説明

差動式熱感知器

【課題】接点機構を構成する板バネの曲げの角度に個体差が生じるのを防ぎ、それにより接点間隔に個体差が生じるのを防ぐことができる差動式熱感知器を提供する。
【解決手段】移動接点バネ10と固定接点バネ11の何れか一方を、長さ方向において平らに形成された板バネであって、一端側が固定部で感知器本体5に固定されると共に、感知器本体5よりダイアフラム8側に突出して設けられた押圧部15によってダイアフラム8側に押圧されて、ダイアフラム8側に向かって所定の角度で曲げられた状態で感知器本体5に取り付けられる板バネによって構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、差動式熱感知器に関し、より詳細には接点機構が板バネにより構成された差動式熱感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
差動式熱感知器は、一般に、本体の下部に空気室を備えており、火災時、空気室内の空気が膨張するのを利用して火災を検出するものであり、具体的には、空気室下部の感熱板が火災時の熱を受熱して、空気室内の空気が膨張するのを利用して、空気室上部のダイアフラムを変位させ、それにより接点機構を閉じて火災を検出するものとなっている。
【0003】
この種の差動式熱感知器において、接点機構は、ダイアフラムの変位に連動して移動する移動接点と、その移動接点が離接する固定接点とから構成されているが、従来の接点機構はそれを構成する移動接点と固定接点に何れも長さ方向において曲げて形成された板バネが用いられており、それら板バネが自身の曲げの角度に従って本体側からダイアフラム側に立ち上がるように本体に取り付けられたものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−250580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の差動式熱感知器においては、その接点機構が前記のように構成され、移動接点と固定接点との接点間隔が板バネ自体の曲げの角度に依存するものとなっており、板バネ自体の曲げの角度に個体差があれば、それにより接点間隔に個体差が生じるものとなっている。この接点間隔の個体差は、火災感知器の感度に個体差を生じさせてしまうことになるので、勿論好ましいものではない。
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、接点機構を構成する板バネの曲げの角度に個体差が生じるのを防ぎ、接点間隔に個体差が生じるのを防ぐことができる差動式熱感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、感熱板と、空気室と、ダイアフラムと、接点機構とを感知器本体の下部に備え、該接点機構が該感知器本体と該ダイアフラムとの間に設けられた移動接点バネと固定接点バネとからなり、該感熱板が受熱した熱により該空気室内の空気が膨張して該ダイアフラムが変位し、その変位に連動して該移動接点バネが移動して該固定接点バネに接触し、それにより該接点機構を閉じて火災信号を出力するよう構成された差動式熱感知器において、該移動接点バネと該固定接点バネの何れか一方を、長さ方向において平らに形成された板バネであって、一端側が固定部で該感知器本体に固定されると共に、該感知器本体より該ダイアフラム側に突出して設けられた押圧部によって該ダイアフラム側に押圧されて、該ダイアフラム側に向かって所定の角度で曲げられた状態で該感知器本体に取り付けられる板バネによって構成したことを特徴とする差動式熱感知器である。
【0008】
又、この発明は、該板バネは該固定部で回路基板を貫通した固定ネジにより該感知器本体に固定され、該板バネは該回路基板の側縁部に当接する位置を支点として該ダイアフラム側に曲げられるものであることを特徴とする前記の差動式熱感知器である。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、移動接点バネと固定接点バネの何れか一方が、長さ方向において平らに形成された板バネであって、一端側の固定部で感知器本体に固定されると共に、感知器本体よりダイアフラム側に突出して設けられた押圧部によってダイアフラム側に押圧されて、ダイアフラム側に向かって所定の角度で曲げられた状態で感知器本体に取り付けられる板バネによって構成されているので、その板バネによって構成される接点バネは、ダイアフラム側への曲げの角度、即ちダイアフラム側への立ち上がりの角度に個体差が生じることがなく、その角度の個体差により接点間隔に個体差が生じるのを防ぐことができるものとなっている。
【0010】
従って、この発明によれば、接点機構を構成する板バネの曲げの角度に個体差が生じるのを防ぎ、接点間隔に個体差が生じるのを防ぐことができる差動式熱感知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係る差動式熱感知器を示し、その全体の断面図である。
【図2】同上の接点ばね(移動側)のみを示し、感知器に取り付けられていない状態における斜視図である。
【図3】同上の感知器本体部分(空気室やベース等を取り外した状態)を示し、接点機構が取り付けられている状態におけるその取り付け部分を断面にした斜視図(視点は下面側)である。
