説明

嵩高シート及びその製造方法

【課題】フローリングの溝、及び家具や電化製品の凹面などに存する比較的大きなダストを効果的に捕集することができる嵩高シートを提供すること。
【解決手段】第1の面11及びそれと反対側に位置する第2の面12を有し、少なくとも第1の面11に、複数の巨視的な第1の溝部21と凸状部30とを有する嵩高シート10である。複数の第1の溝部21は所定の間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、かつ隣り合う第1の溝部21間に凸状部30が位置している。凸状部30は、嵩高シート10が第2の面12から第1の面11に向けて突出することで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩高シート及びその製造方法に関し、特に清掃用シートに好適に使用される嵩高シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、繊維ウェブを水流交絡させて形成された繊維集合体を具備し、複数の凹凸部を有する嵩高シートを提案した(特許文献1参照)。この嵩高シートは、繊維ウェブの水流交絡によって形成された繊維集合体を、複数の凹凸部を有しかつ複数の開孔を有するパターニング部材上で再度水流交絡させることによって製造されたものである。この方法で得られた嵩高シートは、複数の凸状部を有し、それに起因して柔軟で風合いが良いので清掃用シートに好適に使用できる。また、この方法によれば嵩高シートを安価に製造できる。この嵩高シートを清掃用シートとして用いると、被清掃面に付着した細かなダスト等の汚れを構成繊維間で捕集しこれを保持することができるという利点がある。
【0003】
この技術とは別に、特許文献2には、繊維素材からなり、少なくとも片面に複数の起伏を有する不織布製ワイパーが記載されている。この不織布製ワイパーは、次の(a)〜(c)の工程で製造されると、同文献には記載されている。
(a)少なくとも一層の親水性繊維ウェブと、少なくとも一層の熱捲縮性の疎水性繊維ウェブとからなる積層体を得る工程。
(b)連続した平面部と、間欠的かつ独立して分布する複数の凸部及び/又は凹部と、複数の微細排水孔とを備えた支持体表面上において、前記積層体に微細孔ノズルから高圧水を噴射し、前記両ウェブの繊維を交絡させるとともに再配列させて前記積層体の面方向に繊維の分布密度にむらを有する不織布を得る工程。
(c)前記不織布を脱水及び/又は乾燥した後、熱処理して前記合成繊維を捲縮させる工程。
特許文献2に記載の方法によれば、比較的高低差の大きい複数の起伏からなるワイパーを製造することはできる。しかし、親水性繊維及び熱捲縮性の疎水性繊維という2種類の繊維を使用する必要があること、及び熱処理によって熱捲縮性の疎水性繊維を捲縮させる必要があることから、製造工程が煩雑となり、製造経費の点で不利である。
【0004】
特許文献3には、所定の通気性支持部材によって一方の面側から支持される略シート状に形成された繊維集合体に、主に気体からなる流体を噴きあてることによって、所定の溝部、開孔部又は突起部の1又は2以上が形成された不織布が記載されている。繊維集合体は所定の温度で軟化する熱可塑性繊維を含むものである。この不織布を製造するためには、前記の熱可塑性繊維を加熱して軟化させる必要があることから、製造工程が煩雑となり、製造経費の点で不利である。
【0005】
特許文献4には、作業面がランダムでない盛り上げ領域及びへこみ領域を含み、前記へこみ領域がX−Y次元に個々の盛り上げ領域を取り囲む連続模様を形成し、前記連続へこみ模様がチャネルを含む孔なしクリーニングシートが記載されている。前記作業面は少なくとも1mmの平均高低差及び750gsmを超える総孔体積を有している。このクリーニングシートを製造するためには、盛り上げ及びへこみ領域模様を有する形成ベルト上で不織構造体の繊維を湿式に絡み合わせる工程が必要である。したがって製造工程が煩雑となり、製造経費の点で不利である。また、このクリーニングシートにおけるへこみ領域は、大きい粒子の捕集性が低いという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−336052号公報
【特許文献2】特開平8−60509号公報
【特許文献3】特開2008−2034号公報
【特許文献4】特開2006−320728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、特に清掃用シートとして使用した場合にダストの捕集性に優れた嵩高シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、繊維ウェブに高圧水流を吹き付けてその構成繊維を交絡させて繊維交絡体を形成し、所定の開孔パターンを有する第1パターニング部材上に該繊維交絡体を配置し、その状態下に該繊維交絡体に高圧水流を吹き付けて該繊維交絡体の一部を第1パターニング部材の開孔内に突出させる嵩高シートの製造方法であって、
第1パターニング部材として、一方向に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第1のワイヤ状部材と、複数の開孔を有する支持体とを有し、該支持体が複数本の第1のワイヤ状部材の下側に位置しているものを用いた嵩高シートの製造方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、繊維ウェブの構成繊維どうしを交絡させて形成されてなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する嵩高シートであって、
該嵩高シートは少なくとも第1の面に、複数の巨視的な第1の溝部と凸状部とを有し、
複数の第1の溝部は0.825〜15mmの間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、第1の方向は繊維の配向方向と一致しており、かつ隣り合う第1の溝部間に凸状部が位置しており、
凸状部は、該嵩高シートが第2の面から第1の面に向けて突出することで形成されている、嵩高シートを提供するものである。
【0010】
更に本発明は、繊維ウェブの構成繊維どうしを交絡させるとともに、該構成繊維とスクリム材料とを交絡させて形成されてなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する嵩高シートであって、
該嵩高シートは少なくとも第1の面に、複数の巨視的な第1の溝部と凸状部とを有し、
複数の第1の溝部は0.825〜15mmの間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、第1の方向は繊維の配向方向と一致しており、かつ隣り合う第1の溝部間に凸状部が位置しており、
凸状部は、該嵩高シートが第2の面から第1の面に向けて突出することで形成されており、
該嵩高シートは、その平面視において第1区域及び第2区域を有し、
第1区域は第2区域よりも繊維密度が大きくかつ第2区域よりも厚みが小さく、
第2区域は第1区域よりも繊維密度が小さくかつ第1区域より厚みが大きく、
第2区域が第1区域によって区画されており、第1区域は繊維配向の方向に延びる第1領域、第1領域の延びる方向と直角の方向に延びる第2領域を有し、隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、第2区域は、繊維の配向方向に直線距離で286mm以上の寸法を有しており、隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第2区域は、第1領域の延びる方向と直角の方向に206mm以上の寸法を有している、嵩高シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の嵩高シートは、柔軟でかつ風合いが良好である。また本発明の嵩高シートは、これを特に清掃用シートとして使用した場合、フローリングの溝、及び家具や電化製品の凹面など、これまで捕集し難かった部位に存する比較的大きなダスト、例えばパン粉等を効果的に捕集することができる。また本発明の製造方法によれば、そのような嵩高シートを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の嵩高シートの一実施形態を示す厚み方向の断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の嵩高シートの別の実施形態を示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)におけるb−b線断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の嵩高シートの別の実施形態を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)におけるb−b線断面図である。
【図4】図4は、図2に示す嵩高シートを製造するために用いられる好適な装置を示す模式図である。
【図5】図5(a)は、図4に示す装置の凹凸賦与部に設置されているドラム状のパターニング部材の外観図であり、図5(b)は、図5(a)に示すドラム状のパターニング部材の一部を平面に引き伸ばした状態の斜視図である。
【図6】図6(a)ないし(c)は、図5(a)及び(b)に示すパターニング部材による繊維交絡体の凹凸賦形の状態を示す模式図である。
【図7】図7(a)ないし(c)は、パターニング部材における第1のワイヤ状部材及び第2のワイヤ状部材の配置状態を示す模式図である。
【図8】図8(a)ないし(d)は、パターニング部材における第1のワイヤ状部材及び第2のワイヤ状部材の配置状態を示す模式図である。
【図9】図9は、図4における別の実施形態の凹凸賦与部の第2パターニング部材を示す図である。
【図10】図10は、図4における別の実施形態の凹凸付与部の要部を拡大して示す模式図である。
【図11】図11は、図4における別の実施形態の凹凸賦与部における凹凸賦形の状態を示す模式図である。
【図12】図12は、図4における別の実施形態の第2パターニング部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の嵩高シートは、繊維材料から構成されたシート状物からなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する。第1の面及び第2の面はいずれも繊維材料から構成されている。本発明の嵩高シートは、繊維材料のみから構成されていてもよく、あるいは繊維材料に加えて他の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、例えば後述するスクリム材料が挙げられる。
【0014】
本発明の嵩高シートは、繊維ウェブの構成繊維を交絡させて形成されている。嵩高シートが繊維ウェブに加えてスクリム材料も有している場合は、繊維ウェブの構成繊維どうしが交絡しているとともに、該構成繊維とスクリム材料とが交絡している。繊維ウェブとは、保形性を有さない繊維の集合体のことである。この繊維ウェブの構成繊維を高度に交絡させることで、保形性の高い繊維シートとなる。繊維ウェブの交絡の手段に特に制限はなく、当該技術分野においてこれまで知られている方法を採用することができる。例えばニードルパンチによる交絡を採用することができる。特に好ましい交絡の手段は、後述する高圧水流の吹き付けによる水流交絡である。嵩高シートの構成繊維は、交絡のみによって該嵩高シートの保形性を発現していることが、該嵩高シートを清掃用シートとして用いた場合のダストの捕集性の高さの点から好ましい。しかし、構成繊維の一部が交絡に加えてその他の手段によって嵩高シートの保形性を発現させていてもよい。例えば構成繊維の交点が結合することによって嵩高シートの保形性を発現させることができる。構成繊維の交点を結合させるには、例えば融着や接着剤による接着などが挙げられる。
【0015】
図1には本発明の嵩高シートの一実施形態を示す厚み方向の断面図が示されている。嵩高シート10は、先に述べたとおり、第1の面11及びそれと反対側に位置する第2の面12を有する。嵩高シート10は、少なくとも第1の面11に、複数の巨視的な第1の溝部21と、凸状部30とを有している。巨視的とは、図1に示す形態の嵩高シート10を肉眼で見たときに第1の溝部21及び凸状部30の存在を認識できることを言い、嵩高シートの10の厚み方向の断面を顕微鏡で拡大観察して初めてその存在が認められるような微小な溝部や凸状部を意味しないことを言う。より具体的には、例えばキーエンス(株)VHX−500デジタルマイクロスコープを使用し、倍率20倍、無荷重で観察して初めてその存在が認められるような0.1mm程度の深さや高さを有する微小な溝部や凸状部を意味しないことを言う。
