説明

工作機械制御装置

【課題】作業者が工作機械の異常停止の原因の特定をより容易に行うことができるとともに、作業者がより容易に異常発生からの復旧作業を行うことができる工作機械制御装置を提供する。
【解決手段】制御手段は、検出手段からの検出信号に基づいて、検出手段に対応する要素の動作が完了したか否かを判定することが可能であり、表示手段は、シミュレート動作させている工作機械の3次元形状モデルと工程順情報とを表示可能である。そして制御手段は、異常検出手段に基づいて工作機械の異常を検出した場合、異常が検出された工程に対応するラダー回路から、直前の要素の動作が完了しており次に動作すべき要素、または動作が未完了の要素のいずれかの要素を抽出し、抽出した要素に対応する検出手段、または当該検出手段に対応する可動パーツを特定して表示手段に表示している3次元形状モデル内において識別可能に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械(特に数値制御装置を備えた工作機械であり、当該工作機械の周辺に設けられた安全装置等を含む)を制御する工作機械制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械には、例えば工作機械の動作を制御する数値制御装置と、指示入力手段と表示手段とを備えた操作盤とが設けられており、当該操作盤から動作の指示を入力することが可能であるとともに、当該操作盤にて異常時の状態を表示することが可能に構成されている。
従来の一般的な工作機械では、異常時の状態の表示は文字情報(数字を含む)で表示され、例えばセンサAに異常が発生した場合、「センサA異常」あるいは「エラーコード123」という具合に表示される。しかし、ワークの取り付けが微妙にずれて治具上の正しい位置からずれている場合等では、異常の表示が行われない、いわゆる「ダンマリ停止異常」の状態で工作機械が停止する場合がある。このような場合では、熟練作業者であっても、工作機械が停止した原因を特定することは困難である。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の従来技術では、工作機械に異常が発生して動作が停止してしまった場合(ダンマリ停止異常の状態を含む)、図5の例に示す画面(異常が発生した工程のラダー回路(当該工程における動作の順序と工程の完了条件を図で示した回路))をタッチスイッチ表示装置に表示させ、作業者による異常の原因の特定を、より容易に行うことができる設備モニタ装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−122427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、生産コストが低い海外等に進出して価格競争力の高い製品または部品を製造する企業が増加している。このような場合、現地では熟練作業者が居ないのが一般的である。また、国内においても高度な技術を習得している熟練作業者の数が減少し、社外応援者等の非熟練作業者が製造現場に多く配置される傾向にある。
【0006】
従来の一般的な工作機械では、異常が発生した場合の報知を「文字情報」で報知しているが、非熟練作業者では、例えば「センサA異常」と報知されても、「センサA」が工作機械のどこに取り付けられているのか判らない可能性がある。また「センサA」の取り付け位置が判ったとしても、非熟練作業者では、どのように修理または交換等を行えばよいか、判らない可能性がある。更には、ダンマリ停止異常が発生すると、まず原因を特定することに多大な時間を要する可能性があり、復旧には膨大な時間がかかる可能性がある。
【0007】
特許文献1に記載の従来技術では、異常の原因となったパーツ(上記の例では「センサA」)の取り付け位置が、非熟練作業者では判らない可能性があることは上記と同様であり、修理または交換の手順等も判らない可能性があることも同じである。しかし、ダンマリ停止異常に対しては、停止した工程のラダー回路を表示するため、当該ラダー回路に対応するセンサまたはスイッチ等に対応する可動パーツを順に調査すればよく、調査範囲が自動的に絞られるため、異常の原因の特定が容易である。
