説明

層状濾過膜及び製造方法

【課題】改良された目詰まり防止特性を有する層状濾過膜を提供する。
【解決手段】濾過膜32は、各々が複数のポリマー層52、54を延伸することにより形成された異なる気孔直径を有する複数のポリマー層を含み、これら複数のフィルター層は延伸される前に共に連結され、異なる孔径はこれらフィルター層の共延伸中に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過膜に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過膜は広範囲の用途に使用されている。一般に、濾過膜は、汚染物質に対する障壁を与える一方でその他の所望の物質が膜を通過することは許容する。例えば、濾過膜は、塵埃その他の汚染物質の流れを遮断することができ、その一方で空気や湿気が膜を通過することは許容する。残念ながら、ある種の汚染環境に暴露されると、濾過膜の閉塞が起こる可能性があり、時間経過とともに膜の気流性能が低下しかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6228477号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に属する幾つかの実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定する意図はなく、むしろこれらの実施形態は本発明の可能な形態を簡潔に概要するために挙げるものである。実際、本発明は、以下に述べる実施形態と類似又は異なる様々な形態を包含し得る。
【0005】
第1の実施形態に係る方法は、複数の層を接合し、接合後に複数の層を共延伸して、層毎に変化する気孔率を有する濾過膜を形成することを含む。
【0006】
第2の実施形態に係る方法は、第1の孔径を与えるように設定された第1のポリマー混合物を調製し、第2の孔径を与えるように設定された第2のポリマー混合物を調製し、第1のポリマー混合物を第1のビレットに押出し、第2のポリマー混合物を第2のビレットに押出すことを含む。
【0007】
第3の実施形態に係る方法は、異なる孔径の複数の共延伸された層を有する延伸濾過膜を通って流れる媒体中の物質を濾過することを含む。
【0008】
第4の実施形態に係る濾過膜は、第1の平均気孔直径の第1の複数の気孔を含む第1の多孔質ポリマー層、第1の平均気孔直径とは異なる第2の平均気孔直径をもつ第2の複数の気孔を含む第2の多孔質ポリマー層、並びに第1及び第2の多孔質ポリマー層の間で共延伸され、かつ第1及び第2の多孔質ポリマー層の間の汚染物質の流れを遮断するように設定されている遷移層を含む。
【0009】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばより良く理解されるであろう。全ての図面を通して類似の数字は類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のある種の実施形態に従って改良された濾過膜を有する1以上のベントを含む保護エンクロージャの透視図である。
【図2】図2は、図1のベントの一実施形態の透視図である。
【図3】図3は、図1及び図2の濾過膜の実施形態の拡大上面図である。
【図4】図4は、2つのポリマー層を有する濾過膜の一実施形態の断面図である。
【図5】図5は、図1〜図4の濾過膜の断面図であり、濾過膜の目詰まり防止効果を図解する。
【図6】図6は、図1〜図4の濾過膜の断面図であり、濾過膜の目詰まり防止効果を図解する。
【図7】図7は、図1〜図6の濾過膜の製造方法の実施形態のフローチャートである。
【図8】図8は、図1〜図6の濾過膜の製造方法の実施形態のフローチャートである。
【図9】図9は、図1〜図6の濾過膜の製造方法の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1以上の特定の実施形態について以下に説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するために、実際の実施に関する全ての特徴を本明細書に記載しないことがあるかもしれない。当然であるが、かかる実際の実施の開発の際には、あらゆる工学技術又は設計企画の場合と同様に、実施毎に変化し得るシステム関連及びビジネス関連の制約との適合のような開発者の具体的な目的を達成するために、実施に関連する数多くの採択をしなければならないものと了解されたい。また、かかる開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それでも本明細書の開示内容に接した当業者が日常的になし得る設計、製造及び製造の範囲内の事項にすぎない。
