履物
【課題】履物の靴底部に、高い断熱性を確保し、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えた真空断熱材を適用することで、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供する。
【解決手段】靴底部に適用する真空断熱材31には、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けて、複数本の溝状の凹部により真空断熱材31の屈曲部35を形成している。また、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分が芯材の周縁に沿うように熱溶着されており、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部33とすることができるので、外被材の間に芯材の無い非芯材部34を小さくできる。
【解決手段】靴底部に適用する真空断熱材31には、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けて、複数本の溝状の凹部により真空断熱材31の屈曲部35を形成している。また、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分が芯材の周縁に沿うように熱溶着されており、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部33とすることができるので、外被材の間に芯材の無い非芯材部34を小さくできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を高めるため真空断熱材を適用した履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地や低温作業時に使用される履物は、温かく、断熱性能の高いものが望まれている。これを実現するため、履物の靴底部に断熱材や、内装素材に空気層を保持できる長い毛足の生地が適用される。
【0003】
一方、断熱材として、限られたスペースの中で高い断熱性能を確保するため、真空断熱材を適用することがある。
【0004】
しかし、真空断熱材は、その真空度を保持するため伸縮性のないガスバリア性フィルムで真空包装しているため、柔軟性に乏しく、かつ可撓性を有していない。そこで、真空断熱材に可撓性を付与する方法として、真空断熱材において、複数の芯材を真空密封して構成することにより可撓性を付与したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図13は、従来の靴に適用した真空断熱材の平面図である。図13に示すように、真空断熱材1はプラスチックフィルムとアルミ箔とをラミネートしたフィルムからなるガスバリア性を有する外被材2の内部にそれぞれ芯材3a,3bを厚み方向に対して垂直な方向に所定間隔離して配置させ、内部を減圧して密封したものである。また芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4は真空断熱材1を横切る直線となっており、そこを折り曲げ線として曲げることができる。
【特許文献1】特開2005−137557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成では、真空断熱材1は、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4を折り曲げ線として折り曲げが可能となるが、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4には芯材が存在しないことから断熱性を有しておらず、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4からの熱リークが大きい。また、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4が存在する分だけ有効断熱面積が小さくなり、充分な断熱性能が得られないという課題があった。
【0007】
また、複数の芯材3a,3bを配置することが必要であり、複数の芯材3a,3bの配置、及び配置時の位置決めに多くの工数を必要とすることから製造原価が増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、履物の靴底部に、高い断熱性を確保し、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えた真空断熱材を適用することで、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の履物は、靴底部の屈曲に追従するように靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に溝状の凹部を縦横に複数本設けた真空断熱材を、靴底部に適用したのである。
【0010】
本発明において靴底部に適用する真空断熱材は、有効断熱面積が従来のものに較べて大きいので高い断熱性を確保でき、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えているので、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明において靴底部に適用する真空断熱材は、有効断熱面積が従来のものに較べて大きいので高い断熱性を確保でき、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えているので、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の請求項1に記載の履物の発明は、芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記真空断熱材には、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けているのである。
【0013】
履物の靴底部は、体重による加重や歩行により縦横に屈曲することから靴底部に配置した真空断熱材も追従して屈曲することが必要になる。そこで、履物の靴底部に配置する真空断熱材は、靴底部の屈曲部とその周辺部とに該当するいずれかの部位に溝状の凹部を縦横に複数本設けている。
【0014】
これにより、履物の靴底部が屈曲と復元を繰り返した場合にも真空断熱材は靴底部と同様に追従して屈曲と復元を繰り返すことができ、履き心地に優れた履物が提供できる。また、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0015】
更に、溝状の凹部には、断熱性能を有する芯材が存在しているため、断熱性能を損なうこともない。よって、有効断熱面積が大きくなるので履物の断熱効果が向上し、保温性が向上する。
【0016】
また、請求項2に記載の履物の発明は、請求項1に記載の発明において、履物のつま先から踵方向に設けられた真空断熱材の溝が、少なくとも履物の幅方向の両端近辺に設けられたものである。
【0017】
靴底部は、体重による加重によって履物の幅方向にも湾曲が発生する。加重が履物の幅方向の中心にかかるため、両端部分とに加重差が発生し、湾曲が特に両端近辺に発生する。
【0018】
そこで靴底部の湾曲に真空断熱材を追従させるため、履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、更に外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0019】
また、請求項3に記載の履物の発明は、請求項1または2に記載の発明において、溝状の凹部の少なくとも一部が芯材を有せず形成された目地部であるものである。
【0020】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。
【0021】
そこで、真空断熱材に溝状の凹部の少なくとも一部が芯材を有せず形成した目地部を設けている。これにより、芯材のない箇所で屈曲することにより、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0022】
また、請求項4に記載の履物の発明は、請求項3に記載の発明において、履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部を設け、履物の幅方向に溝状の凹部を設けたものである。
【0023】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。また、湾曲は特に幅方向に発生する。
【0024】
そのため、湾曲が発生し易い履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0025】
また、請求項5に記載の履物の発明は、請求項4に記載の発明において、少なくとも目地部が、履物の幅方向の両端近辺に設けられたものである。
【0026】
底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で更に集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、靴底部の中心部分に有効断熱部があるので、保温性を維持できる。
【0027】
また、請求項6に記載の履物の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材における履物の幅方向の両端の厚みが中央部より薄く形成したものである。
【0028】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺の厚みを薄く形成した。これにより、厚みが薄いことで湾曲により外被材にかかる負荷が軽減され、外被材の劣化が軽減される。よって真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0029】
また、請求項7に記載の履物の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材における溝もしくは目地部の近辺の厚みを、前記溝と前記目地部以外の箇所よりも薄く形成したものである。
【0030】
屈曲部となる溝や目地部の近辺の厚みが薄くなっているので、真空断熱材が屈曲した際の外被材の損傷を低減することができる。これにより、よって真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0031】
また、請求項8に記載の履物の発明は、芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記真空断熱材が歩行時の靴底部の幅方向の屈曲に追従しないように、前記真空断熱材の下面側に平板を設置したものである。
【0032】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。
【0033】
そのため、真空断熱材の下面に平板を設置した。これにより、靴底部に追従して真空断熱材が湾曲するのを低減でき、外被材の劣化が軽減される。よって、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0034】
