説明

工業炉

【課題】 炉から排出される排気ガスの有する熱のみならず、炉から直接放熱される熱をも回収し、燃焼空気の予熱に利用する工業炉を提供する。
【解決手段】 燃焼室1、バーナ2と、給気系および排気系を備え、給気系および排気系の途中に、複数個の蓄熱体3a、3bが並列に挿入され、各蓄熱体3a、3bの一端が、給気系の上流側配管11および排気系の下流側配管22に、それぞれ第一流路切替手段4a、4bを介して接続され、各蓄熱体3a、3bの他端が、給気系の下流側配管12および燃焼室1の連絡孔21a、21bに、それぞれ第二流路切替手段5a、5bを介して接続され、各蓄熱体3a、3bが、燃焼室1と開放空間を介さず密接している。蓄熱体3a、3bにより排気ガスの有する熱エネルギを回収し、さらに蓄熱体3a、3bを燃焼室1に密接させることで、燃焼室1から直接放熱される熱をも回収し、燃焼空気の予熱に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉の廃熱を利用して燃焼空気を予熱する工業炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業炉において、炉から排出される排気ガスと、炉に供給される燃焼空気とで、熱交換を行い、排気ガスの有する熱で燃焼空気を予熱することで、高効率化および省エネルギ化を図ったものが知られている。ここで、熱交換に用いられる熱交換器には種々のものがあるが、セラミックなどからなる蓄熱型熱交換器は、高温領域における耐久性が高く、工業炉の廃熱回収に適している。例として、文献1には、複数の蓄熱型熱交換器を備え、給気と排気の流路を順次切り替えて、各熱交換器において蓄熱と予熱を交互に行う廃熱利用装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−56840号公報
【0003】
ところで、文献1の発明は、炉から排出される排気ガスの有する熱を有効に利用しようとするものであるが、一方で、炉から直接放熱される熱も存在する。通常、炉の周囲には断熱材を設けて放熱を抑えているが、放熱を完全になくすことはできず、結果として放熱される熱のエネルギは無駄になっている。そこで、この熱も回収することができれば、さらなる高効率化および省エネルギ化を実現できると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、炉から排出される排気ガスの有する熱のみならず、炉から直接放熱される熱をも回収し、燃焼空気の予熱に利用する工業炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の発明は、燃焼室と、該燃焼室を加熱するバーナと、該バーナに燃焼空気を供給する給気系と、前記燃焼室から排気ガスを排出する排気系と、を備え、前記給気系および前記排気系の途中に、複数個の蓄熱体が並列に挿入され、各蓄熱体の一端が、前記給気系の上流側配管および前記排気系の下流側配管に、それぞれ第一流路切替手段を介して接続され、各蓄熱体の他端が、前記給気系の下流側配管および前記燃焼室の連絡孔に、それぞれ第二流路切替手段を介して接続され、前記の各蓄熱体が、前記燃焼室と、開放空間を介さず密接していることを特徴とする。
【0006】
本発明は、広く工業炉全般に適用されるものであり、炉の種類は問わず、るつぼ炉、溶融炉、加熱炉、焼却炉など、どのような炉であってもよい。燃焼室およびバーナの構造や規模は炉の種類によって異なりうるが、基本的には燃焼室にバーナが取り付けられており、バーナによって燃焼室内を加熱するものである。バーナにより燃焼させる際には、空気を供給する必要があり、バーナには給気系の配管が接続される。また、燃焼室からは、排気ガスを排出する必要がある。ここで、通常供給される燃焼空気は室温であり、排出される排気ガスは数百度から千数百度となる。このままでは、冷たい燃焼空気を供給することで炉内の温度が下がって燃焼効率が低下し、また排気ガスの持つ熱エネルギはすべて無駄になってしまうため、燃焼空気と排気ガスとで熱交換を行う。そこで、給気系および排気系の配管の途中に、複数個の蓄熱体が並列に挿入される。並列とはすなわち、配管が蓄熱体の個数分だけ枝分かれし、それぞれの配管に蓄熱体が設けられることをいう。