説明

巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋及び巨峰系ブドウの保存方法

【解決課題】巨峰系ブドウを包装して、出荷、運搬、店頭陳列する際に、優れた鮮度保持効果を有する巨峰系ブドウの保存方法及び巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供すること。
【解決手段】高分子フィルムからなる巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋であって、巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、120〜750[cc/(100g・day・atm)]であることを特徴とする巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋。巨峰系ブドウを高分子フィルムで包装して保存する巨峰系ブドウの保存方法において、保存時の酸素透過量Pを120〜750[cc/(100g・day・atm)]とすること、を特徴とする巨峰系ブドウの保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨峰系ブドウを包装して、出荷、運搬、店頭陳列する際の巨峰系ブドウの保存方法及び巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
巨峰系ブドウをはじめ青果物は、周囲のガス雰囲気が大気よりも低酸素濃度、高二酸化炭素濃度になると、大気中にある場合に比べ、呼吸量が少なくなり、長持ちするようになる。しかし、青果物を極端な低酸素濃度、高二酸化炭素濃度条件下に置くと、呼吸障害を起こす。
【0003】
そのため、青果物を包装して、出荷、運搬、店頭陳列する際には、適度なガス条件で青果物を保存しなければならない。
【0004】
ところが、最適なガス条件は、青果物の種類により異なるため、巨峰系ブドウ以外の青果物では、良好な保存条件であったとしても、巨峰系ブドウに応用できるとは限らない。特に、巨峰系ブドウには、保存中の脱粒や、穂軸の変色等のブドウ特有の問題点があるため、ブドウ以外の青果物での保存条件を、そのまま巨峰系ブドウに適用することはできない。
【0005】
ブドウの保存方法としては、特開平6−46749号公報(特許文献1)には、23℃における酸素透過度が1000〜10000cc/m・24hr・atmであるフィルムを用いてブドウを密封包装し、これを低温で保存することを特徴とするブドウの長期保存方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−46749号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているブドウの長期保存方法は、倉庫で長期間ブドウを保存するためのブドウの保存方法であり、保存温度が−3〜0℃であることが必要なため、特殊な冷蔵庫が必要である。また、その保存温度は、ブドウが凍結する温度に極めて近いので、該ブドウの長期保存方法では、ブドウが凍結する危険がある。例えば、特許文献1の実施例では、保存温度は−2℃、保存期間は1ヶ月又は2ヶ月である。
【0008】
それに対して、巨峰系ブドウを包装して、出荷、運搬、店頭陳列する際は、常温又は通常の冷蔵庫で保存されるため、保存条件は、保存温度が5〜30℃、保存期間の多くは14日程度まであり、特許文献1とは、保存の目的及び保存条件が、全く異なる。
【0009】
そのため、特許文献1に開示されているブドウの長期保存方法を、出荷、運搬、店頭陳列する際に使用することはできなかった。ブドウを出荷、運搬、店頭陳列する際には、温度変化によるストレスで巨峰系ブドウが急激に劣化するが、特許文献1に開示されているブドウの長期保存方法では、このような強いストレスを受けることはないためである。つまり、特許文献1に開示されているブドウの長期保存方法では、巨峰系ブドウを出荷、運搬、店頭陳列する際に、鮮度を保持することができないという問題があった。
【0010】
従って、本発明の課題は、巨峰系ブドウを包装して、出荷、運搬、店頭陳列する際に、優れた鮮度保持効果を有する巨峰系ブドウの保存方法及び巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、巨峰系ブドウ100g当りの酸素透過量を特定の範囲にすることにより、巨峰系ブドウの鮮度保持効果が高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明(1)は、高分子フィルムからなる巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋であって、
該巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、120〜750cc/100g・day・atmであることを特徴とする巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供するものである。
【0013】
また、本発明(2)は、前記鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、330〜700cc/100g・day・atmであることを特徴とする前記本発明(1)の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供するものである。
【0014】
