説明

工作機械用の回転割出テーブル装置

【課題】回転割出テーブル装置において回転軸の軸線方向に関する寸法を小さくする。
【解決手段】工作機械用の回転割出テーブル装置(1)において、固定フレーム(2)に対して軸受(3)により回転可能に支持された回転軸(4)と、回転軸(4)の一端に設けられたワーク搭載用の円テーブル(5)と、回転軸(4)を回転駆動するための駆動手段(6)とを含み、駆動手段(6)が回転軸(4)の軸線と同心的に配置されて回転軸(4)に対し相対回転不能に設けられたモータロータ(7)と、モータロータ(7)の外周面に対向するように固定フレーム(2)に配置されたモータステータ(8)とを含む直接駆動型のモータ(9)により構成され、軸受(3)はモータロータ(7)の半径方向内側に設けられ、かつ軸受(3)の少なくとも一部は回転軸(4)の軸線方向に関し直接駆動型のモータ(9)の存在範囲内に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に支持された円テーブルを回転駆動することによって、加工対象のワークが搭載される円テーブルを所定の回転角度に割出す工作機械用の回転割出テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の回転割出テーブル装置に関する従来技術の一つとして、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1の回転割出テーブル装置では、回転軸の駆動手段として、ギア等の駆動伝達手段を介さずに回転軸を回転駆動する直接駆動型のモータ(所謂、DDモータ)が用いられている。また、特許文献1の回転割出テーブル装置では、このDDモータとして、モータステータがモータロータを囲繞する所謂インナーロータ形のDDモータが採用されている。
【0003】
上記の特許文献1の回転割出テーブル装置では、固定フレームに対し回転軸を回転可能に支持するための軸受は、回転軸の軸線方向におけるDDモータの存在範囲外、具体的にはDDモータよりも円テーブル側に変位した状態で設けられている。
【0004】
そのため、回転割出テーブル装置の上記軸線方向に関する寸法は、少なくともDDモータおよび軸受の上記軸線方向に関する寸法を加えたものとなり、装置自体の上記軸線方向における寸法が大きくなる。
【0005】
その結果、装置を工作機械に取り付けた際の工作機械のテーブル面からワーク(加工位置)までの距離が長くなるため、加工時に取付面に掛かる力(モーメント)が大きくなり、負荷に対する取付け剛性が低い状態となって装置の取付け状態の安定性を欠いてしまう。また、工作機械との関係で円テーブル上に取り付けるワークの大きさに制限を受け、大きいワークに対応できない場合が生じる。
【0006】
上記の回転割出テーブル装置に関する他の従来技術として、特許文献2に記載されたものがある。この特許文献2の回転割出テーブル装置においても、回転軸の駆動手段として上記DDモータが用いられている。但し、この特許文献2の回転割出テーブル装置では、モータロータがモータステータを囲繞する所謂アウターロータ形のDDモータが採用されている。また、特許文献2の回転割出テーブル装置では、回転軸が複数の軸受によって固定フレームに対し支持されており、この複数個の軸受の大部分が、回転軸の軸線方向におけるDDモータの存在範囲内に位置している。
【0007】
上記の特許文献2の回転割出テーブル装置では、アウターロータ形のDDモータにおけるモータロータを囲繞するかたちで回転軸の一部が存在しており、その回転軸の部分を囲繞するかたちで上記の軸受が設けられている。そのため、使用される軸受は必然的に大径なものとなってしまう。
【0008】
しかし軸受が大径化すると、振れ精度が低下するため、それに伴って割出精度が低下し、その結果として加工精度が低下する。また、軸受は径が大きいほど高額であるため、装置の製造コストが高くなる。
【特許文献1】実開平4−136632号公報
