説明

工数算出システム

【課題】整備作業に伴う合計工数の算出をより適切に行うことができる工数算出システムを提供する。
【解決手段】工数算出システム10は、部品単位で設定された作業毎に、他部品との関係における脱着の順番と、脱着作業の標準工数である基本工数のデータと、いくつかの前記脱着作業について、当該脱着作業に伴う付随的作業にかかる標準工数である加算工数のデータとを関連付けて記憶した作業データベース18と、脱着の対象となる対象部品を入力する入力部12と、指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着手順について、前記基本工数と前記加算工数の合計工数を算出する合計工数算出部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の整備作業に伴う合計工数を算出する工数算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のメンテナンスにおいては、工賃を請求するために、メンテナンス作業に伴う工数を特定する必要がある。そして、当該工数を特定するためのシステムも開発されている(特許文献1)。特許文献1では、対象とする作業が複数ある場合、重複する作業の有無を確認し、重複する作業があれば、当該重複する作業の工数を差し引くこととしている(特許文献1の要約)。また、ここにいう工数は、交換又は取付け作業にかかる時間として部品毎に予め設定されている(特許文献1の段落[0005]、[0015])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−219710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1では、交換又は取付け作業にかかる時間として部品毎工数を予め設定しているが、部品によっては、対象となる部品(対象部品)の脱着に至るまでの過程で脱着される部品(関連部品)として脱着されるだけでは取付け時の調整は特に必要ないが、当該部品を対象部品として交換等の作業が行われる場合にだけ調整や点検が必要になる場合がある。また、対象部品の脱着に至るまでの過程で複数の関連部品のうちいずれか1つ又は複数を取り外したときに、当該1つ又は複数の関連部品を取り付けた後に一度だけ調整が必要になる場合がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、上記のような調整や点検の工数は考慮されておらず、工数の特定が十分ではない。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮してなされたものであり、整備作業に伴う合計工数の算出をより適切に行うことができる工数算出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工数算出システムは、装置に取り付けられた部品の脱着作業に伴う合計工数を算出するものであって、部品単位で設定された作業毎に、他部品との関係における脱着の順番と、脱着作業の標準工数である基本工数のデータと、いくつかの前記脱着作業について、当該脱着作業に伴う付随的作業に要する標準工数である加算工数のデータとを関連付けて記憶した作業データベースと、脱着の対象となる対象部品を指定する入力部と、指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着手順について、前記基本工数と前記加算工数の合計工数を算出する合計工数算出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、対象部品の脱着に至るまでの脱着作業に要する基本工数に加え、当該脱着作業に伴う付随的作業に要する加算工数を合計工数に反映することができる。脱着作業に伴う調整や点検等の付随的作業は、作業手順によってその要否が異なる場合があるが、本発明によれば、作業手順に応じた加算工数の加算をすることが可能となる。
【0009】
前記作業データベースは、前記加算工数のデータとして、特定部品を交換したときにのみ発生する付随的作業に要する標準工数である専用加算工数のデータを記憶し、前記合計工数算出部は、前記入力部で指定された前記対象部品が前記特定部品であるとき、前記専用加算工数を前記合計工数に含めてもよい。これにより、特定部品を交換した場合にのみ必要となる付随的作業が存在する場合でも、そのための工数を適切に合計工数に反映することが可能となる。
【0010】
前記作業データベースは、前記加算工数のデータとして、複数の特定部品の脱着作業それぞれに応じて共通して必要となる付加的作業に要する標準工数である共用加算工数のデータを、前記複数の特定部品毎に記憶し、前記合計工数算出部は、指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着作業において、前記複数の特定部品のうち2以上の特定部品の脱着作業を伴うとき、当該2以上の特定部品それぞれに対応する前記共用加算工数のうち最も大きなものを1つだけ前記合計工数に含めてもよい。これにより、例えば、ある部品の交換に伴って2以上の特定部品の脱着(一時的な取外し及びその後の取付け)を要する場合、当該2以上の特定部品の脱着に応じた付随的作業の標準工数を適切に合計工数に反映することができる。また、複数の特定部品のいずれを一時的に取り外しても共通して必要となる作業がある場合、いずれの特定部品の取外しを行うかによって、当該共通して必要となる作業にかかる工数は変化することがある。本発明によれば、そのような場合でも、適切に合計工数を算出可能である。
【0011】