蓄熱体としては、閉じた空間内に、アルミナなどのセラミックのパイプやボールを詰めたものが好適である。この蓄熱体に、給気系および排気系の配管がそれぞれ流路切替手段を介して接続される。ただし、排気系の上流側については、燃焼室と蓄熱体とを直結する連絡孔を設けることで、熱エネルギの損失をできるだけ少なくすることが望ましい。また、流路切替手段は、必ずしもいずれか一つの流路を選択するものではなく、複数の流路を同時に開いたり閉じたりすることもできるものとする。これらの流路切替手段により適宜流路を切り替えることにより、各蓄熱体に、排気ガスと燃焼空気とを交互に流通させる。高温の排気ガスが流通している間は、その熱エネルギが蓄熱体に蓄えられ、室温の燃焼空気が流通している間は、蓄えられた熱エネルギにより燃焼空気を予熱するのである。なお、各蓄熱体において、蓄熱と予熱の切り替えの周期をずらすことにより、常にいずれかの蓄熱体で予熱を行う状態にすることが望ましい。そして、これらの蓄熱体はすべて、燃焼室と開放空間を介さず密接している。これはすなわち、燃焼室から放熱される熱が直接蓄熱体に伝熱される状態であることを示す。
【0007】
また、本発明のうち請求項2の発明は、前記給気系の第一流路切替手段より上流側および前記排気系の第一流路切替手段より下流側に、熱交換器が挿入されることを特徴とする。ここで熱交換器とは、蓄熱体と異なり高温側と低温側の流路が分かれているもので、壁や配管を隔てて高温側から低温側へ間接的に伝熱するものとする。このように熱交換器を挿入することで、給気される燃焼空気は、まず熱交換器で予熱され、その後さらに蓄熱体で予熱される。逆に、排出される排気ガスは、まず蓄熱体で熱回収され、その後さらに熱交換器で熱回収される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1の発明によれば、蓄熱体により排気ガスの有する熱エネルギを回収して燃焼空気を予熱し、さらに、蓄熱体を燃焼室に密接させることで、燃焼室から直接放熱される熱をも回収し、燃焼空気の予熱に利用することができるため、従来の炉に増して高効率化および省エネルギ化を実現することができる。なお、一般に蓄熱体は高温領域における耐久性が高いため、千度を超える高温の排気ガスを生じる工業炉にも対応することができる。
【0009】
本発明のうち請求項2の発明によれば、蓄熱体で回収しきれなかった排気ガスの熱エネルギを熱交換器により回収することで、さらに高効率化および省エネルギ化を図ることができる。一般に、間接型の熱交換器は蓄熱体に比べて熱伝達の効率がよいため、温度が低い熱源(すなわち、一度熱交換を行ったあとの排気ガス)からでも効率よく熱回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の工業炉の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1は、本発明の工業炉の実施例を示す系統図である。本実施例は、円筒形状の燃焼室1を有し、燃焼室1には加熱するためのバーナ2が設けられ、さらに燃焼室1の周囲には、二個の蓄熱体3a、3bが、燃焼室1と開放空間を介さずに密接して設けられている。そして、蓄熱体3a、3bには、給気系および排気系の配管が接続されている。より詳しくは、蓄熱体3a、3bの一端には、給気系上流側配管11および排気系下流側配管22が、第一流路切替手段4a、4bを介して接続されており、他端には、給気系下流側配管12および燃焼室1の連絡孔21a、21bが第二流路切替手段5a、5bを介して接続されている。ここで、第一流路切替手段4a、4bは、それぞれ給気系上流側配管11に設けられる給気入口弁41a、41bおよび排気系下流側配管22に設けられる排気出口弁42a、42bからなる。同じく、第二流路切替手段5a、5bは、それぞれ給気系下流側配管12に設けられる給気出口弁51a、51bおよび燃焼室1の連絡孔21a、21bに設けられる排気入口弁52a、52bからなる。これらの弁のうち、給気入口弁41a、41b、排気出口弁42a、42bおよび給気出口弁51a、51bは、配管の途中に設けられるものであり、一般的なボール弁やバタフライ弁が用いられる。一方、排気入口弁52a、52bは、配管に設けられるものではなく、また、高温にさらされることから、ピストンを連絡孔21a、21bに抜き差しする形式のものとする。