説明

巻付けグリップの製造方法

【課題】巻付けグリップの製法方法において製造工程を削減する。
【解決手段】巻付けを行う巻付けグリップの製造方法である。そして、成形手段1が供給された材料に対し異形線練り出し及び螺旋成形を行う成形工程を有し、前記異形線練り出し及び螺旋成形が行われたワークを切断すると共に、当該切断された切断ワークの中心部を捻回した後に曲げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電柱及び電線の配置場所にて使用する巻付けグリップの製造方法に係り、特に線材(ワーク)に対し一体成形を行うことにより一括して目的の形状に成形することにより製造工程を減らす巻付けグリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の巻付けグリップ(例えば、電柱等において所定のワイヤーに巻付ける等を目的とした巻付けグリップ)の製造方法を図5を参照し説明する。
【0003】
初めに、ステップS51では、成形手段51が、所定の金属材料から硬鋼線(単線:ワークW1)繰り出しを行う。ステップS52では、ワークW1に対し螺旋成形を行うと共に、定尺に切断を行う。ステップS53では、ステップS52で製造された単線を複数本集めて仮組を行う(ワークWN)。ステップS54では、仮組された複数本の線(ワークWN)を接着すると共に乾燥する。ステップS55では、中央部を捻回すると共に、この中央部を曲げて製品を完成させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−155571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の巻付けグリップの作り方では接着工程を必要とするため、有機溶剤による環境問題が発生すると共に工程数が多いという問題があった。また、歩留まり悪い(成形時のピッチ不揃いと不良の発生)ということに加え、捻回時の割れ(素線間の剥がれ)が発生し、素線本数不足などの不良が発生していた。
【0006】
この発明の課題は、上記従来のものが持つ問題点を排除した、巻付けグリップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
巻付けを行う巻付けグリップの製造方法において、成形手段が供給された材料に対し異形線練り出し及び螺旋成形を行う成形工程を有し、前記異形線練り出し及び螺旋成形が行われたワークを切断すると共に、当該切断された切断ワークの中心部を捻回した後に曲げる巻付けグリップの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、接着工程がいらないため、有機溶剤による環境問題が発生しないという効果がある。また、歩留まり(成形時のピッチ不揃い不良がない)が良いと共に、完成までのリードタイムが短いという効果を奏する。さらに、捻回時の割れ(素線間の剥がれ)が発生しなく、素線本数不足などの不良が発生しないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】巻付けグリップの製造方法及び製造装置を示す概略図である。
【図2】巻付けグリップの製造工程を説明する説明図である。
【図3】製造された巻付けグリップを説明する説明図である。
【図4】巻付けグリップの断面を説明する説明図である。
【図5】従来の巻付けグリップの製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に巻付けグリップ(例えば、電柱等におけて使用される所定のワイヤーに巻付け支持する等を目的とした巻付けグリップ)の製造方法を示す。
【0012】
初めに、ステップS01、ステップS02では、巻付けグリップ製造装置1が、所定のの金属材料(一般的に巻付けグリップに使用される金属等の材料)から異形硬鋼線繰り出しを行う。そして、一体螺旋成形を行う。続いて、一体螺旋成形されたワークを所定の長さに切断する。
【0013】
図2を参照し巻付けグリップの成形工程を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、4本の線材を並列に組んだ形状と似た形状に一体成形された製品を例に説明するが、本願発明はこれに限定されるものでないことは勿論である。
【0014】
線材(ワーク)Wは巻付けグリップ製造装置1で一体的に成形されるもので、この巻付けグリップ製造装置1は、第1成形部1A(線材を引き抜き、押し出し、圧延加工するダイス等として機能する)、第2成形部1B(前記第1成形部1Aで成形された線材を伸ばしながら、さらに成形加工するダイス等として機能する)、第3成形部1C(前記第2成形部1Bで成形された線材を、さらに成形後、一体螺旋加工する)を備えている。なお、この第3成形部1Cで異形線練り出しのみを行い、その後に他の機械により一体螺旋加工するようにしても良い。
【0015】
前記第1成形部1Aでは、線材(ワーク)Wは楕円成形形状WA1(図1において、線材の断面を矢印AR方向から見て楕円の形状)に成形される。第2成形部1Bでは、線形成形形状WB1と、線形成形形状WB2と、線形成形形状WB3と、線形成形形状WB4(図1において、線材の断面を矢印AR方向から見て4つの突起形状を備えた形状)とが形成される。
【0016】
