説明

工程管理装置、工程管理方法

【課題】効果的に異常を検知して担当者へ通知する工程管理装置および工程管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る工程管理装置は、半導体装置を製造する工程における複数の検査結果が、検査対象毎に対応づけて記憶されている第1の記憶部と、最終工程の検査結果が所定の閾値以下である検査対象の検査結果を第1の記憶部から抽出する抽出部と、抽出部により抽出された検査対象の検査結果と、途中工程までの検査結果が第1の記憶部に記憶されている検査対象の検査結果との一致・不一致を検査結果ごとに判定して、検査結果の一致率を算出する算出部と、算出部により算出された一致率に基づいて、工程途中の検査対象の異常を判定する判定部と、判定部での判定結果に基づいて、異常を通知する通知部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイス製造における工程管理装置および工程管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体デバイスの工程管理装置は、半導体デバイスの検査項目(例えば、膜厚、寸法、欠陥数等)の測定値が目標値(スペック)から外れている場合や装置トラブル等の異常を検知した場合、プロセス技術者や装置技術者等の担当者にEメールやポケベル(登録商標)等により該異常を通知している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−78019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上記検査項目の増大やSPC(Statistical Process Control:統計的工程管理)技術の発達により、担当者に通知される情報は膨大である。さらに、この通知情報には、デバイスの歩留まり(全チップ数に示す良品チップ数の割合)とは直接関連性のない異常や担当外の情報などが含まれている場合がある。このため、該異常通知を受けた担当者は、真に担当すべき事項であるか否かの判別が困難であり、また該異常への対応が難しい場合がある。
この発明は、かかる従来の問題を解消するためになされたもので、歩留まりに関する異常を効果的に検知して担当者へ通知する工程管理装置および工程管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る工程管理装置は、半導体装置を製造する工程における複数の検査結果が、検査対象毎に対応づけて記憶されている第1の記憶部と、最終工程の検査結果が所定の閾値以下である検査対象の検査結果を第1の記憶部から抽出する抽出部と、抽出部により抽出された検査対象の検査結果と、途中工程までの検査結果が第1の記憶部に記憶されている検査対象の検査結果との一致・不一致を検査結果ごとに判定して、検査結果の一致率を算出する算出部と、算出部により算出された一致率に基づいて、工程途中の検査対象の異常を判定する判定部と、判定部での判定結果に基づいて、異常を通知する通知部と、を具備する。
【0006】
本発明の一態様に係る工程管理方法は、半導体装置を製造する工程における複数の検査結果が、検査対象毎に対応づけて記憶されている第1の記憶部から最終工程の検査結果が所定の閾値以下である検査対象の検査結果を抽出するステップと、抽出部により抽出された検査対象の検査結果と、途中工程までの検査結果が第1の記憶部に記憶されている検査対象の検査結果との一致・不一致を検査結果ごとに判定して、検査結果の一致率を算出するステップと、算出部により算出された一致率に基づいて、工程途中の検査対象の異常を判定するステップと、判定部での判定結果に基づいて、異常を通知するステップと、を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歩留まりに関する異常を効果的に検知して担当者へ通知する工程管理装置および工程管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る工程管理システムの構成の一例を示した図である。
【図2】第1の実施形態に係る工程管理装置のハード構成の一例を示した図である。
【図3】第1の実施形態に係る工程管理装置のソフト構成の一例を示した図である。
【図4】データベースに記憶されている情報の一例を示した図である。
【図5】データベースに記憶されている情報の一例を示した図である。
【図6】検査履歴の一例である。
【図7】検査履歴の一例である。
【図8】半導体デバイスの開発から量産までの歩留まりの一般的な変化を示した図である。
【図9】一致率と誤報率および見逃し率の関係を示した図である。
【図10】一致率と誤報率および見逃し率の関係を示した図である。
