説明

屋根用落雪防止具

【課題】金属製平板葺き屋根や金属瓦棒葺き屋根、瓦屋根のように各種の屋根構造により異なる屋根の軒先部の嵌合寸法に対応して掛止部材を屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節することができると共に移動調節機構により掛止部材を落雪防止体に対して屋根勾配方向に移動調節することができる。
【解決手段】建物Tの屋根材Mの上面Fに載置可能な落雪防止体1に落雪Sを止めるための雪止め部2を突設し、雪止め部に落雪の融雪水が通過可能な網状体3を配設し、落雪防止体の軒先側に屋根の軒先部Kに嵌合可能な掛止部4をもつ掛止部材5を設けてなり、掛止部材を落雪防止体に対して屋根の軒先部の嵌合寸法Gに対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節可能な上下調節機構9及び掛止部材を落雪防止体に対して屋根勾配方向に移動調節可能な移動調節機構15を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば建物の屋根材の軒先側の上面に載置して用いられる屋根用落雪防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種屋根用落雪防止具として、建物の屋根材の上面に載置可能な落雪防止体に落雪を止めるための雪止め部を突設し、該雪止め部に落雪の融雪水が通過可能な網状体を配設し、該落雪防止体の軒先側に屋根の軒先部に嵌合可能な掛止部をもつ掛止部材を設けてなる構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−202590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら従来構造の場合、金属平板葺き屋根、金属瓦棒葺き屋根、瓦屋根等の各種の屋根構造によって異なる屋根の上面から軒先部の底部との寸法である嵌合寸法や屋根の軒先部に対する落雪防止具の配置位置に対する融通性が低いことがあり、それだけ、落雪防止体を屋根上に確実に固定することができなかったり、屋根上に載置した落雪防止体の雨風等によるばたつきが生じたりすることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、建物の屋根材の上面に載置可能な落雪防止体に落雪を止めるための雪止め部を突設し、該雪止め部に落雪の融雪水が通過可能な網状体を配設し、該落雪防止体の軒先側に屋根の軒先部に嵌合可能な掛止部をもつ掛止部材を設けてなり、上記掛止部材を上記落雪防止体に対して上記屋根の軒先部の嵌合寸法に対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節可能な上下調節機構及び該掛止部材を該落雪防止体に対して屋根勾配方向に移動調節可能な移動調節機構を設けてなることを特徴とする屋根用落雪防止具にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記上下調節機構として、上記落雪防止体に取付部材を取り付け、該取付部材に上記掛止部材を上記屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節自在に設け、該取付部材と該掛止部材とを固定可能な上下固定機構を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記上下固定機構として、上記掛止部材に屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に延びる上下長穴部を形成し、上記取付部材にボルト部を設け、該ボルト部を該上下長穴部に挿通して該ボルト部に螺着可能な上下調節ナットを設けてなることを特徴とするものである。
【0007】
又、請求項4記載の発明は、上記移動調節機構として、上記落雪防止体に取付部材を上記屋根勾配方向に移動調節自在に取り付け、該落雪防止体と該取付部材とを固定可能な移動固定機構を設け、該取付部材に上記掛止部材を取り付けてなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記移動固定機構として、上記落雪防止体の桟部材に屋根勾配方向に延びる調節長穴部を形成し、上記取付部材に該調節長穴部に挿通可能なボルト部を突設し、該調節長穴部に挿通した該ボルト部に螺着可能な移動調節ナットを設けてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、金属製平板葺き屋根や金属瓦棒葺き屋根、瓦屋根のように各種の屋根構造により異なる屋根の軒先部の嵌合寸法に対応して掛止部材を屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節することができると共に移動調節機構により掛止部材を落雪防止体に対して屋根勾配方向に移動調節することができ、落雪防止体の配置位置の融通性を高めることができると共に落雪防止体を屋根上に確実に固定することができ、屋根上に載置した落雪防止体の雨風等によるばたつきを防ぐことができ、かつ、上下調節機構及び移動調節機構は掛止部材を上記落雪防止体に対して上下方向に移動調節すると共に掛止部材を該落雪防止体に対して移動調節する構造であるから、落雪防止体の上下調節及び屋根勾配方向の移動調節を相互に視認可能な近接位置で行うことができ、それだけ、落雪防止体を屋根上の的確な位置に容易に配置することができて設置作業性を向上することができる。
