層状希土類水酸化物、それを用いたアニオン交換材料および蛍光材料
【課題】 高い対称性の結晶構造および高い結晶性を有する層状希土類水酸化物、それを用いたアニオン交換材料および蛍光材料を提供すること。
【解決手段】 本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、REは希土類元素であり、Zはハロゲン元素であることを特徴とする。
【解決手段】 本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、REは希土類元素であり、Zはハロゲン元素であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状希土類水酸化物、それを用いたアニオン交換材料および蛍光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
層状物質は、強い化学結合を介して2次元方向に拡がったホスト層が積み重なった構造を有し、多種多様な化合物がある。また、層状物質は、層と層との間に異種物質(ゲスト)を取り込む反応性(インターカレーション)を示すことが知られている。
【0003】
最近、アニオン交換能を有する層状物質として層状希土類水酸化物が報告された(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、水熱法により、組成式Ln2(OH)5NO3・xH2O(Ln=Y、Gd〜Lu、x≒1.5)で示される硝酸型層状希土類水酸化物が合成される。また、非特許文献1によれば、層状希土類水酸化物中の硝酸イオンが、有機カルボン酸塩およびスルホン酸イオンとアニオン交換すること、および、LnがTbおよびDyにおいて弱いながらも蛍光を示すことが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1によれば、硝酸型層状希土類水酸化物では、極めて多数の回折線が重畳して現れており、結晶の対称性が低いことが示唆される。そのため、複雑な結晶構造となり、良質な結晶が得られていない一因となっていると考えられる。また、その結晶性も十分とはいえない。したがって、より高い対称性の結晶構造と高い結晶性を有する層状希土類水酸化物が望ましい。
また、非特許文献1によれば、層状希土類水酸化物中の希土類元素Lnは、YおよびGd〜Luに限定されており、その他の希土類元素を含む層状希土類水酸化物、さらには硝酸型以外の層状希土類水酸化物が望まれており、特に、希土類元素の中でもEuを含有する層状希土類水酸化物は、Euに基づく赤色発光が期待できる。
【0005】
【非特許文献1】McIntyreら, Chem. Mater., 20, 335−340(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より、本発明の目的は、高い対称性の結晶構造および高い結晶性を有する層状希土類水酸化物、それを用いたアニオン交換材料および蛍光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明1)本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、前記REは希土類元素であり、前記Zはハロゲン元素であることを特徴とする。
(発明2)発明1の層状希土類水酸化物であって、前記層状希土類水酸化物の結晶系は斜方晶系に属することを特徴とする。
(発明3)発明1の層状希土類水酸化物であって、正に帯電した[RE8(OH)20(H2O)X]4+層と、負に帯電したハロゲン元素からなる中間層Z−との積層構造であることを特徴とする。
(発明4)発明1の層状希土類水酸化物であって、前記ハロゲン元素ZはClまたはBrであることを特徴とする。
(発明5)発明1の層状希土類水酸化物であって、前記REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびYからなる群から選択される希土類元素であることを特徴とする。
(発明6)本発明によるアニオン交換材料は、アニオンと交換可能な中間層を有する発明1〜5のいずれかの層状希土類水酸化物からなることを特徴とする。
(発明7)本発明による蛍光材料は、発光中心となる希土類元素を含有する発明1〜5のいずれかの層状希土類水酸化物からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、REは希土類元素であり、Zはハロゲン元素である。Zとしてハロゲンイオンが存在するので、従来の嵩張った硝酸イオンに比べて、形状がシンプルで等方性球状である。その結果、高い対称性の結晶構造を有し、かつ、高い結晶性を有する層状希土類水酸化物が得られる。また、Zは、REに直接配位しないため、室温にてアニオン交換能を示す。このような層状希土類水酸化物を用いれば、高効率なアニオン交換材料を提供できる。REに基づいて蛍光を示すので、本発明の層状希土類水酸化物を用いた蛍光材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(実施の形態1)
本発明による層状希土類水酸化物の構造を説明する。
【0011】
図1は、本発明による層状希土類水酸化物の模式図(A)および結晶構造(B)を示す図である。
【0012】
本発明による層状希土類水酸化物100は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(ここで、REは希土類元素、Zはハロゲン元素、6<X<8)で表される。例えば、REがEuであり、ZがCl−であり、Xが7である場合には、Eu(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oとなる。
【0013】
希土類元素REとは、原子番号57番のランタン(La)から原子番号71番のルテチウム(Lu)までのランタノイドと、原子番号21番のスカンジウム(Sc)と、原子番号39番のイットリウム(Y)とを意図する。中でもREがEuである場合には、Euに基づく赤色発光が期待されるため好ましい。また、後述する実施例1〜12に示すように、類似の性質を示すほとんどの希土類元素(すなわち、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびY)において本発明の層状希土類水酸化物が確認されたことから、Er、Tm、YbおよびLuにおいても同様に層状希土類水酸化物が合成されることは容易に類推される。
【0014】
ハロゲン元素Zは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される元素であり、イオンとして存在する。これらのハロゲン元素Zの形状はシンプルで等方性球状である。このことは、層状希土類水酸化物100の結晶構造の対称性および結晶性の向上に寄与し得る。製造の容易性から、より好ましくは、ハロゲン元素Zは塩素またはヨウ素であり、最も好ましくは塩素である。
【0015】
Xが6〜8の範囲を有するのは、湿度によって水分子の数がわずかに変化するためである。完全な状態ではX=7である。
【0016】
層状希土類水酸化物100は、より詳細には、図1に示されるように、正に帯電した[RE8(OH)20(H2O)x]4+(6<X<8)層(またはホスト層とも呼ぶ)110と、負に帯電した中間層Z−120との積層構造を有する。ただしいずれにおいても実際には空気中から一部炭酸イオンが取り込まれる。
【0017】
図1(B)に示されるように、負に帯電した中間層Z−120が、直接REに配位していないため、中間層Z−120は異なるアニオンと容易に交換可能である(すなわち、層状希土類水酸化物100はアニオン交換能を有する)。例えば、層状希土類水酸化物100の[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがEuであり、中間層Z−120がCl−である場合、硫酸イオン(アルカリ金属の硫酸塩を含んでもよい)と層状希土類水酸化物100とを室温において接触させるだけで、層状希土類水酸化物100の積層構造を維持しつつ上述のアニオン交換が生じる。
【0018】
また、本発明による層状希土類水酸化物100のモルフォロジーは、上述の層状構造を反映した板状(小板とも呼ぶ)であり、より詳細には矩形の板状である。このような形状は、非特許文献1の六角形状とは異なり、この点からも、本発明による層状希土類水酸化物100は、上記Zがシンプルで等方性球状なハロゲンイオンにより、非特許文献1の硝酸型層状希土類水酸化物に比べて、高い対称性の結晶構造を有し、かつ、高い結晶性を有することが示唆される。なお、このようなモルフォロジーは、結晶性の程度に依存しており、結晶性が良いとエッジがシャープな形状となり、結晶性が低いとエッジがシャープでなくなる傾向がある。
【0019】
さらに、本発明による層状希土類水酸化物100の結晶系は、斜方晶系、より詳細には単純斜方格子に属する。以上のモルフォロジーおよび結晶構造より、得られた生成物が、層状希土類水酸化物であるか否かは、簡易的には電子顕微鏡による表面観察により小板が確認されるか否か、詳細には、生成物のX線回折パターンの指数付けより判定できる。
【0020】
また、REにおいて、発光特性および磁性の発現および高い触媒活性が知られている。本発明の層状希土類水酸化物100においても、アニオン交換能に加えて、含有されるREに基づく発光特性、磁性および触媒活性の発現、それを利用した応用(アニオン交換材料、発光材料、磁性材料等)が期待される。
【0021】
(実施の形態2)
本発明による層状希土類水酸化物の製造方法は、特に限定されないが、一例として均一沈殿法により製造することができる。本発明による層状希土類水酸化物は、例えば、希土類元素のハロゲン化物と、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)または尿素と、水を含有する溶媒とからなる混合水溶液中のヘキサメチレンテトラミン(HMT)または尿素を分解して、希土類元素のハロゲン化物を加水分解することによって得られる。便宜上、混合水溶液の調製と、希土類元素のハロゲン化物の加水分解とを分けて説明する。フローチャートを参照し、詳述する。
【0022】
図2は、例示的な本発明による層状希土類水酸化物を製造するステップを示すフローチャートである。
【0023】
ステップごとに詳述する。
【0024】
ステップS210:REのハロゲン化物(以降では単にREZ3と称する)と、ヘキサメチレンテトラミン(以降では単にHMTと称する)または尿素と、水を含有する溶媒とを含む混合水溶液を調製する。REおよびZは、それぞれ、実施の形態1で説明した希土類元素およびハロゲン元素である。
【0025】
水を含有する溶媒とは、水(例えば、超純水)単独であってもよいし、水に加えてエタノール等の非水溶媒を用いてもよいが、少なくとも水があればよい。これは、希土類イオンが水と水和することにより、反応が促進されるためである。なお、少なくとも水があればよいため、水を含有する溶媒とともに、REZ3の水和物を用いてもよい。
【0026】
HMTおよび尿素は、いずれも、分解後に混合水溶液のpHを上昇するよう機能する。好ましくは、REZ3とHMTまたは尿素とのモル比は、0.75である。この比を外れると、RE(OH)3、RE(OH)2Cl等の不純物が生成する場合がある。
【0027】
混合水溶液のpHは、例えば、REが、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびYからなる群から選択される元素である場合、5.5以上6.5以下の範囲となる。この範囲であれば、後述するステップS220により混合水溶液のpHが8〜10まで上昇し、REZ3の加水分解が促進するため、層状希土類水酸化物を確実に得ることができる。一方、REがLaである場合、混合水溶液のpHは上記範囲よりも低く、4.5以上5.5未満の範囲になるように設定することが好ましい。これは、希土類系列においてはサイズが大きくなるほど、すなわちLa側になるほど塩基性度が高まり、RE(OH)3が生成しやすい傾向があるためである。これを抑えるためにpHを低めに設定するのが層状水酸化物の生成に有効である。なお、このようなpHの調整には、例えば、HCl等の酸を適宜加えればよい。このように選択するREに応じて、混合水溶液のpHは適宜調整される。
【0028】
ステップS210において、上述の混合水溶液にアルカリ金属のハロゲン化物をさらに混合してもよい。アルカリ金属のハロゲン化物は、例えば、NaCl、KCl等であるが、これらに限定されない。これにより、REZ3の濃度が低い条件においても、合成が促進される。この結果、得られる層状希土類水酸化物のモルフォロジーまたは結晶性が向上し得る。
【0029】
ステップS220:ステップS210で得た混合水溶液中のHMTまたは尿素を分解し、REZ3を加水分解する。
【0030】
HMTおよび尿素は、分解されて、アンモニアを生成する。これにより混合水溶液のpHが上昇し、アルカリ性となる。その結果、REZ3が加水分解され、層状希土類水酸化物の沈殿が生じる。HMTおよび尿素は、(好ましくは加熱により)いずれも制御された速度でゆっくりとアンモニアを生成するため、核生成および結晶化に偏りがなく、粒径のそろった結晶性の高い良質な層状希土類水酸化物が得られる。
【0031】
HMTおよび尿素の分解は、例えば、ステップS210で得られた混合水溶液を室温にて長時間攪拌して行われるが、効率の観点から、少なくとも70℃以上の温度で攪拌しながら加熱することが好ましい。これにより、HMTおよび尿素の分解が促進されるため、合成が効率的に進行する。30分〜1時間の加熱により結晶の生成が目視にて確認できるが、典型的には、加熱は、6時間〜10時間の間行われる。特に、8時間以上加熱すると、層状希土類水酸化物の結晶性が向上するため好ましい。また、加熱温度の上限は、用いる溶媒によって異なるが、100℃を超えない温度である。
【0032】
ステップS220に続いて、得られた層状希土類水酸化物を洗浄し、室温にて乾燥させてもよい。これにより取扱の簡便な粉末状の層状希土類水酸化物を得ることができる。洗浄は、水およびエタノールで数回繰返し行われる。
【0033】
これにより本発明の層状希土類水酸化物が得られる。なお、本発明の層状希土類水酸化物の製造方法は、図2を参照して説明した均一沈殿法に限定されないが、均一沈殿法であれば、オートクレーブ等の専用高圧装置は不要であり、簡便、安価かつ大量に層状希土類水酸化物を提供できるため有利である。
【0034】
次に、実施例を述べるが、本発明は実施例に限定されるものではないことに留意されたい。
【実施例1】
【0035】
REZ3としてEuCl3・6H2O(5mM)と、HMT(3.75mM)と、NaCl(65mM)とを1000mlの超純水に溶解させ、最終濃度を5.65mMの混合水溶液を調製した(図2のステップS210)。なお、ここで、希土類元素のハロゲン化物が6つの水分子を有するが、希土類元素のハロゲン化物は吸湿性であるため、環境によって6〜7の間で変動することが分かっている。以降の実施例においても同様に取り扱う。このようにして得られた混合水溶液のpHは、約6であった。次いで、混合水溶液をマグネチックスターラで攪拌し、窒素ガス中において還流温度(約100℃)で加熱した。これにより、HMTを分解させた(図2のステップS220)。このとき混合水溶液のpHは、約8まで上昇していた。これらの操作は、窒素フロー下にて、還流冷却器を備えた二口フラスコを用いて行った。
【0036】
