説明

嵌め殺し窓

【課題】換気機能を有する嵌め殺し窓を提供する。
【解決手段】建物の壁体に形成した開口部15に上枠17と下枠18と左右縦枠24、25とを枠組みした窓枠内にガラス20を納めた嵌め殺し窓10において、前記下枠18には、前記ガラス20の下端部を飲み込む飲込み部18aと、前記飲込み部18aの屋内側に配置される垂直空間部18cと、前記垂直空間部19cと連通する空気流路18eと、を形成した。前記垂直空間部18cは、上端部が通気可能なカバー材19で覆われて屋内と連通し、前記空気流路18eは、前記下枠18の屋外側に設けられた通気口18fによって屋外と連通するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の壁体に形成した開口部に上枠と下枠と左右縦枠とを枠組みした窓枠内にガラスを納めた嵌め殺し窓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、窓枠と窓枠内に固定されるガラスとを備えた嵌め殺し窓(FIX窓)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうした嵌め殺し窓では、上枠と下枠と左右縦枠とで枠組みした窓枠の内部にガラスが納められ、各枠材に係合する押縁部材がガラスを屋内側から押圧し、この押縁部材と各枠材とでガラスを挟持することによって、ガラスが窓枠に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−43403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の嵌め殺し窓には、換気を図るものが存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明は、換気機能を有する嵌め殺し窓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0008】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の嵌め殺し窓は、建物の壁体に形成した開口部に上枠と下枠と左右縦枠とを枠組みした窓枠内にガラスを納めた嵌め殺し窓において、前記下枠には、前記ガラスの下端部を飲み込む飲込み部と、前記飲込み部の屋内側に配置される垂直空間部と、前記垂直空間部と連通する空気流路と、が形成され、前記垂直空間部は、上端部が通気可能なカバー材で覆われて屋内と連通しており、前記空気流路は、前記下枠の屋外側に設けられた通気口によって屋外と連通していることを特徴とする。
【0010】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、前記空気流路は、前記垂直空間部の下部と連通して、前記飲込み部の下方に配置されていることを特徴とする。
【0012】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記カバー材は、露出面が水平となるように前記垂直空間部の上端部を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、建物の壁体に形成した開口部に窓枠が設置されているから、開口部の内面が外部に露出して壁の厚みが外部から見える深見込みの構成とすることができ、重厚感が強調された意匠性の高い嵌め殺し窓を提供できる。また、下枠には、ガラスの下端部を飲み込む飲込み部と、前記飲込み部の屋内側に配置される垂直空間部と、前記垂直空間部と連通する空気流路と、が形成され、前記垂直空間部は、上端部が通気可能なカバー材で覆われて屋内と連通しており、前記空気流路は、前記下枠の屋外側に設けられた通気口によって屋外と連通している。このため、下枠に設けられた垂直空間部及び空気流路を介して屋内側と屋外側とが連通しているため、換気機能を有する嵌め殺し窓を提供することができ、上記したような深見込みの嵌め殺し窓であっても換気機能を備えることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記空気流路は、前記垂直空間部の下部と連通して、前記飲込み部の下方に配置されているため、下枠の下部に空気流路のためのスペースを確保でき、空気の流れを良好にすることができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記カバー材は、露出面が水平となるように前記垂直空間部の上端部を覆うため、内観としてカバー材が目立つことがなく、意匠性の良い嵌め殺し窓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】嵌め殺し窓の(a)外観図(b)内観図である。
【図2】嵌め殺し窓の縦断面図である。
