沿ってコ字状に取り付ける。
この笠木下地材23は例えば金属製のものが用いられており、前記腰壁フレーム17の上面と、この腰壁フレーム17の上面よりも低い位置にあるパルク22の上面との段差を吸収できる形状に形成されている。
【0044】
続いて、図5に示すように、前記スラブ12の上面に、前記排水溝8の係止部8dの上から平場シート25を敷設する。この平場シート25は、いわゆる防水シートであり、前記スラブ12の上面全面にわたって敷設される。
また、前記パラペット6の陸屋根側面と上面、および前記傾斜壁6aの傾斜面6bとにわたって立上りシート24を貼り付ける。この立上りシート24は、いわゆる防水シートであり、前記パラペット6の周方向に沿って隙間なく貼り付けられる。
【0045】
続いて、図6に示すように、前記パルク22の上面と前記腰壁フレーム17の上面とに跨るようにして、前記立上りシート24の上から耐水シート26を貼り付ける。また、この耐水シート26のパルク22側端部に沿ってウレタンコーキングを塗布し、水密性を高める。
なお、耐水シート26は、いわゆる防水シートであり、ブチルゴム製のものが用いられているが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0046】
続いて、前記小屋パネル15を、クレーンによって吊りあげ、前記建物ユニット11上の支持フレーム13に隣接するようにして配置する。
この時、前記小屋パネル15の陸屋根側のコーナ部分が、前記傾斜壁6aの下面に入り込むようにする。
また、図示はしないが、この小屋パネル15および支持フレーム14等の上面に、屋根パネル16を支持するための複数の屋根束を設けておく。
【0047】
さらに、前記防水立上りフレーム19の上面に、この防水立上りフレーム19の上面の長さ方向に沿って、前記立上りシート24を介して目地材27を取り付けておく。
この目地材27は、前記防水立上りフレーム19と、この防水立上りフレーム19の上方に配置される破風下地33(後述する)との間に形成される目地を埋めるためのものである。
【0048】
続いて、図7に示すように、前記勾配屋根領域4に勾配屋根7を設ける。すなわち、前記建物ユニット10,11上の小屋パネル15および支持フレーム14等の上面に設けられた複数の屋根束によって支持するようにして屋根パネル16を設ける。
なお、上述のように、この屋根パネル16のうち、前記建物ユニット11の上方に位置するとともに、勾配屋根7の棟よりも陸屋根5側に設けられる屋根パネル16の傾斜方向の長さは、その他の屋根パネル16の傾斜方向の長さよりも短く形成されているので、該屋根パネル16の傾斜方向下端部側に前記凹部7aを形成することができる。
この長さの短い屋根パネル16の傾斜方向下端部は、前記パラペット6の傾斜壁6aの勾配屋根側端面に近接して設けられる。また、この長さの短い屋根パネル16に隣接するとともに、前記建物ユニット10の上方に位置する屋根パネル16は、傾斜方向下端部が、前記パラペット6の傾斜壁6aの外側面のサイディング21表面と、前記パルク22の座堀加工部22aの表面に当接するようにして設けられている。
なお、図7および図8に示すように、前記長さの短い屋根パネル16を含む屋根パネル16の上面は、互いに隣り合う屋根パネル16の上面と連続するようにして設けられている。
【0049】
続いて、図8に示すように、前記長さの短い屋根パネル16に隣接するとともに、前記建物ユニット10の上方に位置する屋根パネル16の傾斜方向下端部の上面と、前記パラペット6の特殊腰壁フレーム18の外側面のサイディング21表面と、前記パルク22の座堀加工部22aの表面とにわたって、耐水シート28を貼り付ける。
また、前記長さの短い屋根パネル16の傾斜方向下端部と、この長さの短い屋根パネル16に隣接する屋根パネル16の上面と、前記傾斜壁6aの傾斜面6bとにわたって、耐水シート29を貼り付ける。
その後、前記屋根パネル16の傾斜方向下端部の上面に、屋根パネル16の幅方向に沿って軒先耐水シート30を貼り付ける。
なお、これら耐水シート28,29,30は、いわゆる防水シートであり、前記耐水シート26と同様にブチルゴム製とするが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0050】
続いて、図9に示すように、前記屋根パネル16の上面に、ルーフィング31を敷設する。なお、このルーフィング31は、アスファルトルーフィングである。
さらに、前記屋根パネル16の傾斜方向下端部の垂直面に、この垂直面の長さ方向に沿って破風下地33を取り付ける。