【0009】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記上下調節機構として、上記落雪防止体に取付部材を取り付け、取付部材に上記掛止部材を上記屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節自在に設け、取付部材と掛止部材とを固定可能な上下固定機構を設けてなるから、上下調節機構の構造を簡素化することができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記上下固定機構として、上記掛止部材に屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に延びる上下長穴部を形成し、取付部材にボルト部を設け、ボルト部を上下長穴部に挿通してボルト部に螺着可能な上下調節ナットを設けてなるから、上下長穴部、ボルト部及び下調節ナットにより、取付部材と掛止部材との固定を容易に行うことができる。
【0010】
又、請求項4記載の発明にあっては、上記移動調節機構として、上記落雪防止体に取付部材を上記屋根勾配方向に移動調節自在に取り付け、落雪防止体と取付部材とを固定可能な移動固定機構を設け、取付部材に上記掛止部材を取り付けてなるから、移動調節機構の構造を簡素化することができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記移動固定機構として、上記落雪防止体の桟部材に屋根勾配方向に延びる調節長穴部を形成し、上記取付部材に調節長穴部に挿通可能なボルト部を突設し、調節長穴部に挿通したボルト部に螺着可能な移動調節ナットを設けてなるから、調節長穴部、ボルト部及び下調節ナットにより、取付部材と掛止部材との固定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態例の部分斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態例の部分分離斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態例の部分斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態例の全体斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態例の全体断面図である。
【図6】本発明の実施の形態例の部分拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態例の部分断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態例の部分断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施の形態例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図9は本発明の実施の形態例を示し、1は落雪防止体であって、建物Tの屋根材Mの上面Fに載置可能に形成され、この落雪防止体1の下部に落雪Sを止めるための雪止め部2が突設され、この雪止め部2に積雪、落雪Sの融水が通過可能な網状体3を配設し、落雪防止体1の下部たる軒先側に屋根材Mの軒先部Kに嵌合可能な掛止部4をもつ掛止部材5を設けて構成している。
【0013】
この場合、上記落雪防止体1は、四角状の本体枠6の底面に合成樹脂製の波板材7を取付け、本体枠6の長手方向たる屋根勾配方向に直交する方向に複数個の三角状枠体8を間隔を置いて一体に形成し、この複数個の三角状枠体8の上面間及び前面間並びに底面間に亀甲状に編んだ金網からなる網状体3を張架して構成している。尚、この網状体3としては、金属線材を交差させた網材や金属板材に複数個の丸穴等を散在形成した部材も含まれるものである。
【0014】
9は上下調節機構であって、この場合、上記落雪防止体1に取付部材10を取り付け、取付部材10に上記掛止部材5を上記屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節自在に設け、取付部材10と掛止部材5とを固定可能な上下固定機構11を設け、この上記上下固定機構11として、上記掛止部材5に屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に延びる上下長穴部12を形成し、上記取付部材10にボルト部13を設け、ボルト部13を上下長穴部12に挿通してボルト部13に螺着可能な上下調節ナット14を設け、上記掛止部材5を屋根の軒先部Kの嵌合寸法、すなわち、屋根材Mの上面Fから軒先部Kの底部との寸法である嵌合寸法Gに対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節可能に構成している。