また、請求項9に記載の履物の発明は、芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、靴底部の幅方向の中央に配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設したものである。
【0035】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺に真空断熱材を配置せず、中敷部材を配置した。これにより、真空断熱材の外被材にかかる湾曲による負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、足裏の中心部分に真空断熱材を配置しているので、保温性の高い履物を提供できる。
【0036】
また、請求項10に記載の履物の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明において、靴底部の幅方向の中央に真空断熱材を配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設したものである。
【0037】
本発明では、真空断熱材に溝や目地部が設けられているので真空断熱材が靴底に追従し易くなり、真空断熱材の外被材にかかる湾曲による負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、足裏の中心部分に真空断熱材を配置しているので、保温性の高い履物を提供できる。
【0038】
また、請求項11に記載の履物の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の発明における真空断熱材が、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ前記芯材周囲の前記外被材同士が大気圧で密着する部分が前記芯材の周縁に沿うように熱溶着されているものである。
【0039】
本発明では、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部とすることができるので、外被材の間に芯材の無い非芯材部を小さくでき有効断熱面積が大きくなる。よって、略足型形状、及び履物の靴底部形状に合うように成形しつつも、断熱性能を高められる。よって、従来中敷きと寸法や外観が大幅に変わることがなく、靴の形状や靴の種類等に左右されることなく使用することができる。また、屈曲性と屈曲耐久性に優れていることから、履き心地や経済性にも優れた中敷きを提供できる。
【0040】
また、請求項12に記載の履物の発明は、請求項1から8と請求項11のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材は、靴底部に対して着脱可能な中敷きを構成する部材として用いられており、前記真空断熱材の芯材が略足型形状であり、かつ前記芯材周囲に位置し外被材の間に前記芯材がなく前記外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状であるものである。
【0041】
真空断熱材を履物の底部に配置して履物と一体化すると、温暖な状況下で履物を使用する場合に不快となる。そこで、真空断熱材に外装材を貼り合わせて履物の中敷きとする。これにより、気候や気温に応じて取り外しや装着が可能となる。
【0042】
また、請求項13に記載の履物の発明は、請求項1から8と請求項11と請求項12のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材における外被材の間に芯材がある芯材部が厚み1mm以上5mm以下であるものである。
【0043】
本発明で用いる真空断熱材は、断熱性、屈曲性、及び屈曲耐久性に優れており、履物の靴底部断熱材、及び履物の中敷きの断熱材として有効に適用できる。
【0044】
また、断熱材が1mm以上5mm以下と薄いことから、スペース確保の難しい履物、履物の中敷きであっても問題なく使用することができる。
【0045】
なお、履物とは、短靴、長靴、ブーツ、サンダル、スリッパ、及びスキー靴等のスポーツ用の靴を含め、特に指定するものではない。また、履物の中敷きとは、前記履物の靴底部に装着して利用するものであり、基本的には、装着と取り外しが任意に実施できるものをさす。
【0046】
また、真空断熱材とは、骨材となる気相比率の高い芯材を、ガスバリア性のフィルムや容器等の外被材で覆い内部を真空密封したものであり、内部を真空状態にすることにより、気体成分の熱伝導を低減させた断熱材をさす。
【0047】
真空断熱材の構成材料を説明すると、前記芯材に使用する材料は、気相比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものであり、工業的に利用できるものとして、発泡体、粉体、及び繊維体等がある。これらは、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。
【0048】
このうち、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できるが、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部とする真空断熱材には、外被材同士を熱溶着させる工程での熱が加わっても気相比率90%前後を維持できるように、耐熱性が高いものが好ましい。
【0049】
粉体としては、無機系、有機系、及びこれらの混合物を利用できるが、工業的には、乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものがより望ましい。
【0050】
繊維体としては、無機系、有機系、及びこれらの混合物が利用できるが、コストと断熱性能の観点から、無機繊維が有利である。無機繊維の一例としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等、公知の材料を使用することができる。
【0051】
外被材に使用するラミネートフィルムには、金属箔や金属蒸着層を有するラミネートフィルムが適用でき、プラスチックラミネートフィルムを利用するのが、生産性やコストの面でメリットが大きい。
【0052】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0053】
(実施の形態1)
本実施の形態において、履物として短靴を一例として説明する。図1は本発明の実施の形態1における靴の側面図、図2は本発明の実施の形態1における靴の断面図である。図3は本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)であり、図4は本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の側面図である。
【0054】
図1において、靴11は、足を包む部分の底部12と甲部13と前面部14と後面部15と側面部16とが、ゴム製の靴底17を接合して構成されている。図2に示すように底部12には、下(靴底側)から保護用プラスチックフィルム21、真空断熱材31、生地付きエラストマー22を積層して構成しているが、真空断熱材31を適用していること以外は汎用的な靴である。
【0055】
図3と図4に示す真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材の対向する2つの伝熱面を、それぞれ2枚のガスバリア性のラミネートフィルム(外被材)で覆い、ラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧し、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の周囲の2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34の大気圧で互いに密着可能な2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着したものであり、非芯材部34の殆ど全てに、2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着した熱溶着部33が設けられている。熱溶着部33は、芯材部32の周囲に沿うように形成しているため、断熱機能を持たない非芯材部34をより小さくすることができる。
【0056】
また、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の足裏側面において、足指の付け根付近に相当する部位に屈曲部35として足指に略垂直な方向(足指の回動軸に略平行な方向)の芯材の一方の端(縁)から他方の端(縁)までの溝状の凹部を10本設けている。また、つま先から踵方向にも芯材の一方の端(縁)から他方の端(縁)までの溝状の凹部を3本設けている。また、屈曲部35の近辺の厚みを薄くしており、凹部に向かってなだらかに薄くなるように形成している。
【0057】
なお、ラミネートフィルムには、最外層から25μmのナイロンフィルム、12μmのPETフィルム、6μmのアルミ箔、30μmのポリエチレンを積層したプラスチックラミネートフィルムを使用している。しかし、ラミネートフィルムは、特に、耐屈曲性の優れたものが望ましく、公知の材料が適用できる。
【0058】
更に、この真空断熱材31の真空封止方法について詳細に説明する。
【0059】
まず、芯材形状に追従しやすいように弾性体を表層に貼り合わせた熱板を有する真空チャンバー内において、対向する2枚のガスバリア性ラミネートフィルム(外被材)の間のラミネートフィルム(外被材)と平行な略同一平面上に、複数の芯材を所定間隔離間して配置し、所定圧力迄減圧後、ラミネートフィルム(外被材)間に芯材がある部分を含めて加熱加圧して、対向するラミネートフィルム(外被材)の熱溶着層同士を、間に芯材がある部分(芯材部32)を除いて、芯材形状(芯材の周縁部)に沿うように熱溶着することで真空断熱材31を製造するものである。このような真空封止方法で真空断熱材31を成形すると、芯材の周縁部に添うように大気圧で互いにラミネートフィルム(外被材)同士が密着可能な部分に熱溶着部33が形成されるため、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34を小さくできる。
【0060】
その後、熱溶着された非芯材部34を芯材形状と略相似形に、芯材部32の周囲に所定幅の熱溶着部33を確保できるように切断し、引き続き、屈曲部35として足裏と接する表面(足裏側面)にプレス加工により溝状の凹部を設けて略足型の真空断熱材31としている。
【0061】
本実施の形態1における靴11は、芯材をガスバリア性の外被材(ラミネートフィルム)で覆って外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材31を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した靴11(履物)であって、真空断熱材31には、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けて、複数本の溝状の凹部により真空断熱材31の屈曲部35を形成している。