図5の例に示す程度のラダー回路(要素が6個程度)であれば、順に調査を行っても膨大な時間となる可能性は低い。しかし、調査が必要な要素に対応する工作機械中の可動パーツが、実際の工作機械のどこに搭載されているか、どのような形状をしているのか等を知らない場合、順に調査するだけでも多大な時間を要する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、作業性をより向上させることができる。また、作業者が工作機械の異常停止の原因の特定をより容易に行うことができるとともに、作業者がより容易に異常発生からの復旧作業を行うことができる工作機械制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの工作機械制御装置である。
請求項1に記載の工作機械制御装置は、工作機械を制御する制御手段と、工作機械の動作に同期させて当該工作機械の3次元形状モデルを動作させることが可能なシミュレート手段と、表示手段と、記憶手段と、異常検出手段とを備える。
工作機械は複数の可動パーツを含み、可動パーツには当該可動パーツの動作状態を検出可能な検出手段が設けられている。
記憶手段には、各工程の順序に関する工程順情報と、工程順情報における工程毎に対応付けたラダー回路と、検出手段と当該検出手段により動作状態が検出される可動パーツとを対応付けた可動パーツ関連情報とが記憶されており、ラダー回路は、検出手段を含む要素を直列または並列に組み合わせて構成されている。
制御手段は、工程順情報及びラダー回路に従った順序で工作機械を制御し、検出手段からの検出信号に基づいて、検出手段に対応する要素の動作が完了したか否かを判定することが可能であり、表示手段は、少なくともシミュレート動作させている工作機械の3次元形状モデルと、工程順情報とを表示可能である。
そして制御手段は、異常検出手段に基づいて工作機械の異常を検出した場合、異常が検出された工程に対応するラダー回路から、直前の要素の動作が完了しており次に動作すべき要素、または動作が未完了の要素のいずれかの要素を抽出し、抽出した要素に対応する検出手段、または当該検出手段に対応する可動パーツを特定し、特定した検出手段または可動パーツの少なくとも一方を、表示手段に表示している3次元形状モデル内において識別可能に表示することが可能である。
【0010】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの工作機械制御装置である。
請求項2に記載の工作機械制御装置は、請求項1に記載の工作機械制御装置であって、制御手段は、異常検出手段に基づいて工作機械の異常を検出した場合、表示手段に表示している工程順情報の中から異常が検出された工程を選択し、選択した工程に対応するラダー回路を表示し、表示したラダー回路において、動作が完了した要素、または動作が未完了の要素のいずれか一方の要素を識別可能に表示することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の工作機械制御装置を用いれば、異常が検出されて停止した工程におけるラダー回路から、異常と推定される要素(直前の要素まで動作が完了しているにもかかわらず動作が未完了の要素、またはラダー回路中で動作が未完了の要素)を抽出し、抽出した要素に対応する可動パーツを、3次元形状モデルにて識別可能に表示する。
このため、作業者は、表示手段に表示されている3次元形状モデルにて、異常の原因であると推定される検出手段または当該検出手段に対応する可動パーツにおける、工作機械中の搭載位置と形状等を瞬時に把握することが可能であり、異常の原因の特定の調査をより容易に行うことができる。
これにより、作業者が異常発生からの復旧作業をより容易に行うことができる。
【0012】
また、請求項2に記載の工作機械制御装置によれば、更に異常が検出された工程内の詳細作業を示すラダー回路も表示手段に自動的に表示する。
これにより、作業者は、動作が正常に完了しなければならない要素(工程が完了するための条件となる要素)が、どの要素(すなわち、どの可動パーツ)であるかより適切に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の工作機械制御装置50を備えた工作機械の例を示している。
以下、特に断りがない限り、「工作機械」と記載した場合は、工作機械本体と、当該工作機械の周辺に設けられた安全装置等の周辺機器をも含むものとする。