また、本発明(3)は、前記鮮度保持用包装袋が、200〜1000gの巨峰系ブドウ包装用の包装袋であることを特徴とする前記本発明(1)又は(2)いずれかの巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供するものである。
【0015】
また、本発明(4)は、前記鮮度保持用包装袋が、平均孔径20〜150μmの微孔を有することを特徴とする前記本発明(1)〜(3)いずれかの巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供するものである。
【0016】
また、本発明(5)は、巨峰系ブドウを高分子フィルムで包装して保存する巨峰系ブドウの保存方法のおいて、
保存時の酸素透過量Pを120〜750cc/100g・day・atmとすること、
を特徴とする巨峰系ブドウの保存方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(6)は、包装体1つ当りの前記巨峰系ブドウの質量が、200〜1000gであることを特徴とする前記本発明(5)の巨峰系ブドウの保存方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、巨峰系ブドウを包装して、出荷、運搬、店頭陳列する際に、優れた鮮度保持効果を発揮する巨峰系ブドウの保存方法及び巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法は、巨峰系ブドウを高分子フィルムで包装して保存する巨峰系ブドウの保存方法のおいて、
保存時の酸素透過量Pを120〜750[cc/(100g・day・atm)]とする巨峰系ブドウの保存方法である。
【0020】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法は、該巨峰系ブドウを収穫後、1房〜数房程度を高分子フィルムで包装し、出荷、運搬、店頭陳列する際の保存方法である。包装体1つ当りの該巨峰系ブドウの質量は、200〜1000gであり、好ましくは200〜600gである。なお、本発明においては、該包装体とは、該高分子フィルムで包装された該巨峰系ブドウのことを指す。
【0021】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法に係る該巨峰系ブドウとは、巨峰系4倍体品種のものを言い、巨峰系4倍体品種のものであれば、特に制限されず、例えば、巨峰、ピオーネ、安芸クイーン、翠峰、サニールージュ、藤稔、高妻、ゴルビー、多摩ゆたか、紫玉等が挙げられる。
【0022】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法に係る該高分子フィルムは、特に制限されず、青果物の包装に用いられている高分子フィルムであればよく、材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等、あるいは、これらの複合材料が挙げられる。
【0023】
該高分子フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常、15〜60μmであり、取り扱い及びコストの観点から、20〜40μmが好ましい。
【0024】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法では、該保存時の酸素透過量Pは120〜750[cc/(100g・day・atm)]、好ましくは330〜700[cc/(100g・day・atm)]である。該保存時の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、鮮度保持効果が高くなる。特に、該保存時の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、穂軸の変色が少なくなり、脱粒が少なくなり、カビの発生が少なくなる。一方、該保存時の酸素透過量Pが少な過ぎても、多過ぎても、穂軸の変色が多くなり、脱粒が多くなり、カビの発生が多くなる。なお、本発明において、該脱粒とは、ブドウの房からブドウの粒が取れることを意味する。
【0025】
該巨峰系ブドウは、高価なので、贈答用に使われることが多く、そのため、該巨峰系ブドウの鮮度保持においては、穂軸の変色が少ないこと、脱粒が少ないこと、カビの発生が少ないことという外観が、特に重視される。
【0026】
本発明において、該保存時の酸素透過量P[cc/(100g・day・atm)]とは、23℃における、包装される巨峰系ブドウ100g当りの、1日当りの、包装体の内と外との酸素圧力差1気圧当りの酸素透過量である。
【0027】
23℃における単位面積当りの酸素透過量がF[cc/(m・day・atm)]の高分子フィルムを用いて、該巨峰系ブドウを包装する場合、該保存時の酸素透過量P[cc/(100g・day・atm)]は、23℃における該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量F[cc/(m・day・atm)]に、該高分子フィルムの有効表面積S(m)を乗じて得た値を、包装される巨峰系ブドウの質量W(g)で除し、100を乗じた値である。例えば、23℃における高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量がf[cc/(m・day・atm)]、高分子フィルムの有効表面積がs(m)、包装された巨峰系ブドウの質量がw(g)であった場合、保存時の酸素透過量Pは、
P=f×s×(100/w)
となる。なお、該高分子フィルムの有効表面積とは、該高分子フィルムのうち、酸素透過に関与できる部分の表面積を指し、密封のために張り合わせられている部分のような、酸素透過に関与できない部分を除く表面積のことである。例えば、長方形の2枚の高分子フィルムを、4辺をヒートシールして密封して、該巨峰系ブドウを包装する場合、密封後の包装袋の内側の表面積が、該高分子フィルムの有効表面積である。