【特許文献2】特開平4−2443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、工作機械用の回転割出テーブル装置において、装置の回転軸の軸線方向に関する寸法を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題の下に、本発明は、固定フレーム(2)に対して軸受(3)により回転可能に支持された回転軸(4)と、該回転軸(4)の一端に設けられたワーク搭載用の円テーブル(5)と、前記回転軸(4)を回転駆動するための駆動手段(6)とを含み、前記駆動手段(6)が、前記回転軸(4)の軸線に関し前記回転軸(4)と同心的に配置されて前記回転軸(4)に対し相対回転不能に設けられたモータロータ(7)と、該モータロータ(7)の外周面に対向するように固定フレーム(2)に配置されたモータステータ(8)とを含む直接駆動型のモータ(9)により構成される工作機械用の回転割出テーブル装置(1)において、前記軸受(3)は前記モータロータ(7)の半径方向内側に設けられ、かつ前記軸受(3)の少なくとも一部は前記回転軸(4)の軸線方向に関し前記直接駆動型のモータ(9)の存在範囲内に設けている(請求項1)。因みに、上記回転割出テーブル装置(1)は、インデックステーブルやロータリテーブルとも呼ばれている。また、本発明における駆動手段としての直接駆動型のモータ(9)は、前記したDDモータのうちのインナーロータ形のDDモータである。
【0011】
また、上記工作機械用の回転割出テーブル装置(1)において、固定フレーム(2)内に前記回転軸(4)の割り出された角度位置を保持するクランプ手段(10)が設けられており、該クランプ手段(10)におけるクランプ部(31・32・36、43・44・48)の少なくとも一部は前記回転軸(4)の軸線方向に関し前記モータ(9)の存在範囲内に設けられる(請求項2)。なお、前記クランプ手段(10)としては、クランプスリーブ式、またはクランプディスク式等の公知のクランプ装置が用いられる。
【0012】
前記軸受(3)は、前記回転軸(4)を回転自在に支持するために、1または2以上により構成されており、前記回転軸(4)の少なくとも一部、換言すると、1個の軸受(3)の少なくとも一部、または2以上の個数の軸受(3)の少なくとも1個は、モータ(9)の存在範囲内に設けられる。
【0013】
さらに、固定フレーム(2)は、前記モータロータ(7)の半径方向内側で、かつ前記回転軸(4)の軸線方向に関し前記モータ(9)の存在範囲内に、筒状のベース部(11)を有しており、前記ベース部(11)は、内周側で前記軸受(3)を支持するとともに、外周側で前記クランプ手段(10)に対向している(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、回転軸の駆動手段として、固定フレーム内に設けられるインナーロータ形の直接駆動型モータ(以下、「DDモータ」という。)(9)が用いられ、軸受(3)がモータロータ(7)の半径方向内側で、かつ回転軸(4)の軸線方向に関し軸受(3)その少なくとも一部が前記DDモータ(9)の存在範囲内に位置するように設けられているから、回転割出テーブル装置(1)の前記軸線方向に関する寸法を小さくすることができ、その結果として工作機械に対する取り付け状態が安定化すると共に、従来よりもより大きいワークに対応することができる、という効果が得られる。また、小径の軸受を採用できるため、高い加工精度を得ることができ、かつ、工作機械用の回転割出テーブル装置の製造コストを抑えることができる、という効果も得られる(請求項1)。
【0015】
前記回転軸(4)の割り出された角度位置を保持するために前記回転割出テーブル装置(1)に設けられるクランプ手段(10)について、そのクランプ手段(10)におけるクランプ部の少なくとも一部が前記軸線方向に関し前記DDモータ(9)の存在範囲内に位置するように設けられているから、前記クランプ手段(10)の全てが前記DDモータ(9)の存在範囲外に位置する構成と比べ、前記回転割出テーブル装置(1)の前記軸線方向に関する寸法を小さくすることができ、前記軸受(3)についての効果と同様の効果が得られる(請求項2)。
【0016】
さらに、固定フレーム(2)の筒状のベース部(11)が前記モータロータ(7)の半径方向内側で、かつ前記軸線方向に関し前記DDモータ(9)の存在範囲内にあって、内周側で前記軸受(3)を支持するとともに、外周側で前記クランプ手段(10)に対向していると、前記軸受(3)および前記クランプ手段(10)が前記DDモータ(9)の存在範囲内で合理的に配置でき、装置の小型化に有効である(請求項3)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係る工作機械用の回転割出テーブル装置1を示している。図1の工作機械用の回転割出テーブル装置1は、クランプ手段10としてクランプスリーブ式のクランプ装置を採用した構成例である。なお、以下の説明において、「軸線方向」とは、円テーブル5を支持する回転軸4の軸線の方向を指し、「半径方向」とは、同心的に配置された回転軸4、円テーブル5、DDモータ9の半径方向を指すものとする。