【0062】
また、真空断熱材31における溝(屈曲部35)の近辺の厚みを、溝(屈曲部35)以外の箇所よりも薄く形成している。
【0063】
以上のような構成により、本実施の形態1における靴11は、靴底部の殆どを覆う真空断熱材31の優れた断熱作用により、人体の発する体熱の保温や外気の遮断が効果的に行われ、寒冷な環境下において足部を温かく保つことができる。
【0064】
履物11の靴底部は、体重による加重や歩行により縦横に屈曲することから靴底部に配置した真空断熱材31も追従して屈曲することが必要になる。そこで、履物11の靴底部に配置する真空断熱材31は、靴底部の屈曲部とその周辺部とに該当するいずれかの部位に溝状の凹部を縦横に複数本設けている。
【0065】
これにより、履物の靴底部が屈曲と復元を繰り返した場合にも真空断熱材31は靴底部と同様に追従して屈曲と復元を繰り返すことができ、履き心地に優れた履物が提供できる。また、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0066】
更に、溝状の凹部には、断熱性能を有する芯材が存在しているため、断熱性能を損なうこともない。よって、有効断熱面積が大きくなるので履物の断熱効果が向上し、保温性が向上する。
【0067】
また、溝状の凹部をプレス成形により形成しているため、複数の芯材配置や、芯材配置に関する位置決めなどの必要がなく、工数が大幅に削減できることから、真空断熱材31を適用した履物11を安価に提供することができる。
【0068】
また、屈曲部35となる溝状の凹部の近辺の厚みが薄くなっているので、真空断熱材31が屈曲した際のラミネートフィルム(外被材)の損傷を低減することができる。これにより、真空断熱材31の断熱性能劣化が更に低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0069】
また、真空断熱材31が、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分が芯材の周縁に沿うように熱溶着されており、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部33とすることができるので、外被材の間に芯材の無い非芯材部34を小さくでき有効断熱面積が大きくなる。よって、略足型形状、及び履物の靴底部形状に合うように成形しつつも、断熱性能を高められる。
【0070】
また、実施の形態で用いた真空断熱材31は、外被材の間に芯材がある芯材部32が厚み1mm以上5mm以下の範囲に入る4mmであるので、真空断熱材31は、断熱性、屈曲性、及び屈曲耐久性に優れており、履物の靴底部断熱材の他に、履物の中敷きの断熱材としても有効に適用でき、真空断熱材31が薄いことから、スペース確保の難しい履物、履物の中敷きであっても問題なく使用することができる。
【0071】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0072】
図5に示す実施の形態2の真空断熱材31の構成は、実施の形態1と似ており、つま先から踵方向に屈曲部35として設けた溝状の凹部が幅方向の両端付近にのみ設けられている点でのみ相違する。両端付近とは、靴底をつま先から踵方向に3分割した場合において両端の1/3の場所を示す。
【0073】
実施の形態2の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0074】
加重が履物の幅方向の中心の1/3程度に主にかかり両端部分と加重差が発生する。よって、湾曲が特に両端近辺に発生する。そこで靴底部の湾曲に真空断熱材31を追従させるため、履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、更に外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0075】
なお、本実施の形態ではつま先から踵方向の凹部を2本設けているが、この本数に限るものではない。
【0076】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0077】
図6に示す実施の形態3の真空断熱材31の構成は、実施の形態2と似ており、真空断熱材31の幅方向に設けていた屈曲部35である溝状の凹部が芯材を有しない目地部36で形成されている点でのみ相違する。目地部36は、芯材を有していないので、外被材同士が接触している。
【0078】
実施の形態3の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0079】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。幅方向の湾曲とは、つま先から踵方向に折れ目が発生する方向である。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。長さ方向の湾曲や屈曲とは、幅方向に折れ目が発生する方向のことである。これに追従するように真空断熱材31も湾曲や屈曲が発生する。
【0080】
このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。そこで、真空断熱材31の幅方向に芯材を有せず形成した目地部36を設けている。
【0081】
これにより、芯材のない箇所で屈曲することにより、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0082】
また、熱溶着層同士が溶着されているので目地部36は溶着されており、各芯材が独立空間に形成されているので、屈曲によって目地部36に貫通孔が発生しても真空断熱材31全体が破袋することがなく、断熱性能の劣化が低減できる。
【0083】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0084】
図7に示す実施の形態4の真空断熱材31の構成は、実施の形態1と似ており、真空断熱材31のつま先から踵方向に設けていた屈曲部35である溝状の凹部が芯材を有しない目地部36で形成されている点でのみ相違する。目地部36とは、芯材を有していないので、外被材同士が接触している。
【0085】
実施の形態4の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0086】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材31も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し、外被材が劣化し易くなる。また、湾曲は特に幅方向に発生する。
【0087】
そのため、湾曲が発生し易い履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部36を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0088】
また、熱溶着層同士が溶着されているので目地部36も溶着されており、各芯材が独立空間に形成されているので、屈曲によって目地部36に貫通孔が発生しても真空断熱材31全体が破袋することがなく、断熱性能の劣化が低減できる。
【0089】
(実施の形態5)
図8は本発明の実施の形態5における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0090】
図8に示す実施の形態5の真空断熱材31の構成は、実施の形態4と似ており、真空断熱材31のつま先から踵方向に設けていた目地部36が幅方向の両端付近にのみ形成されている点でのみ相違する。目地部36とは、芯材を有していないので、外被材同士が接触している。
【0091】
実施の形態5の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0092】
底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で更に集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、靴底部の中心部分に目地部36がなく有効断熱部があるので、保温性を維持できる。
【0093】
(実施の形態6)
図9は本発明の実施の形態6における靴に適用した真空断熱材の断面図である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0094】
図9に示す実施の形態6の真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材の対向する2つの伝熱面を、それぞれ2枚のガスバリア性のラミネートフィルム(外被材)で覆い、ラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧し、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の周囲の2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34の大気圧で互いに密着可能な2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着したものであり、非芯材部34の殆ど全てに、2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着した熱溶着部33が設けられている。熱溶着部33は、芯材部32の周囲に沿うように形成しているため、断熱機能を持たない非芯材部34をより小さくすることができる。また、芯材は履物の幅方向の両端の厚みを中央部より薄く形成してある。
【0095】
実施の形態6の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0096】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺の厚みを薄く形成した。これにより、厚みが薄いことで湾曲により外被材にかかる負荷が軽減され、外被材の劣化が軽減される。よって真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。なお、実施の形態1から6のように屈曲部35である凹部や目地部36を設けてもよい。そうすることにより、さらに外被材の劣化が軽減される。
【0097】
(実施の形態7)
図10は本発明の実施の形態7における靴の中敷の側面図である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0098】
