説明

工場内搬送システム

【課題】工場内において、懸垂型の搬送車が大型化されても、工場内搬送システムと床上通路との良好な関係を保持する。
【解決手段】第1天井部(1001)及び天井高が低い第2天井部(1002)を有する天井、並びに床(200)を備える工場内に設けられる工場内搬送システムは、天井から懸吊される形で敷設された軌道と、この上を走行可能な懸垂型の搬送車(10)とを備える。軌道は、搬送車の下面の高さが、床から高さh1になるように、第1天井部に敷設された第1軌道部(110)と、高さh1よりも低い高さh2になるように、第2天井部に敷設された第2軌道部(120)と、第1及び2軌道部の相互間を搬送車が乗り入れ可能となるように連絡する傾斜した連絡軌道部(130)とを有する。第1軌道部下に、通路(100)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工場内において、その天井に懸吊される形で敷設された軌道上を、搬送車(例えばビークル)の一種である、OHT(Overhead Hoist Transport)やOHS(OverHead Shuttle)を走行させることで、被搬送物を、工場内に縦横にレイアウトされた、処理装置、保管庫、棚等(以下単に「処理装置等」と呼ぶ)間で搬送するための工場内搬送システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、工場内で(i)一の製造工程を実施するための各種処理装置等が設置された一のエリアにおける天井に敷設された軌道上にて、搬送車を巡回或いは周回走行させる工程内システムと(ii)このような工程内システムの複数の相互間で搬送車を走行させる工程間システムとを含む、工場内システムがある(特許文献1、2参照)。ここに「工場」は、例えば、半導体装置製造工場、液晶装置製造工場等(或いは、そのような工場のうちのクリーンルーム等)である。工場内でビークル等により搬送される「被搬送物」は、例えば、半導体製造装置、液晶製造装置で用いられるウエーハ、ガラス基板等を収容する容器であり、例えば規格化された該容器の一つ種であるFOUP(Front Opening Unified Pod)である。
【0003】
特に、特許文献1には、工場や設備の新設・増設の際に、天井に敷設するレールに高低差を設けられるように、レールに坂道を有するOHTの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13330号公報
【特許文献2】特開2005−112563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
「工場」として既存のものを利用しつつ、製造ラインの変更や設備の新設・増設を行うことが実践上は多い。或いは、工場新設の際にも、工場自体はコスト面等の理由から規格化・標準化された一定サイズや一定形状のものを建てる場合が多い。このため、既存の或いは完成後の工場内における天井に、レールなどの軌道を敷設する際には、天井の高さには、実践的な意味では確固たる制約が存在する。他方で、工場内は、完全に無人化することは困難或いは実践上不可能であり且つ各処理装置等に対して各種部品、部材、材料、資材、半製品、製品などを床上にて適宜搬送・輸送する必要もある。即ち、人(例えば、監視、メンテナンス、修理作業等を行う作業員等)や、床上を走行する型の車両・搬送車(以下単に「床上走行車」と呼ぶ)が、軌道下における床上を“床上通路”として通過せざるを得ない。
【0006】
しかしながら、このような状況にて、例えば近年においては、製品である半導体デバイスのコストダウンのためにウエーハの大型化が計画されている。それに伴って、FOUP及びこれを搬送するための軌道やビークルも、従前に比べて大型化されたものを計画する必要がある。このようにビークル、軌道等を大型化する必要が生じても、既存工場を建て替えた上で軌道を新たに敷設することは、困難となる場合が多くなることが予想される。そのような場合には、必然的に天井の高さに制約が生じてしまう。限られた天井高さの制約の中で、軌道やビークルを大型化すると、従来の比較的小型の軌道やビークルを使用していた場合と比較して、床上からビークル通過領域までの高さは、必然的に低くなってしまう。そのため、人や床上走行車が軌道下の床上通路を通過する際に、人や床上走行車、更に該床上走行車上の荷や人と非常に近い上方位置を、ビークルが通過することになりかねない。こうなると、軌道下の床上を通路として利用することが非常に困難になる等といった、これまででは殆ど問題にならなかった新たな問題が発生する。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、工場内において、懸垂型の搬送車が大型化されても、床上通路との良好な関係を保持することを可能ならしめる工場内搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>