【0015】
15は移動調節機構として、この場合、上記落雪防止体1に上記取付部材10を上記屋根勾配方向に移動調節自在に取り付け、落雪防止体1と取付部材10とを固定可能な移動固定機構16を設け、取付部材10に上記掛止部材5を取り付けてなり、この場合、上記移動固定機構16として、上記落雪防止体1の上記三角状枠体8の構成部材たる桟部材8aに屋根勾配方向に延びる調節長穴部17を形成し、上記取付部材10に調節長穴部17に挿通可能なボルト部18を突設し、調節長穴部17に挿通したボルト部18に螺着可能な移動調節ナット19を設けてなり、掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根勾配方向に移動調節可能に構成している。
【0016】
この場合、上記取付部材10に上記掛止部材5を上下方向に移動案内可能な対向一対のガイド片10a・10aを突設してなり、又、この場合、上記桟部材8aに上記取付部材10を上記屋根勾配方向に移動案内可能な対向一対のガイド部8b・8bからなるガイド部材8cを固定して構成している。
【0017】
この実施の形態例は上記構成であるから、図4乃至図6の如く、落雪防止体1を屋根材Mの軒先部K側の上面に例えば屋根材Mに取り付けた引掛金具の引掛片Hや雪止め金具に縛着したワイヤ等により配置固定し、積雪や落雪Sは落雪防止体1の雪止め部2の上面に積もることになり、このため、屋根材M上の積雪や落雪Sの滑落による落雪現象を防止することができ、軒下の不測の事故や雨樋の損傷を未然に防ぐことができ、かつ、雪止め部に落雪の融雪水が通過可能な網状体3が配設されているので、網状体3上の積雪、落雪Sが融けると、その融雪水は速やかに網状体3の網目から落水し、融雪水の滞留を防いで融雪を促進することができると共につららの発生を抑制することができる。
【0018】
この際、上記掛止部材5を上記落雪防止体1に対して上記屋根の軒先部Kの嵌合寸法Gに対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節可能な上下調節機構9及び掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根勾配方向に移動調節可能な移動調節機構15を設けてなるから、金属製平板葺き屋根の場合は、図6の如く、上下調節機構9により掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根の軒先部Kの嵌合寸法Gに対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節すると共に移動調節機構15により掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根勾配方向に移動調節することにより、屋根上における雨風等による落雪防止体1の浮上を抑制して落雪防止体1のばたつきを抑制することができ、落雪防止体1を屋根上に確実に固定することができると共に落雪防止体1を屋根の軒先部Kの適宜位置に固定することができる。
【0019】
又、金属瓦棒葺き屋根の場合は、図8の如く、上下調節機構9により掛止部材5を屋根の軒先部Kの嵌合寸法Gに対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節すると共に移動調節機構15により掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根勾配方向に移動調節することができ、又、瓦屋根の場合は、図9の如く、上下調節機構9により掛止部材5を屋根の軒先部Kの嵌合寸法Gに対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節すると共に移動調節機構15により掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根勾配方向に移動調節することができる。
【0020】
従って、金属製平板葺き屋根や金属瓦棒葺き屋根、瓦屋根のように各種の屋根構造により異なる屋根の軒先部Kの嵌合寸法Gに対応して掛止部材5を屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節することができると共に移動調節機構15により掛止部材5を落雪防止体1に対して屋根勾配方向に移動調節することができ、落雪防止体1の配置位置の融通性を高めることができると共に落雪防止体を屋根上に確実に固定することができ、屋根上に載置した落雪防止体1の雨風等によるばたつきを防ぐことができ、かつ、上下調節機構9及び移動調節機構15は掛止部材5を上記落雪防止体1に対して上下方向に移動調節すると共に掛止部材5を該落雪防止体1に対して移動調節する構造であるから、落雪防止体1の上下調節及び屋根勾配方向の移動調節を相互に視認可能な近接位置で行うことができ、それだけ、落雪防止体1を屋根上の的確な位置に容易に配置することができて設置作業性を向上することができる。
