説明

巻き取り装置用ガイド装置および巻き取り装置

【課題】本発明は、繊維束に過度の負担をかけることなく、品質を維持しながら繊維束を巻き取ることのできる巻き取り装置用ガイド装置および巻き取り装置を提供する。
【解決手段】ガイド装置10は、繊維束100が搬送される搬送経路の上流側に各々が平行するよう設けられ、ボビン軸1aと直交する軸を各々有し、ともに回転可能な第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3と、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3とボビン1との間に各々が平行するよう設けられ、ボビン軸1aと平行する軸を各々有し、ともに回転可能な第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5と、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3と第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5との間に設けられ、ボビン軸1aに対して所定角度だけ傾斜した軸6aを有し、回転可能な円柱形状の捻転用ガイドローラ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扁平な断面形状を有するテープ状繊維束をボビンに巻き取る巻き取り装置用ガイド装置および巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、扁平な断面形状を有するテープ状の繊維束をボビンに巻き取る巻き取り装置用のガイド装置が、たとえば、下記特許文献1に開示されている。特許文献1のガイド装置は、ボビンの軸と直交する軸を有する第1のガイドローラと、第1のガイドローラの下流側であって繊維束の綾振りをするトラバースアーム上に設けられた、相互の軸が空間上で互いに捩じれの位置関係にある一対の円錐状ガイドと、トラバースアーム上であって一対の円錐状ガイドの下流側に設けられた、ボビンの軸と平行な軸を有する一対の第2のガイドローラと、を有する。一対の円錐状ガイドによって、繊維束をボビンの軸と平行になるように90°捩じって、トラバースしながらボビンに繊維束を巻き取る。具体的に、一対の円錐状ガイドは、搬送されてくる繊維束を1段階分だけ捩じる第1の円錐状ガイドと、第1の円錐状ガイドにより1段階分だけ捩じられた繊維束をさらにもう1段階分だけ捩じる第2の円錐状ガイドと、を有し、第1のガイドローラから搬送されてきた繊維束は、一対の円錐状ガイドを経ることにより、トラバースアーム上で90°捩じられ、ボビンの軸と平行にされた後、第2のガイドローラに送られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−330038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガイド装置は上記したように構成されている。すなわち、第1および第2の円錐状ガイドの設けられる範囲内で繊維束を90°に捩じっている。
【0005】
しかしながら、上記したような従来のガイド装置においては、第1のガイドローラおよびボビンの軸の相対的な位置関係において制約を受けないようにするために、第1および第2の円錐状ガイド範囲内で繊維束を90°捩じっているため、たとえば、繊維束が柔らかかったり、形態の保持性が十分でない場合、繊維束に大きな負担がかかり、結果として撚りなどが形成され、繊維束の品質を低下させてしまう虞があった。
【0006】
この発明の目的は、繊維束に過度の負担をかけることなく、品質を維持しながら繊維束を巻き取ることのできる巻き取り装置用ガイド装置および巻き取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る巻き取り装置用ガイド装置は、扁平な断面形状を有するテープ状の繊維束をボビンに巻き取る。この装置用ガイド装置は、繊維束の搬送経路においてボビンより上流側の第1の位置に設けられ、ボビンの軸と略直交する軸を有する第1のガイドローラと、第1の位置とボビンとの間における第2の位置に設けられ、ボビンの軸と略平行する軸を有する第2のガイドローラと、第1の位置と第2の位置との間に設けられ、ボビンの軸に対して所定角度だけ傾斜した軸を有する、円柱形状の捻転用ガイドローラとを備え、捻転用ガイドローラは、回転するとともに繊維束と接触することにより、繊維束を所定角度だけ捻転させる。
【0008】
好ましくは、捻転用ガイドローラは、第1および第2の位置の中間より上流側に設けられている。
【0009】
また、好ましくは、前記捻転用ガイドローラは、第1のガイドローラおよび第2のガイドローラに対して45°の角度をなして設けられている
【0010】
この発明の他の局面においては、巻き取り装置は、上記の巻き取り装置用ガイド装置と、巻き取り装置用ガイド装置により供給される繊維束を巻き取るボビンと備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ボビンの軸に対して所定角度だけ傾斜した軸を有する第3のガイドローラが、回転するとともに繊維束と接触することにより、繊維束を所定角度だけ捻転させるため、繊維束に過度の負担をかけることなく、品質を維持しながら繊維束を巻き取ることができる。しかも、簡易な構成にして製造コストを低減することができ、また既存の装置にも容易に設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガイド装置の構成を示す正面図である。
【図2】図1のガイド装置の構成を示す側面図である。