【0016】
複数の第1の溝部21は、所定の間隔をおいて第1の方向(図1では紙面と直交する方向)に延びている。この方向は、一般に嵩高シート10の製造時の機械方向(MD)と一致している。第1の溝部21は実質的に連続して直線状に延びている。隣り合う第1の溝部21は互いに平行になっており、第1の溝部21どうしの交差部は存在しない。第1の溝部21の深さは、その延びる方向において実質的に同じになっている。第1の溝部21は、凸状部30が、嵩高シート10の第2の面12から第1の面11に向けて突出することで結果的に形成されている。
【0017】
隣り合う第1の溝部21の間には凸状部30が位置している。凸状部30は、嵩高シート10が第2の面12から第1の面11に向けて突出することで形成されている。凸状部30の形状は、後述する第2の溝部が第1の面11に形成されているか、それとも形成されていないかによって異なる。具体的には以下のとおりである。
(i)第2の溝部が第1の面11に形成されていない場合
凸状部30は、第1の溝部21と同方向に延びる一条の畝部となる。
(ii)第2の溝部が第1の面11に形成されている場合
凸状部30は、その平面視において、第1の溝部と第2の溝部の交差によって画定される略矩形の形状を有するものとなる。この場合、複数個の凸状部30が第1の溝部21の延びる方向及び/又は第2の溝部の延びる方向に直列に配列されることになる。つまり、隣り合う第1の溝部21間及び/又は隣り合う第2の溝部間に、複数の凸状部30が直線状にかつ不連続に連なって、見かけ上一条の畝部が形成されるようになる。
【0018】
嵩高シート10においては、その構成繊維の交絡によってシートの保形性が発現しているので、該繊維の自由度が高くなっている。したがって嵩高シート10は、柔軟でかつ風合いが良好なものとなる。繊維の自由度(動きやすさ)が高いことには次の利点がある。すなわち、嵩高シート10を乾式の清掃用シートとして用い、第1の面11を清掃面として用いる場合、自由度が高い繊維間に粒子状及び/又は繊維状のダストを首尾良く絡み取ることができる。自由度の高い繊維によるダストの捕集は、比較的小さなダストに適しており、主として凸状部30において行われる。一方、比較的大きなダスト、例えばパン粉等は、嵩高シート10の第1の面11に形成されている第1の溝部21内に嵌り込んで首尾良く捕集される。しかも第1の溝部21は直線状に延びているので、該溝部21が断続的な場合や、あるいは蛇行している場合に比べて、比較的大きなダストの捕集性が高くなっている。このように、本実施形態の嵩高シート10を清掃用シートとして用いると、凸状部30において比較的小さなダストが捕集され、かつ第1の溝部21において比較的大きなダストが捕集される。したがって本実施形態の嵩高シート10を清掃用シートとして用いると、フローリングの溝、及び家具や電化製品の凹面など、これまで捕集し難かった部位に存する比較的大きなダストを、比較的小さなダストと同時に捕集することができる。
【0019】
比較的小さなダストを繊維間に絡み取って捕集するためには、嵩高シート10の構成繊維の自由度が高いことが有利である。しかし、繊維の自由度が過度に高いと、嵩高シート10の保形性が低下する傾向にある。これらの観点から、繊維の自由度は、これを交絡係数で表して0.05〜2N・m/g、特に0.2〜1.5N・m/gであることが好ましい。交絡係数は構成繊維間の絡合状態を表す尺度であり、嵩高シート10における、その繊維配向に対する直交方向の応力−ひずみ曲線の初期勾配で表される。交絡係数はその値が小さいほど繊維間の絡合が弱い、すなわち自由度が高いといえる。このとき、繊維配向とは引張強度試験時の最大点荷重値が最大となる方向である。応力は引張荷重をつかみ幅(引張強度試験時の試験片幅)及び嵩高シートの坪量で割った値である。ひずみは伸び量を示す。交絡係数の詳細な測定方法は、例えば特許3537775号明細書の段落〔0060〕に記載されている。
【0020】
嵩高シート10が上述の交絡係数を有するようにするためには、例えば後述する嵩高シート10の製造方法において、水流交絡の条件を適切に選定すればよい。
【0021】
図3(a)には、図2に示す実施形態とは異なる形態の嵩高シート10が示されている。図3(b)は、図3(a)におけるb−b線断面図である。図3に示す嵩高シート10は、その平面視において第1区域71及び第2区域72を有している点で、図2に示す嵩高シートと相違している。
【0022】
図3に示す嵩高シート10は、主として繊維材料から構成されている繊維シートである。嵩高シート10は、繊維ウェブの水流交絡で形成された繊維交絡体41と繊維交絡体41の内部に配されたスクリム材料62とから構成されている。繊維交絡体41とスクリム材料62とは、繊維交絡体41の構成繊維がスクリム材料62と絡合し、両者が一体化している。
【0023】
繊維交絡体41はその構成繊維の絡合のみによって形成されていることが好ましい。こうすることで、熱可塑性樹脂からなる繊維を融着することで結合した繊維交絡体と異なり、嵩高シート10は肌触りが良くなり、嵩高シート10を例えば清掃用シート、特に床用の清掃用シートとして用いた場合には、髪の毛や細かなダスト等の汚れの捕集性及び保持性に優れるようになる。
【0024】
嵩高シート10は、第1区域71及び第2区域72を有している。第2区域72は、第1区域71によって区画されている。図3(a)に示すように、第1区域71は、その平面視において、長手方向に延びる複数の第1領域71aと、隣り合う第1領域71a間を接続し、かつ第1領域71aと直交する方向に延びる複数の第2領域71bとを有している。複数の第1領域71aは所定の間隔を置いて略平行に配置されている。複数の第2領域71bも所定の間隔を置いて略平行に配置されている。1本の第2領域71bは、隣り合う2本の第1領域71aを接続しているだけであり、隣り合う3本以上の第1領域71aは接続していない。第1領域71aは、嵩高シート10を構成する繊維の配向方向と略同方向に延びている。
【0025】
第2区域72は、第1区域71を構成する第1領域71a及び第2領域71bで区画される領域内に位置している。第2区域72はその周囲の全域が、第1領域71a及び第2領域71bによって取り囲まれていないことが、嵩高シート10を清掃用シートとして用いた場合に、捕集性や清掃の操作性が向上する点から好ましい。尤も、第1区域71が連続した閉じた形状をしており、第2区域72の周囲の全域が、第1区域71によって区画され個々独立していてもよい。第1区域71の隣り合う第2領域71b間の距離が隣り合う第1領域71a間の距離より長い場合、第1区域71の隣り合う第2領域71b間の距離L1が、直線距離で286mm以上、特に286〜400mm、とりわけ286〜310mmであることが好ましい。一方、第1区域71の隣り合う第1領域71a間の距離が隣り合う第2領域71b間の距離より長い場合、第1区域71の隣り合う第1領域71a間の距離W3が、206mm以上、特に206〜300mm、とりわけ206〜225mmであることが好ましい。このような寸法の第1領域71a及び第2領域71bからなる第1区画71を形成することで、第2区域72の面積が増えるので、嵩高シート10を清掃用シートとして用いた場合に、捕集性や清掃の操作性が向上するので好ましい。距離L1をこのような寸法にすることで捕集部分が長くなり、特に30cm程度の長い髪の毛の捕集性が向上するのではないかと本発明者は考えている。
【0026】
第1区域71及び第2区域72は、それらの繊維密度及び厚みによって区別される。具体的には、第1区域71は、第2区域72に比較して繊維密度が大きくかつ厚みが小さくなっている。一方、第2区域72は、第1区域71に比較して繊維密度が小さくかつ厚みが大きくなっている。その結果、嵩高シート10においては、その一方の面側において、厚みの大きな第2区域72と、厚みの小さな第1区域71とが形成されている。これら第1区域71及び第2区域72が形成されていることで、嵩高シート10は嵩高な構造になっている。
【0027】
厚みの大きな第2区域72は、複数の凸状部30及び第1の溝部21を有している。凸状部30は、第2区域72を構成する繊維交絡体が、第2区域72の一方の面側から他方の面側に突出して形成されている。そして凸状部30間に第1の溝部21が位置している。その結果、第2区域72は全体として凹凸形状となっている。
【0028】
凸状部30は、それぞれ略同じ大きさで、第1区域71の第1領域71aの延びる方向と同方向に延びている。隣り合う凸状部30間に位置する第1の溝部21も、第1区域71の第1領域71aの延びる方向と同方向に延びている。
【0029】
このように、図3に示す嵩高シート10は、厚みが大きく凸状となっている第2区域72と厚みが小さく凹状となっている第1区域71とを有し、更に第2区域72が凸状部30及び第1の溝部21を有するという二重の凹凸構造となっている。その結果、嵩高シート10を例えばドライタイプの清掃用シートとして用いた場合、特に床用の清掃用シートとして用いた場合に、フローリングの溝や凹凸面に対する汚れの清掃性に優れ、パン粉等の比較的大きな汚れの捕集性及び保持性に優れたものとなる。また、髪の毛や細かなダスト等の汚れの捕集性及び保持性に優れたものとなる。また、嵩高シート10を、液が含浸されたウエットの清掃用シートとして用いた場合、清掃の操作性が向上する。特に拭き取り時の抵抗が小さくなり、洗浄液の徐放性が向上する。
【0030】
また、繊維密度の小さな第2区域72が、繊維密度の大きな第1区域71によって区画されていることで、第2区域72における繊維自由度を高めつつ、同領域72における繊維の毛羽立ちや繊維の抜けを効果的に防止することができる。
【0031】
第1区域71が、第2区域72よりも繊維密度が高いことは先に述べたとおりであるが、第1区域71の繊維密度それ自体は0.020〜0.65g/cm3、特に0.035〜0.50g/cm3であることが、繊維自由度の高い第2区域72における繊維の毛羽立ちや繊維の抜けを効果的に防止する点から好ましい。一方、第2区域72の繊維密度は、第1区域71の繊維密度よりも低いことを条件として、0.005〜0.65g/cm3、特に0.01〜0.40g/cm3であることが、嵩高シート10を清掃用シートとして用いた場合のダスト捕集性の向上の点から好ましい。
【0032】
第1区域71及び第2区域72の繊維密度は、次の方法で測定される。嵩高シート10から所定の面積の第1区域71及び第2区域72をそれぞれ10個切り出す。そしてその厚みをレーザー厚み計で測定する。測定は、40Pa荷重下で行われる。また、質量を測定し、測定された質量を面積で除して坪量を算出する。測定された厚みと、算出された坪量とから繊維密度を算出する。算出された繊維密度の平均値を、本発明における繊維密度と定義する。
【0033】
第2区域72は、第1区域71よりも厚みが大きくなっている。したがって嵩高シート10を例えば清掃用シートとして用いた場合、清掃対象面と接触するのは主として第2区域72となり、第1区域71は清掃対象面に接触しづらい状態になっている。しかし、清掃に全く関与しない領域とはなっていない。なぜなら、第1区域71は、繊維密度が高くなってはいるものの、繊維の絡合のみによって形成されているので、ダストの絡み取り性を有しているからである。これに対して、例えばヒートエンボス加工によって形成された凹部は、繊維どうしが融着した状態になっているので、ダストの絡み取り性を有していない。
【0034】
嵩高シート10を、例えば液が含浸されたウエットタイプの清掃用シートとして用いる場合には、拭き取り時の抵抗が小さくなる。この観点から、第2区域72はその厚みが1.0〜5.0mm、特に1.2〜4.0mmであることが好ましい。一方、第1区域71はその厚みが0.1〜1.5mmであることが好ましい。
【0035】
第1区域71及び第2区域72の厚みは、次の方法で測定される。嵩高シート10から所定の面積の第1区域71及び第2区域72をそれぞれ10個切り出す。そしてその厚みをレーザー厚み計で測定する。測定は、40Pa荷重下で行われる。測定された厚みの平均値を、本発明における厚みと定義する。
【0036】
嵩高シート10の平面視における第1区域71と第2区域72との面積比は、嵩高シート10を、例えばドライタイプの清掃用シートとして用いる場合は、捕集性に影響を及ぼす。第1区域71の面積が第2区域72の面積に比較して過大になると、繊維自由度の高い第2区域72の面積が少なくなりすぎて、ダストの絡み取り性が低下する傾向にある。そのため、第1区域71の面積率は2〜90%、特に5〜40%であることが好ましく、第2区域72の面積率は10〜98%、特に60〜95%であることが好ましい。
