説明

工業的組み換え生物を溝築するための手段としての遺伝子変換

【課題】糸状菌の組み換え産性菌株の溝築のために、一般的に利用できる方法を提供する。
【解決手段】ゲノム内に少なくとも2つの実質的に相同なDNAドメインを含み、該ドメインは組み換えDNA分子の1種以上のコピーを組み込むのに適しており、またこれらDNAドメインの少なくとも2つが組み換えDNA分子の組み込まれたコピーを含む糸状菌、および該糸状菌の製造方法。また、組み込まれた組み換えDNA分子を含む該DNAドメインを、遺伝子変換または増幅によって、増殖させる方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
工業的組み換え生物を溝築するための手段としての遺伝子変換
【0002】
[発明の分野]
本発明は、工業的な発酵法において使用する、微生物の遺伝子操作に関するものである。
【0003】
[発明の背景]
絶えず増え続ける数の製品を、工業的規模の微生物発酵によって製造している。このような製品は、一次および二次代謝を由来とするもの、例えばそれぞれクエン酸および抗生物質から、イーストまたはバイオマス等としての、タンパク質、酵素並びに完全な微生物にさえも及んでいる。伝統的には、対象とする該微生物は、古典的な菌株改良ブログラムに付され、該プログラムは、連続する一連の変異形成およびそれに続く改善された特性を持つ変異体の選別からなっている。
【0004】
ごく最近、遺伝子操作、即ち組み換えDNA技術が、工業用の微生物に適用されるようになってきた。この技術は、天然において対象とする微生物によって生産されている、生成物の生産レベルを更に改善するのみならず、全く新しい生成物および/または製法、例えば異種タンパクまたは代謝経路の操作などの開発をも可能としている。
【0005】
遺伝子操作は、対象とする該生物内への組み換えDNA分子の導入および通常はまた該生物内での発現を必要とする。この方法は、形質転換と呼ばれる。微生物の安定した形質転換は、該導入された組み替えDNA分子が、世代から世代に渡り、該細胞内に維持されること、即ち安定した遺伝を必要とする。基本的に、該導入された組み替えDNA分子を維持する方法は、2つある。第一に、該組み換えDNAは、その宿主細胞のゲノムに組み込まれ、例えばその染色体の一つに組み込まれる。一旦組み込まれた該組み換えDNAは、この染色体の一部となり、またかくしてこの染色体と共に複製されることによって維持されるであろう。第二に、該組み換えDNAは、該細胞に自己複製、即ち該宿主ゲノムとは無関係な複製を可能とする、DNA分子の一部として、該細胞内に導入される。このような自己複製ベクターは、しばしば天然に産するプラスミドまたは該組み換えDNAの組込みを許容するように順応したウイルス由来のものである。
【0006】
工業的な微生物産性生物に関連して、該自己および組込みベクター系各々は、夫々の固有の利点および欠点を有している。該自己複製ベクター系、例えば導入すべきDNA配列の数および/または長さにおけるポーズ制限(pose restrictions)は、一般的にさほど安定ではないと考えられており、しかも通常は該組み換え系と比較して、1遺伝子コピー当たりの低い発現レベルを与える。しかしながら、幾つかの極めて重要な工業的な微生物、特に糸状菌類、例えばアスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)またはトリコデルマ(Trichoderma)について最も重要なことは、安定な自己複製性のベクター系が容易に入手されないことである。
【0007】
該組み換えベクター系を使用した場合の該欠点は、ある程度までは組み換えのために使用した方法に依存する。相同組み替えによる所定のゲノム配列への組み込みは、該組み換えDNA分子のコピー数と組み合わせることは困難である。該組み換えDNA分子の多数のコピーのランダムな組込みは、しばしば糸状菌において適用されているように、該形質転換体の予想不可能な遺伝子型を与えるであろう。このことは、該形質転換された産性菌株の有利な諸特性の喪失を招くばかりか、かかる菌株の予想不可能なかつ漠然とした特性は、政府当局者に容易には許容されない。
【0008】
WO 91/00920は、酵母菌株を開示しており、そこでは組み換えDNA分子の多数のコピーが、リボソームDNA反復体クラスター中に組み込まれている。この場合には異種遺伝子に対する発現ベクターである、該組み換えDNA分子は、また欠失選別マーカー遺伝子並びに酵母リボソームDNA配列両者を含み、その後者は、相同組み替えにより、該ベクターを該リボソームDNA反復体クラスター中に組み込むことを可能とする。該欠失選別性マーカー遺伝子は、該リボソームDNA反復体クラスター中に組み込まれた該ベクターの複数のコピーを含む菌株の、選別および安定維持のために必要とされる。更に、WO 91/00920は、リボソームDNA反復体への多数のコピーの組込みが、一般的に糸状菌、例えばアスペルギルス種を包含する、菌類にも適用可能であることを示唆している。しかしながら、WO 91/00920に記載されている、該多数のコピーの組込み系は、欠失選別性マーカー遺伝子の使用に依存している。更に、WO 91/00920はゲノム環境への組み込みについては記載しておらず、該組み込み自体は、タンパクコード遺伝子の、高レルベルでのRNAポリメラーゼII転写を維持するのに適している。
【0009】
最近、ES 2,094,088は、ペニシリウムクリソゲナムE−1およびペニシリウムクリソグナムAS−P−78のペニシリン過剰生産菌株において増幅されたDNA領域を記載した。該増幅DNA領域のサイズが、それぞれ75および106kbであり、またこれが該増幅された領域の16.5kbフラグメント内に、遺伝子pcbAB、pcbCおよびpenDEを含むことを記載されている。この増幅された領域の左側および右側の端部に存在する該DNA配列が、ベクターの溝築のために使用でき、該ベクターにマーカー遺伝子を導入して、特にニトロソグアニジンによるランダムな変異形成によって、より高いペニシリン産性をもつ菌株を得て、該微生物のゲノムに一旦組み込まれた場合には、該ベクターのコピー数を増大する目的で、該マーカー遺伝子間に位置する遺伝物質の増幅を促進する。しかしながら、ES 2,094,088は、上で概説した方法が、上首尾で利用できたか否かについては、記載していない。事実、ES 2,094,088に記載された方法は、いくつかの欠点を持つ。例えば、複雑なDNA構造の増幅は、低頻度でのみ起こる。更に、該突然変異源としてのニトロソグアニジンは、該微生物のゲノム内に、望ましくない一時的な突然変異をもたらす。その上、突然変異源による処理は、該ベクター中に存在する該増幅された領域の配列の欠失を招き、結果としてこれらの間に位置する興味ある遺伝子の欠失を招く。これについては、Fierro,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,6200−6204をも参照のこと。また、上記のごとく、該微生物のゲノムへの該ベクターのランダムな組み込みは、該形質転換体の予想外の遺伝子型を与えるであろう。
【0010】
かくして、本発明に係わる技術的な課題は、糸状菌の組み換え産性菌株の溝築のために一般的に利用できる方法を提供することにあり、該菌株は該微生物ゲノムの、明確な所定のターゲット遺伝子座に組み込まれた、組み換えDNA分子の多数のコピーを含み、またこの系は、形質転換のための、特定の型の選別マーカーの使用には依存しない。
【0011】
[図面の簡単な説明]
図面で使用する略号:
[制限酵素および制限サイト]
A=ApaI;Ba=BamHI;B=BglII;Bs=BssHII;E=EcoRI;H=HindIII;K=KpnI:N=NdeI:No=NotI;Ps=PstI;P=PvuII;Sa=SalI;Sc=ScaI;S=SmaI;Sn=SnaBI;Spe=SpeI;Sp=SphI;Ss=SstII;Xb=XbaI;X=XhoI;Nr=NruI;Hp=HpaI;Sf=SfiI;Ns=NsiI;Bst=BstXI。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1図は、各々種々の制限サイト(BamHI、SalIまたはBglII)で記された、A.ニガーCBS 646.97(1997年4月11日付けで、オランダ国、BaarnのCentraal Bureau voor Schimmelculturesに寄託されている)形質転換体(ISO−505)の、glaA DNAアンプリコンにおける、3つのΔglaA遺伝子座を模式的に示した図である。各glaA遺伝子座の切り捨ては、20または60bpだけ異なっており、かくしてPCR−に基くDNA−フラッグテスト(DNA−flag test)によって、各切り捨てられたglaA遺伝子座が可視化される。
【図2】第2図は、親菌株A.ニガーCBS 646.97における該glaA遺伝子座(上部)および組み換え菌株A.ニガーISO−505における3つの切り捨てられた「X−で記された」glaA遺伝子座(Xは、制限サイトBamHI、SalIまたはBglIIを表す)の物理的マップである。
【図3】第3図は、中間ベクターpGBGIA16の溝築経路を示す図である。
【図4a】第4図は、3’−glaA DNA配列のKpnIを破壊し、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、該中間ベクターpGBGLA18中に生じたpGBGLA16に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図4b】第4図は、3’−glaA DNA配列のKpnIを破壊し、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、該中間ベクターpGBGLA18中に生じたpGBGLA16に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図5a】第5図は、該5’−および3’−glaA配列間にBamHI制限サイトを含め、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、遺伝子−置換ベクターpGBDEL5内に生じたpGBGLA18内に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図5b】第5図は、該5’−および3’−glaA配列間にBamHI制限サイトを含め、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、遺伝子−置換ベクターpGBDEL5内に生じたpGBGLA18内に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図6a】第6図は、該5’−および3’−glaA配列間にSalI制限サイトを含め、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、遺伝子−置換ベクターpGBDEL9内に生じたpGBGLA18内に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図6b】第6図は、該5’−および3’−glaA配列間にSalI制限サイトを含め、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、遺伝子−置換ベクターpGBDEL9内に生じたpGBGLA18内に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図7a】第7図は、該5’−および3’−glaA配列間にBglII制限サイトを含め、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、遺伝子−置換ベクターpGBDEL11内に生じたpGBGLA18内に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図7b】第7図は、該5’−および3’−glaA配列間にBglII制限サイトを含め、かつ適当なクローニングのためのボーダーにおいて、クローニングサイトを、遺伝子−置換ベクターpGBDEL11内に生じたpGBGLA18内に付加するための、融合PCRを模式的に示す図である。
【図8a】第8図は、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブした、該親菌株A.ニガーCBS 646.97から単離した染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図である。
【図8b】第8図は、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブした、該親菌株A.ニガーCBS 646.97から単離した染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図である。
【図9a】第9図は、A.ニガーCBS 646.97形質転換体から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、ここで該線状化されたpGBDEL5ベクターは、二重の交差を介して該glaAターゲット遺伝子座に組み込まれており、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。個々の形質転換体のゲノムにおいては、宿主の該3’−glaA配列内に位置する元のKpnIサイトは、該二重交差組み換え事象の結果として、破壊される可能性があるが(K)、必ずしも破壊されていなくてもよい。
【図9b】第9図は、A.ニガーCBS 646.97形質転換体から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、ここで該線状化されたpGBDEL5ベクターは、二重の交差を介して該glaAターゲット遺伝子座に組み込まれており、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。個々の形質転換体のゲノムにおいては、宿主の該3’−glaA配列内に位置する元のKpnIサイトは、該二重交差組み換え事象の結果として、破壊される可能性があるが(K)、必ずしも破壊されていなくてもよい。
【図10a】第10図は、該amdS選別マーカー遺伝子を含まない形質転換体A.ニガーGBA−201から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、一つの「BamHI−で記された」ΔglaA DNAアンプリコンおよび2つの残留する元のglaAアンプリコンを含み、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。
【図10b】第10図は、該amdS選別マーカー遺伝子を含まない形質転換体A.ニガーGBA−201から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、一つの「BamHI−で記された」ΔglaA DNAアンプリコンおよび2つの残留する元のglaAアンプリコンを含み、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。
【図11a】第11図は、A.ニガーGBA−201形質転換体から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、ここで該線状化されたpGBDEL9ベクターは、二重の交差を介して組み込まれており、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。 個々の形質転換体のゲノムにおいては、宿主の該3’−glaA配列内に位置する元のKpnIサイトは、該二重交差組み換え事象の結果として、破壊される可能性があるが(K*)、必ずしも破壊されていなくてもよい。
【図11b】第11図は、A.ニガーGBA−201形質転換体から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、ここで該線状化されたpGBDEL9ベクターは、二重の交差を介して組み込まれており、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。 個々の形質転換体のゲノムにおいては、宿主の該3’−glaA配列内に位置する元のKpnIサイトは、該二重交差組み換え事象の結果として、破壊される可能性があるが(K*)、必ずしも破壊されていなくてもよい。
【図12a】第12図は、該amdS選別マーカー遺伝子を含まない形質転換体A.ニガーGBA−202から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、二っの「BamHI−およびSalI−で記された」ΔglaA DNAアンプリコンおよび一つの残留する元のglaAアンプリコンを含み、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。
【図12b】第12図は、該amdS選別マーカー遺伝子を含まない形質転換体A.ニガーGBA−202から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、二っの「BamHI−およびSalI−で記された」ΔglaA DNAアンプリコンおよび一つの残留する元のglaAアンプリコンを含み、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。
【図13a】第13図は、A.ニガーGBA−202形質転換体から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、ここで該線状化されたpGBDEL11ベクターは、二重の交差を介して組み込まれており、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。個々の形質転換体のゲノムにおいては、宿主の該3’−glaA配列内に位置する元のKpnIサイトは、該二重交差組み換え事象の結果として、破壊される可能性があるが(K)、必ずしも破壊されていなくともよい。
【図13b】第13図は、A.ニガーGBA−202形質転換体から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、ここで該線状化されたpGBDEL11ベクターは、二重の交差を介して組み込まれており、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。個々の形質転換体のゲノムにおいては、宿主の該3’−glaA配列内に位置する元のKpnIサイトは、該二重交差組み換え事象の結果として、破壊される可能性があるが(K)、必ずしも破壊されていなくともよい。
【図14a】第14図は、該amdS選別マーカー遺伝子を含まない形質転換体A.ニガーISO−505から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、三つの「BamHI−、SalI−およびBglII−で記された」ΔglaA DNAアンプリコンを含み、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。
【図14b】第14図は、該amdS選別マーカー遺伝子を含まない形質転換体A.ニガーISO−505から単離した、染色体DNAを、KpnIまたはBamHIにより消化した後に観測される、ハイブリダイゼーションパターンを模式的に示す図であり、三つの「BamHI−、SalI−およびBglII−で記された」ΔglaA DNAアンプリコンを含み、HindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメント(a)またはSalI/SalI 3’−glaA DNAフラグメント(b)でプローブされている。
【図15】第15図は、アセタミド選別マーカーおよびglaAターゲットベクターpGBAAS−1の物理的地図である。
【図16】第16図は、フィターゼ発現およびglaAターゲットベクターpGBTOPFYT−1の物理的地図である。
【図17】第17図は、phyA発現カセット(a)またはamdSカセット(b)が、形質転換体A.ニガーISO−505中の3’3”−glaAターゲット遺伝子座の一つに隣接して標的とされるか否かを決定するための、ターゲットPCRテストを模式的に示す図である。これらカセットの一方を標的とすることは、何れの場合にも、4.2kbなるサイズのDNAフラグメントの増幅をもたらす。
【図18】第18図は、A.ニガーISO−505中の3つのΔglaAドメインを模式的に示す図である。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbSalI/XhoI 3’−glaA DNAフラグメントによってプローブされた、BglII消化物を示す。
【図19】第19図は、pGBAAS−1/pGBTOPFYT−1 A.ニガーISO−505形質転換体における、ΔglaAドメイン(夫々B、SaおよびBaで記されている)の模式的な表示である。ここで、多数のamdSカセットは、該A.ニガーISO−505宿主の3つのΔglaAドメインの一つをターゲットとする。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaADNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。該7.5kbのglIIブリッド化フラグメントの存在並びにその強度は、組み込まれたamdSカセットの数(n)に依存することが分かる。
【図20】第20図は、pGBAAS−1/pGBTOPFYT−1 A.ニガーISO−505形質転換体における、3つのΔglaAドメイン(夫々B、SaおよびBaで記されている)の模式的な表示である。ここで、多数のphyAは、該A.ニガーISO−505宿主の3つのΔglaAドメインの一つの、3’−3”−glaAターゲット配列に隣接して組み込まれ、その下流側には更に1または複数のamdSカセットをもつ。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。該7.5kbのBglIIハイブリッド化フラグメントの強度は、組み込まれたphyAおよびamdSカセットの数(n)に依存することが分かる。
【図21】第21図は、pGBAAS−1/pGBTOPFYT−1 A.ニガーISO−505形質転換体における、3つのΔglaAドメイン(夫々B、SaおよびBaで記されている)の模式的な表示である。ここで、多数のamdSカセットは、該A.ニガーISO−505宿主の3つのΔglaAドメインの一つの、3’−3”−glaAターゲット配列に隣接して組み込まれ、その下流側には更に1または複数のamdSカセットをもつ。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。該7.5kbのBglIIハイブリッド化フラグメントの強度は、組み込まれたphyAおよびamdSカセットの数(n)に依存することが分かる。