【図11A】第1の実施形態に係る工程管理装置の動作の一例を示したフローチャートである。
【図11B】第1の実施形態に係る工程管理装置の動作の一例を示したフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る工程管理装置のソフト構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る工程管理システムの構成の一例を示した図である。なお、この第1の実施形態では、工程管理システムを半導体デバイスの製造工程に適用した場合について説明するが、工程管理システムは、半導体デバイスの製造工程だけでなく他の様々な製造工程(例えば、ナノデバイス等の製造工程)に適用可能である。第1の実施形態に係る工程管理システムは、工程管理装置1、複数の製造装置2a、2b、2c…(以下、製造装置2と称する)、複数の検査装置3a、3b、3c…(以下、検査装置3と称する)、および複数の端末4a、4b、4c…(以下、端末4と称する)を具備する。
【0010】
工程管理装置1は、製造装置2、検査装置3および端末4と有線または無線のLAN(Local Area Network)等のネットワークにより接続され互いに情報(データ)を送受信する。通信の方式としては、例えば、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials institute)で規定されるSECS(SEMI Equipment Communications Standard)やGEM300(Generic Equipment Model 300mm wafer)等がある。
【0011】
製造装置2は、基板(ウェハ)を加工して半導体デバイスを製造する製造装置である。製造装置2としては、例えば、インプラント装置、洗浄装置、コーター、露光装置(ステッパー)、デベロッパー、PVD(Physical Vapor Deposition)装置、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置、ダイシング装置、ボンディング装置等がある。
【0012】
インプラント装置は、ヒ素(As)やリン(P)を基板へ打ち込む。洗浄装置は、基板に付着した金属や有機物を洗浄する。コーターは、基板にフォトレジストを塗布する。露光装置は、露光によりマスクパターンを塗布したレジストへ転写する。デベロッパーは、露光後のレジストを現像する。PVD装置およびCVD装置は、基板へ薄膜を形成する。CMP装置は、デバイス作成の過程で基板に形成された凹凸を平坦化する。ダイシング装置は、基板上に形成された半導体デバイスをチップ毎に切り分ける。ボンディング装置は、チップに形成されている電極をリードフレームの電極リードへ接続する。
【0013】
検査装置3は、基板上に形成される半導体デバイスを検査する装置である。検査装置3としては、例えば、欠陥検出装置、膜厚測定装置、テスター等がある。欠陥検出装置は、基板上に形成される半導体デバイスの欠陥を検出する。欠陥検出装置は、基板上の所定の位置に形成された半導体デバイスを撮像し、この撮像した画像を良品の半導体デバイスのサンプル画像と比較して欠陥を検出する。膜厚測定装置は、PVD装置やCVDにより形成された薄膜の厚さを測定する。テスターは、基板上に形成されたテストパターンに対して所定の信号を所定の順序で入力した際の出力が正しいかどうかを検査する。
【0014】
なお、上記製造装置2および検査装置3は、半導体デバイスの製造に使用される装置の一例である。第1の実施形態に係る管理システムで使用される製造装置2および検査装置3は、上に例示した以外にも様々のものが含まれ、製造する半導体デバイスの製品(機種)により使用される製造装置2および検査装置3も異なる。
【0015】
製造装置2は、処理した基板の処理条件(例えば、基板処理時におけるチャンバのガス圧、ガス流量、ヒータ温度等)をLotID、投入日時(タイムスタンプ)、担当者ID、製品名等と共に工程管理装置1へ送信する。検査装置3は、基板上に形成される半導体デバイスの検査結果(例えば、膜厚、寸法等)をLotID、投入日時、担当者ID、製品名等と共に工程管理装置1へ送信する。
【0016】
工程管理装置1は、製造装置2から送信される基板の処理条件、検査装置3から送信される検査結果を受信する。工程管理装置1は、受信した基板の処理条件、検査結果に基づき担当者へ異常を通知するなど、半導体デバイスの製造工程を管理する。
【0017】
端末4は、工程管理装置1が半導体デバイスの測定値が検査項目の目標値(スペック)から外れている場合や装置トラブル等の異常を検知した場合に、工程管理装置1から送信される異常情報を受信し、該受信した内容を表示する端末である。また、端末4からは、工程管理装置1に記憶されている製造装置2による基板の処理条件、検査装置3による検査結果等を参照できる。