前記合計工数算出部は、指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着手順が複数ある場合、前記合計工数が最小となる脱着手順を選択してもよい。これにより、作業者の経験やスキルに依存することなく、最小となる合計工数を算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象部品の脱着に至るまでの脱着作業に要する基本工数に加え、当該脱着作業に伴う付随的作業に要する加算工数を合計工数に反映することができる。脱着作業に伴う調整や点検等の付随的作業は、作業手順によってその要否が異なる場合があるが、本発明によれば、作業手順に応じた加算工数の加算をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る工数算出システムとしての作業手順案内システムの概略的な構成を示す図である。
【図2】前記作業手順案内システムのモニタに表示される画面の一例を示す図である。
【図3】図2の画面に表示される樹形図に対応する各部品の情報のデータベースを示す図である。
【図4】ドアラッチを交換する脱着手順を示す図である。
【図5】ドアラッチを交換する際にモニタに表示される画面の一例を簡略的に示す図である。
【図6】ドアアウタハンドルを交換する脱着手順を示す図である。
【図7】ドアアウタハンドルを交換する際にモニタに表示される画面の一例を簡略的に示す図である。
【図8】ドアラッチ及びドアアウタハンドルを交換する脱着手順を示す図である。
【図9】ドアラッチ及びドアアウタハンドルを交換する際にモニタに表示される画面の詳細構造の例をモデル化して示す図である。
【図10】前記作業手順案内システムにおいて用いられる作業データベースに記憶されているデータの一例を示す図である。
【図11】前記作業データベースにおける各データの関連付けの一例を示す図である。
【図12】前記作業手順案内システムが行う処理の概要のフローチャートである。
【図13】図12のフローチャートにおいて複数の対象部品と関連部品の組合せの中から最適な組合せを選択する処理の一部に関するフローチャートである。
【図14】図12のフローチャートにおいて複数の対象部品と関連部品の組合せの中から最適な組合せを選択する処理の残りに関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.一実施形態
1.システム構成
図1は、本発明の一実施形態に係る工数算出システムとしての作業手順案内システム10(以下「案内システム10」ともいう。)の概略的な構成を示す図である。本実施形態における案内システム10は、車両のメンテナンスの作業手順を作業者に対して案内するものであり、例えば、車両整備工場に設置されている。案内システム10は、入力部12と、記憶部14と、制御部16と、作業データベース18(以下「作業DB18」という。)と、モニタ20とを備える。
【0015】
入力部12は、キーボード22及びマウス24を有し、作業者の操作に応じて、対象となる整備作業(以下「対象作業Ot」ともいう。)及び当該整備作業の対象となる部品(以下「対象部品Pt」ともいう。)を入力することができる。本実施形態において、対象作業Otは、交換作業であるが、部品の検査、調整、加工、脱着(交換を伴わないもの)、取付け(取外しを伴わないもの)又は取外し(取付けを伴わないもの)を対象作業Otとすることもできる。また、本実施形態においては、対象作業Otを直接入力するように構成されており、以下の説明では、対象部品Ptではなく、対象作業Otを直接入力する形態で説明を展開する。
【0016】
記憶部14は、例えば、不揮発性メモリ及び揮発性メモリを備え、メンテナンスの作業手順を案内するためのプログラム(作業手順案内プログラム)を記憶している。制御部16は、例えば、中央演算装置(CPU)を備え、作業手順{すなわち、対象作業Ot、及び対象作業Otに伴って必要となる作業(以下「関連作業Or」ともいう。)}を作業者に案内する。具体的には、制御部16は、関連作業Orと対象作業Otの説明をモニタ20に表示させる。作業DB18は、制御部16が作業手順を案内する際に必要なデータを記憶している。
【0017】
2.機能の概要
次に、案内システム10の機能について、車両のドア部分の脱着作業の事例を、システム動作手順も含めて簡略的に説明する。
【0018】
図2は、モニタ20に表示される画面の一例としての画面30を示す。図2に示すように、画面30には、LON入力欄32と、対象部品名入力欄34と、樹形図36とが含まれる。
【0019】
LON入力欄32は、作業番号(以下「LON」(Labor Operation Number)という。)を入力する欄であり、対象部品名入力欄34は、対象部品Ptの名称を入力するための欄である(使用方法については後述する。)。
【0020】
樹形図36は、各部品を脱着する順番を示す。樹形図36の最も上流側(図2の左側)の「14TEST01」は、機種毎に割り当てられる番号(機種番号)である。当該機種番号「14TEST01」の下流側に表示された各行(例えば、「COVER, DOOR GRIP LEFT FRONT - 0.1 - 8431A5」)は、部品毎に認定されている対象作業Otの情報である。
【0021】
図3には、樹形図36に対応する各部品の対象作業Otの情報の一例が示されている。図3に示すように、各対象作業Otの情報としては、機種番号と、LONと、標準作業工数(以下「FRT」(Flat Rate Time)という。)と、作業区分と、部品名と、この作業区分での脱着作業の内容を解説した作業説明用テキストと、部品の脱着の状態を周辺部品との兼合いも含めて見易く図示した作業説明用画像とを有する。
【0022】
LONは、部品の脱着作業毎に割り振られる。FRTは、部品の脱着自体又は交換自体にかかる標準的な工数である。作業区分は、脱着(R&I)、検査、調整、加工、取付け、取外し等を示す。