【0012】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介する際、「1つの」及び「前記」等の語句は、その要素が1つ以上あるということを意味するものである。用語「含む」、「有する」等は包括的であり、記載された要素以外に追加の要素が存在してもよいことを意味する。
【0013】
本発明の実施形態は、ミクロ通気用途に使用できる改良された目詰まり防止特性を有する多層濾過膜に関する。ミクロ通気は、汚染物質に対する障壁を提供しつつ、一方で他の所望の物質には膜を通過させることができる透過性の膜を使用する低流量のベント(通気)である。ミクロ通気は、感受性の電気機械式機器又は装置を収容するエンクロージャ内に使用し得る。エンクロージャは塵埃その他の汚染物質から電子機器を保護する一方で、ミクロ通気により空気と湿気を通過させることによって、エンクロージャ内部の圧力又は温度の蓄積を防止する。幾つかの実施形態では、多層濾過膜は、これらの実施形態に従って、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の複数の層を一緒に延伸して、各々のPTFE層内に顕微鏡的気孔のウェブ様メッシュを製造することによって製造することができる。得られる多層膜の各々の層は延伸PTFE(ePTFE)ということができる。ePTFEは、化学的に不活性で熱的に安定であるので、広範な用途の濾過膜として特に有用である。また、多層濾過膜は、各々が異なる孔径を有する少なくとも2つの層を含んでいてもよい。例えば、濾過膜は、異なる孔径、配置、角度などを同じ又は異なるポリマー多孔質層の2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の層を含んでいてもよい。気孔は層毎に平均直径が徐々に変化することができ、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100%変化することができる。
【0014】
加えて、隣接する層間に遷移層又は界面が存在して、ある層から別の層への汚染物質の流れを遮断することができる。例えば、遷移層は隣接する層間の気孔の(配置の)ずれ、例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、60又は70%の(配置の)ずれを示してもよい。換言すれば、この(配置の)ずれは、隣接する層間の気孔の部分的な、しかし完全ではない重なりと記述することができる。例えば、1つの層の気孔の断面積の約30、40、50又は60%未満が隣接する層内の対応する気孔と重なることができる。こうして、このずれによって、流れの方向、流れの制限などに変化が生じ、汚染物質が大きい気孔を有する層から小さい気孔を有する隣接する層へ完全に通過するのが阻止できる。この遷移層は、隣接する層間の直接の熱的若しくは化学的接合、気孔を有する薄い層又は隣接する層間の流れを遮断するのに適したいかなる構成であってもよい。
【0015】
汚染物質としては、微粒子、化学物質、油、燃料、エンジン排気その他の望ましくない固体、液体、若しくは気体を挙げることができる。以下に述べるように、濾過膜は、大きい気孔を有するフィルター層及び小さい気孔を有するフィルター層にそれぞれ対応する汚染側(面)及び清浄側(面)を有していてもよい。一定の実施形態では、大きい気孔を有する汚染側は電子機器、駆動部、モーターその他の機器を収容するエンクロージャに対して外側に位置することができ、一方小さい気孔を有する清浄側はエンクロージャに対して内側に位置することができる。従って、膜の汚染側を詰まらせ始めるあらゆる汚染物質は、清浄側から汚染側へ空気を拡散させるか又は通すと、より容易に気孔から追い出すことができる。
【0016】