図10に示す実施の形態7の真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材の対向する2つの伝熱面を、それぞれ2枚のガスバリア性のラミネートフィルム(外被材)で覆い、ラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧し、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の周囲の2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34の大気圧で互いに密着可能な2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着したものであり、非芯材部34の殆ど全てに、2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着した熱溶着部33が設けられている。熱溶着部33は、芯材部32の周囲に沿うように形成しているため、断熱機能を持たない非芯材部34をより小さくすることができる。
【0099】
また、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の足裏側面において、足指の付け根付近に相当する部位に屈曲部35として足指に略垂直な方向(足指の回動軸に略平行な方向)の芯材の一方の端(縁)から他方の端(縁)までの溝状の凹部を10本設けている。
【0100】
また、歩行時の靴底部の幅方向の屈曲に追従しないように、真空断熱材31の下面側(靴底側)に平板である樹脂板37を設置した。平板とは、体重や歩行による加重により屈曲が生じないものであり、例えば金属系の板、樹脂系、ゴム系の板が挙げられる。平板が靴底と一体になっていても構わない。
【0101】
実施の形態7の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0102】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材31も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し、外被材が劣化し易くなる。
【0103】
そのため、真空断熱材31の下面に平板(樹脂板37)を設置した。これにより、靴底部に追従して真空断熱材31が湾曲するのを低減でき、外被材の劣化が軽減される。よって、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0104】
なお、本実施の形態では溝状の凹部を10本設けているが、実施の形態1から6のように屈曲部35である凹部や目地部36を設けてもよい。そうすることにより、さらに外被材の劣化が軽減される。
【0105】
(実施の形態8)
図11は本発明の実施の形態8における靴の中敷きの概略図である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0106】
図11に示す実施の形態8の中敷きは、靴底部の幅方向の中央に真空断熱材31が配設してあり、真空断熱材31の幅方向の両端部に中敷部材38を配設してある。なお、本実施の形態において真空断熱材31には実施の形態1〜7のように溝や目地部36を形成していないが、形成しても構わない。
【0107】
また、中敷き部材38とは、一般的に中敷きに用いられる部材であり、生地付きエラストマー、低反発ウレタン、シリコン系、ゴム系等である。特に断熱性能の高い低反発ウレタンだと保温効果が高い履物を提供できる。
【0108】
実施の形態8の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0109】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺に真空断熱材31を配置せず、中敷部材38を配置した。これにより、真空断熱材31の外被材にかかる湾曲による負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、足裏の中心部分に真空断熱材31を配置しているので、保温性の高い履物を提供できる。
【0110】
(実施の形態9)
図12は本発明の実施の形態9における靴の中敷の断面図である。
【0111】
図12において、靴の中敷51は、真空断熱材31の表面に生地付きエラストマー52を、裏面にプラスチックフィルム53を貼り合わせて構成している。
【0112】
一方、実施の形態9の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形したものを適用している。
【0113】
以上のような構成により、靴の中敷51は、真空断熱材31の優れた断熱性能により、従来の靴の中敷きと変わらない厚さでありながら、高い保温性能を有している。このように、保温性能が高くても靴の中敷きが薄く、従来中敷きと寸法や外観が大幅に変わることがなく、かつ靴の形状や靴の種類等に左右されることなく使用することができる。更に、真空断熱材31に表装材を貼り付け、履き心地を高めた靴の中敷きとしているため、気候や気温に応じて装着と取り外しが任意に選択できる。
【0114】
更に、屈曲性と屈曲耐久性に優れていることから、履き心地や経済性にも優れた中敷きであり、幅広い用途が期待できる。
【0115】
なお、真空断熱材31の芯材部32厚みに関しては、厚みを厚くすることで、より保温性能の高い靴の中敷きが提供でき、より厳しい寒冷地での適用も期待できる。しかし、厚すぎる場合は歩行時に違和感を覚えるため、10mm以下が望ましく、更には5mm以下がより望ましい。逆に、薄すぎる場合は、断熱性能が不足したり、断熱性能の経年特性が低下するため、1mm以上が望ましい。
【0116】
なお、本実施の形態では実施の形態1における中敷を示したが、実施の形態2から8における真空断熱材31を用いた中敷でも構わない。
【実施例】
【0117】
以下、靴、及び靴の中敷きとして適用できる真空断熱材の屈曲部仕様と、屈曲耐久性、及び装着時保温特性との関係について実施例と比較例を挙げて説明する。
【0118】
なお、真空断熱材は、真空断熱材の真空封止方法、及び構成材料は、基本的に、実施の形態1と同様の方法で実施した。その後、各実施の形態の靴の中敷きを成形し各種評価を行った。
【0119】
評価は、防寒用ブーツに真空断熱材を適用した中敷きを装着し、被験者5人で実装試験を実施する方法で行った。このうち、装着時保温特性試験は、−5℃環境化でブーツ中敷き表面温度を測定し、基準値をクリアするものを合格とした。履き心地試験は、官能試験とし、被験者のうち8人が問題ないと判断したものを合格とした。屈曲耐久性は1ヶ月間の実装試験とし、1ヶ月後、中敷きの熱伝導率の劣化が10%以内のものを合格とした。
【0120】
なお、実施例と比較例の屈曲部仕様と評価結果の関係を(表1)に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例1から実施例8に示すように、実施の形態1から8に示した真空断熱材は、いずれも、装着時保温特性、履き心地、及び屈曲耐久性の全てが合格という結果になった。また、特に実施例4、5、7、8における仕様が耐久試験後の熱伝導率の劣化が小さかった。また、特に実施例1、2、6において保温性が優れていた。
【0123】
一方、比較例1は、溝を幅方向にのみ設けたものであるが、耐久性がクリアできなかった。
【0124】
以上の結果より、縦横に屈曲部である凹部や目地部を設ける仕様が、屈曲耐久性に優れた仕様であることが判る。また、靴底の中心にのみ真空断熱材を配置する仕様も屈曲耐久性に優れた仕様であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明にかかる真空断熱材、及び真空断熱材を適用した履物と履物の中敷きは、優れた断熱性能を有する真空断熱材の適用により体熱の保温や冷気の遮断が効果的に行われると共に、真空断熱材は薄く形成しても断熱効果が高いので、本発明の実施の形態に示した靴に限らず、スリッパなど通常断熱性を有しない履物にも適用することもでき、これにより防寒性を確保し、快適性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の形態1における靴の側面図
【図2】本発明の実施の形態1における靴の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図4】本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の側面図
【図5】本発明の実施の形態2における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図6】本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図7】本発明の実施の形態4における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図8】本発明の実施の形態5における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図9】本発明の実施の形態6における靴に適用した真空断熱材の断面図
【図10】本発明の実施の形態7における靴の中敷きの側面図
【図11】本発明の実施の形態8における靴の中敷きの平面図
【図12】本発明の実施の形態9における靴の中敷きの断面図
【図13】従来の靴に適用した真空断熱材の平面図
【符号の説明】
【0127】
11 靴
31 真空断熱材
32 芯材部
33 熱溶着部
34 非芯材部
35 屈曲部(凹部)
36 目地部
37 樹脂板(平板)
38 中敷き部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を高めるため真空断熱材を適用した履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地や低温作業時に使用される履物は、温かく、断熱性能の高いものが望まれている。これを実現するため、履物の靴底部に断熱材や、内装素材に空気層を保持できる長い毛足の生地が適用される。
【0003】
一方、断熱材として、限られたスペースの中で高い断熱性能を確保するため、真空断熱材を適用することがある。
【0004】
しかし、真空断熱材は、その真空度を保持するため伸縮性のないガスバリア性フィルムで真空包装しているため、柔軟性に乏しく、かつ可撓性を有していない。そこで、真空断熱材に可撓性を付与する方法として、真空断熱材において、複数の芯材を真空密封して構成することにより可撓性を付与したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図13は、従来の靴に適用した真空断熱材の平面図である。図13に示すように、真空断熱材1はプラスチックフィルムとアルミ箔とをラミネートしたフィルムからなるガスバリア性を有する外被材2の内部にそれぞれ芯材3a,3bを厚み方向に対して垂直な方向に所定間隔離して配置させ、内部を減圧して密封したものである。また芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4は真空断熱材1を横切る直線となっており、そこを折り曲げ線として曲げることができる。
【特許文献1】特開2005−137557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成では、真空断熱材1は、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4を折り曲げ線として折り曲げが可能となるが、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4には芯材が存在しないことから断熱性を有しておらず、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4からの熱リークが大きい。また、芯材3aと芯材3bの間の外被材2同士が熱溶着された部分4が存在する分だけ有効断熱面積が小さくなり、充分な断熱性能が得られないという課題があった。