【0037】
第2区域72が凸状部30及び第1の溝部21を有していることは先に述べたとおりであるが、この凸状部30及び第1の溝部21は、繊維交絡体41に対して施した水流交絡による構成繊維の再配列・再絡合により形成されることが好ましい。それによって凸状部30及び第1の溝部21はそれ自身でその形態を保持している。したがって、凸状部30及び第1の溝部21は荷重に対してへたり難いものとなっている。凸状部30及び第1の溝部21が形成されることに起因して、嵩高シート10の見掛け厚みは、凸状部30及び第1の溝部21が形成される前の繊維交絡体41の厚みよりも大きくなる。
【0038】
「繊維の再配列・再絡合により形成されている」とは、水流交絡により一度弱く絡合された繊維交絡体が凹凸賦形部材上で再度水流交絡されることにより、繊維が該賦形部材の凹凸部に沿って配列し直し、再び絡合されることをいう。
【0039】
凸状部30及び第1の溝部21は、繊維交絡体41が厚さ方向に屈曲様になることで形成されている。そして、屈曲様の繊維交絡体41に形成された複数の屈曲部が凸状部30及び第1の溝部21にそれぞれ相当する。前述のとおり凸状部30及び第1の溝部21は繊維の再配列によって形成されているが、その場合、高圧水の圧力によって、凸状部30の構成繊維が第1の溝部21の方へ流れ込むことに起因する繊維の分配は極めて低い程度に抑えられている。なお、繊維の分配が更に進むと、凸状部30のあったところに孔があいてしまう。繊維の分配が起こらないように繊維交絡体41を屈曲様とさせるには、例えば水流交絡の際に加えられるエネルギーを調整すればよい。
【0040】
図3に示す嵩高シート10においては、その第1区域71が複数の小凸部81を有している。小凸部81は略ドーム状をなしており、その内部は中空になっている。小凸部81は、嵩高シート10が、その第2の面12から第1の面11に向けて突出することで形成されている。小凸部81は第1区域71の全域にわたって規則的に形成されている。小凸部81は、その厚み(高さ)が、第2区域72の厚み(高さ)よりも小さくなっている。第1区域71に小凸部81を形成することで、凸形状が形成されダストの絡み取り性が向上するという利点がある。
【0041】
平面視したとき、小凸部81はその形状が円形であり、その直径は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。また、小凸部81は、平面視における第1区域71の面積に対して10〜90%、特に15〜70%の面積率で形成されていることが好ましい。
【0042】
以上の図1ないし図3に示す実施形態の嵩高シート10においては、比較的小さなダストの捕集は主として凸状部30において行われる。したがって比較的小さなダストの捕集性を高めるためには、嵩高シート10の第1の面11を平面視したときの凸状部30の面積を高めることが有利である。この観点から、隣り合う第1の溝部21の間に位置する凸状部30の幅Wp(図1参照)は、0.5〜15mm、特に2〜5mmに設定することが好ましい。嵩高シート10の第1の面11に、後述する第2の溝部が形成されている場合には、隣り合う第2の溝部の間に位置する凸状部30の幅も上述の範囲内であることが好ましい。凸状部30の幅Wpは、例えば後述する嵩高シート10の好適な製造方法において、使用するパターニング部材の種類を適切に選択することによって設定することができる。また凸状部30の幅Wpは、嵩高シート10をその厚み方向に切断し、その切断面を顕微鏡によって拡大観察し、拡大像を画像解析することによって測定できる。より具体的には、例えばキーエンス(株)VHX−500デジタルマイクロスコープを使用し、倍率20倍、無荷重で切断面のWpの幅を測定し、N=3平均することによって測定できる。
【0043】
比較的大きなダストの第1の溝部21における捕集は、該溝部21の幅、深さ及び間隔等に影響される。本発明者ら検討したところ、第1の溝部21の幅Wg(図1参照)を0.5〜8mm、特に1〜4mmに設定することで、パン粉等を首尾良く捕集できることが判明した。また、第1の溝部21の深さD(図1参照)を0.5〜6mm、特に1〜4mmに設定することでも、パン粉等を首尾良く捕集できることが判明した。隣り合う第1の溝部21の間隔P(図1参照)は、0.825〜15mm、特に1.3〜10.8mm、とりわけ2.02〜9.52mmであることが、1回の清掃操作で捕集できる髪の毛の数を高めることができる観点から好ましい。嵩高シート10の第1の面11に、後述する第2の溝部が形成されている場合には、該第2の溝部の幅、深さ及び間隔も、前記の範囲内であることが好ましい。第1の溝部21の幅Wg、深さD及び間隔Pは、例えば後述する嵩高シート10の好適な製造方法において、使用するパターニング部材の種類や、水流交絡の条件によって適切に設定することができる。また第1の溝部21の幅Wg、深さD及び間隔Pは、嵩高シート10をその厚み方向に切断し、その切断面を顕微鏡によって拡大観察し、拡大像を画像解析することによって測定できる。後述する第2の溝部22についても同様である。より具体的には、前述のWpの測定法と同じである。
【0044】
図1ないし図3に示す嵩高シート10において、比較的大きなダストと比較的小さなダストの双方の捕集性を高めるためには、嵩高シート10の第1の面11を平面視したときに、見かけの面積に対する第1の溝部21の占める割合と、凸状部30の占める割合とのバランスが重要である。この観点から、嵩高シート10の見かけの面積に対する第1の溝部21の占める割合と、凸状部30の占める割合とは、前者:後者=1:0.5〜1:5であることが好ましく、1:1.5〜1:3であることが更に好ましい。嵩高シート10に、後述する第2の溝部22が形成されている場合には、嵩高シート10の見かけの面積に対する第1の溝部21の占める割合及び第2の溝部22の占める割合の和と、凸状部30の占める割合とが、前記の範囲であることが好ましい。これらの割合は、嵩高シート10の第1の面11を平面視での画像解析によって求めることができる。
【0045】
嵩高シート10には、図2(a)及び(b)に示すように、その第1の面11に、第1の溝部21に加えて、第2の方向に延びる第2の溝部22が形成されていてもよい。第2の溝部22の延びる方向は、第1の溝部21の延びる方向とは異なっている。具体的には第2の溝部22は、第1の溝部21と略直交する方向に延びている。第2の溝部22の延びる方向は、一般に嵩高シート10の製造時における幅方向(CD)である。第2の溝部22は、凸状部30が、嵩高シート10の第2の面12から第1の面11に向けて突出することで結果的に形成されている。第2の溝部22は、直線状に延びていることが好ましい。隣り合う第2の溝部22は互いに平行になっており、第2の溝部22どうしの交差部は存在しないことが好ましい。第2の溝部22の深さは、その延びる方向において実質的に同じになっていない。例えば、第1の溝部21と第2の溝部22との交点においては、第2の溝部22の深さが、交点以外の部位と異なっていてもよい。図2に示す実施形態では、第1の溝部21と第2の溝部22との交点においては、第2の溝部22の深さが、交点以外の部位よりも深くなっている。第1の溝部21に加えて第2の溝部22を有することで、嵩高シート10は、これを例えば清掃用シートとして用いた場合に、比較的大きなダストの捕集性が一層向上するという有利な効果が奏される。第2の溝部22の幅、深さ及び間隔は、第1の溝部21の幅Wg、深さD及び間隔P(図1参照)と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。第2の溝部22の間隔は、2〜30mm、特に4〜20mm、とりわけ6〜18mmであることが、比較的大きなダストの捕集性を良好にできる点で好ましい。
【0046】
第1の溝部21に加えて第2の溝部22が形成されていることによって、凸状部30の保形性が高まるという有利な効果も生じる。詳細には、第1の溝部21に加えて第2の溝部22が形成されていることによって、凸状部30は、その平面視において、図2(a)及び(b)に示すように、第1の溝部21と第2の溝部22の交差によって画定される略矩形の形状をしたものとなる。この形状の凸状部30は、第1の溝部21のみを形成したときに形成される一条の畝状の凸状部30に比べて、圧縮に対する抵抗性が高くなる。その結果、凸状部30の保形性が高まる。この場合、平面視における凸状部30の各辺の長さは、上述したWpの範囲であることが好ましい。また平面視における凸状部30の面積は、各辺の長さが上述した第1の溝部21の間に位置する凸状部30の幅Wpと第2の溝部22の間に位置する凸状部30の幅Wpとの積の範囲内であることを条件として、0.5〜300mm2、特に6〜155mm2であることが好ましい。
【0047】
嵩高シート10の第1の面に、第1の溝部21に加えて第2の溝部22が形成されている場合、該シート10の厚み方向の断面視において、第1の溝部21は、第2の溝部22よりも深くなっていることが好ましい。このようにすることで、比較的大きなダストと比較的小さなダストの双方の捕集性を高められるという有利な効果が奏される。
【0048】
嵩高シート10の第1の面11の形状は上述のとおりであるところ、第2の面12に関しては、第1の面11の凹凸形状を反転させた形状になっていることが好ましい。したがって例えば、第1の面11において第1の溝部21が形成されている位置に対応する第2の面12には、実質的に連続した直線状の凸状部が形成されている。また、第1の面11において凸状部30が形成されている位置に対応する第2の面12には、凹状部が形成されている。
【0049】
嵩高シート10は、文字どおり嵩高なものである。嵩高シート10の嵩高さは、その坪量を見かけの厚みで除した値である見かけ密度によって表すことができる。嵩高シート10の見かけ密度は、0.002〜0.100g/cm3、特に0.005〜0.060g/cm3であることが好ましい。これに関連して、嵩高シート10の坪量は25〜110g/m2、特に30〜80g/m2であることが好ましい。嵩高シート10の見かけ厚みT(図1参照)は、1.0〜7mm、特に1.1〜5mmであることが好ましい。また、嵩高シート10の見かけ厚みTは、嵩高シート10をその厚み方向に切断し、その切断面を顕微鏡によって拡大観察し、測定できる。より具体的には、前述のWpの測定法と同じである。
【0050】
嵩高シート10を構成する繊維としては、各種の熱可塑性樹脂からなる繊維又はセルロース系繊維を用いることができる。そのような熱可塑性樹脂としては例えばエチレン、プロピレン、ブテン等のモノオレフィン重合体及び共重合体を用いることができる。また高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等を用いることもできる。更にポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のエステル系重合体及び共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系、ビニリデン系重合体及び共重合体;ポリアミド6、ポリアミド66等のポリアミド系重合体及び共重合体;アクリロニトリル系重合体及び共重合体を用いることができる。これに加え、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、POM(ポリアセタール)なども用いることができる。これらの樹脂からなる繊維は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。繊維としては、中実、芯鞘、中空、中空芯鞘、サイドバイサイド、偏心、分割繊維などの各種の形態を適宜組み合わせて用いることができる。繊維の断面形状としては、例えば丸、三角、星形などを組み合わせて用いることができる。また、セルロース系繊維としては、本来親水性を有するものが用いられる。セルロース系繊維としては、例えばコットン(綿)等の天然繊維や、パルプ、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等が挙げられる。これらのセルロース系繊維は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。更に、各種熱可塑性樹脂からなる繊維にセルロース系繊維を混綿して使用しても良い。
【0051】