【図3】図1の下枠付近を拡大した部分拡大断面図である。
【図4】嵌め殺し窓の横断面図である。
【図5】第1の変形例を示す図であって、下枠付近を拡大した部分拡大断面図である。
【図6】第2の変形例を示す図であって、嵌め殺し窓の縦断面図である。
【図7】第2の変形例を示す図であって、下枠付近を拡大した部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0019】
本実施例に係る嵌め殺し窓10は、図1〜4に示すように、建物の壁体に形成した開口部15の奥に上枠17と下枠18と左右縦枠24、25とで枠組みした窓枠を設置し、この窓枠内にガラス20を納めて形成されている。
【0020】
上記した窓枠を構成する上枠17、下枠18、及び、左右縦枠24、25は、アルミの押し出し型材にて成型された金属枠であり、図2に示すように、外壁11の表面から奥まった位置に配置されて深見込みとなっている。
【0021】
下枠18には、図2及び図3に示すように、上方を開放した溝状の飲込み部18aと、前記飲込み部18aの屋内側に配置される垂直空間部18cと、前記垂直空間部18cと連通する空気流路18eと、が形成されている。詳しくは、下枠18には、図2及び図3に示すように、上端方向に向けて3つの起立片が垂直に立ち上がっており、すなわち、屋外側の第1起立片40と、この第1起立片40よりも屋内側に形成された第2起立片41と、この第2起立片41よりも更に屋内側に形成された第3起立片42と、が設けられている。これらの3つの起立片が上方に起立することにより、見付方向に溝が形成されており、第1起立片40と第2起立片41との間に形成された溝が上記した飲込み部18aを形成し、記第2起立片41と第3起立片42との間に形成された溝が上記した垂直空間部18cを形成するようになっている。
【0022】
飲込み部18aは、図2に示すように、ガラス20の下端部を飲み込むためのものである。すなわち、この飲込み部18aの下部にはセッティングブロック22が配置されており、このセッティングブロック22の上にガラス20の下端部を載置することにより、ガラス20の下端部を飲み込むようになっている。なお、このように載置されたガラス20の下端部は、緩衝部材21を介して飲込み部18aの両側面によって支持される。
【0023】
垂直空間部18cは、図3に示すように、飲込み部18aの屋内側に隣接して設けられ、飲込み部18aと見付方向に平行な溝部を形成するものである。なお、この垂直空間部18cの上端部は、下枠18の長手方向全長にわたって開口しており、図3に示すように、この下枠18の長手方向全長にわたる開口がカバー材19で覆われている。すなわち、このカバー材19は、下枠18の長手方向全長と略同じ長さに形成されている。なお、カバー材19は必ずしも下枠18の長手方向全長と略同じ長さに形成する必要はなく、複数のカバー材19を連結して下枠18の長手方向全長と略同じ長さとしてもよい。
【0024】
このカバー材19は、露出面19aが水平となるように垂直空間部18cの上端部を覆っており、この露出面19aに複数の通気部19b(例えば、通気用のスリットなど)が形成されていることにより、通気可能な形状となっている。このため、垂直空間部18cの内部は、カバー材19の通気部19bを介して屋内と連通するようになっている。
【0025】
空気流路18eは、垂直空間部18cと連通して換気を行うためのものであり、図3に示すように、前記垂直空間部18cの下部と連通して、前記飲込み部18aの下方に配置されている。詳しくは、前記した垂直空間部18cの下端部には連通口18dが開口しており、この連通口18dを介して空気流路18eと垂直空間部18cとが連通するようになっている。また、この空気流路18eは、飲込み部18aの下方で略水平に設けられており、屋外側へと延設されて、屋外側に露出する面を有する外壁部18gに突き当るようになっている。なお、この空気流路18eは、図3に示すように、底部が屋外方向に行くに従って次第に下方に傾斜するように形成されている。この空気流路18eが突き当る外壁部18gには通気口18fが貫通形成されており、この通気口18fによって空気流路18eは屋外と連通している。すなわち、空気流路18eは、一端が連通口18dを介して垂直空間部18cと連通しており、他端が通気口18fを介して屋外と連通するようになっている。
【0026】
なお、この下枠18には、屋外方向に延設された水切り部18bが一体形成されており、この水切り部18bが外壁11の開口部15の縁部まで延出しており、外壁11の開口部15の下方内側全体を覆っている。
【0027】
ところで、本実施形態に係る外壁11は、図2に示すように、下地材16の外側にサイディング材12が貼設されて形成されており、表面に嵌め殺し窓10用の開口部15を有するものである。