以下に詳細に述べるように、フィルター部材は材料を単独で又は互いに組合せて延伸することによって形成することができる。例えば、複数のシートを共延伸して(例えば、接合後に同時に延伸して)異なる孔径を有する複数の層を同時に製造することができる。出発シートは同じ材料でも異なる材料でもよい。しかし、以下に詳細に述べるように、シートの延伸後に得られる孔径及び配置は大きく異なることがある。例えば、出発シートは、例えば加圧、加熱、混合などの異なる加工処理工程を経た後の同じ材料で製造してもよい。別の例として、出発シートは、材料の様々な混合物、例えば、様々な添加剤、作用物質及び溶剤を含む基材材料で製造してもよい。これらの添加剤、作用物質及び溶剤は最終の多層膜内に残留してもしなくてもよい。一定の実施形態では、各々の混合物中の添加剤、作用物質及び溶剤の量は、多層膜中の各々の層の最終の特性、例えば気孔率を、少なくとも部分的に制御し得る。例えば、様々な混合物が、異なる量の潤滑剤すなわち潤滑性作用物質と混合された基材材料としてPTFEを有していてもよい。
【0017】
図1は、本発明の幾つかの実施形態に従って改良された濾過膜32を有する1以上のベント18を含む保護エンクロージャの透視図である。以下に詳細に述べるように、濾過膜32は、ePTFEのような材料を用いて延伸技術により形成された異なる孔径を有する複数の層を含んでいてもよい。エンクロージャ10は取付プレート12に連結されており、電子機器のような装置が油、ほこり、酸又はその他の化学物質のような有害な汚染物質に暴露されるのを防止する。幾つかの実施形態では、エンクロージャ10は、例えば自動車用電子機器14又はワイパーモーター16のような自動車部品を収容するために自動車のエンジン室内に使用することができる。エンクロージャ10はまた、商業用、工業用及び民生用途において様々な電気機械装置を保護するために使用することもできる。例えば、エンクロージャ10は自動車又は航空機のような車両で装置を保護することができる。エンクロージャ10、モーター、モーターハウジング、ミクロ電子機器、回路基板、メモリー、ハードディスクドライブ、処理装置、制御装置、センサー、GPS装置、警報器、車両ブラックボックス、車両ランプ(例えば、ヘッドランプ、テールランプ、等)その他の電気機械装置を含んでいてもよい。エンクロージャ10内に湿気が集まるのを阻止するために、エンクロージャ10は本発明の実施形態に係る1以上のベント18を含んでいてもよい。これらベント18は、空気及び湿気がエンクロージャ10を通過するのを許容するが、一方油、塵埃その他の汚染物質がエンクロージャ10内に入るのを阻止する。線2−2は、図2に示す1つのベント18の拡大図の位置を示す。
【0018】
図2は、図1のベント18の一実施形態の透視図である。ベント18はエンクロージャ10内に開口部30を含み、これを覆って濾過膜32が配置されている。以下に述べるように、濾過膜32は異なる気孔率の幾つかの層を含んでいてもよい。濾過膜32は、濾過膜32の周囲の接着剤の層により、開口部30を覆う所定の位置に保持してもよい。また、濾過膜は開口部を覆って加熱溶接、レーザー溶接又はインサート成形することもできる。既に述べたように、ベント18はエンクロージャが呼吸する(例えば、エンクロージャ10の内外に空気を流す)ことを可能にする一方で汚染物質をエンクロージャ10の外に保つ。本開示の目的から、ベント18又は濾過膜32の「汚染」側34はエンクロージャ10の外側の外部環境内に存在し得る汚染物質に暴露される面であり、一方ベント18又は濾過膜32の「清浄」側36は保護される部品が収容されるエンクロージャ10内の内部空間に面する側である。
【0019】
エンクロージャ10の周囲の環境条件の変動に伴って、エンクロージャ10内の温度は上下し得る。温度が下降すると、エンクロージャ10内の圧力は幾分負になることがある。この負圧を平均化するために、矢印38で示すように外側の空気が濾過膜32を通ってエンクロージャ10内に入る。濾過膜32は空気がベント18を通過するのを許容するが、矢印40で示すように塵埃、ほこり、油、燃料、酸その他の物質のような汚染物質は遮断する。温度が上昇すると、エンクロージャ10内の圧力は幾分正になることがある。この正圧を平均化するために、エンクロージャ10内の空気は矢印42で示すように濾過膜32を通って出ていく。一定の実施形態では、濾過膜は矢印42で示すように湿気が逃げるのも許容する。このようにして、濾過膜32は、エンクロージャ10内の圧力が平均化されるのを可能にすると共に湿気が逃げるのを許容する一方で、汚染物質がエンクロージャ10内に入るのは阻止する。線3−3は、図3に示す濾過膜32の拡大図の位置を示す。
【0020】