前記の繊維の太さは、ダストの捕集性及び嵩高シート10の強度維持の観点から、0.8〜30dtex、特に0.8〜7dtexであることが好ましい。前記の繊維は、嵩高シート10の製造方法に応じて、連続フィラメントでもよく、あるいはステープルファイバでもよい。後述する製造方法を採用する場合には、長さ20〜100mm、特に30〜65mmのステープルファイバを用いることが好ましい。繊維交絡体の表面物理的特性を向上させ、またダストの捕集性を向上させ得る界面活性剤や潤滑剤を繊維集合体に付与しても良い。
【0052】
嵩高シート10には、これを構成する繊維に加えてスクリム材料が含まれていてもよい。スクリム材料を併用することで、嵩高シート10の強度が向上する。スクリム材料を用いる場合、嵩高シート10の構成繊維は、該繊維どうしが絡合していることに加えて、該繊維がスクリム材料に対しても絡合した状態になっていることが好ましい。スクリム材料としては、例えば線径が50〜600μmであり、線間距離が2〜30mmである格子状の網状材料を用いることができる。
【0053】
スクリム材料は、その通気度が0.1〜1000cm3/(cm2・sec)であることが好ましい。この範囲の通気度であれば、スクリム材料以外に、不織布、紙又はフィルム等を用いることもできる。スクリム材料の構成材料としては、例えば米国特許第5,525,397号明細書の第3欄39〜46行に記載の材料が使用できる。
【0054】
嵩高シート10は、比較的大きいダストの捕集性を上げるためKES圧縮剛性LCが0.08〜0.30(−)、KES圧縮仕事量WCが0.21〜1.50(gf・cm/cm2)であることが、圧力が低くても変形し易く、かつ元の形への復元性が良いので、比較的大きいダストを挟み込むため好ましい。KES圧縮剛性LC及びKES圧縮仕事量WCの測定方法は次のとおりである。すなわち嵩高シート10から幅100mm、長さ100mmの試験片を3枚切り出す。この試験片を用い、カトーテック(株)KES FB3−AUTO−A型装置によって、加圧面積2cm2、圧縮速度0.02mm/sec、上限荷重50gf/cm2の条件で圧縮剛性LC及び圧縮仕事量WC測定し、平均値を求める(n=3)。
【0055】
嵩高シート10は、繊維交絡(繊維の絡み)と毛羽抜けとのバランスが重要となる。繊維交絡(繊維の絡み)が弱いと捕集性が上がるものの毛羽抜け(繊維の脱落)が発生し使用できない。反対に繊維交絡が強いと毛羽抜けは発生しないものの捕集性が上がらない。そこで、細径繊維や長い繊維を混綿することが好ましい。これにより細径繊維や長い繊維が相対的に低エネルギーで交絡するので、繊維が動きにくくなり毛羽抜けが抑制されるからである。細径繊維や長い繊維としては、繊度が1.45dtex未満であり、繊維長が38mmを超えるものを用いることが好ましい。細径繊維や長い繊維の断面は、中実や芯鞘構造などであることが好ましい。細径繊維や長い繊維の混綿率は、毛羽抜けを抑制するため嵩高シート10の全体に対して1〜50質量%であることが好ましい。
【0056】
なお、細径繊維を混綿することによって嵩高シート10の厚みが低下する場合がある。そのため、細径繊維よりも繊維径の大きな繊維である太径繊維を更に混綿することが好ましい。太径繊維の繊度は5.0dtex以上であることが好ましく、長さは25mm以上であることが好ましい。太径繊維の断面は中実、芯鞘、異形又は分割繊維の構造であり得る。更に、嵩高シート10の厚みを大きくすることができる構造である中空、偏心又はサイドバイサイドの構造であることも好ましい。太径繊維の混綿率は、嵩高シート10の厚みを大きくする観点から、嵩高シート10の全体の1〜50質量%であることが好ましい。
【0057】
細径繊維や長い繊維、太径繊維の樹脂組成は、先に述べた繊維の樹脂組成と同様とすることができる。
【0058】
毛羽抜けを抑制するための別の考え方として、細径繊維、長い繊維又は太径繊維として芯鞘バインダー繊維(例えば、PP/PEやPET/PE)を使用することも好ましい。こうすることで、熱処理によってPEを溶融させ毛羽抜けを抑制することができる。
【0059】
次に、本発明の嵩高シートの好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、繊維ウェブに高圧水流を吹き付けてその構成繊維を交絡させて繊維交絡体を形成する交絡工程と、所定の開孔パターンを有するパターニング部材上に該繊維交絡体を配置し、その状態下に該繊維交絡体に高圧水流を吹き付けて該繊維交絡体の一部を該パターニング部材の開孔内に突出させる凹凸賦与工程とが、この順で進行する。
【0060】
図4には、図1及び図2に示す実施形態の嵩高シートの製造方法に好ましく用いられる製造装置100が示されている。製造装置100は、第1交絡部110、第2交絡部120及び凹凸賦与部130に大別される
【0061】
第1交絡部110においては、繊維ウェブの連続体40が搬送されてきて、透水性ドラム111の周面に供給される。第1交絡部110は、透水性ドラム111の周面に対向する位置に高圧水流の噴射ノズル112が複数基配置されている。そして、透水性ドラム111の周面に供給された繊維ウェブの連続体40に対して、噴射ノズル112から高圧水流が吹き付けられる。高圧水流の吹き付けによって、繊維ウェブの連続体40は、その構成繊維が交絡して交絡度が高まる。
【0062】
第1交絡部110に搬送される繊維ウェブの連続体40は、公知のウェブ製造方法、例えばカーディング等によって製造することができる。繊維ウェブの連続体40がカーディングで製造される場合、該連続体40における繊維の配向方向は、該連続体40の搬送方向と一致する。嵩高シート10がスクリム材料を含むものを製造する場合には、同一の又は異なる2つの繊維ウェブの連続体を製造しておき、2つの繊維ウェブの連続体の間に予めスクリム材料を介在させておき、その状態下に第1交絡部に繊維ウェブの連続体を供給すればよい。
【0063】
繊維の交絡度が高まった繊維ウェブの連続体40は、次に第2繊維交絡部120に搬送される。第2繊維交絡部120は透水性ドラム121及び高圧水流の噴射ノズル122を備えている。噴射ノズル122は複数基設置されており、透水性ドラム121の周面に対向する位置に配置されている。繊維ウェブの連続体40は、第2繊維交絡部120に供給されるときに、その表裏が反転する。そして、第1交絡部110において高圧水流が吹き付けられた面と反対側の面が、噴射ノズル122に対向するように第2繊維交絡部120に供給される。この状態下に、繊維ウェブの連続体40に対して、噴射ノズル112から高圧水流が吹き付けられる。高圧水流の吹き付けによって、繊維ウェブの連続体40は、その構成繊維が更に交絡して交絡度が一層高まる。
【0064】
このように、本製造方法においては、繊維ウェブの連続体40はその各面に高圧水流が吹き付けられて繊維の絡合が行われる。繊維の絡合の程度は、高圧水流の吹き付け圧力の調整によって制御することができる。
【0065】
第2繊維交絡部120での繊維交絡によって、保形性が十分に高まった繊維交絡体41が得られる。この繊維交絡体41はスパンレース不織布である。得られた繊維交絡体41は凹凸賦与部130に供給される。凹凸賦与部130は、ドラム状のパターニング部材131を備えている。更に凹凸賦与部130は、パターニング部材131の周面に対向する位置に、複数基の高圧水流の噴射ノズル132を備えている。ドラム状のパターニング部材131の周面に供給された繊維交絡体41には、噴射ノズル132から高圧水流が吹き付けられる。高圧水流の吹き付けによって、繊維交絡体41は凹凸賦形されて目的とする嵩高シート10が形成される。
【0066】
使用する噴射ノズル132に特に制限はないが、例えば特開昭53−14874号公報に開示されるような孔径0.15mm等のノズル孔が孔間隔1mm等で複数配列された噴射ノズルを使用すれば良い。毛羽抜けをコントロールして抑えるために、千鳥格子状にノズル孔が配列された千鳥ノズル、多列ノズル、グラデーションノズルなどを使用してもよい。多列ノズルは、一定のピッチで孔が2個以上流れ方向に並んだノズルである。グラデーションノズルは、幅方向に孔数が次第に増えたり次第に減ったり、その組み合わせであったり、これらが繰り返されているノズルである。また、ノズルの孔を部分的に遮蔽して、ストライプ状に高圧水流を吹き付けても良い。
【0067】
凹凸賦与部130によって凹凸賦形されて得られた嵩高シート10は、表裏が反転されて、パターニング部材131と対向していた面が第1の面11となり、例えば清掃用シートにおける清掃面として用いられる。
【0068】
図5(a)には、凹凸賦与部130に設置されているドラム状のパターニング部材131の外観が示されている。また図5(b)には、図5(a)に示すドラム状のパターニング部材131の一部を平面に引き伸ばした状態の斜視図が示されている。これらの図に示すように、パターニング部材131は、一方向(図5(a)ではドラムの回転方向)に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第1のワイヤ状部材141と、第1のワイヤ状部材141と略直交する方向(図5(a)ではドラムの軸線方向)に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第2のワイヤ状部材142とを有している。そして、第2のワイヤ状部材142は第1のワイヤ状部材141の下側(図5(a)ではドラムの内側)に位置している。したがって、パターニング部材131を平面視すると、第1のワイヤ状部材141と第2のワイヤ状部材142とによって格子が形成される。そして、第1のワイヤ状部材141と第2のワイヤ状部材142とによって略矩形の開孔が複数形成される。このような構成を有するパターニング部材は、例えばジョンソンスクリーンズジャパン社から入手可能である。パターニング部材の材料としては、強度の点で金属、例えばSUS304、316、316L等のステンレス、ハステロイ、チタンなどを用いることが好ましいが、これらに限定されず、例えばABS、PVC等のプラスチック等を用いてもよい。
【0069】
図6(a)ないし(c)には、図5(a)及び(b)に示すドラム状のパターニング部材131による繊維交絡体41の凹凸賦形の状態が示されている。図6(a)ないし(c)は、ドラム状のパターニング部材131をその回転方向、すなわち繊維交絡体41の搬送方向に向かって見たものであり、パターニング部材131は紙面と直交する方向に回転する。図6(a)は、パターニング部材131上に繊維交絡体41が供給された直後の状態であり、図6(b)及び(c)は、パターニング部材131上に供給された繊維交絡体41に高圧水流が吹き付けられて凹凸賦形されている状態を示している。図6(b)は、第2のワイヤ状部材142の位置における繊維交絡体41の凹凸賦形の状態を示している。図6(c)は、隣り合う第2のワイヤ状部材142間における繊維交絡体41の凹凸賦形の状態を示している。
【0070】
図6(a)に示すように、パターニング部材131上に繊維交絡体41が供給され、その状態下に、噴射ノズル(図示せず)から高圧水流が吹き付けられると、図6(b)及び(c)に示すように、繊維交絡体41のうち、第1のワイヤ状部材141上に位置する部位は、該第1のワイヤ状部材141に規制されて繊維の移動(すなわち再配列)は起こりづらくなっている。これに対して、繊維交絡体41のうち、隣り合う第1のワイヤ状部材141間に位置する部位は、高圧水流の吹き付けによって、第1のワイヤ状部材141と第2のワイヤ状部材142とで形成される略矩形の開孔内に突出する。この場合、第2のワイヤ状部材142の位置においては図6(b)に示すように、突出した繊維交絡体41は、第2のワイヤ状部材142によって突出の程度が規制される。これに対して、隣り合う第2のワイヤ状部材142間においては、繊維交絡体41の突出を規制する部材が存在しないので、突出の程度が図6(b)に示す場合よりも大きくなる。ところで、先に述べたとおり、凹凸賦形が行われた後、嵩高シート10はその表裏が反転して、パターニング部材131に対向していた面が第1の面11となる。したがって、図6(b)及び(c)に示す状態は、図1に示す嵩高シート10を表裏反転させた状態に相当する。したがって、図6(b)及び(c)において、第1のワイヤ状部材141によって突出が規制された部位は、目的とする嵩高シート10における第1の溝部21となる。また、図6(c)において、突出が規制されずに突出した部位は、目的とする嵩高シート10における凸状部30となる。更に、図6(b)において、第2のワイヤ状部材142によって突出の程度が規制された部位は、目的とする嵩高シート10における第2の溝部22となる。この場合、第2の溝部22の深さは、第1の溝部21の深さよりも浅くなる。
【0071】
