説明

工業ブラシの製造方法

【課題】本発明は、ワーク表面を洗浄または研磨する工業ブラシの製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明のブラシ毛は、最初、互いに重ならないように並べられる。次に、前記ブラシ毛の上または下には、前記ブラシ毛の並び方向に対して、少なくとも一列の溶着部によって互いのブラシ毛が接着される。前記溶着部は、前記ブラシ毛の上側または下側、あるいは上および下の両側で溶着するようにすることもできる。また、前記溶着部は、前記ブラシ毛の端部のいずれかに一列、両端部にそれぞれ一列ずつ、前記両端部および中央の三列、あるいは、これらを任意に組み合わせて設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク表面を洗浄または研磨する工業ブラシの製造方法に関するものである。本発明は、特に、いろいろな形状あるいは大きさのワーク表面の隅々を均等に洗浄または研磨する工業用ブラシの製造方法に関するものであり、ブラシを自動または半自動で組み立てができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
現在、チャネルブラシあるいはねじりブラシの製造方法は、ブラシ毛素材が所定の寸法に切断され、所定の製造機にセッティングされた後、スイッチを押すことで、ピッカーでブラシ毛が自動的に送られ、ブラシが作製された。また、チャネルブラシは、ブラシ毛を所定寸法に切断し、そのブラシ毛の束をチャネル上に載置して、芯線を人手でチャネル内に押し込み、特に、親指で押し込むようにしていた。前記ブラシ作製方法は、自動機により作製する場合、同じ種類のブラシを大量に製造することができるが、ユーザが所望する形状・構造のワークを洗浄または研磨するブラシを作製しようとすると、ブラシの毛量、細さ等によって、不良品がでる。工業用ブラシ作製方法は、多品種少量生産であるため、全自動機とすることが困難であった。
【0003】
特開平10−023927号公報に記載されている導電ブラシは、列する複数の導電性のブラシ毛の一方側を保持する保持部を備え、前記導電性ブラシの端部側のブラシ毛の長さを、他の部分のブラシ毛よりも短くしている。前記導電性ブラシは、剥離シート上でブラシ毛が保持されているため、外力がかかり難くなって脱落が防止されるとともに、他の部位のブラシ毛にも外力がかかり難くなり、ブラシ毛の形態が保持される。さらに、前記ブラシ毛は、切断加工に際して、ブラシ毛が剥離シート上にあるために、切断時に、ブラシ毛が逃げることなく、簡易に、安定した切断形状を維持することができる。
【特許文献1】特開平10−023927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ねじりブラシは、ブラシ毛の束をねじりブラシの芯線の間に手で並べてからねじっている。前記作業は、時間がかかり、量産に向いていない。また、前記チャネルブラシは、チャネル内にブラシ毛と芯線を押し込む際に人手が必要であり、自動化ができない理由になっている。
【0005】
以上のような課題を解決するために、本発明は、人手をできる限り少なくするとともに、ブラシ毛の密度を均一にすることができる工業ブラシの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
第1発明は、ワーク表面を洗浄または研磨する工業ブラシの製造方法であり、ブラシ毛を並べ、前記ブラシ毛の上および/または下を前記並び方向に対して互いに接着された溶着部を設け、前記互いに接着されたブラシ毛から所望の形状のブラシにすることを特徴とする。
【0007】
(第2発明)
第2発明において、第1発明の溶着部は、接着剤、熱溶着、粘着テープの内のいずれかであることを特徴とする。
【0008】
(第3発明)
第3発明において、第1発明または第2発明の溶着部は、前記接着剤、熱溶着、粘着テープのいずれかを組み合わせて使用することを特徴とする。
【0009】
(第4発明)
第4発明において、第1発明から第3発明のブラシ毛は、合成樹脂、金属、動植物、およびこれらの混毛のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブラシ毛がほぼ均等間隔に並べられた後、ブラシ毛の長さ方向に直角(並べられる方向)に接着剤、熱溶着、粘着テープ等によって少なくとも一部を連続するように接続されているため、ねじりブラシ、チャネルブラシ等の作製を機械化することが容易になる。
【0011】
