説明

工作物に作動力を印加する装置

本発明は、作動シリンダ(92)を使用して、加工品に可動式力を適用するための装置に関する。本装置は、作動ピストン(9)、水力媒体を供給し得る駆動チャンバ、ガス媒体を供給し得る再循環チャンバ(86)、および作動ピストン(9)と協同する力伝達装置(5)を備える。これによって、できるだけ単純な技術的な構造によってできるだけ急速な加工品への作動力の伝達または印加を行なうことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物を製造または処理するために工作物に作動力を印加する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作動シリンダおよび作動ピストンを備えたピストン−シリンダ装置を含む従来技術が公知である。可動式ピストンは、作動シリンダを駆動チャンバおよびリターン・チャンバに分割する。駆動チャンバおよびリターン・チャンバの両方に水力媒体が供給され得る事は公知である。作動力は、作動ピストンと力伝達装置との間の協同によって加工品に伝えられる。
【0003】
特許文献1は、コンロッドを割断するための装置について記載されている。この種類の装置は、水力ピストンシリンダユニットによって幅広げウェッジの上に、およびしたがって加工品(コンロッド)の上に幅ひろげ力を適用するための作動装置等を備える。さらに、作動装置はアキュムレータ、およびアキュムレータとピストン−シリンダユニットとの間に配置される調節弁を備え、この調節弁によって、アキュムレータ中の加圧された水力媒体が急速にピストン−シリンダユニットに供給され得る。加工品(コンロッド)に作動力を伝えるために、水力媒体が駆動チャンバに供給され、同時にリターン・チャンバの水力媒体が排出される。本装置を始動位置へと戻すために、この手順が反転される。即ち、水力媒体がリターン・チャンバに供給され、同時に水力媒体が駆動チャンバから排出される。
【特許文献1】欧州特許第0661125号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンロッドにクラックが生じる際の割断の品質は、割断の手順の速度等にとりわけ依存する。この理由のために、水力媒体がピストン−シリンダユニットの作動チャンバへ供給する前にアキュムレータの中で加圧されるカートリッジ型弁としてこの調節弁が設計されるという事が、前述の方法および装置の中で既に提案されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述された種類の装置を更に発展させ、できるだけ単純な技術的な構造と、加工品上への作動力のできるだけ速い伝達を実現する事が本発明の目的である。
【0006】
この目的は、作動シリンダ、作動ピストン、および、ピストンの一方に位置して水力媒体が供給され得る駆動チャンバ、ピストンの反対側に位置してガス媒体が供給され得るリターン・チャンバ、および作動ピストンと協同する力伝達装置を備える装置によって達成される。
【0007】
本発明は、従来技術において通常用いられる、リターン・チャンバに供給し得る水力媒体をガス媒体に置換出来るという考えに基づく。リターン・チャンバにガス媒体の供給を使用する事は、力伝達の手順の間に、リターン・チャンバからの媒体の排出の際の抵抗が低減され得るという長所がある。これによって、より急速な運転方法、および加工品への作動力のより効率の良い伝達が可能となる。
【0008】
有利な実施形態が、請求項2〜請求項6において示される。
【0009】
アキュムレータは駆動チャンバと連通し、駆動チャンバに供給され得る水力媒体がアキュムレータ中に加圧された状態で格納されて良い。この実施形態は、装置の作動法が高速であるように設計され、出来る限り最も急速な運転を可能にし得る。内部が分割メンブレンによって2つのチャンバに分割される高圧コンテナを備えるアキュムレータを使用する事が出来る。低圧チャンバは水力媒体で充填され、高圧チャンバは圧縮ガス、好ましくは窒素で充填される。
【0010】
有利な実施形態において、アキュムレータと駆動チャンバとの間に調節弁が配置され、アキュムレータ内に加圧されて格納される水力媒体は、調節弁を経由して急速に駆動チャンバに供給されて良い。この種類の調節弁は、任意の所望の様態で設計されて良い。アキュムレータに格納された水力媒体を駆動チャンバにできるだけ急速に供給するために、この調節弁は、短い時間スパン(即ち急速に)で比較的大きな流れ横断面を提供する事が重要である。従って、2ウェイの内蔵弁が調節弁として使用される場合、これは有利である。この種類の弁は、カートリッジ型弁として当業者には公知である。
【0011】
