説明

工作機械

【課題】 少ないエネルギーでより高速に精度良く機械加工する。
【解決手段】 工作物を加工するための移動可能な主軸ユニット(12、32)と、工作物を載置するための移動可能なテーブル(16、36、56)と、テーブル(16、36、56)を支持するための移動可能なサドル(18、38)と、主軸ユニット(32)を載置するための移動可能なコラム(34)のうちの少なくとも1つを移動部として有する工作機械において、移動部が軽金属合金や合成樹脂等の軽量化素材から製作されていることを特徴とする工作機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の機械加工における高効率化や環境に対する配慮の高まりから、機械加工の高速化、高精度化、省エネルギー化が望まれている。
【0003】
従来、工作機械の主要な移動部は、鋼鉄或いは鋳鉄で作成されていた。
【0004】
特許文献1には、テーブル、スピンドル等を備えたNC工作機械が示されている。
【特許文献1】特開平11−42529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼鉄或いは鋳鉄で作成された移動部は、大重量となるため、高速化には限度がある。更に、移動時のエネルギー消費量も多くなる。
【0006】
そこで本発明は、少ないエネルギーでより高速に精度良く機械加工できる工作機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決手段を例示すると、以下のとおりである。
【0008】
(1) 工作物(W)を加工するための移動可能な主軸ユニット(12、32)と、工作物(W)を載置するための移動可能なテーブル(16、36、56)と、テーブル(16、36、56)と、コラム(34)を支持するための移動可能なサドル(18、38)と、主軸ユニット(32)を取り付けるための移動可能なコラム(34)を備えており、主軸ユニット(12、32)と、テーブル(16、36、56)と、コラム(34)のうちの少なくとも1つが移動部として構成されている工作機械において、移動部が軽量化素材から製作されていることを特徴とする工作機械。
【0009】
(2) 軽量化素材が、アルミニウム合金からなることを特徴とする先述の工作機械。
【0010】
(3) 移動部(56)を案内するための案内部材(59)を有し、案内部材(59)を摺動する摺動材料(57)が移動部(56)に設けられていて、摺動材料(57)がフッ素系樹脂材料からなることを特徴とする先述の工作機械。
【0011】
(4) 工作物(W)を載置するための移動可能なテーブルと、テーブルを支持するための移動可能なサドルを移動部として有し、テーブルを案内するための案内部材がサドルに設けられていて、案内部材が鋼材又はセラミックスからなり、案内部材を摺動する摺動材料が移動部に設けられていて、摺動材料がフッ素系樹脂材料からなることを特徴とする先述の工作機械。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省エネルギーで高速に精度良く機械加工することができる。
【0013】
とくに、軽量化素材が、アルミニウム合金からなると、アルミニウム合金の熱伝導率が高いので、室温になじみ易く、室温の変化による精度の狂いが生じにくく、精度の安定化が図れる。また、例えば鉄の溶融温度が1400℃であるのに対してアルミの溶融温度が657℃であるため、機械を廃却して溶融再生使用する際の省エネ効果も達成でき、環境に配慮した機械を提供できる。
【0014】
とくに、移動部を案内するための案内部材を有し、案内部材を摺動する摺動材料が移動部に設けられていて、摺動材料がフッ素系樹脂材料からなると、移動部自体が耐摩擦性が低く摩擦係数の高いものであっても、移動部全体を高い耐磨耗性及び低摩擦で移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の形態による工作機械は、工作物を加工するための移動可能な主軸ユニットと、工作物を載置するための移動可能なテーブルと、テーブルを支持するための移動可能なサドルと、主軸ユニットを取り付けるための移動可能なコラムのうちの少なくとも1つを移動部として有する。移動部が軽量化素材から製作されている。
【0016】
移動部が軽量化素材から製作されていることは、移動部の構成部品の全部又は一部が1種類又は複数種類の軽量化素材から製造され、移動部が鋼鉄や鋳鉄等で製造されたものと比較して全体として軽量化されたものであることの意味を含む。
【0017】
好ましくは、軽量化素材が、アルミニウム合金からなる。軽量化素材は、その他の軽金属合金や合成樹脂等を用いることもできる。
【0018】
好ましくは、移動部を案内するための案内部材を有し、案内部材を摺動する摺動材料が移動部に設けられていて、摺動材料がフッ素系樹脂材料からなる。フッ素系樹脂材料は、典型的にはテフロン(登録商標)系樹脂材料である。