1時間後、混合溶液中に白い流線が観察された。これは、異方性形状の結晶が形成されたことを示唆する。次いで、生成物をろ過し、水とエタノールとで数回洗浄した後、室温にて乾燥させた。
【0037】
このようにして得られた生成物のモルフォロジーおよび構造を、走査型電子顕微鏡SEM(JEOL、JSM−6700F)および透過型電子顕微鏡TEM(JEOL、JEM−1010)を用いて観察した。観察結果を図3および図4に示し、後述する。また、TEMを用いて、銅グリッドにのせた生成物から制限視野回折パターン(SAED)を得た。結果を図5に示し後述する。
【0038】
生成物の構造評価を、X線回折を用いて行った。X線回折は、Cu対陰極(Cu−Kα線)(λ=1.5405Å)を備えたRigaku Rint−2000回折計で測定した。さらなる構造解析を行うため、大型放射光施設(Spring 8)のビームラインBL15(λ=0.65297Å)を用いて、高分解能シンクロトロン粉末X線回折データを得た。それぞれの結果を図6および図7に示し後述する。
【0039】
次いで、図7の結果を用いて構造決定を行った。構造決定は以下の手順で行った。まず、図7のXRDパターンから、Le Bail法を用いて、積分強度を抽出した。抽出された積分強度を、最大エントロピーパターソンプログラムALBAにより再配分し、より信頼性の高い値を得た。得られた構造因子を直接法プログラムEXPO2004に導入し、希土類原子の位置を求めた。他の原子の位置は、MEM/Rietveldによる電子密度分布解析により求めた。最終的にRIETAN−FPプログラムを用いて構造を精密化した。PRIMAプログラムによって得られた構造因子F0値を用いて、MEMにより電子密度分布を求めた。電子密度分布にさらなるピークが見つかった場合には、構造モデルを修正し、信頼性因子(R因子)のさらなる減少が見えなくなるまで精密化を繰り返した。これらの結果を図8〜11および表2に示し、詳述する。
【0040】
生成物の元素分析を行った。Euの量は、試料を塩酸水溶液中に溶解後、誘導結合プラズマ(ICP)原子発光分析(Seiko SPS1700HVR)を用いて測定した。生成物中のOHの量は、精秤した試料を硫酸(0.1モル)に溶解させたのち、NaOHによる中和滴定により求めた。生成物中のClの量をイオン電極法により求めた。この際、濃度メータとしてDKK IM−40Sを、イオン電極としてDKK CL−125Bを、参照電極としてDKK RE−2を用いた。生成物中のC含量をLECO RC−412分析装置により求めた。生成物中の含水量を熱重量分析により求めた。得られた生成物の元素分析の結果を、図8〜11および表2を参照しながら後述する。
【0041】
生成物の発光特性について調べた。室温における励起スペクトルおよび発光スペクトルを、蛍光分光光度計(Hitachi F−4500)を用いて測定した。測定結果を図12に示し、詳述する。
【0042】
次に、生成物のアニオン交換能について調べた。試料(0.2g)をNaNO3水溶液(1M、200cm3)、Na2SO4水溶液(1M、200cm3)、および、ドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3Na)水溶液(0.5M、200cm3)それぞれに分散させた。それぞれの混合水溶液を含む反応容器を密閉し、室温にて2日間振盪させた。2日後、各反応容器から試料を回収した。
【0043】
回収した試料の構造評価を、X線回折を用いて行った。X線回折は、Cu対陰極(Cu−Kα線)(λ=1.5405Å)を備えたRigaku Rint−2000回折計で測定した。結果を図13に示し、後述する。回収した試料のモルフォロジーを、SEMを用いて観察した。観察結果を図14〜16に示し、後述する。
【0044】
回収した試料についてフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)を行い、アニオン交換されたか否かについて定性分析を行った。測定は、400〜4000cm−1の波数範囲について、MCT検出器を備えたVarian 7000e FT−IR分光光度計を用いて、KBrペレット法により行った。結果を図17に示し後述する。
【実施例2】
【0045】
実施例1において、REZ3としてYCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図18および19に示し、後述する。
【実施例3】
【0046】
実施例1において、REZ3としてSmCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図20および21に示し、後述する。
【実施例4】
【0047】
実施例1において、REZ3としてGdCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図22および23に示し、後述する。
【実施例5】
【0048】
実施例1において、REZ3としてTbCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRD、SEMおよび励起・発光スペクトルを測定した。結果を図24〜26に示し、後述する。
【実施例6】
【0049】
実施例1において、REZ3としてDyCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図27および28に示し、後述する。
【実施例7】
【0050】
実施例1において、REZ3としてHoCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図29および30に示し、後述する。
【実施例8】
【0051】
実施例1において、REZ3としてNdCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図31および32に示し、後述する。
【実施例9】
【0052】
REZ3としてLaCl3・6H2O(5mM)と、HMT(3.75mM)と、NaCl(65mM)とを1000mlの超純水に溶解させ、混合水溶液を得た。この混合水溶液にさらにHCl(0.1M)を加え、混合水溶液のpHが5となるように調製した(図2のステップS210)。次いで、混合水溶液をマグネチックスターラで攪拌し、窒素ガス中において還流温度(約100℃)で加熱した。これにより、HMTを分解させた(図2のステップS220)。これらの操作は、窒素気流下にて、還流冷却器を備えた二口フラスコを用いて行った。
【0053】
1時間後、混合溶液中に白い流線が観察された。これは、異方性形状の結晶が形成されたことを示唆する。次いで、生成物をろ過し、水とエタノールとで数回洗浄した後、室温にて乾燥させた。得られた生成物について、実施例1と同様にXRDを測定した。結果を図33に示し、後述する。
【実施例10】
【0054】
実施例5において、NaClを用いることなく、TbCl3・6H2Oの濃度を5mM、10mM、15mM、25mMおよび50mMとした以外は、同様の手順によって生成物を得た。各濃度から得られた生成物について、実施例5と同様にXRDを測定した。結果を図34に示し、後述する。
【実施例11】
【0055】
実施例5において、NaClを用いることなく、および、超純水に代えてエタノールと水との混合溶媒(エタノール:水=9:1)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例5と同様にXRDを測定した。結果を図35に示し、後述する。
【実施例12】
【0056】
実施例5において、TbCl3・6H2OおよびNaClに代えて、それぞれ、TbBr3・6H2O(5mM)およびNaBr(65mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例5と同様にXRDおよびSEMを測定した。結果を図36および37に示し、後述する。
【比較例1】
【0057】
実施例1のEuCl3に代えてEuNO3・6H2O(5mM)と、HMT(3.75mM)と、NaNO3(65mM)とを1000mlの超純水に溶解させ、最終濃度を5.65mMの混合水溶液を調製した(図2のステップS210)。なお、ここで、実施例1と同様に、希土類元素の硝酸塩が6つの水分子を有するが、希土類元素の硝酸塩は吸湿性であるため、環境によって6〜7の間で変動することが分かっている。次いで、混合水溶液をマグネチックスターラで攪拌し、窒素ガス中において還流温度(約100℃)で加熱した。これにより、HMTを分解させた(図2のステップS220)。これらの操作は、窒素気流下にて、還流冷却器を備えた二口フラスコを用いて行った。
【0058】
1時間後、混合溶液中に白い流線が観察された。これは、異方性形状の結晶が形成されたことを示唆する。次いで、生成物をろ過し、水とエタノールとで数回洗浄した後、室温にて乾燥させた。
【0059】
得られた生成物について、実施例1と同様にXRDおよびSEMを測定した。結果を図38および39に示し、後述する。
以上の実施例1〜12と比較例1との実験条件および結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
XRDパターン、励起スペクトルおよび発光スペクトルの強度(カウント値)は測定装置や条件によって変化するため単位は任意単位である。すなわち、同一条件で測定した本実施例内でしか比較できないことに留意されたい。
【0062】
図3は、実施例1の生成物のSEM像を示す図である。
【0063】
図4は、実施例1の生成物のTEM像を示す図である。
【0064】
図3および図4から、得られた生成物は、矩形の板状(小板)であることが確認された。また、図3から、生成物全体にわたって均一な大きさであることが分かった。図4から、矩形の小板のモルフォロジー(板厚)は、約20nm程度であった。また、矩形の小板一枚の大きさは、長手方向に約2μmであり、短手方向に約1μmであった。これらの特徴は、中間層Z−120(図1)がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを強く示唆する。
【0065】
図5は、実施例1のSAEDパターン(A)および基本単位格子と超格子との関係(B)を示す図である。
【0066】
図5(A)には、輝度の異なる2組のスポット群が示されている。これは、超格子構造が形成されていることを示唆する。詳細には、六角形を形成するより明るいスポットは、六方対称の基本単位格子(af=3.7Å)に相当する。一方、矩形を形成するやや暗いスポットは、長方形超格子(as=2√3Å、af=13.1Å、bs=2af=7.4Å)に相当する。これら基本単位格子と超格子との関係を図5(B)に模式的に示す。基本単位格子(六方晶単位格子)は、希土類原子(ここではEu)の六方晶配列を示しており、ブルサイト型(Mg(OH)2)または層状複水酸化物LDH型([M2+αM3+1−α(OH)2]1−α(αは1を超えない有理数))のホスト層構造との類似性を暗示している。理想的なブルサイト構造の原子位置からのずれによって、長方形超格子が形成されていると考えられる。
【0067】
図6は、実施例1の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0068】
XRDパターンは、鋭い複数の回折ピークから構成され、生成物が高い結晶性を持っていることを示す。特に低角度域の約10.6°および約21.2°の極めて強いピークは、得られた生成物が層状物質であることを暗示している。次に、実施例1の生成物の結晶構造をより詳細に調べた。
【0069】
図7は、実施例1の生成物の高分解能シンクロトロン粉末X線回折(XRD)パターンを示す図である。
【0070】
図7のXRDパターンに見られるピークはいずれも、斜方晶、詳細には単純斜方格子に指数付けができた。特に、001反射および002反射のピーク強度は他のピーク強度に比べて強かった。これらのピークが、図6の約10.6°および約21.2°のピークに一致することを確認した。単純斜方格子の格子定数a、bおよびcは、それぞれ、a=12.92(1)Å、b=7.38(1)Åおよびc=8.71(1)Åであった。aとbとの比は、√3に完全な一致をしなかった。これは、上述の六方対称の基本単位格子が、理想的なブルサイト構造のように完全な六方対称でないことを示唆している。
【0071】
図7から得られたaおよびbは、図5(A)のSAEDパターンから得られたaおよびbに良好に一致した。このことは、図4で見られた小板が、{001}結晶面上に位置しており、図5(A)のSAEDパターンは、[001]方向、すなわちz軸に沿って撮影されたことを示す。
【0072】
組成分析の結果、元素組成はEu(OH)2.36Cl0.51(CO3)0.065・0.87H2Oであることが分かった。図7のXRDパターンにおける指数付けの結果から、h=2n+1(h00の場合)およびk=2n+1(0k0の場合)の一連のピークが消滅していることが分かった。このことは、生成物の空間群がP21212であることを示唆する。また、Le Bail法による強度抽出を行った結果、空間群P21212が最も良好に一致した。以上より、生成物の空間群はP21212と結論できた。
【0073】
次に、図5を参照して説明したように単位格子中に8個のEuが存在することから、Z=8とし、単位式をEu8(OH)18.88Cl4.08(CO3)0.52・6.96H2Oとした。簡単のため、炭酸イオンの電荷を水酸化物イオンに移し、単位式をEu8(OH)20Cl4・7.0H2Oとした。まず、プログラムEXPO2004を用いた直接法を適用し8個のEuの原子位置を求めた。他の軽い元素種(OH、H2O、Cl)は、最大エントロピー法のMEM/Rietveldを採用した電子密度分布解析により求めた。この結果から、層状結晶構造モデルを生成した。
【0074】
図8は、層状結晶構造モデルの模式図である。
【0075】
図8の左図は、[001]方向から投影した層状結晶構造モデルであり、図8の右図は、[010]方向の層状結晶構造モデルである。これらの結晶構造モデルに基づいて、RIETAN−FPプログラムから構造パラメータを精密化した。その結果、図9に示す。
【0076】
図9は、実施例1における生成物のリートベルトパターンを示す図である。
【0077】
図9には、実験値、計算値および差分を示す。図9に示す通り満足すべきパターンフィッティングが達成された。最終的な信頼度因子(R因子)は、Rwp=2.04%(S=0.5167)、Rp=1.52%、RI=3.98%およびRF=1.65%となった。これら極めて小さなR因子により、図8で示した層状構造モデルが妥当であることが示唆される。精密化の結果得られた構造パラメータを表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2において、括弧内の数字は標準偏差である。空間群をP21212とし、格子定数a、bおよびcは、それぞれ、a=12.9155(3)Å、b=7.3763(1)Åおよびc=8.7023(3)Åであった。温度因子(Biso)はいずれも、Euのサイトについては1.0Å2に、他の種のサイトについては2.0Å2に固定した。最終段階では、元素分析によって決定された元素組成にしたがって、水分子の占有率を固定した。また、Eu3のサイトは、P21212が対称心を持たない空間群であるため、直接法から得られた値で固定した。
【0080】
図10は、電子密度分布を示す図である。
【0081】