好適な実施形態において、加工品はコンロッドである。また、力伝達装置は、コンロッドを割断するように設計される。これによって、できるだけ単純な技術的な構造による最も高速な割断の手順が実現され得る。更に、この運転方法によって、割断の手順の間における破面平面領域におけるコンロッド材料の塑性変形が比較的少なくなり、所謂脆性破壊に非常に近似したものとなる。
【0012】
更なる実施形態によれば、力伝達装置は、局所固定の幅広げジョー、可動の幅広げジョー、および幅広げジョーを押すための幅広げウェッジの形態を呈する幅広げ装置を備える。
【0013】
好適には、リターン・チャンバは排出装置を更に備える。その結果、ガス媒体がリターン・チャンバから急速に排出され得る。例えば、この種類の排出装置は、大きな調節横断面を備えた吐出弁として設計されて良い。その結果、加圧されて駆動チャンバに供給された水力媒体に対するリターン・チャンバ側に作用する背圧は極小となる。加圧された水力媒体が駆動チャンバに供給される場合に排出装置が既に開かれているように制御が設計される場合、この点に関して有利である。
【0014】
本発明は、添付の図面を参照した実施例を用いて記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示される本発明における装置1の第1実施形態は底部スタンド6上に構築され、移送配管と共に使用される。フレーム状上部スタンド6aが底部スタンド6の上部に構築され、垂直の一直線に配列されている案内装置として、案内配置8を支持する。移動可能なフレーム14は案内ストラップ10および11による直線状の案内手段にマウントされる。この移動可能なフレームは、フレーム状上部スタンド6aに固定された吊り上げ装置7によって上下動させる事が出来る。移動可能なフレーム14は、さらに局所に固定された(つまり、移動可能なフレーム14に直接取り付けられた)幅広げジョー3および移動可能な幅広げジョー4を有する伝達装置5を備える。力伝達装置5は、図2の中で示される幅広げウェッジ55を更に備える。
【0016】
幅広げ装置5の局所固定および移動可能な幅広げジョーは、吊り上げ装置7および移動可能なフレーム14によって上部から吊り下げられ、上部スタンドのホルダー内に配置されるキャップとロッドを有するコンロッド2の大端部に挿入され、再度引き上げる事が出来るように為される。
【0017】
力伝達装置の正確な構造が図2より明らかにされる。図2から明らかなように、局所固定の幅広げジョー3は固定ねじ12によって移動可能なフレーム14の固定ソケット13に取り付けられる。移動可能な幅広げジョー4は固定ねじ12´によってベアリング・セクション21に取り付けられ、ベアリング・セクション21は、固定ねじ20によって案内ロッドの平行配置16によって移動可能なフレーム14の一部分であるホルダー・セクション17に取り付けられる。局所固定の幅広げジョー3と移動可能な幅広げジョー4との間に幅広げウェッジ55が配置され、幅広げウェッジ55は、作動ピストン9と協同するプッシュロッド19と連結。図2に示された本発明における装置の第1実施形態の構造の残りは、独国実用新案第9210197号に記載され、開示されている内容は参照により援用される。
【0018】
図1に示されるピストン−シリンダユニット61は、プッシュロッド19によって幅広げウェッジ55に連結されたピストン9を備える。安全装置62および調節弁63が、アキュムレータ60とピストン−シリンダユニット61との間に配置される。安全装置62および調節弁63は相互に接続され、アキュムレータ60およびピストン−シリンダユニット61に対して水力抵抗の低いできるだけ短い接続配管64、65および66によって接続される。
【0019】
安全装置62は、遮断弁と圧力リリーフ弁を有する市販のユニットである。
【0020】
図3に示された(第1実施形態に基づく)水力のレイアウトにおいて、ピストン−シリンダユニット61を駆動チャンバ85およびリターン・チャンバ86に分割するピストン9を備えたピストン−シリンダユニット61が示される。水力のレイアウトにはアキュムレータ60が更に示され、安全装置62(それは既知の様態で遮断弁と圧力リリーフ弁を含む)と連通している。
【0021】
調節弁63が配管65によって安全装置62に接続され、調節弁63は配管66によって駆動チャンバ85と連通している。
【0022】
図3から明らかなように、この配置には、配管65によってアキュムレータの力を確立するためにアキュムレータ60および安全装置62へ水力媒体を供給し得る主ポンプ67が更に備えられる。
【0023】
この配置には、調節弁63を制御する事が出来る方向弁82が更に備えられる。
【0024】
