説明

巻取り機の複数のスリーブを位置決めするための方法及び装置

巻取り機(1)の複数のスリーブ(8)を位置決めするための方法及び装置が開示される。ボビンを巻き上げるための巻取り機(1)が捕捉手段(8.1)を有しており、この捕捉手段(8.1)により、巻上げを開始するためにスリーブ(8)で糸が捕捉される。複数のスリーブ(8)が直列に同軸的に配置されている場合には、スリーブ(8)の長さ許容差が、捕捉手段(8.1)の位置誤差につながる。これにより、捕捉安全性が劣悪化する。本発明による方法及び装置では、スリーブ(8)は緊締チャック(7)への押込み後に個別化され、規定位置へ摺動される。このためには案内手段(11)がスリーブ(8)に作用し、この場合にスリーブ(8)は、緊締チャック(7)に沿って個別に、又は複数を同時に位置決めすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の、巻取り機の複数のスリーブを位置決めする方法、及び請求項6の上位概念部に記載の、前記方法を実施するための装置、及び請求項20の上位概念部に記載の巻取り機に関する。
【0002】
ヨーロッパ特許庁特許公開第0937008号明細書につき、連続的に供給される複数の糸を巻き上げるための巻取り機が公知である。このためには、供給される糸が、回転するそれぞれ1つのスリーブにボビンの形に巻き上げられる。糸走行方向で見て、ボビンの前に配置された綾振装置により、それぞれの糸が周期的にボビン軸線方向に綾振られ、運動の重複により円筒状の綾巻きボビンが巻き上げられる。
【0003】
スリーブ、ひいてはボビンも、突出して支承された緊締チャックに同軸的に固定されている。この緊締チャックの回転により、スリーブが駆動される。
【0004】
完全なボビンをできるだけ損失なしに空のボビンと交換するためには、巻取り機は2つの緊締チャックを有しており、これらの緊締チャックは回転プレートに配置されており、これにより、相互に巻取り位置から停止位置へ運動させることができる。
【0005】
スリーブは規定された箇所に捕捉手段を有しており、この捕捉手段により、停止位置から巻取り位置への入換え時には糸が回転するスリーブにより捕捉され、連行される。捕捉手段としては、スリーブに沿って設けられたリング溝状の凹部又は打ち抜かれた窓内に設けられた捕捉フックが対象となる。捕捉のためには、交換プロセスの間に糸が糸ガイドにより捕捉手段を介して正確に案内される。比較可能な状況が、糸を最初にかける場合にも生じ、この場合には同様に糸ガイドが捕捉手段を介して糸を正確に案内する。
【0006】
上記交換プロセスは、まさに糸速度が高い場合には極めて危険であると評価され得る。一本の糸がスリーブにより捕捉されない状況は、巻取りプロセスの中断につながる。
【0007】
捕捉安全性のために重要なパラメータは、それぞれの糸ガイドに対する捕捉手段の正確な相対位置であることが判明した。
【0008】
ヨーロッパ特許庁特許公開第0937008号明細書に記載の巻取り機は、互いに隣接して供給される4本の糸を1つの緊締チャックにより同時に巻き上げる。しかしながら、同時に巻き上げ可能なさらに多くの糸及び対応してより長い緊締チャックを有する巻取り機も汎用である。
【0009】
緊締チャックは、ボビンの交換及び取外し後に互いに隣接して直列に配置されたスリーブを装着される。この場合に第1のスリーブはストッパまで摺動され、このスリーブの後方に位置するスリーブは前方に位置するスリーブに向かって摺動される。次いで、これらのスリーブは緊締チャックに緊締される。この方法により、巻取り機の緊締チャックは極めて簡単かつ素早く手により装着することができる。
【0010】
自動的又は半自動的なドッフィング装置により緊締チャックにスリーブスタック全体を装着することも同様に通例である。このようなドッフィング装置が、例えばドイツ連邦共和国特許公開第19508740号明細書に記載されている。
【0011】
スリーブの長さ許容差が、後続のスリーブの捕捉手段の位置誤差をもたらす原因である。まさに長い緊締チャックの場合には位置決め誤差がスリーブからスリーブへと累積される。
【0012】
このような理由から、スリーブの長さ許容差には極めて高い要求が課される。一般に、スリーブはボール紙により製造されている。ボール紙は湿気の影響下に長さ変化を被るので、スリーブは何回も使用することができない。このことは特に捕捉手段によりスリーブが高価であるという事実に基づき高いコストの原因となる。さらに許容差に課される高い要求に基づきスリーブの新価格も高い。
【0013】
そこで本発明の課題は、巻取り機の緊締チャックにスリーブを簡単かつ素早く装着する方法を提供し、使用された、ひいては長さに関して不正確なスリーブを使用した場合にも、スリーブに設けられた捕捉手段の高い位置精度、ひいては高い捕捉安全性が保証されているようにすることである。
【0014】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法、及び請求項6に記載の特徴を有する装置、及び請求項20に記載の特徴を有する巻取り機により解決される。
【0015】
本発明による方法及び本発明による装置では、まず従来技術に記載されているように、第1の方法ステップでスリーブが個別に、又はスリーブスタックの形で巻取り機の緊締チャックに押し込まれる。このプロセスは操作員又はドッフィング装置により行われる。本発明によれば、次いで第2の方法ステップではスリーブは個別化され、規定位置へ位置決めされる。第2の方法ステップをそれぞれのスリーブのために順次に実施すること又は複数又は全てのスリーブのために同時に実施することが可能である。このためには、前記装置は案内手段を有しており、これらの案内手段は、緊締チャックで保持されたスリーブに作用する。