図10の電子密度分布解析の結果の図示化によれば、電子密度分布は、図8の層状結晶構造モデルに良好に一致した。注目すべき特徴は、中間層Cl−に相当する電子密度が、ほぼ球状分布を示していることである。これは、Cl−もまた層間において良好に配列しており、中間層アニオンが無秩序に配列することの多い他の層状複水酸化物とは異なる特徴を示す。
【0082】
以上の結果から、実施例1で得られた生成物の構造が図1を参照して説明した層状希土類水酸化物であることが示された。詳細には、層状希土類水酸化物は、RE(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oの組成式を満たし、正に帯電した[Eu8(OH)20(H2O)7]4+層と、層間に位置する負に帯電した中間層Cl−とからなる。これにより、電荷が補償され安定化している。
【0083】
次に、Euカチオンサイトの配位について説明する。Euカチオンには、8配位すなわち7つの水酸基および1つの水分子を伴う4c(0.2736, 0.2503, 0.9349)位置、ならびに、9配位すなわち8つの水酸基および1つの水分子を伴う2a(0, 0, 0.9194)サイトまたは2b(0, 0.5, 0.9324)位置の3パターンがある。
【0084】
図11は、実施例1における生成物中のEuの配位環境を示す図である。
【0085】
図11には、上述の3つの異なるEuサイトの配位環境を模式的に示す。いずれの配位においても、水酸基はすべて、距離2.1Å〜2.6ÅでEuと結合している。また、8配位および9配位におけるH2OとEuとの距離は、それぞれ、2.35(2)Åと、2.65(6)および2.45(5)Åとであった。これらの水酸基とH2O分子とに配位されたEuが2次元方向に連鎖して、図1の110に示すようなab面に平行な層が生成される。
【0086】
理想的な面内六方晶配列からのEuの位置のずれは、SAEDの結果に良好に一致した。これは、現実の構造において六方対称の基本単位格子が実質的に認められるものの、Euの位置が[001]方向すなわちz軸方向に波打つと同時にab面でも歪んでおり、その結果、斜方晶、詳細には単純斜方超格子となっているためである。以上より、本発明の層間にClイオンを含む層状希土類水酸化物の結晶系は斜方晶に属し、詳細には、単純斜方超格子構造を有していることが分かった。
【0087】
図12は、実施例1の生成物の励起スペクトル(A)および発光スペクトル(B)を示す図である。
【0088】
図12(A)は、観測発光波長が612nm(5D0−7F2線)の場合の励起スペクトルであり、図12(B)は、395nm(intra−4f6直接励起)で励起した場合の発光スペクトルである。励起スペクトルは、Eu3+の4f6電子配置内のintra−4f6遷移に起因する複数の鋭いピークを示した。発光スペクトルは、578.4nm、594.6nm、612.4nm、649.0nmおよび696.8nmに、典型的な5D0−7Fj(j=0〜4)遷移を示した。5D1のようなより高い励起準位からの蛍光は検出されなかった。このことは、5D0準位へ極めて効率的に非放射緩和することを示唆する。
【0089】
図12(B)の5D0−7Fj(j=0〜4)遷移の発光ピーク強度、および、これらの発光ピークの分裂を用いて、Eu3+イオンの環境を調べた。図12(B)によれば、約612nmに5D0−7F2遷移の最も強い発光ピークを示した。理論的には、Eu3+が、結晶格子において反転対称となる場合、約590nmにおける磁気双極子遷移5D0−7F1が主要な発光ピークとなり、そうでない場合には、約610nm〜620nmにおける電気双極子遷移5D0−7F2が主要な発光ピークとなる。このことから、実施例1の層状希土類水酸化物におけるEu3+は反転対称とならない、すなわち、反転中心を有していないことが示唆される。
【0090】
また、図12(B)によれば、5D0−7F1遷移および5D0−7F2遷移による発光ピークは、それぞれ、3つおよび2つにピーク分裂した。このことは、Eu3+のまわりの結晶場の対称性が低いことを示唆する。これらの結果は上記結晶構造解析結果とよく符合するものであった。図11を参照して説明したように、Eu3+は、2つの局所的な配位、すなわち、点群C1における8配位の4c位置と、点群C4νにおける9配位の2aおよび2b位置とをとることが示されており、Eu3+の2つの配位(すなわち、3つの位置)のいずれも、反転中心のない低い対称性に属する。
【0091】
以上、図12の励起スペクトルおよび発光スペクトルにより、典型的なEu3+の発光(赤色発光)が確認された。このことは、本発明の生成物において、RE(ここではEu)が発光中心として機能しており、蛍光材料、さらには、発光デバイスに適用可能であることを示唆する。
【0092】
図13は、実施例1の生成物のアニオン交換後のXRDパターンを示す図である。
【0093】
図13には、参考のためアニオン交換前の試料(層間にClイオンを含む)のXRDパターンも合わせて示す。アニオン交換後の生成物のXRDパターンは、いずれも明確なピークシフトを示した。
【0094】
アニオン交換前の層間距離は、8.63Åであった。一方、硝酸ナトリウム(NO3−)および硫酸ナトリウム(SO42−)およびドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物の層間距離は、それぞれ、8.32Å、8.94Åおよび23.6Åに変化した。
【0095】
また、アニオン交換後の生成物のXRDパターンは、いずれも、鋭い回折ピークを維持しており、アニオン交換時のプロセスによっても高い結晶性が維持されることが分かった。
【0096】
図14は、実施例1の硝酸ナトリウム(NO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図である。
【0097】
図15は、実施例1の硫酸ナトリウム(SO42−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図である。
【0098】
図16は、実施例1のドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図である。
【0099】
図3の実施例1のアニオン交換前の生成物のSEM像と、図14〜図16のSEM像とを比較すると、アニオン交換後の生成物も、アニオン交換前の生成物における矩形の小板のモルフォロジーを維持していることが分かった。このことからも、アニオン交換時のプロセスによっても高い結晶性および結晶構造が維持されることが示される。
【0100】
図17は、実施例1のアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトルを示す図である。
【0101】
図17には、参考のためアニオン交換前の生成物のFT−IR吸収スペクトル(a)も合わせて示す。いずれのスペクトル(a)〜(d)も、約3500cm−1、約1650cm−1および約620cm−1に吸収帯を示した。約3500cm−1の吸収帯は、O−H結合、ν(OH)の伸縮振動に起因し、結晶中に金属−OH層による水酸化物イオンが存在することを示唆する。約1650cm−1の吸収帯は、水分子の伸縮・変角モードに起因する。約620cm−1の吸収帯は、Eu−Oの伸縮/変角振動に起因する。
【0102】
また、図17のFT−IR吸収スペクトルは、中間層Z−の種類に起因する吸収帯も示した。詳細には、硝酸ナトリウム(NO3−)によるアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトル(b)は、1385cm−1および1410cm−1に鋭く強い吸収を示した。これらは、それぞれ、NO3−アニオンのD3h、ν3振動モード、および、O−NO2のC2ν、ν4非対称伸縮モードに起因する。これらの吸収帯は、反応前のスペクトル(a)には見られなかった。
【0103】
硫酸ナトリウム(SO42−)によるアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトル(c)は、SO42−に起因する1120cm−1に吸収を示した。この吸収帯は、スペクトル(a)には見られなかった。
【0104】
ドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトル(d)は、2920cm−1および2850cm−1に強い吸収を、2958cm−1、1470cm−1および1300cm−1〜900cm−1に比較的弱い吸収を示した。2920cm−1および2850cm−1の吸収は、それぞれ、ドデシル硫酸塩のアルキル鎖における非対称CH2伸縮振動および対称CH2伸縮振動に起因する。また、2958cm−1における比較的弱い吸収は、炭化水素の末端基であるCH3基の伸縮振動に起因する。1470cm−1近傍における比較的弱い吸収は、CH2変角(またはscissor)モードに起因する。さらに、1300cm−1〜900cm−1における一連の弱い吸収は、硫酸塩(OSO3−)の伸縮モードに起因する。これらの吸収帯は、スペクトル(a)には見られなかった。
【0105】
このように、本発明の生成物は、室温にて容易にアニオン交換可能であるとともに、アニオン交換後も高い結晶性および結晶構造(層状構造)を維持することが分かった。以上の結果は、図1を参照して説明したように、中間層120(ここではCl−層)は、カウンターアニオンとして機能することを示している。本発明の層状希土類水酸化物をアニオン交換材料として用いれば、室温にて高効率でアニオン交換が可能であることが示唆される。
【0106】
図18は、実施例2の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0107】
図18のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例2の生成物は、Y(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、図1の[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがYであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0108】
図19は、実施例2の生成物のSEM像を示す図である。
【0109】
図19から、中間層Z−120(図1)がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0110】
図20は、実施例3の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0111】
図20のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例3の生成物は、Sm(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがSmであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0112】
図21は、実施例3の生成物のSEM像を示す図である。
【0113】
図21より、実施例3の生成物のモルフォロジーは、実施例1の生成物のモルフォロジーと類似しており、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が、生成物全体にわたって均一に得られた。このことからも、層状希土類水酸化物が単相で得られたことが示唆される。
【0114】
図22は、実施例4の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0115】
図22のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例4の生成物は、Gd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがGdであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0116】
図23は、実施例4の生成物のSEM像を示す図である。
【0117】
図23より、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0118】
図24は、実施例5の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0119】
図24のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例5の生成物は、Tb(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0120】
図25は、実施例5の生成物のSEM像を示す図である。
【0121】
図25より、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0122】
図26は、実施例5の生成物の励起/発光スペクトルを示す図である。
【0123】
図26には、観測発光波長が543nmの場合の励起スペクトルと、252nmで励起した場合の発光スペクトルが示される。典型的なTb3+の発光(緑色発光)が、5D4−7F5遷移による543mに確認された。本発明の生成物において、RE(ここではTb)が発光中心として機能しており、蛍光材料、さらには発光デバイスに適用可能であることを示唆する。
【0124】
図27は、実施例6の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0125】
図27のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例6の生成物は、Dy(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがDyであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0126】
図28は、実施例6の生成物のSEM像を示す図である。
【0127】
図28より、サイズは不均一であるものの、層状希土類水酸化物に典型的な小板が凝集したモルフォロジーが示される。また、一部形状が崩れているもの、その形状は矩形であった。このことからも、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0128】
図29は、実施例7の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0129】
図29のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例7の生成物は、Ho(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがHoであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0130】
図30は、実施例7の生成物のSEM像を示す図である。
【0131】
図30より、一部形状が崩れているものの、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0132】
図31は、実施例8の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0133】