【0023】
実際に行われる作業は、予め全て登録されており、その際、同じ部品であっても作業が違う場合、例えば、対象部品Ptの前から外していった場合と対象部品Ptの後ろから外していった場合とで対象部品Ptの脱着工数が異なる場合、或いは、車体からユニット全体を外した状態と当該ユニットを取り付けたままの状態とで対象部品Ptの脱着工数が異なる場合は、同じLONの後に枝番をつけて(ハイフンを付けて「XXX―X」のように標記)、同じ部品の脱着作業だが作業内容が異なることを標記する。
【0024】
なお、後述する専用加算工数、共用加算工数及び直前作業番号(以下「直前LON」という。)はここでは省略している。
【0025】
図2からわかるように、樹形図36により、各部品を取り外す順番(及びその後の取付けの順番)がわかる。すなわち、ドアラッチ(左前)(LATCH FRONT INSIDE LEFT)を交換するためには、その前にドアガラスサッシュ(左前)(SASH, FRONT DOOR GLASS LEFT)の取外しを要し、ドアガラスサッシュを取り外すためには、その前にインサイドハンドル(左前)(HANDLE, FRONT INSIDE LEFT)の取外しを要し、インサイドハンドルを取り外すためには、その前にドアライニング(左前)(LINING, FRONT DOOR LEFT)の取外しを要し、ドアライニングを取り外すためには、その前にドアグリップカバー(左前)(COVER, DOOR GRIP LEFT FRONT)の取外しを要することがわかる。なお、ここでは、ドアグリップカバーの取外しが最も上流側の作業である。また、以下及び図3〜図9では、「(左前)」については省略して表記する。
【0026】
そして、例えば、対象部品Ptとしてドアラッチを選んだ場合(マウス24によりカーソルを、図2の樹形図36の6行目のドアラッチの行に合わせて当該行を選択した後、実行を行った場合)、案内システム10は、LON=7481A5に至るまでの登録されている枝番を含む全作業ルートを検索して、工数の合計が最小となるルート(作業手順)を判断する。そして、図4に示すように、ドアラッチを交換するための脱着手順として、ドアグリップカバーの取外し、ドアライニングの取外し、インサイドハンドルの取外し及びドアガラスサッシュの取外しを要すると判断する。或いは、ドアラッチ交換後の手順、すなわち、ドアガラスサッシュの取付け、インサイドハンドルの取付け、ドアライニングの取付け及びドアグリップカバーの取付けを併せて判断する。
【0027】
そして、案内システム10は、当該判断結果に基づいて、図5に示すように、関連作業Or及び対象作業Otとしての各脱着作業を案内する(ここでは、ドアラッチの脱着作業を案内することで、ドアラッチの交換を案内している。)。
【0028】
図5に示すように、案内システム10のモニタ20には、各脱着作業についての作業説明用の画像及びテキストが作業順に表示される。図5では、画面をスクロールさせることで全ての脱着作業を表示するが、マウス24を操作して部品毎に画面を切り替えてもよい。
【0029】
また、対象部品Ptとしてドアアウタハンドルを選んだ場合(マウス24によりカーソルを、図2の樹形図36の8行目のドアアウタハンドルの行に合わせて当該行を選択した後、実行を行った場合)、案内システム10は、LON=818110に至るまでの登録されている枝番を含む全作業ルートを検索して、工数の合計が最小となるルートを判断する。そして、図6に示すように、ドアアウタハンドルの交換をするための脱着手順として、ドアグリップカバーの取外し、ドアライニングの取外し及びプラスチックカバーの取外しを要すると判断する。そして、案内システム10は、当該判断結果に基づいて、図7に示すように、関連作業Or及び対象作業Otとしての各脱着作業を案内する(ここでは、ドアアウタハンドルの脱着作業を案内することで、ドアアウタハンドルの交換を案内している。)。
【0030】
上記では、個別部品としてドアラッチを選んだ場合(図4及び図5)及びドアアウタハンドルを選んだ場合(図6及び図7)を説明したが、案内システム10では、複数の部品を同時に選択することもできる。
【0031】
例えば、対象部品Ptとしてドアラッチとドアアウタハンドルを選んだ場合(例えば、マウス24によりカーソルをドアラッチの行に合わせて当該行を選択した後、カーソルをアウタハンドルの行に合わせて当該行を選択し、実行を行った場合)、案内システム10は、ドアラッチとドアアウタハンドルの着脱を1回の作業の最小の標準工数で行う手順を案内する。具体的には、図8に示すように、ドアラッチの交換をするための脱着手順として、ドアグリップカバーの取外し、ドアライニングの取外し、インサイドハンドルの取外し及びドアガラスサッシュの取外しを要すると判断する。さらに、ドアアウタハンドルの交換をするための脱着手順として、ドアグリップカバーの取外し、ドアライニングの取外し及びプラスチックカバーの取外しを要すると判断する。また、一連の作業の合計工数が最小となる脱着手順を算出することにより、結果として、重複する関連作業Orとして、ドアグリップカバーの取外し及びドアライニングの取外しがあることを判定し、図8に示すように、両作業が一連の作業手順で行える最小工数の脱着作業を判定する。
【0032】
そして、案内システム10は、上記判定結果に基づいて、図9に示すように、関連作業Or及び対象作業Otとしての各脱着作業を案内する。
【0033】
3.作業DB18のより詳細な構成
図10は、作業DB18に記憶されているデータの詳細構造の例をわかり易く説明するために、モデル化して示している。図10に示すように、作業DB18は、機種番号のデータ、LON(作業番号)のデータと、FRT(標準作業工数)のデータと、専用加算工数のデータと、共用加算工数のデータと、直前作業番号(以下「直前LON」という。)のデータと、部品名のデータと、作業の説明のデータとを有する。
