説明

工事用メッシュシート

【課題】 耐候性、機械的強度及び柔軟性をに優れ、焼却時に有毒ガスを発生しない上に残存する灰分のない難燃性を有する建築工事用シートを提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂製フィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、熱可塑性樹脂に下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなる工事用メッシュシート。
H(R1)Nー(CH2)aーN(R2)(CH2)bーN(R2')(CH2)cーN(R1)H (1)
(式中、R1は下記一般式(2)で示されるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基であり、R2R2'は R1または水素原子を表し、a,b及びcはそれぞれ、2〜5の正数を表す。)
【化1】


(式中、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基または水素原子を表し、R4は炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数1〜4のアルキル基で置換された炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築工事現場の外周に危険防止のために展張された難燃性を付与した工事用メッシュシートに関する。
【0002】
【従来の技術】工事用メッシュシートは、ビル、家屋建設等の足場をもつ建築工事現場において、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分に、落下物などによる危害防止および火災類焼防止のために足場など仮設構造物の外周面に取り付けて用いられる。そのため、建築工事用シートはJISA8952「建築工事用シート」の付属書表1に防炎性規格が規定されており、これに合格するように種々の難燃化処理が施されているのが通例である。従来の工事用シートとしては、ポリオレフィン、ポリエステル及びナイロン等の熱可塑性樹脂に難燃剤を配合し、押出成形して得たフィラメント糸を用いてネット状に織編布したものが用いられている。難燃剤としては、一般にハロゲン系難燃剤、りん系難燃剤及び水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ハロゲン系難燃剤やりん系難燃剤は焼却時にダイオキシン等の有毒ガスを発生して環境汚染問題となるばかりでなく、腐食性ガスによる装置の腐食などの問題があった。そこで、近年では、燃焼時に有害ガスの発生がなく、低煙性で、無公害型の難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機金属化合物の水和物を添加する方法(例えば、特開平2−53845号公報、特開平2−145632号公報など)が種々検討されているが、多量添加しないと効果がなく、また、無機系難燃剤は焼却後に灰分が発生しフィルターの目詰まりなどのトラブルを生じるという問題があった。本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、耐候性、機械的強度及び柔軟性をに優れ、焼却時に有毒ガスを発生しない上に残存する灰分のない難燃性を有する建築工事用シートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のような課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のトリアジン誘導体を難燃剤として少量添加することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は、熱可塑性樹脂製フィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、熱可塑性樹脂に下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなる工事用メッシュシートに存する。
H(R1)Nー(CH2)aーN(R2)(CH2)bーN(R2')(CH2)cーN(R1)H (1)
(式中、R1は下記一般式(2)で示されるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基であり、R2R2'は R1または水素原子を表し、a,b及びcはそれぞれ、2〜5の正数を表す。)
【化3】


(式中、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基または水素原子を表し、R4は炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数1〜4のアルキル基で置換された炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を表す。)