このようにして、目的とする嵩高シート10が得られる。特に本製造方法によれば、第1のワイヤ状部材141及び第2のワイヤ状部材142の横断面が概略三角形であり、該三角形が下向きとなるように各第1のワイヤ状部材141が配置されており、かつ該三角形が上向きとなるように各第2のワイヤ状部材142が配置されているものを用いている。この概略三角形の形状は、二等辺三角形、正三角形又は直角三角形であることが好ましい。これらの三角形は、三角形の底面から突起が出ていてもよいし、底面に模様やくぼみ(凹状)を有していてもよい。このような形状を有する第1のワイヤ状部材141及び第2のワイヤ状部材142使用することにより、製造された嵩高シート10の第1の溝部に更に溝や模様、凸状ができ、ダストが更に捕集され易くなるため好ましい。
【0072】
特に、図5(a)及び(b)に示すように、第1のワイヤ状部材141の横断面が下向きの二等辺三角形、第2のワイヤ状部材142が上向きの二等辺三角形になっている。このように第1のワイヤ状部材141の横断面を下向きの二等辺三角形にすることにより、繊維交絡体41の断面形状が下向きのΩ形状となり隣り合うΩ形状間で比較的大きめダストを挟み込むことができるため好ましい。
【0073】
第1のワイヤ状部材141の隣り合う三角形どうしの間隔S(図5(b)参照)は、挟み込みたいダストの大きさによって適宜調整すれば良い。第2のワイヤ状部材142の三角形のピッチRpについては、目的とする嵩高シート10の保形性や圧縮に対する抵抗性に応じて適宜調整すれば良い。
【0074】
このようなワイヤ状部材141,142を用いることで、目的とする嵩高シート10に、巨視的な凸状部30及び溝部21,22を容易に形成することができる。これに対して他のパターニング部材、例えば特許文献1に記載のパターニング部材を用いても、本製造方法で達成できるような明瞭な凸状部30及び溝部21,22を形成することは容易ではない。
【0075】
本製造方法においては、第1のワイヤ状部材141及び第2のワイヤ状部材142のいずれもが、その横断面が概略三角形(例えば二等辺三角形又は正三角形又は直角三角形)のものを用いたが、これに制限されず、第1のワイヤ状部材及び第2のワイヤ状部材のうちの少なくとも一方が、横断面が三角形であり、該三角形が下向き又は上向きとなるように配置されていてもよい。特に、繊維交絡体41と当接する側に位置するワイヤ状部材である第1のワイヤ状部材141の横断面が少なくとも三角形であることが好ましい。
【0076】
第1のワイヤ状部材141及び第2のワイヤ状部材142のいずれもが、それらの横断面が三角形である場合、パターニング部材131の構成としては、先に述べたもののほかに、図7(a)ないし(c)に示すものが挙げられる。図7(a)に示すパターニング部材131は、各第1のワイヤ状部材141が、三角形が下向きとなるように配置されている。同様に各第2のワイヤ状部材も三角形が下向きとなるように配置されている。このような組み合わせで形成される第2の溝部22は、図5(a)及び(b)に示す組み合わせで形成される第2の溝部22に比べ幅が広くなる。そのため、清拭時に比較的大きなダストが中に入りやすくなるため好ましい。
【0077】
図7(b)に示すパターニング部材131は、各第1のワイヤ状部材141が、三角形が上向きとなるように配置されている。同様に各第2のワイヤ状部材も三角形が上向きとなるように配置されている。このように第1のワイヤ状部材141の横断面を上向きの二等辺三角形にすることにより、図5(a)及び(b)に示す下向きの二等辺三角形よりも、製造時に繊維交絡体41からの繊維の脱落やパターニング部材131への繊維の付着が減少するため好ましい。
【0078】
図7(c)に示すパターニング部材131は、各第1のワイヤ状部材141が、三角形が上向きとなるように配置されている。一方、各第2のワイヤ状部材142は三角形が下向きとなるように配置されている。このような組み合わせで形成される第2の溝部22は、図7(b)に示す組み合わせで形成される第2の溝部22に比べ幅が広くなる。そのため、清拭時に比較的大きなダストが中に入りやすくなるので好ましい。
【0079】
また、図5(a)及び(b)並びに図7(a)ないし(c)に示すパターニング部材131を上下に反転させたパターニング部材を配置しても良い。図8(a)ないし(d)に、それぞれ図5(a)及び(b)並びに図7(a)ないし(c)に示すパターニング部材131を上下に反転させた断面図を示す。この場合、第2のワイヤ状部材142が繊維交絡体41と対向する側に位置するので、第2の溝部22は第1の溝部21よりも深くかつ厚密化される。またこの場合、製造時における幅方向(CD)に繊維が厚密化されるので、繊維の脱落が減少するため好ましい。
【0080】
図5(a)及び(b)並びに図7(a)ないし(c)に示すパターニング部材131においては、第1のワイヤ状部材141の延びる方向が、パターニング部材131の回転方向、すなわち繊維交絡体41の搬送方向と一致していたが、これに代えて、第1のワイヤ状部材141の延びる方向が、繊維交絡体41の搬送方向と直交する方向となるようにパターニング部材131を配置してもよい。この場合には、第2のワイヤ状部材142の延びる方向が、繊維交絡体41の搬送方向と一致する。この場合、繊維の配向と直交する方向に第1の溝部21が形成され毛羽抜けが抑えられるため好ましい。
【0081】
パターニング部材131の別の形態として、隣り合う第1のワイヤ状部材141の間隔が異なるものを用いるか、又は隣り合う第2のワイヤ状部材142の間隔が異なるものを用いることができる。このようなパターニング部材を使用することによって大きな凸状部と小さな凸状部が交互に形成され、大きな凸状部と小さな凸状部で小さめダスト、大きな凸状部と大きな凸状部で大きめダストが捕集されるため好ましい。
【0082】
パターニング部材131の別の形態として、グラデーション構造、すなわち隣り合う第1のワイヤ状部材141の間隔が、該第1のワイヤ状部材141の配列方向に沿って次第に狭くなるか又は次第に広くなる部位を有するものを用いることができる。あるいは、隣り合う第2のワイヤ状部材142の間隔が、該第2のワイヤ状部材142の配列方向に沿って次第に狭くなるか又は次第に広くなる部位を有するものを用いることもできる。具体的には、図5(a)及び(b)に示すパターニング部材131を例にとり説明すると、ドラムの軸線方向の中央部から左右の側部に向かうに連れて、隣り合う第1のワイヤ状部材141の間隔が次第に狭くなるか、又は次第に広くなるように第1のワイヤ状部材141を配置することができる。あるいは軸線方向の一方の側部から他方の側部に向かうに連れて、隣り合う第1のワイヤ状部材141の間隔が次第に狭くなるか、又は次第に広くなるように第1のワイヤ状部材141を配置することができる。第1のワイヤ状部材141の配列をこのようにすることで、目的とする嵩高シート10における凸状部30の幅Wpを、製造時における搬送方向と直交する方向において次第に変化させることができる。こうすることにより、凸状部の大きさと溝部の大きさが次第に変化するグラデーション構造が嵩高シート10に形成されるので、該嵩高シート10をワイパーとして使用するときに、凸状部を清掃面に全体的に接触させることができ、小さめダストから大きめダストまで効率的にダストを捕集することができ好ましい。
【0083】
パターニング部材131の形態が上述したいずれの場合であっても、該パターニング部材131を構成する第1のワイヤ状部材141及び第2のワイヤ状部材142の横断面の三角形の形状における底辺の長さW1,W2は0.4〜7mm、特に0.5〜5mmであることが好ましい。底辺の長さは、目的とする嵩高シート10における第1の溝部及び第2の溝部の幅を決定する要因となる。また三角形の高さH1,H2は1.0〜10mm、特に1.5〜7mmであることが好ましい。第1のワイヤ状部材141と第2のワイヤ状部材142の寸法は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0084】
第1のワイヤ状部材141の隣り合う間隔Sと底辺の長さW1の和は、得られる嵩高シート10における第1の溝部21の間隔Pとなる。隣り合う間隔Sは、0.025〜15mm、特に0.1〜10mm、とりわけ0.5〜8mmとすることが、凹凸賦形時の繊維の低交絡化と、繊維抜けの防止とのバランスの点で好ましい。これらは、1回の清掃操作で捕集できる髪の毛の本数に影響を及ぼす。
【0085】
第2のワイヤ状部材142の三角形のピッチRpは、得られる嵩高シート10における第2の溝部22の間隔となる。三角形のピッチRpは、2〜30mm、特に4〜20mm、とりわけ6〜18mmとすることが、比較的大きなダストの捕集性を良好にできる点で好ましい。
【0086】
パターニング部材131における繊維交絡体41と対向する部材である第1のワイヤ状部材141における三角形の底辺の長さをW1、隣り合う間隔をSとすると、開口面積比OA(%)は、OA(%)=S/(S+W1)×100で計算される。本発明において開口面積比OA(%)は5〜90%、特に10〜85%であることが好ましい。
【0087】
本製造方法の別の実施形態として、第1パターニング部材として、例えば上述した図5に示すパターニング部材131を用い、第1パターニング部材131の上に、図9に示すような第2パターニング部材94(例えば、丸穴のパンチングプレートに開孔されたパターニング部材など)を取り付け、これを凹凸賦形部材として用いることができる。この凹凸賦形部材の上に繊維交絡体41を配置し、その状態下に該繊維交絡体41高圧水流を吹き付けても良い。高圧水流を吹き付けている状態を図10に示す。同図には、凹凸付与部130の要部が拡大して示されている。凹凸付与部130はドラム129を有している。ドラム129の周面には、複数の凹凸部を有する第1パターニング部材131が、該周面に沿って設置されている。第1パターニング部材131の上には、複数の開孔を有する第2パターニング部材94が、ドラム129の周面に沿って設置されている。この場合、ノズルの孔を部分的に遮蔽したノズル(図示せず)を使用し、ストライプ状に高圧水流を吹き付けても良い。
【0088】
凹凸付与部130を構成する第2パターニング部材94は、図9に示すとおり、長方形の格子状をした板状体である。しかし、第2パターニング部材94の形態はこれには限られない(後述する図12参照)。第2パターニング部材94は、繊維の配向方向に延びる第1領域95a、第1領域95aの延びる方向と直角の方向に延びる第2領域95bを有し、隣り合う第2領域95b間の距離が隣り合う第1領域95a間の距離より長い場合、繊維交絡体41の繊維の配向方向に直線距離で好ましくは286mm以上、更に好ましくは286〜400mm、一層好ましくは286〜310mmの長さL2で延びる複数の第1領域95aを有している。第1領域95aは、所定の幅を有し、直線状に延びている。第1領域95aは、凹凸付与部130のドラム129の回転方向と同方向に延びている。この回転方向は、繊維交絡体41の繊維の配向方向と一致している。第1領域95aの延びる方向と直角の方向において隣り合う第1領域95a間の最大間隔W4は、隣り合う第1領域95a間の距離が隣り合う第2領域95b間の距離より長い場合、好ましくは206mm以上、更に好ましくは206〜300mm、一層好ましくは206〜225mmとなっている。第1領域95aは、隣り合う該第1領域95a間に配置された第2領域95bによって連結されている。第2領域95bは、第1領域95aと同じ幅か又は異なる幅を有し、第1領域95aの延びる方向と直角の方向に直線状に延びている。1本の第2領域95bは、隣り合う2本の第1領域95aを接続しているだけであり、隣り合う3本以上の第1領域95aは接続していない。第2パターニング部材94において、第1領域95a及び第2領域95bからなる格子によって取り囲まれた部分は長方形の開孔94aになっている。つまり第2パターニング部材94は複数の開孔94aを有している。この開孔94aとは別に、第1領域95a及び第2領域95bには、複数の透孔94bが規則的に設けられている。透孔94bは、開孔94aよりも小さなサイズになっている。平面視したとき、透孔94bはその形状が円形であり、その直径は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。また、透孔94bは、第1領域95aの面積に対して10〜90%、特に15〜70%の面積率で形成されていることが好ましい。
【0089】
第2パターニング部材94の厚みは0.1〜10mm、特に0.5〜6mm、とりわけ1〜3mmであることが強度と賦形性の点で好ましい。第1領域95a及び第2領域95bの幅は、それぞれ独立に1〜10mm、特に1.5〜6mm、とりわけ2〜5mmであることが強度と水抜け性の点で好ましい。