【0028】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法では、該高分子フィルムの材質自体の酸素透過性が低い場合、該高分子フィルムに平均孔径5〜150μm、好ましくは平均孔径20〜150μm、特に好ましくは平均孔径20〜100μmの微孔を開け、該微孔の大きさ及び数により、該保存時の酸素透過量Pを上記範囲内に調整することができる。また、該高分子フィルムの材質によっては、微孔を開けなくても、材質自体での酸素透過により、該保存時の酸素透過量Pを上記範囲内に調整することができるので、このような場合は、該高分子フィルムの材質を選択することによって、該保存時の酸素透過量Pを調整することができる。また、該高分子フィルムの材質及び微孔の大きさ又は数の選択によって、該保存時の酸素透過量Pを調整することもできる。
【0029】
該高分子フィルムの袋の形状は、特に制限されない。
【0030】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法では、該巨峰系ブドウを、該高分子フィルムに入れ、密封するが、該高分子フィルムを密封する方法としては、ヒートシール、結束帯、輪ゴム、かしめ等、特に制限されない。また、本発明の巨峰系ブドウの保存方法では、包装形態としては、袋詰めの形態だけではなく、例えば、トレイ容器にトップシールする形態であってもよく、あるいは、ダンボール箱と該高分子フィルムとを一体化させた形態であってもよい。
【0031】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法は、該巨峰系ブドウを収穫後、高分子フィルムで包装し、該巨峰系ブドウが該高分子フィルムで包装された包装体を、出荷、運搬、店頭陳列する際の保存方法であるので、保存温度は、通常は、10〜25℃であり、環境によっては5〜30℃となることもある。つまり、本発明の巨峰系ブドウの保存方法は、上記保存温度条件下における保存方法である。
【0032】
本発明の巨峰系ブドウの保存方法は、次に述べる本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋により、好適に行なわれる。
【0033】
本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋は、高分子フィルムからなる巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋であって、
巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、120〜750[cc/(100g・day・atm)]の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋である。
【0034】
本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋に係る該巨峰系ブドウは、本発明の巨峰系ブドウの保存方法に係る該巨峰系ブドウと同様である。
【0035】
本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋に係る該高分子フィルムの材質は、本発明の巨峰系ブドウの保存方法に係る該高分子フィルムの材質と同様である。
【0036】
該高分子フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常、15〜60μmであり、取り扱い及びコストの観点から、20〜40μmが好ましい。
【0037】
該鮮度保持用包装袋は、該巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量P、又は該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fを調節するために、微孔を有してもよく、この場合、該微孔の平均孔径は、5〜150μm、好ましくは平均孔径20〜150μm、特に好ましくは平均孔径20〜100μmであり、該微孔の開孔面積比率は、1.1×10−5〜5.1×10−5%、好ましくは2.1×10−5〜4.8×10−5%である。なお、該微孔の開孔面積比率とは、該高分子フィルムの有効表面積に対する該微孔の総面積の比率(%)である({微孔の総面積/高分子フィルムの有効表面積}×100)。
【0038】
23℃における、該巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pは、120〜750[cc/(100g・day・atm)]であり、好ましくは330〜700[cc/(100g・day・atm)]である。該巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、鮮度保持効果が高くなる。特に、該巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、穂軸の変色が少なくなり、脱粒が少なくなり、カビの発生が少なくなる。
【0039】