本発明によれば、ブラシ毛がほぼ均等間隔に配列されるため、密度に変化がなく、ブラシ毛にむらのない均質な工業用ブラシを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1発明)
第1発明の洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法は、いろいろな形状あるいは大きさのワーク表面を洗浄または研磨する工業用ブラシの製造方法である。ブラシ毛は、たとえば、一列または複数段にほぼ均等に並べられる。次に、前記ブラシ毛の上または下には、前記ブラシ毛の並び方向(ブラシ毛の長さ方向に対して直角方向)に対して、少なくとも一列の溶着部によって互いのブラシ毛が接着される。前記溶着部は、前記ブラシ毛の上側または下側、あるいは上および下の両側で溶着するようにすることもできる。また、前記溶着部は、前記ブラシ毛の端部のいずれかに一列、両端部にそれぞれ一列ずつ、前記両端部および中央の三列、あるいは、これらを任意に組み合わせて設けることができる。
【0013】
前記ほぼ均一に並べられ、少なくとも一箇所に帯状の溶着部が設けられたブラシ毛は、折り曲げ、重ね、丸め、捩じり、チャネルあるいはホイール等に取り付けられ、また、その後、所望の大きさに切断等によって所望の形状の工業用ブラシにすることができる。前記工業ブラシは、ワークの種類あるいは形状、大きさ等により、対応した形状のものを作製する必要があり、人手が多くかかり量産が困難であった。しかし、第1発明の工業用ブラシの製造方法は、ブラシ毛に少なくとも一列の帯状溶着部を作製することで、人手による作製以外に、半自動機、全自動機等を使用することが容易にできるようになった。
【0014】
(第2発明)
第2発明の洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法は、第1発明における溶着部として、接着剤、熱溶着、粘着テープの内のいずれかを使用することができる。前記溶着部は、ブラシ毛の長さ、材質、形状によって、前記溶着の種類を任意に選択することができる。特に、熱溶着は、通常の溶接以外に熱を用いた加熱も含む。
【0015】
(第3発明)
第3発明の洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法は、第2発明における合成接着剤、熱溶着、粘着テープのいずれかを組み合わせて溶着部を作製することができる。たとえば、ブラシ毛を並べ、一方の側に粘着テープで仮止めした後、他の箇所を溶接により堅固に溶着することができる。前記粘着テープその他の溶着部は、必要に応じて、切り落とすこともできる。
【0016】
(第4発明)
第4発明の洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法において、第1発明から第3発明に使用するブラシ毛は、合成樹脂、金属、動植物、およびこれらの混毛のいずれかである。前記ブラシ毛は、ワークの種類、形状、洗浄あるいは研磨等によって、最適のものを選択することができる。
【0017】
本発明は、各種材質、形状、大きさ等の異なるワーク表面を洗浄または研磨する工業用ブラシである。前記工業用ブラシは、合成樹脂、金属、動植物、およびこれらの混毛からなる少なくとも一種類のブラシ毛が並べられている。前記並べられたブラシ毛は、その上および/または下を前記並び方向に対して、互いに接着された少なくとも一列の帯状溶着部を備えている。前記溶着部の種類は、合成樹脂接着剤、溶接、熱溶着、粘着テープ等があり、前記工業用ブラシの種類、目的等によって選ばれる。また、前記溶着部の数および場所は、前記同様に、前記工業用ブラシの種類、目的等によって決められる。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の第1実施例で、連続的に並べられたブラシ毛を接着剤で接着する状態を説明するためのもので、(イ)は平面図、(ロ)は断面図である。図1(イ)および(ロ)において、たとえば、金属棒からなるブラシ毛11は、互いに重ならないように一列に並べられ、その上から接着剤123、124がブラシ毛11の直角方向に帯状に二列設けられている。前記ブラシ毛11は、図示のように、一段の他に、数段に重ねることもできる。前記接着剤123、124は、タンク12、12′の先端部に設けられているノズル121、121′から出され、図1(イ)のようにブラシ毛11を接続する。図1(ロ)において、ブラシ毛11は、接着剤123がブラシ毛3の間に上下方向から付着されている。ブラシ毛11は、数段に重ねられている場合、ブラシ毛3の間に入り込み互いが溶着する。
【実施例2】
【0019】