【0019】
好ましくは、工作物を載置するための移動可能なテーブルと、テーブルを支持するための移動可能なサドルを移動部として有する。テーブルを案内するための案内部材がサドルに設けられていて、案内部材が鋼材又はセラミックスからなる。案内部材を摺動する摺動材料が移動部に設けられていて、摺動材料がフッ素系樹脂材料からなる。
【0020】
本発明は、従来鋼鉄或いは鋳鉄で作られている工作機械の主要な移動部(可動部)構成部品を、軽金属合金(アルミニウム合金など)や合成樹脂等の軽量素材を使って製作する事によって、高速化、高精度化、省エネルギー化を実現するものである。
【0021】
工作機械の主要な移動部(可動部)構成部品を軽量化素材で製作し、回転時或いは移動時の慣性力を少なくする。これにより、少ないエネルギーで、より高速に精度良く稼動させる事を目的とする。
【0022】
機械本体の構成
1. 機械本体の構造は、アルミニウム合金その他の軽量化素材とするのが好ましい。
【0023】
2. 例えばアルミニウム合金を使う事により、機械の廃却時に省エネルギーで溶融再生使用する事によって環境へも配慮したゼロエミッションの機械を提供できる。例えば、鉄の溶融温度が1400℃であるのに対してアルミの溶融温度が657℃であるため、溶融再生時の省エネ効果が得られる。
【0024】
3. 機械の案内摺動面には鋼材又はセラミック等の硬度があり耐磨耗性の高い材料を使用し、摺動材料にフッ素系、例えばテフロン(登録商標)系樹脂材料を使用し、低摩擦案内を実現するのが好ましい。
【0025】
4. 本体をアルミニウム合金にして薄い羽根リブ(フィン)を多く配置し、放熱性を良くし、精度の安定化を図ると更に好ましい。
【0026】
5. アルミは熱伝導率が高いので、室温になじみ易く、室温の変化による精度の狂いが生じにくく、精度の安定化が図れる。
【実施例1】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
【0028】
図1は、本発明による工作機械の一例を示す斜視図である。
【0029】
工作機械10は、立型マシニングセンターとして構成されている。
【0030】
工作機械10は、図示省略した工作物を加工するための移動可能な主軸ユニット12を有する。
【0031】
主軸ユニット12は、直立したコラム14に取り付けられている。コラム14には第1駆動機構15が設けられている。主軸ユニット12は、第1駆動機構15を用いて垂直方向に移動可能である。
【0032】
工作機械10は、更に、工作物を載置するための移動可能なテーブル16を有する。
【0033】
テーブル16の下面には、テーブル16を支持するための移動可能なサドル18が設けられている。サドル18には図示省略した第2駆動機構が設けられている。テーブル16は、第2駆動機構を用いて水平方向の一方向に移動可能である。
【0034】
サドル18の下面にはベース20が設けられている。ベース20には図示省略した第3駆動機構が設けられている。サドル18は、第3駆動機構を用いてテーブル16の移動方向と垂直な水平方向に移動可能である。
【0035】
図1に示された例においては、主軸ユニット12、テーブル16、及びサドル18が移動部として構成されていて、これらの移動部がアルミニウム合金で製作されている。このため、主軸ユニット12、テーブル16、及びサドル18の移動時の慣性力が少なく、少ないエネルギーで高速に精度良く移動させることができるようになっている。
【実施例2】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
【0037】
図2は、本発明による工作機械の別の例を示す斜視図である。
【0038】
工作機械30は、横型マシニングセンターとして構成されている。
【0039】
工作機械30は、図示省略した工作物を加工するための移動可能な主軸ユニット32を有する。
【0040】
主軸ユニット32は、X軸移動コラム34に取り付けられている。X軸移動コラム34には第1駆動機構35が設けられている。主軸ユニット32は、第1駆動機構35を用いて垂直方向(Y軸方向)に移動可能である。
【0041】
工作機械30は、更に、工作物を載置するための移動可能なパレットテーブル36を有する。
【0042】
パレットテーブル36の下方には、パレットテーブル36を支持するためのZ軸サドル38が設けられている。Z軸サドル38には図示省略した回転駆動機構が設けられている。パレットテーブル36は、回転駆動機構を用いて回転移動可能である。
【0043】
Z軸サドル38の下方にはベース40が設けられている。ベース40には図示省略した第3駆動機構が設けられている。Z軸サドル38は、第3駆動機構を用いて水平方向の一方向(Z軸方向)に移動可能である。
【0044】