【0021】
この場合、上記上下調節機構9として、上記落雪防止体1に取付部材10を取り付け、取付部材10に上記掛止部材5を上記屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節自在に設け、取付部材10と掛止部材5とを固定可能な上下固定機構11を設けてなるから、上下調節機構9の構造を簡素化することができ、又、この場合、上記上下固定機構11として、上記掛止部材5に屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に延びる上下長穴部12を形成し、取付部材10にボルト部13を設け、ボルト部13を上下長穴部12に挿通してボルト部13に螺着可能な上下調節ナット14を設けてなるから、上下長穴部12、ボルト部13及び下調節ナット14により、取付部材10と掛止部材5との固定を容易に行うことができる。
【0022】
又、この場合、上記移動調節機構15として、上記落雪防止体1に取付部材10を上記屋根勾配方向に移動調節自在に取り付け、落雪防止体1と取付部材10とを固定可能な移動固定機構16を設け、取付部材10に上記掛止部材5を取り付けてなるから、移動調節機構15の構造を簡素化することができ、又、この場合、上記移動固定機構15として、上記落雪防止体1の桟部材8aに屋根勾配方向に延びる調節長穴部17を形成し、上記取付部材10に調節長穴部17に挿通可能なボルト部18を突設し、調節長穴部17に挿通したボルト部18に螺着可能な移動調節ナット19を設けてなるから、調節長穴部17、ボルト部18及び移動調節ナット19により、取付部材10と掛止部材5との固定を容易に行うことができる。
【0023】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、落雪防止体1、雪止め部2、網状体3、掛止部4、掛止部材5、上下調節機構9、取付部材10、上下固定機構11、移動調節機構15、移動固定機構16等の大きさや形態、構造等は適宜設計して変更されるものである。
【0024】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0025】
T 建物
M 屋根材
F 上面
S 落雪
K 軒先部
G 嵌合寸法
1 落雪防止体
2 雪止め部
3 網状体
4 掛止部
5 掛止部材
8a 桟部材
9 上下調節機構
10 取付部材
11 上下固定機構
12 上下長穴部
13 ボルト部
14 上下調節ナット
15 移動調節機構
16 移動固定機構
17 調節長穴部
18 ボルト部
19 移動調節ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根材の上面に載置可能な落雪防止体に落雪を止めるための雪止め部を突設し、該雪止め部に落雪の融雪水が通過可能な網状体を配設し、該落雪防止体の軒先側に屋根の軒先部に嵌合可能な掛止部をもつ掛止部材を設けてなり、上記掛止部材を上記落雪防止体に対して上記屋根の軒先部の嵌合寸法に対応して屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節可能な上下調節機構及び該掛止部材を該落雪防止体に対して屋根勾配方向に移動調節可能な移動調節機構を設けてなることを特徴とする屋根用落雪防止具。
【請求項2】
上記上下調節機構として、上記落雪防止体に取付部材を取り付け、該取付部材に上記掛止部材を上記屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に移動調節自在に設け、該取付部材と該掛止部材とを固定可能な上下固定機構を設けてなることを特徴とする請求項1記載の屋根用落雪防止具。
【請求項3】
上記上下固定機構として、上記掛止部材に屋根勾配方向に対して略交差する上下方向に延びる上下長穴部を形成し、上記取付部材にボルト部を設け、該ボルト部を該上下長穴部に挿通して該ボルト部に螺着可能な上下調節ナットを設けてなることを特徴とする請求項2記載の屋根用落雪防止具。
【請求項4】
上記移動調節機構として、上記落雪防止体に取付部材を上記屋根勾配方向に移動調節自在に取り付け、該落雪防止体と該取付部材とを固定可能な移動固定機構を設け、該取付部材に上記掛止部材を取り付けてなることを特徴とする請求項1記載の屋根用落雪防止具。
【請求項5】
上記移動固定機構として、上記落雪防止体の桟部材に屋根勾配方向に延びる調節長穴部を形成し、上記取付部材に該調節長穴部に挿通可能なボルト部を突設し、該調節長穴部に挿通した該ボルト部に螺着可能な移動調節ナットを設けてなることを特徴とする請求項4記載の屋根用落雪防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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