【0007】
また、複数の芯材3a,3bを配置することが必要であり、複数の芯材3a,3bの配置、及び配置時の位置決めに多くの工数を必要とすることから製造原価が増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、履物の靴底部に、高い断熱性を確保し、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えた真空断熱材を適用することで、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の履物は、靴底部の屈曲に追従するように靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に溝状の凹部を縦横に複数本設けた真空断熱材を、靴底部に適用したのである。
【0010】
本発明において靴底部に適用する真空断熱材は、有効断熱面積が従来のものに較べて大きいので高い断熱性を確保でき、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えているので、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明において靴底部に適用する真空断熱材は、有効断熱面積が従来のものに較べて大きいので高い断熱性を確保でき、かつ同時に充分な屈曲性と屈曲耐久性を兼ね備えているので、保温性が良く、履き心地の良い履物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の請求項1に記載の履物の発明は、芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記真空断熱材には、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けているのである。
【0013】
履物の靴底部は、体重による加重や歩行により縦横に屈曲することから靴底部に配置した真空断熱材も追従して屈曲することが必要になる。そこで、履物の靴底部に配置する真空断熱材は、靴底部の屈曲部とその周辺部とに該当するいずれかの部位に溝状の凹部を縦横に複数本設けている。
【0014】
これにより、履物の靴底部が屈曲と復元を繰り返した場合にも真空断熱材は靴底部と同様に追従して屈曲と復元を繰り返すことができ、履き心地に優れた履物が提供できる。また、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0015】
更に、溝状の凹部には、断熱性能を有する芯材が存在しているため、断熱性能を損なうこともない。よって、有効断熱面積が大きくなるので履物の断熱効果が向上し、保温性が向上する。
【0016】
また、請求項2に記載の履物の発明は、請求項1に記載の発明において、履物のつま先から踵方向に設けられた真空断熱材の溝が、少なくとも履物の幅方向の両端近辺に設けられたものである。
【0017】
靴底部は、体重による加重によって履物の幅方向にも湾曲が発生する。加重が履物の幅方向の中心にかかるため、両端部分とに加重差が発生し、湾曲が特に両端近辺に発生する。
【0018】
そこで靴底部の湾曲に真空断熱材を追従させるため、履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、更に外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0019】
また、請求項3に記載の履物の発明は、請求項1または2に記載の発明において、溝状の凹部の少なくとも一部が芯材を有せず形成された目地部であるものである。
【0020】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。
【0021】
そこで、真空断熱材に溝状の凹部の少なくとも一部が芯材を有せず形成した目地部を設けている。これにより、芯材のない箇所で屈曲することにより、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0022】
また、請求項4に記載の履物の発明は、請求項3に記載の発明において、履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部を設け、履物の幅方向に溝状の凹部を設けたものである。
【0023】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。また、湾曲は特に幅方向に発生する。
【0024】
そのため、湾曲が発生し易い履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0025】
また、請求項5に記載の履物の発明は、請求項4に記載の発明において、少なくとも目地部が、履物の幅方向の両端近辺に設けられたものである。
【0026】
底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で更に集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、靴底部の中心部分に有効断熱部があるので、保温性を維持できる。
【0027】
また、請求項6に記載の履物の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材における履物の幅方向の両端の厚みが中央部より薄く形成したものである。
【0028】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺の厚みを薄く形成した。これにより、厚みが薄いことで湾曲により外被材にかかる負荷が軽減され、外被材の劣化が軽減される。よって真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0029】
また、請求項7に記載の履物の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材における溝もしくは目地部の近辺の厚みを、前記溝と前記目地部以外の箇所よりも薄く形成したものである。
【0030】
屈曲部となる溝や目地部の近辺の厚みが薄くなっているので、真空断熱材が屈曲した際の外被材の損傷を低減することができる。これにより、よって真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0031】
また、請求項8に記載の履物の発明は、芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、前記真空断熱材が歩行時の靴底部の幅方向の屈曲に追従しないように、前記真空断熱材の下面側に平板を設置したものである。
【0032】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。
【0033】
そのため、真空断熱材の下面に平板を設置した。これにより、靴底部に追従して真空断熱材が湾曲するのを低減でき、外被材の劣化が軽減される。よって、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0034】
また、請求項9に記載の履物の発明は、芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、靴底部の幅方向の中央に配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設したものである。
【0035】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺に真空断熱材を配置せず、中敷部材を配置した。これにより、真空断熱材の外被材にかかる湾曲による負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、足裏の中心部分に真空断熱材を配置しているので、保温性の高い履物を提供できる。
【0036】
また、請求項10に記載の履物の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明において、靴底部の幅方向の中央に真空断熱材を配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設したものである。
【0037】
本発明では、真空断熱材に溝や目地部が設けられているので真空断熱材が靴底に追従し易くなり、真空断熱材の外被材にかかる湾曲による負荷が軽減され、真空断熱材の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、足裏の中心部分に真空断熱材を配置しているので、保温性の高い履物を提供できる。
【0038】
また、請求項11に記載の履物の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の発明における真空断熱材が、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ前記芯材周囲の前記外被材同士が大気圧で密着する部分が前記芯材の周縁に沿うように熱溶着されているものである。
【0039】
本発明では、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部とすることができるので、外被材の間に芯材の無い非芯材部を小さくでき有効断熱面積が大きくなる。よって、略足型形状、及び履物の靴底部形状に合うように成形しつつも、断熱性能を高められる。よって、従来中敷きと寸法や外観が大幅に変わることがなく、靴の形状や靴の種類等に左右されることなく使用することができる。また、屈曲性と屈曲耐久性に優れていることから、履き心地や経済性にも優れた中敷きを提供できる。
【0040】
また、請求項12に記載の履物の発明は、請求項1から8と請求項11のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材は、靴底部に対して着脱可能な中敷きを構成する部材として用いられており、前記真空断熱材の芯材が略足型形状であり、かつ前記芯材周囲に位置し外被材の間に前記芯材がなく前記外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状であるものである。
【0041】
真空断熱材を履物の底部に配置して履物と一体化すると、温暖な状況下で履物を使用する場合に不快となる。そこで、真空断熱材に外装材を貼り合わせて履物の中敷きとする。これにより、気候や気温に応じて取り外しや装着が可能となる。
【0042】
また、請求項13に記載の履物の発明は、請求項1から8と請求項11と請求項12のいずれか一項に記載の発明において、真空断熱材における外被材の間に芯材がある芯材部が厚み1mm以上5mm以下であるものである。
【0043】
本発明で用いる真空断熱材は、断熱性、屈曲性、及び屈曲耐久性に優れており、履物の靴底部断熱材、及び履物の中敷きの断熱材として有効に適用できる。