また、給気系の第一流路切替手段4a、4bより上流側および排気系の第一流路切替手段4a、4bより下流側には、熱交換器6が挿入される。熱交換器6は、燃焼空気と排気ガスとが隔離壁を隔てて対向して流れるものである。そして、給気系上流側配管11の末端には、燃焼空気供給弁72を介してブロワ71が設けられ、排気系下流側配管22の末端には排気口23が設けられる。また、バーナ2には、燃焼ガスを供給するための燃焼ガス供給配管61が接続される。燃焼ガス供給配管61の末端には、燃焼ガス供給弁74を介して燃焼ガス元栓73が設けられる。なお、燃焼空気供給弁72と燃焼ガス供給弁74とは、連動装置75によって連動して開閉し、燃焼空気と燃焼ガスが必ず同時に供給される。さらに、給気系の第二流路切替手段5a、5bの下流側には、バッファタンク31が設けられる。そして、給気系のブロワ71の直後にはバイパス配管32が接続され、熱交換器6および蓄熱体3a、3bをバイパスし、バイパス弁33を介してバッファタンク31と接続されている。
【0011】
次に、本実施例の炉を実際に用いる際の、燃焼空気および排気ガスの流れを図1に基づいて説明する。なお、図1は燃焼中のある時点における弁状態を示している。ブロワ71から供給される燃焼空気は、まず熱交換器6に流入し、高温の排気ガスと熱交換して予熱される。続いて、燃焼空気は給気入口弁41aを通って蓄熱体3aに流入し、さらに予熱される。そして燃焼空気は給気出口弁51aを通り、バッファタンク31に流入し、バーナ2に供給される。一方、排気ガスは、燃焼室1の連絡孔21bから蓄熱体3bに流入し、蓄熱体3bに蓄熱する。続いて、排気ガスは排気出口弁42bを通り、熱交換器6に流入し、室温の燃焼空気を予熱する。そして、排気ガスは排気口23から排出される。
【0012】
続いて、流路切替手段の動作について説明する。図2は、各弁の動作を示すタイミングチャートであり、点火時を0秒として、横軸に時間をとり、各弁の開閉状況を表す。まず、0〜T秒の間は、図1に示す弁状態となっており、この間の燃焼空気および排気ガスの流れは、上述のとおりである。点火からT秒が経過すると、給気と排気の流路を入れ替えるが、この際、排気ガスが流入していた蓄熱体3bについては、内部の排気ガスを除去してから燃焼空気を流入させる必要がある。燃焼空気に排気ガスが混入すると、酸素濃度が低下して、失火や不完全燃焼の原因となるからである。そこで、点火からT秒後、まず蓄熱体3aへの燃焼空気の供給をおよび蓄熱体3bへの排気ガスの供給を止め(給気入口弁41aおよび排気入口弁52bを閉)、蓄熱体3aへ排気ガスを、蓄熱体3bへ燃焼空気を供給する(給気入口弁41bおよび排気入口弁52aを開)。ここで、燃焼空気は蓄熱体3bからバーナ2へは供給せず(給気出口弁51bを閉のまま)、そのまま排気系へ排出することで(排気出口弁42bを開のまま)、蓄熱体3b内の排気ガスをパージする。この状態をt秒間維持した後、蓄熱体3bからバーナ2への燃焼空気の供給を開始する(給気出口弁51bを開、排気出口弁42bを閉)。ただし、このようにすると排気ガスをパージするt秒間の間はバーナ2へ燃焼空気が供給されなくなってしまう。そこで、その間だけバイパス弁33を開とし、ブロワ71から直接燃焼空気を供給する。これを蓄熱体3aおよび3bで交互に繰り返すことで、常に燃焼空気を予熱することができる。なお、弁の切り替えにより生じる圧力変動はバッファタンク31により吸収され、バーナ2へは安定的に燃焼空気が供給される。また、実際の弁の開閉には数秒程度の応答時間を要するため、それを見込んで弁の開閉時間(T、t)を設定することが望ましい。
【0013】
図3は、本実施例の炉の中心軸断面図である。ただし、給気系や排気系の各配管は省略している。本実施例はるつぼ炉であり、円筒形状の燃焼室1を備え、その内部にるつぼ101が設置される。燃焼室1の下部にはバーナ2が備えられ、るつぼ101の設置部分およびバーナ2の周囲には耐火レンガ102が設けられる。るつぼ101の上端にはシール110が設けられ、るつぼ101の内側と外側とを隔離している。そして、燃焼室1の上部周囲には、セラミックファイバーのブランケット103を介して蓄熱体3a、3bが設けられる。ここで蓄熱体3a、3bは、閉鎖された空間にアルミナ製の筒型(たとえば、長さ100mm、外径30mm、内径20mmのもの)の蓄熱材を多数詰めたものである。