【図22】第22図は、pGBAAS−1/pGBTOPFYT−1 A.ニガーISO−505形質転換体における、3つのΔglaAドメイン(夫々B、SaおよびBaで記されている)の模式的な表示である。ここで、多数のphyAカセットは、該A.ニガーISO−505宿主の3つのΔglaAドメインの一つの、3’−3”−glaAターゲット配列に隣接して組み込まれ、その下流側には更に1または複数のphyAおよびamdSカセットをもつ。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。該7.5kbのBglIIハイブリッド化フラグメントの強度は、組み込まれたphyAおよびamdSカセットの数(n)に依存することが分かる。
【図23】第23図は、pGBAAS−1/pGBTOPFYT−1 A.ニガーISO−505形質転換体における、3つのΔglaAドメイン(夫々B、SaおよびBaで記されている)を模式的に示す図である。ここで、多数のamdSカセットは、該A.ニガーISO−505宿主の3つのΔglaAドメインの一つの、3’−3”−glaAターゲット配列に隣接して組み込まれ、その下流側には更に1または複数のamdSおよびphyAカセットをもつ。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。
【図24a】第24図は、「BamHIで記された」ΔglaA遺伝子座をターゲットとした、一つのphyAコピー(a)、2つのphyAコピー(b)および3つのphyA遺伝子コピー(c)を含み、amdS遺伝子を含まない、A.ニガーISO−505形質転換体の物理的地図を示す。模式的なハイブリダイゼーションパターンは、3”−glaAプローブでプローブされた、BamHIおよびBglII消化物を示す。
【図24b】第24図は、「BamHIで記された」ΔglaA遺伝子座をターゲットとした、一つのphyAコピー(a)、2つのphyAコピー(b)および3つのphyA遺伝子コピー(c)を含み、amdS遺伝子を含まない、A.ニガーISO−505形質転換体の物理的地図を示す。模式的なハイブリダイゼーションパターンは、3”−glaAプローブでプローブされた、BamHIおよびBglII消化物を示す。
【図24c】第24図は、「BamHIで記された」ΔglaA遺伝子座をターゲットとした、一つのphyAコピー(a)、2つのphyAコピー(b)および3つのphyA遺伝子コピー(c)を含み、amdS遺伝子を含まない、A.ニガーISO−505形質転換体の物理的地図を示す。模式的なハイブリダイゼーションパターンは、3”−glaAプローブでプローブされた、BamHIおよびBglII消化物を示す。
【図25】第25図は、A.ニガーISO−505−2形質転換体における、該3つのglaAドメインを模式的に示す図であり、ここで2つのphyAカセットは、「BamHIで記された」ΔglaAアンプリコンにおいて攻撃されており、本図には該「DNA−フラッグ」遺伝子型BamHI/SalI/BglI(A)、BamHI2+/SalI/BglII(B)およびBamHI2+/SalI/BglII(C)が示されている。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BamHI消化物を示すものである。両BamHIハイブリッド化フラグメントの強度は、異なるアンプリコンの存在およびその数に依存することが分かる。
【図26】第26図は、A.ニガーISO−505−2形質転換体における、該3つのglaAドメインを模式的に示す図であり、ここで2つのphyAカセットは、「BamHIで記された」ΔglaAアンプリコンにおいて攻撃されており、本図には該「DNA−フラッグ」遺伝子型BamHI/SalI/BglII(A)、BamHI2+/SalI/BglII(B)およびBamHI2+/SalI/BglII(C)が示されている。そのハイブリダイゼーションパターンは、1.5kbのHindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。BglIIハイブリッド化フラグメントの強度は、異なるアンプリコンの存在およびその数に依存することが分かる。
【図27】第27図は、A.ニガーISO−505−2形質転換体における、該glaAドメインを模式的に示す図であり、ここで2つのphyAカセットは、「BamHIで記された」ΔglaAアンプリコンにおいて攻撃されており、本図には該「DNA−フラッグ」遺伝子型BamHI3+/SalI/BglII(A)、BamHI3+/SalI/BglII(B)およびBamHI4+/SalI/BglII(C)が示されている。そのハイブリダイゼーションパターンは、1.5kbのHindIII/XhoI 5’−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BamHI消化物を示すものである。両BamHIハイブリッド化フラグメントの強度は、異なるアンプリコンの存在およびその数に依存することが分かる。
【図28】第28図は、A.ニガーISO−505−2形質転換体における、該glaAドメインを模式的に示す図であり、ここで2つのphyAカセットは、「BamHIで記された」ΔglaAアンプリコンにおいて攻撃されており、本図には該「DNA−フラッグ」遺伝子型BamHI3+/SalI/BglII(A)、BamHI3+/SalI/BglII(B)およびBamHI4+/SalI/BglII(C)が示されている。そのハイブリダイゼーションパターンは、2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントでプローブされた、BglII消化物を示すものである。両BamHIハイブリッド化フラグメントの強度は、異なるアンプリコンの存在およびその数に依存することが分かる。
【図29】第29図は、P.クリソゲナムにおけるPENアンプリコンを示す。単一のアンプリコン内の該ペニシリン生合成遺伝子、HELEおよびHELFの相対的な位置(括弧内)。複数のPENアンプリコンが、直列反復体(direct reapeats)(n)として存在する。HELFの3’末端は、隣接するPENアンプリコンに伸びていることに注意すべきである。
【図30】第30図は、サザン分析によるPENアンプリコンの定量を示す。BstXIサイト、プローブおよび予想されるハイブリダイゼーションフラグメントの、該niaD遺伝子座(A)およびPENアンプリコン(B)からの相対的な位置。該HELEプローブとのDNAハイブリダイゼーションの量は、PENアンプリコンの数(n)に依存する。
【図31】第31図は、CHEFによる、PENアンプリコンの量。NotIサイトおよびHELEプローブの相対的な位置が示されている。該NotIサイトは、該PENアンプリコンの外側に位置する。ハイブリッド化フラグメントの予想されるサイズは、PENアンブリコン(30+n×57)kbの数に依存する。
【図32】第32図は、標的組み込みを示す。(A)発現ベクターは、対象となる該遺伝子を含み、適当なプロモータ(P)およびターミネータ(T)によって調節される。該カセットは、該ターゲットサイトと相同な5”および3”領域(”および’は、夫々ゲノム配列からベクター配列を識別するためのものである)によってフランキング状態にある。カセットおよびフランキング部は、該発現ベクターの増殖のために、E.コリベクター内でクローニングされる。形質転換に先立って、該発現ベクターを、制限酵素Rで消化して、線状フラグメントを生成し、かつ該E.コリ配列を除去する。(B)組み込みは、組み換えのためのホットスポットとしての、該形質転換フラグメントの5’および3’末端を持つ、該ゲノムの領域において起こる。(C)得られる形質転換体は、該ターゲットサイトにおいて組み込まれた、該形質転換フラグメントの1または複数のコピー(n)(括弧内)を含む。
【図33】第33図は、発現ベクターpHELE−A1を示す。HELEの5’および3’領域によってフランキング状態にある、該amdS発現カセットを含む、該形質転換フラグメントは、SfiIフラグメントとして単離された。これらサイトは、対応するフランキング部をPCR処理するために使用した該オリゴを介して導入された。
【図34】第34図は、発現ベクターpHELF−A1を示す。HELFの5’および3’領域によってフランキング状態にある、該amdS発現カセットを含む、該形質転換フラグメントは、SfiIフラグメントとして単離された。これらサイトは、対応するフランキング部をPCR処理するために使用した該オリゴを介して導入された。
【図35】第35図は、発現ベクターpHELE−E1を示す。HELEの5’および3’領域によってフランキング状態にある、該CefE発現カセットを含む、該形質転換フラグメントは、SfiIフラグメントとして単離された。
【図36】第36図は、発現ベクターpHELF−F1を示す。HELEの5’および3’領域によってフランキング状態にある、該CefF発現カセットを含む、該形質転換フラグメントは、SfiIフラグメントとして単離された。
【図37】第37図は、組み換えによるamdSの喪失を示す。(A)該5’および3’フランキング部の直列反復体は、発現カセットのタンデム組込みによって生ずる。(B)該5’および3’フランキング対および組み換えは、単一の交差によって起こる。(C)交差サイト間の該領域は、失われる。(対象とする遺伝子を包含する)任意の数のカセットが失われる可能性があることに注意すべきであり、これはその全てが、直列反復体によって、フランキング状態にあるからである。
【図38】第38図は、HELE内へのCefEの組込みを示す。HELE内の(A)単一または(B)複数のCefEカセットの物理的地図。NruIサイト、CefEプローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されるサイズの相対的な位置が示されている。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって生じ、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。
【図39】第39図は、TAFEによって決定された、HELE中へのCefEの組込みを示す。HpaIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されるサイズの相対的な位置が示されている。該ハイブリッド化フラグメントのサイズは、組み込まれたカセット(5.9+n×6.0)kbの数(n)に依存する。
【図40a】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40b】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40c】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40d】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40e】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40f】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40g】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40h】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40i】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40j】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図40k】第40図は、カセットおよびターゲットPCRを示す。特定の鋳型とオリゴとの組み合わせを、模式的に示す。ターゲットPCRにとって必須のことは、一個のオリゴが、該5’フランキングの上流に位置することである。従って、いくつかのカセットが存在し得るが、このオリゴの該カセット3’のみがPCR生成物を生成する。関連するドメイン、オリゴおよびPCR生成物の予想されるサイズが、示されている。(A)cefEのカセットPCR、(B)HELE中のCefEのターゲットPCRN(C)HELE中のamdSのターゲットPCR、(D)amdSのカセットPCR、(E)cefF−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(F)amdS−cefEの組み合わせのターゲットPCR、(G)amdS−amdSの組み合わせのターゲットPCR、(H)niaD遺伝子座のカセットPCR、(I)cefFのカセットPCR、(J)HELF中に組み込まれたcefFのターゲットPCR、(K)HELF中に組み込まれたamdSのターゲットPCR。
【図41】第41図は、HELEへのamdSの組み込みを示す。HpaIサイト、amdSプローブおよび該ハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置が示されている。
【図42】第42図は、プローブを示す。プローブを調製するために単離されたDNAフラグメント:(A)cefEプローブ:pHEL−E1のNdeI−NsiIフラグメント、(B)cefFプローブ:pHEL−F1のNdeI−NsiIフラグメント、(C)amdSプローブ:pHELE−A1のNotIフラグメント、(D)HELEプローブ:pHELE−A1のSphI−NotIフラグメント、(E)niaDプローブ:鋳型としてP.クリソゲナム染色体DNAをもつ、オリゴ28および29のPCR生成物。
【図43】第43図は、遺伝子変換を示す。amdSを、他のPENアンプリコン(括弧内)中のcefEで置換することによる、遺伝子変換および得られるcefEの複製。
【図44】第44図は、一アンプリコンにおける(cefE+cefF)の組込みを示す。同一のアンプリコン中の、HELEにおけるcefEとHELFにおけるcefFとの組込みに対して特異的な、NotIサイト、HELEプローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置を示す。NotIサイトは、cefFおよびcefEカセットの組込みを通して組み込まれることに注意。
【図45a】第45図は、HELFへのcefFの組込みを示す。HELFにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefFカセットの物理的地図。NruIサイト、cefFプローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置を示す。5.7kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、その強度は存在するカセットの数(n)に依存する。
【図45b】第45図は、HELFへのcefFの組込みを示す。HELFにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefFカセットの物理的地図。NruIサイト、cefFプローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置を示す。5.7kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、その強度は存在するカセットの数(n)に依存する。
【図46a】第46図は、(cefE+cefF)遺伝子変換体におけるcefEの定量を示す。HELEにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefEカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図46b】第46図は、(cefE+cefF)遺伝子変換体におけるcefEの定量を示す。HELEにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefEカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図46c】第46図は、(cefE+cefF)遺伝子変換体におけるcefEの定量を示す。HELEにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefEカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図47a】第47図は、(cefE+cefF)遺伝子変換体におけるcefFの定量を示す。HELFにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefFカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該5.7kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図47b】第47図は、(cefE+cefF)遺伝子変換体におけるcefFの定量を示す。HELFにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefFカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該5.7kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図47c】第47図は、(cefE+cefF)遺伝子変換体におけるcefFの定量を示す。HELFにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefFカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該5.7kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図48a】第48図は、cefE遺伝子変換体の定量を示す。HELEにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefEカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図48b】第48図は、cefE遺伝子変換体の定量を示す。HELEにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefEカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【図48c】第48図は、cefE遺伝子変換体の定量を示す。HELEにおける(A)単一のまたは(B)複数のcefEカセットに対するNruIサイト、プローブおよびハイブリッド化フラグメントの予想されたサイズの相対的な位置。該6.0kbのフラグメントは、該カセットの複数の組込みによって起こり、またその強度は、存在するカセットの数(n)に依存する。(C)niaD遺伝子座。遺伝子変換体は、その親菌株と同一のハイブリッド化パターンを持つであろうが、該niaDシグナルに相対的に高い強度を持つ。
【0013】
[発明の説明]
第一の局面において、本発明は糸状菌に関連し、該糸状菌では、その染色体の少なくとも2つの実質的に相同なDNAドメインに、組み換えDNA分子が組み込まれており、ここで該DNAドメインは、リボソームDNA反復体ではない。本発明の糸状菌は、そのゲノム内に、少なくとも2つのこのようなDNAドメインをもつ糸状菌を、組み換えDNA分子によって形質転換し、該DNAドメインの少なくとも一つに組み込まれた、少なくとも一つの組み換えDNA分子をもつ形質転換体について同定し、かつ引き続き該形質転換体の子孫における菌株について同定することによって調製され、該組み換えDNA分子を含む該DNAドメインは、該DNAドメインの他のバージョンによる遺伝子変換を通して、または該組み換えDNA分子を含む該DNAドメインの増幅によって、増殖する。換言すれば、本発明の糸状菌には、そのゲノム内の、内性のDNAドメインの少なくとも一つにおいて、少なくとも一つの該組み換えDNA分子が組み込まれている。
【0014】
本発明の糸状菌は、真核微生物であり、真菌界の真菌門のあらゆる糸状菌型を包含する(例えば、Lasure & Bennett,1985,Fungal Taxonomy,In:gene manipulations in Fungi,pp.531−535,Academic Press,Inc.を参照のこと)。本発明の糸状菌は、形態学的、生理学的および遺伝学的に酵母とは異なっている。即ち、S.セレビシアエ(cerevisiae)等の酵母と比較して、糸状菌の増殖的成長は、菌糸の伸長によっており、また炭素代謝は、偏性好気性である。その上、S.セレビシアエ等の酵母は、極めて安定なディプロイド期を持つが、例えばアスペルギルスニデュランス(Aspergillus nidulans)およびニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)等の糸状菌においては、ディプロイド期は、減数分裂に先立って、ほんの短期間存在するに過ぎない。更に、多くの工業的に重要な糸状菌は、デューテロマイコチナ(Deuteromycotina)の亜門に属し、既知の如何なる性別型をももたないことによって識別される、真菌の人工的な群である、不完全菌類(Fungi Imperfecti)とも呼ばれている。本発明の好ましい糸状菌は、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ペニシリウム(Penicillum)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、アクレノニウム(Acremonium)、フサリウム(Fusarium)、ムコール(Mucor)、リゾファス(Rhizophus)、ファネロカエト(Phanerochaete)、ニューロスポラ(Neurospora)、フミコーラ(Humicola)、クレビセプス(Cleviceqs)、ソルダリア(Sordaria)、ウスチラゴ(Ustilago)、シゾフィラム(Schizophyllum)、ブラケスレア(Blakeslea)、モルチエレラ(Mortierella)、フィコマイセス(Phycomyces)およびトリポクラジウム(Tolypocladium)属に属する。本発明の最も好ましい糸状菌は、Raper & Fennell(1965,In:The genus Aspergillus,The Williams & Wilkins Company,バルチモア)によって定義された如き、アスペルギルスニガー群に属する真菌、例えばA.ニガー、Raper & Fennell(上記文献)によって定義されたようなアスペルギルスフラブス(fulavus)群、例えばA.オリザエ(oryzae)、並びに真菌類トリコデルマリーゼイ(reesei)およびペニシリウムクリソゲナムである。本発明を、糸状菌類A.ニガーおよびP.クリソゲナムによって例示する。