【0018】
図1において、工作機械用の回転割出テーブル装置1は、固定フレーム2に対し軸受3により回転可能に支持された回転軸4と、この回転軸4の一端に設けられたワーク搭載用の円テーブル5と、回転軸4を回転駆動するための駆動手段6とを含む。固定フレーム2は工作機械に対する設置面となる部分が平坦な面として形成されており、また、回転軸4を囲繞するかたちで筒状のベース部11を有している。
【0019】
なお、図示の例では、固定フレーム2は、ケーシング体28と筒状のベース部11が形成されたベース部材29とを別体に形成し、両者を複数のボルト27によって組み合わせることにより構成されている。但し、筒状のベース部11は、それ単独の部材として別に形成され、ボルト等によって取り付けられる構成としてもよい。
【0020】
回転軸4は、固定フレーム2内において筒状のベース部11の内部に挿入され、軸受3によって固定フレーム2に対し回転可能に支持されている。また、円テーブル5は、中心孔13の部分で回転軸4の一端に嵌め込まれ、この嵌め合いによって位置決めされた状態で複数の取付けボルト12により回転軸4の一端部に対し取り付けられる。なお、図示の例では、円テーブル5には、円テーブル5のワーク搭載用の端面(図1の上面)とは反対側の面から軸線方向へ延びる筒状の保持部23が一体的に形成されており、この保持部23がベース部11を囲繞するかたちとなっている。
【0021】
軸受3の内輪部分は、回転軸4の外周の軸受け用段状部分に嵌まり、回転軸4の軸受け用段状部分の面と円テーブル5の中心孔13の周囲の面とによって挟みこまれている。また軸受3の外輪部分は、筒状のベース部11の内周の軸受け用段状部分に乗り、ベース部11の端面にボルト15により取付けられた環状の軸受押さえ14により固定されている。このようにして、回転軸4および円テーブル5は、固定フレーム2に対し軸受3により回転自在に支持される。なお、この図示の例において、回転軸4は、固定フレーム2のベース部11に対し1個の軸受3により回転可能に支持されているが、軸受3は、回転軸4と筒状のベース部11との間で、2個以上組み合わせて設けられていてもよい。
【0022】
回転軸4は、一端に円テーブル5が取付けられており、他端側は、ベース部11の内周面に形成されている円盤状の突出部16の孔16aに挿入され、更に、この孔16aから突出している。回転軸4の回転角度(回転量)は、回転軸4の上記突出部分に設けられた被検出リング21とベース部11の突出部16に設けられた検出センサ22とで構成されている回転検出器20により検出される。また、回転軸4の他端側における回転軸4の外周の空間は、ベース部11に取付けボルト17により取付けられたカバー部材18、およびカバー部材18により保持されて回転軸4の端部外周に接するオイルシール19によって塞がれている。
【0023】
駆動手段6は、インナーロータ形のDDモータ9により構成されている。このDDモータ9は、回転軸4の軸線に関し回転軸4と同心的に配置されており、回転軸4に対し相対回転不能に設けられたモータロータ7と、内周面が僅かな隙間を空けてモータロータ7の外周面に対向するように配置されて固定フレーム2のケーシング体28に対し相対回転不能に設けられたモータステータ8とを含む。
【0024】
モータロータ7は、円テーブル5の保持部23の外周面に嵌め込まれた状態で、円テーブル5側から挿入された取付けボルト24により円テーブル5に対し取り付けられている。このようにして、モータロータ7は、半径方向において回転軸4から離間した位置で、円テーブル5と一体的に形成された保持部23によって円テーブル5に対し取り付けられており、円テーブル5が固定された回転軸4に対し相対回転不能な状態となっている。
【0025】
なお、図1において、保持部23は、円テーブル5と一体に形成されているが、円テーブル5と別体に形成されて円テーブル5に固定されていてもよい。また、保持部23は、回転軸4と一体に形成されたものや、別体に形成されて、回転軸4に固定されたものであってもよい。
【0026】