【0090】
第2パターニング部材94は、例えばステンレス等の金属やプラスチックから構成されている。耐久性を考慮すると金属製であることが好ましい。透孔94bが形成されていることで、第2パターニング部材94は透水性を有する。図9に示される第2パターニング部材94は、図3(a)及び(b)に示す嵩高シートを製造する場合に用いられるものである。
【0091】
図11には、図5(a)及び(b)に示すドラム状の第1パターニング部材131上に、図9に示す第2パターニング部材94を配置してなる凹凸賦形部材を用いた繊維交絡体41の凹凸賦形の状態が示されている。図11は、図3に示す嵩高シートの製造過程における凹凸賦形の状態を示すものである。凹凸賦形部材は、図4に示す製造装置100の凹凸賦与部130に設置される。図11に示すように、繊維交絡体41が凹凸賦形部材上に配された状態下に、繊維交絡体41に向けて、噴射ノズル132から高圧のジェット水流が噴射されて、該繊維交絡体41が部分的に加圧される。高圧のジェット水流が噴射によって、繊維交絡体41のうち、第2パターニング部材94の開孔94a(図9参照)内において露出している第1パターニング部材131の凹部内に、繊維交絡体41の一部が突出する。このようにして、図3に示す凸状部30及び第1の溝部21を含む第2区域72が形成される。繊維集合体41が突出して第2区域72が形成されることで、第2区域72はその繊維密度が、ジェット水流の噴射前よりも低くなる。
【0092】
一方、繊維交絡体41のうち、第2パターニング部材94上に位置する部位は、高圧のジェット水流の噴射を受けても、その突出が第2パターニング部材94によって規制される。尤も、第2パターニング部材94に形成された透孔94b(図9参照)の部分においては、高圧のジェット水流の噴射によって繊維交絡体が突出する。このようにして、小凸部81を複数有する第1区域71が形成される。繊維交絡体の突出が規制される第1区域71は、その繊維密度がジェット水流の噴射前と殆ど変化しない。このようにして、図3に示す嵩高シートが製造される。
【0093】
以上のとおり、図4ないし図11に示す操作によって、図1ないし図3に示すような凹凸形状が賦与された嵩高シート10が得られる。図3に示す嵩高シート10においては、第2区域72における凸状部30の形状等は、第1パターニング部材131の種類や、交絡部110,120及び凹凸賦与部130おける高圧ジェット水流によって繊維交絡体41に加わる絡合エネルギーに応じて決定される。この絡合エネルギーはウォータージェットノズルのノズル形状、ノズルピッチ、水圧、ノズル段(本)数及びラインスピード等の条件によってコントロールされる。
【0094】
以上の操作においては、繊維ウェブの連続体40を一方向に搬送させて嵩高シートの長尺物が形成される。この長尺物はその幅方向にわたって裁断されて、枚葉の嵩高シートに形成される。この長尺物の裁断は、裁断によって得られる枚葉の嵩高シートにおいて、図3に示す第2区域72の周囲の全域が、第1区域71によって取り囲まれないようになる位置で行うことが好ましい。長尺物の裁断は、少なくともその幅方向にわたって行えばよい。長尺物の幅が広い場合には、必要に応じ、長尺物の長手方向への裁断を併用してもよい。長手方向への裁断は、1箇所又は2箇所以上で行うことができる。
【0095】
本製造方法においては、凹凸賦与部130において繊維交絡体41に高圧水流を吹き付け凹凸賦形するときに加えるエネルギーをEとしたとき、200(kJ/kg)<E<1500(kJ/kg)、特に300(kJ/kg)<E<1200(kJ/kg)を満たすようなエネルギーを加えることが、十分な嵩高性の付与、凹凸賦形時の繊維の脱落や孔あき発生の防止、十分なシート強度の発現の点から好ましい。エネルギーEは以下の式から計算することができる。
エネルギーE(kJ/kg)=nρv2Ca/2VB√(2P/ρ)
(式中nはノズル幅方向1m当たりの孔の数(個/m)、ρは水の密度(kg/m3)、vはノズル先端における水の流速(m/sec)、Cはエネルギー損失による流量係数(水の場合0.59〜0.68)、aはノズル先端の断面積(m2)、Vはウェブの処理速度(m/sec)、Bはウェブの坪量(g/m2)、Pはノズル内の水の圧力(Pa)を表す)。
【0096】
水流交絡によって凹凸賦形が施されて得られた嵩高シート10は、乾燥工程を経て巻き取られ、原反マザーロールが作られる。原反マザーロールは、用途に応じて一定の幅で幅方向(繊維の配向方向と直角方向)に向けてスリットされる。嵩高シート10が清掃シートに使用される場合、該清掃シートを清掃道具に取り付けるときの制約から、例えばスリットの幅としては205mmであることが好ましい。スリットされた嵩高シート10は、製品加工機で油剤を塗工され、配向方向にカットされた後に折りたたまれ、ピロー袋に入れられて、例えば製品であるドライシートとなる。嵩高シート10が清掃シートに使用される場合、該清掃シートを清掃道具に取り付けるときの制約から、例えば繊維の配向方向に沿う該清掃シートの長さとしては285mmであることが好ましい。
【0097】
以上の方法によって製造された嵩高シート10は、乾式の清掃用シートとして好適に用いられるほか、マスク及びガーゼ等の衛生用品等としても好適に用いられる。嵩高シート10を清掃用シートとして用いる場合には、該嵩高シート10における第1の面11を清掃面として用いることが好ましい。
【0098】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の製造方法において使用したパターニング部材131を構成する第1のワイヤ状部材141及び第2のワイヤ部材142はいずれもその横断面が三角形のものであったが、それ以外の断面形状、例えば円形、楕円形、四角形、長方形、しずく形を有するものを用いてもよい。また、第1のワイヤ状部材141の延びる方向と、第2のワイヤ状部材142の延びる方向とは略直交していることを要せず、両方向が異なっていればよい。
【0099】
また、嵩高シート10に第2の溝部を形成しない場合には、パターニング部材131として第1のワイヤ状部材141を有するが、第2のワイヤ状部材142は有しないものを用いればよい。この場合には第1のワイヤ状部材141を公知の手段において支持しておけばよい。
【0100】
また、前記実施形態においては、第1のワイヤ状部材141の下に、第2のワイヤ状部材142を配置したが、第2のワイヤ状部材142に代えて、他の支持体、例えばパンチングプレートやワイヤメッシュなどの複数の開孔を有する透水性材料を用いてもよい。
【0101】
また、前記実施形態においては、図4に示す製造装置100の凹凸賦与部130において、繊維交絡体41の一方の面にのみ凹凸賦形を施したが、これに代えて、繊維交絡体41の一方の面を部分的にマスキングして、該面におけるマスキングされていない部分に凹凸賦形を施し、更に繊維交絡体41の他方の面を部分的にマスキングして、別途設けたもう一つの凹凸賦与部において、該他方の面におけるマスキングされていない部分に凹凸賦形を施すこともできる。このようにすれば、両面が凹凸賦形された嵩高シートを得ることができる。
【0102】
また、第2パターニング部材94としては、図9に示すもの以外に、例えば図12(a)ないし(e)に示すパターンを有するものを用いることができる。図12(a)に示す第2パターニング部材94Aでは、第1領域95aがジグザク形状をしている。図12(b)に示す第2パターニング部材94Bは、図12(a)に示す第2パターニング部材94Aを90度回転させたものである。図12(c)に示す第2パターニング部材94Cは、第1領域95aが波形の曲線形状をしている。図12(d)に示す第2パターニング部材94Dは、第1領域95aが波形の曲線形状をしている点で、図12(c)に示す第2パターニング部材94Cと同じであるが、波形の周期が第2パターニング部材94Cよりも小さくなっている。以上の第2パターニング部材94A,94C、94Dでは、隣り合う第2領域95b間において、第1領域95aは、繊維配向の方向に直線距離で286mm以上の長さで延びている。一方、図12(b)に示す第2パターニング部材94Bでは、隣り合う第1領域95a間において、第2領域95bは、直線距離で206mm以上の長さで延びている。また、第2パターニング部材94Aないし94Dは、第1領域95a及び第2領域95bを有するものであるが、図12(e)に示す第2パターニング部材94Eは、第1領域95aのみを有し、第2領域を有していない。第2パターニング部材94Eの第1領域95aは、緩やかな波形の曲線を描き、隣り合う第1領域95aどうしの波の頂点が、連結部95cにおいて連結している。第2パターニング部材94Eでは、隣り合う第1領域95aどうしの連結部95c間において、第1領域95aは、繊維配向の方向に直線距離で286mm以上の長さで延びている。
【0103】
上述した各実施形態に関し、本発明は更に以下の嵩高シート及びその製造方法を開示する。
〔1〕 繊維ウェブに高圧水流を吹き付けてその構成繊維を交絡させて繊維交絡体を形成し、所定の開孔パターンを有する第1パターニング部材上に該繊維交絡体を配置し、その状態下に該繊維交絡体に高圧水流を吹き付けて該繊維交絡体の一部を該第1パターニング部材の開孔内に突出させる嵩高シートの製造方法であって、
前記第1パターニング部材として、一方向に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第1のワイヤ状部材と、複数の開孔を有する支持体とを有し、該支持体が複数本の第1のワイヤ状部材の下側に位置しているものを用いた嵩高シートの製造方法。
〔2〕 前記繊維ウェブに高圧水流を吹き付けてその構成繊維をスクリム材料と交絡させて前記繊維交絡体を形成する〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 第1パターニング部材上に第2パターニング部材が設置された凹凸賦形部材を用い、前記繊維交絡体を凹凸賦形部材上に配置して、その状態下に該繊維交絡体に高圧水流を吹き付け、
第2パターニング部材として、繊維配向の方向に延びる第1領域、及び第1領域の延びる方向と直角の方向に延びる第2領域を有するものを用い、
第1領域は、隣り合う該第1領域間に配置された第2領域によって連結されているか、又は第1領域は、隣り合う該第1領域どうしが連結した部位を有しており、それによって、第2パターニング部材は複数の開孔を有し、
隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、繊維配向の方向に直線距離で286mm以上の長さで延びる複数の第1領域を有する第2パターニング部材を用い、
隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第1領域の延びる方向と直角の方向に直線距離で206mm以上の長さで延びる複数の第2領域を有する第2パターニング部材を用い、
前記繊維交絡体のうち、第2パターニング部材上に位置する部位から第1区域を形成するとともに、該繊維交絡体のうち、第2パターニング部材の開孔内に位置している部位を、該開孔内において露出している凹部に対応する形状に賦形して、第1区域によって区画される第2区域を形成する〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
【0104】
〔4〕 前記繊維ウェブの連続体を一方向に搬送させて前記嵩高シートの長尺物を形成し、該長尺物を、少なくともその幅方向にわたって裁断して枚葉の前記嵩高シートを形成し、
前記長尺物の裁断を、裁断によって得られる枚葉の前記嵩高シートにおいて、第2区域の周囲の全域が、第1区域によって取り囲まれないようになる位置で行う、〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 第2パターニング部材の隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、繊維配向の方向に直線距離で286mm以上、特に286〜400mm、とりわけ286〜310mmの長さで延びる複数の第1領域を有する第2パターニング部材を用い、
隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第1領域の延びる方向と直角の方向に直線距離で206mm以上、特に206から300mm、とりわけ206〜225mmの長さで延びる複数の第2領域を有する第2パターニング部材を用いる〔3〕又は〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕 第2パターニング部材に複数の透孔が設けられており、該透孔の形状が円形であり、直径が0.5〜5mm、特に1.0〜4.0mmであり、