【0034】
LONは、部品の脱着作業毎に割り振られる番号である。本実施形態では、同等のLONについては、前述のように、枝番作業としてハイフンと数字を付加して区別する(例えば、3、3−1、3−2)。ここでいう同等のLONとは、同一の部品の脱着ではあるが、その脱着手順やFRT、専用加算工数又は共用加算工数が異なるものを指す。例えば、同じ部品であっても、車両の前方から他部品を取り外していって当該部品に到達する場合と、車両の後方から他部品を取り外していって当該部品に到達する場合の両方がある場合、同等のLONが用いられる。また、ある部品が取り付けられているユニット全体を車体から取り外して当該部品を取り外す場合と、ユニット全体は車体に取り付けたままで当該部品に関連する部品のみ順に取り外していく場合の両方がある場合も、同等のLONが用いられる。
【0035】
FRTは、部品の脱着自体又は交換自体にかかる標準的な工数である。上記のように、部品の脱着は、対象作業Ot前の取外しと対象作業Ot後の取付けの両方を含むため、FRTは、対象作業Ot前の取外しの標準工数と対象作業Ot後の取付けの標準工数を合わせたものである。但し、対象作業Ot前の取外しと対象作業Ot後の取付けのいずれか一方しか必要としない対象作業Otが存在する場合、両者の標準工数を分けておき、その一方のみを用いることもできる。
【0036】
専用加算工数及び共用加算工数は、加算工数の一種である。加算工数とは、部品の脱着自体又は交換自体に伴う点検や調整等の付随的作業にかかる標準工数である。
【0037】
専用加算工数は、特定部品を交換したときにのみ発生する付随的作業にかかる標準工数である。当該特定部品の脱着(取り外した部品を交換なしにそのまま取り付ける行為)、すなわち、他の部品の脱着のための途中の工程としての脱着を行っただけでは専用加算工数は発生しない。専用加算工数を発生させる交換作業としては、例えば、オルタネータベルトの交換があり、当該オルタネータベルトの交換に伴って必要となるオルタネータベルトの点検にかかる工数が専用加算工数となる。
【0038】
共用加算工数は、複数の特定部品の脱着作業それぞれに応じて必要となる付随的作業にかかる標準工数である。当該特定部品のいずれかを脱着しただけでも必要となるため当該特定部品の取外しが作業工程の途中にあった場合(すなわち、当該特定部品の取外しが関連作業Orであった場合)も共用加算工数が発生する。但し、選択された作業ルート中に、同じ対象の共用加算工数が複数存在する場合には、1つのみ加算して他は「0」として扱う。
【0039】
上記共通する作業としては、例えば、クラッチスイッチの調整や、オートマチック・トランスミッション・フルード(ATフルード)の補充がある。脱着に伴ってクラッチスイッチの調整が必要となる部品としては、例えば、クラッチペダル、多板クラッチ、クラッチスイッチ自体がある。また、脱着に伴ってATフルードの補充が必要となる部品としては、例えば、トルクコンバータ、又はその内部に設けられたタービン、ステータ及びポンプがある。なお、後述するように、共用加算工数は、いずれの特定部品について脱着作業が行われたかにより変化することがある。
【0040】
直前LONは、各作業の直前に取外しを行う部品(直前部品)のLONである。直前LONを用いることにより、図11に示すように、各LONを樹形構造で関連付ける。これにより、図2の樹形図36のような表示を行うことが可能となる。
【0041】
図10及び図11の例では、例えば、LON4(部品Dの取外し)の直前にはLON3(部品Cの取外し)を行う必要があり、LON3(部品Cの取外し)の直前にはLON2(部品Bの取外し)を行う必要があり、LON2(部品Bの取外し)の直前にはLON1(部品Aの取外し)を行う必要があることを示している。
【0042】
前述のように、実際に行われる全ての作業は直前LONとの関係を含めて、作業DB18の作成者(データ入力者)が行う。換言すると、図11中、左側の部品は、全体の上流側(より先に取り外す部品)を示し、右側の部品は下流側(より後に取り外す部品)を示す。従って、図11の例では、LON1(部品A)とLON11(部品K)は、最初に取外しが行われる部品である。なお、図11では、各LONの右側の括弧内において、左から部品名、FRT及び共用加算工数(存在する場合)又は専用加算工数(存在する場合)を示している。
【0043】
部品名は、当該作業での脱着又は交換の対象となる部品名を示し、例えば、部品名がエンジンであれば、エンジンの脱着又は交換を示す。
【0044】
作業の説明は、図3のような作業説明用テキストと作業説明用画像を含む。例えば、ドアパネルの取外し(脱着)であれば、インナーハンドル固定用ねじの取外し、パワーウインドウスイッチコネクタの取外し、グリップベースからのねじの取外し等の作業手順を説明する文字と画像を含む。なお、図10では、作業の説明のデータの具体的な内容の記載や、作業区分(図3参照)は省略している。
【0045】
4.作業手順案内システムが行う処理
次に、本実施形態の作業手順案内システム10が行う処理について説明する。以下に述べる処理は、制御部16が、記憶部14に記憶されている作業手順案内プログラムを実行することで実施される。
【0046】
図12には、本実施形態の案内システム10が行う処理の概要のフローチャートが示されている。
【0047】