本発明は工作機械制御装置50であり、工作機械及び周辺機器(安全装置等)は従来のものと同様である。本発明の工作機械制御装置50は、工作機械(周辺機器を含む)を制御する制御手段を備えているとともに、制御している工作機械の動作に同期させて当該工作機械の3次元形状モデルをシミュレート動作させた表示と、工作機械の作業工程の順序を示すサイクル線図の表示とが可能である。そして工程内で異常が発生して工作機械が停止した場合、異常の原因と推定される可動パーツ(工作機械に搭載されており、その工程内で動作すべきパーツ)を、表示している3次元形状モデル内で識別可能に表示(強調表示)する点が特徴である。
【0014】
●[工作機械の外観(図1)]
図1は工作機械本体1(平面図)と工作機械制御装置50との接続例を示している。本実施の形態の説明では、車両のクランクシャフトを研削及び仕上げする工作機械を例に説明する。なお、工作機械は、これに限定されるものではない。図1においては、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定し、X軸を水平方向且つワークWの回転軸に平行な方向に設定し、Y軸を鉛直(上向き)の方向に設定し、Z軸を水平方向且つワークWの回転軸に垂直な方向に設定する。
ベッド1a上には、長手方向(X軸方向)にV字形ガイドウェイ2と平形ガイドウェイ3が設けられている。V字形ガイドウェイ2と平形ガイドウェイ3上には、研削砥石台(第1砥石台)22Aを載置する左テーブル20Aが、送りねじ10AによりX軸方向に摺動自在に設けられている。また、V字形ガイドウェイ2と平形ガイドウェイ3上には、超仕上げ砥石台(第2砥石台)22Bを載置する右テーブル20Bが、送りねじ10BによりX軸方向に摺動自在に設けられている。V字形ガイドウェイ2と平形ガイドウェイ3により、研削砥石台22Aと超仕上げ砥石台22BをX軸方向に案内するレールが構成されている。
【0015】
左右のテーブル20A、20Bには、それぞれ研削砥石24A(第1の加工手段)及び超仕上げ砥石24B(第2の加工手段)を回転自在に支持する研削砥石台22A及び超仕上げ砥石台22Bが、それぞれの送りねじ14A、14Bにより、X軸方向と直交する前後方向(Z軸方向)に摺動自在に設けられている。
各砥石台22A、22Bの前方には、X軸方向に離間して、ワークW(本実施の形態では、クランクシャフト)の一端部をチャック6aにより把持する主軸台6と、ワークWの他端部を押圧支持する心押台7が設けられている。主軸台6には、ワークWを回転駆動させる主軸サーボモータ8が設けられている。ワークWの回転位置は、主軸サーボモータ8の後端に設けられたエンコーダ9により検出される。
【0016】
研削砥石台22Aを載置する左テーブル20Aを、X軸方向に移動するための送りねじ10Aの左端部には、エンコーダ13A付きのサーボモータ12Aが設けられている。同様に、超仕上げ砥石台22Bを載置する右テーブル20Bを、X軸方向に移動するための送りねじ10Bの右端部には、エンコーダ13B付きのサーボモータ12Bが設けられている。
また、左右の各テーブル20A、20Bには、各砥石台22A、22BをZ軸方向に移動するための送りねじ14A、14Bの端部に、エンコーダ17A、17B付きサーボモータ16A、16Bが、各々設けられている。
また、各砥石台22A、22Bには、それぞれ研削砥石24Aを回転駆動するモータ、超仕上げ砥石24Bを回転駆動するモータが内蔵して設けられている。
【0017】
研削砥石24Aにより加工されるワークWの径(加工寸法)は、左定寸装置40Aに設けられた測定ヘッド30Aによって検出され、最終加工寸法まで研削されると研削砥石台22Aの切込み前進は停止される。
同様に、研削砥石24Bにより加工されるワークWの径(加工寸法)は、右定寸装置40Bに設けられた測定ヘッド30Bによって検出され、最終加工寸法まで研削されると研削砥石台22Bの切込み前進は停止される。
工作機械制御装置50は、エンコーダ13A、13B、17A、17B、9、定寸装置40A、40Bからの検出信号が入力され、モータ12A、12B、16A、16B、8に制御信号を出力し、工作機械を制御する。なお、図示しないが、工作機械には作業者の安全を確保するための安全カバー、非常停止スイッチ、警報ランプ等の種々の周辺機器が設けられており、これらの周辺機器からの入力及び出力も、工作機械制御装置50によって制御される。