図2は本発明の第2実施例で、連続的に並べられたブラシ毛を溶接により接着された溶着部を説明するためのもので、(イ)は平面図、(ロ)は断面図である。図2(イ)および(ロ)において、たとえば、金属棒からなるブラシ毛11は、一列に並べられ、その一端近傍の上から溶接棒22によって溶接が行なわれ、溶接部221が形成される。図1(ロ)において、ブラシ毛21は、溶接により溶接部221が互いに隣り合った部分に設けられる。前記溶接は、アーク溶接、抵抗溶接等任意の溶接方法が採用できる。また、前記溶接は、他の熱源を使用した熱溶着とすることも可能である。
【実施例3】
【0020】
図3は本発明の第3実施例で、連続的に並べられたブラシ毛を粘着テープによって接続されせた状態を説明するための平面図で、(イ)は粘着テープ、(ロ)は粘着テープ、接着剤、溶接、(ハ)は接着剤と溶接で接続されている状態を説明するものである。図3(イ)において、ブラシ毛11は、隣り合った部分を粘着テープ32により接続されている。図3(ロ)において、ブラシ毛11は、上部を粘着テープ32により、中央部を接着剤123により、下部を溶接部221によって接続されている。図3(ハ)において、ブラシ毛11は、中央部を接着剤123により、下部を溶接部221によって接続されている。
【0021】
隣り合ったブラシ毛11は、少なくとも接着剤、溶接、あるいは粘着テープの一つを選択することにより、互いに離れないようにされる。前記接着剤、溶接、あるいは粘着テープは、並べられたブラシ毛11の上側または下側から施工を行なうことができる。前記ブラシ毛11は、所定の重ね状態で並べた後、前記接着剤等により、隣り合った部分を接続するだけであるため、自動化が容易にできる。また、前記接着剤、溶接、粘着テープの選択、および接続する場所の選択は、任意に行なうことができる。
【実施例4】
【0022】
図4(イ)および(ロ)は本発明の第4実施例で、一本のブラシ毛を平面に折り畳み、これらの上から隣あった部分を接続した状態を説明するための平面図である。図4(イ)において、連続したブラシ毛41は、平面上を同じ長さで折り返されている。前記ブラシ毛41は、上部が粘着テープ32で接続され、下部が溶接により隣り合った部分が接続されている。図4(ロ)において、ブラシ毛41は、図4(イ)の中央部が接着剤123により接続されている。
【0023】
図5は本発明のブラシ毛を用いて作製された丸ブラシを説明するための図である。図5において、丸ブラシ51は、中央部を溶接部221により互いに接続されたブラシ毛を丸めることにより作製されている。前記ブラシ51の両端部は、ブラシ毛を丸めた後、切り落とすことができる。
【0024】
図6は本発明のブラシ毛を用いて作製された長方形ブラシを説明するための図である。図6において、長方形ブラシ61は、中央部を溶接部221により互いに接続されたブラシ毛を所定の長さに揃えて切断後、重ねることにより作製されている。研磨を行なうブラシ毛の端部は、必要に応じて、接着部とを残すことができる。
【0025】
図7(イ)から(ハ)は本発明のチャネルブラシの作製方法を説明するための図である。図7(イ)において、ブラシ毛11の両端部が溶接部221されており、中央部に芯線71を置いた状態で、チャネル72に二つ折りの状態で挿入する。前記芯線71およびブラシ毛11は、折り畳まれた状態でチャネル72の間に挟まれた後、両側からチャネル72を押さえることにより作製される。前記ブラシ毛11の溶接部221は、図7(ロ)に示すように、線73から切断することにより除去され、図7(ハ)に示すようになる。
【0026】
図8(イ)から(ニ)は本発明のブラシ毛をねじることにより作製されるねじりブラシを説明するための図である。図8(イ)において、平面に並べられたブラシ毛11は、両端部が接着剤123、123′によって互いに接続されている。前記ブラシ毛11の上部および下部の中央部に芯線81、82を置き、ねじることにより、図8(ロ)に示すねじりブラシ83が作製される。前記ねじりブラシ83は、前記不要な接着剤123、123′を除去することにより、図8(ニ)に示すねじりブラシ83′が作製される。
【0027】
図9(イ)から(ホ)は本発明のチャネルブラシの例を説明するための図である。図9(イ)に示すブラシ91は、図7で作製されたチャネルブラシを円形にしたものである。図9(ロ)に示すブラシ92は、チャネルブラシをディスク921に巻き付けるように成形してできる。図9(ハ)に示すブラシ93は、チャネルブラシを円形にしたものである。図9(ニ)に示すブラシ94は、ブラシ毛を内部方向に向けて円形にしたチャネルブラシである。図9(ホ)に示すブラシ95は、図9(ハ)に示すブラシを軸方向に重ねて作製したものである。