また、前記長さの短い屋根パネル16を除く屋根パネル16の傾斜方向下端部には、この屋根パネル16の上面と前記ルーフィング31との間に、前記破風下地33よりも前方に突出する金属製の軒先水切り32を設ける。
また、前記パルク22の座堀加工部22aの表面と、前記耐水シート26との上から、後述する水切り部材35の下地となる押し縁合板34を取り付けておく。
【0051】
続いて、図10および図11に示すように、前記パラペット6と、このパラペット6の外側に設けられる屋根パネル16との取り合い部分をカバーする水切り部材35を、該取り合い部分に取り付ける。この水切り部材35は、屋根パネル16の上面に固定されるカバー下地36と、このカバー下地36の上から被せられるカバー材37とを備えている。
【0052】
まず、前記カバー下地36を、このカバー下地36の固定板部36aを前記屋根パネル16の上面に載せるとともに、パラペット側板部36bを前記押し縁合板34に当接させるようにして、前記屋根パネル16に設置する。この時、このカバー下地36の軒先側板部36cは、前記屋根パネル16の傾斜方向下端部よりも前方に突出するようにする。
続いて、前記固定板部36aに一体的に設けられた押さえ板部36d,36dの孔部から釘等を打ち込むことによって、前記カバー下地36を前記屋根パネル16に固定する。
【0053】
続いて、前記カバー材37を、前記カバー下地36の上から被せるようにして設ける。
その際は、まず、このカバー材37の固定板部37aを前記カバー下地36の固定板部36aの上面に重ねるようにして、かつ前記傾斜壁6aの傾斜面6bおよび屋根パネル16の上面に載せる。
さらに、この固定板部37aに一体的に設けられるカバー本体37bを、前記パラペット6と傾斜壁6aとの取り合い部分に被さるようにして設ける。
また、この時、このカバー材37の陸屋根側板部37cによって、前記傾斜壁6aの陸屋根側面をカバーする。
そして、前記固定板部37aに一体的に設けられた押さえ板部37dの孔部から釘等を打ち込むことによって、前記カバー材37を前記屋根パネル16に固定する。
【0054】
続いて、図11に示すように、前記パルク22の上面と前記腰壁フレーム17の上面とに跨って取り付けられた笠木下地材23の上から笠木38を被設する。
この笠木38の勾配屋根側端部は、前記カバー本体37bに当接し、これら笠木38とカバー本体37bとの当接部分にはシーリング材を塗布して水密性を高める。
また、前記長さの短い屋根パネル16の傾斜方向下端部には、この屋根パネル16の上面と前記ルーフィング31との間に、前記破風下地33よりも前方に突出する金属製の軒先水切り39を設ける。
【0055】
続いて、図12(a)に示すように、前記ルーフィング31を施した屋根パネル16の上面に屋根材40を敷設する。
この時、図12(b)に示すように、前記カバー材37の固定板部37aの陸屋根側縁部に、該陸屋根側縁部に沿ってけらば水切り41が設けるようにする。
そして、前記建物ユニット10の上方に位置する屋根パネル16の傾斜方向下端部の陸屋根側に配置された屋根材40の陸屋根側縁部を、このけらば水切り41の突条の下方に差し込むようにする。
さらに、図12(a)に示すように、前記屋根パネル16の傾斜方向下端部の破風下地33の表面には、この破風下地33の長さ方向に沿って軒樋42を取り付ける。
以上のようにして、前記陸屋根5と勾配屋根7との取り合い部分の防水を確実に行うことができるとともに屋根を施工することができる。
【0056】
本実施の形態によれば、平面視において略L字型や略凸字型、略凹字型等に建築された建物に勾配屋根を設ける場合に、前記建物凸部2の上部と、この建物凸部2の上部に連続し、かつ、この建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって所定長さ分進出した部分とが陸屋根領域3とされ、この陸屋根領域3に、周縁部に所定高さに設定されたパラペット6が立設される陸屋根5が設けられており、前記建物本体1の上部のうち、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分が勾配屋根領域4とされ、この勾配屋根領域4に、傾斜方向下端部に、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部に対応して形成された凹部7aを有する勾配屋根7が設けられているので、建物の外形に合わせて屋根を形成する必要がなく、建物の上部に設けられる屋根を、陸屋根5と、比較的単純な勾配屋根7とで構成することができる。