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の工業用メッシュシートは、熱可塑性樹脂製のフィラメント糸、例えば、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、複合モノフィラメント糸等を用いる限り、その実施態様は特に限定されるものではないが、以下に示す実施態様を挙げることができる。本発明の第1の実施態様は、熱可塑性樹脂製モノフィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、熱可塑性樹脂に下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなる工事用メッシュシートである。本発明の第2の実施態様は、熱可塑性樹脂製マルチフィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、熱可塑性樹脂に下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなる工事用メッシュシートである。本発明の第3の実施態様は、融点の異なる2種以上の熱可塑性樹脂からなり、融点の高い熱可塑性樹脂を芯層とし、融点の低い熱可塑性樹脂を鞘層とする複合モノフィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、芯層及び鞘層の熱可塑性樹脂にそれぞれ下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなる工事用メッシュシートである。本発明の第4の実施態様は、ポリオレフィン樹脂マルチフィラメント(A)と融点の高いポリオレフィン樹脂を芯層とし、融点の低いポリオレフィン樹脂を鞘層とする複合モノフィラメント(B)を経糸または緯糸のいずれかに用いて構成されるメッシュシートであって、それぞれのポリオレフィン樹脂に下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤をそれぞれの樹脂に配合してなる工事用メッシュシートである。
【0006】本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体などのポリエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが挙げられるが、これらのうちでは、延伸効果にすぐれた、高密度ポリエチレン、プロピレン単独重合体などが好ましい。特に、これらの内でも高強力を得られるマルチフィラメント用としてはプロピレン単独重合体が望ましく、特にアイソタクチックペンタッド分率0.95以上のものが好適に採用される。
【0007】本発明に使用される難燃剤としては、下記一般式(1)で示される窒素含有化合物が用いられる。
H(R1)Nー(CH2)aーN(R2)(CH2)bーN(R2')(CH2)cーN(R1)H (1)
(式中、R1は下記一般式(2)で示されるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基であり、R2R2'は R1または水素原子を表し、a,b及びcはそれぞれ、2〜5の正数を表す。)
【化4】


(式中、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基または水素原子を表し、R4は炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数1〜4のアルキル基で置換された炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を表す。)
【0008】上記一般式(1)で示される窒素含有化合物として、下記一般式(3)で示される窒素含有化合物が好ましく、特に下記一般式(3)と下記一般式(4)の組み合わせのものが好ましい。
H(R1)Nー(CH2)3ーN(R1)(CH2)2ーNHー(CH2)3ーN(R1)H (3) 即ち、上記一般式(3)で示される窒素含有化合物は、上記一般式(1)において、R1が上記一般式(2)で示されるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基であり、R2がR1であり、R2'が水素原子であり、a,b及びcがそれぞれ、3,2,3の正数である窒素含有化合物である。
【化5】


また、上記一般式(4)で示されるものは、上記一般式(1)または(3)のR1を示すものであり、上記一般式(2)のR3が炭素原子数4のブチル基であり、R4が炭素原子数6のシクロヘキシル基であるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基である。
【0009】本発明においては、上記熱可塑性樹脂に対して上記難燃剤を所望量配合し、溶融混練して使用する。上記難燃剤は熱可塑性樹脂の加工温度領域で融点を有し、熱可塑性樹脂に相溶するので、成形品のメッシュシートの透明性は良好である。即ち、従来の難燃剤は融点が高く、熱可塑性樹脂に分散させて白濁したものを多量に用いているのに比べ、本発明の難燃剤は熱可塑性樹脂に相溶しているので、該メッシュシートの透明性は著しく改善される。上記難燃剤の配合割合は、熱可塑性樹脂メッシュシートの総重量に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の範囲である。 上記配合量が上記範囲未満では難燃性が不十分であり、上記範囲を超えると難燃性の効果がそれ以上向上せず、逆にコストアップにつながるので好ましくない。
【0010】本発明の第1の実施態様においては、モノフィラメントの成形方法は、特に限定されるものではなく、公知のモノフィラメントの成形方法が採用される。すなわち、モノフィラメント成形ダイスを用い、前記樹脂組成物を溶融押出し、次いで冷却固化した後、所定温度で延伸し、弛緩熱処理を施してモノフィラメントを形成することができる。上記延伸倍率は2〜15倍の範囲が望ましい。延伸方法は一段延伸または二段延伸以上の多段延伸が可能である。上記熱可塑性樹脂モノフィラメントの繊度は、200〜3000デシテクス(以下、dtと略記する)の範囲、好ましくは300〜2000dtの範囲である。繊度が200dt未満では強度が不十分であり、3000dtを超えると柔軟性が劣るので好ましくない。