【0028】
ここで、この開口部15の下部を見ると、図2に示すように、水切り部18bの下部においてサイディング材12が外壁11を形成しており、このサイディング材12の端部が下枠18の水切り部18bの下面側に臨むように配置されている。そして、このサイディング材12の端部と下枠18との間には、コーキング材14が充填され、両者の間の間隙が埋められている。
【0029】
すなわち、水切り部18bの上方には開口部15が設けられており、前記した通気口18fは水切り部18bよりも上方に設けられているため、通気口18fは屋外側に露出するように設けられている。このため、図3に示すように、カバー材19の通気部19bから垂直空間部18cへと流れ込んだ空気は、連通口18dを介して空気流路18eへと流れ、更に通気口18fを通って屋外へと排気される。もちろん、これと逆に空気が流れれば、屋外から屋内への吸気が行われることとなる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、建物の壁体に形成した開口部15の奥に窓枠が設置されているから、開口部15の内面が外部に露出して壁の厚みが外部から見える深見込みの構成となっており、重厚感が強調された意匠性の高い嵌め殺し窓10となっている。また、下枠18に設けられた垂直空間部18c及び空気流路18eを介して屋内側と屋外側とが連通しているため、換気機能を有する嵌め殺し窓10を提供することができ、深見込みの嵌め殺し窓10であるにもかかわらず換気機能を備えるようになっている。
【0031】
また、前記空気流路18eは、前記垂直空間部18cの下部と連通して、前記飲込み部18aの下方に配置されているため、下枠18の下部に空気流路18eのための広いスペースを確保でき、空気の流れを良好にすることができる。
【0032】
また、前記カバー材19は、露出面19aが水平となるように前記垂直空間部18cの上端部を覆うため、内観としてカバー材19が目立つことがなく、意匠性の良い嵌め殺し窓10を提供することができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、図4に示すように、左右縦枠24、25でガラス20の左右端を挟持している。この左右縦枠24、25にガラス20を固定する際には、ガラス支持部24a、25aに緩衝部材を取り付け、この緩衝部材を介してガラス支持部24a、25aでガラス20の左右端の屋外側面を支持する。そして、屋内側から縦枠押縁部材28を嵌め込む。すなわち、縦枠押縁部材28の屋内側の端縁付近に形成された係止端部28aを左縦枠24の押縁係合部24cに係合させ、縦枠押縁部材28の裏面側を左縦枠24に固定して、ガラス20の屋内側に縦枠押縁部材28を取り付ける。このとき、縦枠押縁部材28の屋外側の端縁付近に形成された支持端部28bには緩衝部材を取り付けており、この緩衝部材がガラス20に当接するようになっている。これにより、この縦枠押縁部材28が緩衝部材を介して屋内側からガラス20をガラス支持部24a、25aの方向へと押圧し、ガラス20は、縦枠押縁部材28とガラス支持部24a、25aとで挟み込まれて固定される。
【0034】
本実施形態においては、この縦枠押縁部材28がカバー材18と同じ幅で設けられており、カバー材18の端部で連続するように配置されているため、すっきりとした意匠の嵌め殺し窓10となっている。
【0035】
また、本実施形態においては、図2及び図4に示すように、上枠21及び左右縦枠24、25に臨むようにコーナーサイディング材13が配置されており、このコーナーサイディング材13と上枠21との間、及び、このコーナーサイディング材13と左右縦枠24、25との間には、コーキング材14が充填されて間隙が埋められている。この上枠21との間のコーキング材14は、左右縦枠24、25との間のコーキング材14と連続しており、すなわち、上枠21と左右縦枠24、25とに沿って連続するようにコーキング材14が充填されている。
【0036】
なお、上記においては、カバー材19が単に通気可能である(通気部19bを有する)として説明したが、これに限らない。例えば、カバー材19と一体あるいは別体に、換気装置を設けることとしてもよい。具体的には、図5に示すように、カバー材19に一体となった換気用フラップ23を設けるような態様としてもよい。そして、この換気用フラップ23は、スイッチ(図示せず)などを操作することでカバー材19の通気部19bを開閉可能に形成してもよい。また、このような換気装置を、カバー材19と一体に設けるのではなく、カバー材19と分離して垂直空間部18cの内部に設けることとしてもよい。また、通気部19bを有するカバー材19の他に、通気不能なカバー材を別途用意して、カバー材を取り換えることで換気の有無を切り替えることとしてもよい。