【0015】
本発明による該糸状菌類は、そのゲノム内に、組み換えDNA分子の1以上のコピーを組み込むのに適したDNAドメインの、少なくとも2つの実質的に相同なバージョンを含み、ここで該DNAドメインは、リボソーム以外のDNAである。本発明の実施例において、A.ニガーの増幅されたグルコアミラーゼ(glaA)遺伝子座およびP.クリソゲナムの増幅されたペニシリンクラスターは、該組み換えDNA分子を組込むためのDNAドメインとして使用される。ペニシリン生合成遺伝子pcbAB、pcbCおよびpenDEを含む、A.ニガーのglaA遺伝子座およびP.クリソゲナムのペニシリンクラスター両者は、夫々野生型のA.ニガーおよびP.クリソゲナム菌株のゲノム内に単一のコピーとして現れる。本発明の実施例で使用するように、これらDNAドメインの複数のコピーを含む菌株は、夫々改良されたグルコアミラーゼまたはペニシリン産性をもつ菌株について選別することによって、古典的な菌株改良プログラムにおいて、得ることが出来る。しばしば、このような産性の改善は、該選択された菌株のDNAドメインの増幅の結果である。このように増幅されたDNAドメインは、以下においてアンプリコンと呼ばれる。本発明は、好ましくは該組み換えDNA分子を組み込むためのDNAドメインとして、このようなアンプリコンを使用するが、本発明はこれに制限されるものではない。事実、2以上の実質的に相同なバージョンが糸状菌内で起こる、任意のDNAドメインを、以下の2つの基準を満たす限りにおいて、使用することが出来る。1)該DNAドメインは、組み換えDNA分子の組込みを許容するのに適したものであるべきであり、2)該DNAドメインは、遺伝子変換を介して、該組み込まれた組み換えDNA分子の増殖を達成するために、該真菌ゲノムの該ドメインの、他の実質的に相同なバージョンとの組み換えを可能とするものであるべきである。
【0016】
該第一の基準を満たすためには、DNAドメインは、十分な長さを有していて、相同組み換えを介して、該ドメイン内への該組み換えDNA分子の攻撃を可能とする必要がある。このために、DNAドメインは、少なくとも100bp、好ましくは少なくとも1kbおよびより好ましくは少なくとも2kbを含むべきである。組み換えDNA分子をDNAドメインに組み込むための、該DNAドメインの適性は、更に該DNAドメインへの組込みが、対象とする該糸状菌の生存性に必須の機能を破壊するものであってはならない、と言う要件によって決定される。
【0017】
該第二の機能上の基準に関連して、該真菌ゲノムの該ドメインの、他の実質的に相同なバージョンとの組み換え可能性は、種々のバージョンに係わる該DNAドメイン間の遺伝子変換を可能とするために必要とされる。この目的を達成するための最小の要件は、該ドメインの各バージョンが、DNA配列によって、該ドメインの何れかの端部上でフランキング状態にあることであり、該DNA配列は、該フランキング配列間の相同組み換えを可能とするように、該DNAドメインの、他のバージョンの対応するフランキング配列と実質的に相同である。この相同組み換えの結果は、遺伝子変換であり、そこでは、該DNAドメインの1バージョンが、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む、該他のDNAドメインの複製されたバージョンによって置き換えられている。依然として遺伝子変換を可能とする、該フランキング配列の相同性の長さおよび程度に関連する、該最小の要件は、正確には知られておらず、また対象とする生物に依存して変動する可能性がある。恐らく、少なくとも60%の全体としての相同性をもつ、100bpと言う最小の長さは、依然遺伝子変換を可能とするであろう。明らかに、遺伝子変換の頻度は、該DNAドメインからフランキング状態にある該配列の長さおよび相同性の増加に伴って増大するであろう。好ましくは、該異なるドメインは、少なくとも80%の相同性ををもつ、少なくとも1kbの配列によってフランキング状態にある。該真菌ゲノムは、上で定義したように、1または種々の型のDNAドメインを含むことが出来る。相互に完全なコピーではない、種々の型のこのようなドメインの例は、対立遺伝子変異体、遺伝子群および/またはイソ酵素をコードする遺伝子である。最も好ましいものは、相互に正確なコピーであり、多くとも組み込まれた組み換えDNA分子の存在においてのみ異なる、ドメインである。このような同等なドメインの例は、アンプリコンである。かくして、本発明の好ましい態様においては、組み換えDNA分子の1以上のコピーの組込みに適した、該DNAドメインは、アンプリコンである。
【0018】
該DNAドメインの全体としての長さは、重要ではなく、1kb未満から、数百kbの範囲内で変動でき、例えば本発明の実施例においては、該DNAドメインの長さは、該増幅されたペニシリンクラスターに対する1単位当たり57kbから、該増幅されたglaA遺伝子座に対する1単位当たり80kbを越える値までの範囲に及ぶ。
【0019】
該組み換えDNA分子は、本発明の糸状菌に、所定の遺伝的変更を導入するのに必要な、遺伝子要素の任意の組み合わせを含む。該組み換えDNA分子は、任意の遺伝子要素、その一部またはその組み合わせ、例えば遺伝子(コード部分または完全な遺伝子座)、cDNA、プロモータ、ターミネータ、イントロン、シグナル配列、任意の調節DNA配列またはDNA−結合タンパクの認識配列を含む。該遺伝的要素は、また変性された、即ち1以上のヌクレオチド改変(例えば、挿入、欠失、置換)を含む、DNA配列を含むことができる。
【0020】
該所定の遺伝子の変性は、選択された糸状菌におけるNA配列の任意の改変、即ち挿入、欠失および/または置換を含み、これらの改変は、形質転換または該組み換えDNA分子の同時の形質転換による、該真菌への、上記した1以上の遺伝的要素の導入の結果である。数種のこのような遺伝的改変を、独立した形質転換工程で導入することが出来ることが、理解されよう。
【0021】
本発明の1態様に従えば、該糸状菌の該DNAドメインに組み込まれた該組み換えDNA分子は、1以上の所定の遺伝子を発現させるための、1以上の発現カセットを含む。ここにおいて、発現カセットとは、発現すべき所定の遺伝子を含み、かつ該遺伝子の発現を実施しかつ調節することの出来る、適当な発現要素と機能可能に結合している、DNAフラグメントを意味するものと理解される。このような発現要素は、プロモータ、シグナル配列、ターミネータ等を包含する。
【0022】
該糸状菌に、異種または同種のタンパクまたは酵素を生産させようとする場合、該所定の遺伝子は、好ましくは分泌性のタンパクまたは酵素をコードし、従って該酵素の分泌を行うシグナル配列を含む。この態様は、例えば本発明においては、A.ニガーのglaAアンプリコン中の該A.ニガーフィターゼ遺伝子を含む発現カセットの組込みによって、実施される。しかしながら、本発明が対象とする任意のタンパクまたは酵素に適用できることは、当業者には明らかであろう。
【0023】
また、本発明の糸状菌に、一次または二次代謝産物を生産させようとする場合には、該所定の遺伝子は、通常これらの代謝産物の生合成に関与する、1種以上の細胞内酵素をコードするであろう。本発明のこの局面に従う好ましい態様において、該糸状菌は、該DNAドメインに組み込まれた1種以上の組み換えDNA分子を含み、結果として該組み換えDNA分子は、該糸状菌には本来備わっていない、代謝経路の一部である、細胞内酵素のための1種以上の発現カセットを含む。このような糸状菌の例は、デアセトキシセフアロスポリンCシンセターゼ(エキスパンダーゼ)およびデアセチルセファロスポリンCシンセターゼ(ヒドロキシラーゼ)の発現カセットを、ペニシリンアンプリコン中に組み込んだ、P.クリソゲナム菌株を包含し、該カセットはこれら菌株が夫々アジポイル−7−アミノデアセトキシセフアロスポラン酸およびアジポイルアミノデアセチルセファロスポラン酸を合成することを可能とする。
【0024】
該組み換えDNA分子が、該DNAドメインに組み込まれるメカニズムは、本発明にとって重要ではなく、また本発明を適用する対象に依存する。該DNAドメインへの該組み換えDNA分子の組込みは、ランダムな組込みによって起こる可能性があり、しかもより好ましくは、組み込みは、単一の交差組み換え事象、即ち該組み換えDNA分子の挿入をもたらす組み換え事象、該組み換えDNA分子による置換、即ち該DNAドメインの元の配列の一部の置換をもたらす、二重交差組み換え事象の何れかによる、相同組み換えによって起こる。相同組み換えによる組込みを促進するために、該組み換えDNAは、好ましくは該DNAドメインに組込むためのターゲット配列に対して相同である、配列を含んでいる。好ましくは、該組み換えDNA分子中のこのようなターゲット配列は、該DNAドメイン内のターゲット配列と同様である。
【0025】
本発明の好ましい態様において、該糸状菌中に存在する実質的に相同なDNAドメインの各バージョンは、該組み換えDNA分子の組み込まれたコピーを含む。該真菌に存在する全ての該DNAドメインの、組み込まれた組み換えDNA分子による完全な占有は、該組み換えDNA分子の可能な最大のコピー数をもたらし、しかもより安定な状況をもたらす。というのは、このような真菌が、「中空(empty)」DNAドメインを含まないからである。該中空DNAドメインは、中実DNAドメインによる遺伝子変換におけるドナーとして機能でき、結果として該組み込まれた組み換えDNA分子のコピー数を減じる。同一の型のDNAドメインの各バージョンは、組み換えDNA分子によって占有されるか、あるいは該DNAドメインの異なる型の各バージョンが該分子によって占有される。好ましくは、該糸状菌のゲノムに存在する、該実質的に相同な全ての型のDNAドメインの各バージョンは、該組み換えDNA分子の組み込まれたコピーを含む。
【0026】
本発明の有利な1局面において、該組み換えDNA分子の組込みのために使用する該DNAドメインは、その本来の状態において、高いレベルでの発現を可能とする内在性遺伝子を含む。組み込まれた組み換え遺伝子の発現レベルは、該遺伝子が組み込まれている、ゲノム遺伝子座に依存して大幅に変動する可能性があることが、一般的に知られている。発現すべき組み換え遺伝子の組込みに高度に発現されたドメインを使用する利点は、これらドメインが、少なくとも該内在性遺伝子の高いレベルでの発現を維持できることにある。従って、このようなドメインはまた、組み込まれた組み換え遺伝子の高いレベルでの発現をも維持するであろうと考えられる。事実、我々は、A.ニガーの該glaAドメインへの組込みおよびP.クリソゲナムの該ペニシリンクラスターへの組込みが、本明細書の実施例において記載されるように、幾つかの他の遺伝子座における組込みと比較して、遺伝子コピー当たりの高い発現レベルを与えることを見出した。これに関連して、高いレベルの発現を可能とする遺伝子は、最大レベルで発現された場合に、全mRNA集団の少なくとも0.1%、好ましくは該全mRNAの少なくとも0.5%およびもっとも好ましくは該全mRNAの少なくとも1%を構成する、mRNAを生成する遺伝子として定義される。本発明の組み換えDNA分子の組込みに特に適した該ドメインを含む、このような高度に発現性の内在性遺伝子の例は、解糖酵素、澱粉分解酵素、セルロース分解酵素および/または抗生物質生合成酵素をコードする遺伝子である。
【0027】
より一層好ましいものは、工業的過程に関与しており、かつ高いレベルで、グルコアミラーゼ遺伝子、TAKAアミラーゼ遺伝子、セロバイオヒドロラーゼ遺伝子およびペニシリン生合成遺伝子を発現することが知られている、遺伝子を含むドメインである。本発明の更なる局面において、該高度に発現された内在性遺伝子は、該内在性遺伝子の発現が必要とされない場合には、該DNAドメインの各コピー内で不活性化される。このような場合において、該内在性遺伝子の該高レベルでの発現の不活性化は、更に別の対象とする遺伝子の発現を可能とする、エネルギーおよび資源の利用を可能とする。該組み換えDNA分子の組込みによって製造される該所定の酵素並びに該内在性遺伝子によってコードされる酵素両者が、分泌型酵素である場合には、該内在性酵素の不活性化は、該所定の酵素のより純粋な処方物をもたらす。好ましくは、該内在性の遺伝子は、該内在性遺伝子の少なくとも一部を不可逆的に除去して、該不活性化の復帰を排除することによって不活性化される。より好ましくは、該内在性遺伝子の不活性化は、不可逆的な除去によって行われ、該除去はプロモータおよび上流側の活性化配列の少なくとも一部の除去を含む。これは、該組み換えDNA分子の組込みによる、製造すべき酵素をコードする所定の遺伝子の発現が、該内在性の遺伝子を由来とするプロモータから誘導される場合に特に有利である。というのは、該所定の遺伝子の発現のために必要な転写因子を強く制限する競合を、排除するからである。
【0028】
本発明の更なる態様において、該DNAドメインの各バージョンは、固有の配列標識によって、該糸状菌の該ドメインのその他のバージョンから識別される。このような配列標識は、該種々のドメイン間の遺伝子変換を追跡することを可能とし、該種々のドメインは、所定の遺伝子型をもつ変換体のスクリーニングおよび/または選別を容易にする。任意の型の配列標識を使用できるが、該ドメインの、例えばサザンブロットで検出される制限サイトから、容易にアッセイできる表現型を与える、完全に選別可能なマーカー遺伝子に及ぶ、種々のバージョンの検出を可能とするものである必要がある。該配列標識の特に有用な態様を、ここに例示するが、これらは、該PCRを刺激するための一対のオリゴヌクレオチドを使用する単一のPCRにおいて、該ドメイン各々を検出することを可能とする。該ドメインは、該PCRにおいて、該ドメインの各バージョンが、固有の長さを持つPCRフラグメントを製造するように変性される。得られるPCRフラグメントの長さおよび強度は、夫々該ドメイン各々の存在並びにコピー数の指標となる。「DNAフラッグ」と呼ばれるこの型の配列標識は、多数の変換体コロニーの遺伝子型の迅速な解析を可能とし、結果として所定の遺伝子型をもつ変換体を得ることを可能とする。
【0029】
本発明は、更に該本発明の糸状菌の製法にも関連する。これら方法は、糸状菌を形質転換する工程を含み、該糸状菌は1以上のその染色体内に、組み換えDNA分子の1種以上のコピーを組み込むのに適した、少なくとも2つの実質的に相同なDNAドメインを含み、また該DNAドメインは、組み換えDNA分子を含む、リボソームDNA反復体ではない。糸状菌の形質転換は、今日では当業者にとっては日常的な作業であり、糸状菌に適した種々の形質転換プロトコールが利用可能である。
【0030】
該組み換えDNA分子による該糸状菌の形質転換は、選別可能なマーカー遺伝子の使用を必要とし、該遺伝子は、形質転換遺伝子を取り込んだ真菌細胞を、形質転換されていない細胞から識別することを可能とする。種々の選別可能なマーカー遺伝子が、糸状菌の形質転換のために利用可能である。適当なマーカーは、アミノ酸またはヌクレオチド代謝に関与する、栄養要求性マーカー遺伝子、例えばオルニチン−トランスカルバミラーゼ(argB)、オロチジン−5’−デカボキシラーゼ(pyrG)またはグルタミン−アミド−トランスフェラーゼインドールグリセロール−ホスフェート−シンターゼホスホリボシル−アンスラニレートイソメラーゼ(trpC)、あるいは炭素または窒素代謝に関与するマーカー、例えばniaDまたはfacA、並びに抗生物質耐性マーカー、例えばフレオマイシン、ブレオマイシンまたはネオマイシンに対する耐性を与える遺伝子(G418)を包含する。好ましくは、正および負の遺伝子選別両者を可能とする、2方向性の選別マーカーを使用する。このような2方向性の選別マーカーの例は、pyrG、facAおよびamdS遺伝子である。
【0031】
その2方向性の故に、これらマーカーは、該導入された組み換えDNA分子を所定の位置に残したまま、形質転換された糸状菌から取り出して、選別性のマーカーを含まない糸状菌を得ることを可能とする。このMARKER GENE FREETM形質転換技術の本質は、EP−A−0,635,574に記載されている。これを本発明の参考文献とする。これら選別マーカーの中で、支配的に2方向性の選別マーカー、例えばA.ニドランス、A.ニガーおよびP.クリソゲナムのamdS遺伝子等の、アセタミダーゼ遺伝子を使用することが最も好ましい。この2方向性に加えて、これらマーカーは、変異(栄養要求性)菌株の使用を必要とせず、しかも直接野生型の菌株で使用できる、支配的選別マーカーであると言う利点をも与える。
【0032】
従って、本発明の更なる態様は、本発明の糸状菌に関連し、そこで該組み換えDNA分子は選別マーカー遺伝子に欠乏しており、あるいはより好ましくは選別マーカー遺伝子を全く含まない、本発明による糸状菌に関連する。
【0033】
本発明の糸状菌を該組み換えDNA分子によって形質転換するのに使用する、該選別マーカーは、形質転換すべき該組み換えDNA分子と物理的に結合しているか、あるいはこれらは該所定の該組み換えDNA分子と同時に形質転換される別のDNA分子上に存在できる。同時形質転換は、当業者により日常的に利用されている。というのは、これが糸状菌内で比較的高い頻度で起こるからである。
【0034】
本発明の糸状菌を製造する方法の次の段階は、該糸状菌の該DNAドメインの少なくとも1つに組み込まれた、少なくとも1つの組み換えDNA分子を有する形質転換体を選別する工程である。当業者は、多数の日常的な技術を利用して、得られた形質転換体の何れが、そのDNAドメインの1つに組み込まれた組み換えDNA分子をもつかを決定することが出来る。更なる段階において、該選択された形質転換体を、増殖し、その子孫から、該DNAドメインの少なくとも2つが組み込まれた組み換えDNA分子を含む菌株を選別する。このことは、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む該DNAドメインが、「中空」DNAドメインによる遺伝子変換または増幅を介して、増幅された菌株を選別することを意味する。このような遺伝子変換および増幅事象は、自発的には低頻度で起こる。これら事象が発生する正確な頻度は、対象とする該真菌およびその数、該DNAドメインの相同性の長さおよびその程度を包含する、種々の変数に依存するものと考えられる。しかし、我々は、これらの頻度が、今日利用可能な解析技術を用いて、これら事象が発生している菌株のスクリーニングおよび選別を可能とするのに十分に高いことを見出した。該組み込まれた組み換えDNA分子を含む該DNAドメインが、増幅されている菌株は、例えば該組み換えDNA分子によって合成が行われている、生成物の高いレベルでの産性をもつ菌株について単にスクリーニングすることによって同定でき、あるいはまたこのような菌株は、例えば上で概説した「DNA−フラッグ」テストによって、その遺伝子型を分析することによって、同定することが出来る。
【0035】
本発明の方法は、付随的な工程を含むことが出来、該工程においては、組み込まれた組み換えDNA分子を含む、該DNAドメインの増幅が起こっている該菌株の一つを増殖し、その子孫から、該DNAドメインの付随的なコピーが、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む、菌株を選別する。次いで、該DNAドメイン各々が、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む菌株を与えるまで、これら菌株をこの手順にかける。上で概説したように、このような菌株は、該組み換えDNA分子のコピー数が高く、また安定性が改善されていると言う利点を与える。
【0036】
本発明による糸状菌の調製方法の更なる局面においては、該組み換えDNA分子は、該DNAドメインと実質的に相同な配列を含む。該組み換えDNA分子におけるこのような実質的に相同な配列の存在は、該組み換えDNA分子が、該DNAドメインに組み込まれる頻度を、実質的に高める。該組み換えDNA分子における該実質的に相同な配列に関連する最小の要件は、知られていないが、実際には少なくとも1kb、好ましくは少なくとも2kbの相同なターゲット配列によって、妥当なターゲット頻度が得られる。
【0037】
上記のように、本発明の1局面は、該糸状菌の該組み換えDNA分子による形質転換のための、2方向性の選別性マーカーの使用に関連する。一旦このような形質転換が達成されると、これらを、該2方向性のマーカーが存在しないことについて、逆選別することが有利である。このようなマーカーを持たない形質転換体を、次に更に形質転換にかけるか、あるいは増殖させて、その子孫から該組み換えDNA分子を含む該DNAドメインの遺伝子変換および/または増幅を含む菌株を選別することが出来る。
【0038】
本発明によるもう一つの糸状菌の製法においては、糸状菌を、組み換えDNA分子で形質転換し、所定のゲノムターゲット配列中に組み込まれた、少なくとも1つの組み換えDNA分子を含む形質転換体を選別する。この形質転換体を、次に増殖させ、その子孫から、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む、少なくとも2つのDNAドメインを含む菌株を選別する。この場合において、該組み換えDNA分子で形質転換すべきレシピエント糸状菌は、必ずしも該DNAドメインを含む必要はない。該DNAドメインは、寧ろ該組み換えDNA分子がそこに組み込まれた後に、増幅される。
【0039】