図3は、図1及び図2の濾過膜32の実施形態の拡大平面図である。図3に示すように、濾過膜32はPTFE繊維48のメッシュ46を含んでいてもよく、これらの繊維48間には間隙又は気孔50がある。以下にさらに述べるように、図3に示した繊維メッシュ46は、PTFEの1以上の層を形成し、PTFEのこれらの層を延伸して、繊維48を分離させると共に気孔50を開放することでePTFEを形成することによって製造することができる。従って、気孔50の大きさは少なくとも部分的にPTFE層が延伸される程度によって決定し得ることが分かる。加えて、図3には示していないが、濾過膜32は異なる孔径を有する2以上のePTFE層を含んでいてもよい。例えば、以下でさらに説明するように同じ程度の延伸で異なる層に異なる孔径が生成するように、ePTFE層を形成するのに使用するPTFE混合物を変えることができる。濾過膜32の他の態様は図4を参照することでより良く理解されるであろう。
【0021】
図4は、2つのePTFE層52及び54を有する図1〜図3の実施形態の濾過膜32の断面図である。図4に示すように、濾過膜32は、濾過膜32の清浄側36に面する下層52、濾過膜32の汚染側34に面する上層54及び下層52と上層54の間の界面を形成する遷移層56を含んでいてもよい。下層52の厚さ58と上層54の厚さ60はいずれも、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は25ミル未満でよい。自明であろうが、1ミルは1インチの千分の一(すなわち、0.001インチ)である。一定の実施形態では、厚さ58及び60は約1〜4ミル(すなわち、0.001〜0.004インチ)の範囲である。これらの厚さ58及び60は同じであっても互いに異なっていてもよい。例えば、厚さ58は厚さ60の約10、20、30、40、50、60、70、80又は90%であってもよい。加えて、濾過膜32は任意の数の層、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の層を含んでいてもよい。また、代わりの実施形態では、上層54が濾過膜32の清浄側36に面していてもよく、下層52が濾過膜32の汚染側34に面していてもよい。
【0022】
図4には気孔50も示すが、これは、幾つかの実施形態では、直径約0.01〜10、0.01〜5、0.01〜3.0又は0.01〜1.0μmの範囲である。自明であろうが、1μmは1mの百万分の一である。さらにまた、下層52内の気孔50の平均直径62は上層54内の気孔50の平均直径64より小さくしてもよい。例えば、上層54内の気孔50の平均直径62は下層52内の気孔50の平均直径64より約0.05〜1.0μm大きくてよい。一実施形態では、下層52内の気孔50の平均直径62は約0.15〜0.25μmであり、上層54内の気孔50の平均直径64は約0.25〜0.35μmである。別の実施形態では、下層52内の気孔50の平均直径62は約0.2μm未満であり、上層54の気孔50の平均直径64は約0.8μmより大きくてよい。幾つかの実施形態では、下層52内の気孔50の平均直径62は上層54の気孔50の平均直径64の少なくとも約10、20、30、40、50、60、70又は80%未満であり、ここで両方の層52及び54の気孔50が約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10μm未満である。例えば、下層52内の気孔50の平均直径62は上層54の気孔50の平均直径64の少なくとも約50%未満であり、ここで両方の層52及び54の気孔50が約10μm未満である。幾つかの実施形態では、濾過膜32は、各々の気孔が徐々に小さくなる2より多くの層を含んでいてもよい。
【0023】
下層52と上層54は遷移層56のところで互いに連結される。以下でさらに記載するように、下層52と上層54は加熱及び圧縮によって互いに連結することができる。また、下層52と上層54は共延伸してもよく、すなわち、互いに連結した後に同時に延伸して気孔50を形成してもよい。下層52と上層54内の気孔50の大きさが異なる結果として、下層52内の気孔50と上層54内の気孔50は一般に、遷移層56のところで互いに揃わない。こうして、遷移層56は、以下で図5及び図6を参照してさらに記載するように汚染物質の流れに対する抵抗の領域を与えることができる。例えば、遷移層56は濾過膜32を通る流れに対して方向の変化及び断面積の変化を示す。
【0024】
濾過膜32はまた、濾過膜32の改良された耐久性を与える役割を果たす基材層66も含んでいることができる。基材層66は、下と上のePTFE層52及び54により提供される濾過特性を大きく変えることなく濾過膜32を強化する。基材層66は、例えばポリエステルのような高い誘電率を与える任意の耐久性で可撓性の材料を含んでいてもよい。例えば、基材層66は織物又は不織布である。幾つかの実施形態では、基材層66の厚さ68は約1〜4mmである。