第3成形部1Cでは、線形成形形状WC1と、線形成形形状WC2と、線形成形形状WC3と、線形成形形状WC4(図1において、線材の断面を矢印AR方向から見て4つの円形の突起形状を備えた形状)とが形成される。
【0017】
さらに、前記第1成形部1Aと、前記第2成形部1Bと、前記第3成形部1Cとにより線材が成形される際には前記第3成形部1Cにおいて螺旋形状の形成も行われる(ステップS02)。
【0018】
さらに、ステップS02では、定尺に切断を行う。すなわち、線材の断面を矢印AR方向から見て4つの円形の突起形状を備えたワークWが所定の長さ毎に切断手段により切断される。
【0019】
ステップS03では、前記ステップS02において切断されたワークWに対して当該切断ワークWの中央部を捻回すると共に、この捻回された中央部付近を円形に曲げて巻付けグリップSを完成させる。
【0020】
ここで、図2を参照し上記第3成形部1Cで成形された4箇所の円筒形部分(図1において、線材の断面を矢印AR方向から見て4つの円形の突起形状)の大きさについて説明する。各円筒形部分は、直径d及び円筒形状と円筒形状との間の接合部分tの大きさを限定することが望ましい。具体的には、接合部分t=0.05〜0.08(mm)が望ましい。接合部分tが0.05(mm)より小さい値であれば割れが発生し易くなる。一方、接合部分tが0.08(mm)より大きい値であれば成形が困難である。さらに、直径dが2.15(mm)、2.48(mm)、2.8(mm)及び3.2(mm)のものに限定使用するようにしてもよい。
【0021】
なお、上記の大きさに形成した並列複素線(一体螺旋成形加工は行われていない)を購入し、購入した並列複素線を所定長さに切断して切断した並列複素線に対し一体螺旋成形加工、中央部捻回・曲げ加工を行ってもよい。
【0022】
図3を参照し、上述したステップS01、ステップS02及びステップS02の工程で製造されたされた巻付けグリップSを説明する。巻付けグリップSは、ワイヤー等に実際に巻き付ける部分である巻付け部Saと、捻回部Sbと、曲げ部Scとを備えている。大きさとしては種々のものが用意されているが、例えば、断面積が10(mm2)、全長が470(mm)、巻付け部Saが160(mm)、曲げ部Scの内側R寸法が35(mm)、撚り方向がS撚りでピッチ50(mm)、材質が高耐食鋼線、巻付け部Sa付近には摩擦増加材を塗布したというものがある。
【0023】
図4(a)〜(f)を参照し巻付けグリップの種類を説明する。図3における断面A−A、断面B−Bの形状を示したものである。
【0024】
図4(a)は、4本の単線を並列に合体させた形状と似た形状が捻回されている(図3において捻回部Sbにおける断面A−Aの形状)。図4(b)は5本の単線を並列に合体させた形状と似た形状が捻回されている(図3において捻回部Sbにおける断面A−Aの形状)。図4(c)は6本の単線を並列に合体させた形状と似た形状が捻回されている(図3において捻回部Sbにおける断面A−Aに形状)。
【0025】
図4(d)は4本の単線を並列に合体させた形状と似た形状が一体螺旋成形されている(図3において巻付け部Saにおける断面B−Bの形状)。図4(e)は5本の単線を並列に合体させた形状と似た形状が一体螺旋成形されている(図3において巻付け部Saにおける断面B−Bの形状)。図4(f)は6本の単線を並列に合体させた形状と似た形状が一体螺旋成形されている(図3において巻付け部Saにおける断面B−Bの形状)。
【0026】
ここで、数本の単線を並列に合体させた形状に似た形状が一体螺旋成形または捻回されているため、各突起形状間は強度が弱くなっている。従って、当該部分で裂けることが有るがこの場合は、通常の単線を組み合わせて製造した従来のものと同じものになる。
【0027】
また、単線と異なり並列複素線(3列〜6列)をベースにした亜鉛アルミメッキ鋼線等であるため接着工程がいらない。そして、有機溶剤による環境問題が発生しない。
【0028】
さらに、歩留まり(成形時のピッチ不揃い不良がない)が良く加工時間が短縮できる(リードタイムが短い)。捻回時の割れ(素線間の剥がれ)が発生しない。
【0029】
なお、素線本数不足などの不良が発生しない等の多くの特長があるので、並列複素線を2種類(2列と3列)に絞り、これの組み合わせを行うことで歩留まりの向上及び不良率の低減を図ることも可能である。
【0030】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0031】
1 巻付けグリップ製造装置
W 成形された素材
AR 矢印
1A 第1成形部
1B 第2成形部
1C 第3成形部
WA1 楕円成形形状
WB1 線形成形形状
WB2 線形成形形状
WB3 線形成形形状
WB4 線形成形形状
WC1 線形成形形状
WC2 線形成形形状
WC3 線形成形形状
WC4 線形成形形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻付けを行う巻付けグリップの製造方法において、
成形手段が供給された材料に対し異形線練り出し及び螺旋成形を行う成形工程を有し、前記異形線練り出し及び螺旋成形が行われたワークを切断すると共に、当該切断された切断ワークの中心部を捻回した後に曲げることを特徴とする巻付けグリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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