【0018】
図2は、1の実施形態に係る管理装置のハード構成の一例を示した図である。工程管理装置1は、コンピュータ本体10と、コンピュータ本体10に接続されたモニタ20およびキーボードやマウス等の入力デバイス30とを具備する。
【0019】
コンピュータ本体10は、CPU11、ROM12、RAM13、HDD14、ユーザI/F15、I/F16を具備する。CPU(Central Processing Unit)11は、工程管理装置1全体を制御する。ROM(Read Only Memory)12は、CPU11の動作コードを格納する。RAM(Random Access Memory)13は、CPU11の動作時に使用される作業領域である。HDD(Hard Disk Drive)14は、CPU11が動作するためのプログラム、製造装置2での基板の処理条件(ガス圧、温度、圧力等)、検査装置3での半導体デバイスの検査結果等が記憶されている。ユーザI/F15は、入力デバイス30からの入力情報を受け付けるインターフェースである。I/F16は、製造装置2、検査装置3および端末4とデータの送受信を行うためのインターフェースである。
【0020】
図3は、第1の実施形態に係る工程管理装置1のソフト構成の一例を示した図である。
工程管理装置1は、処理履歴DB(Database)101、検査履歴DB102(第1の記憶部)、参照DB103、担当者DB104(第2の記憶部)、受信部105、送信部106(通知部)、抽出部107、算出部108、判定部109を具備する。
【0021】
処理履歴DB101には、製造装置2での基板の処理条件の履歴が記憶されている。例えば、製造装置2が、PVD装置であれば、各チャンバにおけるガス圧、ガス流量、ヒータ温度、ターゲットへの印加電圧、印加電流等がLotID、担当者ID、製品名等と共に記憶されている。
【0022】
検査履歴DB102には、検査装置3での半導体デバイスの検査結果が記憶されている。図4は、検査履歴DB102に記憶されているデータの一例を示した図である。図4では、一例として、G/C(Gate/Contact)工程の検査結果、M1(1層目のメタル(例えば、Al、Cu)配線)工程の検査結果、D/S(Die/Sorter)工程の検査結果を示している。各検査結果は、LotID、担当者ID、製品名等と共に記憶されている。
【0023】
G/C工程では、ゲートやコンタクト等の寸法、酸化膜や窒化膜等の膜厚、欠陥といった項目の検査結果の合否(OK/NG)およびリワークの有無等が検査履歴DB102に記憶される。M1工程では、メタル配線等の寸法、メタル配線膜やメタル配線膜の下地メタル膜(例えば、Ti、Ta)等の膜厚、欠陥といった項目の検査結果の合否およびリワークの有無等が検査履歴DB102に記憶される。D/S工程では、傾向、Fuse、歩留まりといった項目の検査結果が検査履歴DB102に記憶される。傾向は、不良チップがウェハ面内に存在する傾向であり、外周または内周等の偏り傾向が検査結果として記憶される。Fuseは、テスト工程で不良が存在したカラムが冗長回路の救済限界数を超えた場合、そのテスト工程が検査結果として記憶される。歩留まりは、最終的な製品試験(電気的な入力特性に対して、所望の出力特性が得られるかどうかといった動的特性の試験)に合格したチップ(半導体装置)数を検査したチップ数で割った値(%)である。なお、図4に示した検査結果は、一例であり、各工程における検査項目は半導体デバイスの製品により異なる。
【0024】
参照DB103には、歩留まりが所定の閾値(例えば、85%)以下であるLotの検査結果の履歴が記憶されている。図5は、参照DB103に記憶されているデータの一例を示した図である。参照DB103に記憶されているデータは、後述する抽出部107により検査履歴DB102から抽出されて参照DB103へ記憶される。
【0025】
担当者DB104には、担当者IDが、担当者の氏名および連絡先(例えば、社内メールアドレス)と共に記憶されている。後述する送信部106は、担当者DB104に記憶されている連絡先へ異常を送信する。
【0026】
受信部105は、製造装置2および検査装置3から送信される基板の処理条件や検査結果を受信する。受信部105で受信された処理条件および検査結果は、それぞれ処理履歴DB101および検査履歴DB102へ記憶される。
【0027】
送信部106は、後述する判定部109からの指示に基づき、担当者DB104を参照して異常を担当者へ送信する。
【0028】