【0025】
さらに、幾つかの実施形態では、濾過膜32は、1以上の個別の化学的処理又は組合せた化学的処理により化学的に処理して、濾過膜32の撥油性及び/又は撥水性特性並びに濾過膜32の耐薬品性を増大することができる。例えば、濾過膜32は、フルオロカーボン系界面活性剤、フルオロ−保護剤、フッ素化コポリマー又はこれらの組合せで処理することができる。一定の実施形態では、濾過膜32はDupont社(米国デラウェア州ウィルミントン)のZonyl(商標)製品による1以上の処理で処理することができる。
【0026】
濾過膜32を使用状態にしたとき、濾過膜32の汚染側34(例えば、上層54)は多くの汚染物質に暴露される可能性がある。例えば、自動車用の場合、濾過膜32の汚染側34は油、ガソリン、ディーゼル燃料、排気などに暴露され得る。これらの汚染物質のうちある種のものは濾過膜32の気孔50内に蓄積する傾向をもつことがあり、そのため気孔50を遮断し濾過膜32を通る空気の流れを低下させ得る。しかし、既に述べたように、遷移層56が汚染物質の流れに対して増大した抵抗を示す層を提供し、従って濾過膜32の目詰まりを低減する。幾つかの実施形態では、この濾過膜32の目詰まり防止特性によって、濾過膜32を通る当初の空気の流れの少なくとも約40、50、60、70又は80%が維持される。この濾過膜32の増大した目詰まり抵抗性は図5及び図6を参照することでより良く理解されよう。
【0027】
図5及び図6は、図1〜図4の濾過膜32の断面図であり、一実施形態に係る濾過膜32の目詰まり防止効果を説明するものである。具体的には、図5はエンクロージャ10内の負の圧力の期間中(例えば、清浄側36の圧力が汚染側34より低い)の濾過膜32を示しており、図6はエンクロージャ10内の正の圧力の期間中(例えば、清浄側36の圧力が汚染側34より高い)の濾過膜32を示している。図5に示すように、濾過膜32の汚染側34は、例えば潤滑油、ガソリン又はディーゼル燃料のように油性である汚染物質80を集める傾向がある。上層54は汚染物質80をはじく傾向があるが、限られた量の汚染物質80が上層54の気孔50内に捕捉され、長い間に蓄積するようになる。加えて、エンクロージャ10内の圧力が負であると、エンクロージャ10の外側の空気の圧力は矢印82で示すように汚染物質80を濾過膜32中により深く押し込む傾向がある。しかし、汚染物質80は上層54の気孔50中に吸収され得るが、遷移層56は汚染物質80が濾過膜32を完全に貫通し下層52の気孔50を汚染するのを阻止する。従って、濾過膜32の下層52は比較的汚染物質80がないままになる。
【0028】
図6を見ると、エンクロージャ10内の正の圧力の期間中の濾過膜32が示す。エンクロージャ10内の空気の圧力が正であると、エンクロージャ10の内側からの空気の流れが矢印84で示すように汚染物質80を濾過膜32の外に押しやる傾向がある。従って、濾過膜32の気孔50はエンクロージャ10が正の圧力の期間を経るたびに汚染物質80が除去される傾向がある。下層52の気孔50が比較的に清浄のままであることのため、正の空気圧は上層54の気孔50を遮断する汚染物質80に、より効果的に集中することができる。このようにして、正の気流84が上層54の気孔50から汚染物質80を除去し、従って上層54は次の負の圧力の期間中にエンクロージャ10内に空気をより良く通すことができる。一定の実施形態では、濾過膜32は約0〜140psiの範囲の圧力を受け得る。
【0029】
図7〜図9は、図1〜図6の濾過膜32を製造する工程の実施形態のフローチャートである。ここで提供される製造方法は、濾過膜32の層52及び54を共延伸する、例えば、連結させてから延伸する方法について説明する。複合多層濾過膜32をその後延伸して、図4に関連して上記したような所望の気孔50の大きさを形成する。延伸する前に層52と54を連結し、次いで層52と54を同時に延伸する結果、より簡単で、より費用がかからない、かつより速い製造工程となる。また、2層の膜を製造する技術について記載するが、ここに記載する技術を拡張して3、4、5、6、7又はそれ以上の層を有する濾過膜32を与えることができるということは了解されるであろう。
【0030】