【0011】本発明の第2の実施態様においては、マルチフィラメントの製造方法としては、特に限定されるものではなく公知のマルチフィラメントの製造方法が適宜採用される。マルチフィラメントの総繊度は200〜3000dtの範囲、好ましくは300〜2000dtの範囲である。繊度が200dt未満では強度が不十分であり、3000dtを超えると柔軟性が劣るので好ましくない。
【0012】本発明の第3の実施態様においては、融点の異なる2種以上の熱可塑性樹脂からなり、融点の高い熱可塑性樹脂を芯層とし、融点の低い熱可塑性樹脂を鞘層とする複合モノフィラメント糸を用いる。芯層となる融点の高い熱可塑性樹脂(以下、高融点熱可塑性樹脂と称する。)としては、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、特に、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好適である。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体あるいはエチレン−プロピレンランダム共重合体などの公知のポリプロピレン共重合体またはそれらの混合物が挙げられるが、これらの内でも高強度を得られるプロピレン単独重合体が望ましい。上記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略す)は、通常、0.1〜10g/10分、好ましくは0.5〜8.0g/10分の範囲から選択するのがよい。
【0013】一方、鞘層となる融点の低い熱可塑性樹脂(以下、低融点熱可塑性樹脂と称する。)としては、上記高融点熱可塑性樹脂との組み合わせで決まるものであるが、この高融点熱可塑性樹脂より少なくとも10℃、好ましくは15〜50℃融点の低い熱可塑性樹脂樹脂をいう。例えば、高融点熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体を用いた場合には、低融点熱可塑性樹脂としてエチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレンープロピレンランダム共重合体またはポリエチレン樹脂が用いられる。ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。上記ポリエチレン樹脂のMFRは0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分の範囲から選択するのがよい。
【0014】芯鞘構造の複合モノフィラメントとしては、高融点の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィンを基材となる芯層として、これより低融点の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィンを鞘層に被覆してなる構造を有するものである。上記複合モノフィラメントにおける芯層/鞘層の構成比は、50/50〜90/10が好ましく、60/40〜80/20がさらに好ましい。上記芯鞘構造の複合モノフィラメントの芯層/鞘層の組み合わせとしては、例えば、プロピレン単独重合体層/エチレン−プロピレンブロック共重体層、プロピレン単独重合体層/エチレンープロピレンランダム共重合体層、プロピレン単独重合体層/高密度ポリエチレン樹脂層、プロピレン単独重合体層/分岐状低密度ポリエチレン樹脂層、プロピレン単独重合体層/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、エチレン−プロピレンブロック共重体層/直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンープロピレンランダム共重合体層/分岐状低密度ポリエチレン樹脂層、高密度ポリエチレン樹脂層/分岐状低密度ポリエチレン樹脂層、の組み合わせ等が挙げられる。
【0015】本発明においては、上記芯層及び鞘層のそれぞれの樹脂に対して上記難燃剤を所望量配合し、溶融混練して使用する。上記難燃剤の配合割合は、熱可塑性樹脂メッシュシートの総重量に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の範囲である。上記配合量が上記範囲未満では難燃性が不十分であり、上記範囲を超えると難燃性の効果がそれ以上向上せず、逆にコストアップにつながるので好ましくない。
【0016】上記複合モノフィラメントの製造方法は特に限定されるものではなく、上記した組み合わせ樹脂の各層の熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン樹脂を押出機で溶融混練し、170〜240℃の溶融温度で2層の吐出孔が略同心円上に設けられたダイスの中心吐出孔から高融点熱可塑性樹脂からなる芯層を供給し、その外面に低融点熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン樹脂からなる鞘層を押出して被覆して複合モノフィラメントとし、延伸処理等を施して複合モノフィラメントを形成を得るものである。延伸処理としては、熱延伸法、即ち、この熱延伸は芯層の高融点熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン樹脂の融点以下、軟化点以上の温度下に行われ、通常は延伸温度が110〜150℃、延伸倍率は通常3〜15倍、好ましくは5〜12倍である。
【0017】本発明の工事用メッシュシートは、上記モノフィラメント、マルチフィラメントまたは複合モノフィラメントをそれぞれ経緯糸として用いて織成または編成してメッシュ状とした織編布である。織編布の組織としては、特に限定されるものではなく、織物では、例えば、平織、綾織、模紗織、絽織、絡み織などが挙げられ、編物ではラッセル編、トリコット編み、ミラニーズ編等が挙げられる。上記経緯糸の打込密度は通常5〜40本/2.54cm、好ましくは10〜30本/2.54cmの範囲である。