【図4】同上の接点バネ(移動側)の感知器本体への取り付け部分を示し、(a)は各部品が分解された状態、(b)が各部品が取り付けられた状態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の差動式熱感知器の実施の形態を図1乃至4に基づき説明する。
【0013】
図1に示されるように、差動式熱感知器1は、取付ベース2の下部にそれと刃金具3,4により電気的且つ機械的に接続される感知器本体(以下、本体という)5と、その本体5の下部に設けられている空気室6と、空気室6の下部を画定している感熱板7と、空気室6の上部に連続して設けられているダイアフラム8と、本体5とダイアフラム8との間に設けられている接点機構9とを備えており、感熱板7が受熱した火災時の熱によって空気室6内の空気が急激に膨張してダイアフラム8が押し上げられると、それに連動して接点機構9が閉じて火災信号を出力するようになっている。尚、この感知器1には、空気室6と外部を連通させる図示しないリーク孔が設けられており、日常の気温変化等による空気室6内の空気の緩慢な膨張収縮の変化については、そのリーク孔を介した空気の出入りにより打ち消されて接点機構9が閉じないようになっている。
【0014】
接点機構9は、移動接点バネ10と固定接点バネ11とから構成され、それぞれの接点部10aと11aは上下方向で対向し、常時はそれら接点部10aと11aは離間し、両者間には上下方向の接点間隔が形成されるものとなっている。そして、接点機構9中、移動接点バネ10がダイアフラム8の変位に連動して移動するようになっており、火災時には、ダイアフラム8の上方への変位に連動して移動接点バネ10が上方に移動して、その接点部10aと固定接点バネ11の接点部11aとが接触することで接点を閉じるようになっている。
【0015】
この接点機構9において、移動接点バネ10は、ダイアフラム8の変位に連動して移動するよう構成され、ダイアフラム8との当接部10bを接点部10aの背面側に有している。本実施の形態において、移動接点バネ10の当接部10bは常時からダイアフラム8と接触するものになっており、ダイアフラム8が変位すれば、それに連動して直ちに移動するものになっており、又、移動接点バネ10の当接部10bは樹脂等の絶縁材料で形成され、ダイアフラム8側に突出する突状をなすものになっている。
【0016】
本実施の形態において、接点機構9中、移動接点バネ10は、長さ方向において平らに形成された板バネ、具体的には図2に示されるように全体として平板状の板バネが用いられている。この移動接点バネ10には、その長さ方向一端側に周縁が固定部10cとなる貫通孔10dが形成され、他端側の表裏に前記の接点部10aと当接部10bがそれぞれ設けられている。尚、10hは、本体5の下面5b側に設けられた略円柱状の移動接点バネ10の回り止め21が挿通される穴である。
【0017】
移動接点バネ10は、固定部10cで本体5に固定されているが、本実施の形態においては、図4にその詳細が示されるように、貫通孔10dに回路基板12を貫通した固定ネジ13が貫通し、その固定ネジ13が本体5のボス14を貫通し、上面5aに設けられた刃金具3に螺合され、回路基板12と本体5が共締めされて固定されている。
【0018】
又、移動接点バネ10は、前記の通りそれ自体は平板状に形成されたものであるが、本体5に取り付けられている状態においては、本体5の下面5bに設けられている押圧部15によりダイアフラム8側に押圧されて、ダイアフラム8側に所定の角度で曲げられた状態になるものとなっている。即ち、移動接点バネ10は、その曲げの角度に個体差を生じさせることがないものとなっており、移動接点バネ10の曲げの角度に個体差が生じるのを防ぐことができ、その曲げの角度による固定接点バネ11との接点間隔に個体差が生じるのを防ぐことができるものとなっている。更に、従来の差動式熱感知器では、移動接点バネの曲げの角度のばらつきによって、ダイアフラムと接触する距離に個体差が生じたためにダイアフラムが過度に負荷を受けるものであった。一方、本実施の形態では、ダイアフラム8と接触する距離に個体差は生じずにダイアフラム8は均一に負荷を受け、感知器の感度が安定する。尚、移動接点バネ10は、本実施の形態においては、前記のように回路基板12と共締めされて本体5に取り付けられており、回路基板12の側縁部12aに当接しながら、その当接する位置を支点10eとして、押圧部15により曲げられたものになっているが、例えば、回路基板12を共締めせずに、取付ネジ13の頭部の周縁部で固定部10cの位置を支点として曲げられるようにしてもよいし、他の部材を共締めして、その部材に当接する位置を支点として曲げられるようにしてもよい。
【0019】
更に、移動接点バネ10には、その略中間両側縁部に長さ方向に延在する一対の切り欠き部10fが設けられている。この切り欠き部10fに対応して本体5の下面5bに円柱状のガイド体19が設けられており、移動接点バネ10はダイアフラム8の変位に連動して上下に移動する際に、これらガイド19のガイドを受けることができるようになっている。尚、移動接点バネ10の挿通穴10hには、本体5の下面5bに設けられた円柱状の移動接点バネ10の回り止め21が挿通されており、移動接点バネ10が水平方向に回転するのを防ぐことができるようになっている。
【0020】