【0044】
また、断熱材が1mm以上5mm以下と薄いことから、スペース確保の難しい履物、履物の中敷きであっても問題なく使用することができる。
【0045】
なお、履物とは、短靴、長靴、ブーツ、サンダル、スリッパ、及びスキー靴等のスポーツ用の靴を含め、特に指定するものではない。また、履物の中敷きとは、前記履物の靴底部に装着して利用するものであり、基本的には、装着と取り外しが任意に実施できるものをさす。
【0046】
また、真空断熱材とは、骨材となる気相比率の高い芯材を、ガスバリア性のフィルムや容器等の外被材で覆い内部を真空密封したものであり、内部を真空状態にすることにより、気体成分の熱伝導を低減させた断熱材をさす。
【0047】
真空断熱材の構成材料を説明すると、前記芯材に使用する材料は、気相比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものであり、工業的に利用できるものとして、発泡体、粉体、及び繊維体等がある。これらは、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。
【0048】
このうち、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できるが、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部とする真空断熱材には、外被材同士を熱溶着させる工程での熱が加わっても気相比率90%前後を維持できるように、耐熱性が高いものが好ましい。
【0049】
粉体としては、無機系、有機系、及びこれらの混合物を利用できるが、工業的には、乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものがより望ましい。
【0050】
繊維体としては、無機系、有機系、及びこれらの混合物が利用できるが、コストと断熱性能の観点から、無機繊維が有利である。無機繊維の一例としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等、公知の材料を使用することができる。
【0051】
外被材に使用するラミネートフィルムには、金属箔や金属蒸着層を有するラミネートフィルムが適用でき、プラスチックラミネートフィルムを利用するのが、生産性やコストの面でメリットが大きい。
【0052】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0053】
(実施の形態1)
本実施の形態において、履物として短靴を一例として説明する。図1は本発明の実施の形態1における靴の側面図、図2は本発明の実施の形態1における靴の断面図である。図3は本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)であり、図4は本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の側面図である。
【0054】
図1において、靴11は、足を包む部分の底部12と甲部13と前面部14と後面部15と側面部16とが、ゴム製の靴底17を接合して構成されている。図2に示すように底部12には、下(靴底側)から保護用プラスチックフィルム21、真空断熱材31、生地付きエラストマー22を積層して構成しているが、真空断熱材31を適用していること以外は汎用的な靴である。
【0055】
図3と図4に示す真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材の対向する2つの伝熱面を、それぞれ2枚のガスバリア性のラミネートフィルム(外被材)で覆い、ラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧し、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の周囲の2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34の大気圧で互いに密着可能な2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着したものであり、非芯材部34の殆ど全てに、2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着した熱溶着部33が設けられている。熱溶着部33は、芯材部32の周囲に沿うように形成しているため、断熱機能を持たない非芯材部34をより小さくすることができる。
【0056】
また、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の足裏側面において、足指の付け根付近に相当する部位に屈曲部35として足指に略垂直な方向(足指の回動軸に略平行な方向)の芯材の一方の端(縁)から他方の端(縁)までの溝状の凹部を10本設けている。また、つま先から踵方向にも芯材の一方の端(縁)から他方の端(縁)までの溝状の凹部を3本設けている。また、屈曲部35の近辺の厚みを薄くしており、凹部に向かってなだらかに薄くなるように形成している。
【0057】
なお、ラミネートフィルムには、最外層から25μmのナイロンフィルム、12μmのPETフィルム、6μmのアルミ箔、30μmのポリエチレンを積層したプラスチックラミネートフィルムを使用している。しかし、ラミネートフィルムは、特に、耐屈曲性の優れたものが望ましく、公知の材料が適用できる。
【0058】
更に、この真空断熱材31の真空封止方法について詳細に説明する。
【0059】
まず、芯材形状に追従しやすいように弾性体を表層に貼り合わせた熱板を有する真空チャンバー内において、対向する2枚のガスバリア性ラミネートフィルム(外被材)の間のラミネートフィルム(外被材)と平行な略同一平面上に、複数の芯材を所定間隔離間して配置し、所定圧力迄減圧後、ラミネートフィルム(外被材)間に芯材がある部分を含めて加熱加圧して、対向するラミネートフィルム(外被材)の熱溶着層同士を、間に芯材がある部分(芯材部32)を除いて、芯材形状(芯材の周縁部)に沿うように熱溶着することで真空断熱材31を製造するものである。このような真空封止方法で真空断熱材31を成形すると、芯材の周縁部に添うように大気圧で互いにラミネートフィルム(外被材)同士が密着可能な部分に熱溶着部33が形成されるため、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34を小さくできる。
【0060】
その後、熱溶着された非芯材部34を芯材形状と略相似形に、芯材部32の周囲に所定幅の熱溶着部33を確保できるように切断し、引き続き、屈曲部35として足裏と接する表面(足裏側面)にプレス加工により溝状の凹部を設けて略足型の真空断熱材31としている。
【0061】
本実施の形態1における靴11は、芯材をガスバリア性の外被材(ラミネートフィルム)で覆って外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材31を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した靴11(履物)であって、真空断熱材31には、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けて、複数本の溝状の凹部により真空断熱材31の屈曲部35を形成している。
【0062】
また、真空断熱材31における溝(屈曲部35)の近辺の厚みを、溝(屈曲部35)以外の箇所よりも薄く形成している。
【0063】
以上のような構成により、本実施の形態1における靴11は、靴底部の殆どを覆う真空断熱材31の優れた断熱作用により、人体の発する体熱の保温や外気の遮断が効果的に行われ、寒冷な環境下において足部を温かく保つことができる。
【0064】
履物11の靴底部は、体重による加重や歩行により縦横に屈曲することから靴底部に配置した真空断熱材31も追従して屈曲することが必要になる。そこで、履物11の靴底部に配置する真空断熱材31は、靴底部の屈曲部とその周辺部とに該当するいずれかの部位に溝状の凹部を縦横に複数本設けている。
【0065】
これにより、履物の靴底部が屈曲と復元を繰り返した場合にも真空断熱材31は靴底部と同様に追従して屈曲と復元を繰り返すことができ、履き心地に優れた履物が提供できる。また、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0066】
更に、溝状の凹部には、断熱性能を有する芯材が存在しているため、断熱性能を損なうこともない。よって、有効断熱面積が大きくなるので履物の断熱効果が向上し、保温性が向上する。
【0067】
また、溝状の凹部をプレス成形により形成しているため、複数の芯材配置や、芯材配置に関する位置決めなどの必要がなく、工数が大幅に削減できることから、真空断熱材31を適用した履物11を安価に提供することができる。
【0068】
また、屈曲部35となる溝状の凹部の近辺の厚みが薄くなっているので、真空断熱材31が屈曲した際のラミネートフィルム(外被材)の損傷を低減することができる。これにより、真空断熱材31の断熱性能劣化が更に低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0069】
また、真空断熱材31が、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分が芯材の周縁に沿うように熱溶着されており、芯材周囲の外被材同士が大気圧で密着する部分の殆ど全てを、外被材同士が熱溶着された熱溶着部33とすることができるので、外被材の間に芯材の無い非芯材部34を小さくでき有効断熱面積が大きくなる。よって、略足型形状、及び履物の靴底部形状に合うように成形しつつも、断熱性能を高められる。
【0070】
また、実施の形態で用いた真空断熱材31は、外被材の間に芯材がある芯材部32が厚み1mm以上5mm以下の範囲に入る4mmであるので、真空断熱材31は、断熱性、屈曲性、及び屈曲耐久性に優れており、履物の靴底部断熱材の他に、履物の中敷きの断熱材としても有効に適用でき、真空断熱材31が薄いことから、スペース確保の難しい履物、履物の中敷きであっても問題なく使用することができる。
【0071】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0072】
図5に示す実施の形態2の真空断熱材31の構成は、実施の形態1と似ており、つま先から踵方向に屈曲部35として設けた溝状の凹部が幅方向の両端付近にのみ設けられている点でのみ相違する。両端付近とは、靴底をつま先から踵方向に3分割した場合において両端の1/3の場所を示す。
【0073】
実施の形態2の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0074】
加重が履物の幅方向の中心の1/3程度に主にかかり両端部分と加重差が発生する。よって、湾曲が特に両端近辺に発生する。そこで靴底部の湾曲に真空断熱材31を追従させるため、履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、更に外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0075】