先ず図7を見ると、濾過膜32を製造する第1の工程94が示す。図7に示すように、工程94は2つのPTFE混合物、すなわち混合物Aをブロック96で、混合物Bをブロック98で調製することから始める。気孔の直径62及び64はこれらPTFE混合物の調製によって部分的に調節することができる。さらにまた、2つの層を一緒に延伸して気孔50を形成するため、下層52と上層54の気孔の直径62と64の差は、両方の層52及び54の等しい延伸により層52及び54に異なる気孔直径62及び64が製造されるように、PTFE混合物A及びBを適正に調製することによって達成することができる。従って、混合物Aと混合物Bの組成は、下層52と上層54に異なる気孔直径62と64が生じるような適切なPTFE組成であってもよい。例えば、混合物AとBは、PTFEと混合される潤滑剤又は潤滑性物質を異なる量で有し得る。
【0031】
PTFE混合物を調製した後、混合物A96と混合物B98はそれぞれブロック100と102で押出してPTFEの2つのプリフォームを形成することができる。次に、ブロック104で、両方の押出されたプリフォームをプレスし平板化して一定の厚さにすることができる。このプレス工程ではPTFEの二重層シートが形成され、その厚さは2つのプリフォームにかかる圧力により部分的に調節することができる。これらの工程では、摩擦のためにPTFEシート内にかなりの量の熱が発生し得る。従って、装置はまた加工処理中のPTFEの二重層シートを冷却するように構成することもできる。
【0032】
次に、ブロック106で、PTFEの二重層シートを延伸して気孔50を形成することができる。この二重層PTFEシートの延伸は、下層52と上層54に所望の気孔直径62及び64を決定するように制御することができる。しかし、上述の通り、下層52と上層54の気孔直径62と64との間の相対的な差は、実質的に又は全体的に、PTFE混合物AとBを調製した工程96及び98に基づき得る。様々な実施形態では、二重層PTFEシートは、縦方向に(すなわち、シートの長さに沿って)、横方向に(すなわち、シートの幅に沿って)又は両方に延伸しることができる。ブロック106でPTFEの二重層シートを延伸した後、基材層66を付け加えて濾過膜32を形成することができる。一定の実施形態では、延伸工程106は約10〜70%の延伸を提供し得る。例えば、延伸工程106は少なくとも約10、20、30、40、50、60、70以上の%の延伸を提供し得る。
【0033】
ここで図8を見ると、濾過膜32を製造する第2の工程108が示す。図7の工程94と同様に、図8の工程108でも初めに2つのPTFE混合物、すなわち混合物Aをブロック96で、混合物Bをブロック98で調製し、2つのPTFEプリフォームをブロック100と102で押出す。しかし、図7のように2つのビレットを一緒にプレスするのではなく、工程108では、各々のビレットをそれぞれブロック110と112で別々にプレスして2つのPTFEシートを形成する。ブロック110及び112のプレス工程の後、PTFEシートは湿っていることができる。次に、ブロック114で、2つのPTFEシートがまだ湿っているうちにこれらのPTFEシートを一緒にプレスして二重層PTFEシートを形成することができる。次に、ブロック118で、図7に関連して上記したように、二重層PTFEシートを延伸しる。ブロック118でPTFEの二重層シートを延伸した後、基材層66を付け加えて濾過膜32を形成することができる。
【0034】
ここで図9を見ると、濾過膜32を製造する第3の工程120が示す。図7の工程94及び図8の工程108と同様に、工程120でも最初に2つのPTFE混合物、すなわち混合物Aをブロック96で、混合物Bをブロック98で調製し、2つのPTFEプリフォームをそれぞれブロック100と102で押出す。その後、各々のプリフォームはそれぞれブロック122と124で別々にプレスして2つのPTFEシートを形成することができる。プレスした後、これら2つのPTFEシートを乾燥してもよい。次に、2つの乾燥したPTFEシートはブロック126で一緒に延伸してePTFEの二重層シートを形成することができる。この実施形態では、延伸工程中に、2つのPTFEシートを互いに接着させるのに十分な圧力をかける。ブロック126でPTFEの二重層シートを延伸した後、基材層66を付け加えて濾過膜32を形成することができる。工程120の以上の条件により、シート間の永久的な機械的接合が提供される。
【0035】