押圧部15の先端15aは、略半球状をなし、移動接点バネ10の固定部10cが当接するボス14先端の固定面14aよりダイアフラム8側に位置するものとなっており、これにより固定面14a上に固定される移動接点バネ10をダイアフラム8側に押し曲げることができるようになっている。尚、移動接点バネ10のダイアフラム8側への曲げの角度は、押圧部15の先端15aと固定面14aとの縦方向の位置関係と、押圧部15と移動接点バネ10の曲げの支点10eと横方向の位置関係とにより決定することができる。従って、例えば、押圧部15の縦方向又は横方向の位置を可変にして、移動接点バネ10の曲げの角度を調整可能にすることもできる。更に、押圧部15を縦方向の位置を可変にする調整ネジにすれば、調整ネジ18が不要となったり、調整ネジ18と組み合わせることで、より高精度に感度を調整できる。
【0021】
固定接点バネ11は、移動接点バネと同様、固定部となる貫通孔を有しており、その貫通孔に固定ネジ16が挿通されて、固定ネジ16は本体5のボス17を貫通し、上面5a側で刃金具4に螺合されている(図1は固定ネジ16が回路基板12と本体5を共締めしない場合を示し、図3は固定ネジ16が回路基板12と本体5を共締めする場合を示している)。この固定接点バネ11は、本実施の形態においては、長さ方向において折り曲げて形成された板バネが用いられている。具体的には、固定接点バネ11は、本体5に取り付けられている状態において、ダイアフラム8側へ向かう折り曲げ部11bとそれに連続する本体5側へ向かう折り曲げ部11cとを有するものが用いられている。固定接点バネ11は、長さ方向において折り曲げられた板バネが用いられており、その折り曲げの角度に個体差が生じ得るものとなっているが、本実施の形態においては、固定接点バネ11の接点部11aの裏面側から固定接点バネ11に先端18aが接触し、上下方向に進退可能に本体5に螺合して設けられた調整ネジ18が設けられており、この調整ネジ18を上下方向に進退させることで、固定接点バネ11の接点部11aの上下の位置を調整できるようになっており、即ち、移動接点バネ10との接点間隔を調整できるようになっている。尚、この固定接点バネ11の接点部11a側の端部は折り曲げ部11cにより本体5側へ傾斜しているが、その傾斜角は、移動接点バネ10の曲げの角度と略同じになるようになっている。
【0022】
上記の実施の形態においては、移動接点バネ10を平らな板バネ10とする例を示したが、固定接点バネ11を、長さ方向において平らな板バネを用い、本体5に固定接点バネ11用のダイアフラム8側への押圧部を設け、その押圧部によりダイアフラム8側へ押し曲げられるものとしてもよく、そのようにすれば、固定接点バネ11の曲げの角度に個体差が生じないようにすることができ、その曲げの角度による移動接点バネ10との接点間隔に個体差が生じないようにすることができる。
【0023】
以上説明したように、差動式熱感知器1は、移動接点バネ10が長さ方向において平らに形成された板バネであって、一端側の固定部10cで本体5に固定されると共に、本体5よりダイアフラム8側に突出して設けられた押圧部15によってダイアフラム8側に押圧されて、ダイアフラム8側に向かって所定の角度で曲げられた状態で本体5に取り付けられる板バネによって構成されているので、その板バネによって移動接点バネ10は、ダイアフラム8側への曲げの角度、即ちダイアフラム8側への立ち上がりの角度に個体差が生じることがなく、その角度の個体差により接点機構9の接点間隔に個体差が生じるのを防ぐことができるものとなっている。
【符号の説明】
【0024】
1 差動式熱感知器 2 取付ベース
3 刃金具 4 刃金具
5 本体 5a 上面
5b 下面 6 空気室
7 感熱板 8 ダイアフラム
9 接点機構 10 移動接点バネ
10a 接点部 10b 当接部
10c 固定部 10d 貫通孔
10e 支点 10f 切り欠き部
11 固定接点バネ 11a 接点部
11b 折り曲げ部 11c 折り曲げ部
12 回路基板 12a 側縁部
13 固定ネジ 14 ボス
15 押圧部 16 固定ネジ
17 ボス 18 調整ネジ
18a 先端 19 ガイド体
21 回り止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱板と、空気室と、ダイアフラムと、接点機構とを感知器本体の下部に備え、該接点機構が該感知器本体と該ダイアフラムとの間に設けられた移動接点バネと固定接点バネとからなり、該感熱板が受熱した熱により該空気室内の空気が膨張して該ダイアフラムが変位し、その変位に連動して該移動接点バネが移動して該固定接点バネに接触し、それにより該接点機構を閉じて火災信号を出力するよう構成された差動式熱感知器において、
該移動接点バネと該固定接点バネの何れか一方を、長さ方向において平らに形成された板バネであって、一端側が固定部で該感知器本体に固定されると共に、該感知器本体より該ダイアフラム側に突出して設けられた押圧部によって該ダイアフラム側に押圧されて、該ダイアフラム側に向かって所定の角度で曲げられた状態で該感知器本体に取り付けられる板バネによって構成したことを特徴とする差動式熱感知器。
【請求項2】
該板バネは該固定部で回路基板を貫通した固定ネジにより該感知器本体に固定され、該板バネは該回路基板の側縁部に当接する位置を支点として該ダイアフラム側に曲げられるものであることを特徴とする請求項1に記載の差動式熱感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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