本発明の工場内搬送システムは上記課題を解決するために、床に沿った第1方向に延在する第1天井部及び前記第1方向に交差し且つ前記床に沿った第2方向に延在すると共に天井高が前記第1天井部より低い第2天井部を有する天井、並びに前記床を備える工場内に、設けられる工場内搬送システムであって、前記天井から懸吊される形で敷設された軌道と、前記軌道上を走行可能な懸垂型の搬送車とを備え、前記軌道は、前記搬送車の下面の高さが、前記床から高さh1になるように、前記第1天井部に敷設された第1軌道部と、前記下面の高さが、前記高さh1よりも低い高さh2になるように、前記第2天井部に敷設された第2軌道部と、前記第1軌道部及び前記第2軌道部の相互間を前記搬送車が乗り入れ可能となるように連絡する傾斜した連絡軌道部とを有し、当該工場内搬送システムは、前記第2天井部下にあると共に全製造工程のうちの一部を実施するための各エリア内における前記第2軌道部上で、前記搬送車を搬送させる工程内搬送システムと、前記第1天井部下にあると共に前記各エリア間における前記第1軌道部で、前記搬送車を搬送させる工程間搬送システムとが統合されてなり、前記第1軌道部下に、前記工場に係る人及び前記床上を移動可能な移動体が前記工場内を移動するための通路が設けられている。
【0009】
本発明の工場内搬送システムによれば、「工場」は、例えば半導体装置製造工場、液晶装置製造工場等(或いは、そのような工場のうちのクリーンルーム等)の製造工場であり、コンクリートやグレーチングが敷き詰められた床を備える。その天井は、床に沿った水平二方向のうちの一つである第1方向に延在する第1天井部と、水平二方向のうちの他の一つである(例えば第1方向に直交する)第2方向に延在する第2天井部とを有する。ここで特に、天井高については、第2天井部は、第1天井部より低い。
【0010】
工場内搬送システムは、このような工場内に、設けられる。具体的には、天井から懸吊される形で敷設された、典型的にはレールである軌道と、この軌道上を走行可能な、例えばOHT又はOHSである、懸垂型の搬送車とを備える。
その動作時には、天井高の低い方の第2天井部下にある、例えば「ベイ」と呼ばれる各エリア内では、工程内・工程間統合搬送システムによる制御下又は工程内搬送システムによる制御下で、搬送車により例えばFOUP等の被搬送物が第2軌道部上で搬送される。これにより、全製造工程のうちの一部の工程(例えば、露光処理、成膜処理、熱処理等に係る工程)が適宜に且つ順番に実施される。更に、このような工程内搬送と相前後して又は並列に、工程内・工程間統合搬送システムによる制御下又は工程間搬送システムによる制御下で、第1天井部下にあると共に各エリア間における第1軌道部で、搬送車により被搬送物が搬送される。これにより、工程間搬送が適宜に且つ順番に実施される。
【0011】
本発明では特に、第1軌道部は、搬送車の下面の高さが、床から高さh1になるように、第1天井部に敷設されている。ここに搬送車の「下面」とは、基本的に被搬送物を搬送している最中の下面を指し、床に最も近い表面をなす、搬送車の底部の一部又はこれに把持された被搬送物の底部の一部を意味する。更に、第2軌道部は、搬送車の下面の高さが、高さh2(但し、h2<h1)になるように、第2天井部に敷設されている。従って、第1及び第2軌道部間には高低差が生じるが、これら両者間を、傾斜した連絡軌道部が、搬送車が乗り入れ可能となるように連絡している。この際、搬送車の連絡軌道部における走行・搬送については、工程内・工程間統合搬送システムによる制御下、或いは工程内搬送システム及び工程間搬送システムのうちの少なくとも一方による制御下で行われればよい。
【0012】
よって、第1及び第2軌道部間にある高低差が、搬送車の走行の支障とならないようにできる。従って、各エリア内で搬送を受け持つ搬送車の複数のエリア間における相互乗り入れが適宜に実施され、複数の工程を自動的に且つ効率的に実施する環境が構築される。
【0013】