本発明は、組み換え糸状菌の調製を可能とし、該糸状菌は、その染色体1以上に、組み換えDNA分子の1以上のコピーを組み込むのに適した、少なくとも2つの実質的に相同なDNAドメインを含んでおり、ここで該DNAドメインは、リボソームDNA繰り返し体ではなく、また該DNAドメインの少なくとも2つは、組み換えDNA分子の組み込まれたコピーを含む。これら組み換えられた真菌は、興味ある製品を生産するための方法で利用できる。このような方法は、通常該興味ある製品の製造を促す媒体中で、該組み換え細胞を培養する工程、および該培養培地および/または該真菌から、該興味ある製品を回収する工程を含む。該興味ある製品は、タンパク例えば酵素および/または一次代謝産物、例えばCO、アルコールまたは有機酸、および/または二次代謝産物、例えば抗生物質またはカロチノイド等であり得る。該興昧ある製品は、また該組み換えられた真菌自体であり得、例えばこの方法によって得られたバイオマスであり得る。本発明の糸状菌において生産し得る酵素およびタンパクの例は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ホスファターゼ、フィターゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ、エステラーゼ、グリコシダーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アラビノフラノシダーゼ、ラムノシダーゼ、アピオシダーゼ、キモシン、ラクトフェリン、細胞壁分解酵素、例えばセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ラムノガラクッロナーゼ等を包含する。
【0040】
本発明の糸状菌およびその製法の利点の幾つかを以下にまとめる。
−本発明は、糸状菌における組み換えDNA分子の、非−ランダム性多重コピ−組込み用のこれまでに利用可能な系と比較して、極めて高い融通性を与える。この大きな融通性は、本発明が形質転換に対して、欠陥のある選別マーカー遺伝子の使用に制限しておらず、また本発明が組込みのためのターゲット遺伝子として、リボソームDNA配列のみの使用に制限していないからである。
【0041】
−本発明の糸状菌は、組み換えDNA分子が、タンデムアレイ状にランダムに組み込まれている、従来の組み換え糸状菌と比較して、該組み換えDNA分子の組み込まれた多数のコピーの、より高い遺伝的安定性を与える。特に、ランダムに組み込まれた組み換えDNA分子の高いコピー数を持つ糸状菌は、通常ほんの僅かなゲノム遺伝子座に組み込まれた、タンデム状に繰り返された組み換えDNA分子の大きな数を持つであろう。この立体配置は、本発明の立体配置よりも本来的に不安定であり、後者では該組み換えDNA分子のほんの僅かなタンデム状に繰り返されたコピーのみ(好ましくは、5コピー以下)が、幾つかの異なるゲノムサイト、例えば該実質的に相同なDNAドメインに組み込まれる。例えば、本発明の糸状菌は、コピー数15を持つことができ、結果として該真菌は、5つの実質的に相同なDNAドメインに組み込まれた、組み換えDNA分子の3つのタンデム状に繰り返されたコピーを持つことができる。これとは対照的に、コピー数15を有する従来の組み換え糸状菌は、一つの明らかにされていないゲノムサイトに組み込まれた10個のコピーおよびもう一つの明らかにされていないゲノムサイトに組み込まれた5個のコピーを持つことができる。本発明により、同一のコピー数をもつ本発明の真菌と比較して、後者の立体配置が、該組み換えDNA分子の喪失に関して、より不安定であることが分かった。
【0042】
−本発明の糸状菌は、リボソームDNAへの組込みを含む糸状菌と比較して、遺伝子コピー当たりの高い発現レベルを与えることが予想される。というのは、後者が、タンパクコード遺伝子の高いレベルでのRNA−ポリメラーゼII転写を維持することが明らかとなっていないからである。
【0043】
−本発明の糸状菌は、多重コピー菌株であり、その遺伝子型は、少なくとも該組み込まれた組み換えDNA分子が関与している限りにおいて、完全に定義することができる。このことは、これら真菌が関与している過程および生成物について、規制上の承認を得ることを容易にするであろう。
【0044】
−同様な理由から、該糸状菌の表現型は、該組み換えDNA分子がランダムに組み込まれている、従来の組み換え糸状菌と比較して、より一層予測性が高く、これは該ランダムな組込みが、該組込みサイトまたはその近傍に存在する未知の遺伝子の発現を変更する可能性があるからである。
【0045】
−本発明の該糸状菌の製法は、初期の古典的な菌株改良プログラムとの共同作用と言う利点を与える。上に概説したように、本発明の好ましい態様においては、工業的な糸状菌が使用され、これは古典的な菌株改良プログラムにおいて得たものである。このような真菌の使用は、これらがしばしば本発明に従って組み換えDNA分子を組み込みかつ引き続き増殖させるのに適したアンプリコンを含むばかりか、該工業的糸状菌が、蓄積された(多数の)突然変異を持つであろうことから有用であり、該突然変異は該菌株改良プログラムが、目的としている生成物(「以前の」生成物)にとって有利であるばかりでなく、その他の新規な生成物にとっても有利である。これら改良された工業的な糸状菌の変性によって、該遺伝子が、該「以前の」生成物の生産に関与して、該真菌が新規な生成物を製造することを可能とし、該有利な突然変異は、今度は該新規な生成物の効率的な生産に関与するであろう。このように、本発明は新規産性菌株の開発における甚大な努力を減ずることを可能とする。
【0046】
−本発明は、組み換え糸状菌の「設計並びに溝築」を可能とする。該「設計並びに溝築」なる用語によって、我々は、単一のコピーレベルで、DNAドメインに導入すべき所定のあらゆる遺伝子変性の設計を行うことを意味する。例えば、所定のタンパクを生産する場合に、該タンパクに関する1以上の発現カセットを、該DNAドメインに組み込み、また該所定のタンパクの発現に負の影響を与える可能性のある、同一のドメインに存在する、内在性の遺伝子は、不活性化される。タンパク混合物を製造しようとする場合には、該設計は、該種々のタンパクの発現レベルを所定の比率に調製することを含むであろう。後者は、代謝経路の操作において特に有利であり、該経路の操作において、新規な代謝経路の一部を構成する幾つかの新規な代謝活性が、所定の比率で導入される。単一のコピーレベルにおいて、これら所定の遺伝的変性のこれら設計が、一旦確立されると、該溝築工程を開始することができる。このことは、該設計された単一のコピードメインが、該所定の産性レベルに達するまで、該所定の遺伝的変性を含む該ドメインの、遺伝子変換および/または増幅によって、増殖される。
【0047】
[EXAMPLES]
命名
A.ニガー アスベルギルスニガー(Aspergillus niger)
P.クリソゲナム ペニシリウムクリソゲナム(Penicillium chrysogenum)
S.クラブリゲルス ストレプトミセスクラブリゲルス(Sreptomyces clavuligeru s)
A.ニデュランス アスペルギルスニデュランス(Aspergillus nidulans)
phyA A.ニガーphyA遺伝子,フィターゼをコードする。
amdS A.ニデュランスamdS遺伝子,アセタミダーゼをコード する。(Corrick et al,1987 Gene 53:63−71)
cefE S.クラブリゲルスcefE遺伝子,デアセトキシセファロスポリ ンCシンセターゼをコードする。(Kovacevic et al,1989 J.Bacteriol.171:754−760)
cefF S.クラブリゲルスcefF遺伝子,デアセチルデアセトキシセフ アロスポリンCシンセターゼをコードする。(Kovacevic,S.and Miller,J.R.1991 J.Bacteriol .173:398−400)
niaD P.クソソグナムniaD遺伝子、ニトレートリダクターゼをコードする。(Haas et al,1996 Biochem.Biophys.Acta 1309:81−84)
glaA A.ニガーglaA遺伝子、グルコアミラーゼをコードする。
gpdA A.ニデュランスgpdA遺伝子,グリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼをコードする。(Punt et al,1988 Gene 69:49−57)
pcbC P.クリソゲナムpcbC遺伝子,イソペニシリンNシンターゼ(I PNS)をコードする。(Carr et al,1986 Gene 48:257−266)
gpdA gpdAプロモータ
glaA g1aAプロモータ
pcbC pcbCプロモータ
penDE penDEターミネータ
amdS amdSターミネータ
glaA g1aAターミネータ
GLA A.ニガーグルコアミラーゼタンパク
【0048】
略号
CHEF クランプ均一電場(Clamped Homogenous Electric Fields(電気泳動 (electrophoresis))
TAFE 横交流電場電気泳動(Transverse Altemating Field Electrophoresi s)
kb キロベース
bp 塩基対
ADCA アミノデアセトキシセフアロスポラン酸
ADAC アミノデアセチルセファロスポラン酸
oligo オリゴヌクレオチド
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
【0049】
オリゴヌクレオチド:
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
物質および方法
[一般的手順]
標準的な分子クローニング技術、例えばDNA単離、ゲル電気泳動、核酸の酵素的制限変性、サザン分析、E.コリ形質転換法各々は、Sambrook et al.,(1989)“Molecular Cloning:a laboratory manual”,Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NYおよびInnis et al.,(1990)PCRprotocols,aguidetomethodsandapphcations”,Academic Press,サンジエゴに記載のように実施した。合成オリゴデオキシヌクレオチドは、ISOGEN Bioscience(オランダ国、Maarssen)から入手した。DNA配列合成は、Apphed Biosystems 373A DNA配列決定装置にて、製造業者の指示に従って実施した。
【0054】
アスペルギルスニガーの形質転換
A.ニガーの形質転換は、以下のような変更を施した、Tilburn,J.et al.,(1983)Gene,26,205−221およびKeny,J.& Hynes,M.(1985)EMBO J.,,475−479に記載の方法にしたがって実施した。
【0055】
胞子を、アスペルギルス最小培地中で、30℃にて16時間、ロータリーシェーカーを使用し、300rpmにて成長させた。アスペルギルス最小培地は、11当たり以下の成分を含む:6gのNaNO:0.52gのKCl;1.52gのKHPO;1.12mlの4M KOH;0.52gのMgSO.7HO;10gのグルコース;1gのカザアミノ酸;22mgのZnSO.7HO;11mgのHBO;5mgのFeSO.7HO;1.7mgのCoCl.6HO;1.6mgのCuSO.5HO;5mgのMnCl.2HO;1.5mgのNaMoO.2HO;50mgのEDTA;2mgのリボフラビン;2mgのチアミン−HCl;2mgのニコチンアミド;1mgのピリドキシン−HCl;0.2mgのパントテン酸;4μgのビオチン;10mlのペニシリン(5000IU/ml)ストレプトマイシン(5000UG/ml)溶液(Gibco)。
【0056】
−ヘリカーゼの代わりに、Novozym234(Novo Industries)を、原形質体の調製のために使用した。
【0057】
−原形質体の調製後(60−90分)に、KCバッファー(0.8MKCl、9.5mMクエン酸、pH6.2)を、最終体積45mlまで添加し、該原形質体上澄を、4℃にて、スイング−バケットローター中で、3000rpmで10分間遠心分離処理した。該原形質体を、20mlのKCバッファーに再懸濁し、引き続き25mlのSTCバッファー(1.2Mのソルビトール、10mMのTris−HCl pH7.5、50mMのCaCl)を添加した。該原形質体上澄を、4℃にて、スイングーバケットローター中で、3000rpmで10分間遠心分離処理し、STCバッファーで洗浄し、10原形質体/mlなる濃度でSTCバッファーに再懸濁した。
【0058】
−この原形質体上澄200μlに、10μlのTEバッファー(10mMのTris−HCl pH7.5、0.1mM EDTA)に溶解したDNAフラグメント、100μlのPEG溶液(20%のPEG 4000(Merck)、0.8Mのソルビトール、10mMのTris−HCl pH7.5、50mMのCaCl)を添加した。
【0059】
−該DNA−原形質体上澄を、室温にて10分間インキュベートしたのち、1.5mlのPEG溶液(60%のPEG 4000(Merck)、10mMのTris−HCl pH7.5、50mMのCaCl)を徐々に添加し、一方で該試験管を繰り返し混合した。室温にて20分間インキュベートした後、懸濁液を5mlの1.2Mソルビトールで希釈し、反転によって混合し、室温にて4000rpmで10分間遠心処理した。該原形質体を、1mlの1.2Mソルビトール中に穏やかに再懸濁し、リボフラビン、チアミン.HCl、ニコチンアミド、ピリドキシン、パントテン酸、ビオチン、カザミノ酸およびグルコースを含まず、唯一の窒素源として10mMのアセタミド、1Mのスクロースを補充し、2%の微生物学的寒天#1(英国、Oxoid)で固化させた、アスペルギルス最小培地からなる選択再生培地に入れた。30℃にて6−10間インキュベートした後、該プレートを、スクロースの代わりに2%のグルコースを、また寒天の代わりに1.5%のアガロースを含む、アスペルギルス最小培地からなる選択アセタミドプレート上に転写塗布した。単一の形質転換体を、30℃にて5−10日間生育させた後に単離した。
【0060】
ペニシリウムクリソゲナムの形質転換 Ca−PEG媒介原形質体形質転換手順を使用する。P.クリソゲナム原形質体の調製および形質転換を、以下の改良を加えたGouka et al.,Joumal of Biotechnology,1991,20:189−200に記載の方法に従って実施した。
【0061】
−形質転換後、該原形質体を1.2Mのスクロースで浸透圧を安定化させた、唯一の窒素源として0.1%のアセタミドを含有し、1.5%の微生物学的寒天#1(英国、Oxoid)で固化させた、アスペルギルス最小培地からなる選択再生培地プレート上に塗布した。
【0062】
−25℃にて5−8日後に、形質転換が見られた。
【0063】
TAFE
20−50kbの範囲内のDNAフラグメントを、Beckman GenehneTMII装置(Beckman)を使用し、該製造業者の指示に従って、TAFEにより1%アガロースゲル上で分離した。電気泳動パラメータ:300mAにて、4秒A、4秒Bパルス時間、14℃にて約18時間。
【0064】
CHEF
約50kbを越えるDNAフラグメントを、CHEF電気泳動によって、1%アガロースゲル上に分離したが、ここではPulsewave 760 Switcher,Model 200/2.0電源を備え、CHEF電気泳動セルを使用する、CHEF−DRIIモジュール(BioRad)を使用した。電気泳動パラメータ:初期時間50秒、最終時間90秒、開始時点の比1.0、14℃にて200Vで20−24時間。
【0065】
PCR生成物およびハイブリダイゼーションシグナルの定量
PCR生成物およびハイブリダイゼーションシグナルを、夫々エチジウムブロミドで染色したアガロースゲルの写真またはオートラジオグラムによって、ImageQuaNTTMソフトウエア(Molecular Dynamics)に従って定量した。
【0066】
DNA標識およびハイブリダイゼーション
DNA標識およびハイブリダイゼーションは、ECLTM直接核酸標識および検出装置に従って実施した。(Amersham LIFE SCIENCE,英国、Little Chalfont)。
【0067】
A.ニガーコロニーに関するカセット−およびDNA−フラッグ特異的PCR手順
A.ニガーの胞子をPDA−プレート(Potato Dextrose Agar(Oxoid);製造業者の支持に従って調製)上に塗布した。30℃にて48時間生育させた後に、単一のコロニーの菌糸体の1/2−1/4部分を、50μlのnovozynl(KC(0.8MのKCl、9.5mMのクエン酸、pH6.2)1ml当たり5mgのNovozym 234(Novo Industries)に移し、37℃にて1時間インキユベートした。次いで、300μlのDNA希釈バッファー(10mMのTris−HCl pH7.5;10mMのNaCl;1mMのEDTA)を添加し、その上澄を100℃にて5分間煮沸し、元の菌糸を激しく攪拌することによって破壊させた。5μlのこれら混合物を、5μlの10×Super Taq PCRバッファー1(HT Biotechnology Ltd.)、8μlのdNTP(各1.25mM)、20−80ngの各オリゴヌクレオチドおよび1UのSuper Taq(HT Biotechnology Ltd.UK、ケンブリッジ)を含有する50μlのPCR反応液における鋳型として使用した。オリゴの最適量は、各購入したバッチについて実験的に決定した。
【0068】
25増幅サイクル(各々:94℃で1分、55℃で1分および72℃で1.5分)を、DNA−増幅装置(例えば、Perkin−Elmer,Hybaid)を使用して実施した。
【0069】
該DNA−フラッグテストのために、プライマーとして、オリゴ群40/41を使用し、該phyAカセットPCRテストのために、オリゴ群42/43を、および該amdSカセットテストのために、オリゴ群15/16を使用した。
【0070】
引き続き、PCR生成物を分析するために、20μlの該PCR混合物を、TBEバッファー(0.09MのTris、0.09MのHBO、2mMのEDTA、pH8.3)中で、2%アガロースゲル上で、アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0071】
アスペルギルスニガーに対するターゲット特異的PCR法
DNA−鋳型の調製およびPCR反応条件は、ペニシリウムに対するターゲットPCRテストに対して記載されたものを使用した。プライマー群として、オリゴ46/48を使用して、該amdSカセットが該glaAターゲット遺伝子座近傍を攻撃するか否かを決定し、またオリゴ群46/47を使用して、該phyAカセットが、該glaAターゲット遺伝子座近傍を攻撃するか否かを決定した。使用したPCR条件は、ペニシリウムに対するターゲットPCRテストについて記載されたものであった。
【0072】
P.クリソグナム形質転換体のターゲットPCR
4日齢のコロニーの約1/3を、5mg/mlのNovozymTM234を補充した50μlのKCバッファー(60g/l KCl、2g/lクエン酸、pH6.2)中で、37℃にて2時間インキュベートした。次いで、100μlの10mM Tris、50mMのEDTA、150mMのNaCl、1%のSDS、pH8および400μlのQIAquickTMPBバッファー(Quiagen Inc.,USAチャッツワース)を添加した。抽出液を穏やかに再懸濁し、QIAquickTMスピンカラムにかけた。小型遠心分離機で、13000rpmにて1分間カラムを遠心処理し、500μlのQIAquickTMPBバッファーで1回洗浄した。痕跡のエタノールを最終的な迅速スピン処理で除去した。染色体DNA(PCR鋳型)を、50μlの水の添加によって該カラムから溶出し、次いで13000rpmにて1分間遠心分離処理した。PCR反応液は、最終容積50μl中に、10μlのeLONGaseTMBバッファー(Life Technologies,Breda,オランダ)、14μlのdNTP(各1.25mM)、1μlのeLONGaseTMEnzyme Mix、1μlの鋳型、および30−50ngの各オリゴを含んでいた。オリゴの最適量は、各購入したバッチについて実験的に決定した。平均30〜50ngを使用した。反応は、以下のサイクル条件下で実施した:1×(94℃にて2分間)、10×(94℃にて15秒間、55℃にて30秒間、68℃にて4分間)、20×(94℃にて15秒間、55℃にて30秒間、68℃にて4分間、サイクル当たり20秒の勾配で)、1×(68℃にて10分間)。8μlのサンプルを、PCR生成物の分析のために、アガロースゲル上に置いた。
【0073】
P.クリソゲナム形質転換体のカセットPCR
4日齢のコロニーの約1/3を、5mg/mlのNovozymTM234を補充した200μlのDVBバッファー(10mMのTris、10mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.5)中で、37℃にて2時間インキュベートした。この混合物を8時間煮沸し、次いで激しく攪拌して、元の菌糸体を破壊した。5μlのこれら混合物を、5μlの10×Super Taq PCRバッファー(HT Biotechnology Ltd.,UK,ケンブリッジ)、8μlのdNTP(各1.25n1M)、1UのSuper Taqおよび20−80ngの各オリゴを含有する、50μlのPCR反応における鋳型として使用した。オリゴの最適量は、各購入したバッチについて実験的に決定した。平均20〜80ngを使用した。反応は、以下のサイクル条件下で実施した:25×(94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて1.5分間)、1×(72℃にて8分間)。15μlのサンプルを、PCR生成物の分析のために、アガロースゲル上に置いた。
【0074】
染色体DNAの単離
A.ニガーおよびP.クリソゲナムの胞子を、100mlの三角フラスコ中で、20mlのアスペルギルス最小培地(A.ニガーの形質転換を参照のこと)内でインキュベートし、回転シェーカーで300rpmにて30℃で、20−24時間生育させた。十分に生育した培養物5−10mlを、100mlの新たなアスペルギルス最小培地中でインキュベートし、回転シェーカーで300rpmにて30℃で、更に20−24時間生育させた。生育後に、菌糸をMiradoth(Cal Biochem)フィルターでろ過し、15mlのKCバッファー(0.8MのKCl、9.5mMのクエン酸、pH6.2)で洗浄することにより、収穫した。該洗浄した菌糸(100mlの培養液3−5g)1g当たり、4mlのKCバッファーおよび0.25mlのnovozym(50mgのNovozym 234(Novo Industries)/mlKCバッファー)を添加し、穏やかに攪拌しつつ、30℃にて原形質体を形成させた。原形質体の形成後に、KCバッファーを45mlまで添加し、その上澄をスイングバケットローター中で、4℃にて5分間、3000rpmにて遠心分離処理した。原形質体を20mlのKCバッファー中に再懸濁した。次いで、25mlのSTCバッファー(1.2Mのソルビトール、10mMのTris−HCl pH7.5、50mMのCaCl)を添加し、次いで、混合した後に、該懸濁液をスイングバケットローター中で、4℃にて5分間、3000rpmにて遠心分離処理し、50mlのSTCバッファーに再懸濁し、再度スイングバケットローター中で、4℃にて5分間、2500×gにて遠心分離処理した。この原形質体ぺレット0.3−0.6mlに、60μlのプロテイナーゼ−K(20mg/ml)および1mlの低融点アガロース(1Mソルビトール/0.45M EDTA中0.8%)を添加した。攪拌によって混合した後に、この懸濁液を、予め成形したプレキシグラス型のウエルに移し、約15分間氷上に置いた。次いで、アガロースプラグを、2.5mlのサルコシル溶液(0.5MのEDTA中の、1%のNa−ラウロイルサルコシン)に移した。60μlのプロテイナーゼ−K(20mg/ml)を添加し、50℃にて16−20時間インキュベートした後に、該サルコシル溶液を、10mlの50mM EDTA溶液で置換した。50℃にて2時間インキュベートした後、該EDTA溶液を10mlの新たなEDTA溶液で置換し、50℃にて更に2時間インキュベートした。