図31のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、実施例1と同様に、約10.6°および約21.2°に層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)に典型的なピークを示したが、Nd(OH)3を示すピークも一部認められた。このことから、実施例8の生成物は、Nd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2OとNd(OH)3との混合物であることがわかった。構造精密化の結果、Nd(OH)3の生成量は10%以下であり、Nd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oが主生成物であることがわかった。
【0134】
図32は、実施例8の生成物のSEM像を示す図である。
【0135】
図32には、層状希土類水酸化物に典型的な小板が凝集したモルフォロジーに加えて、針状の小片も示される。特に、小板の形状は矩形であった。このことからも、実施例8の生成物は、Nd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O(矩形小板モルフォロジー)とNd(OH)3(針状モルフォロジー)との混合物であることが示唆される。以上より、完全な単体ではないものの、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがNdであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが分かった。
【0136】
図33は、実施例9の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0137】
図33によれば、La(OH)3に相当するピークが主として検出されたが、わずかながら約10.6°および約21.2°に層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)に典型的なピークが見られた。このことから、実施例9の生成物は、主としてLa(OH)3であるものの、La(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oも含むことが分かった。完全な単体ではないものの希土類元素REのうちLa、Nd(実施例8を参照)、Sm(実施例3を参照)において、本発明の層状希土類水酸化物が得られることから、周期律表のLaとSmとで挟まれたCe、PrおよびPmについても本発明の層状希土類水酸化物が得られることは容易に類推される。
【0138】
図34は、実施例10の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0139】
図34によれば、いずれのXRDパターンも、図24に示される実施例5と同様のXRDパターンであった。このことから、実施例10の生成物は、Tb(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。以上より、アルカリ金属のハロゲン化物を追加することなく、層状希土類水酸化物が得られることが示された。
【0140】
さらに、図34のTbCl35mMから得られた生成物のXRDパターンのピーク強度は、図24に示されるXRDパターンのピーク強度よりも低いことが分かった。このことから、同じTbCl3モル濃度を用いた場合、アルカリ金属のハロゲン化物(実施例5ではNaCl)を加えることによって、結晶性が向上することが示された。しかしながら、TbCl310mM以上の高濃度の塩を用いた場合、アルカリ金属のハロゲン化物を加えることなく、結晶性のよい良質な層状希土類水酸化物が得られることを確認した。以上より、図2のステップS210におけるREZ3として10mM未満の比較的低濃度の塩を採用する場合には、アルカリ金属のハロゲン化物を加えるこが望ましいことが示唆される。
【0141】
図35は、実施例11の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0142】
図35のXRDパターンは、図24に示される実施例5と同様のXRDパターンであった。このことから、実施例11の生成物は、Tb(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。以上より、アルカリ金属のハロゲン化物を追加することなく、かつ、溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いても、層状希土類水酸化物が得られることが示された。
【0143】
図36は、実施例12の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0144】
図36のXRDパターンは、図24に示される実施例5と同様のXRDパターンであった。このことから、実施例12の生成物は、Tb(OH)2.5Br0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がBr−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0145】
図37は、実施例12の生成物のSEM像を示す図である。
【0146】
図37より、一部無定形形状を示す部分を含むものの、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。以上より、図2のステップS210においてREZ3として塩化物に替えて臭化物を用いても、層状希土類水酸化物が得られることが示された。このことは、ハロゲン元素は、ClおよびBrに限定されず、その他のハロゲン元素を含有する層状希土類水酸化物もまた容易に合成されることを示唆する。ここでもやはり、中間層Z−120がハロゲン元素である層状希土類水酸化物のモルフォロジーは、矩形の板状であることが示される。
【0147】
図38は、比較例1の生成物のSEM像を示す図である。
【0148】
比較例1の生成物のモルフォロジーは、層状希土類水酸化物に典型的な板状であり、生成物全体にわたって均一に得られた。なお、板状の形状は、中間層Z−120がハロゲンの場合と異なり、細長六角形であった。この細長六角形は、非特許文献1に示される形状と同様であり、硝酸型層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0149】
図39は、比較例1の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0150】
図39のXRDパターンには、9.8°および19.7°の強いピークに加えて、多数の鋭い回折線が見られた。このパターンの指数づけを行ったところ、本化合物は単斜晶であり、格子定数としてa=12.800(7)Å,b=7.692(8)Å,c=9.002(9)Åおよびβ=94.65(9)°が得られた。a軸およびb軸の長さが塩素型化合物(すなわち中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物)のそれと非常によく一致することから、本化合物は塩素型化合物と同一のホスト層を有していることが示唆される。層間イオンがハロゲンイオンから硝酸イオンに変わったことの影響によりホスト層の積層様式が変化し、単斜晶構造をとると理解される。以上より、比較例1の生成物は、組成式Eu(OH)2.5(NO3)0.5・0.9H2Oで表される硝酸型層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0151】
図6と図39とのXRDの回折線を比較したところ、図39は、図6に比べて回折線が多く複雑であった。一般的に、結晶構造の対称性が低くなると、XRDに現れる回折線の数が増加することが知られている。このことから、実施例1の塩素型層状希土類水酸化物の結晶構造の対称性は、比較例1の硝酸型層状希土類水酸化物のそれに比べて高いことが示唆される。
【0152】
また、図6と図38とのXRDの回折線の線巾を比較したところ、図6は、図39に比べて回折線がシャープであり、線巾が短いことが分かった。一般に、結晶性が高いと、XRDの回折線の線巾は短く、ピークがシャープになることが知られている。このことから、実施例1の塩素型層状希土類水酸化物の結晶性は、比較例1の硝酸型層状希土類水酸化物のそれに比べて高いことが示唆される。
【0153】
以上の実施例を用いて、本発明によるハロゲン型層状希土類水酸化物を詳述してきた。特に、実施例1によれば、本発明によるハロゲン型層状希土類水酸化物の室温におけるアニオン交換能が確認された。また、実施例1および実施例5によれば、本発明によるハロゲン型層状希土類水酸化物の希土類元素に基づく蛍光が確認された。これらから、本発明の層状希土類水酸化物が発光材料およびアニオン交換材料として好適であることが示唆される。
【0154】
さらに、実施例1〜実施例8によれば、均一沈殿法を採用すれば所定の割合で希土類元素REのハロゲン化物(中でも、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、DyおよびHoからなる群から選択された元素)とHMTとを超純水に溶解し、得られた混合水溶液を加熱するだけで、本発明の層状希土類水酸化物を少なくとも主成分として容易に得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、REは希土類元素であり、Zはハロゲン元素である。このような組成式で表される層状希土類水酸化物は、高い対称性の結晶構造を有し、かつ、高い結晶性を有する。また、Zは、REに直接配位しないため、室温にてアニオン交換能を示す。このような層状希土類水酸化物を用いれば、高効率なアニオン交換材料を提供できる。さらに、本発明の層状希土類水酸化物は、希土類元素に基づいて蛍光を示すので、蛍光材料として機能し得る。当然のことながら、本発明の層状希土類水酸化物は、カウンターアニオンを有する層状物質に基づくアニオン交換材料、希土類元素に基づく発光材料、磁性材料、触媒材料、および、これらを組み合わせた材料に、さらにはそれら材料を利用したデバイスに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明による層状希土類水酸化物の模式図(A)および結晶構造(B)を示す図
【図2】例示的な本発明による層状希土類水酸化物を製造するステップを示すフローチャート
【図3】実施例1の生成物のSEM像を示す図
【図4】実施例1の生成物のTEM像を示す図
【図5】実施例1のSAEDパターン(A)および基本単位格子と超格子との関係(B)を示す図
【図6】実施例1の生成物のXRDパターンを示す図
【図7】実施例1の生成物の高分解能シンクロトロン粉末X線回折(XRD)パターンを示す図
【図8】層状結晶構造モデルの模式図
【図9】実施例1の生成物のリートベルトパターンを示す図
【図10】電子密度分布を示す図
【図11】実施例1における生成物中のEuの配位環境を示す図
【図12】実施例1の生成物の励起スペクトル(A)および発光スペクトル(B)を示す図
【図13】実施例1の生成物のアニオン交換後のXRDパターンを示す図
【図14】実施例1の硝酸ナトリウム(NO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図
【図15】実施例1の硫酸ナトリウム(SO42−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図
【図16】実施例1のドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図
【図17】実施例1のアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトルを示す図
【図18】実施例2の生成物のXRDパターンを示す図
【図19】実施例2の生成物のSEM像を示す図
【図20】実施例3の生成物のXRDパターンを示す図
【図21】実施例3の生成物のSEM像を示す図
【図22】実施例4の生成物のXRDパターンを示す図
【図23】実施例4の生成物のSEM像を示す図
【図24】実施例5の生成物のXRDパターンを示す図
【図25】実施例5の生成物のSEM像を示す図
【図26】実施例5の生成物の励起/発光スペクトルを示す図
【図27】実施例6の生成物のXRDパターンを示す図
【図28】実施例6の生成物のSEM像を示す図
【図29】実施例7の生成物のXRDパターンを示す図
【図30】実施例7の生成物のSEM像を示す図
【図31】実施例8の生成物のXRDパターンを示す図
【図32】実施例8の生成物のSEM像を示す図
【図33】実施例9の生成物のXRDパターンを示す図
【図34】実施例10の生成物のXRDパターンを示す図
【図35】実施例11の生成物のXRDパターンを示す図
【図36】実施例12の生成物のXRDパターンを示す図
【図37】実施例12の生成物のSEM像を示す図
【図38】比較例1の生成物のSEM像を示す図
【図39】比較例1の生成物のXRDパターンを示す図
【符号の説明】
【0157】
100 層状希土類水酸化物
110 [RE8(OH)20(H2O)x]4+層またはホスト層
120 中間層
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状希土類水酸化物、それを用いたアニオン交換材料および蛍光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
層状物質は、強い化学結合を介して2次元方向に拡がったホスト層が積み重なった構造を有し、多種多様な化合物がある。また、層状物質は、層と層との間に異種物質(ゲスト)を取り込む反応性(インターカレーション)を示すことが知られている。
【0003】
最近、アニオン交換能を有する層状物質として層状希土類水酸化物が報告された(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、水熱法により、組成式Ln2(OH)5NO3・xH2O(Ln=Y、Gd〜Lu、x≒1.5)で示される硝酸型層状希土類水酸化物が合成される。また、非特許文献1によれば、層状希土類水酸化物中の硝酸イオンが、有機カルボン酸塩およびスルホン酸イオンとアニオン交換すること、および、LnがTbおよびDyにおいて弱いながらも蛍光を示すことが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1によれば、硝酸型層状希土類水酸化物では、極めて多数の回折線が重畳して現れており、結晶の対称性が低いことが示唆される。そのため、複雑な結晶構造となり、良質な結晶が得られていない一因となっていると考えられる。また、その結晶性も十分とはいえない。したがって、より高い対称性の結晶構造と高い結晶性を有する層状希土類水酸化物が望ましい。
また、非特許文献1によれば、層状希土類水酸化物中の希土類元素Lnは、YおよびGd〜Luに限定されており、その他の希土類元素を含む層状希土類水酸化物、さらには硝酸型以外の層状希土類水酸化物が望まれており、特に、希土類元素の中でもEuを含有する層状希土類水酸化物は、Euに基づく赤色発光が期待できる。
【0005】
【非特許文献1】McIntyreら, Chem. Mater., 20, 335−340(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より、本発明の目的は、高い対称性の結晶構造および高い結晶性を有する層状希土類水酸化物、それを用いたアニオン交換材料および蛍光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明1)本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、前記REは希土類元素であり、前記Zはハロゲン元素であることを特徴とする。