【0018】また、本発明の第4の実施態様においては、上記方法で形成されたポリオレフィン樹脂マルチフィラメント(A)および複合モノフィラメント(B)を経糸または緯糸のいずれかに用いて、織機または編機によって織編成され、メッシュ状織編布とするものである。織編布の組織としては、特に限定されるものではなく、織物では、例えば、平織、綾織、模紗織、絽織、絡み織などが挙げられ、編物ではラッセル編、トリコット編み、ミラニーズ編等が挙げられる。上記経緯糸の打込密度は通常5〜40本/2.54cm、好ましくは10〜30本/2.54cmの範囲である。
【0019】このメッシュ状織編布において、経緯糸は(A)と(B)によって構成されるされる限り、その具体的構成は特に限定されるものではなく、総経緯糸における(A)/(B)の重量構成割合は40/60〜60/40の範囲である。その具体的構成としては、緯糸のすべてをポリプロピレンマルチフィラメント(A)として、経糸のすべてを複合モノフィラメント(B)として打ち込む構成、及び経糸においてポリプロピレンマルチフィラメント(A)一本に対して複合ポリオレフィンモノフィラメント(B)二本を打ち込み、緯糸においてポリプロピレンマルチフィラメント(A)二本に対して複合ポリオレフィンモノフィラメント(B)一本を打ち込む交織布の構成等が挙げられる。
【0020】こうして得られたメッシュ状織編布は粗目を有し、通気性を有するものであればに特に限定されることはない。建築工事用メッシュシートとしては目あき状態を示す空隙率が通常5〜60%、好ましくは10〜40%の範囲であり、日本工業規格JISA8952で網目寸法が12mm以下となっており、建築工事用メッシュシートとしての目的、用途により選定される。目付け量は、通常60〜600g/m、好ましくは100〜500g/mの範囲である。
【0021】上記メッシュ状織編布は、所定寸法に裁断され、周縁の折り返し加工や鳩目を打設するなどによって建築工事用メッシュシートとなるが、JISA8952に規定する防炎性規格に合格する性能を有しているものが好ましい。
【0022】また、建築工事用メッシュシートはいずれも屋外で使用され、長期間日光に晒されるために高い耐候性が必要とされている。本発明で用いる難燃剤は、ピペリジル基を有するトリアジン誘導体であり、それ自身がヒンダードアミン系の光安定剤として働くため、非常に高い耐候性を有する。さらに、耐候性を改良する方法としては、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤を添加する方法を採用することもできる。
【0023】紫外線吸収剤の具体例としては、具体的には2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-(2′-ヒドロキシ -5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-5′-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3′-5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の配合割合は、熱可塑性樹脂に対して0.05〜5重量%の範囲、好ましくは0.1〜1重量%の範囲である
【0024】ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸ジエチルの重縮合物等が挙げられる。光安定剤の配合割合は、熱可塑性樹脂にに対して0.05〜5重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。
【0025】本発明の熱可塑性樹脂には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、分散剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、無機充填剤、架橋剤、発泡剤、核剤等の通常用いられる添加剤を配合してもよい。
【0026】
【実施例】実施例1:ポリプロピレン(MFR=2.0g/10分、密度=0.90g/cm、Tm=164℃)に上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いて、モノフィラメント成形ダイスで溶融押出し、次いで冷却固化した後、延伸処理して繊度1500dtの偏平モノフィラメントを成形した。この偏平モノフィラメントを経糸及び緯糸に用いて、打込密度27×27本/2.54cmで、模紗織でメッシュシートを形成した。得られたメッシュシートの目付け320g/m、空隙率12%であった。得られたメッシュシートは経方向に折畳み可能な柔軟性を有しており、取扱い性は良好であった。また、メッシュシートはJISK6760に準拠して測定した引張強度は185kg/3cmであり、引張伸度は22%であった。この値は、JISA8952の建築工事用シート1類規格に合格するものである。難燃性試験では接炎回数は5回で、JISA8952の防炎性規格に合格するものであった。
【0027】実施例2:ポリプロピレン(MFR=20g/10分、密度=0.90g/cm、Tm=164℃)に上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いて、総繊度1500dt/100fのマルチフィラメントを成形した。このマルチフィラメントを経糸及び緯糸に用いて、打込密度27×27本/2.54cmで、模紗織でメッシュシートを形成した。得られたメッシュシートの目付け320g/m、空隙率12%であった。得られたメッシュシートは経方向に折畳み可能な柔軟性を有しており、取扱い性は良好であった。また、メッシュシートはJISK6760に準拠して測定した引張強度は200kg/3cmであり、引張伸度は22%であった。この値は、JISA8952の建築工事用シート1類規格に合格するものである。難燃性試験では接炎回数は5回で、JISA8952の防炎性規格に合格するものであった。