最後に、該EDTA溶液を10mlの新たな50mMEDTA溶液で置換し、該アガロースプラグを4℃にて保存した。
【0075】
染色体DNAアガロースプラグの制限酵素消化
1−3μgの染色体DNAを含む、(上記のようにして調製した)DNAアガロースプラグの一部を、1mlのTE(10mMのTris−HCl pH7.5、1mM EDTA)中で、37℃にて1時間インキュベートした。この1mlのTE−バッファーを、新鮮なものと交換し、37℃にて更に1時間インキュベーションを継続した。次いで、該TE−バッファーを、供給業者によって推奨されたように、各制限酵素に適したバッファー200μlで置換した。37℃にて1時間のインキュベート後に、該制限酵素バッファーを、新鮮なもの(50μl)と置換し、該アガロースが溶解するまで、65℃にて10分間インキュベートした。最後に、20−40単位の該適当な制限酵素を添加し、この消化混合物を、各制限酵素の供給業者によって推奨された温度にて、16時間インキュベートした。
【0076】
AmdS逆選別手順
多くの誘導されたベクターにおいて、該amdS選別マーカー遺伝子は、DNA反復体間に位置している。そのために、これらベクターをもつ、実際に作成された形質転換体においては、該カセット内で、フランキングDNA反復体に対する、内部組み換えによって、あるいは単一の交差事象を介して組込みによって生成された反復体に対して相同組み換えすることによって、該amdS選別マーカー遺伝子を除去することが出来る。該amdS選別マーカーを失っている細胞の選別は、フルオロアセタミドを含有するプレート上で生育することによって達成される。該amdS遺伝子を係留する細胞は、フルオロアセタミドをアンモニウムおよび該細胞にとって有害なフルオロアセテートに代謝する。結果として、該amdS遺伝子を失った細胞のみが、フルオロアセタミドを含有するプレート上で生育できる。
【0077】
アスペルギルス形質転換体から該amdSマーカーを除去する場合、これら形質転換体の胞子は、10mMのアセタミドの代わりに、5mMのフルオロアセタミドおよび5mMのウレアム(ureum)を、1Mのスクロースの代わりに1.1%のグルコースを、および2%の代わりに1.1%の微生物学的な寒天#1(英国、Oxoid)を含有する(上記の)選別再生培地上に配置する。30℃にて7−10日の生育後に、単一のコロニーを収穫し、0.4%のポテトデキストロース寒天(英国、Oxoid)上に塗布した。
【0078】
ペニシリウムの形質転換体から該amdSマーカーを除去する場合、これら形質転換体からの胞子を、10mMのフルオロアセタミドおよび5%のグルコースを含有し、1.5%の微生物学的な寒天#1(英国、Oxoid)で固化した、アセペルギルス最小培地上に塗布した。25℃にて5−10日間生育させた後に、耐性のコロニーが出現した。
【0079】
E.コリバイオアッセイ
形質転換体を、YPD寒天培地上で5日間生育した。E.コリESS2231を、重層寒天中の指示バクテリアとして使用したが、該重層寒天はペニシリンとセファロスポリン産性間の識別を可能とすべくBactoペナーゼ(penaze)をも含み、該識別は当分野で周知の方法(Guttierez et al.,Mol.Gen.Genet.,1991,225:56−64)に従って実施した。CefEを発現する形質転換体は、該コロニー近傍の該重層寒天の透明化によって明らかにされた。
【0080】
P.クリソゲナムの工業的菌株の改良
当業者には周知の標準的な変異形成およびスクリーニング法(Rowlands,1984,Enzyme Microb.Technol.,6:3−10)を利用して、Wis54−1255(ATCC 28089)から、P.クリソゲナム菌株CBS 649.97を単離した(1997年、4月11日付けで、オランダ国、バーンのCentraal Bureau voor Schimmelculturesに寄託されている)。
【0081】
アジボイル−7−ADCAおよびアジボイル−7−ADACの発酵
アジポイル−7−ADCAおよびアジポイル−7−ADACの発酵による製造および定量は、3’−カルボキシメチルチオプロピオン酸の代わりに、3g/lのアジピン酸を培地に添加したことを除いて、本質的に、2−(カルボキシエチルチオ)アセチル−および3−(カルボキシメチルチオ)プロピオニル−7−ADCA(WO 95/04148)の製造について記載されている通りであった。基準基質として合成アジポイル−7−ADCAおよびアジポイル−7−ADACを使用した。
【0082】
アスペルギルスニガー振とうフラスコ発酵
組み換えおよびコントロールA.ニガーの、胞子の大バッチを、供給業者の指示に従って調製した、PDA−プレート(Potato Dextrose Agar,Oxoid)上に、胞子または菌糸を塗布することによって発生させた。30℃にて3−7日生育した後に、該プレートに0.01%のTriton X−100を添加し、次いで生成した胞子を集めた。無菌水で洗浄した後に、選別された形質転換体およびコントロール菌株の約10個の胞子を、振とうフラスコに接種した。該フラスコは、20mlの液状予備培養培地を含み、該予備培養培地は、11当たり以下の成分を含んでいた:30gのマルトース.HO、5gの酵母抽出液、10gの加水分解カゼイン、1gのKHPO、0.5gのMgSO.7HO、0.03gのZnCl、0.02gのCaCl、0.01gのMnSO.4HO、0.3gのFeSO.7HO、3gのTween 80、10mlのペニシリン(5000IU/ml)/ストレプトマイシン(5000 UG/ml)、pH5.5。これら培養物を、34℃にて20−24時間生育させた。10mlのこの培養物を、11当たり以下の成分を含むA.ニガー発酵培地100mlに接種した:70gのマルトデキストリン、25gの加水分解カゼイン、12.5gの酵母抽出液、1gのKHPO、2gのKSO、0.5gのMgSO.7HO、0.03gのZnCl、0.02gのCaCl、0.01gのMnSO.4HO、0.3gのFeSO.7HO、10mlのペニシリン(5000IU/ml)/ストレプトマイシン(5000UG/ml)。4N HSOでpHを5.6に調節した。これら培養物を34℃にて6日間生育させた。該発酵ブロスから採取したサンプルを、遠心処理(スイングバケット遠心分離機で、5000rpmにて10分間)し、上澄を集めた。これら上澄について、グルコアミラーゼまたはフィターゼ活性に関するアッセイ(以下の記載を参照)を実施した。
【0083】
グルコアミラーゼ活性に関するアッセイ
このグルコアミラーゼ活性は、0.032M NaAC/HAC、pH4.05中の該培養上澄の6倍希釈サンプル10μlを、0.032M NaAC/HAC、pH4.05中の、0.2%(w/v)p−ニトロフェニルα−D−グルコピラノシド(Sigma)115μlと共にインキュベートすることによって決定した。室温にて30分間インキュベートした後に、50μlの0.3M NaCOを添加し、波長405nmにおける吸光度を測定した。このA405nmが、該GLA生産の尺度である。
【0084】
フィターゼ活性のアッセイ
振とうフラスコ−またはマイクロタイターアスペルギルスニガー発酵生成物の(必要に応じて希釈した)100μlの上澄(基準として100μlの脱塩水(demiwater))を、0.25Mの酢酸ナトリウムバッファーpH5.5、1mMのフィチン酸(ナトリウム塩、Sigma P−3168)を含む混合物900μlに添加し、および37℃にて30分間インキュベートした。この反応を、1mlの10%TCA(トリクロロ酢酸)の添加によって停止させる。この反応が完了した後に、2mlの試薬(3.66gのFeSO.7HO、50mlのモリブデン酸アンモニウム溶液(2.5gの(NHMo7O24.4HO)および8mlのHSO中、脱塩水で250mlまで希釈)を添加する。690nmにおける青色に対する吸光度を分光光度法により測定する。測定は、0−1mM/lの範囲内の、燐酸塩の検量線との関係で、放出された燐酸塩の量の指標となる。
【0085】
微生物の培養
S.クラブリゲラス菌株、ATCC 27064を、トリプシン大豆ブロス(Difco)中で、27℃にて培養した。
【0086】
P.クリソゲナム菌株を、完全YPD培地(1%の酵母抽出液、2%のペプトン、2%のグルコース)中で、25℃にて培養した。固体培地に対しては、2%のBacto−アガーを添加した。形質転換体を、YPDアガー上で反復的に培養することによって精製した。単一の安定なコロニーを使用して、胞子製造用の寒天傾斜培地を調製した。
【0087】
A.ニガー菌株を、PDA含有プレート上で、30℃にて培養した。形質転換体を、PDAプレート上で反復的に培養することによって精製した。ここでも、単一の安定なコロニーを使用して、胞子製造用の寒天傾斜培地を調製した。
【0088】
E.コリ菌株を、標準的な手順に従って(Sambrook)培養した。
【0089】
実施例:A.ニガー
1.1 アスペルギルスニガー宿主の選別および特徴付け
1.1.a 原理的説明:ゲノムにおける反復的なDNAドメインの存在は、挿入された組み換え発現カセットを増幅するための手段として、遺伝子変換の利用にとって不可欠である。例えば、高いグルコアミラーゼ産性をもつA.ニガー菌株のglaA遺伝子は、このような増幅されたDNAドメイン上に存在する可能性がある。工業的な酵素の生産にとって適した宿主を同定するために、我々は改良されたグルコアミラーゼ産性を持つA.ニガー菌株につきスクリーニングした。本例において、我々は該所定のDNAアンプリコンを含有する、このようなA.ニガー菌株を、選別し、かつ特徴付け(キャラクタリゼーション)する手順を説明する。
【0090】
1.1.b A.ニガー突然変異体の選別:
A.ニガーCBS 513.88(1988年10月10日付けで寄託)から、振とうフラスコレベルで改善されたグルコアミラーゼの産性を示す、数種の変異株を選別した。変異形成は、UV−処理によってA.ニガーCBS 513.88の胞子について実施した。生存している胞子(約1%)を、物質&方法において記載したような、振とうフラスコ発酵においてグルコアミラーゼを生産する能力についてテストした。6日間の生育後に、グルコアミラーゼ酵素活性を、物質&方法において記載したように測定した。
【0091】
600Uグルコアミラーゼ/mlにも及ぶ高いグルコアミラーゼ産性レベルを示す、数種のA.ニガー変異株を選別することが出来た。該親菌株A.ニガーCBS 513.88は、約200Uグルコアミラーゼ/mlのレベルを達成する。最良の産性を示すA.ニガー変異株を、1997年4月11日付けで、オランダ国バーンのCentraal Bureauvoor SchimmelculturesにA.ニガーCBS 646.97として寄託した。
【0092】
1.1.c A.ニガーCBS 646.97の遺伝的特性:
上記の高いグルコアミラーゼ産性が、glaA遺伝子座の増幅の結果であるか否かを決定するために、染色体DNAを該変異体菌株A.ニガーCBS 646.97およびその親菌株A.ニガーCBS 513.88から単離した。単離DNAについてサザン分析を実施し、EcoRIおよびSalIで消化し、グルコアミラーゼ/フィターゼDNAフラグメント(特許出願EP 0420358A1に記載されている、glaA/phyA融合体:pFYR3由来のEcoRIfBamHIフラグメント)でプローブした。オートラジオグラフは、明らかに改良されたグルコアミラーゼ変異株が、複数の(3−4)glaA遺伝子コピーを含むことを示している。
【0093】
1.1.d 該変異A.ニガー菌株におけるglaAアンプリコンのサイズ:
TAFE分析は、大きなDNAフラグメントが、該選別された変異A.ニガー菌株中で増幅されたことを示した。物質&方法において記載したように、該元のA.ニガーCBS 513.88および該A.ニガーCBS 646.97から誘導された。HindIIIおよび8点−切断制限酵素NotI、SwaI、AscIおよびPacIによる消化を実施し、次いでpAB6−1から誘導した数種のglaA遺伝子座特異的プローブを使用した、TAFE−分析にかけた(特許出願EP 0357127A1を参照)。該親および該変異株間には、上記の制限酵素による該glaAハイブリッドDNAフラグメントのサイズについて、何の差違も観測できなかった。最大のハイブリッドDNAフラグメントは、制限酵素SwaIを使用した全ての場合に検出され、約80kbであった。唯一の観測された差違は、該glaAハイブリッドDNAバンドの強度であった。該ハイブリッドglaAバンドの強度を正確に定量することは困難であるが、TAFE−オートラジオグラフは、明確に該変異株A.ニガーCBS 646.97が、該観測されたglaAアンプリコンの付随的なコピーを含むことを示している。
【0094】
更に、我々は、該検出されたglaAアンプリコンの外側を切断する他の制限酵素を見出すことは出来なかった。このことは、該glaAアンプリコンが、そのサイズにおいて、少なくとも80kbまたはそれ以上に及ぶことを意味する。
【0095】
1.2 A.ニガーCBS 646.97菌株の、種々のアンプリコンにおけるglaA遺伝子座の変性
1.2.a 原理的説明:
前に記載したように(特許出願EP 0635574A1)、「MARKER−GENE FREE」法を利用して、A.ニガーにおけるゲノムターゲット遺伝子を適当に除去できる。該特許出願において、A.ニガーCBS 513.88のゲノムにおけるglaA特異的DNA配列をどのようにして除去するかに関する例を、詳細に記載している。記載の置換ベクターは、二重交差相同組み換えを介して、該A.ニガーglaAゲノム配列に組み込む。消去ベクターは、該glaAターゲット遺伝子座およびgpdAプロモータ配列によって誘導された該amdS選別性マーカー遺伝子と相同なDNA領域を含む。更に、このベクターにおいては、該amdS選別性マーカー遺伝子は、直列DNA反復配列として、glaA配列によって両側にフランキングされ、結果として該amdSマーカー遺伝子の適切な除去を容易にしている。
【0096】
このようなベクターは、該amdSマーカー遺伝子による、該glaA遺伝子の置換に導く。結局、これら形質転換体について、該フルオロアセタミド逆選別を実施することによって、該amdSマーカー遺伝子は、3’−glaADNA直列反復配列間の、内部組み換え事象によって適切に消去し得る。
【0097】
これは、MARKER−GENE FREE ΔglaA組み換えA.ニガーCBS 513.88菌株を与え、これは最終的に外来DNA配列を全く含まない。
【0098】
この「MARKER−GENE FREE」法は、反復的に宿主ゲノム配列を変性し、削除するのに特に有用である。
【0099】
本例は、一連の3つの「特別に設計された」pGBDEL置換ベクターを使用することにより、3回の連続する形質転換実験における、A.ニガーCBS 646.97の全glaAプロモータおよびコード配列の適当な消去について説明する。これら3つの消去実験のために、更に3つ以上またはそれ以下の一連の、同一のglaA遺伝子−置換pGBDELベクターを溝築し、使用した。各pGBDELベクター中に、固有の制限酵素識別DNA配列を含める理由は、誘導されたΔglaA組み換えA.ニガー菌株中の、各切り捨てglaA遺伝子座を、サザン分析によって(実施例1.2.eに記載されている)別々に識別し、かつ可視化するためである。各pGBDELベクターの固有の制限サイトは、該切り捨てglaA遺伝子座の5’−ボーダーに位置する。しかし、各pGBDELベクターにおいて、該glaA遺伝子座の一つにおける該遺伝子−置換ベクターの攻撃に導く、該包含されるglaA配列は、僅かに異なっている。その結果、該A.ニガー宿主における各切り捨てglaA遺伝子座も、僅かに異なっている。この僅かな相違を含む理由は、コロニーに関する迅速PCRテスト、即ち所謂「DNA−フラッグ」テストによって、各切り捨てglaA遺伝子座を可視化することにある(第1図)。不可欠ではないが、この組み込まれたDNAの特徴は、A.ニガーのglaAアンプリコン間の遺伝子変換事象に関する、本明細書に記載した現象の助けを借りて、該(フィターゼ)発現カセットを増幅するための「溝築」過程を追跡するのに特に有用であり、該カセットは、該A.ニガー宿主のこれら切り捨てglaA遺伝子座の一つをターゲットとする。A.ニガーのglaAアンプリコン間の該変換事象を利用する、酵素製造のための、rDNA株を誘導するためのこの「溝築」過程の詳細は、以下に記載される(実施例1.5および1.6)。
【0100】
1.2.b glaA置換pGBDELベクターの説明:
あらゆる溝築されたpGBDEL置換ベクターは以下のものを含む:
−glaAプロモータ配列における固有のXhoIサイト上流側の、HindIIIサイトから、pGBDEL−5では200bpまで、pGBDEL−9では180bpまで、およびpGBDEL−11では140bpまでの、2kbのサイズを持つ5’−glaAターゲット配列;
−該glaA停止コドンから、SalIサイトまでの、2kbのサイズを持つ3’−glaAターゲット配列;
−gpdAプロモータの制御下にある選別性のマーカーとしての、該amdS遺伝子;
−後の該amdS選別性マーカー遺伝子の除去を容易にする、2つの1kbサイズの3’−glaADNA直列反復配列;
−該glaA切り捨て部に位置する、付随的な制限サイト(pGBDEL−5におけるBamHI、pGBDEL−9におけるSalIおよびpGBDEL−11におけるBglII)。
【0101】
これらpGBDEL置換ベクターの使用によって、A.ニガー宿主における4.3kbのglaA配列は、後に消去されることになり、2kbサイズのglaAプロモータ配列(該XhoI上流側の、pGBDEL−5、pGBDEL−9およびpGBDEL−11夫々における200、180bpまたは140bpから、該開始コドンまで)および全glaAコード配列を含む。
【0102】
1.2.c pGBGLA中間ベクターの溝築:
この中間ベクターpGBGLA16を溝築するために、2つのオリゴヌクレオチド(30/31)を合成した。これらは酵素制限サイト:NotI、EcoRI、KpnIおよびXhoIを含んでいる。オリゴは、5’−末端においてHindIII制限サイトと適合され、また3’−末端においてEcoRI制限サイトと適合された。PTZ18Rへのこのオリゴヌクレオチドの挿入により、該EcoRIサイトは破壊されるであろう。
【0103】
オリゴヌクレオチド30および31両者を、プラスミドpTZ18Rの該EcoRIおよびHindIIIサイトに、クローニングした。コントロール消化を、KpnI、XhoI、NotIおよびHindIIIに対する所定の酵素制限サイトが適切に組み込まれるか、および該EcoRIサイトが破壊されるかを確認するために実施した。誘導されたプラスミドを、pTM1(第3図参照)と命名した。
【0104】
pTM1から、該EcoRIおよびKpnI DNAフラグメントを単離し、かつ両制限酵素で消化した後に、ゲル電気泳動によって精製し、PgpdA/amdS配列を含む、pGBDEL4LのEcoRI/KpnIフラグメントを挿入した。このpGBDEL4Lの溝築は、我々の以前の特許出願(EPA 0635574A1)に詳しく記載されている。pGBDL4Lは、EcoRI/KpnIおよびXhoI(最後のものは、同一のサイズを持つpGBDEL4Lの、別のDNAフラグメントの分子クローニングを防止するためである)によって消化した。PgpdA/amdS配列を含む、この正確なEcoRI/KpnI DNAフラグメントを、ゲル電気泳動によって精製し、かつpTM1の該EcoRI/KpnIサイトにクローニングした。この中間ベクターを、pGBGLA16と命名した(第3図参照)。
【0105】
この2.2kbサイズの3’−glaA配列を、該pGBGLA16に適切に挿入するために、該フラグメントを、まず幾分か変更する必要がある。融合PCRを、pAB6−1を鋳型として、また2組のオリゴヌクレオチドをプライマー(32/33および34/35)として用いて実施して、2.2kbの3’−glaA配列内の該KpnI制限サイトを破壊し、かつ該5’−ボーダー(KpnI)および該3’−ボーダー(XhoI、HindIII)に適当なクローニングサイトを生成した。鋳型pAB6−1は、pUC19中の16kbの大きなHindIIIフラグメントを含み、これは該glaAゲノム遺伝子座を含む(分子クローニングは、EPA 0357127A1に詳細に記載されている)。
【0106】
この第1のPCRにおいては、オリゴヌクレオチド32および33をプライマー群として使用して、該3’−glaA配列の一部(1kb)を増幅した。該第2のPCRにおいては、オリゴヌクレオチド34および35を使用して、該3’−glaAフランキングの残りの1.2kb配列を増幅した。
【0107】
ゲル電気泳動によって精製した後に、増幅したフラグメント両者を、プライマー群としてオリゴヌクレオチド32および35を使用した、融合PCRにおける鋳型として使用した。このPCR融合を、第4図に模式的に示す。この得られた2.2kbの3’−glaA PCR融合フラグメントを、ゲル電気泳動によって精製し、KpnIおよびXhoIで消化し、分子クローニングによって、pGBGLA16のKpnI/XhoIサイトに挿入して、pGBGLA18を得た(第4図参照)。
【0108】
1.2.d glaA置換pGBDELベクターの溝築:
該3つの最終的なpGBDELベクターを得るに際して、該5’−glaAターゲット配列、各ベクターに対する固有の制限サイト、および直列反復体としての該1kbの3’−glaA配列を、pGBGLA18の該HindIII/NotIサイトに挿入する必要がある。そのために、3回の別々の融合PCRを実施して、pGBDEL5、−9および−11を溝築した。
【0109】
pGBDEL5の溝築