本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋が、200〜1000gの巨峰系ブドウ包装用の鮮度保持用包装袋である場合、すなわち、本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋が、1袋当りに200〜1000gの該巨峰系ブドウを詰めて包装する際の包装袋として用いられる場合、23℃における該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fは、2000〜125000[cc/(m・day・atm)]、好ましくは2500〜60000[cc/(m・day・atm)]であり、該高分子フィルムの有効表面積は、0.06〜0.18m、好ましくは0.08〜0.12mである。本発明の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋を、200〜1000gの巨峰系ブドウ包装用の鮮度保持用包装袋として用いる場合、該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量F及び有効表面積を上記範囲内とすることにより、該巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pを上記範囲内にできるので、鮮度保持効果が高くなる。
【0040】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1〜3、比較例1)
厚さ0.03mmの延伸ポリプロピレン製の高分子フィルムの3辺をヒートシールして、外寸が縦280mm×横210mmの長方形の包装袋を作製し、表1に示す微孔を開けた。次いで、該包装袋に、巨峰(1房)280gを詰め、内寸が縦260mm×横190mmとなるように密封し、巨峰が包装された包装体を得た。このとき、該高分子フィルムの有効表面積Sは、ヒートシール部を除いた該包装体の内側の表面積であり、保存時の酸素透過量Pは、表1に示す値となる。なお、該保存時の酸素透過量Pは、以下の式で求められる。
P=F×S×(100/W)
P:保存時の酸素透過量[(cc/(100g・day・atm)]
F:23℃における高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量[cc/(m・day・atm)]
S:高分子フィルムの有効表面積(m
W:包装体に詰められている巨峰の質量(g)
なお、実施例1〜3及び比較例1では、
S=0.26×0.19×2=0.0988m
W=280g
である。
【0042】
次いで、該包装体を、10℃で所定の日数保存した。各保存日数毎の巨峰の品質評価結果を表2〜5及び図1〜3に示す。
【0043】
<高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fの測定>
(1)包装袋の準備
表1に示す開孔面積比率の高分子フィルムで、4辺がヒートシールで密封された長方形の包装袋を作成する。このとき、ヒートシール後の包装袋の内側の表面積が、高分子フィルムの有効表面積S(m)であり、Sが0.06m以上となるように包装袋を作成する。なお、以下全ての作業は、大気中で行う。
【0044】
(2)窒素ガスの封入
ヒートシールで包装袋を密封した後、アスピレーターを用いて包装袋を脱気する。脱気は、包装袋の両面が貼りつくまで行う。次に、この包装袋に白硬注射筒を用いて窒素ガス(純窒素ガス)を充填する。窒素ガスの充填量は、袋サイズによるが、包装フィルムにテンションがかからない範囲で極力多く入れ、注射筒の目盛りを用いて、窒素ガスの注入量を測定する。なお、注射針を包装袋に突き刺して、ガスの出し入れを行う。針を刺す際は、高分子フィルムに両面テープを貼り、この上からポリプロピレンフィルム製の粘着テープ(以下「PPテープ」という)を貼り付ける。また、針を抜いた後は、速やかにPPテープで針穴を塞ぐ。包装袋にはるテープは、4.5cm以下の面積に収まるようにする。また、微孔を開けた高分子フィルムの場合は、微孔を塞がないように注意する。
【0045】
(3)初期酸素濃度の測定
窒素ガス充填直後に、ガスクロマトグラフィー(TCD)で測定して、包装袋内の酸素量を求め、酸素濃度C(体積%)を算出した。このとき、Cが0.2体積%超えている場合は、上記(1)及び(2)作業をやり直す。なお、酸素濃度測定用のサンプリングガス量は、10cc以下とする。ガスクロマトグラフィーには、1cc程度を注入する。
【0046】
(4)包装袋の保管
初期酸素濃度を測定した包装袋を、23℃のインキュベーター中で保管する。このとき、袋の上に物が載ったり、インキュベーターのファンの風が直撃したりしないように静置する。
【0047】
(5)保管中の包装袋内の酸素濃度の測定及び酸素透過量の計算
少なくとも2点以上経時時間を代えて、包装袋内のガスをサンプリングし、包装袋内の酸素濃度を測定する。このとき、経時時間は、窒素ガス充填直後から3時間以上経過後であり、且つ、包装袋内の酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内でなれければならない。そして、経時時間t(時間)と包装袋内の酸素濃度との間に比例関係(相関係数が0.98以上)が成り立つ必要がある。もし、包装袋内の酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内からはずれていた場合、あるいは、比例関係が成り立たない場合は再試験を行う。なお、高分子フィルムの酸素透過量が大きすぎて包装袋内の酸素濃度の上昇が速すぎ、この条件をクリアできない場合は、高分子フィルムの一部を酸素透過量が小さい既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成して同様に行えばよい。この際、袋の表面積は既知である別のフィルムと張り合わせた部分は除く。
次いで、高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fを、下記式により計算する。
F={1.143×(C−C)×V}/(t×S)