本明細書では、最良の態様を含めて本発明を開示するために、また当業者が装置又は系を作りかつ使用すること及び具体化された方法を実行することを含めて本発明を実施することができるように、具体例を用いた。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲に定義されており、当業者には自明な他の具体例を包含し得る。かかる他の具体例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するか又は特許請求の範囲の文言と実質的な差がない等価な構造要素を含むのであれば、特許請求の範囲内に入るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層(52,54)を接合(104,114)し、
接合(104,114)した後、複数の層(52,54)を共延伸(106,118)して、層毎に変化する気孔率を有する濾過膜(32)を形成する
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
接合すること(104,114)が、複数の層(52,54)を前もって延伸することなくこれらの層(52,54)の面を一緒に固定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の層(52,54)を接合すること(104,114)が複数のポリマーシートを一緒にプレスすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
接合すること(104,114)が、加熱により複数の層(52,54)を熱的に接合すること、複数の層(52,54)を化学的に接合すること又はこれらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
共延伸すること(106,118)が、接合(104,114)後、複数の層(52,54)を少なくとも約20%延伸することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
共延伸すること(106,118)が各対の隣接する層(52,54)間の接合界面(56)を延伸することを含み、接合界面(56)が隣接する層(52,54)内の気孔を通る流れを少なくとも部分的に遮断する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1の孔径を与えるように設定された第1のポリマー混合物を調製し(96)、
第2の孔径を与えるように設定された第2のポリマー混合物を調製し(98)、
第1のポリマー混合物を押出して(100)第1のプリフォームにし、第2のポリマー混合物を押出して(102)第2のプリフォームにし、
第1のプリフォーム及び第2のプリフォームを結合して(104,114)二重層状ポリマーシートにし、
二重層状ポリマーシートを共延伸して(106,118)、第1の孔径の気孔を含む第1の層(52)と第2の孔径の気孔を含む第2の層(54)とを含む濾過膜(32)を形成する
ことを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
結合すること(104,114)が、第1及び第2のプリフォームを一緒にプレスすることを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
結合すること(104,114)が、第1のプリフォームをプレスして(110)第1のシートにし、第2のプリフォームをプレスして(112)第2のシートにし、第1のシートと第2のシートを一緒にプレスする(114)ことを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
結合すること(104,114)が、第1のプリフォームをプレスして(110)第1のシートにし、第2のプリフォームをプレスして(112)第2のシートにし、第1及び第2のシートを乾燥し、共延伸(106,118)中に第1のシートと第2のシートを一緒に加圧することを含む、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−221214(P2010−221214A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61737(P2010−61737)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】