しかも、工場内における「通路」は、搬送車の下面までの高さとして、相対的に高い高さh1が確保されている第1軌道部下に、設けられている。ここに「通路」とは、工場に係る人及び床上を移動可能な移動体が工場内を移動するための通路であり、例えば中央通路或いは主要通路である。より具体的には、工場内で、例えば、監視、メンテナンス、修理作業等を行う工員、事務員等が床上を歩いたり、床上を走行する型の車両・搬送車が床上を走行するための通路である。よって、ここでの高さh1を、相対的に高く、理想的には人の頭頂のみならず、直立した人が上方に掲げた手の先端が余裕を持ってぶつからない程度の高さや、床上搬送車に詰まれた荷が余裕を持ってぶつからない程度の高さや、工場用の各種規格で定められた高さに設定することにより、安心して通過できる通路を実現できる。
【0014】
同時に、通路を設けない又は通常歩行・通常走行し易いような通路を設ける必要の無い或いは必要性の低い、第2軌道下における高さh2を、相対的に低く、具体的には、搬送車が走行可能であり且つ搬送車及び処理装置等間で被搬送物を移載可能であるに必要十分な高さに設定することにより、通路以外における工場内空間を不必要なまでに広く取る必要が無くなる。不必要に大きな工場を立てる必要も無くなる。言い換えれば、工場内スペースの有効利用・有効活用が可能となり、特に、既存の工場内において、大型化されたFOUP及びビークルを新たに導入するような設備新設・増設の際に、著しく有利となる。具体的には、例えば、同一工場内にて、既存の直径300mmウエーハ対応のFOUP及びビークルから、より大型である直径450mmウエーハ対応のFOUP及びビークルへと切り替えることが、工場自体のリフォームを殆ど又は全く伴うことなく、比較的容易にして実施可能となる。
【0015】
以上のように本発明によれば、工場内において、懸垂型の搬送車が大型化されても、床上通路との良好な関係を保持することが可能となる。
【0016】
<2>
本発明の工場内搬送システムの一態様では、前記第2軌道部は、前記床上にて平面的に見て前記各エリア内でループ状になっており、前記各エリアは、前記全製造工程の一部に対応するベイとして構築されており、前記搬送車は、前記ベイ内を巡回又は周回走行可能とされている。
【0017】
この態様によれば、工程内搬送システムによる制御下で、搬送車を第2軌道部にて巡回或いは周回走行させることで、各ベイにて、各ベイが受け持つ工程を効率良く行うことが可能となる。更に、複数のベイ間における工程間移動についても、連絡軌道部を介して、工程間搬送システムによる制御下で、第1軌道部にて搬送車を走行させることで、非常に効率的に実行可能となる。
【0018】
<3>
本発明の工場内搬送システムの他の態様では、前記通路は、前記第1方向に延びると共に前記各エリアを両脇に見る中央通路として構築されており、前記第1軌道部は、前記床上にて平面的に見て前記第1天井部下でループ状になっており、前記搬送車は、前記中央通路内を巡回又は周回走行可能とされている。
【0019】
この態様によれば、工程間搬送システムによる制御下で、搬送車を第1軌道部にて巡回或いは周回走行させることで、例えば、複数のベイ間における搬送車の移動など、工程間における搬送を効率良く行うことが可能となる。
【0020】
<4>
本発明の工場内搬送システムの他の態様では、前記第1軌道部は、前記床からの高さが相異なる二つの平坦部及び該二つの平坦部間を接続する傾斜部を有し、前記通路は、前記二つの平坦部のうち高さの高い方の下に設けられている。
【0021】
この態様によれば、第1軌道部が有する二つの平坦部のうち高さの高い方の下に通路が設けられており、高さの低い方の下には通路が設けられていない。従って、より一層の工場内スペースの有効利用・有効活用が可能となり、既存の工場内において、大型化されたFOUP及びビークルを新たに導入するような設備新設・増設の際に、より一層有利となる。しかも、これらの二つの平坦部間は、傾斜部で接続されており、第1軌道部における搬送車の搬送、即ち工程間搬送については、第1軌道部内における高低差の存在によらずに問題なく実行可能な環境を比較的容易にして構築できる。
【0022】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の工場内搬送システムが設置される各種工場内の天井を示す概念的な斜視図である。
【図2】実施形態の工場内搬送システムで天井に敷設されたレールを示す図式的な斜視図である。
【図3】実施形態の工場内搬送システムでレール上を走行するビークルを、処理装置等と共に示す斜視図である。
【図4】実施形態の工場内搬送システムを、工場及び通路等と共に示す図式的な断面図ある。
【図5】比較例の工場内搬送システムで天井に敷設されたレールを示す図式的な斜視図である。