ステップS1において、対象部品Ptの対象作業Ot(LON)を選択する。すなわち、作業手順案内プログラムが起動した状態において、制御部16は、上述した図2の画面30のような画面をモニタ20に表示させる。画面30の上部には、LONを入力するためのLON入力欄32と、対象部品Ptの名称を入力するための対象部品名入力欄34とが表示される。対象作業OtのLONをLON入力欄32に入力された後、画面中の図示しない実行ボタンのクリック等に伴って実行をすると、当該LON及びこれに対応する各種情報が画面中央に表示される。また、対象部品Ptの名称を対象部品名入力欄34に入力して実行をすると、当該対象部品Pt及びこれに対応する各種情報が画面中央に表示される。なお、入力された名称が作業DB内に存在しない場合、入力された名称に最も近い部品についての情報が表示される。また、画面は、上下にスクロール可能である。
【0048】
画面中央に表示される各種情報は、機種番号、部品名、FRT、共用加算工数(存在する場合)及び専用加算工数(存在する場合)、LONを含み、これらが樹形図として表示される(図2参照)。なお、下流側の各部品等の情報は、初期画面では表示せず、上流側の各部品等の表示にカーソルを合わせた状態でマウス24の左ボタンをクリックすることにより展開表示させてもよい。この状態において、作業者は、入力部12を用いて対象部品Ptの対象作業Otを選択する。例えば、マウス24を操作して対象作業Otの行にカーソルを合わせて当該行を選択する。本実施形態では、上記方法を繰り返すことにより、複数の対象作業Otを入力することができる。対象作業Otの入力が終了した状態で、マウス24の左ボタンをダブルクリックすると、選択の終了を問うメッセージとOKボタンが表示され、OKボタンを押すとステップS2に進み、作業案内が実行される。
【0049】
ステップS2において、制御部16は、ステップS1で選択された対象作業Otと同等の作業(以下ではこれらをまとめて対象作業Otと称する。)を確認すると共に、対象作業Otに伴って必要となる関連作業Orの組合せを全て確認する。例えば、図11の例において、部品Cの脱着作業(LON3)が選択された場合、同じ部品Cの他の脱着作業(すなわち、枝番が付された作業)のLONを全て選択する。次に、この選択した全てのLONを基準にして、これらのLONに至る全ての組合せ手順を作成する。本実施形態では、2つの組合せが作成されており、第1の組合せは、対象作業OtとしてLON3を、関連作業OrとしてLON1及びLON2を有する組合せである。第2の組合せは、対象作業OtとしてLON3−1を、関連作業OrとしてLON1及びLON7を有する組合せである。
【0050】
また、ステップS1で複数の対象作業Otが選択されていた場合、制御部16は、各対象作業Otに伴って必要な関連作業Orと各対象作業Otの組合せを全て確認する。例えば、図11の例において、LON3とLON10が選択された場合、LON3はLON3−1と同等であり、LON10はLON10−1と同等である。従って、制御部16は、対象作業Otと関連作業Orの組合せとして次の4つの組合せがあると判定する。
【0051】
すなわち、第1の組合せは、対象作業OtとしてLON3及びLON10を、関連作業OrとしてLON1、LON2及びLON9を備える組合せである。第2の組合せは、対象作業OtとしてLON3−1及びLON10を、関連作業OrとしてLON1、LON7及びLON9を有する組合せである。第3の組合せは、対象作業OtとしてLON3及びLON10−1を、関連作業OrとしてLON1、LON2、LON11及びLON12を有する組合せである。第4の組合せは、対象作業OtとしてLON3−1及びLON10−1を、関連作業OrとしてLON1、LON7、LON11及びLON12を有する組合せである。
【0052】
図12のステップS3において、制御部16は、ステップS2で確認した対象作業Otと関連作業Orの組合せが複数であるか否かを判定する。対象作業Otと関連作業Orの組合せが複数である場合(S3:YES)、ステップS4に進む。対象作業Otと関連作業Orの組合せが複数でない場合(S3:NO)、ステップS5に進む。
【0053】
ステップS4において、制御部16は、複数の対象作業Otと関連作業Orの組合せの中から最適な組合せを選択する。ここにいう「最適な組合せ」とは、後述する合計工数MHtotal[分]が最小であること等、所定の条件を満たす組合せを指す。
【0054】
図13及び図14には、複数の対象作業Ot及び関連作業Orの組合せの中から最適な組合せを選択するフローチャート(図12のS4)が示されている。複数の組合せの1つを選択した上で、ステップS11において、制御部16は、共用加算工数を判定する。具体的には、選択された対象作業Otと関連作業Orの組合せに含まれる対象作業Otと関連作業OrのLONの中から共用加算工数を有するものを探索する。そして、共用加算工数を有するLONが複数ある場合、各LONが同等の部品を対象としているか否かを判定する。各LONが同等の部品を対象としているか否かは、例えば、各LONに共用加算工数の識別子を付しておくことで判定することができる。
【0055】
共用加算工数を有する複数のLONが同等の部品を対象としている場合、最も大きい共用加算工数を有効とし、その他の共用加算工数はゼロ[分]とする。最も大きい共用加算工数を有するLONが複数ある場合、制御部16が任意に選択したもの1つを有効とし、その他はゼロ[分]とする。例えば、図10及び図11の例であれば、LON2の共用加算工数は5[分]であり、LON3及びLON4の共用加算工数は10[分]である。このため、制御部16は、LON3及びLON4の一方の共用加算工数を有効とし、LON3及びLON4の他方並びにLON2の共用加算工数をゼロとする。なお、実際は、共用加算工数は、同じ場合が多く、同一ルート中に複数ある場合は、1つだけ加算して後は「0」として扱う場合がほとんどである。
【0056】
図13のステップS12において、制御部16は、対象作業Otと同等の関連作業Orが、選択された対象作業Otと関連作業Orの組合せ内に存在するか否かを判定する。