(発明2)発明1の層状希土類水酸化物であって、前記層状希土類水酸化物の結晶系は斜方晶系に属することを特徴とする。
(発明3)発明1の層状希土類水酸化物であって、正に帯電した[RE8(OH)20(H2O)X]4+層と、負に帯電したハロゲン元素からなる中間層Z−との積層構造であることを特徴とする。
(発明4)発明1の層状希土類水酸化物であって、前記ハロゲン元素ZはClまたはBrであることを特徴とする。
(発明5)発明1の層状希土類水酸化物であって、前記REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびYからなる群から選択される希土類元素であることを特徴とする。
(発明6)本発明によるアニオン交換材料は、アニオンと交換可能な中間層を有する発明1〜5のいずれかの層状希土類水酸化物からなることを特徴とする。
(発明7)本発明による蛍光材料は、発光中心となる希土類元素を含有する発明1〜5のいずれかの層状希土類水酸化物からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、REは希土類元素であり、Zはハロゲン元素である。Zとしてハロゲンイオンが存在するので、従来の嵩張った硝酸イオンに比べて、形状がシンプルで等方性球状である。その結果、高い対称性の結晶構造を有し、かつ、高い結晶性を有する層状希土類水酸化物が得られる。また、Zは、REに直接配位しないため、室温にてアニオン交換能を示す。このような層状希土類水酸化物を用いれば、高効率なアニオン交換材料を提供できる。REに基づいて蛍光を示すので、本発明の層状希土類水酸化物を用いた蛍光材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(実施の形態1)
本発明による層状希土類水酸化物の構造を説明する。
【0011】
図1は、本発明による層状希土類水酸化物の模式図(A)および結晶構造(B)を示す図である。
【0012】
本発明による層状希土類水酸化物100は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(ここで、REは希土類元素、Zはハロゲン元素、6<X<8)で表される。例えば、REがEuであり、ZがCl−であり、Xが7である場合には、Eu(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oとなる。
【0013】
希土類元素REとは、原子番号57番のランタン(La)から原子番号71番のルテチウム(Lu)までのランタノイドと、原子番号21番のスカンジウム(Sc)と、原子番号39番のイットリウム(Y)とを意図する。中でもREがEuである場合には、Euに基づく赤色発光が期待されるため好ましい。また、後述する実施例1〜12に示すように、類似の性質を示すほとんどの希土類元素(すなわち、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびY)において本発明の層状希土類水酸化物が確認されたことから、Er、Tm、YbおよびLuにおいても同様に層状希土類水酸化物が合成されることは容易に類推される。
【0014】
ハロゲン元素Zは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される元素であり、イオンとして存在する。これらのハロゲン元素Zの形状はシンプルで等方性球状である。このことは、層状希土類水酸化物100の結晶構造の対称性および結晶性の向上に寄与し得る。製造の容易性から、より好ましくは、ハロゲン元素Zは塩素またはヨウ素であり、最も好ましくは塩素である。
【0015】
Xが6〜8の範囲を有するのは、湿度によって水分子の数がわずかに変化するためである。完全な状態ではX=7である。
【0016】
層状希土類水酸化物100は、より詳細には、図1に示されるように、正に帯電した[RE8(OH)20(H2O)x]4+(6<X<8)層(またはホスト層とも呼ぶ)110と、負に帯電した中間層Z−120との積層構造を有する。ただしいずれにおいても実際には空気中から一部炭酸イオンが取り込まれる。
【0017】
図1(B)に示されるように、負に帯電した中間層Z−120が、直接REに配位していないため、中間層Z−120は異なるアニオンと容易に交換可能である(すなわち、層状希土類水酸化物100はアニオン交換能を有する)。例えば、層状希土類水酸化物100の[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがEuであり、中間層Z−120がCl−である場合、硫酸イオン(アルカリ金属の硫酸塩を含んでもよい)と層状希土類水酸化物100とを室温において接触させるだけで、層状希土類水酸化物100の積層構造を維持しつつ上述のアニオン交換が生じる。
【0018】
また、本発明による層状希土類水酸化物100のモルフォロジーは、上述の層状構造を反映した板状(小板とも呼ぶ)であり、より詳細には矩形の板状である。このような形状は、非特許文献1の六角形状とは異なり、この点からも、本発明による層状希土類水酸化物100は、上記Zがシンプルで等方性球状なハロゲンイオンにより、非特許文献1の硝酸型層状希土類水酸化物に比べて、高い対称性の結晶構造を有し、かつ、高い結晶性を有することが示唆される。なお、このようなモルフォロジーは、結晶性の程度に依存しており、結晶性が良いとエッジがシャープな形状となり、結晶性が低いとエッジがシャープでなくなる傾向がある。
【0019】
さらに、本発明による層状希土類水酸化物100の結晶系は、斜方晶系、より詳細には単純斜方格子に属する。以上のモルフォロジーおよび結晶構造より、得られた生成物が、層状希土類水酸化物であるか否かは、簡易的には電子顕微鏡による表面観察により小板が確認されるか否か、詳細には、生成物のX線回折パターンの指数付けより判定できる。
【0020】
また、REにおいて、発光特性および磁性の発現および高い触媒活性が知られている。本発明の層状希土類水酸化物100においても、アニオン交換能に加えて、含有されるREに基づく発光特性、磁性および触媒活性の発現、それを利用した応用(アニオン交換材料、発光材料、磁性材料等)が期待される。
【0021】
(実施の形態2)
本発明による層状希土類水酸化物の製造方法は、特に限定されないが、一例として均一沈殿法により製造することができる。本発明による層状希土類水酸化物は、例えば、希土類元素のハロゲン化物と、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)または尿素と、水を含有する溶媒とからなる混合水溶液中のヘキサメチレンテトラミン(HMT)または尿素を分解して、希土類元素のハロゲン化物を加水分解することによって得られる。便宜上、混合水溶液の調製と、希土類元素のハロゲン化物の加水分解とを分けて説明する。フローチャートを参照し、詳述する。
【0022】
図2は、例示的な本発明による層状希土類水酸化物を製造するステップを示すフローチャートである。
【0023】
ステップごとに詳述する。
【0024】
ステップS210:REのハロゲン化物(以降では単にREZ3と称する)と、ヘキサメチレンテトラミン(以降では単にHMTと称する)または尿素と、水を含有する溶媒とを含む混合水溶液を調製する。REおよびZは、それぞれ、実施の形態1で説明した希土類元素およびハロゲン元素である。
【0025】
水を含有する溶媒とは、水(例えば、超純水)単独であってもよいし、水に加えてエタノール等の非水溶媒を用いてもよいが、少なくとも水があればよい。これは、希土類イオンが水と水和することにより、反応が促進されるためである。なお、少なくとも水があればよいため、水を含有する溶媒とともに、REZ3の水和物を用いてもよい。
【0026】
HMTおよび尿素は、いずれも、分解後に混合水溶液のpHを上昇するよう機能する。好ましくは、REZ3とHMTまたは尿素とのモル比は、0.75である。この比を外れると、RE(OH)3、RE(OH)2Cl等の不純物が生成する場合がある。
【0027】
混合水溶液のpHは、例えば、REが、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびYからなる群から選択される元素である場合、5.5以上6.5以下の範囲となる。この範囲であれば、後述するステップS220により混合水溶液のpHが8〜10まで上昇し、REZ3の加水分解が促進するため、層状希土類水酸化物を確実に得ることができる。一方、REがLaである場合、混合水溶液のpHは上記範囲よりも低く、4.5以上5.5未満の範囲になるように設定することが好ましい。これは、希土類系列においてはサイズが大きくなるほど、すなわちLa側になるほど塩基性度が高まり、RE(OH)3が生成しやすい傾向があるためである。これを抑えるためにpHを低めに設定するのが層状水酸化物の生成に有効である。なお、このようなpHの調整には、例えば、HCl等の酸を適宜加えればよい。このように選択するREに応じて、混合水溶液のpHは適宜調整される。
【0028】
ステップS210において、上述の混合水溶液にアルカリ金属のハロゲン化物をさらに混合してもよい。アルカリ金属のハロゲン化物は、例えば、NaCl、KCl等であるが、これらに限定されない。これにより、REZ3の濃度が低い条件においても、合成が促進される。この結果、得られる層状希土類水酸化物のモルフォロジーまたは結晶性が向上し得る。
【0029】
ステップS220:ステップS210で得た混合水溶液中のHMTまたは尿素を分解し、REZ3を加水分解する。
【0030】
HMTおよび尿素は、分解されて、アンモニアを生成する。これにより混合水溶液のpHが上昇し、アルカリ性となる。その結果、REZ3が加水分解され、層状希土類水酸化物の沈殿が生じる。HMTおよび尿素は、(好ましくは加熱により)いずれも制御された速度でゆっくりとアンモニアを生成するため、核生成および結晶化に偏りがなく、粒径のそろった結晶性の高い良質な層状希土類水酸化物が得られる。
【0031】
HMTおよび尿素の分解は、例えば、ステップS210で得られた混合水溶液を室温にて長時間攪拌して行われるが、効率の観点から、少なくとも70℃以上の温度で攪拌しながら加熱することが好ましい。これにより、HMTおよび尿素の分解が促進されるため、合成が効率的に進行する。30分〜1時間の加熱により結晶の生成が目視にて確認できるが、典型的には、加熱は、6時間〜10時間の間行われる。特に、8時間以上加熱すると、層状希土類水酸化物の結晶性が向上するため好ましい。また、加熱温度の上限は、用いる溶媒によって異なるが、100℃を超えない温度である。
【0032】
ステップS220に続いて、得られた層状希土類水酸化物を洗浄し、室温にて乾燥させてもよい。これにより取扱の簡便な粉末状の層状希土類水酸化物を得ることができる。洗浄は、水およびエタノールで数回繰返し行われる。
【0033】
これにより本発明の層状希土類水酸化物が得られる。なお、本発明の層状希土類水酸化物の製造方法は、図2を参照して説明した均一沈殿法に限定されないが、均一沈殿法であれば、オートクレーブ等の専用高圧装置は不要であり、簡便、安価かつ大量に層状希土類水酸化物を提供できるため有利である。
【0034】
次に、実施例を述べるが、本発明は実施例に限定されるものではないことに留意されたい。
【実施例1】
【0035】
REZ3としてEuCl3・6H2O(5mM)と、HMT(3.75mM)と、NaCl(65mM)とを1000mlの超純水に溶解させ、最終濃度を5.65mMの混合水溶液を調製した(図2のステップS210)。なお、ここで、希土類元素のハロゲン化物が6つの水分子を有するが、希土類元素のハロゲン化物は吸湿性であるため、環境によって6〜7の間で変動することが分かっている。以降の実施例においても同様に取り扱う。このようにして得られた混合水溶液のpHは、約6であった。次いで、混合水溶液をマグネチックスターラで攪拌し、窒素ガス中において還流温度(約100℃)で加熱した。これにより、HMTを分解させた(図2のステップS220)。このとき混合水溶液のpHは、約8まで上昇していた。これらの操作は、窒素フロー下にて、還流冷却器を備えた二口フラスコを用いて行った。
【0036】
1時間後、混合溶液中に白い流線が観察された。これは、異方性形状の結晶が形成されたことを示唆する。次いで、生成物をろ過し、水とエタノールとで数回洗浄した後、室温にて乾燥させた。
【0037】
このようにして得られた生成物のモルフォロジーおよび構造を、走査型電子顕微鏡SEM(JEOL、JSM−6700F)および透過型電子顕微鏡TEM(JEOL、JEM−1010)を用いて観察した。観察結果を図3および図4に示し、後述する。また、TEMを用いて、銅グリッドにのせた生成物から制限視野回折パターン(SAED)を得た。結果を図5に示し後述する。
【0038】
生成物の構造評価を、X線回折を用いて行った。X線回折は、Cu対陰極(Cu−Kα線)(λ=1.5405Å)を備えたRigaku Rint−2000回折計で測定した。さらなる構造解析を行うため、大型放射光施設(Spring 8)のビームラインBL15(λ=0.65297Å)を用いて、高分解能シンクロトロン粉末X線回折データを得た。それぞれの結果を図6および図7に示し後述する。
【0039】
次いで、図7の結果を用いて構造決定を行った。構造決定は以下の手順で行った。まず、図7のXRDパターンから、Le Bail法を用いて、積分強度を抽出した。抽出された積分強度を、最大エントロピーパターソンプログラムALBAにより再配分し、より信頼性の高い値を得た。得られた構造因子を直接法プログラムEXPO2004に導入し、希土類原子の位置を求めた。他の原子の位置は、MEM/Rietveldによる電子密度分布解析により求めた。最終的にRIETAN−FPプログラムを用いて構造を精密化した。PRIMAプログラムによって得られた構造因子F0値を用いて、MEMにより電子密度分布を求めた。電子密度分布にさらなるピークが見つかった場合には、構造モデルを修正し、信頼性因子(R因子)のさらなる減少が見えなくなるまで精密化を繰り返した。これらの結果を図8〜11および表2に示し、詳述する。
【0040】
生成物の元素分析を行った。Euの量は、試料を塩酸水溶液中に溶解後、誘導結合プラズマ(ICP)原子発光分析(Seiko SPS1700HVR)を用いて測定した。生成物中のOHの量は、精秤した試料を硫酸(0.1モル)に溶解させたのち、NaOHによる中和滴定により求めた。生成物中のClの量をイオン電極法により求めた。この際、濃度メータとしてDKK IM−40Sを、イオン電極としてDKK CL−125Bを、参照電極としてDKK RE−2を用いた。生成物中のC含量をLECO RC−412分析装置により求めた。生成物中の含水量を熱重量分析により求めた。得られた生成物の元素分析の結果を、図8〜11および表2を参照しながら後述する。
【0041】
生成物の発光特性について調べた。室温における励起スペクトルおよび発光スペクトルを、蛍光分光光度計(Hitachi F−4500)を用いて測定した。測定結果を図12に示し、詳述する。
【0042】