【図6】実施形態の変形例の工場内搬送システムで天井に敷設されたレールを示す図式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、実施形態に係る工場内搬送システムが設置される各種工場について図1を参照して説明する。以下、工場の一例として半導体製造工場或いは液晶製造工場内に設けられる、「クリーンルーム」を例にとって説明する。なお、クリーンルームは、同一工場建物内に一個又は複数個設けられる。複数のクリーンルームは、工場建物内に、平面的に配列されるのみならず、工場建物の複数階のいずれか一つ又は複数の階に設けられてもよい。その場合には、クリーンルームの天井は、上階の床の裏側(即ち下側)に対応するか、又は最上階の場合には屋根の裏側(即ち下側)に対応する。或いは、クリーンルームを平屋造りとするならば、天井は、工場建物の屋根の裏側(即ち下側)に対応する。
【0026】
図1(a)及び図1(b)に夫々、外観を示すように、実施形態に係る工場内搬送システムが設置されるクリーンルーム1000は、天井高さの高い天井1001と、天井高さの低い天井1002とを有する。出入口1005については、適宜に設けられる。このように、クリーンルーム1000は、いずれの場合にも、中央付近又は端に、水平一方向に長手状に延在する高い天井1001を有している。これにより、工場本体の強度向上、工場内部の使い勝手の向上、効率の良い工程組み、総合的なコストパフォーマンスの向上等の各種利益が得られる。言い換えれば、このような形状・仕様で、規格化・標準化されたクリーンルームが、伝統的に建設されている。後で詳述するように、クリーンルーム内に確保される中央通路は、長手状に延在する高い天井1001に沿って延びるように、高い天井1001の下に位置する。
【0027】
図2において、工場内搬送システムで天井に敷設された、本発明に係る「軌道」の一例であるレールは、第1レール部110、第2レール部120及び連絡レール部130を備える。
【0028】
第1レール部110は、本発明に係る「第1軌道部」の一例を構成しており、工場内の中央通路に沿って、即ち、図1に示した高い天井1001に沿って延在するように天井から懸吊される形で敷設されている。更に、第1レール部110は、細長いループ状に敷設されている。第1レール部110は、その軌道上を、後で詳述する懸垂型のビークルが右周り若しくは左回り又は両周りにて巡回するように構成されている。
【0029】
複数の第2レール部120は夫々、本発明に係る「第2軌道部」の一例を構成しており、夫々が、第1レール部110から(言い換えれば、工場内の中央通路から)これに直交する方向に、即ち、図1に示した低い天井1002の側へ枝葉状に分岐して延在するように、天井から懸吊される形で敷設されている。更に、複数の第2レール部120は夫々、細長いループ状に敷設されている。第2レール部120は、その軌道上を、後で詳述する懸垂型のビークルが右周り若しくは左回り又は両周りにて巡回するように構成されている。なお、第2レール部120は、図中点線で示すような湾曲軌道部120cによって、完全に周回可能なように構成されてもよいし、湾曲軌道部120cなしに、不完全に周回可能なように構成されていてもよい。
【0030】
第1レール部110は、工程間搬送システムのレールであり、複数の第2レール部120は夫々、工程内搬送システム用のレールである。両者間にある高低差に応じて傾斜した連絡レール部130によって、両者は、相互に連絡されている。連絡レール部130は、例えば、数cm〜十数cm或いは数十cmなどの高低差を、ビークル(図3参照)が走行可能な程度の滑らかな傾斜を持って連絡するように構成されている。
【0031】
図3に示すように、第2レール部120には、懸垂型のビークル10が、FOUP20を適宜保持した状態で、矢印ARの方向に搬送可能に且つ適宜に停止可能に取り付けられている。ビークル10は、把持機構を有し、FOUP20を、自らから処理装置201へ移載したり、処理装置201から自らへ移載したりする。処理装置201は、半導体製造装置の一つであり、床200上に、壁200Wにより囲まれたクリーンルーム内に部分的に設置されている。ビークル10は、図2に示した第1レール部110上では、工程間搬送システムの制御下でその搬送動作を行い、図2に示した各第2レール部120上では、各工程内搬送システムの制御下でその搬送動作を行うように構成されている。なお、図2に示した連絡レール部130上における搬送制御は、工程内・工程間統合搬送システムによる制御下、或いは工程内搬送システム工程間搬送システム及び工程内搬送システムの少なくとも一方による制御下で、実行されればよい。
【0032】