【図3】図1のガイド装置の前記捻転用ガイドローラ、第1のガイドローラおよび第2のガイドローラの配置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本発明に係る巻き取り装置用ガイド装置を有する巻き取り装置は、扁平な断面形状を有するテープ状の繊維束において種々のものが適用可能である。たとえば、特開平6−65787号公報に開示されるように、繊維束にサイジング剤を含浸させた後、加熱ロールで接触乾燥させることにより成形されて得られるようなテープ状繊維束も巻き取ることができる。以下の説明においては、そのような繊維束をボビンに巻き取る巻き取り装置において、ボビン軸に対して平行にされた繊維束を巻き取らせるための巻き取り装置用ガイド装置(以下、単に「ガイド装置」という)について説明する。
【0014】
図1は、この実施形態におけるガイド装置10のガイド装置の構成を示す正面図である。図2は、図1のガイド装置の構成を示す側面図である。図1および図2を参照して、ここにおけるガイド装置10は、ボビン1が反時計回りで繊維束100を巻き取る場合に適用されるよう構成されている。
【0015】
このガイド装置10は、繊維束100が搬送される搬送経路の上流側、すなわちボビン1の上方(第1の位置)において各々が平行するように固定部材7に設けられ、ボビン軸1aと直交する軸を各々有し、ともに自由回転可能に構成される第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3と、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3とボビン1との間(第2の位置)であってボビン1の近傍に各々が平行するように設けられ、ボビン軸1aと平行する軸を各々有し、ともに自由回転可能に構成される第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5と、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3と第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5との間に設けられ、ボビン軸1aに対して所定角度だけ傾斜した軸6aを有し、自由回転可能に構成される円柱形状の捻転用ガイドローラ6と、を含む。
【0016】
第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3は、各々ボビン軸1aに対して直交する軸2aおよび軸3aを有し、ボビン軸1aに対して直交する向きで搬送されてくる繊維束100を後にボビン軸1aに対して平行な向きに正確に捻転させるために、繊維束100の搬送を安定させる。
【0017】
第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5は、各々ボビン軸1aに対して平行する軸4aおよび軸5aを有し、捻転された繊維束100をボビン軸1aに対して平行する向きに最終的に整えて、繊維束100をボビン1に供給する。
【0018】
この第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5との位置関係は、第2上流側ガイドローラ4の上流側から搬送されてくる繊維束100が第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5との間を通過し、かつ、繊維束100の搬送経路が第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5により二度屈曲させられるように配置される。すなわち、図1に示されるように、第2上流側ガイドローラ4は繊維束100が左側面を、また、第2下流側ガイドローラ5は繊維束100が右側面を掛け回るように配置される。こうすることにより、ボビン1に巻き取らせる際の繊維束100にテンションを与えることができるため、精度よくボビン1に繊維束100を巻き取らせることができる。
【0019】
捻転用ガイドローラ6について説明する。図3は、図1のガイド装置の前記捻転用ガイドローラ、第1のガイドローラおよび第2のガイドローラの配置関係を示す平面図である。図3中の一点鎖線は、各ローラの軸心を示している。図3を参照して、第1上流側ガイドローラ2の軸心2bと第2上流側ガイドローラ4の軸心4bとは直交している。捻転用ガイドローラ6の軸心6bは、ボビン軸1aの延在する方向に対して反時計回りに45°傾斜している。すなわち、軸心2bおよび軸心4bとも軸心6bは45°の傾斜を有する。また、捻転用ガイドローラ6は、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3により左右方向に幅を有するように搬送されてくる繊維束100の右後方斜45°の方向から繊維束100の略中心と捻転用ガイドローラ6の側面とが当設するように配置される。従って、捻転用ガイドローラ6は、搬送されてくる繊維束100を略45°だけ時計回りに捻転させて、下流側である第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5に繊維束100を送る。
【0020】
なお、捻転用ガイドローラ6は、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3が設けられる位置(第1の位置)と、第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5が設けられる位置(第2の位置)と、の中間より上方側に設けられるのが好ましい。こうすることにより、早い段階で繊維束100をボビン軸1aに対して平行するよう捻転させておくことができるため、第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5により安定した状態で繊維束100を搬送することができる。また、捻転用ガイドローラ6の長さは少なくとも繊維束100の左右方向の長さ(幅)よりも長く、捻転用ガイドローラ6の太さは任意である。
