説明

工業用防腐、殺菌剤組成物

【課題】 従来のものよりもさらに優れた防腐効果を発揮する工業用防腐、殺菌剤組成物を提供すること
【解決手段】 溶媒中に(a)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、(b)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、(c)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、(d)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、及び(e)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも3種の化合物を含有させる。前記(a)、(b)及び(e)の中の少なくとも1種を必須成分の1つとして含有させることが特に好ましい。少なくとも3種の前記化合物の総含有量は3〜80重量%とするのが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙・パルプ工業における抄紙工程水や、各種工業用の冷却水や洗浄水などの工業用水、リグニン、澱粉スラリー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、塗料、ラテックス、接着剤、紙用塗工液、糊剤、皮革などの工業製品などに用いた際に優れた防腐、殺菌効果を示す工業用防腐、殺菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製紙工程における抄紙工程水や、各種工業用の冷却水や洗浄水などの工業用水、リグニン、澱粉スラリー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、塗料、ラテックス、接着剤、紙用塗工液、糊剤、皮革などの工業製品などにおいては、細菌や真菌などの微生物が増殖しやすく、それらの生産性低下や製造工程中の作業性低下を招来し、ひいては品質低下の原因となっている。
特に、製紙工業用水を用いて製造される紙用塗工液においては、有害微生物によりこれが固化したり、悪臭や異臭が発生して作業環境を悪化させ、公衆衛生上好ましくない現象を引き起こしたりしている。
【0003】
また、製紙工程における用水系では、糸状菌類や酵母菌類などの有害微生物の増殖によりスライムが発生し、パルプスラリーが流れる水路や、チェスト、フローボックス、輸送パイプ、その他パルプスラリーの流速が小さくなって淀むような場所にスライムが多量に付着形成しやすい。
これらのスライムはしばしば剥離し、パルプスラリー中に再び混入して抄紙工程に移行し、紙切れ、あるいは製品汚染の原因となり、品質の低下や種々の障害を発生させ、殊に近年の高速抄紙においては、著しい生産性低下や断紙、損紙などの経済的損失を招来している。
【0004】
他方、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、塗料、ラテックス、接着剤、紙用塗工液、糊剤、皮革などの工業製品においても微生物が非常に繁殖しやすく、腐敗した場合、悪臭や異臭を発生したり、発泡を引き起こしたりするなどの製品衛生上好ましくない現象や、発泡に起因する使用時の不都合などを生じることがあり、著しい品質の低下を招くなど種々の障害を発生させているのが現状である。
【0005】
このような微生物障害の対策としては、例えば5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、メチレンビスチオシアネート、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、等の工業用防腐、殺菌剤の使用が知られている。
【0006】
しかしながら、これらの工業用防腐、殺菌剤の単独使用では、限られた種類の微生物にしか有効ではないため、種々の微生物が混在する工業用水中では充分な微生物障害対策が行えないという問題があった。また、単一成分を使い続けると耐性菌が出現し、薬剤効力が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、上記の工業用防腐、殺菌剤を併用する種々の提案がなされており、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールと、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリルとの組み合せ(特許文献1)、メチレンビスチオシアネートと2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールとの組み合わせ(特許文献2)などが知られている。
【0008】
しかし、このような併用された工業用防腐、殺菌剤組成物を用いたとしても、多種多様な工業用水に対しては未だ満足し得る効果は得られていないのが現状であり、従来のものよりもより一層防腐、殺菌効果に優れた工業用防腐、殺菌剤組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2815327号明細書
【特許文献2】特許第3728454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の現状に鑑みてなされたものであり、従来のものよりもさらに優れた防腐、殺菌効果を発揮する工業用防腐、殺菌剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく、単独で用いると工業用防腐、殺菌剤として有用であることが知られている各種の化合物を組み合わせた、複数の有効成分化合物からなる多数の工業用防腐、殺菌剤組成物を調製し、それらの殺菌剤、防腐剤としての効果について鋭意研究を重ねた。
その結果、防腐、殺菌作用のある特定の化合物を3種類以上組み合せてなる工業用防腐、殺菌剤組成物に限り、その中の2種類の化合物からなるものに比べて防腐、殺菌効果がより大きいことを見いだし、本発明に到った。
【0012】
本発明は下記(1)〜(3)の構成からなる。
(1)本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物は、溶媒中に(a)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、(b)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、(c)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、(d)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、及び(e)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも3種の化合物を含有してなることを特徴とする。
(2)また、本発明の前記(1)の工業用防腐、殺菌剤組成物は、前記(a)〜(e)の化合物の中、(a)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール及び(b)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、及び(e)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも1種を必須成分として含有することを特徴とする。
(3)本発明の前記(1)又は(2)の工業用防腐、殺菌剤組成物では、防腐、殺菌効果の点で、前記(a)〜(e)の中の少なくとも3種の化合物の総含有量は3〜80重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防腐、殺菌剤組成物は、該組成物中に少なくとも前記の3種類の特定の化合物を必須成分として含み、従来の防腐、殺菌剤組成物に比べても、また、該組成物を構成する2種類以下の各化合物を含む防腐、殺菌剤組成物に比べてもその防腐、殺菌効果が高く、工業用の防腐、殺菌剤組成物として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物は、溶媒中に2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、及び2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも3種の化合物(以下、これら少なくとも3種の化合物を、単に有効成分ともいう)を加え、十分に混合して均一化することによって製造される。
用いる溶媒としては、水、または水と有機溶剤との混合溶媒が挙げられ、これらを溶媒とすれば、溶液とならない場合でも、エマルジョンやサスペンジョンなどとして用いることができる。
【0015】
本発明の防腐、殺菌剤組成物を製造する際に使用される溶媒の中、有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシルグリコール、グリセリンなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテートなどのグリコールジエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエステルエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、プロピレンカーボネート、グルタル酸ジメチル、酢酸エチル、マレイン酸ジメチル等のエステル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、イソホロン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラハイロドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、グリセリンのトリアセテートなどを挙げることができる。