【0018】
本発明の工作機械制御装置50は、上述したように、工作機械を制御する制御手段を備えている。また、非熟練作業者であっても工作機械の操作を容易に行うことができるように、工作機械の動作に同期させて工作機械の3次元形状モデルを動作させることが可能なシミュレート手段と、シミュレート動作させている工作機械の3次元形状モデルを表示する表示手段とを備えている。
例えば、工作機械制御装置50はパーソナルコンピュータであり(以下、パーソナルコンピュータを「PC」と記載する)、工作機械の入出力を行うためのインターフェースボード(NCボード等)と制御プログラムと周辺機器の入出力を行うためのインターフェースボード(PLCボード等)と制御プログラム(以上が制御手段に相当する)と、シミュレートプログラムとシミュレートに必要なデータ(シミュレート手段)と、グラフィックボードとモニタ(表示手段)とを備えている。
【0019】
●[工作機械制御装置のブロック構成(図2)]
次に図2を用いて工作機械制御装置50のブロック構成(ハードウェアの構成)の例について説明する。
工作機械制御装置50は(工作機械制御装置50のハードウェアは)、CPU62、PLCボード63、NCボード(出力用)64、NCボード(入力用)65、記憶手段66(Hard Disk Drive等)、モニタ52、グラフィックボード53、通信インターフェース54(以下、「インターフェース」をI/Fと記載する)にて構成されている。ハードウェアにおいては、CPU62、PLCボード63、NCボード(出力用)64、NCボード(入力用)65が、工作機械の制御手段に相当する。
記憶手段66には、工作機械における各工程の順序を示すサイクル線図(図3の52Bを参照)が記憶されており、サイクル線図における各工程には、工程内の詳細動作を示すラダー回路(図3の52Aを参照)が工程毎に対応付けて記憶されている。
また、記憶手段66には、サイクル線図またはラダー回路に従った順序で工作機械を制御(工作機械本体1の数値制御と、周辺機器の制御)するプログラム及びデータと、3次元形状モデルを動作させるシミュレートプログラム及びデータと、異常検出を行うプログラム等も記憶されている。
【0020】
本実施の形態にて説明する工作機械制御装置50は、1個のCPU(CPU62)で工作機械制御装置50の動作を統一的に制御可能に構成されている。なお、個々の構成要素(グラフィックボード53、PLCボード63等)が、構成要素自身とCPU62とのデータ授受及び構成要素自身の制御用に専用のCPUを備えていてもよい。
CPU62は、作業者から起動スイッチの入力を検出(検出手段70により検出)すると、サイクル線図またはラダー回路に従った順序で工作機械の制御を開始する。
工作機械は複数の可動パーツを含んでおり、各可動パーツには動作状態を検出可能な検出手段70(リミットスイッチ等)が設けられている。
CPU62は、検出手段70から入力される検出信号をPLCボード63またはNCボード(入力用)65を介して取り込み、サイクル線図またはラダー回路に従って次の動作を決定し、PLCボード63を介して可動パーツを駆動するアクチュエータ72や、NCボード(出力用)64を介して工作機械本体1のサーボモータ12A〜16B等を駆動するサーボアンプ74に制御信号を出力する。
また、モニタ52にはタッチパネル式のモニタを用いており、作業者が(タッチパネル式の)モニタ52の任意の位置に触れて入力(選択も含む)した指示は、通信I/F54を介してCPU62に取り込まれる。なお、モニタ52にタッチパネル式でないモニタを用いた場合は、キーボードやマウス等を接続して作業者からの指示を入力可能とする。
【0021】
●[モニタへの表示例及び異常発生時の表示例(図3)]
次に図3を用いてモニタ52の表示の例について説明する。図3に示す例では、画面全体を4分割し、右上の位置(52B)に工程順情報(この例ではサイクル線図)を表示し、左上の位置(52A)にラダー回路を表示し、右下の位置(52D)に3次元形状モデルを表示し、左下の位置(52C)に主な可動パーツの位置を示す座標(例えば、研削砥石24Aの座標等)を数値で表示している。なお、工程順情報はサイクル線図に限定されるものではないが、以下ではサイクル線図を工程順情報とした場合の例で説明する。