抽出部107は、記憶部107aを具備する。記憶部107aには、製品(機種)毎に異なる閾値(所定の閾値)が記憶されている。抽出部107は、検査履歴DB102に記憶されている各Lotの歩留まりを記憶部107aに記憶されている同一製品の閾値と比較する。抽出部107は、歩留まりが閾値以下である場合、該Lotの検査結果を検査履歴DB102から抽出して参照DB103へ記憶する。
【0029】
算出部108は、検査履歴DB102へ記憶されているLotのうち、製造工程の途中にあるLotの検査結果と参照DB103に記憶されているLotの検査結果との一致率を算出する。具体的には、算出部108は、製造工程の途中のLotについての検査結果が、参照DB103に記憶されているLotの検査結果と一致する項目の数aを算出する。
【0030】
例えば、G/C工程およびM1工程の検査結果では、算出部108は、各項目の検査結果の合否(OK/NG)およびリワークの有無が一致するかどうかを判定する。また、D/S工程では、傾向(外周または内周)が一致するかどうか、Fuseでは、テスト工程が一致するかどうかが判定される。
【0031】
下記に一致率Xの算出式(1)を示す。
X(%)=(a/b)×100…(1)
aは、一致する項目の数である。
bは、検査結果の一致・不一致を判定した項目数である。
【0032】
図6は、LotID2222の検査履歴を示した図である。図7は、LotID2345の検査履歴を示した図である。ここでは、図6に示すLotID2222および図7に示すLotID2345を例に一致率の算出方法を説明する。
【0033】
初めに、図6に示すLotID2222について一致率を算出する場合について説明する。図6に示すように、LotID2222は、M1工程までの検査が終了している。算出部108は、検査が終了したM1工程までの項目について、参照DB103に記憶されている検査結果と一致する項目数を算出する。算出部108は、参照DB103に記憶されている同一製品のLot毎に一致する項目数を算出する。算出部108は、検査結果が一致した項目数を、M1工程までの検査項目の総数で割った値に100を乗算し、一致率を算出する。ここでは、LotID1001との一致率は、判定した8個の総項目数に対し一致した検査項目が4個であるため50%となる。同様に、LotID1234との一致率が50%、LotID1456との一致率は、25%となる。
【0034】
次に、図7に示すLotID2345について一致率を算出する場合について説明する。図7に示すように、LotID2345は、M1工程までの検査が終了している。算出部108は、検査が終了したM1工程までの項目について、参照DB103に記憶されている検査結果と一致する項目数を算出する。算出部108は、参照DB103に記憶されている同一製品のLot毎に一致する項目数を算出する。算出部108は、一致した項目数を、M1工程までの検査項目の総数で割った値に100を乗算し、一致率を算出する。図7では、LotID1001との一致率が75%、LotID1234との一致率が50%、LotID1456との一致率が100%と算出される。
【0035】
初期の工程においては、検査項目数が少なく一致率を算出しても、判定部109における判定の確度が低いものとなる。このため、例えば、所定の工程まで検査結果が出ていないLotについては、一致率を算出しない等、算出部108で一致率の算出対象とする工程を予め決めておいてもよい。
【0036】
また、一致率は、上述した一致した項目数に基づいて算出する他、各項目に重み付けを行い、重み付けした各項目を加重平均して一致度を算出してもよい。また、連続値の重みを各項目へ加重してもよいし、各項目を重要度大、中、小等数レベルのカテゴリに分け、カテゴリ毎に異なる重み付けを設定して一致度を算出してもよい。
【0037】
さらに、過去の経験に基づいて、歩留まりへの影響度等を考慮して各項目の重み付けを設定してもよい(例えば、蓄積した項目の統計解析にて、判定結果が最終的な異常発生結果に有意な影響を与えていない項目の重要度を低く設定する等)。
【0038】
判定部109は、記憶部109aを具備する。記憶部109aには、製品(機種)毎に異なる閾値(所定の閾値)が記憶されている。抽出部109は算出部108で算出された一致率を記憶部109aに記憶されている同一製品の閾値と比較する。判定部109は、一致率が閾値以上である場合、異常を検知した旨および異常情報(例えば、異常対象となったLotの検査結果等)を送信するよう送信部106へ指示する。送信部106は、担当者DB104を参照して、一致率を算出したLotIDに対応づけられている担当者IDの連絡先へ異常を検知した旨、および異常情報を送信する。
【0039】