前記透孔のうち、第1領域に形成されている透孔は、第1領域の面積に対して面積率が10〜90%、特に15〜70%となるように形成されており、
第2パターニング部材は、その厚みが0.1〜10mm、特に0.5〜6mm、とりわけ1〜3mmであり、
第1領域及び第2領域の幅は、それぞれ独立に、1〜10mm、特に1.5〜6mm、とりわけ2〜5mmである〔3〕ないし〔5〕のいずれか一項に記載の製造方法。
【0105】
〔7〕 第1パターニング部材における前記支持体が、第1のワイヤ状部材の延びる方向と異なる一方向に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第2のワイヤ状部材からなる〔1〕ないし〔6〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔8〕 第1パターニング部材として、第1のワイヤ状部材及び第2のワイヤ状部材のうちの少なくとも一方は横断面が概略三角形であり、該三角形が下向き又は上向きとなるように配置されているものを用いる〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕 第1パターニング部材として、各第1のワイヤ状部材はその横断面が概略三角形であり、該三角形が下向きとなるように各第1のワイヤ状部材が配置されており、各第2のワイヤ状部材もその横断面が概略三角形であり、該三角形が上向きとなるように各第2のワイヤ状部材が配置されているものを用いる〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕 第1パターニング部材として、各第1のワイヤ状部材はその横断面が概略三角形であり、該三角形が上向きとなるように各第1のワイヤ状部材が配置されており、各第2のワイヤ状部材もその横断面が概略三角形であり、該三角形が上向きとなるように各第2のワイヤ状部材が配置されているものを用いる〔8〕に記載の製造方法。
【0106】
〔11〕 第1パターニング部材として、各第1のワイヤ状部材はその横断面が概略三角形であり、該三角形が下向きとなるように各第1のワイヤ状部材が配置されており、各第2のワイヤ状部材もその横断面が概略三角形であり、該三角形が下向きとなるように各第2のワイヤ状部材が配置されているものを用いる〔8〕に記載の製造方法。
〔12〕 第1パターニング部材として、隣り合う第1のワイヤ状部材の間隔が異なるものを用いるか、又は隣り合う第2のワイヤ状部材の間隔が異なるものを用いる〔8〕ないし〔11〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔13〕 第1パターニング部材として、隣り合う第1のワイヤ状部材の間隔が、該第1のワイヤ状部材の配列方向に沿って次第に狭くなるか若しくは次第に広くなる部位を有するものを用いるか、又は隣り合う第2のワイヤ状部材の間隔が、該第2のワイヤ状部材の配列方向に沿って次第に狭くなるか若しくは次第に広くなる部位を有するものを用いる〔8〕ないし〔11〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔14〕 第2のワイヤ状部材の三角形のピッチRpが2〜30mm、特に4〜20mm、とりわけ6〜18mm、横断面の三角形の形状における底辺の長さW2が0.4〜7mm、特に0.5〜5mm、三角形の高さH2が1.0〜10mm、特に1.5〜7mmである〔7〕ないし〔13〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔15〕 第1のワイヤ状部材の隣り合う間隔Sが0.025〜15mm、特に0.1〜10mm、とりわけ0.5〜8mm、横断面の三角形の形状における底辺の長さW1が0.4〜7mm、特に0.5〜5mm、三角形の高さH1が1.0〜10mm、特に1.5〜7mmである〔1〕ないし〔14〕のいずれか一項に記載の製造方法。
【0107】
〔16〕 S/(S+W1)×100(式中、W1は、第1のワイヤ状部材における三角形の底辺の長さを表し、Sは、第1のワイヤ状部材の隣り合う間隔を表す。)で計算される開口面積比OAが5〜90%、特に10〜85%である〔1〕ないし〔15〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔17〕 繊維ウェブの構成繊維どうしを交絡させて形成されてなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する嵩高シートであって、
該嵩高シートは少なくとも第1の面に、複数の巨視的な第1の溝部と凸状部とを有し、
複数の第1の溝部は0.825〜15mmの間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、第1の方向は繊維の配向方向と一致しており、かつ隣り合う第1の溝部間に凸状部が位置しており、
凸状部は、該嵩高シートが第2の面から第1の面に向けて突出することで形成されている、嵩高シート。
〔18〕 前記繊維ウェブの構成繊維どうしが交絡しているとともに、該構成繊維がスクリム材料も交絡している〔17〕に記載の嵩高シート。
【0108】
〔19〕 繊維ウェブの構成繊維どうしを交絡させるとともに、該構成繊維とスクリム材料とを交絡させて形成されてなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する嵩高シートであって、
該嵩高シートは少なくとも第1の面に、複数の巨視的な第1の溝部と凸状部とを有し、
複数の第1の溝部は0.825〜15mmの間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、第1の方向は繊維の配向方向と一致しており、かつ隣り合う第1の溝部間に凸状部が位置しており、
凸状部は、該嵩高シートが第2の面から第1の面に向けて突出することで形成されており、
該嵩高シートは、その平面視において第1区域及び第2区域を有し、
第1区域は第2区域よりも繊維密度が大きくかつ第2区域よりも厚みが小さく、
第2区域は第1区域よりも繊維密度が小さくかつ第1区域より厚みが大きく、
第2区域が第1区域によって区画されており、第1区域は繊維配向の方向に延びる第1領域、第1領域の延びる方向と直角の方向に延びる第2領域を有し、隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、第2区域は、繊維の配向方向に直線距離で286mm以上の寸法を有しており、隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第2区域は、第1領域の延びる方向と直角の方向に206mm以上の寸法を有している、嵩高シート。
〔20〕 隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、第2区域は繊維配向の方向に直線距離で286mm以上、特に286〜400mm、とりわけ286〜310mmの寸法を有し、
隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第2区域は第1領域の延びる方向と直角の方向に直線距離で206mm以上、特に206から300mm、とりわけ206〜225mmの寸法を有している〔19〕に記載の嵩高シート。
【0109】
〔21〕 第1区域の繊維密度が0.020〜0.65g/cm3、特に0.035〜0.50g/cm3であり、
第2区域の繊維密度は、第1区域の繊維密度よりも低いことを条件として0.005〜0.65g/cm3、特に0.01〜0.40g/cm3である〔19〕又は〔20〕に記載の嵩高シート。
〔22〕 第1区域の厚みが0.1〜1.5mmであり、第2区域の厚みが1.0〜5.0mm、特に1.2〜4.0mmである〔19〕ないし〔21〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔23〕 第1区域71の面積率が2〜90%、特に5〜40%であり、第2区域72の面積率が10〜98%、特に60〜95%である〔19〕ないし〔22〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔24〕 第1区域71に複数の小凸部が形成されており、該小凸部はその形状が円形であり、その直径は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであり、
前記小凸部は、平面視における第1区域の面積に対して10〜90%、特に15〜70%の面積率で形成されている〔19〕ないし〔23〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
【0110】
〔25〕 スクリム材料の線径が50〜600μmであり、線間距離が2〜30mmであり、通気度が0.1〜1000cm3/(cm2・sec)である〔18〕ないし〔24〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔26〕 第1の方向と略直交する第2の方向に直線状に延びる第2の溝部を更に有し、
凸状部はその平面視において、第1の溝部と第2の溝部の交差によって画定される略矩形の形状を有している〔17〕ないし〔25〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔27〕 厚み方向の断面視において、第1の溝部は、第2の溝部よりも深くなっている〔26〕に記載の嵩高シート。
〔28〕 平面視における凸状部の面積が0.5〜300mm2、特に6〜155mm2である〔26〕又は〔27〕に記載の嵩高シート。
〔29〕 複数の第1の溝部が0.825〜15mm、特に1.3〜10.8mm、とりわけ2.02〜9.52mmの間隔を置いている〔17〕ないし〔28〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
【0111】
〔30〕 交絡係数が0.05〜2N・m/g、特に0.2〜1.5N・m/gである〔17〕ないし〔29〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔31〕 凸状部の幅Wpが0.5〜15mm、特に2〜5mmであり、第1の溝部の幅Wgが0.5〜8mm、特に1〜4mmであり、第1の溝部の深さDが0.5〜6mm、特に1〜4mmであり、第1の溝部の間隔Pが0.825〜15mm、特に1.3〜10.8mm、とりわけ2.02〜9.52mmであり、見かけ厚みTが1.0〜7mm、特に1.1〜5mmである〔17〕ないし〔30〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
【0112】
〔32〕 嵩高シート10を平面視したときに、見かけの面積に対する第1の溝部の占める割合:凸状部の占める割合が1:0.5〜1:5、特に1:1.5〜1:3、である〔17〕ないし〔31〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔33〕 嵩高シート10の見かけ密度が0.002〜0.100g/cm3、特に0.005〜0.060g/cm3であり、坪量が25〜110g/m2、特に30〜80g/m2である〔17〕ないし〔32〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔34〕 繊維の太さが0.8〜30dtex、特に0.8〜7dtexであり、繊維の長さが20〜100mm、特に30〜65mmである〔17〕ないし〔33〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
【0113】
〔35〕 嵩高シートのKES圧縮剛性LCが0.08〜0.30(−)、KES圧縮仕事量WCが0.21〜1.50(gf・cm/cm2)、である〔17〕ないし〔34〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔36〕 繊度1.45dtex未満で繊維長38mmを超える繊維の嵩高シートの全体に対する混綿率が10〜50質量%である〔17〕ないし〔35〕のいずれか一項に記載の嵩高シート。
〔37〕 繊度5.0dtex以上で繊維長25mm以上の繊維の嵩高シート10の全体に対する混綿率が1〜50質量%である〔36〕に記載の嵩高シート。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0115】