一方、モータステータ8は、その内周面がモータロータ7の外周面に対向し、モータロータ7の外周面とモータステータ8の内周面との間に僅かな隙間を形成しながら固定フレーム2に取り付けられている。図示の例によると、モータステータ8は、固定フレーム2におけるケーシング体28の内周面に嵌め込まれたステータスリーブ25の内部周面に嵌め込まれてステータスリーブ25に対し相対回転不能に設けられており、また、ステータスリーブ25は、固定フレーム2のベース部材29側から挿入した取付けボルト26によって固定フレーム2に取付けられている。従って、モータステータ8は、固定フレーム2内において、固定フレーム2に対し相対回転不能に設けられた状態となっている。
【0027】
そして前記のように、軸受3は、DDモータ9におけるモータロータ7の半径方向内側、すなわち図面上で半径方向の寸法Aの範囲内に設けられており、かつ軸線方向に関し、DDモータ9の存在範囲内、すなわち図面上で軸線方向の寸法Bの範囲内に設けている。この例で、寸法Aは、モータロータ7の内周の半径と一致しており、また寸法Bは、軸線方向において一番大きなステータスリーブ25の母線方向の長さと一致している。
【0028】
図示の例で、軸受3は、軸線方向において寸法Bの範囲内にあって、DDモータ9の存在範囲内に納まっている。しかし、前記のように軸受3の少なくとも一部がDDモータ9の存在範囲内に納まっておればよいから、軸受3の少なくとも一部がDDモータ9の存在範囲、つまり寸法Bから突出していてもよい。このことは、2以上の軸受3により回転軸4を支持する場合に、個々の軸受3についても言える。
【0029】
上記のように、DDモータ9は、インナーロータ型であって、モータロータ7、モータステータ8およびステータスリーブ25を組み合わせて構成されている。図示の例では、軸線方向に関する寸法では、ステータスリーブ25が最も大きい。従って、軸線方向に関するDDモータ9の存在範囲は、ステータスリーブ25の存在範囲となる。
【0030】
そして、図1の例では、固定フレーム2に対して回転軸4を回転可能に支持するための軸受3の全ての部分が軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲内に位置している。言い換えれば、軸受3は、DDモータ9の中心貫通孔(モータロータ7の内周面の内側空間)内に配置されている。このように、軸受3の全ての部分が、DDモータ9の半径方向内側でかつ軸線方向に関しDDモータ9の存在範囲内に配置される構成とすることにより、工作機械用の回転割出テーブル装置1の上記軸線方向における寸法を非常に小さくできる。
【0031】
さらに、図示の回転割出テーブル装置1では、固定フレーム2内に、回転軸4の割り出された角度位置を保持するためのクランプ手段10を設けている。この例では、クランプ手段10はクランプスリーブ式のクランプ装置である。そして、このクランプ手段10は、固定フレーム2のベース部11と円テーブル5の保持部23との間に配置される筒状のクランプ部31と、クランプ部31に続いて半径方向に延びるフランジ部33とを有しており、クランプ部31がベース部11の外側に嵌装されると共に、フランジ部33で固定フレーム2に対し取付けボルト37によって取付けられている。
【0032】
このクランプ手段10では、クランプ部31は、クランプ面32となる保持部23の内周面に対向して非接触の状態で配置され、ベース部11の外周面に対し2つのシール34を介在させて密着している。また、クランプ部31は、その内周面に溝が形成され、その溝に対応する部分が肉厚の薄い薄肉部35となっている。そして、この薄肉部35の内面とベース部11の外周面とで囲まれた空間が、薄肉部35を変形させるための圧力流体(例えば、圧油)が供給される圧力室36となっている。圧力室36は、固定フレーム2のベース部材29に形成されている流路38、及びケーシング体28に形成されている流路39、ポート40を介して圧力流体源41に接続されている。圧力流体源41は、クランプ動作のときに圧力流体42を圧力室36に供給する。
【0033】
そして、クランプ手段10は、軸線方向に関しDDモータ9の存在範囲内に位置し、かつクランプ部31がDDモータ9の半径方向内側に位置するように配置されている。即ち、クランプ手段10は、その主要部分であり構成の大部分を占めるクランプ部31がDDモータ9の中心貫通孔(モータロータ7の内周面の内側空間)内に位置する配置とされている。
【0034】