次に、生成物のアニオン交換能について調べた。試料(0.2g)をNaNO3水溶液(1M、200cm3)、Na2SO4水溶液(1M、200cm3)、および、ドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3Na)水溶液(0.5M、200cm3)それぞれに分散させた。それぞれの混合水溶液を含む反応容器を密閉し、室温にて2日間振盪させた。2日後、各反応容器から試料を回収した。
【0043】
回収した試料の構造評価を、X線回折を用いて行った。X線回折は、Cu対陰極(Cu−Kα線)(λ=1.5405Å)を備えたRigaku Rint−2000回折計で測定した。結果を図13に示し、後述する。回収した試料のモルフォロジーを、SEMを用いて観察した。観察結果を図14〜16に示し、後述する。
【0044】
回収した試料についてフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)を行い、アニオン交換されたか否かについて定性分析を行った。測定は、400〜4000cm−1の波数範囲について、MCT検出器を備えたVarian 7000e FT−IR分光光度計を用いて、KBrペレット法により行った。結果を図17に示し後述する。
【実施例2】
【0045】
実施例1において、REZ3としてYCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図18および19に示し、後述する。
【実施例3】
【0046】
実施例1において、REZ3としてSmCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図20および21に示し、後述する。
【実施例4】
【0047】
実施例1において、REZ3としてGdCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図22および23に示し、後述する。
【実施例5】
【0048】
実施例1において、REZ3としてTbCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRD、SEMおよび励起・発光スペクトルを測定した。結果を図24〜26に示し、後述する。
【実施例6】
【0049】
実施例1において、REZ3としてDyCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図27および28に示し、後述する。
【実施例7】
【0050】
実施例1において、REZ3としてHoCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図29および30に示し、後述する。
【実施例8】
【0051】
実施例1において、REZ3としてNdCl3・6H2O(5mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例1と同様に、XRDおよびSEMを測定した。結果を図31および32に示し、後述する。
【実施例9】
【0052】
REZ3としてLaCl3・6H2O(5mM)と、HMT(3.75mM)と、NaCl(65mM)とを1000mlの超純水に溶解させ、混合水溶液を得た。この混合水溶液にさらにHCl(0.1M)を加え、混合水溶液のpHが5となるように調製した(図2のステップS210)。次いで、混合水溶液をマグネチックスターラで攪拌し、窒素ガス中において還流温度(約100℃)で加熱した。これにより、HMTを分解させた(図2のステップS220)。これらの操作は、窒素気流下にて、還流冷却器を備えた二口フラスコを用いて行った。
【0053】
1時間後、混合溶液中に白い流線が観察された。これは、異方性形状の結晶が形成されたことを示唆する。次いで、生成物をろ過し、水とエタノールとで数回洗浄した後、室温にて乾燥させた。得られた生成物について、実施例1と同様にXRDを測定した。結果を図33に示し、後述する。
【実施例10】
【0054】
実施例5において、NaClを用いることなく、TbCl3・6H2Oの濃度を5mM、10mM、15mM、25mMおよび50mMとした以外は、同様の手順によって生成物を得た。各濃度から得られた生成物について、実施例5と同様にXRDを測定した。結果を図34に示し、後述する。
【実施例11】
【0055】
実施例5において、NaClを用いることなく、および、超純水に代えてエタノールと水との混合溶媒(エタノール:水=9:1)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例5と同様にXRDを測定した。結果を図35に示し、後述する。
【実施例12】
【0056】
実施例5において、TbCl3・6H2OおよびNaClに代えて、それぞれ、TbBr3・6H2O(5mM)およびNaBr(65mM)を用いた以外は、同様の手順によって生成物を得た。得られた生成物について、実施例5と同様にXRDおよびSEMを測定した。結果を図36および37に示し、後述する。
【比較例1】
【0057】
実施例1のEuCl3に代えてEuNO3・6H2O(5mM)と、HMT(3.75mM)と、NaNO3(65mM)とを1000mlの超純水に溶解させ、最終濃度を5.65mMの混合水溶液を調製した(図2のステップS210)。なお、ここで、実施例1と同様に、希土類元素の硝酸塩が6つの水分子を有するが、希土類元素の硝酸塩は吸湿性であるため、環境によって6〜7の間で変動することが分かっている。次いで、混合水溶液をマグネチックスターラで攪拌し、窒素ガス中において還流温度(約100℃)で加熱した。これにより、HMTを分解させた(図2のステップS220)。これらの操作は、窒素気流下にて、還流冷却器を備えた二口フラスコを用いて行った。
【0058】
1時間後、混合溶液中に白い流線が観察された。これは、異方性形状の結晶が形成されたことを示唆する。次いで、生成物をろ過し、水とエタノールとで数回洗浄した後、室温にて乾燥させた。
【0059】
得られた生成物について、実施例1と同様にXRDおよびSEMを測定した。結果を図38および39に示し、後述する。
以上の実施例1〜12と比較例1との実験条件および結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
XRDパターン、励起スペクトルおよび発光スペクトルの強度(カウント値)は測定装置や条件によって変化するため単位は任意単位である。すなわち、同一条件で測定した本実施例内でしか比較できないことに留意されたい。
【0062】
図3は、実施例1の生成物のSEM像を示す図である。
【0063】
図4は、実施例1の生成物のTEM像を示す図である。
【0064】
図3および図4から、得られた生成物は、矩形の板状(小板)であることが確認された。また、図3から、生成物全体にわたって均一な大きさであることが分かった。図4から、矩形の小板のモルフォロジー(板厚)は、約20nm程度であった。また、矩形の小板一枚の大きさは、長手方向に約2μmであり、短手方向に約1μmであった。これらの特徴は、中間層Z−120(図1)がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを強く示唆する。
【0065】
図5は、実施例1のSAEDパターン(A)および基本単位格子と超格子との関係(B)を示す図である。
【0066】
図5(A)には、輝度の異なる2組のスポット群が示されている。これは、超格子構造が形成されていることを示唆する。詳細には、六角形を形成するより明るいスポットは、六方対称の基本単位格子(af=3.7Å)に相当する。一方、矩形を形成するやや暗いスポットは、長方形超格子(as=2√3Å、af=13.1Å、bs=2af=7.4Å)に相当する。これら基本単位格子と超格子との関係を図5(B)に模式的に示す。基本単位格子(六方晶単位格子)は、希土類原子(ここではEu)の六方晶配列を示しており、ブルサイト型(Mg(OH)2)または層状複水酸化物LDH型([M2+αM3+1−α(OH)2]1−α(αは1を超えない有理数))のホスト層構造との類似性を暗示している。理想的なブルサイト構造の原子位置からのずれによって、長方形超格子が形成されていると考えられる。
【0067】
図6は、実施例1の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0068】
XRDパターンは、鋭い複数の回折ピークから構成され、生成物が高い結晶性を持っていることを示す。特に低角度域の約10.6°および約21.2°の極めて強いピークは、得られた生成物が層状物質であることを暗示している。次に、実施例1の生成物の結晶構造をより詳細に調べた。
【0069】
図7は、実施例1の生成物の高分解能シンクロトロン粉末X線回折(XRD)パターンを示す図である。
【0070】
図7のXRDパターンに見られるピークはいずれも、斜方晶、詳細には単純斜方格子に指数付けができた。特に、001反射および002反射のピーク強度は他のピーク強度に比べて強かった。これらのピークが、図6の約10.6°および約21.2°のピークに一致することを確認した。単純斜方格子の格子定数a、bおよびcは、それぞれ、a=12.92(1)Å、b=7.38(1)Åおよびc=8.71(1)Åであった。aとbとの比は、√3に完全な一致をしなかった。これは、上述の六方対称の基本単位格子が、理想的なブルサイト構造のように完全な六方対称でないことを示唆している。
【0071】
図7から得られたaおよびbは、図5(A)のSAEDパターンから得られたaおよびbに良好に一致した。このことは、図4で見られた小板が、{001}結晶面上に位置しており、図5(A)のSAEDパターンは、[001]方向、すなわちz軸に沿って撮影されたことを示す。
【0072】
組成分析の結果、元素組成はEu(OH)2.36Cl0.51(CO3)0.065・0.87H2Oであることが分かった。図7のXRDパターンにおける指数付けの結果から、h=2n+1(h00の場合)およびk=2n+1(0k0の場合)の一連のピークが消滅していることが分かった。このことは、生成物の空間群がP21212であることを示唆する。また、Le Bail法による強度抽出を行った結果、空間群P21212が最も良好に一致した。以上より、生成物の空間群はP21212と結論できた。
【0073】
次に、図5を参照して説明したように単位格子中に8個のEuが存在することから、Z=8とし、単位式をEu8(OH)18.88Cl4.08(CO3)0.52・6.96H2Oとした。簡単のため、炭酸イオンの電荷を水酸化物イオンに移し、単位式をEu8(OH)20Cl4・7.0H2Oとした。まず、プログラムEXPO2004を用いた直接法を適用し8個のEuの原子位置を求めた。他の軽い元素種(OH、H2O、Cl)は、最大エントロピー法のMEM/Rietveldを採用した電子密度分布解析により求めた。この結果から、層状結晶構造モデルを生成した。
【0074】
図8は、層状結晶構造モデルの模式図である。
【0075】
図8の左図は、[001]方向から投影した層状結晶構造モデルであり、図8の右図は、[010]方向の層状結晶構造モデルである。これらの結晶構造モデルに基づいて、RIETAN−FPプログラムから構造パラメータを精密化した。その結果、図9に示す。
【0076】
図9は、実施例1における生成物のリートベルトパターンを示す図である。
【0077】
図9には、実験値、計算値および差分を示す。図9に示す通り満足すべきパターンフィッティングが達成された。最終的な信頼度因子(R因子)は、Rwp=2.04%(S=0.5167)、Rp=1.52%、RI=3.98%およびRF=1.65%となった。これら極めて小さなR因子により、図8で示した層状構造モデルが妥当であることが示唆される。精密化の結果得られた構造パラメータを表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2において、括弧内の数字は標準偏差である。空間群をP21212とし、格子定数a、bおよびcは、それぞれ、a=12.9155(3)Å、b=7.3763(1)Åおよびc=8.7023(3)Åであった。温度因子(Biso)はいずれも、Euのサイトについては1.0Å2に、他の種のサイトについては2.0Å2に固定した。最終段階では、元素分析によって決定された元素組成にしたがって、水分子の占有率を固定した。また、Eu3のサイトは、P21212が対称心を持たない空間群であるため、直接法から得られた値で固定した。
【0080】
図10は、電子密度分布を示す図である。
【0081】
図10の電子密度分布解析の結果の図示化によれば、電子密度分布は、図8の層状結晶構造モデルに良好に一致した。注目すべき特徴は、中間層Cl−に相当する電子密度が、ほぼ球状分布を示していることである。これは、Cl−もまた層間において良好に配列しており、中間層アニオンが無秩序に配列することの多い他の層状複水酸化物とは異なる特徴を示す。
【0082】
以上の結果から、実施例1で得られた生成物の構造が図1を参照して説明した層状希土類水酸化物であることが示された。詳細には、層状希土類水酸化物は、RE(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oの組成式を満たし、正に帯電した[Eu8(OH)20(H2O)7]4+層と、層間に位置する負に帯電した中間層Cl−とからなる。これにより、電荷が補償され安定化している。
【0083】
次に、Euカチオンサイトの配位について説明する。Euカチオンには、8配位すなわち7つの水酸基および1つの水分子を伴う4c(0.2736, 0.2503, 0.9349)位置、ならびに、9配位すなわち8つの水酸基および1つの水分子を伴う2a(0, 0, 0.9194)サイトまたは2b(0, 0.5, 0.9324)位置の3パターンがある。
【0084】
図11は、実施例1における生成物中のEuの配位環境を示す図である。
【0085】
図11には、上述の3つの異なるEuサイトの配位環境を模式的に示す。いずれの配位においても、水酸基はすべて、距離2.1Å〜2.6ÅでEuと結合している。また、8配位および9配位におけるH2OとEuとの距離は、それぞれ、2.35(2)Åと、2.65(6)および2.45(5)Åとであった。これらの水酸基とH2O分子とに配位されたEuが2次元方向に連鎖して、図1の110に示すようなab面に平行な層が生成される。
【0086】
理想的な面内六方晶配列からのEuの位置のずれは、SAEDの結果に良好に一致した。これは、現実の構造において六方対称の基本単位格子が実質的に認められるものの、Euの位置が[001]方向すなわちz軸方向に波打つと同時にab面でも歪んでおり、その結果、斜方晶、詳細には単純斜方超格子となっているためである。以上より、本発明の層間にClイオンを含む層状希土類水酸化物の結晶系は斜方晶に属し、詳細には、単純斜方超格子構造を有していることが分かった。
【0087】
図12は、実施例1の生成物の励起スペクトル(A)および発光スペクトル(B)を示す図である。
【0088】
図12(A)は、観測発光波長が612nm(5D0−7F2線)の場合の励起スペクトルであり、図12(B)は、395nm(intra−4f6直接励起)で励起した場合の発光スペクトルである。励起スペクトルは、Eu3+の4f6電子配置内のintra−4f6遷移に起因する複数の鋭いピークを示した。発光スペクトルは、578.4nm、594.6nm、612.4nm、649.0nmおよび696.8nmに、典型的な5D0−7Fj(j=0〜4)遷移を示した。5D1のようなより高い励起準位からの蛍光は検出されなかった。このことは、5D0準位へ極めて効率的に非放射緩和することを示唆する。