【0016】
これらの有機溶媒の中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを好ましく用いることができ、またこれらの有機溶剤は単独でも、2種以上を併用しても良く、これらの有機溶剤にはさらに任意の量の水を併用しても良い。
【0017】
本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物を構成する少なくとも3成分からなる防腐、殺菌有効成分(有効成分)の合計濃度は、用いられる該有効成分の種類等にもよるが、防腐、殺菌効果の点で、組成物全体の3〜80重量%程度、好ましくは、10〜50重量%程度とするのが良い。
該有効成分の濃度が3重量%より低いと、組成物中における有効成分の分散性の向上には寄与するが、防腐、殺菌対象物への防腐、殺菌剤組成物の投入量を多くしなければならなかったり、容量が大きくなるため貯蔵、運搬などに不都合を生じたりする場合があり、80重量%より高すぎると、防腐、殺菌剤組成物中における有効成分の分散保持に支障を来し、有効成分が分離や沈殿を起こすなどの不都合を生じる場合があるため、ともに好ましくない。
【0018】
なお、本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物において、必須成分として含有させる少なくとも3種の前記有効成分の中のそれぞれの有効成分の含有量は、やはり共存させる有効成分の種類等にもよるが、工業用防腐、殺菌剤組成物全量の1〜65重量%の範囲内において任意に選択し、かつ、これらの有効成分の合計濃度を工業用防腐、殺菌剤組成物全量に対して3〜80重量%の範囲内とするのが好ましい。
必須成分として含有させる前記各有効成分の合計濃度が3〜80重量%の範囲内にあっても、該有効成分の1つが1重量%より少ないか65重量%より多いと、該有効成分として2種の化合物を含有させたものとの顕著な防腐、殺菌効果の違いが得られない。
【0019】
また、本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物には、必要に応じてノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤などの添加剤を配合することもできる。
添加剤として界面活性剤を用いる場合は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を単独で、または複数を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物を防腐、殺菌機能を付与しようとする対象物に添加する際は、対象とする工程や対象物の種類、系中に存在する微生物の種類やその濃度、あるいは使用する地域や季節などによっても異なり、一概には決められないが、一般的には、少なくとも前記3種からなる有効成分の合計量が0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.3重量%含まれる量の防腐、殺菌剤組成物を対象とする工程や対象物中に添加することが望ましい。
【0021】
本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物を製紙工業などの分野における一般的な工業用水などに用いる場合には、前記少なくとも3種の有効成分の合計量が、0.0001〜0.01重量%程度添加するのが好ましく、また、繊維油剤、ラテックス類、コーティングカラー、リグニン、コンクリート減水剤、澱粉スラリー、糊材、塗料、接着剤、染料液などの工業製品に用いる場合には、少なくとも前記3種からなる有効成分の合計量が、0.001〜0.3重量%程度含有させる程度とするのが良い。
また、本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物は、対象とする工程や対象物に対し、所定量を予め加えて使用しても良いし、所定量を所定時間毎に分割して添加してもよく、様々な態様で使用されて良い。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を説明する。
[工業用防腐、殺菌剤組成物の調製]
下記に示す割合の各原料化合物を混合し、常温下で十分に攪拌して実施例1〜15、及び比較例1〜3の製剤(工業用防腐、殺菌剤組成物)を製造した。
【0023】
〔実施例1〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 5部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 20部
プロピレンカーボネート(溶剤) 65部
【0024】
〔実施例2〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 5部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 15部
プロピレンカーボネート(溶剤) 70部
【0025】
〔実施例3〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 15部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 10部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 6部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(溶剤) 69部
【0026】
〔実施例4〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 20部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 15部
プロピレンカーボネート(溶剤) 55部
【0027】
〔実施例5〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 12部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 18部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 5部
ジエチレングリコール(溶剤) 65部
【0028】
〔実施例6〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 20部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 10部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 5部
プロピレンカーボネート(溶剤) 65部
【0029】
〔実施例7〕
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 10部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 15部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 15部
プロピレングリコール(溶剤) 60部
【0030】
〔実施例8〕
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 12部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 15部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 8部
γ―ブチロラクトン(溶剤) 65部
【0031】
〔実施例9〕
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 12部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 15部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 8部
プロピレンカーボネート(溶剤) 65部
【0032】
〔実施例10〕
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 12部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 13部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 10部
γ―ブチロラクトン(溶剤) 65部
【0033】
〔実施例11〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 10部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 12部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 12部