【0022】
図3中の52Bの位置に表示されるサイクル線図では、各工程の順序が表示されるとともに、動作が正常に完了した工程と、現在動作中の工程とが、他の工程と識別可能に表示(例えば、色彩を変更したり、周期を変えて点滅させたりする)される。作業者はサイクル線図を確認することで、工程の進捗状態を把握することができる。
【0023】
図3中の52Aの位置に表示されるラダー回路では、例えば現在動作中の工程に対応するラダー回路を表示することが可能である。
記憶手段66には、工程毎にラダー回路を対応させた対象ラダー情報66C(図4(C)参照)が記憶されている。図4(C)に示す例では、「工程名称:左チャック締め」という工程に対して、「RD001」と「RD002」というラダー回路が対応付けられている。例えば図3に示す例の場合、サイクル線図中の「工程:左チャック締め(Seq7)」に対応するラダー回路の1つに「RD001」があり、「ラダー回路:RD001」は、図3の52Aの位置に表示されているラダー回路である。
なお、制御手段は、現在動作中の工程に対するラダー回路を自動的に表示させてもよいし、作業者からの表示指示(作業者がサイクル線図から工程を選択)が行われた場合に表示させてもよい。
【0024】
ラダー回路は、検出手段を含む要素を直列または並列に組み合わせて構成されている。なお、要素には検出手段の他に、内部スイッチ(物理的なスイッチのON/OFFでなく、制御手段が所定の条件判定を行った結果の「真(1)」または「偽(0)」)の場合もある。
CPU62は検出手段からの検出信号に基づいて、ラダー回路中のどの要素の動作が完了したか(また、どの要素の動作が未完了であるか)を判断することができる(検出手段が要素の場合)。本発明の工作機械制御装置50では、(要素が検出手段であるか否かにかかわらず)表示しているラダー回路において、動作が完了した要素を識別可能に表示(あるいは、動作が未完了の要素を識別可能に表示)することが可能である。
このため、作業者はラダー回路中に識別可能に表示される要素の状態を確認することで、あとどの要素の動作が完了すれば工程が完了するか等、作業の進捗状況を容易に把握することができる。
【0025】
図3中の52Dの位置に表示される3次元形状モデルでは、実際の工作機械の動作に同期させて、工作機械の3次元形状モデルが動作している様子が表示される。
記憶手段66には、工作機械の各パーツ(可動パーツを含む全パーツ)に対応させて、可動方向(可動パーツの場合)、初期座標位置、形状に関するデータを含むファイル(3次元形状ファイル)が記憶されたパーツ情報66Aが記憶されている(図4(A)参照)。
また記憶手段66には、可動パーツに対応させて、当該可動パーツの動作状態を検出可能な検出手段と、検出手段からの検出信号に基づいて、当該可動パーツをどのように移動(動作)させるか座標等を記憶した可動パーツ関連情報66Bが記憶されている。
なお、図4(B)に示す可動パーツ関連情報66Bの例では、主軸モータM001からのパルス入力(主軸モータM001のエンコーダからのパルス入力)と、油圧バルブV001への駆動信号(油圧供給側の信号)も、検出信号として扱う例を示している。検出信号には、他にもリミットスイッチまたは近接スイッチからのON/OFF信号等がある。
【0026】
CPU62は、可動パーツ情報66Bと、検出手段からの検出信号とに基づいて、どの可動パーツがどの位置(座標)に移動したか(動作が完了したか否か)を判断することができ、この判断に基づいてシミュレート表示している3次元形状モデルを工作機械の実際の動作に同期させて動作させることができる。
また、3次元形状モデルでは、任意のパーツの色彩や透明度を変更することが可能であるとともに、視点位置及び拡大率も任意に変更可能である。従って、作業者は安全カバーや工作装置本体1の筐体等で隠れてしまうようなパーツの動作及び形状等も容易に把握することができる。
【0027】
図3中の52Cの位置に表示される、主な可動パーツの位置表示では、選択した可動パーツの座標(数値による位置)を表示している。作業者は、この座標から、対象となる可動パーツの正確な位置を知ることができる。
【0028】
●[異常の発生により、工作機械が停止した場合のモニタの表示の例(図3)]