例えば、図6に示したLotID2222に対応する製品の一致率の閾値が85%である場合、LotID1001との一致率が50%、LotID1234との一致率が50%、LotID1456との一致率が25%であることから、判定部109は、LotID2222については、異常が検知されないとして上記異常情報は送信しない。
【0040】
また、図7に示したLotID2345に対応する製品の一致率の閾値が85%である場合、LotID1001との一致率が75%、LotID1234との一致率が50%、LotID1456との一致率が100%であることから、判定部109は、LotID2345について、該LotIDに対応づけられている担当者IDの連絡先へ異常を検知した旨、および異常情報(該異常LotのLotIDや検査結果等)を送信する。
【0041】
工程管理装置1から送信された異常情報を受信した担当者は、受信内容を確認して、該異常に対応する。場合により、担当者は、端末4を操作して、工程管理装置1に記憶されている処理履歴DB101の処理履歴や検査履歴DB102の検査履歴を参照することもできる。異常報告の対象となったLotIDの処理履歴や検査履歴を参照することにより、担当者は異常の原因を詳細に確認できる。
【0042】
なお、判定部109での判定には、上述した閾値の範囲内かどうかに基づく判定以外にも、統計的手法による判定、異常の程度や内容の分類結果による判定や時系列変化による判定等、従来からの判定手法もしくはこれら判定を組み合わせた判定手法を使用できる。
【0043】
また、半導体デバイスの開発から量産までの歩留まりは一定ではなく、時間とともに歩留まりが変化することが通常である。図8は、半導体デバイスの開発から量産までの歩留まりの一般的な変化を示した図である。図8では、縦軸に半導体デバイスの歩留まり、横軸に時間を示している。図8に示すように、半導体デバイスの開発から量産までは、大きく分けて期間Aないし期間Eの5つの期間に分けて考えることができる。
【0044】
(1)期間Aは、Unit基礎開発期間である。この期間は、半導体デバイスを機能ごとにUnit化し、このUnit毎に動作検証する期間である。この期間の歩留まりは低い。
【0045】
(2)期間Bは、Module開発期間である。この期間は、動作検証を行ったUnitを複数組み合わせてModule化したものを動作検証する期間である。この期間の歩留まりは、期間Aに比べて向上する。
【0046】
(3)期間Cは、歩留まり立ち上げ期間である。この期間は、工場へ生産が移管された後、製品の歩留まりを向上させるため製造装置における基板の処理条件を最適化(この最適化のことを条件出しということもある)する期間である。この最適化は、歩留まりが一定の値(例えば、歩留まりが採算ラインを超える値)になるまで行う。
【0047】
(4)期間Dは、突発不良対策期間である。この期間は、期間Cで最適化された処理条件を他の製造装置に移管(横展開)した際に発生する突発的な不良への対策を実施する期間である。この突発的な不良は、装置間差等が原因で発生する。この突発的な不良に対する対策が行われると、歩留まりが安定する。
【0048】
(5)期間Eは、ベースラインUP期間である。この期間は、突発的な不良に対する対策により安定した歩留まりをさらに向上させる期間である。この歩留まりの向上は、生産が行われている間、継続的または断続的に実施される。
【0049】
上述のように、半導体デバイスの歩留まりは、期間Aから期間Eで異なる。このため、判定部109の記憶部109aに記憶されている閾値は、半導体デバイスの立ち上げ時期がどの期間に該当するかにより柔軟に変化させる必要がある。つまり、期間E等の歩留まりの高い段階では、一致率の閾値を低くし、異常Lotの見逃しを極力防ぐ必要がある。また、期間C前の歩留まりの低い段階では、一致率の閾値を高くして誤報を抑制する必要がある。
【0050】
見逃し率とは、実際に最終的に異常に至るにもかかわらず一致率が設定値以下となり警告が発せられないロットの割合である。また、誤報率とは、最終的に異常とはならないが、途中工程での一致率が設定値を越え、警告が発せられるロットの割合である。一般に、一致率の設定値を高くすれば誤報は減るが見逃しが多くなり、低くすれば逆に誤報が増えるが見逃しは少なくなる。
【0051】
図9、図10は、一致率と誤報率および見逃し率の関係を示した図である。図9では、左縦軸に誤報率を、右縦軸に見逃し率を、横軸に一致率を示している。また、図9には、誤報率を一点鎖線で、見逃し率を示した。上述のように、一般には、一致率の設定値を高くすれば誤報は減るが見逃しが多くなり、低くすれば逆に誤報が増えるが見逃しは少なくなる。このため、一致率を変化させて見逃し率、誤報率を求めた場合、通常は図9、図10に示すような関係となる。
【0052】