【0057】
対象作業Otと同等の関連作業Orが組合せ内に存在しない場合(S12:NO)、ステップS14に進む。対象作業Otと同等の関連作業Orが組合せ内に存在する場合(S12:YES)、ステップS13において、当該関連作業Orよりも対象作業OtのFRTを優先する。換言すると、制御部16は、対象作業OtのFRTを有効とし、関連作業OrのFRTをゼロ[分]とする。ここでいう「FRTを有効とする」とは、後述するステップS19において、FRTの値(図10)をそのまま合計工数MHtotalに加算することを意味する。
【0058】
ステップS14において、制御部16は、互いに同等の関連作業Orであって対象作業Otと同等でないものが、選択された対象作業Otと関連作業Orの組合せ内に複数存在するか否かを判定する。当該関連作業Orが組合せ内に複数存在しない場合(S14:NO)、ステップS18に進む。当該関連作業Orが組合せ内に複数存在する場合(S14:YES)、ステップS15に進む。例えば、図10及び図11の例において、対象作業OtとしてLON4とLON8が選択されている場合、関連作業Orとして、互いに同等のLON3とLON3−1が存在する。この場合、ステップS14はYESとなる。
【0059】
ステップS15において、制御部16は、互いに同等の関連作業Orであって対象作業Otと同等でない複数の関連作業OrのうちFRTが最小のものが複数存在するか否かを判定する。当該関連作業Orが複数存在する場合(S15:YES)、ステップS16において、制御部16は、上流側の関連作業OrのFRTを有効とし、その他の関連作業OrのFRTをゼロ[分]とする。当該関連作業Orが複数存在しない場合(S15:NO)、ステップS17において、制御部16は、FRTが最小の関連作業OrのFRTを有効とし、その他の関連作業OrのFRTをゼロ[分]とする。例えば、図10及び図11の例において、対象作業OtとしてLON4とLON8が選択されている場合、関連作業Orとして、互いに同等のLON3とLON3−1が存在し、LON3のFRTが10[分]であるのに対し、LON3−1のFRTは5[分]である。この場合、LON3、LON3−1のFRTは異なるので、ステップS15はNOとなる。そして、ステップS17において、LON3−1のFRTを有効とし、LON3のFRTをゼロ[分]とする。
【0060】
ステップS18において、制御部16は、専用加算工数を判定する。具体的には、選択された対象作業Otと関連作業Orの組合せに含まれる関連作業OrのLONの中から専用加算工数を有するものを探索する。そして、関連作業OrのLONに対応する専用加算工数をゼロ[分]とする。なお、対象作業OtのLONに対応する専用加算工数は、そのまま有効とする。
【0061】
ステップS19において、制御部16は、ステップS11〜S18の結果を用いて合計工数MHtotalを算出する。合計工数MHtotalは、FRT、共用加算工数(有効なもの)及び専用加算工数(有効なもの)の合計である。
【0062】
ステップS20において、制御部16は、対象作業Otと関連作業Orの組合せの全てについて合計工数MHtotalが算出されたかどうかを判定する。合計工数MHtotalが算出されていない組合せがある場合(S20:NO)、ステップS11に戻り、合計工数MHtotalが算出されていない組合せの1つについて合計工数MHtotalを算出する。全ての組合せについて合計工数MHtotalを算出した場合(S20:YES)、図14のステップS21に進む。
【0063】
図14のステップS21において、制御部16は、対象作業Otと関連作業Orの組合せのうち合計工数MHtotalが最小のものが1つであるか否かを判定する。当該組合せが1つである場合(S21:YES)、ステップS22において、制御部16は、当該組合せを最適な組合せとして選択する。合計工数MHtotalが最小の組合せが複数存在する場合(S21:NO)、ステップS23において、作業者優先LONを他よりも多く含む組合せが存在するか否かを判定する。作業者優先LONとは、作業者がマウス24を用いて実際に選択したLONである。例えば、作業者が、対象作業OtとしてLON3−1を選択した場合、LON3−1は作業者優先LONであり、LON3−1と同等のLON3は、作業者優先LONではない。
【0064】
作業者優先LONを他よりも多く含む組合せが存在する場合(S23:YES)、ステップS24に進み、当該組合せが存在しない場合(すなわち、全ての組合せが同じ数の作業者優先LONを有する場合)(S23:NO)、ステップS26に進む。
【0065】
ステップS24において、制御部16は、作業者優先LONに基づいて、合計工数MHtotalが最小となる複数の組合せの中から最適な組合せを選択できるか否かを判定する。当該判定は、例えば、次のように行う。すなわち、合計工数MHtotalが最小となる複数の組合せのうち、作業者優先LONを最も多く含むものが1つであるか否かを判定する。当該組合せが1つである場合、当該組合せを最適な組合せとして選択可能である。また、合計工数MHtotalが最小となる複数の組合せのうち、作業者優先LONを最も多く含むものが複数存在する場合、作業者優先LONのうち最も小さい枝番のLONを含む組合せが1つであるか否かを判定する(枝番なしは、枝番が0であるものとして取り扱う。)。当該組合せが1つである場合、当該組合せを最適な組合せとして選択可能である。さらに、作業者優先LONのうち最も小さい枝番のLONを含む組合せが複数存在する場合、モニタ20の表示画面(例えば、図2)のうち最も上位に位置する作業者優先LONを最も多く含む組合せが1つであるか否かを判定する。当該組合せが1つである場合、当該組合せを最適な組合せとして選択可能である。
【0066】