第1のPCRを実施して、2つの合成オリゴヌクレオチドで、該3’−ボーダーにおける該5’−glaAターゲット配列を変性した。該合成オリゴヌクレオチドは、pUC19のヌクレオチド配列の一部、該5’−glaA配列のHinIIIサイトを含む36および該glaAプロモータにおける該XhoIサイトの上流約200bpに一致し、付随的なBamHIサイト、全ての読み取り枠における停止コドンおよび該1kbの3’−glaA直列反復配列の、初めの18ヌクレオチド(5’−ボーダー)をも含む、オリゴヌクレオチド37である。該第2のPCRを実施して、該5’−ボーダーにおける該3’−glaA直列反復配列を、オリゴヌクレオチド38および39を使用して変性した。ここで、オリゴヌクレオチド38は、オリゴヌクレオチド37の逆配列を持つものであり、オリゴヌクレオチド39は、該3’−glaA直列反復配列の該EcoRIサイト近傍の配列と整合するものであり、これらには、夫々pTZ18RおよびpGBGLA18にクローニングするのに適した、該制限サイトXbaIおよびNotIが付加されている。これら両PCR増幅においては、pAB6−1を鋳型として使用した。これら両PCR増幅の増幅されたDNAフラグメントを、ゲル電気泳動によって分離し、プライマーとしての36および39と共に、該融合PCRにおける鋳型として使用した。この得られた3kbサイズのDNA融合フラグメントを、ゲル電気泳動によって精製し、HindIIIおよびNotIで消化し、次いでpGBGLA18の適当なサイトに分子クローニングして、第1の遺伝子置換ベクターpGBDEL5を生成した(第5図参照)。
【0110】
PGBDEL9の溝築
該第1のPCRを、(上記のような)オリゴ36および49を使用して実施した。ここで、該オリゴは、該glaAプロモータにおける該XhoIサイトの上流約180bpと一致し、付随的なSalIサイト、全ての読み取り枠における停止−コドンおよび該1kb3’−glaA直列反復体の初めの18ヌクレオチド(5’−ボーダー)を含む。該第2のPCRを実施して、該5’−ボーダーにおける該3’−glaA直列反復体を、49の逆であるオリゴヌクレオチド50およびオリゴヌクレオチド39によって変性した。
【0111】
これら両PCR変性においては、pAB6−1を鋳型として使用した。これら両PCRにおける増幅されたDNAフラグメントを、ゲル電気泳動によって精製し、プライマーとしてのオリゴ36および39と共に、該融合PCRにおける鋳型として使用した。この得られた3kbサイズのDNA融合フラグメントを、ゲル電気泳動によって精製し、HindIIIおよびNotIで消化し、次いでpGBGLA18の適当なサイトに分子クローニングして、第2のglaA遺伝子置換ベクターpGBDEL9を得た(第6図参照)。
【0112】
PGBDEL11の溝築 該第1のPCRを、オリゴ36および51を使用して実施した。ここで、該オリゴは、該glaAプロモータにおける該XhoIサイトの上流約140bpと一致し、これは付随的なBglIIサイト、全ての読み取り枠中の停止コドンおよび該1kb3’−glaA直列反復配列の、最初の18ヌクレオチド(5’−境界)を含む。該第2のPCRを実施して、該5’−ボーダーにおける該3’−glaA直列反復配列を、オリゴ51の逆のオリゴヌクレオチド52およびオリゴヌクレオチド39で変性した。
【0113】
これら両PCR増幅においては、pAB6−1を鋳型として使用した。これら両PCRの、増幅されたDNAフラグメントを、ゲル電気泳動によって分離し、プライマーとしてのオリゴ36および39と共に、該融合PCRにおける鋳型として使用した。この得られた3kbサイズのDNA融合フラグメントを、ゲル電気泳動によって精製し、HindIIIおよびNotIで消化し、次いでpGBGLA18の適当なサイトに分子クローニングして、第3のglaA遺伝子置換ベクターpGBDEL11を得た(第7図参照)。
【0114】
1.2.e glaAプロモータおよびコード配列の削除およびA.ニガーへの特異的「DNA−フラッグ」の組込み:
本実施例においては、A.ニガー646.97中に存在する3種全てのglaA遺伝子の、3回の連続する形質転換実験において、該pGBDELベクターおよび該「MARKER−GENE FREE」技術を利用した、連続的な削除について説明する。
【0115】
pGBDELベクターをXhoIおよびHindIIIで線状化することによって、および該rDNAカセットが、該宿主ゲノムの該glaAターゲット遺伝子座に相同なDNA配列によってフランキング状態にあると言う事実によって、pGBDELベクターは、該宿主の該glaA遺伝子座の一つにおいて、二重交差事象によって組み込まれ、該pGBDELベクターの該切り捨てglaA遺伝子座による、該glaA配列の置換をもたらすであろう。
【0116】
しかし、pGBDELベクターの、二重交差事象による攻撃の頻度は、制限されており、かつ該宿主の該glaAゲノムターゲット遺伝子座の数に依存する。従って、両フランキング部に、2kbサイズのglaA相同ベクターを含む、線状化されたベクターを使用したとしても、依然として、生成する形質転換体の大多数は、ランダムに組み込まれたベクターを含む。
【0117】
しかし、所定の遺伝的な特徴を持つ形質転換体を、a)該PCRに基くDNA−フラッグテスト、b)ターゲット特異的PCR−手順およびc)物質&方法において詳細に示されたサザン分析によって、容易に選別し、かつ明らかにすることができる。
【0118】
最後に、一旦適当な形質転換体の存在を、遺伝的に立証した後に、該amdSマーカー遺伝子を、上記のフルオロアセタミド逆選別手順を適用して、除去した。
【0119】
該PgpdA/amdSマーカー遺伝子カセットがフランキング状態にある、3−glaA DNA反復体の組込みのために、各実験後に、該amdS選別マーカーは、内部組み換え事象によって排除された。かくして得た改良A.ニガー菌株を、連続的な形質転換実験にかけて、残りのglaA遺伝子座を排除または変性した。
【0120】
A.ニガーCBS 646.97中に存在する第1のglaAアンプリコンの、pGBDEL5による変性:
AニガーCBS646.97を、5μgの線状化された(HindIII/XhoI)pGBDEL5 DNAによって形質転換した。形質転換体を、アセタミドおよび選択培地上で繰り返し生育させた後に調製された胞子を含有する、選択プレート上で選別した。
【0121】
限られた数の形質転換体を選別し、単離した染色体DNAを、プローブとして該2.2kb SalI3’−glaAフラグメント、KpnIおよびBamHI消化物および該5’−glaAHindIII/XhoIを使用したサザン分析で徹底的に解析した。該宿主菌株の該△glaA遺伝子座の、該BamHIハイブリダイゼーションパターンと、該形質転換体の2つの残りのΔglaA遺伝子座との比較については、第8図を参照のこと。
【0122】
第9図に示したように、予想されるハイブリダイゼーションパターンを示す形質転換体を選別した。
【0123】
次いで、これら形質転換体について、上記の逆選別手順を実施した。胞子を、フルオロアセタミド含有培地(詳細については、物質&方法の項を参照)に接種した。平均して、該接種した胞子の1−2%が、これら選別条件にて生育できた。プライマーとしてamdS特異的オリゴ15および16を使用して、菌糸について直接実施した、カセットPCR解析は、全ての生育した細胞が、該amdSマーカー遺伝子を失った、組み換え細胞であることを、実際に明らかにした。しかしながら、驚いたことに、多くの組み換え細胞に関する詳細なサザン分析が、多くの場合において(約90%の頻度)、一種の切り捨てglaA遺伝子座および二種の残りの元のglaA遺伝子座に対する予想されたパターンではなく、該親菌株646.97に対してのみ特徴的な、ハイブリダイゼーションパターンが観測された。更に、ハイブリッド化DNAフラグメントの強度は、glaAアンブリコンの数が、これらamdS−ネガティブな菌株において減衰しないことを指摘した。該細胞の約10%が、第10図に示したように、予想されたハイブリダイゼーションパターンを示す。従って、これらの場合においては、該amdSマーカー遺伝子は、予想されるように、該フランキング3’−glaA直列反復配列に渡り、該内部組み換え事象を介して、実際に除去された。
【0124】
該amdS−ネガティブな菌株の殆どにおける、この予想外の組み換え事象は、遺伝子−変換と呼ばれる、遺伝的現象の発生によってのみ説明できる。後に(実施例1.5および1.6)使用される、特徴の一つは、該A.ニガーCBS 646.97宿主の該切り捨てglaAアンプリコンの一つにおいて攻撃された、酵素コード発現カセットを増幅することにある。
【0125】
第10図に示したように、一つの切り捨てglaA遺伝子座および二つの元のglaA遺伝子座に対するハイブリダイゼーションパターンを示す、amdS−ネガティブ菌株を、A.ニガーGBA−201と命名し、pGBDEL−9による第2の形質転換にかけた。
【0126】
AニガーCBS 646.97の第二のglaAアンプリコンの、pGBDEL9による変性 A.ニガーGBA−201を、5μgの線状化した(HindIII/XhoI)pGBDEL9 DNAによって形質転換した。形質転換体を、再度アセタミドおよび選択培地上で繰り返し生育させた後に調製された胞子を含有する、選択プレート上で選別した。pGBDEL9の攻撃は、該宿主の前の「BamHI−標識」glaA切り捨て遺伝子座上でも起こり得るので、これら形質転換体だけを選別し、かつサザン解析によって分析したところ、依然としてこの切り捨て「BamHI」glaA遺伝子座の存在を示した。そのため、該PCRを基にした「DNA−フラッグ」テストを、これら形質転換体の菌糸について実施した。
【0127】
該「BamHI」切り捨てglaA遺伝子座に対して特徴的な該200bpのDNAフラグメントの存在を示す、形質転換体のみを、該PCR法によって分析し、次いで上記のように徹底的なサザン分析を行った。
【0128】
次いで、該正確なハイブリダイゼーションパターンを示す(第10図)形質転換体の胞子を、フルオロアセタミド含有培地(詳細については、物質&方法の項参照)に接種した。ここでも、平均して、該接種した胞子の1−2%が、これら選択条件にて生育可能であった。これら全てが、これらマロニーの菌糸に対して該カセットPCRテストを適用することによって明らかになるように、該amdS遺伝子を喪失しているものと考えられた。
【0129】
第二の選択基準として、該「DNA−フラッグ」テストを実施した。夫々、該「BamHI」切り捨てglaAアンプリコンおよび「SalI」切り捨てglaAアンプリコンの存在に対して特徴的な、該所定のDNA−フラッグパターン(200および220bpの、2つのバンド)を示す、形質転換体のみを、上記のような詳細なサザン分析にかけた。
【0130】
2つのglaA切り捨てアンプリコンおよび1つの元のglaAアンプリコンに対するハイブリダイゼーションパターンを示す(第12図)、一つのamdS−ネガティブ菌株を、A.ニガーGBA−202と命名し、pGBDEL−11による第3の形質転換に付した。
【0131】
A.ニガーCBS 646.97における第3のglaAアンプリコンのpGBDEL11による変性:
A.ニガーGBA−202を、5μgの線状化した(HindIII/XhoI)pGBDEL−11 DNAによって形質転換した。形質転換体を、再度アセタミドおよび選択培地上で繰り返し生育させた後に調製された胞子を含有する、選択プレート上で選別した。この場合にも、pGBDEL−11の攻撃は、該宿主の前のglaA切り捨てアンプリコンの一種上で起こり得る。該「DNA−フラッグ」テストを実施することによって、これら形質転換体のみを選別し、かつサザン分析によって解析したところ、依然として200および220bpフラグメントの存在を示したが、これらは前の2つの切り捨て「BamHI」および「SalI」glaAアンプリコンに対応する。
【0132】
第13図に示すような正確なハイブリダイゼーションパターンを示す形質転換体を、該逆選別手順にかけて、マーカー遺伝子を含まない組み換え体を得た。ここでも、平均して、該接種した胞子の1−2%が、これら選別条件にて生育できた。
【0133】
これら全てが、そのPgpdA/amdSマーカー遺伝子カセットを喪失していることが分かった。このことは、これらコロニーの菌糸に対して該amdSカセットPCR−テストを適用することにより明らかになった。
【0134】
第二の選別基準として、該「DNA−フラッグ」テストを実施した。夫々、「BamHI」並びに「SalI」および「BalII」切り捨てglaAアンプリコンの存在を示す、3つのバンド(200、220および300bp)をもつ所定のDNA−フラッグパターンを示す、該形質転換体のみを、上記の詳細なサザン分析にかけた。3種全ての切り捨てglaAアンプリコンに対するハイブリダイゼーションパターン(第14図)を示す、1種のamdS−ネガティブ菌株を、A.ニガーISO−505と命名した。
【0135】
1.3.pGBAAS−1およびpGBT0PFYT−1発現ベクターの説明および溝築1.3.a原理的説明:
ある酵素に対する発現カセットを含むpGBTOPベクターを、amdS選択性マーカー遺伝子含有ベクターとの、同時形質転換によって、該A.ニガー宿主菌株に導入する。ここで後者のベクターは、pGBAAS−1と命名される。これら両ベクターは、A.ニガー宿主菌株のglaA遺伝子座と相同な2つのDNAドメインを含み、A.ニガーISO−505の該切り捨てglaA遺伝子座の1種に対する線状化されたプラスミドの攻撃を誘導する。夫々2kbのサイズを持つこれらドメインは、下流側の非コード性glaA配列と相同であり、かつ3’−および3”−glaAドメインとして特定される。これらドメイン間には、固有の制限サイト(pGBAAS−1ではXhoIおよびpGBTOPFYT−1ではHindIII)が組み込まれて、E.コリpTZ18Rクローニングベクターの除去後、消化による形質転換前に、該宿主の該glaAターゲット遺伝子座に対して相補性のDNA酵素制限末端を与える。
【0136】
PGBAAS−1において、該amdS遺伝子は、強力なgpdAプロモータによって始動される。このようなプロモータを使用することによって、得られる形質転換体の大多数は、只一つの組み込まれた選別マーカーカセットをもつであろう。このような形質転換体を入手することは、以下の段階を実施する上で重大である。即ち、以前に記載したMARKER−GENE FREE技術の適用による、MARKERGENE FREE組み換え菌株の選別。多数のamdS遺伝子の存在は、「一段階逆選別手順」における、該遺伝子を除去する頻度に、確実に影響を与え、あるいは除去を不能にさえするであろう。
【0137】
pGBTOPFYT−1において、phyAはPglaAによって始動される。既に、上に示したように、このベクターの組成は、線状化された発現カセットが、A.ニガーISO−505における該glaAターゲット遺伝子座の一つにおいて組み込まれるように設計されている。両者共に該宿主ゲノムの同一のglaAターゲット遺伝子座をターゲットとし、只一回の形質転換実験によって得られる、該コーベクターの単一のコピーを持つもの(最終的にMARKER−GENE FREE組み換え菌株を得る必要がある)に対して、該発現カセットの複数のコピーを含む形質転換体を得るためには、両カセットの線状化されたDNAフラグメントの比が重要である。
【0138】
3.1.b 組み換えベクターpGBAAS−1の溝築
pGBAAS−1の溝築に関連する全ての詳細は、以前の我々の特許出願の一つEPA0635574A1に見出すことが出来る。この特許出願において、該amdS選別マーカー遺伝子ベクターpGBGLA−50を、詳細に記載している。命名の理由のみに関連して、後にこのベクターは、pGBAAS−1(spergillus mdS huttle)として、再度命名した。物理的地図については、第15図を参照のこと。
【0139】
3.1.c 該組み換えベクターpGBTOPFYT−1の溝築
該pGBTOPFYT−1の溝築も、上記と同一の特許出願に見出すことができる。この特許出願において、該フィターゼ発現ベクターpGBGLA−53が、詳細に説明されている。ここでも、命名の理由のみに関連して、この発現ベクターは、後に、pGBTOPFYT−1(ool to verexpress roteins)として、再度命名した。物理的地図については、第16図を参照のこと。
【0140】
1.4 全てA.ニガーISO−505の1種の切り捨てglaAアンプリコンをターゲットとする、1または複数の多重フィターゼ発現カセットを含む、MARKER−GENE FREE、フィターゼ産性A.ニガー菌株の開発
1.4.a原理的説明:
この実施例の目的は、発現カセット(ただ一つまたは複数のコピー)が、完全に、選別性のマーカー遺伝子をもつベクターによる、同時形質転換によって、宿主細胞のゲノム中の予め特定されたターゲット遺伝子座に導き得るかを示すことにある。第二の部分では、該ターゲット(複数)酵素発現カセットを失うこと無しに、内部組み換え事象によって、該選別性マーカー遺伝子を除去する方法を示す。
【0141】
この場合、選択されたターゲット遺伝子座は、該glaA停止コドンの直ぐ下流に位置する4kbのglaA配列である。線状化されたプラスミドpGBTOPFYT−1およびpGBAAS−1両者の組込みは、A.ニガーISO−505菌株の切り捨てられかつ標識されたglaA遺伝子座の一つにおける、単一の交差事象を介して起こる。
【0142】
最終的なMARKER−GENE FREE組み換え体を得るために、該宿主ゲノムの同一の標識されたglaA遺伝子座にて、適当な様式で攻撃目標とされる両プラスミドをもつ形質転換体のみを、後のフルオロアセタミド逆選別手順のために選択するであろう。
【0143】
1.4.b 線状化されたpGBAAS−1およびpGBTOPFYT−1 DNAをもつA.ニガーISO−505の同時形質転換:
両プラスミドpGBAAS−1およびpGBTOPFYT−1を、夫々XhoIおよびHindIIIで消化することによって線状化した。2.8kbのE.コリクローニング配列を、形質転換前に、ゲル電気泳動によって除去した。夫々、pGBAAS−1およびpGBTOPFTY−1の線状化DNA 1〜5μgを、物質&方法の項に記載したように、A.ニガーISO−505の形質転換のために使用した。形質転換体をアセタミドプレート上で選別した。これら形質転換体の胞子を、各コロニーをPDA−プレート上に塗布することによって単離した。約500個の形質転換体を、該カセットPCR−テストにかけた。
【0144】
1.4.c 同時形質転換体の選別:
該amdSマーカー遺伝子並びに該phyA発現カセットをもつ形質転換体を、プライマーとしてフィターゼ特異的オリゴヌクレオチド42/43を使用して、該カセットPCRテストによって同定した。1または複数のphyA発現カセットを含む正の形質転換体が、サイズ482bpをもつ特異的DNAバンドを示すであろう。同時形質転換頻度は、10〜50%の範囲で変動した。
【0145】
1.4.d 攻撃されたamdS、phyA同時形質転換体の選別:同定された同時形質転換体について、2組のオリゴヌクレオチド46147(プライマーセット1)および46’48(プライマーセット2)を使用したターゲットPCRテストを実施した。これら2組のブライマーセットの一方について正の結果(4.2kbDNAフラグメントの増幅、第17図参照)を示す、同時形質転換体を選別した。負の結果は、全てのカセットがランダムに組み込まれたことを示し、プライマーセット1または2についての正の結果は、該phyAまたはamdSが、夫々該glaAターゲット遺伝子座に隣接して位置することを示す。5−50%の範囲の該同時形質転換体が、正であることが分かった。
【0146】
限られた数の同定された菌株が、詳細なサザン分析のために選択された。
【0147】
1.4.e サザン分析による攻撃されたamdSおよびphyA攻撃された同時形質転換体の遺伝的解析:
染色体DNAを単離し、該amdSおよびプローブとしての2.2kbのSalI/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントとハイブリッド化した、BglII消化物を使用して、サザン分析を実施した。主として観測された6つのDNAハイブリダイゼーションパターンを、模式的に第18〜23図に示す。単一のamdSコピーおよび1または複数のphyAカセットもつものとして特徴付けられる、ハイブリダイゼーションパターン(第20〜23図)を示す同時形質転換体を、フルオロアセタミド逆選別手順にかけて、最終的に該amdS選別マーカー遺伝子を除去した。
【0148】
1.4 famdS遺伝子を含まない(amdS)フィターゼ産性菌株の選別:
該amdS発現カセットのターゲット組込みによって作成した、該直列反復体に渡る組み換えは、該amdSカセットの喪失に導き、かつフルオロアセタミド培地上で選別可能となる。
【0149】
ここでは、我々は、フルオロアセタミド逆選別手順を使用して、依然として該隣接(多重)組込みphyA発現カセットを含んでいる、amdSを含まない組み換え菌株の選別について説明する。選別したターゲットamdS/phyA同時形質転換体の胞子を、フルオロアセタミドプレートに塗布した。初めに、生育したコロニーを、幾つかの連続するPCRに基くテストによって分析した。まず、全ての子孫を、その遺伝子型、amdSについてテストした。amdS遺伝子型の選別は、物質&方法の項に記載したように、該amdS特異的プライマーを使用して、コロニーについて該カセットPCRテストを実施することにより行った。しかし、驚いたことに後のPCRに基く「DNA−フラッグ」テストでは、該子孫全体において、全glaAアンプリコンも失われた。更に、多くのamdS組み換え体においても、phyA特異的プライマーセットを使用して実施した第3のPCR−テストにみられるように、該ターゲットphyAカセットが失われた。
【0150】
これら結果は、遺伝子変換として知られる、一つの現象の出現によってのみ説明できる。幾つかの場合においては、寧ろ大きなDNAフラグメントまたは完全なglaAアンプリコン(≧80kb)のサイズにも及ぶフラグメントが、別のglaAアンプリコンで置換された。しかしながら、多くの子孫(90%を越える)において、全glaAアンプリコンが、削除されるものと考えられた。従って、観測された結果を全体としてみれば、アンプリコン変換および削除については、より適切である。観測された現象を利用して、同時形質転換体における全てのamdSおよびphyAカセットが、同一の切り捨てglaA遺伝子座を標的とするか、およびその何れであるかを決定した。これを決定するために、各同時形質転換体のただ一つまたは2つのフルオロアセタミド耐性コロニーを、phyAおよび「DNA−フラッグ」オリゴヌクレオチドプライマーセットを使用した、混合PCR−テストを実施して、その何れが該遺伝子型:amdS/phyA/glaA−アンプリコン2+を与えるかについてテストした。その結果は、同時形質転換体が、該3つのglaAアンプリコンの内の一つに組み込まれたamdSおよびphyAカセットをもつことが明らかであることを示す。引き続き、このような同定された同時形質転換体から、付随的な子孫を、phyAおよび「DNA−フラッグ」プライマーセットを使用した、混合PCR−テストを適用することによってテストした。該所定の遺伝子型:amdS/phyA/glaA−アンプリコン3+は、個々の同時形質転換体の子孫において、大きく(1〜20%)変動した。この頻度は、該予備選別同時形質転換体の、該glaAアンプリコンのamdSおよびphyAカセットの遺伝子組成に大きく依存することを示した。