【0037】
また、上記した実施形態に係る下枠18に代えて、下記のような下枠18を採用してもよい。すなわち、図6及び図7に示すように、上記実施形態の下枠18と比較して、水切り部18bを上方に形成した下枠18を採用してもよい。
【0038】
この下枠18は、図6及び図7に示すように、水切り部18bを、ガラス20の下端部を飲み込む飲込み部18aの下面と連続するように、この飲込み部18aの下面と略同じ高さに設けている。このため、この空気流路18eが屋外側で突き当る突き当り部18jは、外壁11に埋もれて露出しないようになっている。すなわち、この突き当り部18jには空気流路18eと連通する第1通気口18hが設けられているものの、この第1通気口18hは屋外側に露出しないようになっている。
【0039】
この第1通気口18hにおける、空気流路18eの向こう側には、図6に示すように、サイディング材12や下地材16で囲まれた水切り下空間部18kが設けられており、すなわち、この水切り下空間部18kは、水切り部18bの下方において第1通気口18hを介して空気流路18eと連通している。また、図6に示すように、水切り下空間部18kの上方を覆う水切り部18bには、第2通気口18iが形成されており、この第2通気口18iによって水切り下空間部18kが屋外と連通するようになっている。
【0040】
このため、図7に示すように、カバー材19の通気部19bから垂直空間部18cへと流れ込んだ空気は、連通口18dを介して空気流路18eへと流れ、更に第1通気口18hと第2通気口18iを通って屋外へと排気される。もちろん、これと逆に空気が流れれば、屋外から屋内への吸気が行われることとなる。
【0041】
この図6及び図7に示すような構成とした場合でも、下枠18に設けられた垂直空間部18c及び空気流路18eを介して屋内側と屋外側とが連通しているため、換気機能を有する嵌め殺し窓10を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 嵌め殺し窓
11 外壁
12 サイディング材
13 コーナーサイディング材
14 コーキング材
15 開口部
16 下地材
17 上枠
18 下枠
18a 飲込み部
18b 水切り部
18c 垂直空間部
18d 連通口
18e 空気流路
18f 通気口
18g 外壁部
18h 第1通気口
18i 第2通気口
18j 突き当り部
18k 水切り下空間部
19 カバー材
19a 露出面
19b 通気部
20 ガラス
21 緩衝部材
22 セッティングブロック
23 換気用フラップ
24 左縦枠
24a ガラス支持部
25 右縦枠
25a ガラス支持部
30 アングル材
31 額縁部材
34 内壁
36 水切りキャップ
40 第1起立片
41 第2起立片
42 第3起立片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に上枠と下枠と左右縦枠とを枠組みした窓枠内にガラスを納めた嵌め殺し窓において、
前記下枠には、前記ガラスの下端部を飲み込む飲込み部と、前記飲込み部の屋内側に配置される垂直空間部と、前記垂直空間部と連通する空気流路と、が形成され、
前記垂直空間部は、上端部が通気可能なカバー材で覆われて屋内と連通しており、
前記空気流路は、前記下枠の屋外側に設けられた通気口によって屋外と連通していることを特徴とする、嵌め殺し窓。
【請求項2】
前記空気流路は、前記垂直空間部の下部と連通して、前記飲込み部の下方に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の嵌め殺し窓。
【請求項3】
前記カバー材は、露出面が水平となるように前記垂直空間部の上端部を覆うことを特徴とする、請求項1又は2記載の嵌め殺し窓。
【請求項4】
前記下枠は、屋外側の第1起立片と、前記第1起立片よりも屋内側に形成された第2起立片と、前記第2起立片よりも更に屋内側に形成された第3起立片と、が上方に起立して見付方向に溝を形成しており、
前記第1起立片と前記第2起立片との間に形成された溝で前記飲込み部を形成し、
前記第2起立片と前記第3起立片との間に形成された溝で前記垂直空間部を形成していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の嵌め殺し窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52342(P2012−52342A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195796(P2010−195796)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】