【0028】実施例3:先ず、芯層には、ポリプロピレン(MFR=3.0g/10分、密度=0.90g/cm3、Tm=164℃)に、上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いた。一方、鞘層には、プロピレンーエチレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、密度=0.90g/cm3、Tm=130℃)に、上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いた。次いで、複合モノフィラメントは、押出機2機に連結された2層の吐出孔が同心円状に設けられたモノフィラメント成形ダイスから芯層のポリプロピレンおよび鞘層のプロピレンーエチレンランダム共重合体を押出し、延伸温度120℃、延伸倍率9.5倍で延伸し、処理温度140℃でアニーリングを施し複合モノフィラメントを成形した。得られた複合ポリオレフィンモノフィラメントの繊度は、芯層/鞘層が300dt/200dtで、総繊度が500dtであった。こうして得られた複合モノフィラメントを経緯糸に用いて、打込密度30本×30本/2.54cmで、平織のメッシュ基材を織成した。得られたメッシュ基材の目付け105g/m、空隙率35%であった。このメッシュ基材を熱風テンター式の加熱工程により155℃で経緯糸交点を融着して目止め加工を施し、周縁を加工して1.8×5.1mの建築工事用ポリオレフィンメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは経方向に折畳み可能な柔軟性を有しており、取扱い性は良好であった。また、メッシュシートはJISK6760に準拠して測定した引張強度は65kg/3cmであり、引張伸度は22%であった。この値は、JISA8952の建築工事用シート2類規格に合格するものである。難燃性試験では接炎回数は5回で、JISA8952の防炎性規格に合格するものであった。
【0029】実施例4:先ず、ポリプロピレン(MFR=20g/10分、密度=0.90g/cm、Tm=164℃)に上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いて、総繊度750dt/50fのマルチフィラメントを成形した。次いで、複合ポリオレフィンモノフィラメントを以下のように形成した。芯層には、ポリプロピレン(MFR=3.0g/10分、密度=0.90g/cm3、Tm=164℃)に、上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いた。鞘層には、プロピレンーエチレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、密度=0.90g/cm3、Tm=130℃)に、上記一般式(3)及び一般式(4)で示されるものを組み合わせた窒素含有化合物からなる難燃剤を2重量%配合し、200℃で溶融混練した組成物を用いた。複合モノフィラメントは、押出機2機に連結された2層の吐出孔が同心円状に設けられたモノフィラメント成形ダイスから芯層のポリプロピレンおよび鞘層のプロピレンーエチレンランダム共重合体を押出し、延伸温度120℃、延伸倍率9.5倍で延伸し、処理温度140℃でアニーリングを施し複合モノフィラメントを成形した。得られた複合ポリオレフィンモノフィラメントの繊度は、芯層/鞘層が350dt/150dtで、総繊度が500dtであった。こうして得られたポリプロピレンマルチフィラメントを緯糸に、複合ポリオレフィンモノフィラメントを経糸に用いて、経15本/2.54cm、緯30本/2.54cmの平織のメッシュ基材を織成した。得られたメッシュ基材の目付け105g/m、空隙率30%であった。このメッシュ基材を熱風テンター式の加熱工程により155℃で経緯糸交点を融着して目止め加工を施し、周縁を加工して1.8×5.1mの建築工事用ポリオレフィンメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは経方向に折畳み可能な柔軟性を有しており、取扱い性は良好であった。また、メッシュシートはJISK6760に準拠して測定した引張強度は65kg/3cmであり、引張伸度は22%であった。この値は、JISA8952の建築工事用シート2類規格に合格するものである。難燃性試験では接炎回数は5回で、JISA8952の防炎性規格に合格するものであった。
【0030】比較例1実施例1において、難燃剤をメラミンシアヌレート(商品名:MC−610、日産化学株式会社製)に変え、ポリプロピレン100重量部に対し、上記メラミンシアヌレート10重量部を配合して行ったこと以外は同様にして行った。その結果、得られたメッシュシートの難燃性試験では接炎回数は2回で、JISA8952の防炎性規格に不合格であった。なお、上記防炎性規格に合格するのに必要なメラミンシアヌレートの配合量はポリプロピレン100重量部に対し、30重量部必要であり、本発明で用いる難燃剤はわずか2重量%配合することで十分効果を有するのに比べ、大量添加しないと満足する難燃効果が得られないことがわかった。
【0031】比較例2実施例2において、難燃剤をメラミンシアヌレート(商品名:MC−610、日産化学株式会社製)に変え、芯層及び鞘層のそれぞれの樹脂100重量部に対し、上記メラミンシアヌレート10重量部を配合して行った以外は同様にして行った。その結果、得られたメッシュシートの難燃性試験では接炎回数は2回で、JISA8952の防炎性規格に不合格であった。なお、上記防炎性規格に合格するのに必要なメラミンシアヌレートの配合量はポリプロピレン100重量部に対し、30重量部必要であり、本発明で用いる難燃剤はわずか2重量%配合することで十分効果を有するのに比べ、大量添加しないと満足する難燃効果が得られないことがわかった。