これによって、建物凸部2を有する建物の外形に合わせて屋根を形成する場合に比して、屋根に設けられる棟の数を格段に少なくすることができるので、屋根形状を単純化することができる。
【0057】
また、このように棟の数を少なくできるので、前記陸屋根5と勾配屋根7との取り合い部分を重点的に防水すればよく、防水処理に係る手間を省略することができる。さらに、前記パラペット6のうちの陸屋根領域3の一部に立設された部分と、前記勾配屋根7の凹部7aの縁部との間には、これらパラペット6と凹部7aの縁部との間を防水する防水手段が設けられているので、前記陸屋根5と勾配屋根7との取り合い部分からの雨水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0058】
また、このように棟の数を少なくし、屋根形状を単純化できるので、前記勾配屋根7の傾斜面に太陽電池モジュールを設置する際に、従来とは異なり、特殊な形状の太陽電池モジュールを用いる必要がなく、低コストで太陽電池付き屋根の施工を行うことができる。
【0059】
さらに、前記勾配屋根7は、従来の陸屋根の周縁部から間隔をあけて設置される勾配屋根とは異なり、前記建物凸部2の上部側から進出する陸屋根領域3の一部を除く部分の勾配屋根領域4に設けられるので、傾斜面の面積を広くすることができ、より多くの数の太陽電池モジュールを設置することができる。
【0060】
また、前記勾配屋根7の傾斜方向下端部に凹部7aを形成せず、前記陸屋根5と勾配屋根7とが噛み合わないような構成とした場合は、例えば前記建物凸部2を、前記建物本体1よりも、前記パラペット6の高さ分低くしなければならない等の問題があり、外観だけでなく、建物の内部空間や間取り等にも影響が及ぶ場合がある。このため、以上のように陸屋根5を勾配屋根7側に進出させ、これら陸屋根5と勾配屋根7とを噛み合わせる構成とすることによって、外観や建物の内部空間や間取り等に影響を与えることなく屋根の施工を行うことができる。
【0061】
また、前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、平面視において近接する勾配屋根7の傾斜方向に沿って立設された両側部の勾配屋根側端部には、前記近接する勾配屋根7の傾斜角度と略等しい傾斜面6bを有する傾斜壁6aが設けられているので、前記パラペット6と勾配屋根7とに連続性を持たせることができる。
これによって、前記勾配屋根7の傾斜面と、前記傾斜壁6aの傾斜面6bとを面一にすることができるので、これら勾配屋根7と傾斜壁6aとの間の防水処理を容易かつ確実に行うことができるとともに、前記陸屋根5と勾配屋根7との取り合い部分における外観性を向上させることができる。
【0062】
また、前記陸屋根5の周縁部に立設されたパラペット6のうち、前記陸屋根領域3の勾配屋根側縁部に沿って設けられる立上りの部分の上端部の高さ位置と、前記パラペット6のその他の部分の上端部の高さ位置とが略等しくなるように設定されているので、前記勾配屋根7の傾斜角度に関わらず前記陸屋根5を、前記陸屋根領域3に設けることができる。すなわち、例えば現場毎に勾配屋根7の傾斜角度と合うように、その全体の高さや角度を調節しながらパラペット6を設置するような必要がないので、前記勾配屋根7の傾斜角度が何度であっても対応することができる。
また、前記勾配屋根7は、陸屋根領域3を挟むようにして勾配屋根7の勾配方向に向けて突出する突出部7bを有しており、これら突出部7bの傾斜方向下端部の高さ位置は、建物本体1の外周の軒先納まりの高さと等しくなるように設定されているので、前記建物本体1に建物凸部2を設けるとともに、この建物凸部2の上部に前記陸屋根5を設けたとしても、建物外周の軒先の高さが揃うことになる。したがって、建物全体に統一感を持たせることができ、外観性を向上させることが可能となる。
【0063】
また、建物全体をユニット工法によって施工するので、前記建物ユニット10,11を工場等で予め製造しておき、建設現場において、前記建物ユニット10,11や、陸屋根5および勾配屋根7を構成する各部材をクレーンで順次吊り込む作業を行うことにより、前記建物本体1および建物凸部2と、陸屋根5と、勾配屋根7とを建築することができ、建設現場で異種の工法作業を行う必要がなく、作業の容易化を図ることができる。したがって、工期の短縮、コストダウン等を達成できる。