この図9、図10に示す関係に基づいて、期間Aないし期間E毎に一致率の閾値を変更してもよい。具体的には、期間E等の歩留まりの高い段階では、歩留まりが低下する要因があれば即時に対応するため、図10に示すように、誤報率が27%であるが、見逃し率が0%となる一致率70%を閾値とし、期間C前の歩留まりの低い段階では、対策すべき課題が多く、すべての課題解決には人手が足りないことから、見逃しを極力抑えつつ、誤報を少なくできる一致率85%を閾値とするなどの方法が考えられる。
【0053】
図11A、図11Bは、第1の実施形態に係る工程管理装置1の動作を示したフローチャートである。以下、図1ないし図3、図11Aおよび図11Bを参照して第1の実施形態に係る工程管理装置1の動作について説明する。
【0054】
(DBの更新)
初めに、図1ないし図3、図11Aを参照して、第1の実施形態に係る工程管理システムのDBの更新動作について説明する。
【0055】
工程管理装置1は、製造装置2から送信される基板の処理条件を受信すると自己が備える処理履歴DB101へ記憶する(ステップS101)。また、工程管理装置1は、検査装置3から送信される基板の検査結果を受信すると自己が備える検査履歴DB102へ記憶する(ステップS102)。抽出部107は、検査履歴DB102に記憶されている各Lotの歩留まりを記憶部107aに記憶されている閾値と比較する(ステップS103)。抽出部107は、比較結果から歩留まりが閾値以下であるかどうかを判定する(ステップS104)。歩留まりが閾値以下でない場合(ステップS104のNo)、抽出部107は、該Lotの検査結果を検査履歴DB102から抽出して参照DB103へ記憶する(ステップS105)。歩留まりが閾値以下である場合(ステップS104のyes)、またはステップS105の動作終了後、工程管理装置1は、ステップS101へ戻り、上記動作を継続する。
【0056】
(異常の送信)
次に、図1ないし図3、図11Bを参照して、第1の実施形態に係る工程管理システムの異常の送信動作について説明する。
【0057】
算出部108は、検査履歴DB102へ記憶されているLotのうち製造工程の途中にあるLotの検査結果と参照DB103に記憶されているLotの検査結果との一致率を算出する(ステップS201)。抽出部109は算出部108で算出された一致率を記憶部109aに記憶されている閾値と比較する(ステップS202)。判定部109は、比較結果から一致率が閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS203)。一致率が閾値以上である場合(ステップS203のYes)、判定部109は、担当者DB104を参照して、該LotIDに対応づけられている担当者IDの連絡先へ異常を検知した旨、および異常情報を送信する(ステップS204)。一致率が閾値以上でない場合(ステップS203のNo)、またはステップS204の動作終了後、工程管理装置1は、ステップS201へ戻り、上記動作を継続する。
【0058】
以上のように、第1の実施形態に係る工程管理装置1は、歩留まりが低いLotとの一致率に基づいて異常を送信(異常報告)する。このため、歩留まりに関する異常を効果的に検知して担当者へ通知できる。つまり、各検査項目において異常と判定される度に異常情報を送信するのではなく、最終的に低歩留まりとなる可能性が高い場合に絞って異常を判定して異常を送信することで、担当者は、真に対策が必要な異常にのみ対処できる。
【0059】
このため、例えば、図8に示した期間Cの歩留まり立ち上げ期間においては、急峻な立ち上げ(歩留まりの改善)が可能となる。また、期間Dの突発不良対策期間においては、突発不良に早急に対処できるようになるため、期間Eへスムーズに移行できることが期待できる。さらに、期間Bから期間Eを通して、全体の歩留まりを向上させることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る工程管理装置1Aのソフト構成の一例を示した図である。図12に示すように、この第2の実施形態に係る工程管理装置1Aは、処理履歴DB101、検査履歴DB102、参照DB103A、担当者DB104、受信部105、送信部106、抽出部107、算出部108、判定部109A、対策DB110(第3の記憶部)を具備する。なお、図3で説明した構成要素を同一の構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0061】
対策DB110には、異常が発生した場合の対策情報が異常情報および製品(機種)毎に記憶されている。対策情報は、異常が発生したLotに対して行った対策内容である。対策DB110に記憶されている対策情報は、端末4から担当者が対策情報を入力することで更新される。これらの対策情報は、参照DB103に記憶されているLotIDに関連付けて記憶される。