【0032】比較例3実施例3において、難燃剤をメラミンシアヌレート(商品名:MC−610、日産化学株式会社製)に変え、芯層及び鞘層のそれぞれの樹脂100重量部に対し、上記メラミンシアヌレート10重量部を配合して行った以外は同様にして行った。その結果、得られたメッシュシートの難燃性試験では接炎回数は2回で、JISA8952の防炎性規格に不合格であった。なお、上記防炎性規格に合格するのに必要なメラミンシアヌレートの配合量はポリプロピレン100重量部に対し、30重量部必要であり、本発明で用いる難燃剤はわずか2重量%配合することで十分効果を有するのに比べ、大量添加しないと満足する難燃効果が得られないことがわかった。
【0033】比較例4実施例4において、難燃剤をメラミンシアヌレート(商品名:MC−610、日産化学株式会社製)に変え、ポリプロピレンマルチフィラメント及び複合ポリオレフィンモノフィラメントのそれぞれの樹脂100重量部に対し、上記メラミンシアヌレート10重量部を配合して行った以外は同様にして行った。その結果、得られたメッシュシートの難燃性試験では接炎回数は2回で、JISA8952の防炎性規格に不合格であった。なお、上記防炎性規格に合格するのに必要なメラミンシアヌレートの配合量はポリプロピレン100重量部に対し、30重量部必要であり、本発明で用いる難燃剤はわずか2重量%配合することで十分効果を有するのに比べ、大量添加しないと満足する難燃効果が得られないことがわかった。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の工事用メッシュシートは、熱可塑性樹脂製フィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、熱可塑性樹脂に上記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなるものであって、ハロゲン系難燃剤やりん系難燃剤のように有毒ガスの発生の恐れがなく、かつ無機系難燃剤のように燃焼後の灰分の残存する恐れのなく、少量の配合することによって透明性、耐候性、柔軟性、機械的強力及び難燃性に優れた建築工事用メッシュシートを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂製フィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布であって、熱可塑性樹脂に下記一般式(1)で示される窒素含有化合物からなる難燃剤を配合してなる工事用メッシュシート。
H(R1)Nー(CH2)aーN(R2)(CH2)bーN(R2')(CH2)cーN(R1)H (1)
(式中、R1は下記一般式(2)で示されるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基であり、R2R2'は R1または水素原子を表し、a,b及びcはそれぞれ、2〜5の正数を表す。)
【化1】


(式中、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基または水素原子を表し、R4は炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数1〜4のアルキル基で置換された炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を表す。)
【請求項2】メッシュ状織編布が熱可塑性樹脂製モノフィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布である請求項1に記載の難燃性に優れた工事用メッシュシート。
【請求項3】メッシュ状織編布が熱可塑性樹脂製マルチフィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布である請求項1に記載の難燃性に優れた工事用メッシュシート。
【請求項4】メッシュ状織編布が融点の異なる2種以上の熱可塑性樹脂からなり、融点の高い熱可塑性樹脂を芯層とし、融点の低い熱可塑性樹脂を鞘層とする複合モノフィラメント糸を経糸と緯糸に用いたメッシュ状織編布である請求項1に記載の難燃性に優れた工事用メッシュシート。
【請求項5】メッシュ状織編布がポリオレフィン樹脂マルチフィラメント(A)と融点の高いポリオレフィン樹脂を芯層とし、融点の低いポリオレフィン樹脂を鞘層とする複合モノフィラメント(B)を経糸または緯糸のいずれかに用いて構成されるメッシュ状織編布である請求項1に記載の難燃性に優れた工事用メッシュシート。
【請求項6】 難燃剤の配合量が熱可塑性樹脂に対して0.1〜5重量%の範囲である請求項1に記載の難燃性に優れた工事用メッシュシート。
【請求項7】 難燃剤が下記一般式(3)で示される窒素含有化合物である請求項1に記載の難燃性に優れた工事用メッシュシート。
H(R1)Nー(CH2)3ーN(R1)(CH2)2ーNHー(CH2)3ーN(R1)H (3) (式中、R1は下記一般式(4)で示されるピペリジル基を含有するトリアジン誘導体基である。)
【化2】


【公開番号】特開2003−286629(P2003−286629A)
【公開日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−2959(P2003−2959)
【出願日】平成15年1月9日(2003.1.9)
【出願人】(000234122)萩原工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】