図4に示すように、第1レール部110上のビークル10の下面の高さh1は、第2レール部120上のビークル10の下面の高さh2よりも高い。例えば、高さh1は、250cm又はそれ以上に設定され、高さh2は、設定可能高さの下限である245cmにほぼ合致するように設定されている。なお、高い天井1001は、例えば、その床からの高さが5〜8m(メートル)程度である。低い天井1002は、例えば、その床からの高さが、3.5〜5m程度である。
【0033】
高い天井1001の下方には、高い天井1001の延在する方向に沿って、工員、作業員等である人51が通行可能な中央通路100が設けられている。中央通路100に、FOUP20を一時的又は長期的に保管する、本発明の「一時保管装置」或いは「保管装置」の一例である、ストッカー202が設置されている。
【0034】
図1から図4に示した工場内搬送システムによれば、その動作時には、低い天井1002下では、各第2レール部120に対応する「ベイ」と呼ばれる各エリア内で、ビークル10によりFOUP20が搬送される。これにより、例えば、露光処理、成膜処理、熱処理等である各工程が適宜に且つ順番に実施される。このような工程内搬送と相前後して又は並列に、高い天井1001下では、ビークル10によりFOUP20が工程間搬送される。これらの搬送動作によって、FOUPに収容された半導体装置等の装置が最終形態に向けて自動的に製造される。
【0035】
この際、複数の第2レール部120は夫々、ループ状になってベイを構築しており、ビークル10は、ベイ内を巡回又は周回走行するように構成されているので、各ベイにて、各ベイが受け持つ工程を効率良く行える。第1レール部110は、中央通路100内に細長いループ状になっており、ビークル10は、このようなループ内を巡回又は周回走行するように構成されているので、中央通路100内にて、工程間搬送を効率良く行える。
【0036】
本実施形態では特に、第1レール部110は、ビークル10の下面の高さh1が、第2レール部120における高さh2よりも高くなるように構成されている。従って、第1レール部110及び第2レール部120間には高低差が生じるが、これら両者間を、傾斜した連絡レール部130が、ビークル10が乗り入れ可能となるように連絡している。よって、このような高低差は、ビークル10の走行の支障とならない。従って、各ベイ内で搬送を受け持つビークル10の複数のベイ相互間、並びに各ベイ及び中央通路内にある第1レール110間における、相互乗り入れが適宜に実施される。
【0037】
しかも、クリーンルーム1000内における中央通路100は、高さh1が確保されている第1レール部110下に、設けられている。例えば、ここでの高さh1を、250cm又はそれ以上という、直立した人51が上方に掲げた手の先端が動く範囲52が、余裕を持ってビークル10の下面に重ならない程度の高さに設定することで、人51は安心して中央通路100を通過できる。これは、中央通路100における天井高さを要求する各種規格をクリアすることにも繋がる。
【0038】
図5の比較例に示すように、仮に第1レール部110及び第2レール部120を相互に同一の高さとしてレールを構築した場合、仮に第1レール部の高さh1を、ほぼ245cmに設定すると、直立した人51が範囲52内へと上方に掲げた手がぶつかる可能性が生じるが故に、人51は安心して中央通路100を通過できなくなる。これは、中央通路100における天井高さを要求する各種規格をクリアできないことにも繋がる。
【0039】
図2及び図5を参照すると、比較例の構成に比べて、本実施形態の構成は、第1レール部110及び第2レール部120間で高さを変えると共に傾斜した連絡レール部130を導入することで、構築できる。即ち、クリーンルーム1000内を占有する工場内搬送システム全体のスペースを考えた場合には、比較例と本実施形態とでは大差が無い。特に、本実施形態では、中央通路100を設けない第2レール部120における高さh2を、相対的に低く、具体的には、ビークル10が走行可能であり且つビークル10及び処理装置201間でFOUP20を移載可能であるに必要十分な高さに設定することにより、クリーンルーム1000の内部空間を広く取る必要が無くなる。特に、既存のクリーンルーム1000(図1参照)内において、大型化されたFOUP20及びビークル10を新たに導入するような設備新設・増設の際に、著しく有利となる。具体的には、例えば、同一クリーンルーム1000内にて、直径300mmウエーハ対応のFOUP20及びビークル10から、直径450mmウエーハ対応のFOUP20及びビークル10へと切り替えることが、クリーンルーム1000自体のリフォームを殆ど又は全く伴うことなく、比較的容易にして実施可能となる。