ジエチレングリコール(溶剤) 56部
【0034】
〔実施例12〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
2, 2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 5部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 15部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 5部
プロピレンカーボネート(溶剤) 65部
【0035】
〔実施例13〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 14部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 10部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 6部
プロピレンカーボネート(溶剤) 60部
【0036】
〔実施例14〕
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 10部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 10部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 10部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 10部
プロピレンカーボネート(溶剤) 60部
【0037】
〔実施例15〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 10部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 10部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 10部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 5部
γ―ブチロラクトン(溶剤) 65部
【0038】
〔比較例1〕
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 15部
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン 20部
プロピレンカーボネート(溶剤) 65部
【0039】
〔比較例2〕
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 15部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 15部
ジエチレングリコール(溶剤) 70部
【0040】
〔比較例3〕
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液 15部
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン 20部
プロピレンカーボネート(溶剤) 65部
なお、前記実施例、及び比較例において用いた2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液は、いずれも2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの75%溶液である。
【0041】
[工業用防腐、殺菌剤組成物の存在下での微生物増殖防止試験]
上記実施例1〜15、及び比較例1〜3の製剤(各工業用防腐、殺菌剤組成物)について、微生物増殖防止試験を行った。
【0042】
〔試験例1〕
コーンスターチ澱粉20重量部に滅菌水80重量部を加えスラリー状とした試料に、供試微生物源として腐敗した澱粉スラリーを1重量部加え、30℃の恒温器に1日保存した。この時の生菌数は細菌が3.3×10/mL、真菌が2.3×10/mLであった。
これに、実施例1〜15及び比較例1〜3の工業用防腐、殺菌剤組成物をそれぞれ100ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、3日後、7日後、及び21日後の試料1mL中の生菌数を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお工業用防腐、殺菌剤組成物を全く添加しなかった以外は実施例1〜15及び比較例1〜3の試料と同様にして保存された試料についても参考例として同じく表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
〔試験例2〕
パラフィンワックス99重量部に、供試微生物源として腐敗したパラフィンワックス(生菌数:細菌が2.8×10/mL)を1重量部加えた。
これに、実施例1〜15及び比較例1〜3の工業用防腐、殺菌剤組成物をそれぞれ500ppmとなる割合で添加して、30℃の恒温器に保存し、3日後、7日後、及び21日後の試料1mL中の生菌数を測定した結果を表2に示す。
なお工業用防腐、殺菌剤組成物を全く添加しなかった以外は実施例1〜15及び比較例1〜3の試料と同様にして保存された試料についても参考例として同じく表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
〔試験例3〕
製紙工場から採取した白水(生菌数:細菌が7.8×10/mL)10mLを三角フラスコに取り、実施例1〜15及び、比較例1〜3の各製剤(各殺菌剤組成物)をそれぞれ50ppmとなるように添加して、32℃にて培養し、30分後と1時間後の試料1mL中の生菌数を測定した。
【0047】
【表3】

【0048】
表1、2、及び3の結果から明らかなように、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、及び2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも3種の化合物を有効成分として含有する本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物(実施例1〜15の製剤)は、前記有効成分の中の2種の化合物しか含有しない防腐、殺菌剤組成物(比較例1〜3の製剤)に比べてより広い抗菌スペクトルを有し、且つその殺菌効果が長期に渡って継続し、防腐、殺菌効果がより高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の工業用防腐、殺菌剤組成物は、紙・パルプ工業における抄紙工程水や、各種工業用の冷却水や洗浄水などの工業用水、リグニン、澱粉スラリー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、塗料、ラテックス、接着剤、紙用塗工液、糊剤、皮革などの工業製品などに用いられて優れた防腐、殺菌効果を発揮し、上記の他にも微生物による腐敗を防止することが必要とされるものの殆どに適用が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に(a)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、(b)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、(c)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、(d)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、及び(e)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも3種の化合物を含有してなることを特徴とする工業用防腐、殺菌剤組成物。
【請求項2】
前記(a)〜(e)の化合物の中、(a)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール及び(b)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、及び(e)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの中の少なくとも1種を必須成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の工業用防腐、殺菌剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも3種の化合物の総含有量が3〜80重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の工業用防腐、殺菌剤組成物。

【公開番号】特開2011−1272(P2011−1272A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143040(P2009−143040)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000135760)株式会社パーマケム・アジア (17)
【Fターム(参考)】