工作機械制御装置50は異常検出手段を備えており、CPU62は、検出信号に基づいて、工作機械の動作に異常が発生したか否かを判定することができる。例えば定寸装置40A、40BからはワークWの径に対応する電圧が入力され、NCボード(入力用)65にてAD変換することでワークWの径を求めるが、通常の作業では有り得ない電圧が入力された場合、異常が発生したと判定することが可能である。また、例えば各工程には異常判定時間が設定されており、当該工程の作業を開始してから異常判定時間を経過しても工程が完了しない場合、異常が発生したと判定することが可能である。
【0029】
次に図3を用いて、工作機械にワークWを取り付ける工程のひとつである「左チャック締め工程」にて異常が発生した場合の例を説明する。
例えばCPU62は、当該工程に設定されていた異常判定時間を経過しても当該工程が完了しない場合、当該工程に異常が発生したと判定して工作機械の動作を停止させる。そしてCPU62は、異常と判定した工程(この場合、「左チャック締め工程」)をサイクル線図(図3の52B部)から抽出し、抽出した工程をサイクル線図中において識別可能に表示(強調表示)する。
更にCPU62は、異常と判定した工程に対応するラダー回路を抽出して表示する。なおラダー回路は、対象ラダー情報66C(図4(C))に示すように、複数のラダー回路が存在する場合があるが、CPU62は異常判定時間等から異常を判定しているため、異常が発生したラダー回路を特定することが可能である。
【0030】
図3の52A部に示すラダー回路の例では、経路Aの各要素または経路Bの各要素が全て動作を完了すると、要素V001(この場合、油圧バルブ)を駆動することで、左チャックC001にてワークWを固定させる。
ここで、例えば図3の52A部に示すラダー回路において、要素X001、X002、X003が動作を完了しており、要素X004の動作が未完了の状態にて、異常検出時間に達したとする。
この場合、CPU62は、要素X004及び要素V001の動作が未完了であると判定することができる。そこでCPU62は、動作が未完了の要素X004及び要素V001を識別可能に表示する(例えば色彩または点滅周期等を変更する)。なお、動作が完了している要素X001、X002、X003を識別可能に表示してもよい。いずれにしても、作業者が「動作が完了している要素」と「動作が未完了の要素」とを適切に区別できるように表示する。
【0031】
またCPU62は、動作が未完了の要素X004及び要素V001に対応する検出手段または可動パーツを特定することができる。例えば要素X004は、パーツ情報66Aより、検出手段(近接センサ)であることが判る。また例えば要素V001は、可動パーツ関連情報66Bより、C001(左チャック)に関する要素であることが判る。
そしてCPU62は、特定した検出手段または可動パーツを、表示している3次元形状モデルにおいて、識別可能に表示する。なお、要素V001と可動パーツC001の少なくとも一方を識別可能に表示する。
以上に説明したように、CPU62は工程の異常を検出すると、ラダー回路から動作が未完了の要素に対応する検出手段または可動パーツを特定し(なお、ラダー回路は表示ししなくてもよいが、表示した方が、異常の様子を作業者により詳細に報知することができる)、特定した検出手段または可動パーツを、3次元形状モデルにて識別可能に表示する。
【0032】
次に図3を用いて、異常の検出から3次元形状モデルへの表示を順に説明する。例えば近接センサX004にゴミ等が付着してセンサが動作しなくなった場合、CPU62は、サイクル線図(52B)における「左チャック締め工程」にて異常を検出し、工作機械の動作を停止する(なお、停止した際は作業者にも報知(異常ランプの点灯等)する)。
CPU62は、サイクル線図における「左チャック締め工程」から近接センサX004が動作せずに異常と判定したラダー回路RD001を表示する(52B)。なお、作業者がサイクル線図の「左チャック締め工程」を選択した場合にラダー回路を表示してもよいし、CPU62が自動的に表示するようにしてもよい。
【0033】