【0040】
更に、図2及び図5を参照すると、本実施形態の場合、比較例の構成に比べて、レールの構成に手を加えれば、概ねビークル10が傾斜した連絡レール部130を登坂可能である限り、他の構成に対して殆ど又は全く手を加える必要がないようにも出来る。即ち、既存の工場内搬送システムに対して、実践的な意味で必要最小限の変更を加えることで、上述の如き多大な利益をもたらすシステムを構築できる。
【0041】
本実施形態の変形例について図6を参照して、説明する。ここに図6は、変形例に係る図2と同趣旨の斜視図である。
【0042】
図6に示すように、変形例では、第1レール部110は、床200からの高さが相異なる二つの平坦部110a及び110b、並びにこれらの平坦部110a及び110b間を接続する傾斜レール部230を有する。中央通路100として機能する通路(図4参照)は、これら二つの平坦部110a及び110bのうち高さの高い方である平坦部110aの下に設けられている。よって、本変形例によれば、より一層のクリーンルーム1000内スペースの有効利用・有効活用が可能となり、既存のクリーンルーム1000内において、大型化されたFOUP20及びビークル10を新たに導入するような設備新設・増設の際に、より一層有利となる。
【0043】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う工場内搬送システムもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
10…ビークル、20…FOUP、51…人、100…中央通路、110…第1レール部、120…第2レール部、130…連絡レール部、200…床、201…処理装置、202…ストッカー、230…傾斜レール部、1000…クリーンルーム、1001…高い天井、1002…低い天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に沿った第1方向に延在する第1天井部及び前記第1方向に交差し且つ前記床に沿った第2方向に延在すると共に天井高が前記第1天井部より低い第2天井部を有する天井、並びに前記床を備える工場内に、設けられる工場内搬送システムであって、
前記天井から懸吊される形で敷設された軌道と、
前記軌道上を走行可能な懸垂型の搬送車と
を備え、
前記軌道は、前記搬送車の下面の高さが、前記床から高さh1になるように、前記第1天井部に敷設された第1軌道部と、前記下面の高さが、前記高さh1よりも低い高さh2になるように、前記第2天井部に敷設された第2軌道部と、前記第1軌道部及び前記第2軌道部の相互間を前記搬送車が乗り入れ可能となるように連絡する傾斜した連絡軌道部とを有し、
当該工場内搬送システムは、前記第2天井部下にあると共に全製造工程のうちの一部を実施するための各エリア内における前記第2軌道部上で、前記搬送車を搬送させる工程内搬送システムと、前記第1天井部下にあると共に前記各エリア間における前記第1軌道部で、前記搬送車を搬送させる工程間搬送システムとが統合されてなり、
前記第1軌道部下に、前記工場に係る人及び前記床上を移動可能な移動体が前記工場内を移動するための通路が設けられている
ことを特徴とする工場内搬送システム。
【請求項2】
前記第2軌道部は、前記床上にて平面的に見て前記各エリア内でループ状になっており、前記各エリアは、前記全製造工程の一部に対応するベイとして構築されており、前記搬送車は、前記ベイ内を巡回又は周回走行可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の工場内搬送システム。
【請求項3】
前記通路は、前記第1方向に延びると共に前記各エリアを両脇に見る中央通路として構築されており、前記第1軌道部は、前記床上にて平面的に見て前記第1天井部下でループ状になっており、前記搬送車は、前記中央通路内を巡回又は周回走行可能とされている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の工場内搬送システム。
【請求項4】
前記第1軌道部は、前記床からの高さが相異なる二つの平坦部及び該二つの平坦部間を接続する傾斜部を有し、
前記通路は、前記二つの平坦部のうち高さの高い方の下に設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の工場内搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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