なお、本実施の形態ではつま先から踵方向の凹部を2本設けているが、この本数に限るものではない。
【0076】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0077】
図6に示す実施の形態3の真空断熱材31の構成は、実施の形態2と似ており、真空断熱材31の幅方向に設けていた屈曲部35である溝状の凹部が芯材を有しない目地部36で形成されている点でのみ相違する。目地部36は、芯材を有していないので、外被材同士が接触している。
【0078】
実施の形態3の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0079】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。幅方向の湾曲とは、つま先から踵方向に折れ目が発生する方向である。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。長さ方向の湾曲や屈曲とは、幅方向に折れ目が発生する方向のことである。これに追従するように真空断熱材31も湾曲や屈曲が発生する。
【0080】
このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し外被材が劣化し易くなる。そこで、真空断熱材31の幅方向に芯材を有せず形成した目地部36を設けている。
【0081】
これにより、芯材のない箇所で屈曲することにより、外被材にかかる負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0082】
また、熱溶着層同士が溶着されているので目地部36は溶着されており、各芯材が独立空間に形成されているので、屈曲によって目地部36に貫通孔が発生しても真空断熱材31全体が破袋することがなく、断熱性能の劣化が低減できる。
【0083】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0084】
図7に示す実施の形態4の真空断熱材31の構成は、実施の形態1と似ており、真空断熱材31のつま先から踵方向に設けていた屈曲部35である溝状の凹部が芯材を有しない目地部36で形成されている点でのみ相違する。目地部36とは、芯材を有していないので、外被材同士が接触している。
【0085】
実施の形態4の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0086】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材31も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し、外被材が劣化し易くなる。また、湾曲は特に幅方向に発生する。
【0087】
そのため、湾曲が発生し易い履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部36を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0088】
また、熱溶着層同士が溶着されているので目地部36も溶着されており、各芯材が独立空間に形成されているので、屈曲によって目地部36に貫通孔が発生しても真空断熱材31全体が破袋することがなく、断熱性能の劣化が低減できる。
【0089】
(実施の形態5)
図8は本発明の実施の形態5における靴に適用した真空断熱材の平面図(上面図)である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0090】
図8に示す実施の形態5の真空断熱材31の構成は、実施の形態4と似ており、真空断熱材31のつま先から踵方向に設けていた目地部36が幅方向の両端付近にのみ形成されている点でのみ相違する。目地部36とは、芯材を有していないので、外被材同士が接触している。
【0091】
実施の形態5の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0092】
底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺につま先から踵方向に溝を設けた。これにより、外被材にかかる負荷が芯材のない箇所で更に集中することにより、外被材の劣化が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、靴底部の中心部分に目地部36がなく有効断熱部があるので、保温性を維持できる。
【0093】
(実施の形態6)
図9は本発明の実施の形態6における靴に適用した真空断熱材の断面図である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0094】
図9に示す実施の形態6の真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材の対向する2つの伝熱面を、それぞれ2枚のガスバリア性のラミネートフィルム(外被材)で覆い、ラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧し、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の周囲の2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34の大気圧で互いに密着可能な2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着したものであり、非芯材部34の殆ど全てに、2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着した熱溶着部33が設けられている。熱溶着部33は、芯材部32の周囲に沿うように形成しているため、断熱機能を持たない非芯材部34をより小さくすることができる。また、芯材は履物の幅方向の両端の厚みを中央部より薄く形成してある。
【0095】
実施の形態6の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0096】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺の厚みを薄く形成した。これにより、厚みが薄いことで湾曲により外被材にかかる負荷が軽減され、外被材の劣化が軽減される。よって真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。なお、実施の形態1から6のように屈曲部35である凹部や目地部36を設けてもよい。そうすることにより、さらに外被材の劣化が軽減される。
【0097】
(実施の形態7)
図10は本発明の実施の形態7における靴の中敷の側面図である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0098】
図10に示す実施の形態7の真空断熱材31の構成は、略足型形状にカットされたグラスウール成形体からなる厚さ4mmの芯材の対向する2つの伝熱面を、それぞれ2枚のガスバリア性のラミネートフィルム(外被材)で覆い、ラミネートフィルム(外被材)の内部を減圧し、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の周囲の2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がない非芯材部34の大気圧で互いに密着可能な2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着したものであり、非芯材部34の殆ど全てに、2枚のラミネートフィルム(外被材)同士を熱溶着した熱溶着部33が設けられている。熱溶着部33は、芯材部32の周囲に沿うように形成しているため、断熱機能を持たない非芯材部34をより小さくすることができる。
【0099】
また、2枚のラミネートフィルム(外被材)の間に芯材がある略足型形状の芯材部32の足裏側面において、足指の付け根付近に相当する部位に屈曲部35として足指に略垂直な方向(足指の回動軸に略平行な方向)の芯材の一方の端(縁)から他方の端(縁)までの溝状の凹部を10本設けている。
【0100】
また、歩行時の靴底部の幅方向の屈曲に追従しないように、真空断熱材31の下面側(靴底側)に平板である樹脂板37を設置した。平板とは、体重や歩行による加重により屈曲が生じないものであり、例えば金属系の板、樹脂系、ゴム系の板が挙げられる。平板が靴底と一体になっていても構わない。
【0101】
実施の形態7の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0102】
靴底部は、加重や歩行により幅方向だけでなく長さ方向にも湾曲が発生する。また、歩行により長さ方向に屈曲が発生する。これに追従するように真空断熱材31も湾曲や屈曲が発生する。このため、外被材が3次元形状に折れ曲がるので負荷が1点に集中し、外被材が劣化し易くなる。
【0103】
そのため、真空断熱材31の下面に平板(樹脂板37)を設置した。これにより、靴底部に追従して真空断熱材31が湾曲するのを低減でき、外被材の劣化が軽減される。よって、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。
【0104】
なお、本実施の形態では溝状の凹部を10本設けているが、実施の形態1から6のように屈曲部35である凹部や目地部36を設けてもよい。そうすることにより、さらに外被材の劣化が軽減される。
【0105】
(実施の形態8)
図11は本発明の実施の形態8における靴の中敷きの概略図である。靴の仕様は実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0106】
図11に示す実施の形態8の中敷きは、靴底部の幅方向の中央に真空断熱材31が配設してあり、真空断熱材31の幅方向の両端部に中敷部材38を配設してある。なお、本実施の形態において真空断熱材31には実施の形態1〜7のように溝や目地部36を形成していないが、形成しても構わない。
【0107】
また、中敷き部材38とは、一般的に中敷きに用いられる部材であり、生地付きエラストマー、低反発ウレタン、シリコン系、ゴム系等である。特に断熱性能の高い低反発ウレタンだと保温効果が高い履物を提供できる。
【0108】
実施の形態8の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形している。
【0109】
靴底部の湾曲が発生し易い箇所である履物の幅方向の両端近辺に真空断熱材31を配置せず、中敷部材38を配置した。これにより、真空断熱材31の外被材にかかる湾曲による負荷が軽減され、真空断熱材31の断熱性能劣化が低減できるので、長期間において保温性を維持した履物を提供できる。また、足裏の中心部分に真空断熱材31を配置しているので、保温性の高い履物を提供できる。
【0110】
(実施の形態9)
図12は本発明の実施の形態9における靴の中敷の断面図である。
【0111】
図12において、靴の中敷51は、真空断熱材31の表面に生地付きエラストマー52を、裏面にプラスチックフィルム53を貼り合わせて構成している。