【0089】
図12(B)の5D0−7Fj(j=0〜4)遷移の発光ピーク強度、および、これらの発光ピークの分裂を用いて、Eu3+イオンの環境を調べた。図12(B)によれば、約612nmに5D0−7F2遷移の最も強い発光ピークを示した。理論的には、Eu3+が、結晶格子において反転対称となる場合、約590nmにおける磁気双極子遷移5D0−7F1が主要な発光ピークとなり、そうでない場合には、約610nm〜620nmにおける電気双極子遷移5D0−7F2が主要な発光ピークとなる。このことから、実施例1の層状希土類水酸化物におけるEu3+は反転対称とならない、すなわち、反転中心を有していないことが示唆される。
【0090】
また、図12(B)によれば、5D0−7F1遷移および5D0−7F2遷移による発光ピークは、それぞれ、3つおよび2つにピーク分裂した。このことは、Eu3+のまわりの結晶場の対称性が低いことを示唆する。これらの結果は上記結晶構造解析結果とよく符合するものであった。図11を参照して説明したように、Eu3+は、2つの局所的な配位、すなわち、点群C1における8配位の4c位置と、点群C4νにおける9配位の2aおよび2b位置とをとることが示されており、Eu3+の2つの配位(すなわち、3つの位置)のいずれも、反転中心のない低い対称性に属する。
【0091】
以上、図12の励起スペクトルおよび発光スペクトルにより、典型的なEu3+の発光(赤色発光)が確認された。このことは、本発明の生成物において、RE(ここではEu)が発光中心として機能しており、蛍光材料、さらには、発光デバイスに適用可能であることを示唆する。
【0092】
図13は、実施例1の生成物のアニオン交換後のXRDパターンを示す図である。
【0093】
図13には、参考のためアニオン交換前の試料(層間にClイオンを含む)のXRDパターンも合わせて示す。アニオン交換後の生成物のXRDパターンは、いずれも明確なピークシフトを示した。
【0094】
アニオン交換前の層間距離は、8.63Åであった。一方、硝酸ナトリウム(NO3−)および硫酸ナトリウム(SO42−)およびドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物の層間距離は、それぞれ、8.32Å、8.94Åおよび23.6Åに変化した。
【0095】
また、アニオン交換後の生成物のXRDパターンは、いずれも、鋭い回折ピークを維持しており、アニオン交換時のプロセスによっても高い結晶性が維持されることが分かった。
【0096】
図14は、実施例1の硝酸ナトリウム(NO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図である。
【0097】
図15は、実施例1の硫酸ナトリウム(SO42−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図である。
【0098】
図16は、実施例1のドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図である。
【0099】
図3の実施例1のアニオン交換前の生成物のSEM像と、図14〜図16のSEM像とを比較すると、アニオン交換後の生成物も、アニオン交換前の生成物における矩形の小板のモルフォロジーを維持していることが分かった。このことからも、アニオン交換時のプロセスによっても高い結晶性および結晶構造が維持されることが示される。
【0100】
図17は、実施例1のアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトルを示す図である。
【0101】
図17には、参考のためアニオン交換前の生成物のFT−IR吸収スペクトル(a)も合わせて示す。いずれのスペクトル(a)〜(d)も、約3500cm−1、約1650cm−1および約620cm−1に吸収帯を示した。約3500cm−1の吸収帯は、O−H結合、ν(OH)の伸縮振動に起因し、結晶中に金属−OH層による水酸化物イオンが存在することを示唆する。約1650cm−1の吸収帯は、水分子の伸縮・変角モードに起因する。約620cm−1の吸収帯は、Eu−Oの伸縮/変角振動に起因する。
【0102】
また、図17のFT−IR吸収スペクトルは、中間層Z−の種類に起因する吸収帯も示した。詳細には、硝酸ナトリウム(NO3−)によるアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトル(b)は、1385cm−1および1410cm−1に鋭く強い吸収を示した。これらは、それぞれ、NO3−アニオンのD3h、ν3振動モード、および、O−NO2のC2ν、ν4非対称伸縮モードに起因する。これらの吸収帯は、反応前のスペクトル(a)には見られなかった。
【0103】
硫酸ナトリウム(SO42−)によるアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトル(c)は、SO42−に起因する1120cm−1に吸収を示した。この吸収帯は、スペクトル(a)には見られなかった。
【0104】
ドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトル(d)は、2920cm−1および2850cm−1に強い吸収を、2958cm−1、1470cm−1および1300cm−1〜900cm−1に比較的弱い吸収を示した。2920cm−1および2850cm−1の吸収は、それぞれ、ドデシル硫酸塩のアルキル鎖における非対称CH2伸縮振動および対称CH2伸縮振動に起因する。また、2958cm−1における比較的弱い吸収は、炭化水素の末端基であるCH3基の伸縮振動に起因する。1470cm−1近傍における比較的弱い吸収は、CH2変角(またはscissor)モードに起因する。さらに、1300cm−1〜900cm−1における一連の弱い吸収は、硫酸塩(OSO3−)の伸縮モードに起因する。これらの吸収帯は、スペクトル(a)には見られなかった。
【0105】
このように、本発明の生成物は、室温にて容易にアニオン交換可能であるとともに、アニオン交換後も高い結晶性および結晶構造(層状構造)を維持することが分かった。以上の結果は、図1を参照して説明したように、中間層120(ここではCl−層)は、カウンターアニオンとして機能することを示している。本発明の層状希土類水酸化物をアニオン交換材料として用いれば、室温にて高効率でアニオン交換が可能であることが示唆される。
【0106】
図18は、実施例2の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0107】
図18のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例2の生成物は、Y(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、図1の[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがYであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0108】
図19は、実施例2の生成物のSEM像を示す図である。
【0109】
図19から、中間層Z−120(図1)がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0110】
図20は、実施例3の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0111】
図20のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例3の生成物は、Sm(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがSmであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0112】
図21は、実施例3の生成物のSEM像を示す図である。
【0113】
図21より、実施例3の生成物のモルフォロジーは、実施例1の生成物のモルフォロジーと類似しており、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が、生成物全体にわたって均一に得られた。このことからも、層状希土類水酸化物が単相で得られたことが示唆される。
【0114】
図22は、実施例4の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0115】
図22のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例4の生成物は、Gd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがGdであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0116】
図23は、実施例4の生成物のSEM像を示す図である。
【0117】
図23より、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0118】
図24は、実施例5の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0119】
図24のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例5の生成物は、Tb(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0120】
図25は、実施例5の生成物のSEM像を示す図である。
【0121】
図25より、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0122】
図26は、実施例5の生成物の励起/発光スペクトルを示す図である。
【0123】
図26には、観測発光波長が543nmの場合の励起スペクトルと、252nmで励起した場合の発光スペクトルが示される。典型的なTb3+の発光(緑色発光)が、5D4−7F5遷移による543mに確認された。本発明の生成物において、RE(ここではTb)が発光中心として機能しており、蛍光材料、さらには発光デバイスに適用可能であることを示唆する。
【0124】
図27は、実施例6の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0125】
図27のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例6の生成物は、Dy(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがDyであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0126】
図28は、実施例6の生成物のSEM像を示す図である。
【0127】
図28より、サイズは不均一であるものの、層状希土類水酸化物に典型的な小板が凝集したモルフォロジーが示される。また、一部形状が崩れているもの、その形状は矩形であった。このことからも、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0128】
図29は、実施例7の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0129】
図29のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、約10.6°および約21.2°の強いピークに加えて、他のピークすべてが層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)のピークに一致した。このことから、実施例7の生成物は、Ho(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがHoであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことを示している。
【0130】
図30は、実施例7の生成物のSEM像を示す図である。
【0131】
図30より、一部形状が崩れているものの、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0132】
図31は、実施例8の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0133】
図31のXRDパターンは、図6のXRDパターンと同様に、実施例1と同様に、約10.6°および約21.2°に層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)に典型的なピークを示したが、Nd(OH)3を示すピークも一部認められた。このことから、実施例8の生成物は、Nd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2OとNd(OH)3との混合物であることがわかった。構造精密化の結果、Nd(OH)3の生成量は10%以下であり、Nd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oが主生成物であることがわかった。
【0134】
図32は、実施例8の生成物のSEM像を示す図である。
【0135】
図32には、層状希土類水酸化物に典型的な小板が凝集したモルフォロジーに加えて、針状の小片も示される。特に、小板の形状は矩形であった。このことからも、実施例8の生成物は、Nd(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O(矩形小板モルフォロジー)とNd(OH)3(針状モルフォロジー)との混合物であることが示唆される。以上より、完全な単体ではないものの、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがNdであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが分かった。
【0136】
図33は、実施例9の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0137】
図33によれば、La(OH)3に相当するピークが主として検出されたが、わずかながら約10.6°および約21.2°に層状希土類水酸化物(RE(OH)2.5Z0.5・0.9H2O)に典型的なピークが見られた。このことから、実施例9の生成物は、主としてLa(OH)3であるものの、La(OH)2.5Cl0.5・0.9H2Oも含むことが分かった。完全な単体ではないものの希土類元素REのうちLa、Nd(実施例8を参照)、Sm(実施例3を参照)において、本発明の層状希土類水酸化物が得られることから、周期律表のLaとSmとで挟まれたCe、PrおよびPmについても本発明の層状希土類水酸化物が得られることは容易に類推される。
【0138】
図34は、実施例10の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0139】