作業者優先LONに基づいて最適な組合せを選択できる場合(S24:YES)、ステップS25において、制御部16は、作業者優先LONに応じて最適な組合せを選択する。作業者優先LONに基づいても最適な組合せを選択できない場合(S24:NO)、ステップS26に進む。
【0067】
ステップS26において、制御部16は、システム優先作業番号(以下「システム優先LON」と称する。)に基づいて、合計工数MHtotalが最小となる複数の組合せの中から最適な組合せを選択できるか否かを判定する。システム優先LONは、案内システム10が優先的に用いるLONとして事前に記憶部14に記憶されているものである。ステップS26の判定は、作業者優先LONをシステム優先LONに置き換えた上で、ステップS24と同様の処理を行うことができる。
【0068】
システム優先LONに基づいて最適な組合せを選択できる場合(S26:YES)、ステップS27において、制御部16は、システム優先LONに応じて最適な組合せを選択する。システム優先LONに基づいても最適な組合せを選択できない場合(S26:NO)、ステップS28において、制御部16は、合計工数MHtotalが最小となる複数の組合せの中から任意の組合せを最適な組合せとして選択する。
【0069】
図12に戻り、ステップS5において、制御部16は、ステップS2〜S4で特定した対象作業Otと関連作業Orの組合せを用いて作業案内を行う。すなわち、対象作業Otと関連作業Orの組合せが1つである場合(S3:NO)、当該組合せを用いて作業案内を行う。例えば、対象作業OtがLON5及びLON7である場合、部品A(取外し)→B(取外し)→E(取外し)→G(取外し)→G(交換部品の調整/専用加算工数、取付け)→E(交換部品の取付け)→B(取付け)→A(取付け)の順に対象作業Ot(部品E、G)及び関連作業Or(部品A、B)を案内する。
【0070】
また、対象作業Otと関連作業Orの組合せが複数ある場合(S3:YES)、ステップS4で選択した最適な組合せを用いて作業案内を行う。例えば、対象作業OtがLON3及びLON7である場合、対象作業Otと関連作業Orの組合せとしては、次の2つがある。第1の組合せは、対象作業OtとしてLON3及びLON7を、関連作業OrとしてLON1及びLON2を有する組合せである。第2の組合せは、対象作業OtとしてLON3−1及びLON7を、関連作業OrとしてLON1のみを有する組合せである。
【0071】
第1の組合せの合計工数MHtotalは、50[分](=LON1のFRT10[分]+LON2のFRT10[分]+LON3のFRT10[分]+LON3の共用加算工数10[分]+LON7のFRT5[分]+LON7の専用加算工数5[分])である。第2の組合せの合計工数MHtotalは、25[分](=LON1のFRT10[分]+LON7のFRT5[分]+LON7の専用加算工数5[分]+LON3−1のFRT5[分])である。従って、第1の組合せよりも第2の組合せの合計工数MHtotalの方が小さい。この場合、第2の組合せを最適な組合せとして用い、部品A(取外し)→G(取外し)→C(取外し)→C(交換部品の取付け)→G(交換部品の調整/専用加算工数、取付け)→A(取付け)の順に対象作業Ot(LON3、LON7)及び関連作業Or(LON1)を案内する。
【0072】
作業案内としては、例えば、モニタ20の画面左側に関連作業Orと対象作業Otの項目を作業順に表示するとともに、その他の画面に各関連作業Or及び対象作業Otの詳細説明を画像と共にスクロール表示することができる。或いは、関連作業Or及び対象作業Ot毎に画面を切り替えて詳細説明を表示することもできる。いずれの場合も、各作業までのFRTの合計と、各作業に実際にかかった工数の合計とを表示する。さらに、制御部16は、合計工数MHtotalに基づく工賃を算出し、合計工数MHtotalと併せて出力する。
【0073】
5.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、対象作業Ot自体及び関連作業Or自体に要する標準工数であるFRTに加え、当該対象作業Ot又は当該関連作業Orに伴う付随的作業に要する加算工数を合計工数MHtotalに反映することができる。脱着作業に伴う調整や点検等の付随的作業は、作業手順によってその要否が異なる場合があるが、本実施形態によれば、作業手順に応じた加算工数の加算をすることが可能となる。
【0074】
本実施形態において、作業DB18は、特定部品(第1特定部品)を交換したときにのみ発生する付随的作業にかかる専用加算工数のデータを記憶し、制御部16は、入力部12で指定された対象作業Otが前記第1特定部品の交換作業であるとき、専用加算工数を合計工数MHtotalに含める。これにより、第1特定部品を交換した場合にのみ必要となる付随的作業が存在する場合でも、そのための標準工数を適切に合計工数MHtotalに反映することが可能となる。
【0075】
本実施形態において、作業DB18は、複数の特定部品(第2特定部品)(例えば、図11の部品B、C、D)の脱着作業それぞれに応じて共通して必要となる付加的作業の工数である共用加算工数のデータを、当該第2特定部品毎に記憶し、制御部16は、対象作業Ot又は関連作業Orが前記第2特定部品のうち2以上の第2特定部品の脱着作業を伴うとき、当該2以上の第2特定部品それぞれに対応する共用加算工数のうち最も大きなものを1つだけ合計工数MHtotalに含める(図13のS11、S19)。
【0076】