【0151】
複数のカセットが一つのglaA遺伝子座において攻撃される、同時形質転換体の場合において、多くの反復体が生成される。該フルオロアセタミド逆選別手順の結果は、該amdSカセットの喪失が様々な様式で現れ、数の異なるphyAカセットをもつamdSを与える。
【0152】
このため、各予備選別された同時形質転換体の幾つかの子孫組み換え体が、選別される(全て該所定のamdS/phyA/glaA−アンプリコン3+遺伝子型を示す)が、異なる数の残留phyAカセットを含む。
【0153】
このような子孫菌株に関する予備選別は、上記のPCRテストにおける、該3つのglaAアンプリコンを表す、DNAバンドに対して、増幅されたphyA特異的DNAバンドの強度における差を比較することによって容易に行うことが出来る。
【0154】
最後に、選別されたamdS子孫の遺伝子組成を確認するために、BamHIおよびBglllによって消化され、特異的プローブとしての2.2kb SalI/XhoI 3’−glaA DNAフラグメントとハイブリッド化された染色体DNAについて、サザン分析を実施した。該BamHI−標識glaAアンプリコンの一つにおいて攻撃された1、2または3個のphyAカセットをもつものに対する、第24図に示されたようなハイブリダイゼーションパターンを示す菌株を選別し、それぞれをA.ニガーNP505−1、−2および−3と命名した。
【0155】
該フィターゼカセットを、該他の2つのglaAアンプリコンの一つにもつ菌株と共に、これら菌株を、引き続きそのフィターゼを生産する能力についてテストした。
【0156】
物質&方法の項に示したように、振とうフラスコ発酵を実施した。その上澄における該フィターゼ活性の測定は、全ての菌株が、phyA遺伝子コピー当たり、同一の量(100U/ml)のフィターゼを生産すること、および該phyA遺伝子が局在している該glaAアンプリコンには無関係であることを明らかにした。
【0157】
1.5 フィターゼカセットにおける1から2への増加を含む変換体の選別
1.5.a 原理的説明:
DNAアンプリコンにおいて攻撃された、発現カセットのコピー数は、遺伝子変換を介して高めることができる。結局、該遺伝子によってコードされる酵素の生産性を高めることができる。ここでは、我々は、高いフィターゼ産性を示すphyA変換体の選別およびキャラクタリゼーションについて説明する。
【0158】
1.5.b 推定phyA変換体の選別:
一例として、菌株A.ニガーNP505−2を選択した。
【0159】
別のglaAアンプリコンにおいて攻撃された、少数のまたは多数のphyAカセットを含む組み換え菌株をも使用することが可能である。BamHI−標識glaAアンプリコンにおいて攻撃された、2つのphyAカセットを含む、A.ニガー菌株NP505−2の胞子を、PDA培地を含むプレート上に接種し、2−3日後に、該phyADNA−フラッグ特異的プライマー(物質&方法の項参照)を使用して、個々のコロニーについて、該DNA−フラッグPCRテストを実施した。この方法を利用して、これら3種の標識glaA−アンプリコン間の、遺伝子交換(変換I増幅または削除)を、極めて迅速に可視化することができる。得られる遺伝子型の頻度は、大幅に変動するが、平均して、我々は、テストしたコロニーの95%以上が、これら3種のglaAアンブリコンについて何の変化も示さないことを観測した。該子孫の5%が、1または2種のglaAアンプリコン削除または該glaAアンプリコンの一種の増幅を示し、また所定の変換体も、該「BamHI−標識」glaA遺伝子座と、他の2つのglaAアンプリコンとの間の変換(各々の例を第25図に示す)の結果として、検出された。
【0160】
1.5.c phyA変換体のサザン分析:
これら変換体のphyAのコピー数が、二倍となるか否かを決定するために、このような変換体(遺伝子型BamHI2+/SalI/BglIIまたはBamHI2+/SalI/BglII)の幾つかを、夫々該glaA特異的HindIII/Xhol5’−glaA DNAフラグメントおよび該Sall/XhoI 3”−glaA DNAフラグメントによってプローブした、BamHIおよびBgIII消化物を使用して、詳細なサザン分析にかけた。
【0161】
該親菌株および選別した変換体のBamHI消化物に関するハイブリダイゼーションパターンを、第25図に示す。予想されるように、また親菌株A.NP505−2と比較して、該PCRによって同定されたBamHI2+遺伝子型は、実際にBamHI消化物中において、2.5kbおよび4.2kbのハイブリッド化DNAフラグメントに対する反転した強度を示した。該BamHI2+遺伝子型において、該2.5kbフラグメントは、2つのBamHI−標識glaAアンプリコンを表し、また4.2kbのフラグメントは、選別されたBamHI2+変換体の遺伝子型に依存して、残部のSalIまたはBglII glaAアンプリコンを表す。観測された結果は、明らかに予め規定されたアンプリコンが、他の関連するアンプリコンを犠牲にして、「遺伝子変換」によって増幅できることを示している。
【0162】
BglII消化物のハイブリダイゼーションパターンは、明らかに選別されたBamHI2+変換体においては、phyA遺伝子コピーの数も二倍となることを示した。第26図に示したように、親菌株の染色体DNAのBglII消化物は、プローブとして3”−glaAを使用した場合に、5個のハイブリッド化DNAフラグメントを示す。14.9、11.7、7.5、5.7および5.6の5つのバンドは、夫々5’−フランキングglaA配列、SalI−標識アンプリコン、phyA−phyAトランジション、3’−フランキングglaA配列およびBglII−標識glaAアンプリコンを表す。該親菌株において、これらバンド全ては、多かれ少なかれ同一のハイブリッド化強度をもつ。第26図にも示したように、遺伝子型BamHI2+/SalI/BglIIまたはBamHI2+/SalI/BglIIをもつ選別された変換体においては、該5.6kbまたは11.7kbのDNAフラグメント夫々は、存在せず、一方14.9、7.5および5.7kbのハイブリッド化フラグメントの強度は、二倍となる。
【0163】
この結果は、該親菌株のBamHI−標識glaAアンプリコン内に局在する該2つのphyAカセットも、選別されたBamHI2+変換体における該変換事象によって、二倍となることを示している。
【0164】
1.5.d フィターゼ生産用のphyA変換体の解析:
選別されたphyA変換体が、実際に高いフィターゼ産性を示すか否かを決定するために、振とうフラスコ発酵を、物質&方法の項に記載したようにして実施した。
【0165】
平均して、該親菌株NP505−2(2つのphyA遺伝子コピーを持つ)のフィターゼ発現を測定したところ、約200U/mlのレベルであった。予想されるように、遺伝子型BamHI2+SalIまたはBamHI2+/BglIIを有する、選別された変換体両者については、400U/mlまでのフィターゼレベルを観測できた。
【0166】
A.ニガーNP505−4および−5と命名された両菌株を、実施例1.6で使用して、該phyA遺伝子コピー数を更に高めた。
【0167】
1.6 複数の変性DNAアンプリコンを含む変換体の選別
1.6.a 原理的説明:
宿主菌株中に存在する、該DNAアンプリコンの一種において攻撃された発現カセットを、該菌株の子孫をスクリーニングし、所定の変換が起こっている組み換え菌株について選別することによって、増幅することができる。上記のように、程度は低いが、これらDNAアンプリコンの中で、変換は自発的に起こる。遺伝子変換のこの過程を、繰り返し利用して、多数の(phyA)変性DNAアンプリコンをもつ新たな変換体を得ることができる。この方法を利用することによって、我々は、最終的に6個のphyA遺伝子アンプリコンをもつ変換体を同定した。これら遺伝子コピーは、該A.ニガーISO−505宿主の該3つの変性glaAアンプリコンに渡って分割されていた。
【0168】
「酵素発現カセットの富化」の程度は、該宿主菌株中に元々存在するDNAアンプリコンの数に依存する。しかし、このPCRに基くDNA−フラッグテストの適用によって、DNA−フラッグプロフィールをもつ子孫を単離することも可能であることが分かった。このことは、3つのglaA DNAアンプリコンの一つの自発的な増幅によってのみ説明できた。この工程を繰り返し利用することによって、組み換え菌株を、最終的に選別することが出来た。この組み換え菌株は、該宿主菌株と比較して、各々2個のphyA発現カセットを含む、付随的なglaA−DNAアンプリコンをもつ。
【0169】
1.6.b 6個のphyA遺伝子コピーを含む、推定的変換体の選別:
全体で4個のphyA発現カセット(各BamHI−標識glaAアンプリコンに、2個のphyAカセットをもつ)を含む、実施例1.5.(d)に記載した、A.ニガー菌株NP505−4の胞子を、PDAプレートに接種し、2−3日後に、該DNA−フラッグ特異的プライマーを使用して、各子孫について、該DNA−フラッグPCRテストを実施した。前に述べたように、ここでも約95%のテストしたコロニーが、glaAアンプリコン遺伝子型に何の変化も示さなかった。約5%の該子孫が、該BamHI−またはSalI−標識アンプリコンの一つの削除またはBamHI−標識glaA−アンプリコンの一つの増幅に導く、DNA−フラッグパターンを示した。これら組み換え菌株以外にも、該所定のDNA−フラッグパターン、即ち僅かに強度の増加した、200bpサイズのBamHI DNA−フラッグバンドをもつ変換体が、同様に同定された。遺伝子型「BamHI3+」および「BamHI3+/SalII」を示す全ての子孫をサザン分析にかけた。
【0170】
該「BamHI3+/Salii」変換体中のphyA遺伝子数を8にまで増大するために、胞子をPDAプレートに接種し、生育の2−3日後に、該DNA−フラッグ特異的プライマーを使用して、各子孫について、該DNA−フラッグPCRテストを実施した。寧ろ低頻度(1000当たり1)にて、「BamHI4+」変換体は、高い強度の該200bpBamHI−フラッグDNAフラグメントおよびその後の残留220bpサイズのSall−フラッグDNAフラグメントの喪失を示す、DNA−フラッグパターンを示した(第27図)。この変換体菌株も、サザン分析にかけた。
【0171】
1.6.c サザン分析による変換体の遺伝子キャラクタリゼーション:
上記同定した変換体(PCRに基く遺伝子型:「BamHI3+」、「BamHI3+/SalI」および「BamHI4+」)のphyA遺伝子コピー数を、プローブとして夫々HindIII/XhoI 5’−glaAおよびSalI/XhoI 3”−glaA特異的DNAフラグメントとハイブリッド化された、BamHI御BglII消化物を使用した、サザン分析によって決定した。該親変換体(遺伝子型:BamHI2+/SalI/BglIIまたはBamHI2+/SalI−/BglII)および選別されたその変換体の該BamHI消化物の、予想されたハイブリダイゼーションパターンを、第25および27図に示す。BamHI消化物は、実際に、該「BamH3+」変換体に対する、唯一の2.5kbをもつハイブリッド化フラグメントを示す。該「BamHI3+/SalI」変換体については、4.2kbの付随的なバンドが検出され、このことは、該DNA−フラッグパターンから得られた結果に基づいて予測されるように、依然として該SalI−標識アンプリコンが、この変換体中に存在していることを示す。変換体「BamHI4+」は、該「BamHI3+」変換体と同一のハイブリダイゼーションパターンを示す。元の親菌株A.ニガーNP505−2および2種の親変換体菌株BamHI2+/SalI/BglIIおよびBamHI2+/SalI/BglIIのハイブリダイゼーションパターンの比較については、上記図面を参照のこと。
【0172】
上記菌株から単離したDNAについての、BglII消化物の予想されるハイブリダイゼーションパターンを、第28図に示す。変換体「BamHI4+」並びに「BamHI3+」に関連して、3つのハイブリッド化バンド(14.5、7.5および5.7)が検出され、全て等しい強度を有しており、このことは、該5’−および3’−フランキング配列以外に、該phyA遺伝子コピーが、夫々6および8まで増大することを意味する。変換体「BamHI3+/SalI」については、予想通りのパターンが観測され、11.7kbのサイズをもつバンド(該SalIアンプリコンの存在に特徴的なもの)を含んでいた。このバンドの強度は、勿論3倍低い。
【0173】
これら結果は、明らかに、全て2個のphyAカセットを含んでいる、3および4個ものBamHI−標識glaAアンプリコンを含む、変換体を選別することが可能であることを、示している。
【0174】
1.6.d 振とうフラスコ発酵フィターゼ産性の分析:
選別された「BamHI4+」並びに「BamHI3+」変換体が、実際に高いフィターゼ産性を示すか否かを決定するために、物質&方法の項に記載したように、振とうフラスコ発酵を実施した。平均して、該親菌株NP505−2(2個のphyA遺伝子コピーを持つ)のフィターゼ発現を測定したところ、約200U/mlのレベルであった。これら3つの選別された変換体について予想されたように、測定されたフィターゼレベルは、「BamHI3+/SalI」および「BamHI3+」遺伝子型に対して約600U/ml・および該「BamHI4+」変換体菌株について約800U/mlであった。
【0175】
その後、これら菌株を、夫々A.ニガーNP505−6、−7および−8と命名した。
【0176】
1.7 高いフィターゼ産性レベルをもつ組み換え体の直接的選別
1.7.a 原理的説明:
該glaA DNAアンプリコンが、所謂DNA−フラッグによって標識されていると言う事実のために、変換体は、単に該PCRに基くDNA−フラッグテストを実施することによって選別できた。この遺伝子に基くスクリーニング法を適用することによって、我々は、該phyA発現カセットが、該phyA変性BamHI−標識glaAアンプリコンおよびその他の2つのアンプリコンの間の変換の結果として、増幅されることを示し、かつ立証することができた。
【0177】
上記のように、我々は、phyA遺伝子コピー数とフィターゼ産性レベルとの間に線形関係を観測したが、このことは、発現に基づいて選別することも可能であることを示す。この実施例において、我々は、初めのBamHI−glaAターゲットphyA組み換え菌株の子孫を、マイクロ−ウエルプレート中での、高いフィターゼ発現レベルについてスクリーニングすることによって、高いphyA遺伝子コピー数をもつ変換体の単離について説明する。
【0178】
1.7.b 高いフィターゼ発現レベルについてのスクリーニング:
菌株A.ニガーNP505−2の、単一のコロニーの胞子を、物質&方法の項に記載したような、96−ウエルプレートに接種した。34℃、100%湿度にて、僅かに攪拌しつつ、7日間生育した後に、各ウエルの上澄の該フィターゼ酵素活性を測定した。約1000個の子孫の酵素発現レベルを、テストした。高いフィターゼ活性を示す細胞を収穫し、胞子を集め、更にマイクロ−タイタースクリーニング実験にかけた。再度、高いフィターゼ酵素活性をもつ細胞が見出された。
【0179】
後の振とうフラスコ発酵において、このような同定された菌株は、600U/mlまでのフィターゼ発現レベルを示す。
【0180】
1.7.c 同定した組み換え菌株の遺伝子キャラクタリゼーション:
上記菌株の観測されたフィターゼ産性における改善は、該phyA含有BamHI−標識glaA遺伝子座の増幅または変換の何れかにより、該phyA遺伝子コピー数が増加した結果であると思われた。まず、これら選別された菌株の遺伝子型を、該DNA−フラッグテストを適用することによって決定し、次いでサザン分析を行った。
【0181】
該DNA−フラッグテストは、明らかに、あらゆる種類の「DNA−フラッグ」遺伝子型が、該選別された菌株中に存在することを示した。これら菌株は、以下のものを選別基準とする、該DNA−フラッグテストを実施することによって、既に単離されているものと同一の遺伝子型を示した:BamHI2+/lSal/BglII、BamHI2+/Sal/BglII、BamHI3+/Sal/BglII、BamHI2+/Sal/BglII、BamHI3+/Sal/BglII
【0182】
これら全ての遺伝子型は、前の実施例で記載したように、サザン分析によって確認した。
【0183】
実施例:ペニシリウム
2.1 P.クリソゲナム宿主の選別とキャラクタリゼーション
2.1.a原理的説明:
遺伝子変換による挿入遺伝子の増幅は、そのゲノム内に、複数の相同DNAドメインの存在を必要とする。このようなドメインは、P.クリソゲナムについて記載されている(この報告において、PENアンプリコンと呼ばれている:Fierro et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,92:6200−6204)。ペニシリン生合成遺伝子pcbAB、pcbCおよびpenDEを包含する、15kbのドメインであるペニシリンクラスターは、これらPENアンプリコン上に位置している(第29図)(Diez et al.,J.Biol.Chem.,1990,265:16358−16365;Smith et al.,EMBOJ.,1990,9:741−747)。ここでは、我々は、該PENアンプリコンの複数のコピーを含む、P.クリソゲナム宿主菌株CBS 649.97の選別およびキャラクタリゼーションについて説明する。
【0184】
2.1.b PENアンプリコンの定量:
P.クリソゲナム菌株CBS 649.97を、単一のPENアンプリコンを含む、菌株Wis54−1255(ATCC 28089)から、伝統的な菌株改善法によって得た(Fierro et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,92:6200−6204)。菌株CBS 649.97中のPENアンプリコンの数は、サザン分析によって測定した。そのために、染色体DNAを、BstXIで消化し、HELEおよびniaDプローブとハイブリッド化した。Wis54−1255と比較して、CBS 649.97に対して7−倍高いHELE/niaDハイブリダイゼーション比を検出した(第30,42図)。同様に、CHEFによって分離されたNotI−消化DNAは、HELEプローブとハイブリッド化された(第42図)。Wis54−1255におけるよりも、CBS 649.97において約420kb大きな、主ハイブリダイゼーションシグナルを検出じた(第31図)。これら結果は、菌株CBS 649.97において約7個のPENアンプリコンが存在することを示した。
【0185】
2.2 発現ベクターの溝築
2.2.a 原理的説明:
ゲノムへのrDNA分子の指向性挿入(ターゲット)は、相同性組み換えを介して起こる。従って、rDNAカセットは、該ゲノム内の該ターゲットサイトと相同性のDNAフラグメントがフランキング状態にある必要がある(第32図)。HELEおよびHELFとして定義される、該ペニシリンクラスター内の2つのターゲットドメインを、該発現カセットの、該PENアンプリコンへの指向性挿入のために選択した(第29図)。ここでは、我々は、本報告において使用する、amdS、cefEおよびcefF発現ベクターの設計および溝築について説明する。
【0186】
2.2.b 発現ベクターの基本的な設計:
線状DNA分子は、該ゲノムへのターゲット組込みのために重要である。その上、5’および3’末端(フランキング部)両者は、所定の組込みサイトに対して相同なDNAからなる必要がある。従って、形質転換フラグメントは、該5’および3’ターゲットドメインがフランキング状態にある、該発現カセット(適当なプロモータおよびターミネータによって調節される対象とする遺伝子)を含む。これらフラグメントを、E.コリベクター内にクローニングして、該プラスミドの増殖を行う。得られる発現ベクターは、E.コリ配列が、該形質転換フラグメントの線状化および単離の際に除去されるように設計される(第32図)。従って、組み換え菌株は、E.コリDNAを含まないであろう(E.P.0635574A1)。
【0187】
2.2.c 発現ベクターpHELE−A1の溝築:
該5’HELEターゲットドメインを、オリゴ1および2を用いて、P.クリソゲナム菌株CBS 649.97の染色体DNAからPCRによって増幅した。得られた生成物を、pZErOTM−1(USA,カールスバッドのInvitrogen)内にNotI−SpHIフラグメントとしてクローニングして、プラスミドpHELE5’を生成した。同様に、該3’HELEターゲットドメインを、オリゴ3および4を使用して、PCRにより増幅し、pHELE5’内にHindIII−NotIフラグメントとしてクローニングして、プラスミドpHELF53を得た。PgpdAおよびTamdSによって調節されるamdSを包含する、該amdS発現カセットを、オリゴ5および6を使用して、プラスミドpGBDEL4L(E.P.0635547A1)から、PCRによって増幅した。得られた生成物を、NotIフラグメントとして、pHELE53内にクローニングして、発現ベクターpHELE−A1を得た(第33図)。
【0188】
2.2.d 発現ベクターpHELF−A1の溝築:
該5’HELFターゲットドメインを、オリゴ7および8を使用して、P.クリソゲナム菌株CBS 649.97の染色体DNAからPCRによって増幅した。得られた生成物を、pZErOTM−1(USA,カールスバッドのInvitrogen)内にNotI−XbaIフラグメントとしてクローニングして、プラスミドpHELF5’を生成した。同様に、該3’HELFフランキングを、オリゴ9および10を使用して、PCRにより増幅し、pHELF5’内にPstI−NotIフラグメントとしてクローニングして、プラスミドpHELF53を得た。PgpdAおよびTamdsによって調節されるamdSを包含する、該amdS発現カセットを、オリゴ5および6を使用して、プラスミドpGBDEL4L(E.P.0635547A1)から、PCRによって増幅した。得られた生成物を、NotIフラグメントとして、pHELF53内にクローニングして、発現ベクターpHELF−A1を得た(第34図)。
【0189】
2.2.e 発現ベクターpHELE−E1の溝築:
該PpcbCを、オリゴ11および12を使用して、P.クリソゲナム菌株CBS 649.97の染色体DNAからPCRによって増幅した。得られた生成物を、pGSEWA(WO 95/04148)内にXhoI−NdeOIフラグメントとしてクローニングして、pISEWA−Nを生成した。最後に、PpcbCおよびTpenDEによって調節される該cefE発現カセットを、pHELE53中に、pISEWA−N由来のNotIフラグメントとしてクローニングして、発現ベクターpHELE−E1を得た(第35図)。
【0190】
2.2.f 発現ベクターpHELF−F1の溝築:
該cefF遺伝子を、オリゴ13および14を使用して、ExpandTM Long Template PCR System(Boehringer Mannheim)に従って、S.クラブリゲルスATCC 27064のゲノムDNAから、PCRによって増幅した。サイクル条件:30×(98℃で1分間、70℃で5分間)、1×(72℃で7分間)。得られた生成物を、pISEWA−N(置換cefE)内にNdeI−NsiIフラグメントとしてクローニングして、pISFWAを得た。最後に、PpcbCおよびTpenDEによって調節される該cefF発現カセットを、pHELF53中に、pISFWA由来のNotIフラグメントとしてクローニングして、発現ベクターpHELF−F1を得た(第36図)。
【0191】
2.3 cefEによるPENアンプリコンの変性
2.3.a 原理的説明:
形質転換体の効率的な選別は、選別性マーカーを必要とする。真菌の同時形質転換は、周知の手順であり、これによって、該宿主は、異なる2つのrDNA分子によって、同時に形質転換される。該rDNA分子の一方は、対象とする遺伝子を含み、かつその他方は該選別マーカーを含む。二方向性amdSマーカーの使用は、該P.クリソゲナム宿主の反復的な形質転換を可能とする(E.P.0635547A1)。ターゲット組込みによって生成される、該直列反復体の組み換えは、該amdSカセットの喪失をもたらし、またフルオロアセタミド培地上で選別できる(第37図)。本例では、我々は、該PENアンプリコンの一つに組み込まれた該cefE発現カセットを含み、amdSを含まない組み換え体の選別について説明する。
【0192】
2.3.b ターゲットamdS、cefE同時形質転換体の選別:
P.クリソゲナムCBS 649.97を、SfiI線状化HELE−A1およびHELE−E1フラグメントによって、同時形質転換処理した(第33,35図)。amdSを含む形質転換体を、アセタミドプレート上で選別し、オリゴ17および18を使用して、カセットPCRによって、cefEについてテストした(第40a図)。HELE内に組み込まれたamdSまたはcefEを含む同時形質転換体を、オリゴ19、20および21を使用して、ターゲットPCRによって同定した(第40b,c図)。
【0193】
2.3.c amdS(マーカーを含まない)cefE組み換え体の選別:
上記2.3.bに記載した、amdS、cefE同時形質転換体の胞子を、フルオロアセタミド培地に塗布した。
【0194】
cefEを保持する組み換え体を、E.コリバイオアッセイによって同定した。amdSを喪失したが、少なくとも一つのcefEコピーが存在することを、オリゴ15、16、17および18を使用した、カセットPCRで確認した(第40a,d図)。これら菌株を、サザン分析のために選別した。
【0195】
2.3.d amdS組み換え体のサザン分析:
HELEへのcefEの組込みおよびamdS中のcefEコピー数、cefE組み換え体を、サザンおよびTAFEによって分析した。そのために、組み換え体の染色体DNAをNruIで消化し、cefEプローブにハイブリッド化した(第38,42図)。同様なハイブリッド化を、HpaI−消化DNAについて実施し、TAFEによって分離した(第39図)。HELEへのcefEの組込みに対して予想されるハイブリダイゼーションパターンをもつ組み換え菌株を、更なる実験のために選別した。
【0196】
2.4 第2のアンプリコンのamdSによる変性
2.4.a 原理的説明:
遺伝子変換は、本質的にドナーDNAストランドにより、アクセプタDNAストランド由来の遺伝情報を置換する。ドナーおよびアクセプタストランド両者は、この事象を可視化するために標識できる。2.3において述べたような菌株は、既にcefEによって標識された、一つのアンプリコンを有している(この場合は、該ドナーストランド)。ここでは、我々は、cefE以外の異なるPENアンプリコンに、単一のamdSカセットを挿入することによる、アクセプタストランドの変性について説明する。
【0197】
2.4.b amdSによる第2のPENアンプリコンの攻撃:
一つのアンプリコン中にcefEを含有する、2.3.dに記載した如き菌株を、SfiI−線状化HELE−A1フラグメントで形質転換した(第33図)。amdSの組込みおよびHELEの攻撃を、夫々オリゴ15、16および19、20を用い、カセットおよびターゲットPCRによってテストした(第40c,d図)。cefEに隣接するamdSの組込みまたは単一のHELE遺伝子座における複数のamdSコピーは、オリゴ20、21、22および23を使用したターゲットPCRによって同定した(第40e,f,g図)。従って、第二のアンプリコンに組み込まれた単一のamdSカセットを含む、残りの菌株を、サザン分析のために選別した。
【0198】
2.4.c amdS形質転換体のサザン分析:
2.4.bに記載した形質転換体の染色体DNAを、HpaIで消化し、amdSプローブとハイブリッド化した(第41,42図)。HELEへの正確なamdSの組込みに対して予想されるハイブリダイゼーションパターンをもつ菌株を、遺伝子変換実験のために選別した。
【0199】
2.5 遺伝子変換による生産性の増加
2.5.a 原理的説明:
組み込まれた遺伝子のコピー数は、遺伝子変換を介して増大する(第43図)。結局、該遺伝子によってコードされる酵素の、生産性およびその触媒活性を高めることができる。cefEを発現する組み換えP.クリソゲナム菌株は、適当な条件下で発酵させた場合に、アジポイル−7−ADCAを生産する(Crawford et al.,BIO/Technol.,1995,13:58−62)。ここでは、我々は、cefE遺伝子変換体の選別およびキャラクタリゼーション並びに達成されるアジポイル−7−ADCA産性における増加について記載する。
【0200】
2.5.b cefE遺伝子変換体の選別:
2.5.aに記載した、異なるアンプリコンにcefEおよびamdSを含む菌株の胞子を、フルオロアセタミド培地に接種して、amdS組み換え体を製造した。これら組み換え体の該amdS、cefE遺伝子型を、オリゴ15、16、17、18、26および27を使用した、カセットPCRによって確認した(第40a,d,h図)。オリゴ26および27は、該固有のniaD遺伝子座のフラグメントを増幅するために含められた。該遺伝子座は、該PCR生成物の相対的な定量のための基準として機能する。親菌株に比して高いcefE/niaD比によって判定された如く、該amdSマーカーを喪失したが、cefEコピーを獲得した菌株として同定された遺伝子変換体を、サザン分析のために選別した。
【0201】
2.5.c cefE遺伝子変換体のサザン分析:
2.5.bにおいて選別された菌株の染色体DNAを、NruIで消化し、cefEおよびniaDプローブとハイブリッド化した。親菌株と同等なハイブリダイゼーションパターンをもつが、高いcefE/niaDハイブリダイゼーションシグナル比をもつ菌株を、アジポイル−7−ADCAの発酵のために選別した。
【0202】
2.5.d cefE遺伝子変換体のアジポイル−7−ADCA産性:
2.7.bで選別された遺伝子変換体のアジポイル−7−ADCA産性を、振とうフラスコ発酵によって測定した。選別された菌株全てが、対応する親菌株よりも、有意に多量のアジポイル−7−ADCAを生産した。
【0203】
2.6 遺伝子変換体による、異なる発現カセットの同時の増加
2.6.a 原理的説明:
該アンプリコンの大きなセグメントを包含し、あるいは更に該アンプリコンのボーダーを延長するドメインが、遺伝子変換に関与し得る。従って、相互に隣接する、異なる遺伝子のコピー数を、遺伝子変換によって同時に大きくすることができる。cefEおよびcefFを発現する組み換えP.クリソゲナム菌株は、適当な条件下で発酵させた場合に、アジポイル−7−ADCAを生産する(Crawford et al.,BIO/Tedmol.,1995,13:58−62)。ここでは、我々は、同一のPENアンプリコン(cefE+cefF)上の異なる遺伝子座を攻撃することによる、cefFCおよびcefE発現カセットの同時遺伝子変換並びに達成されるアジボイル−7−ADCA産性における増加について記載する。
【0204】
2.6.b(cefE+cefF)形質転換体の選別:
HELE中に組み込まれたcefEを含む、2.3.dに記載したような菌株を、SfiI線状化HELF−A1およびHELF−F1フラグメントによって同時に形質転換した(第34,36図)。形質転換体をアセタミドプレート上で選別し、オリゴ15、16、17および25を使用して、cefFおよびan1dSにつき、カセットPCRによってテストした(第40d,j図)。HELFへのcefEまたはamdSの組込みは、オリゴ20、21および24を使用する、ターゲットPCRによって測定した(第40j,k図)。これら菌株の染色体DNAを,NmtIで消化し、ブロッティングし、HELEプローブとハイブリッド化した(第44図)。既にcefEを含んでいるPENアンプリコン上のHELFへの、cefFまたはamdSの組込みに相当する、ハイブリッド化フラグメントをもつ菌株を、マーカーを含まない(amdS)組み換え体の選別のために使用した。
【0205】
2.6.c マーカー遺伝子を含まない(cefE+cefF)組み換え体の選別:
2.6.bに記載した菌株の胞子を、amdS組み換え体の選別のために、フルオロアセタミド培地に塗布した。amdSを喪失したが、cefEおよびcefFを獲得した組み換え体を、オリゴ15、16、17、18および25を使用して、カセットPCRによって同定した(第40a,d,j図)。これら菌株の染色体DNAを,NruIで消化し、cefFプローブとハイブリッド化した(第44、45図)。HELFに正確に組み込まれたcefFを含む菌株を、遺伝子変換体の選別のために使用した。
【0206】
2.6.d(cefE+cefF)遺伝子変換体の選別:
2.6.cに記載した菌株の胞子を、生育させて、単一のコロニーを得、オリゴ17、18、25、26および27を使用して、カセットPCRによって、cefE、cefFおよびniaDの量について分析した(第40a,h.i図)。
【0207】
遺伝子変換体は、親菌株に比して、同時に増大した比:cefE/niaDおよびcefE/niaDによって同定した。cefEおよびcefFの高いコピー数は、サザン分析によって確認した。そのために、染色体DNAを、NruIで消化し、かつcefEおよびniaDプローブとハイブリッド化した(第46図)。ブロットをストリッピングし、次いでcefFおよびniaDプローブとハイブリッド化した(第47図)。親菌株に比して、高い比:cefE/niaDおよびcefF/niaD両者をもつ菌株を、アジポイル−7−ADAC生産のために選別した。
【0208】
2.6.e (cefE+cefF)遺伝子変換体のアジポイル−7−ADAC生産:
2.6.dにおいて選別された遺伝子変換体のアジポイル−7−ADCA産性を、振とうフラスコ発酵によって測定した。選別された菌株全てが、その親菌株に比して、高い量のアジポイル−7−ADACを生産した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの実質的に相同な、染色体のドメインに組み込まれた、組み換えDNA分子を有する糸状菌であって、該DNAドメインが、そのリボソームDNA反復体ではないことを特徴とする、上記糸状菌。
【請求項2】
組み換えDNA分子が、該実質的に相同なDNAドメイン各々に組み込まれている、請求項1に記載の糸状菌。
【請求項3】
該DNAドメインが、アンプリコンである、請求項1または2に記載の糸状菌。
【請求項4】
該DNAドメインが、その天然状態において、高レベルで発現可能な、内因性遺伝子を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項5】
該内因性遺伝子が、解糖酵素、澱粉分解酵素、セルロース分解酵素および抗生物質生合成酵素をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項4に記載の糸状菌。
【請求項6】
該内因性遺伝子が、グルコアミラーゼ遺伝子、TAKAアミラーゼ遺伝子、セロビオヒドロラーゼ遺伝子およびペニシリウム生合成遺伝子からなる群から選択される、請求項5に記載の糸状菌。
【請求項7】
該内因性遺伝子が、該DNAドメインの各コピーにおいて、不活性化されている、請求項4〜6のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項8】
該内因性遺伝子が、少なくともその一部を不可逆的に削除することによって、不活性化されている、請求項7に記載の糸状菌。
【請求項9】
該不可逆的削除が、プロモータおよび上流側の活性化配列の少なくとも一部を含む、請求項8に記載の糸状菌。
【請求項10】
該DNAドメインの各バージョンが、固有の配列標識によって、該ドメインのその他のバージョンから区別される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項11】
該配列標識が、制限サイトである、請求項10に記載の糸状菌。
【請求項12】
該組み換えDNA分子が、所定の遺伝子を発現するための発現カセットを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項13】
該所定の遺伝子が、分泌性酵素をコードする、請求項12に記載の糸状菌。
【請求項14】
該所定の遺伝子が、細胞内酵素をコードする、請求項12に記載の糸状菌。
【請求項15】
細胞内酵素用の、1またはそれ以上の発現カセットを含む、1またはそれ以上の組み換えDNA分子が、該DNAドメインに組み込まれており、かつ該細胞内酵素が、該糸状菌にとって固有のものではない、代謝経路の一部である、請求項14に記載の糸状菌。
【請求項16】
該細胞内酵素が、デアセトキシセフアロスポリンCシンセターゼ(エキスパンダーゼ)およびデアセチルセフアロスポリンCシンセターゼ(ヒドロキシラーゼ)を含む群から選択される、請求項15に記載の糸状菌。
【請求項17】
該組み換えDNA分子が、選別性マーカー遺伝子を欠いている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項18】
選別性マーカー遺伝子を欠いている、請求項17に記載の糸状菌。
【請求項19】
アスペルギルス、トリコデルマ、ペニシリウム、セファロスポリウム、アクレノニウム、フサリウム、ムコール、リゾファス、ファネロカエト、ニューロスポラ、フミコーラ、クラビセプス、ソルダリア、ウスチラゴ、シゾフィラム、ブラケスレア、モルチエレラ、フィコマイセス、およびトリポクラジウムからなる群から選択される属に属するものである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項20】
アスペルギルスニガー群、アスペルギルスオリザエ、トリコデルマリーゼイおよびペニシリウムクリソゲナムからなる群から選択される、請求項19に記載の糸状菌。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の糸状菌製造方法であって、
(a)糸状菌の1またはそれ以上の染色体内に、組み換えDNA分子の1またはそれ以上のコピーを組み込むのに適した、少なくとも2つの実質的に相同なDNAドメインを含む糸状菌を、組み換えDNA分子で形質転換する工程と、ここで該DNAドメインは、該菌のリボソームのDNA反復体ではなく、
(b)該DNAドメインの少なくとも一つに組み込まれた、少なくとも一つの組み換えDNA分子をもつ形質転換体を選別する工程と、
(c)該工程(b)で得られた形質転換体を増殖させ、かつその子孫から、該DNAドメインの少なくとも2つが、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む菌株を選別する工程
を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項22】
該工程(a)、(b)および(c)に加えて、
(d)該DNAドメインの少なくとも2つが、組み込まれたDNA分子を含む該菌株を増殖させ、かつその子孫から、該DNAドメインの付随的なコピーが該組み込まれた組み換えDNA分子を含む、菌株を選別する工程、
(e)該工程(d)を、該DNAドメインの各々が、該組み込まれた組み換えDNA分子を含む菌株が得られるまで繰り返す工程
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該組み換えDNA分子が、該DNAドメインと実質的に相同な配列を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
上記工程(a)における該糸状菌の形質転換のために、二方向性の選別性マーカーを使用し、かつ該工程(c)を実施する前に、該二方向性の選別性マーカーをもたない形質転換体を選別する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
該二方向性の選別性マーカーが、優性マーカーである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)請求項1〜20のいずれか一項に記載の糸状菌を、対象とするタンパクの発現を誘発する条件下で培養する工程、および
(b)該対象とするタンパクを回収する工程
を含むことを特徴とする、対象とするタンパクの製造方法。
【請求項27】
該対象とするタンパクが、分泌性タンパクである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象とする代謝産物の製造方法であって、
(a)該対象とする代謝産物の生産を誘発する条件下で、請求項1〜20のいずれか一項に記載の糸状菌を培養する工程、および
(b)該対象とする代謝産物を回収する工程
を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項29】
該対象とする代謝産物が、二次代謝産物である、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24a】
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【図24b】
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【図24c】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40a】
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【図40b】
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【図40c】
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【図40d】
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【図40e】
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【図40f】
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【図40g】
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【図40h】
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【図40i】
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【図40j】
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【図40k】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45a】
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【図45b】
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【図46a】
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【図46b】
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【図46c】
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【図47a】
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【図47b】
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【図47c】
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【図48a】
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【図48b】
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【図48c】
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【公開番号】特開2010−75204(P2010−75204A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273669(P2009−273669)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【分割の表示】特願平10−543456の分割
【原出願日】平成10年4月9日(1998.4.9)
【出願人】(500054868)コニンクリーケ デーエスエム ナムローゼ フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】