そして、ブランケット103には連絡孔21a、21bが設けられ、燃焼室1と蓄熱体3a、3bとが連絡されている(排気入口弁については省略)。蓄熱体3a、3bおよび燃焼室1の周囲は断熱レンガ104で覆われ、その周囲には断熱ボード105、超断熱材106が設けられ、さらにその表面に外装材107が設けられた構造となっている。また、熱交換器6は、炉の下部周囲に設けられる。このように構成することで、燃焼室1から蓄熱体3a、3bへ排気ガスが流通する際の熱エネルギの損失が最小限に抑えられ、さらに燃焼室1から蓄熱体3a、3bに直接熱が伝達され、その熱を燃焼空気の予熱に用いることができるため、熱エネルギを無駄にすることなく、効率が向上する。また、燃焼室1内において、高温のガスは上方へ移動することから、本実施例のように蓄熱体3a、3bを炉の上方に配置することで、より効率的に燃焼室1から蓄熱体3a、3bへ伝熱させることができる。熱交換器6については、炉から直接伝熱されるものではないが、本実施例のように炉の周囲に配置することで、省スペース化を図ることができる。なお、炉の具体的な大きさはとくに限定されないが、本実施例においては直径1.1m〜1.4m程度を想定している。炉をこのように形成し、たとえばT=60秒、t=1秒として稼動することで、室温(20度)の燃焼空気を、熱交換器において200度程度に予熱し、さらに蓄熱体において500度程度まで予熱するものである。
【0014】
本発明の工業炉は、上記の実施例に限定されるものではない。炉の種類は、るつぼ炉以外にも、溶融炉、加熱炉、焼却炉など、どのような炉であってもよい。また、蓄熱体についても、内部に充填される蓄熱材の素材や形状などは、自由に選択することができ、また蓄熱体が三個以上設けられるものであってもよい。蓄熱体の個数が増えると、流路の切り替えが複雑になり制御性やメンテナンス性の面で不利になるが、パージ中であっても少なくとも一つの蓄熱体で常に予熱できるので、より安定して高温の燃焼空気をバーナに供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の工業炉の系統図。
【図2】流路切替手段の動作を示すタイミングチャート。
【図3】炉の断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 燃焼室
2 バーナ
3a、3b 蓄熱体
4a、4b 第一流路切替手段
5a、5b 第二流路切替手段
6 熱交換器
11 給気系上流側配管
12 給気系下流側配管
21a、21b 連絡孔
22 排気系下流側配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(1)と、該燃焼室(1)を加熱するバーナ(2)と、該バーナ(2)に燃焼空気を供給する給気系と、前記燃焼室(1)から排気ガスを排出する排気系と、を備え、
前記給気系および前記排気系の途中に、複数個の蓄熱体(3a、3b)が並列に挿入され、
各蓄熱体(3a、3b)の一端が、前記給気系の上流側配管(11)および前記排気系の下流側配管(22)に、それぞれ第一流路切替手段(4a、4b)を介して接続され、各蓄熱体(3a、3b)の他端が、前記給気系の下流側配管(12)および前記燃焼室(1)の連絡孔(21a、21b)に、それぞれ第二流路切替手段(5a、5b)を介して接続され、
前記の各蓄熱体(3a、3b)が、前記燃焼室(1)と、開放空間を介さず密接していることを特徴とする工業炉。
【請求項2】
前記給気系の第一流路切替手段(4a、4b)より上流側および前記排気系の第一流路切替手段(4a、4b)より下流側に、熱交換器(6)が挿入されることを特徴とする請求項1記載の工業炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−186148(P2009−186148A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29376(P2008−29376)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(500067710)北陸テクノ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】