表示されたラダー回路RD001では、動作が未完了の要素X004と要素V001が強調表示(識別可能に表示)されている。そしてCPU62は、動作が未完了の要素X004及びV001に対応する検出手段、または当該要素に対応する可動パーツを特定(パーツ情報66A、可動パーツ情報66B等に基づいて特定)し、3次元形状モデルの表示において強調表示(識別可能に表示)する。この場合、要素X004に対しては近接スイッチX004(要素X004そのもの)を特定し、要素V001に対しては左チャックC001(要素V001が駆動する対象となる可動パーツ)を特定している。なお、図3では判りにくいが、3次元形状モデル(52D)において、近接スイッチX004と左チャックC001が色彩または点滅周期等が変更されて識別可能に表示されている。
作業者は、3次元形状モデル(52D)を見れば、瞬時に「左チャックC001が閉じていない」、また「近接スイッチX004に関して異常が発生している」ことを把握できる。そして作業者は工作機械の構造を熟知していなくても、表示されている3次元形状モデルから「近接スイッチX004」の位置及び形状等を瞬時に把握することができ、短時間に実際の工作機械の「近接スイッチX004」を見つけ出し、状態を確認することができる。そして「近接スイッチX004」にゴミが付着していることを発見し、当該ゴミを除去して復旧作業を終えることができる。
【0034】
●[その他の表示]
本実施の形態にて説明した工作機械制御装置50は、作業者がより容易に異常発生からの復旧作業を行うことができるように、以下に説明するような表示機能も備えている。
例えば図3における3次元形状モデル(52D)において、作業者が強調表示されている近接センサX004を選択すると、当該パーツに関する情報の表示を選択可能な表示メニューP01が表示される。
【0035】
作業者が「寿命に関する表示」を選択すると、例えば、残りの使用推奨期間や、交換推奨時期等を表示することが可能である。この場合、記憶手段66にパーツに対応させて寿命に関する情報を記憶させておき、工作機械にて使用(動作等)させる毎に回数または時間等を累積することで実現できる。
また、作業者が「動作チェック表示」を選択すると、当該パーツの動作を確認する手順が3次元形状モデルまたはアニメーション等で表示される。(なお、3次元形状モデルで表示した場合は、作業者からの指示により、視点方向や拡大率、指定したパーツの透明度等、表示状態を変更することが可能であるが、アニメーションでは決まった画像を再生するので表示状態を変更することはできない点が異なる。)
これにより、作業者は当該パーツが、上記の例のようにゴミ等が付着していただけか、それとも壊れていて交換すべきなのか、等を容易に判断することができる。
また、作業者が「交換手順表示」を選択すると、当該パーツを交換する手順が3次元形状モデルまたはアニメーション等で表示される。
これにより、作業者は短時間で且つ正確に、対象となるパーツの交換作業を完了することができる。
また、作業者が「データ詳細表示」を選択すると、当該パーツに関するデータ(製造元、型番、特性等)が表示される。
他にも種々の情報をパーツに対応付けて記憶、及び表示させることができる。
【0036】
●[通常時の表示の例(図6)]
以上、異常発生時の表示について説明したが、通常(正常動作)時の表示の例を図6に示す。
通常時は図6に示すように、例えばラダー回路の代わりに操作画面が52Aの位置に表示される。操作画面には、例えば工作機械の操作を指示する「起動」「停止」「(作業名)」等が表示されたボタンが表示される。作業者は、当該ボタンを操作して、工作機械に所望する指示を与えることができる。
【0037】
●[作業アシスト画面の例(図7)]
図7は、工具、治具等の交換作業において、3次元グラフィックあるいは3次元アニメーションを用いた画面の表示の例を示している。作業者による交換作業等のアシストをすることにより、作業効率の向上、操作ミスや単純ミスの低減を図ることが可能となる。
この表示は、例えば上記に説明した「交換手順表示」を選択した場合に表示され、図7の例は、研削砥石を交換する際の表示の例を示している。
【0038】
本発明の工作機械制御装置50は、本実施の形態で説明した構成、接続、処理手順、表示方法等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本実施の形態にて説明したパーツ情報66A、可動パーツ関連情報66B、対象ラダー情報66C等の構成、表示画面(52A〜52D)等は、本実施の形態の説明に限定されるものではない。