このように、前記の軸受3の構成に加え、クランプ手段10の全てを、軸線方向に関しDDモータ9の存在範囲内に配置することにより、回転割出テーブル装置1の軸線方向における寸法をさらに小さくできる。さらに、クランプ手段10としてクランプスリーブ式のクランプ装置を採用した回転割出テーブル装置1において、クランプ部31が回転軸4の軸線方向に関しDDモータ9の存在範囲内に位置する構成とすることにより、クランプ部31の軸線方向における寸法を大きくとることができ、大きいクランプ力が得られるものとすることができる。また、インナーロータ形のDDモータ9を採用した回転割出テーブル装置1において、クランプ部31がDDモータ9の半径方向内側に位置する構成とすることにより、DDモータ9の外側で回転軸4に対しクランプ力を作用させるものと比べ、回転割出テーブル装置1の半径方向における寸法を小さくすることができる。
【0035】
このように、図1に示す工作機械用の回転割出テーブル装置1では、その構成により、装置自身の軸線方向における寸法を非常に小さくすることができるため、工作機械に対する回転割出テーブル装置1の取り付け状態が安定化するとともに、従来よりもより大きいワークに対応することができるものとなる。さらに、小径の軸受3を採用できることから、高い加工精度を得ることができ、かつ回転割出テーブル装置1の製造コストを抑えることができる。
【0036】
なお、図1の回転割出テーブル装置1では、前記のように、回転軸4とDDモータ9(モータロータ7・モータステータ8)との間に固定フレーム2の一部のベース部11が介在しているが、この構成は、一般的な回転割出テーブル装置と異なる点であり、軸線方向に関して軸受3やクランプ手段10をDDモータ9の存在範囲内、換言すると寸法B内に設けるために必要な構造である。図示の例の場合、筒状のベース部11は、寸法Aの範囲内で、かつ寸法Bの範囲内にあって、内周側で軸受3を支持するとともに、外周側でクランプ手段10に対向している。
【0037】
円テーブル5の回転駆動時に、DDモータ9の図示しない制御装置は、DDモータ9に対する回転磁界の発生によって、モータロータ7を回転軸4、円テーブル5とともに所定の回転角度(回転量)だけ回転させる。このときの円テーブル5の回転角度(回転量)は、回転検出器20によって検出される。
【0038】
円テーブル5が所定の回転角度(回転量)だけ回転し、目標の回転角度に割り出されたときに、圧力室36に圧力流体源41から圧力流体42が供給されるため、クランプ部31特に、その薄肉部35は、圧力室36の内部の圧力流体42の圧力を受けて、外径の拡大方向に変形し、薄肉部35の外周面を保持部23のクランプ面32に押し当て、それらの間に摩擦的な制動力を作用させ、そのときの摩擦力で円テーブル5を回り止めすることによって、クランプ状態とする。圧力流体42の供給を停止すれば、圧力室36の内圧が低下するため、薄肉部35の外周面は、保持部23のクランプ面32から離れ、アンクランプ状態となる。
【0039】
次に、図2に基づき、本発明による回転割出テーブル装置1の別の実施形態を説明する。この図2に示す回転割出テーブル装置1は、クランプ手段10としてディスク式のクランプ装置を採用した構成例である。なお、クランプ手段10以外の構成は、図1の例とほぼ同様である。従って、図1と共通する部分については、図面上で同じ符号を付し、その部分についての以下での説明は省略する。
【0040】
図2において、クランプ手段10は、円盤状のクランプディスク43、環状のピストン44、円盤状のリターンディスク45などにより構成されている。クランプディスク43は外周側の取付け部46と一体的に形成されており、その取付部46において取付けボルト47によって円テーブル5に取り付けられている。また、クランプディスク43の内周側の一方の面(円テーブル5側の面)は、クランプ面48となる軸受押さえ14のクランプディスク43側の面に対し非接触の状態で対向しており、さらに、クランプディスク43の内周側の他方の面(固定フレーム2側の面)は、リターンディスク45の面に非接触の状態で対向している。
【0041】
図2の例によると、取付け部46が円テーブル5に取付けられているため、モータロータ7は、取付けボルト53によって取付け部46に取付けられ、円テーブル5と一体となっている。なお、環状のリターンディスク45は、軸受押さえ14とともに取付けボルト15によりベース部11に取付けられている。
【0042】