これにより、例えば、ある部品の交換に伴って2以上の第2特定部品の脱着(一時的な取外し及びその後の取付け)を要する場合、当該2以上の第2特定部品の脱着に応じた付随的作業の標準工数を適切に合計工数MHtotalに反映することができる。また、複数の第2特定部品のいずれを一時的に取り外しても共通して必要となる作業がある場合、いずれの特定部品を行うかによって、当該共通して必要となる作業にかかる工数は変化することがある。本実施形態によれば、そのような場合でも、適切に合計工数MHtotalを算出可能である。
【0077】
本実施形態において、制御部16は、対象作業Otと関連作業Orの組合せが複数ある場合、合計工数MHtotalが最小となる組合せを選択する。これにより、作業者の経験やスキルに依存することなく、最小となる合計工数MHtotalを算出することができる。
【0078】
B.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す構成を採ることができる。
【0079】
上記実施形態では、対象部品Ptの指定に当たって、対象部品Ptの対象作業Otを入力するようにしているが、各部品と作業をデータとして紐付けしておくことにより、対象部品Ptを直接入力するようにしてもよい。また、案内システム10を車両整備工場に設置したが、これに限らず、車両の販売店、車両メンテナンスの教育機関等、その他の場所に設置してもよい。さらに、サーバにデータを集約して各端末から当該データを取得して操作に用いるネットワークとして構成してもよい。
【0080】
上記実施形態では、対象作業Ot及び関連作業Orの案内をモニタ20に表示したが、これに限らず、スピーカにより音声出力してもよい。
【0081】
上記実施形態では、対象作業Ot及び関連作業Orを脱着又は交換のみとしたが、それ以外の作業{例えば、部品の検査、調整、加工、取付け(取外しを伴わないもの)又は取外し(取付けを伴わないもの)}を対象作業Ot及び関連作業Orに含めてもよい。この場合、例えば、モニタ20に表示されている樹形図中の部品(対象作業Ot)をマウス24でダブルクリックすると、作業内容{部品の交換、検査、調整、加工、脱着(交換を伴わないもの)、取付け(取外しを伴わないもの)及び取外し(取付けを伴わないもの)の少なくとも1つ}を選択可能な選択画面を表示し、キーボード22又はマウス24を用いて作業内容を選択可能とすることができる。また、各作業内容のFRT、共用加算工数及び専用加算工数は、予め作業DB18に記憶しておけばよい。
【0082】
上記実施形態では、関連作業Orとして、対象作業Ot前の関連部品Prの取外しと対象作業Ot後の関連部品Prの取付けの両方を案内したが、対象作業Ot前の関連部品Prの取外しのみを案内してもよい。同様に、上記実施形態では、関連作業OrのFRT、共用加算工数及び専用加算工数として、対象作業Ot前の関連部品Prの取外しの工数と対象作業Ot後の関連部品Prの取付けの工数の両方を考慮したが、対象作業Ot前の関連部品Prの取外しの工数のみを考慮してもよい。
【0083】
上記実施形態では、対象部品Ptと関連部品Prの組合せを単位とする合計工数MHtotalを判断基準に用いたが、関連部品Prのみの組合せを単位とすることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
10…作業手順案内システム 12…入力部
14…記憶部 16…制御部
18…作業DB 20…モニタ
22…キーボード 24…マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に取り付けられた部品の脱着作業に伴う合計工数を算出する工数算出システムであって、
部品単位で設定された作業毎に、他部品との関係における脱着の順番と、脱着作業の標準工数である基本工数のデータと、いくつかの前記脱着作業について、当該脱着作業に伴う付随的作業に要する標準工数である加算工数のデータとを関連付けて記憶した作業データベースと、
脱着の対象となる対象部品を指定する入力部と、
指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着手順について、前記基本工数と前記加算工数の合計工数を算出する合計工数算出部と
を備えることを特徴とする工数算出システム。
【請求項2】
請求項1記載の工数算出システムにおいて、
前記作業データベースは、前記加算工数のデータとして、特定部品を交換したときにのみ発生する付随的作業に要する標準工数である専用加算工数のデータを記憶し、
前記合計工数算出部は、前記入力部で指定された前記対象部品が前記特定部品であるとき、前記専用加算工数を前記合計工数に含める
ことを特徴とする工数算出システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の工数算出システムにおいて、
前記作業データベースは、前記加算工数のデータとして、複数の特定部品の脱着作業それぞれに応じて必要となる付加的作業に要する標準工数である共用加算工数のデータを、前記複数の特定部品毎に記憶し、
前記合計工数算出部は、指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着手順において、前記複数の特定部品のうち2以上の特定部品の脱着作業を伴うとき、当該2以上の特定部品それぞれに対応する前記共用加算工数のうち最も大きなものを1つだけ前記合計工数に含める
ことを特徴とする工数算出システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の工数算出システムにおいて、
前記合計工数算出部は、指定された前記対象部品の脱着に至るまでの脱着手順が複数ある場合、前記合計工数が最小となる脱着手順を選択する
ことを特徴とする工数算出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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