【0062】
判定部109Aは、記憶部109aを具備する。記憶部109aには、製品(機種)毎に異なる閾値(所定の閾値)が記憶されている。抽出部107は算出部108で算出された一致率を記憶部109aに記憶されている同一製品の閾値と比較する。判定部109Aは、一致率が閾値以上である場合、異常を検知した旨および異常情報と共に、対策DB110に記憶されている対策情報を送信するよう送信部106へ指示する。送信部106は、担当者DB104を参照して、一致率を算出したLotIDに対応づけられている担当者IDの連絡先へ異常を検知した旨および異常情報を対策情報と共に送信する。
【0063】
以上のように、この第2の実施形態に係る工程管理装置1Aは、異常が発生した場合の対策情報が異常情報および製品(機種)毎に記憶されている対策DB110を具備し、該対策情報とともに異常を送信する。このため、異常報告を受けた担当者は、対策情報(過去の事例)を参照して、該異常に迅速に対処することが期待できる。その他の効果は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、技術者が監視したい項目の組み合わせをあらかじめ定義し、これに一致する場合に異常を送信するように構成してもよい。また、予めLotの破棄や再処理を登録しておき、算出部108で算出した一致率から予測される結果(このまま処理を進めると異常が発生するなど)に応じ、製造工程の中途段階において、対象Lotの処理方法(廃棄や再処理等)を決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…管理装置、2…製造装置、3…検査装置、4…端末、10…コンピュータ本体、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…HDD、15…ユーザI/F、16…I/F、20…モニタ、30…入力デバイス、101…処理履歴DB、102…検査履歴DB(第1の記憶部)、103…参照DB、104…担当者DB104(第2の記憶部)、105…受信部、106…送信部(通知部)、107…抽出部、108…算出部、109…判定部、110…対策DB(第3の記憶部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を製造する工程における複数の検査結果が、検査対象毎に対応づけて記憶されている第1の記憶部と、
最終工程の検査結果が所定の閾値以下である前記検査対象の検査結果を前記第1の記憶部から抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された検査対象の検査結果と、途中工程までの検査結果が前記第1の記憶部に記憶されている検査対象の検査結果との一致・不一致を検査結果ごとに判定して、前記検査結果の一致率を算出する算出部と、
前記算出部により算出された一致率に基づいて、前記工程途中の検査対象の異常を判定する判定部と、
前記判定部での判定結果に基づいて、前記異常を通知する通知部と、
を具備することを特徴とする工程管理装置。
【請求項2】
前記異常通知の通知先を記憶した第2の記憶部をさらに具備し、
前記通知部は、前記第2の記憶部に記憶されている通知先へ前記異常を通知することを特徴とする請求項1に記載の工程管理装置。
【請求項3】
前記異常に対する対策情報が、前記異常の種類に対応づけて記憶されている第3の記憶部をさらに具備し、
前記通知部は、前記第3の記憶部に記憶されている対策情報を、前記異常とともに通知することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工程管理装置。
【請求項4】
半導体装置を製造する工程における複数の検査結果が、検査対象毎に対応づけて記憶されている第1の記憶部から最終工程の検査結果が所定の閾値以下である前記検査対象の検査結果を抽出するステップと、
前記抽出部により抽出された検査対象の検査結果と、途中工程までの検査結果が前記第1の記憶部に記憶されている検査対象の検査結果との一致・不一致を検査結果ごとに判定して、前記検査結果の一致率を算出するステップと、
前記算出部により算出された一致率に基づいて、前記工程途中の検査対象の異常を判定するステップと、
前記判定部での判定結果に基づいて、前記異常を通知するステップと、
を具備することを特徴とする工程管理方法。
【請求項5】
前記異常を通知するステップは、
前記異常に対する対策情報と共に前記異常を通知することを特徴とする請求項4に記載の工程管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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