実施例及び比較例の説明に先立ち、実施例及び比較例で得られた嵩高シートの各物性値の測定方法及び評価方法を説明する。
<坪量>
嵩高シートから幅100mm、長さ100mmの試験片を切り出す。切り出された試験片の質量を測定し、面積から坪量(g/m2)を計算する。10枚の試験片について測定し、平均値を求め、その値を嵩高シートの坪量とした。
<見かけ厚みT>
前述した測定法に従い測定した。
<見かけ密度>
前述した測定法に従い測定した。
<髪の毛捕集率>
1m×1mのフローリング上に髪の毛(長さ10cm)を10本散布し、花王(株)製のクイックルワイパーに装着した嵩高シートを用いて清拭し、シートに付着した髪の毛の本数を測定した。散布髪の毛本数に対する付着髪の毛本数から捕集率を計算した。
<ゴマ捕集率>
1m×1mのフローリング上にゴマを10個散布し、花王(株)製のクイックルワイパーに装着した嵩高シートを用いて清拭した。そして嵩高シートに付着したゴマの個数を測定した。散布ゴマ個数に対する付着ゴマ個数から捕集率を計算した。
<パン粉捕集率>
1m×1mのフローリング上にパン粉(粒径1.0mm〜1.4mm)を0.5g散布し、花王(株)製のクイックルワイパーに装着した嵩高シートを用いて清拭した。そして嵩高シートに付着したパン粉質量を測定した。散布パン粉質量に対する付着パン粉質量から捕集率を計算した。
【0116】
〔実施例1〕
図4に示す装置100を用いて製造を行った。ポリエステル繊維(1.45dtex×38mm)100%を原料とし、常法のカード法を用い坪量24g/m2の繊維ウェブを得た。スクリム材料としてポリプロピレン製格子状ネット(繊維間距離8mm、線径300μm)を用い、その上下に該繊維ウェブを重合した後、水圧1〜10MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流で絡合一体化し繊維交絡体41を得た。得られた繊維交絡体41に、表1に示す仕様のパターニング部材を用いて、水圧1〜10MPaの条件で複数のノズルから噴出したジェット水流を繊維交絡体41に当てて凹凸賦与を行った。次いで熱風乾燥して嵩高シートを得た。パターニング部材の方向は、第1のワイヤ状部材141の延びる方向が繊維交絡体41の搬送方向と一致するようにした。このようにして、図1及び図2に示す形態の嵩高シートを得た。
【0117】
〔実施例2ないし7〕
表1に示す仕様のパターニング部材を使用する以外は実施例1と同様にして嵩高シートを得た。実施例2ないし6では、図1及び図2に示す形態の嵩高シートを得た。ただし、実施例6の嵩高シートは、スクリム材料を含んでいない。実施例7では、図3に示す形態の嵩高シートを得た。実施例7で用いた第2のパターニング部材は、図9に示す構造の金属製のものであった。第2のパターニング部材における第1領域95a及び第2領域95bの幅はいずれも4.2mmとした。透孔94bは、直径2mmの円形であり、隣り合う透孔94bのピッチは3.2mmとした。隣り合う第2領域95b間において第1領域95aが延びる長さL2(図9参照)は287mmであった。隣り合う第1領域95aの間隔W4(図9参照)は21mmとした。
【0118】
〔比較例1〕
特開2001−336052号公報の図5(a)〜(c)に示す構造のパターニング部材を使用する以外は実施例1と同様にして嵩高シートを得た。
【0119】
【表1】

【0120】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた嵩高シートを清掃用シートとして用いると、髪の毛のような細いゴミ及びゴマやパン粉などの比較的大きなゴミの両方を首尾良く捕集することができる。これに対して、比較例1で得られた嵩高シートを清掃用シートとして用いた場合、髪の毛の捕集性能は有するが、ゴマやパン粉などの比較的大きなゴミの捕集性能が劣ることが判る。
【符号の説明】
【0121】
10 嵩高シート
21 第1の溝部
22 第2の溝部
30 凸状部
40 繊維ウェブの連続体
41 繊維交絡体
62 スクリム材料
71 第1区域
72 第2区域
81 小凸部
94 第2パターニング部材
129 ドラム
131 第1パターニング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウェブに高圧水流を吹き付けてその構成繊維を交絡させて繊維交絡体を形成し、所定の開孔パターンを有する第1パターニング部材上に該繊維交絡体を配置し、その状態下に該繊維交絡体に高圧水流を吹き付けて該繊維交絡体の一部を第1パターニング部材の開孔内に突出させる嵩高シートの製造方法であって、
第1パターニング部材として、一方向に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第1のワイヤ状部材と、複数の開孔を有する支持体とを有し、該支持体が複数本の第1のワイヤ状部材の下側に位置しているものを用いた嵩高シートの製造方法。
【請求項2】
前記繊維ウェブに高圧水流を吹き付けてその構成繊維をスクリム材料と交絡させて前記繊維交絡体を形成する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第1パターニング部材上に第2パターニング部材が設置された凹凸賦形部材を用い、前記繊維交絡体を凹凸賦形部材上に配置して、その状態下に該繊維交絡体に高圧水流を吹き付け、
第2パターニング部材として、繊維配向の方向に延びる第1領域、及び第1領域の延びる方向と直角の方向に延びる第2領域を有するものを用い、
第1領域は、隣り合う該第1領域間に配置された第2領域によって連結されているか、又は第1領域は、隣り合う該第1領域どうしが連結した部位を有しており、それによって、第2パターニング部材は複数の開孔を有し、
隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、繊維配向の方向に直線距離で286mm以上の長さで延びる複数の第1領域を有する第2パターニング部材を用い、
隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第1領域の延びる方向と直角の方向に直線距離で206mm以上の長さで延びる複数の第2領域を有する第2パターニング部材を用い、
前記繊維交絡体のうち、第2パターニング部材上に位置する部位から第1区域を形成するとともに、該繊維交絡体のうち、第2パターニング部材の開孔内に位置している部位を、該開孔内において露出している凹部に対応する形状に賦形して、第1区域によって区画される第2区域を形成する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記繊維ウェブの連続体を一方向に搬送させて前記嵩高シートの長尺物を形成し、該長尺物を、少なくともその幅方向にわたって裁断して枚葉の前記嵩高シートを形成し、
前記長尺物の裁断を、裁断によって得られる枚葉の前記嵩高シートにおいて、第2区域の周囲の全域が、第1区域によって取り囲まれないようになる位置で行う、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
第1パターニング部材における前記支持体が、第1のワイヤ状部材の延びる方向と異なる一方向に延びかつ所定の間隔をおいて配置された複数本の第2のワイヤ状部材からなる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
第1パターニング部材として、第1のワイヤ状部材及び第2のワイヤ状部材のうちの少なくとも一方は横断面が概略三角形であり、該三角形が下向き又は上向きとなるように配置されているものを用いる請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
第1パターニング部材として、各第1のワイヤ状部材はその横断面が概略三角形であり、該三角形が下向きとなるように各第1のワイヤ状部材が配置されており、各第2のワイヤ状部材もその横断面が概略三角形であり、該三角形が上向きとなるように各第2のワイヤ状部材が配置されているものを用いる請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
第1パターニング部材として、各第1のワイヤ状部材はその横断面が概略三角形であり、該三角形が上向きとなるように各第1のワイヤ状部材が配置されており、各第2のワイヤ状部材もその横断面が概略三角形であり、該三角形が上向きとなるように各第2のワイヤ状部材が配置されているものを用いる請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
第1パターニング部材として、隣り合う第1のワイヤ状部材の間隔が異なるものを用いるか、又は隣り合う第2のワイヤ状部材の間隔が異なるものを用いる請求項6ないし8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
第1パターニング部材として、隣り合う第1のワイヤ状部材の間隔が、該第1のワイヤ状部材の配列方向に沿って次第に狭くなるか若しくは次第に広くなる部位を有するものを用いるか、又は隣り合う第2のワイヤ状部材の間隔が、該第2のワイヤ状部材の配列方向に沿って次第に狭くなるか若しくは次第に広くなる部位を有するものを用いる請求項6ないし8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
繊維ウェブの構成繊維どうしを交絡させて形成されてなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する嵩高シートであって、
該嵩高シートは少なくとも第1の面に、複数の巨視的な第1の溝部と凸状部とを有し、
複数の第1の溝部は0.825〜15mmの間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、第1の方向は繊維の配向方向と一致しており、かつ隣り合う第1の溝部間に凸状部が位置しており、
凸状部は、該嵩高シートが第2の面から第1の面に向けて突出することで形成されている、嵩高シート。
【請求項12】
前記繊維ウェブの構成繊維どうしが交絡しているとともに、該構成繊維がスクリム材料とも交絡している請求項11に記載の嵩高シート。
【請求項13】
繊維ウェブの構成繊維どうしを交絡させるとともに、該構成繊維とスクリム材料とを交絡させて形成されてなり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面を有する嵩高シートであって、
該嵩高シートは少なくとも第1の面に、複数の巨視的な第1の溝部と凸状部とを有し、
複数の第1の溝部は0.825〜15mmの間隔をおいて第1の方向に直線状に延び、第1の方向は繊維の配向方向と一致しており、かつ隣り合う第1の溝部間に凸状部が位置しており、
凸状部は、該嵩高シートが第2の面から第1の面に向けて突出することで形成されており、
該嵩高シートは、その平面視において第1区域及び第2区域を有し、
第1区域は第2区域よりも繊維密度が大きくかつ第2区域よりも厚みが小さく、
第2区域は第1区域よりも繊維密度が小さくかつ第1区域より厚みが大きく、
第2区域が第1区域によって区画されており、第1区域は繊維配向の方向に延びる第1領域、第1領域の延びる方向と直角の方向に延びる第2領域を有し、隣り合う第2領域間の距離が隣り合う第1領域間の距離より長い場合、第2区域は、繊維の配向方向に直線距離で286mm以上の寸法を有しており、隣り合う第1領域間の距離が隣り合う第2領域間の距離より長い場合、第2区域は、第1領域の延びる方向と直角の方向に206mm以上の寸法を有している、嵩高シート。
【請求項14】
第1の方向と略直交する第2の方向に直線状に延びる第2の溝部を更に有し、
凸状部はその平面視において、第1の溝部と第2の溝部の交差によって画定される略矩形の形状を有している請求項11ないし13のいずれか一項に記載の嵩高シート。
【請求項15】
厚み方向の断面視において、第1の溝部は、第2の溝部よりも深くなっている請求項14に記載の嵩高シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−127045(P2012−127045A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254836(P2011−254836)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】