図34によれば、いずれのXRDパターンも、図24に示される実施例5と同様のXRDパターンであった。このことから、実施例10の生成物は、Tb(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。以上より、アルカリ金属のハロゲン化物を追加することなく、層状希土類水酸化物が得られることが示された。
【0140】
さらに、図34のTbCl35mMから得られた生成物のXRDパターンのピーク強度は、図24に示されるXRDパターンのピーク強度よりも低いことが分かった。このことから、同じTbCl3モル濃度を用いた場合、アルカリ金属のハロゲン化物(実施例5ではNaCl)を加えることによって、結晶性が向上することが示された。しかしながら、TbCl310mM以上の高濃度の塩を用いた場合、アルカリ金属のハロゲン化物を加えることなく、結晶性のよい良質な層状希土類水酸化物が得られることを確認した。以上より、図2のステップS210におけるREZ3として10mM未満の比較的低濃度の塩を採用する場合には、アルカリ金属のハロゲン化物を加えるこが望ましいことが示唆される。
【0141】
図35は、実施例11の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0142】
図35のXRDパターンは、図24に示される実施例5と同様のXRDパターンであった。このことから、実施例11の生成物は、Tb(OH)2.5Cl0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。以上より、アルカリ金属のハロゲン化物を追加することなく、かつ、溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いても、層状希土類水酸化物が得られることが示された。
【0143】
図36は、実施例12の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0144】
図36のXRDパターンは、図24に示される実施例5と同様のXRDパターンであった。このことから、実施例12の生成物は、Tb(OH)2.5Br0.5・0.9H2O単相であり、詳細には、[RE8(OH)20(H2O)x]4+層110においてREがTbであり、中間層Z−120がBr−である層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0145】
図37は、実施例12の生成物のSEM像を示す図である。
【0146】
図37より、一部無定形形状を示す部分を含むものの、中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物に典型的な矩形の小板が凝集したモルフォロジーが示される。このことからも、層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。以上より、図2のステップS210においてREZ3として塩化物に替えて臭化物を用いても、層状希土類水酸化物が得られることが示された。このことは、ハロゲン元素は、ClおよびBrに限定されず、その他のハロゲン元素を含有する層状希土類水酸化物もまた容易に合成されることを示唆する。ここでもやはり、中間層Z−120がハロゲン元素である層状希土類水酸化物のモルフォロジーは、矩形の板状であることが示される。
【0147】
図38は、比較例1の生成物のSEM像を示す図である。
【0148】
比較例1の生成物のモルフォロジーは、層状希土類水酸化物に典型的な板状であり、生成物全体にわたって均一に得られた。なお、板状の形状は、中間層Z−120がハロゲンの場合と異なり、細長六角形であった。この細長六角形は、非特許文献1に示される形状と同様であり、硝酸型層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0149】
図39は、比較例1の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0150】
図39のXRDパターンには、9.8°および19.7°の強いピークに加えて、多数の鋭い回折線が見られた。このパターンの指数づけを行ったところ、本化合物は単斜晶であり、格子定数としてa=12.800(7)Å,b=7.692(8)Å,c=9.002(9)Åおよびβ=94.65(9)°が得られた。a軸およびb軸の長さが塩素型化合物(すなわち中間層Z−120がCl−である層状希土類水酸化物)のそれと非常によく一致することから、本化合物は塩素型化合物と同一のホスト層を有していることが示唆される。層間イオンがハロゲンイオンから硝酸イオンに変わったことの影響によりホスト層の積層様式が変化し、単斜晶構造をとると理解される。以上より、比較例1の生成物は、組成式Eu(OH)2.5(NO3)0.5・0.9H2Oで表される硝酸型層状希土類水酸化物が得られたことが示唆される。
【0151】
図6と図39とのXRDの回折線を比較したところ、図39は、図6に比べて回折線が多く複雑であった。一般的に、結晶構造の対称性が低くなると、XRDに現れる回折線の数が増加することが知られている。このことから、実施例1の塩素型層状希土類水酸化物の結晶構造の対称性は、比較例1の硝酸型層状希土類水酸化物のそれに比べて高いことが示唆される。
【0152】
また、図6と図38とのXRDの回折線の線巾を比較したところ、図6は、図39に比べて回折線がシャープであり、線巾が短いことが分かった。一般に、結晶性が高いと、XRDの回折線の線巾は短く、ピークがシャープになることが知られている。このことから、実施例1の塩素型層状希土類水酸化物の結晶性は、比較例1の硝酸型層状希土類水酸化物のそれに比べて高いことが示唆される。
【0153】
以上の実施例を用いて、本発明によるハロゲン型層状希土類水酸化物を詳述してきた。特に、実施例1によれば、本発明によるハロゲン型層状希土類水酸化物の室温におけるアニオン交換能が確認された。また、実施例1および実施例5によれば、本発明によるハロゲン型層状希土類水酸化物の希土類元素に基づく蛍光が確認された。これらから、本発明の層状希土類水酸化物が発光材料およびアニオン交換材料として好適であることが示唆される。
【0154】
さらに、実施例1〜実施例8によれば、均一沈殿法を採用すれば所定の割合で希土類元素REのハロゲン化物(中でも、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、DyおよびHoからなる群から選択された元素)とHMTとを超純水に溶解し、得られた混合水溶液を加熱するだけで、本発明の層状希土類水酸化物を少なくとも主成分として容易に得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明による層状希土類水酸化物は、組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、REは希土類元素であり、Zはハロゲン元素である。このような組成式で表される層状希土類水酸化物は、高い対称性の結晶構造を有し、かつ、高い結晶性を有する。また、Zは、REに直接配位しないため、室温にてアニオン交換能を示す。このような層状希土類水酸化物を用いれば、高効率なアニオン交換材料を提供できる。さらに、本発明の層状希土類水酸化物は、希土類元素に基づいて蛍光を示すので、蛍光材料として機能し得る。当然のことながら、本発明の層状希土類水酸化物は、カウンターアニオンを有する層状物質に基づくアニオン交換材料、希土類元素に基づく発光材料、磁性材料、触媒材料、および、これらを組み合わせた材料に、さらにはそれら材料を利用したデバイスに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明による層状希土類水酸化物の模式図(A)および結晶構造(B)を示す図
【図2】例示的な本発明による層状希土類水酸化物を製造するステップを示すフローチャート
【図3】実施例1の生成物のSEM像を示す図
【図4】実施例1の生成物のTEM像を示す図
【図5】実施例1のSAEDパターン(A)および基本単位格子と超格子との関係(B)を示す図
【図6】実施例1の生成物のXRDパターンを示す図
【図7】実施例1の生成物の高分解能シンクロトロン粉末X線回折(XRD)パターンを示す図
【図8】層状結晶構造モデルの模式図
【図9】実施例1の生成物のリートベルトパターンを示す図
【図10】電子密度分布を示す図
【図11】実施例1における生成物中のEuの配位環境を示す図
【図12】実施例1の生成物の励起スペクトル(A)および発光スペクトル(B)を示す図
【図13】実施例1の生成物のアニオン交換後のXRDパターンを示す図
【図14】実施例1の硝酸ナトリウム(NO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図
【図15】実施例1の硫酸ナトリウム(SO42−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図
【図16】実施例1のドデシル硫酸ナトリウム(C12H25OSO3−)によるアニオン交換後の生成物のSEM像を示す図
【図17】実施例1のアニオン交換後の生成物のFT−IR吸収スペクトルを示す図
【図18】実施例2の生成物のXRDパターンを示す図
【図19】実施例2の生成物のSEM像を示す図
【図20】実施例3の生成物のXRDパターンを示す図
【図21】実施例3の生成物のSEM像を示す図
【図22】実施例4の生成物のXRDパターンを示す図
【図23】実施例4の生成物のSEM像を示す図
【図24】実施例5の生成物のXRDパターンを示す図
【図25】実施例5の生成物のSEM像を示す図
【図26】実施例5の生成物の励起/発光スペクトルを示す図
【図27】実施例6の生成物のXRDパターンを示す図
【図28】実施例6の生成物のSEM像を示す図
【図29】実施例7の生成物のXRDパターンを示す図
【図30】実施例7の生成物のSEM像を示す図
【図31】実施例8の生成物のXRDパターンを示す図
【図32】実施例8の生成物のSEM像を示す図
【図33】実施例9の生成物のXRDパターンを示す図
【図34】実施例10の生成物のXRDパターンを示す図
【図35】実施例11の生成物のXRDパターンを示す図
【図36】実施例12の生成物のXRDパターンを示す図
【図37】実施例12の生成物のSEM像を示す図
【図38】比較例1の生成物のSEM像を示す図
【図39】比較例1の生成物のXRDパターンを示す図
【符号の説明】
【0157】
100 層状希土類水酸化物
110 [RE8(OH)20(H2O)x]4+層またはホスト層
120 中間層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、
前記REは希土類元素であり、前記Zはハロゲン元素であることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項2】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、前記層状希土類水酸化物の結晶系は斜方晶系に属することを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項3】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、
正に帯電した[RE8(OH)20(H2O)X]4+層(6<X<8)と、負に帯電したハロゲン元素からなる中間層Z−との積層構造であることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項4】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、前記ハロゲン元素ZはClまたはBrであることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項5】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、前記REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびYからなる群から選択される希土類元素であることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項6】
アニオン交換材料であって、アニオンと交換可能な中間層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の層状希土類水酸化物からなることを特徴とする、アニオン交換材料。
【請求項7】
励起源から励起により発光する蛍光材料であって、発光中心となる希土類元素を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の層状希土類水酸化物からなることを特徴とする、蛍光材料。
【請求項1】
組成式RE(OH)2.5Z0.5・0.125XH2O(6<X<8)で表され、
前記REは希土類元素であり、前記Zはハロゲン元素であることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項2】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、前記層状希土類水酸化物の結晶系は斜方晶系に属することを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項3】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、
正に帯電した[RE8(OH)20(H2O)X]4+層(6<X<8)と、負に帯電したハロゲン元素からなる中間層Z−との積層構造であることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項4】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、前記ハロゲン元素ZはClまたはBrであることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項5】
請求項1に記載の層状希土類水酸化物であって、前記REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、HoおよびYからなる群から選択される希土類元素であることを特徴とする、層状希土類水酸化物。
【請求項6】
アニオン交換材料であって、アニオンと交換可能な中間層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の層状希土類水酸化物からなることを特徴とする、アニオン交換材料。
【請求項7】
励起源から励起により発光する蛍光材料であって、発光中心となる希土類元素を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の層状希土類水酸化物からなることを特徴とする、蛍光材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2009−184868(P2009−184868A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25833(P2008−25833)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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