ピストン44は、ベース部11に形成されている環状の溝54の内部で軸線方向に移動可能な状態として納められている。そして、溝54とピストン44の反クランプディスク43側の端面とで囲まれた空間が、ピストン44を変位させるための圧力流体が供給される圧力室49となる。また、この圧力室49には、ピストン44の反クランプディスク43側の端面と対向する位置においてベース部11に形成された流路38が連通しており、さらに、この流路38は、ケーシング体28に形成された流路39及びポート40を介して圧力流体源41に接続されている。
【0043】
また、ピストン44と一体のピストンロッド50は、リターンディスク45を間に置いてクランプディスク43の内周側の他方の面(固定フレーム2側の面)と対向している。リターンディスク45は、弾性材料により構成されており、ピストンロッド50がクランプディスク43側へ変位した際にピストンロッド50の先端に当たり、変形してクランプディスク43に対し押圧力を作用させる。
【0044】
さらに、ベース部11には、ピストン44の一部と対向するようにして、ストッパ52が取付けボルト51によって取り付けられている。このストッパ52は、ピストン44を抜け止めすると同時に、ピストンロッド50の軸線方向の移動を案内する役目を果たしている。
【0045】
円テーブル5が所定の回転角度(回転量)だけ回転し、目標の回転角度に割り出されたとき、圧力室49に圧力流体源41から圧力流体42が供給される。それにより、後退位置のピストン44は、後退位置から軸線方向へ変位し、ピストンロッド50の先端でリターンディスク45をその弾性力に抗して押し、クランプディスク43の内周面を軸受押さえ14のクランプ面48に押し当て、それらの間に摩擦力を作用させる。その結果、クランプディスク43およびこれと一体の円テーブル5は、クランプディスク43の内周面と軸受押さえ14のクランプ面48との間の摩擦力によって回り止めされ、クランプ状態となる。
【0046】
圧力流体42の供給を停止すれば、圧力室49の内圧が低下するため、ピストン44は、リターンディスク45の弾性力により後退位置に戻される。これによって、クランプディスク43は、クランプ面48から離れる。このため、円テーブル5は、アンクランプ状態となる。
【0047】
図2の例においても、クランプ手段10は、そのクランプ部、即ち、この例でのクランプディスク43、ピストン44、およびクランプ面48が、軸受3と同様に、モータロータ7の半径方向内側つまり寸法A内に設けられ、かつ軸線方向に関しDDモータ9の存在範囲内つまり寸法B内に設けられている。
【0048】
このように、軸受3およびクランプ手段10のクランプ部を、DDモータ9の半径方向内側で、かつ軸線方向に関しDDモータ9の存在範囲内に配置することにより、回転割出テーブル装置1の軸線方向における寸法を非常に小さくできる。
【0049】
以上で説明した実施例において、軸受3は、その全てが回転軸4の軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲内に位置する配置となっているが、本発明はこれに限らず、前記のように、軸線方向において軸受3の一部がDDモータ9の存在範囲から突出する様に配置されるものであってもよい。また複数の軸受3によって回転軸4を支持する場合において、そのうちの少なくとも1つが上記位置に配置されるものであってもよい。この場合でも、全ての軸受3を軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲外に配置する場合と比べ、回転割出テーブル装置1の軸線方向の寸法を小さくすることができる。
【0050】
なお、本発明においては、クランプ手段10のクランプ部は、必ずしもDDモータ9の半径方向内側や軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲内に配置する必要は無く、半径方向におけるDDモータ9の外側や、軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲外に設けられるものであってもよい。
【0051】
また、クランプ手段10は、その軸線方向の配置について、先の実施例のように、クランプ手段10の全てが軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲内に配置されるものに代えて、クランプ手段10の配置を、クランプ部31のみ、もしくはクランプ部の一部のみが軸線方向におけるDDモータ9の存在範囲内に位置するものとしてもよい。例えば、図1の例におけるフランジ部や図2の例における取付け部46がDDモータ9の存在範囲外に位置するものとしてもよいし、さらには、クランプ部の一部がDDモータ9の存在範囲外に位置するものであってもよい。