ベース40には、更に、第4駆動機構41が設けられている。X軸移動コラム34は、第4駆動機構41を用いてY軸方向とZ軸方向に垂直なX軸方向に移動可能である。
【0045】
図2に示された例においては、主軸ユニット32、X軸移動コラム34、パレットテーブル36、及びZ軸サドル38が移動部として構成されていて、これらの移動部がアルミニウム合金で製作されている。このため、主軸ユニット32、X軸移動コラム34、パレットテーブル36、及びZ軸サドル38の移動時の慣性力が少なく、少ないエネルギーで高速に精度良く稼動させることができるようになっている。
【実施例3】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施例3を説明する。
【0047】
図3は、本発明による工作機械の更に別の例を示す部分断面図である。
【0048】
工作機械50は、工作物Wを載置するための移動可能なテーブル56を有する。
【0049】
テーブル56の下方には、テーブル56を支持するためのサドル58が設けられている。サドル58には図示省略した駆動機構が設けられている。テーブル56は駆動機構を用いて水平方向の一方向に移動可能である。サドル58の上部は、鋼材又はセラミックスからなる案内部材59として構成されている。このため、案内部材59が耐磨耗の案内を実現できるようになっている。
【0050】
テーブル56の下面には、テフロン(登録商標)系樹脂材料からなる摺動材料57が設けられている。摺動材料57は、案内部材59を摺動する。テーブル56が低摩擦の摺動を実現できるようになっている。
【0051】
更に、テーブル56が移動部として構成されていて、この移動部がアルミニウム合金で作成されている。こうして、テーブル56自体が軽量化されるとともに摺動材料57を含めたテーブル56全体が高い耐磨耗性及び低摩擦で移動可能になっている。
【0052】
なお、サドル58が移動部として構成される場合は、サドルをアルミニウム合金等の軽量化素材で製作することもできる。
【0053】
本発明は図示された実施例に限定されない。図1や図2に示された工作機械に図3に示されたフッ素系樹脂材料からなる摺動材料を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による工作機械の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明による工作機械の別の例を示す斜視図である。
【図3】本発明による工作機械の更に別の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10、30、50 工作機械
12、32 主軸ユニット
14 コラム
15、35 第1駆動機構
16、56 テーブル
18、38、58 サドル
20、40 ベース
34 X軸移動コラム
36 パレットテーブル
38 Z軸サドル
41 第4駆動機構
57 摺動材料
59 案内部材
W 工作物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(W)を加工するための移動可能な主軸ユニット(12、32)と、工作物(W)を載置するための移動可能なテーブル(16、36、56)と、テーブル(16、36、56)と、コラム(34)を支持するための移動可能なサドル(18、38)と、主軸ユニット(32)を取り付けるための移動可能なコラム(34)を備えており、主軸ユニット(12、32)と、テーブル(16、36、56)と、コラム(34)のうちの少なくとも1つが移動部として構成されている工作機械において、移動部が軽量化素材から製作されていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
軽量化素材が、アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
移動部(56)を案内するための案内部材(59)を有し、案内部材(59)を摺動する摺動材料(57)が移動部(56)に設けられていて、摺動材料(57)がフッ素系樹脂材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
工作物(W)を載置するための移動可能なテーブルと、テーブルを支持するための移動可能なサドルを移動部として有し、テーブルを案内するための案内部材がサドルに設けられていて、案内部材が鋼材又はセラミックスからなり、案内部材を摺動する摺動材料が移動部に設けられていて、摺動材料がフッ素系樹脂材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の工作機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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