また、工程順情報は、サイクル線図に限定されず、工程名を線で結ぶことなく、並べて表示するようにしてもよい。
また、本実施の形態の説明に用いた数値等は一例であり、この数値等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の工作機械制御装置50が制御する工作機械の例を説明する図である。
【図2】本発明の工作機械制御装置50のブロック構成を説明する図である。
【図3】モニタへの表示の例を説明する図である。
【図4】パーツ情報66A、可動パーツ関連情報66B、対象ラダー情報66Cの例を説明する図である。
【図5】従来の設備モニタ装置の表示の例を示す図である。
【図6】通常(正常動作)時の表示の例を説明する図である。
【図7】「交換手順表示」を選択した場合の表示の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1 工作機械本体
1a ベッド
2 V字形ガイドウェイ
3 平形ガイドウェイ
6 主軸台
6a チャック
7 心押台
8 主軸サーボモータ
9 エンコーダ
10A、10B、14A、14B 送りねじ
12A、12B、16A、16B サーボモータ
13A,13B、17A、17B エンコーダ
20A 左テーブル
20B 右テーブル
22A 研削砥石台
22B 超仕上げ砥石台
24A 研削砥石
24B 超仕上げ砥石
30A、30B 測定ヘッド
40A 左定寸装置
40B 右定寸装置
W ワーク
50 工作機械制御装置
52 モニタ
66 記憶手段
66A パーツ情報
66B 可動パーツ関連情報
66C 対象ラダー情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を制御する制御手段と、工作機械の動作に同期させて当該工作機械の3次元形状モデルを動作させることが可能なシミュレート手段と、表示手段と、記憶手段と、異常検出手段とを備え、
工作機械は複数の可動パーツを含み、可動パーツには当該可動パーツの動作状態を検出可能な検出手段が設けられており、
記憶手段には、
各工程の順序に関する工程順情報と、
工程順情報における工程毎に対応付けたラダー回路と、
検出手段と当該検出手段により動作状態が検出される可動パーツとを対応付けた可動パーツ関連情報とが記憶されており、
ラダー回路は、検出手段を含む要素を直列または並列に組み合わせて構成されており、
制御手段は、工程順情報及びラダー回路に従った順序で工作機械を制御し、検出手段からの検出信号に基づいて、検出手段に対応する要素の動作が完了したか否かを判定することが可能であり、
表示手段は、少なくともシミュレート動作させている工作機械の3次元形状モデルと、工程順情報とを表示可能であり、
制御手段は、異常検出手段に基づいて工作機械の異常を検出した場合、
異常が検出された工程に対応するラダー回路から、直前の要素の動作が完了しており次に動作すべき要素、または動作が未完了の要素のいずれかの要素を抽出し、抽出した要素に対応する検出手段、または当該検出手段に対応する可動パーツを特定し、特定した検出手段または可動パーツの少なくとも一方を、表示手段に表示している3次元形状モデル内において識別可能に表示することが可能である、
ことを特徴とする工作機械制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械制御装置であって、
制御手段は、異常検出手段に基づいて工作機械の異常を検出した場合、
表示手段に表示している工程順情報の中から異常が検出された工程を選択し、選択した工程に対応するラダー回路を表示し、表示したラダー回路において、動作が完了した要素、または動作が未完了の要素のいずれか一方の要素を識別可能に表示することが可能である、
ことを特徴とする工作機械制御装置。




【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−107043(P2006−107043A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291621(P2004−291621)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】