【0052】
また、クランプ手段10におけるクランプ部の半径方向の位置に関しては、回転割出テーブル装置1の半径方向の寸法を考えた場合は、先の実施例のようにDDモータ9の半径方向内側とするのが好ましいが、本発明はこれに限らず、クランプ部がDDモータ9の半径方向外側に位置するようにクランプ手段10を配置するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る工作機械用の回転割出テーブル装置は、工作機械の装備装置として、あるいは各種の工作機械の後付け用として、工作機械に組付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る工作機械用の回転割出テーブル装置1の断面図である。
【図2】本発明に係る工作機械用の回転割出テーブル装置1の他の例での断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 工作機械用の回転割出テーブル装置 2 固定フレーム
3 軸受 4 回転軸
5 円テーブル 6 駆動手段
7 モータロータ 8 モータステータ
9 DDのモータ 10 クランプ手段
11 ベース部 12 取付けボルト
13 中心孔 14 軸受押さえ
15 ボルト 16 突出部 16a 孔
17 取付けボルト 18 カバー
19 オイルシール 20 回転検出器
21 被検出リング 22 検出センサ
23 保持部 24 取付けボルト
25 ステータスリーブ 26 取付けボルト
27 取付けボルト 28 ケーシング体
29 シール 30 シール
31 クランプ部 32 クランプ面
33 フランジ部 34 シール
35 薄肉部 36 圧力室
37 取付けボルト 38 流路
39 流路 40 ポート
41 圧力流体源 42 圧力流体
43 クランプディスク 44 ピストン
45 リターンディスク 46 取付け部
47 取付けボルト 48 クランプ面
49 圧力室 50 ピストンロッド
51 取付けボルト 52 ストッパ
53 取付けボルト 54 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレーム(2)に対して軸受(3)により回転可能に支持された回転軸(4)と、該回転軸(4)の一端に設けられたワーク搭載用の円テーブル(5)と、前記回転軸(4)を回転駆動するための駆動手段(6)とを含み、
前記駆動手段(6)が、前記回転軸(4)の軸線に関し前記回転軸(4)と同心的に配置されて前記回転軸(4)に対し相対回転不能に設けられたモータロータ(7)と、該モータロータ(7)の外周面に対向するように固定フレーム(2)に配置されたモータステータ(8)とを含む直接駆動型のモータ(9)により構成される工作機械用の回転割出テーブル装置(1)において、
前記軸受(3)は、前記モータロータ(7)の半径方向内側に設けられ、かつ前記軸受(3)の少なくとも一部は、前記回転軸(4)の軸線方向に関し前記直接駆動型のモータ(9)の存在範囲内に設けられる、ことを特徴とする工作機械用の回転割出テーブル装置(1)。
【請求項2】
固定フレーム(2)内に前記回転軸(4)の割り出された角度位置を保持するクランプ手段(10)が設けられており、該クランプ手段(10)におけるクランプ部(31・32・36、43・44・48)の少なくとも一部は前記回転軸(4)の軸線方向に関し前記モータ(9)の存在範囲内に設けられる、ことを特徴とする請求項1記載の工作機械用の回転割出テーブル装置(1)。
【請求項3】
固定フレーム(2)は、前記モータロータ(7)の半径方向内側で、かつ前記回転軸(4)の軸線方向に関し前記モータ(9)の存在範囲内に、筒状のベース部(11)を有しており、前記ベース部(11)は、内周側で前記軸受(3)を支持するとともに、外周側で前記クランプ手段(10)に対向している、ことを特徴とする請求項2記載の工作機械用の回転割出テーブル装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−148840(P2009−148840A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326693(P2007−326693)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】