更に、水力のレイアウトには、圧縮空気配管90が示される。圧縮空気配管90は、方向弁88および逆止弁89によって配管91によってリターン・チャンバ86に連結される。更に、方向弁88とリターン・チャンバ86との間に排出装置87が提供される。
【0025】
本手順は以下の通りである。先ず、アキュムレータ60は主ポンプ67によってその動作圧まで加圧される。その後、方向弁82が調節弁63を開く。この手順に先立って、あるいはこの手順と同時に、排出装置87が開かれる。きわめて短時間の間に比較的大きな流量横断面が開かれるように調節弁63が設計されているので、アキュムレータ60に格納された水力媒体は、ピストン−シリンダユニット61の駆動チャンバ85に配管64、65および66によって急速に流入し、ピストン9の第1サイドに力を伝える事が出来、ピストン9の第1サイドは続いて力伝達装置5と協同する。排出装置87が開かれるので、ピストン9の動作に対して顕著な抵抗は存在しない。その結果、リリースされた力は、力伝達装置によって直接かつ急速に伝える事が出来る。
【0026】
力伝達の手順が終了した後、方向弁82が駆動チャンバの排出装置を開き、同時に方向弁88が、圧縮空気配管90へ向かうリターン・チャンバ86の接続を開く。加圧されて供給された空気は、ピストン9のもう一方の側に力を伝える。これによって、ピストン9は開始位置に戻り、加工品への力伝達の手順が再び行なわれて良い。
【0027】
これによって、力伝達の手順は高速で行なわれる事によって機能が満足され、この機能は衝撃力で運転される装置に非常に近いものとなる。従って、本発明におけるこの種の装置によって、高品質の力伝達が比較的小さな技術的な努力で達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における装置の第1実施形態の単純化された全体概略図である。
【図2】図1の一部を拡大した部分断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態が基づく水力のレイアウトの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工品に作動力を印加するための装置であって、
作動シリンダと
作動ピストン(9)と
水力媒体を供給する事が出来、ピストンの一方の側に位置し得る駆動チャンバ(85)と、
ガス媒体を供給する事が出来、ピストンの他方の側に位置し得るリターン・チャンバ(86)と、
作動ピストン(9)と協同する力伝達装置(5)と
を備える、装置。
【請求項2】
アキュムレータ(60)が前記駆動チャンバ(85)と連通し、水力媒体が加圧されて前記アキュムレータ(60)に格納され得る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
調節弁(63)が前記アキュムレータ(60)と前記駆動チャンバ(85)との間に配置され、
加圧されて前記アキュムレータ(60)に格納された水力媒体が、前記調節弁(63)によって前記駆動チャンバ(85)に急速に供給され得る、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記加工品がコンロッド(2)であり、前記力伝達装置(5)が、前記加工品(2)が割断され得るように設計される、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記力伝達装置(5)が、幅広げジョー(3、4)を別々に押すために、局所固定の幅広げジョー(3)、移動可能な幅広げジョー(4)、および幅広げウェッジ(55)の形態を呈する幅広げ装置を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記リターン・チャンバ(86)が排出装置(87)を備え、前記排出装置(87)が、前記ガス媒体がリターン・チャンバ(86)から急速に排出され得るように設計される、請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513034(P2006−513034A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−581933(P2003−581933)
【出願日】平成15年3月6日(2003.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/002320
【国際公開番号】WO2003/084704
【国際公開日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(500049071)アルフィング ケスラー サンデルマスチネン ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】