さらに、前記建物ユニット10,11の製作時の基準となる長さの単位を1モジュールと設定した時、前記陸屋根領域3のうち、前記建物凸部2の上部側から建物本体1の上部側に向かって進出した部分の進出方向の長さは0.5モジュールに設定されているので、前記陸屋根5の前記勾配屋根7側に進出する分の長さは基準化されることになる。これによって、前記建物凸部2の上部の大きさを決めることで、前記陸屋根5の大きさを決定することができるので、前記建物凸部2の上部に陸屋根5を構成する各部材を適宜配置するだけで、前記勾配屋根7側に進出する部分を、前記建物本体1の上部に確実かつ正確に配置することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 建物本体
2 建物凸部
3 陸屋根領域
4 勾配屋根領域
5 陸屋根
6 パラペット
7 勾配屋根
7a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体と、平面視で、この建物本体の外壁面との間に入隅部を介し、該外壁面から外側に突出する建物凸部とを備えた建物の上部に設けられる屋根構造において、
前記建物凸部の上部と、この建物凸部の上部に連続し、かつ、この建物凸部の上部側から建物本体の上部側に向かって所定長さ分進出した部分とが陸屋根領域とされており、
前記建物本体の上部のうち、前記建物凸部の上部側から進出する陸屋根領域の一部を除く部分が勾配屋根領域とされており、
前記陸屋根領域には、周縁部に所定高さに設定されたパラペットが立設される陸屋根が設けられており、
前記勾配屋根領域には、傾斜方向下端部に、前記建物凸部の上部側から進出する陸屋根領域の一部に対応して形成された凹部を有する勾配屋根が設けられており、
前記陸屋根の周縁部に立設されたパラペットのうち、前記建物凸部の上部側から進出する陸屋根領域の一部に立設された部分と、前記勾配屋根の凹部の縁部とは近接して配置されており、
前記パラペットのうちの陸屋根領域の一部に立設された部分と、前記勾配屋根の凹部の縁部との間には、これらパラペットと凹部の縁部との間を防水する防水手段が設けられていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造において、
前記陸屋根の周縁部に立設されたパラペットのうち、平面視において近接する勾配屋根の傾斜方向に沿って立設された両側部の勾配屋根側端部には、前記近接する勾配屋根の傾斜角度と略等しい傾斜面を有する傾斜壁が設けられていることを特徴とする屋根構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の屋根構造において、
前記陸屋根の周縁部とパラペットとの間に排水溝が形成されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記陸屋根の周縁部に立設されたパラペットのうち、前記陸屋根領域の勾配屋根側縁部に沿って設けられる立上りの部分の上端部の高さ位置と、前記パラペットのその他の部分の上端部の高さ位置とが略等しくなるように設定されており、
前記勾配屋根は、陸屋根領域を挟むようにして勾配屋根の勾配方向に向けて突出する突出部を有しており、
これら突出部の傾斜方向下端部の高さ位置は、建物本体の外周の軒先納まりの高さと等しくなるように設定されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記建物本体および建物凸部は、四隅の柱、上梁および下梁から略直方体状に形成された骨組みを有する建物ユニットを複数配置して構成されており、
前記陸屋根は、略平坦な屋根面を構成するスラブと、このスラブを支持する支持フレームと、周縁部に立設される前記パラペットとを有し、かつ前記陸屋根領域に対応する建築ユニット上に配置されており、
前記勾配屋根は、矩形枠状の小屋パネルと、この小屋パネル上に配置される複数の屋根束と、これら複数の屋根束によって所定の角度に傾斜するように支持される屋根パネルとを有し、かつ前記勾配屋根領域に対応する建築ユニット上に配置されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項6】
請求項5に記載の屋根構造において、
前記建物ユニットの製作時の基準となる長さの単位を1モジュールと設定した時、前記陸屋根領域のうち、前記建物凸部の上部側から建物本体の上部側に向かって進出した部分の進出方向の長さは0.5モジュールに設定されていることを特徴とする屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−117137(P2011−117137A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273360(P2009−273360)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)