【0021】
次に、ガイド装置10の動作について説明する。再び図1を参照して、まず、繊維束100は、繊維束100の幅方向がボビン軸1aと直交する状態で第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3に搬送されてくる。搬送されてきた繊維束100を第1上流側ガイドローラ2は回転しながら前方側から通過させ、掛け回すように第1下流側ガイドローラ3の後方に回り込ませ、第1下流側ガイドローラ3は回転しながら後方側を通過させて、下流側に繊維束100を搬送する。
【0022】
次に、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3を経由して安定的な状態にされた繊維束100が捻転用ガイドローラ6に接触する。捻転用ガイドローラ6は回転しながら、捻転用ガイドローラ6の軸6aの傾斜に基づいて繊維束100を(上方側から下方側に見る方向に)時計回りに略45°だけ捻転させて、通過させる。
【0023】
次に、捻転用ガイドローラ6で略45°だけ捻転された繊維束100を、第2上流側ガイドローラ4は回転しながら軸4aの左側から通過させる。その後、掛け回すように第2下流側ガイドローラの軸5aの右側から繊維束100を回り込ませ、ボビン1に繊維束100を供給する。このようにして、ガイド装置10は、繊維束100を最終的に90°時計回りに捻転させてボビン1に巻き取らせる。
【0024】
上記によれば、ボビン軸1aに対して直交する状態で搬送された繊維束100が、ボビン軸1aに対して直交する軸2aおよび軸3aを有する第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3により安定した状態にされ、捻転用ガイドローラ6で略45°だけ捻転された後、ボビン軸1aに対して平行する軸4aおよび5aを有する第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5により、ボビン軸1aに対して平行な状態にされてボビン1に供給されるため、繊維束100に過度の負担をかけることなく、品質を維持しながら繊維束100をボビン1に巻き取らせることができる。
【0025】
なお、上記の実施形態において、捻転用ガイドローラ6は搬送されてくる繊維束100の右後方斜45°の方向から繊維束100の略中心と捻転用ガイドローラ6の側面とが当設するように配置される場合について説明したが、これに限ることなく、搬送されてくる繊維束100の左前方斜45°の方向から繊維束100の略中心と捻転用ガイドローラの側面とが当設するように配置されてもよい。
【0026】
また、捻転用ガイドローラ6は、第1上流側ガイドローラ2および第1下流側ガイドローラ3とおよび第2上流側ガイドローラ4および第2下流側ガイドローラ5との間において、搬送経路の方向に任意で移動および固定が可能なように構成してもよい。
【0027】
また、上記の実施形態においては、1つの巻き取り装置に1つのガイド装置10が設けられる場合について説明したが、これに限ることなく、1つの巻き取り装置に複数のガイド装置が設けられ、同時に複数のボビンで複数の繊維束を巻き取るようにしてもよい。
【0028】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ボビン、1a ボビン軸、2 第1上流側ガイドローラ、2a,3a,4a,5a,6a 軸、2b,4b,6b 軸心、3 第1下流側ガイドローラ、4 第2上流側ガイドローラ、5 第2下流側ガイドローラ、6捻転用ガイドローラ、7 固定部材、10 ガイド装置、100 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な断面形状を有するテープ状の繊維束をボビンに巻き取る巻き取り装置用ガイド装置であって、
前記繊維束の搬送経路において前記ボビンより上流側の第1の位置に設けられ、前記ボビンの軸と略直交する軸を有する第1のガイドローラと、
前記第1の位置と前記ボビンとの間における第2の位置に設けられ、前記ボビンの軸と略平行する軸を有する第2のガイドローラと、
前記第1の位置と第2の位置との間に設けられ、前記ボビンの軸に対して所定角度だけ傾斜した軸を有する、円柱形状の捻転用ガイドローラとを備え、
前記捻転用ガイドローラは、回転するとともに前記繊維束と接触することにより、前記繊維束を前記所定角度だけ捻転させることを特徴とする巻き取り装置用ガイド装置。
【請求項2】
前記捻転用ガイドローラは、前記第1および第2の位置の中間より上流側に設けられている請求項1に記載の巻き取り装置用ガイド装置。
【請求項3】
前記捻転用ガイドローラは、第1のガイドローラおよび第2のガイドローラに対して45°の角度をなして設けられている請求項1または請求項2に記載の巻き取り装置用ガイド装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の巻き取り装置用ガイド装置と、
前記巻き取り装置用ガイド装置により供給される繊維束を巻き取るボビンとを備える巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25585(P2012−25585A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168875(P2010−168875)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000146984)株式会社神津製作所 (8)
【Fターム(参考)】