【0112】
一方、実施の形態9の真空断熱材31は、実施の形態1と同様の方法で成形したものを適用している。
【0113】
以上のような構成により、靴の中敷51は、真空断熱材31の優れた断熱性能により、従来の靴の中敷きと変わらない厚さでありながら、高い保温性能を有している。このように、保温性能が高くても靴の中敷きが薄く、従来中敷きと寸法や外観が大幅に変わることがなく、かつ靴の形状や靴の種類等に左右されることなく使用することができる。更に、真空断熱材31に表装材を貼り付け、履き心地を高めた靴の中敷きとしているため、気候や気温に応じて装着と取り外しが任意に選択できる。
【0114】
更に、屈曲性と屈曲耐久性に優れていることから、履き心地や経済性にも優れた中敷きであり、幅広い用途が期待できる。
【0115】
なお、真空断熱材31の芯材部32厚みに関しては、厚みを厚くすることで、より保温性能の高い靴の中敷きが提供でき、より厳しい寒冷地での適用も期待できる。しかし、厚すぎる場合は歩行時に違和感を覚えるため、10mm以下が望ましく、更には5mm以下がより望ましい。逆に、薄すぎる場合は、断熱性能が不足したり、断熱性能の経年特性が低下するため、1mm以上が望ましい。
【0116】
なお、本実施の形態では実施の形態1における中敷を示したが、実施の形態2から8における真空断熱材31を用いた中敷でも構わない。
【実施例】
【0117】
以下、靴、及び靴の中敷きとして適用できる真空断熱材の屈曲部仕様と、屈曲耐久性、及び装着時保温特性との関係について実施例と比較例を挙げて説明する。
【0118】
なお、真空断熱材は、真空断熱材の真空封止方法、及び構成材料は、基本的に、実施の形態1と同様の方法で実施した。その後、各実施の形態の靴の中敷きを成形し各種評価を行った。
【0119】
評価は、防寒用ブーツに真空断熱材を適用した中敷きを装着し、被験者5人で実装試験を実施する方法で行った。このうち、装着時保温特性試験は、−5℃環境化でブーツ中敷き表面温度を測定し、基準値をクリアするものを合格とした。履き心地試験は、官能試験とし、被験者のうち8人が問題ないと判断したものを合格とした。屈曲耐久性は1ヶ月間の実装試験とし、1ヶ月後、中敷きの熱伝導率の劣化が10%以内のものを合格とした。
【0120】
なお、実施例と比較例の屈曲部仕様と評価結果の関係を(表1)に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例1から実施例8に示すように、実施の形態1から8に示した真空断熱材は、いずれも、装着時保温特性、履き心地、及び屈曲耐久性の全てが合格という結果になった。また、特に実施例4、5、7、8における仕様が耐久試験後の熱伝導率の劣化が小さかった。また、特に実施例1、2、6において保温性が優れていた。
【0123】
一方、比較例1は、溝を幅方向にのみ設けたものであるが、耐久性がクリアできなかった。
【0124】
以上の結果より、縦横に屈曲部である凹部や目地部を設ける仕様が、屈曲耐久性に優れた仕様であることが判る。また、靴底の中心にのみ真空断熱材を配置する仕様も屈曲耐久性に優れた仕様であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明にかかる真空断熱材、及び真空断熱材を適用した履物と履物の中敷きは、優れた断熱性能を有する真空断熱材の適用により体熱の保温や冷気の遮断が効果的に行われると共に、真空断熱材は薄く形成しても断熱効果が高いので、本発明の実施の形態に示した靴に限らず、スリッパなど通常断熱性を有しない履物にも適用することもでき、これにより防寒性を確保し、快適性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の形態1における靴の側面図
【図2】本発明の実施の形態1における靴の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図4】本発明の実施の形態1における靴に適用した真空断熱材の側面図
【図5】本発明の実施の形態2における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図6】本発明の実施の形態3における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図7】本発明の実施の形態4における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図8】本発明の実施の形態5における靴に適用した真空断熱材の平面図
【図9】本発明の実施の形態6における靴に適用した真空断熱材の断面図
【図10】本発明の実施の形態7における靴の中敷きの側面図
【図11】本発明の実施の形態8における靴の中敷きの平面図
【図12】本発明の実施の形態9における靴の中敷きの断面図
【図13】従来の靴に適用した真空断熱材の平面図
【符号の説明】
【0127】
11 靴
31 真空断熱材
32 芯材部
33 熱溶着部
34 非芯材部
35 屈曲部(凹部)
36 目地部
37 樹脂板(平板)
38 中敷き部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、
前記真空断熱材は、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けている履物。
【請求項2】
履物のつま先から踵方向に設けられた真空断熱材の溝が、少なくとも履物の幅方向の両端近辺に設けられた請求項1に記載の履物。
【請求項3】
溝状の凹部の少なくとも一部が芯材を有せず形成された目地部である請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部を設け、履物の幅方向に溝状の凹部を設けた請求項3に記載の履物。
【請求項5】
少なくとも目地部が、履物の幅方向の両端近辺に設けられた請求項4に記載の履物。
【請求項6】
真空断熱材における履物の幅方向の両端の厚みが中央部より薄く形成した請求項1から5のいずれか一項に記載の履物。
【請求項7】
真空断熱材における溝もしくは目地部の近辺の厚みを、前記溝と前記目地部以外の箇所よりも薄く形成した請求項1から6のいずれか一項に記載の履物。
【請求項8】
芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、
前記真空断熱材が歩行時の靴底部の幅方向の屈曲に追従しないように、前記真空断熱材の下面側に平板を設置した履物。
【請求項9】
芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、靴底部の幅方向の中央に配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設した履物。
【請求項10】
靴底部の幅方向の中央に真空断熱材を配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設した請求項1から8のいずれか一項に記載の履物。
【請求項11】
真空断熱材は、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ前記芯材周囲の前記外被材同士が大気圧で密着する部分が前記芯材の周縁に沿うように熱溶着されている請求項1から10のいずれか一項に記載の履物。
【請求項12】
真空断熱材は、靴底部に対して着脱可能な中敷きを構成する部材として用いられており、前記真空断熱材の芯材が略足型形状であり、かつ前記芯材周囲に位置し外被材の間に前記芯材がなく前記外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状である請求項1から8と請求項11のいずれか一項に記載の履物。
【請求項13】
真空断熱材における外被材の間に芯材がある芯材部が厚み1mm以上5mm以下である請求項1から8と請求項11と請求項12のいずれか一項に記載の履物。
【請求項1】
芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、
前記真空断熱材は、靴底部の屈曲に追従するように、靴底部の屈曲部とその周辺部との該当するいずれかの箇所に、溝状の凹部を縦横に複数本設けている履物。
【請求項2】
履物のつま先から踵方向に設けられた真空断熱材の溝が、少なくとも履物の幅方向の両端近辺に設けられた請求項1に記載の履物。
【請求項3】
溝状の凹部の少なくとも一部が芯材を有せず形成された目地部である請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
履物のつま先から踵方向に芯材を有しない目地部を設け、履物の幅方向に溝状の凹部を設けた請求項3に記載の履物。
【請求項5】
少なくとも目地部が、履物の幅方向の両端近辺に設けられた請求項4に記載の履物。
【請求項6】
真空断熱材における履物の幅方向の両端の厚みが中央部より薄く形成した請求項1から5のいずれか一項に記載の履物。
【請求項7】
真空断熱材における溝もしくは目地部の近辺の厚みを、前記溝と前記目地部以外の箇所よりも薄く形成した請求項1から6のいずれか一項に記載の履物。
【請求項8】
芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、少なくとも靴底部のいずれかの箇所に適用した履物であって、
前記真空断熱材が歩行時の靴底部の幅方向の屈曲に追従しないように、前記真空断熱材の下面側に平板を設置した履物。
【請求項9】
芯材をガスバリア性の外被材で覆って前記外被材の内部を減圧して密封した真空断熱材を、靴底部の幅方向の中央に配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設した履物。
【請求項10】
靴底部の幅方向の中央に真空断熱材を配設し、前記真空断熱材の幅方向の両端部に中敷部材を配設した請求項1から8のいずれか一項に記載の履物。
【請求項11】
真空断熱材は、芯材の伝熱面と外被材との接触部分の少なくとも一部が熱溶着され、かつ前記芯材周囲の前記外被材同士が大気圧で密着する部分が前記芯材の周縁に沿うように熱溶着されている請求項1から10のいずれか一項に記載の履物。
【請求項12】
真空断熱材は、靴底部に対して着脱可能な中敷きを構成する部材として用いられており、前記真空断熱材の芯材が略足型形状であり、かつ前記芯材周囲に位置し外被材の間に前記芯材がなく前記外被材同士が熱溶着された非芯材部が略足型形状である請求項1から8と請求項11のいずれか一項に記載の履物。
【請求項13】
真空断熱材における外被材の間に芯材がある芯材部が厚み1mm以上5mm以下である請求項1から8と請求項11と請求項12のいずれか一項に記載の履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−228864(P2008−228864A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70188(P2007−70188)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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