【0028】
本発明のブラシ毛は、毛の長さを任意にすることができるとともに、作製中にブラシ毛の密度が変わらないように、少なくとも一つの接着剤、溶着、粘着テープ等によって固定することができる。前記固定箇所および固定方法は、任意に選択することができると同時に、前記固定箇所を切断あるいは非切断することにより、ブラシ毛の長さ、あるいは腰の強さ等を調整することができる。本発明は、ブラシ毛の選択、前記接着部の選択、切断箇所の選択、ブラシの形状の選択等により、多様化に対応できる。
【0029】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。ブラシ毛の材質、長さ、密度等は、基板の種類、大きさ、形状によって任意に選択することができる。また、前記ブラシ毛の先端部の形状は、周知または公知の形状のものを使用することができる。さらに、前記ブラシ毛の材質は、周知または公知のものを使用し、任意の形状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施例で、連続的に並べられたブラシ毛を接着剤で接着する状態を説明するためのもので、(イ)は平面図、(ロ)は断面図である。(実施例1)
【図2】本発明の第2実施例で、連続的に並べられたブラシ毛を溶接により接着された溶着部を説明するためのもので、(イ)は平面図、(ロ)は断面図である。(実施例2)
【図3】本発明の第3実施例で、連続的に並べられたブラシ毛を粘着テープによって接続された状態を説明するための平面図で、(イ)は粘着テープ、(ロ)は粘着テープ、接着剤、溶接、(ハ)は接着剤と溶接で接続されている状態を説明するものである。(実施例3)
【図4】(イ)および(ロ)は本発明の第4実施例で、一本のブラシ毛を平面に折り畳み、これらの上から隣あった部分を接続した状態を説明するための平面図である。(実施例4)
【図5】本発明のブラシ毛を用いて作製された丸ブラシを説明するための図である。
【図6】本発明のブラシ毛を用いて作製された長方形ブラシを説明するための図である。
【図7】(イ)から(ハ)は本発明のチャネルブラシの作製方法を説明するための図である。
【図8】(イ)から(ニ)は本発明のブラシ毛をねじることにより作製されるねじりブラシを説明するための図である。
【図9】(イ)から(ホ)は本発明のチャネルブラシの例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
11・・・ブラシ毛
12、12′・・・タンク
121、121′・・・ノズル
123、124・・・接着剤
21・・・ブラシ毛
22・・・溶接棒
221・・・溶接部
3・・・ブラシ毛
32・・・粘着テープ
41・・・ブラシ毛
51・・・丸ブラシ
61・・・長方形ブラシ
71・・・芯線
72・・・チャネル
73・・・切断線
81、82・・・芯線
83・・・ねじりブラシ
83′・・・ねじりブラシ
91、92、93、94、95・・・ブラシ
921・・・ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク表面を洗浄または研磨する工業ブラシの製造方法であり、
ブラシ毛を並べ、
前記ブラシ毛の上および/または下を前記並び方向に対して互いに接着された溶着部を設け、
前記互いに接着されたブラシ毛から所望の形状のブラシにすることを特徴とする洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法。
【請求項2】
前記溶着部は、接着剤、熱溶着、粘着テープの内のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載された洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法。
【請求項3】
前記溶着部は、前記接着剤、熱溶着、粘着テープのいずれかを組み合わせて使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法。
【請求項4】
前記ブラシ毛は、合成樹脂、金属、動植物、およびこれらの混毛のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された洗浄または研磨用工業ブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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