F : 23℃における単位面積当りの酸素透過量[(cc/(m・day・atm)]
: 窒素ガス充填時から経時時間t時間後の包装袋内の酸素濃度(体積%)1)
: 窒素ガス充填直後の包装袋内の酸素濃度(体積%)
V : 充填した窒素ガスの量(cc)
t : 窒素ガス充填直後からの経過時間(時間)1)
S : 包装袋の内側の表面積(高分子フィルムの有効表面積)(m
1)C及びtとしては、最も長い経時時間の値を用いて計算する。
【0048】
なお、高分子フィルムの一部を酸素透過量が小さい既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成した場合は、上記測定により得られる単位面積当りの酸素透過量から、該既知のフィルムの単位面積当りの酸素透過量を減じた値が、対象となる高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量である。
【0049】
<官能評価>
保存日数0日及び14日での甘み、酸味及び肉質の評価を行なった。なお、各保存日数毎に10袋の包装体を用意した。各項目について、官能評価により、5段階(5:良好、4:やや良好、3:普通、2:やや劣る、1:劣る)の点数を付け、10袋の平均値を算出した。
なお、官能試験では、3点以上の点数であれば、鮮度保持効果は良好である。
【0050】
<穂軸の色>
保存日数0日、7日、10日及び14日で、穂軸の色を目視にて確認した。なお、各保存日数毎に10袋の包装体を用意した。評価では、6段階(5:褐変なし、4:果てい部が褐変、3:支梗部全体が褐変、2:穂軸の半分が褐変、1:穂軸全体が褐変、0:穂軸全体が枯死)の点数を付け、10袋の平均値を算出した。
【0051】
<脱粒数>
保存日数0日、7日、10日及び14日で、各保存日数毎に8袋の包装体を用意し、各保存日数毎に8袋全部の脱粒数を数え、1袋当り平均脱粒数を算出した。
【0052】
<カビの発生>
保存日数0日、7日、10日及び14日で、目視にて評価した。なお、各保存日数毎に8個の包装体を用意した。評価では、5段階(0:カビ無、1:点状1箇所、2:点状2〜3箇所、3:全体にカビが発生している粒が1〜3粒、4:全体にカビが発生している粒が4粒以上)の点数を付け、8袋の平均値を算出した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
(保存期間14日での品質評価結果)
実施例1は、官能評価の甘みが2点であり、3点を下回ったものの、官能評価の平均点は3点であり、且つ比較例1に比べ、脱粒数は少なく、穂軸の色は良好であり、カビの発生は少なかった。
実施例2及び3は、官能評価のいずれも項目でも、3点以上であり、且つ比較例1に比べ、脱粒数は極めて少なく、穂軸の色は良好であり、カビの発生は少なかった。
比較例1は、官能評価が、実施例1〜3に比べ、良好であったものの、実施例1〜3に比べ、脱粒数は多く、穂軸の変色は大きく、カビの発生も多かった。そのため、比較例1は、商品価値が著しく低下していた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例及び比較例の保存日数と穂軸の色の変化の関係を示すグラフである。
【図2】実施例及び比較例の保存日数と脱粒数の関係を示すグラフである。
【図3】実施例及び比較例の保存日数とカビの発生の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムからなる巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋であって、
巨峰系ブドウ保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、120〜750cc/100g・day・atmであることを特徴とする巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋。
【請求項2】
前記鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、330〜700cc/100g・day・atmであることを特徴とする請求項1記載の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋。
【請求項3】
前記鮮度保持用包装袋が、200〜1000gの巨峰系ブドウ包装用の包装袋であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋。
【請求項4】
前記鮮度保持用包装袋が、平均孔径20〜150μmの微孔を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の巨峰系ブドウの鮮度保持用包装袋。
【請求項5】
巨峰系ブドウを高分子フィルムで包装して保存する巨峰系ブドウの保存方法において、
保存時の酸素透過量Pを120〜750cc/100g・day・atmとすること、
を特徴とする巨峰系ブドウの保存方法。
【請求項6】
包装体1つ当りの前記巨峰系ブドウの質量が、200〜1000gであることを特徴とする請求項5記載の巨峰系ブドウの保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−273627(P2008−273627A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71385(P2008−71385)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(591100563)栃木県 (33)
【Fターム(参考)】