【0016】
次に続く方法ステップは、再び従来技術に対応している、すなわち、位置決め後にはスリーブは通例どおり緊締される。
【0017】
本発明の利点は、巻取り機の緊締チャックの装着時に簡単かつ素早い操作が従来通り付与されていることである。それにもかかわらず、それぞれの個別のスリーブの高い位置精度を、スリーブの長さ及び許容差とは無関係に達成することができる。本発明による方法で使用されるスリーブが、スリーブの規定位置と規定位置との間隔よりも、半分の長さ許容差幅だけ短くなっている必要があり、これにより、個別化のためのスペースがとられていることは自明である。
【0018】
ドイツ連邦共和国特許公開第19701315号明細書につき、スリーブを個別化して緊締チャックに装着することが確かに公知である。しかしながら、このドイツ連邦共和国特許公開第19701315号明細書で提案された解決手段は、スリーブが緊締チャックへ押し込まれる前に既に個別化されなければならないことを条件としている。このことは操作員のための付加的な手間を意味する。その上、スリーブはここではスリーブスタックの形で押し込むことはできない。しかしながら、このような要求こそがまさに本発明の根底を成す課題の1つである。
【0019】
有利な方法変化実施例では、スリーブは押込み時に緊締チャックの支承端部に設けられたストッパまで摺動される。この変化実施例は次の個別化を簡易化する。なぜならば、スリーブは1方向にのみ摺動すればよいからである。
【0020】
本方法の1変化実施例では、爪がスリーブに対して平行に突出端部の方向に運動せしめられる。爪がスリーブの規定されたエッジを把持するやいなや、このスリーブは連行され、終端位置まで摺動される。スリーブのエッジとしては、例えばスリーブ端部が提供されている。
【0021】
本方法の特に有利な変化実施例では、第2の方法ステップ「個別化及び位置決め」が個別のサブステップに分割されている。まず方法の第1のサブステップでは、2つの隣接したスリーブの互いの引離しが行われる。上に述べた有利な方法変化実施例との関連で、このことはそれぞれ緊締チャックの突出端部に向いたスリーブが、それぞれ緊締チャックの支承端部に向いたスリーブから引き離されることを意味する。
【0022】
本方法の第2のサブステップでは、ストッパとして作用する、スリーブ軸線の方向に不動な爪がスリーブとスリーブとの間のギャップ内に挿入される。このストッパはスリーブの図示の位置決めのために働く。第3のサブステップでは、いまスリーブの1つがストッパ、ひいては規定位置へ摺動される。
【0023】
本発明による位置決め装置は、有利には、案内手段を収容するための支持体により形成されており、この支持体は緊締チャックの側方に直接に配置されている。これにより、緊締されていない状態で緊締チャックで保持されたスリーブは簡単な形式で外部から緊締チャックに設けられた案内手段により、個別化及び位置決めのために往復運動させることができるようになっている。
【0024】
しかしながら、この案内手段は緊締チャックに直接に組み込まれていてもよく、これにより、スリーブの押込み後にはスリーブスタックからのそれぞれ個別のスリーブに所定の位置が配属される。
【0025】
本発明による方法を実施するための位置決め装置の別の有利な発展形が、案内手段として爪を有しており、この爪は送り手段により、実質的に始端位置から終端位置へ突出端部の方向に可動になっている。この爪はエッジを有しており、このエッジは、移動したいスリーブのエッジに対応している。まず爪のエッジがスリーブのエッジに接触し、このスリーブのエッジを連行するまで、爪は送り方向に可動になっている。次いで前記送り手段は爪をスリーブと共に終端位置まで運動せしめる。付加的には、爪はロック運動するために可動であり、これにより、爪のエッジがスリーブのエッジ接触した場合に爪がロック方向に可動であり、送り運動の終了時には爪はロック方向とは反対に可動であり、これにより、爪のエッジとスリーブのエッジとは接触から外れる。
【0026】
位置決め装置の1変化実施例では、スリーブ毎に1つの爪が設けられており、この場合に全ての爪は共通の1つの送り手段により運動せしめられる。
【0027】
位置決め装置の別の変化実施例では、1つの爪が全てのスリーブのために設けられており、この場合に、送り手段は、爪がそれぞれのスリーブのための前記運動を順次に実施することができるようになっている。
【0028】
1構成では、爪又は送り手段は、最終位置を規定するストッパに対して走行可能である。
【0029】
別の構成ではセンサが設けられており、このセンサは、移動したいスリーブ、爪又は送り手段の位置を検出し、規定位置が得られた場合には送り手段を停止する。
【0030】
特に爪のエッジが、同時にスリーブ端部であるスリーブのエッジと協働するようになっている構成では、スリーブのエッジを損傷することなしに隣接する2つのスリーブの間に爪を挿入しなければならないという問題が生じる。こうした場合には、位置決め装置の案内手段が有利には分離装置を有しており、これにより、それまでは隣接していた2つのスリーブが、弾性的に作用する力の負荷により、分離手段により慎重に互いに分離される。
【0031】
上に述べた構成は軸線方向に可動な爪を有しているが、以下に説明する特に有利な構成では不動な爪が使用される。これにより、爪の位置はスリーブの規定位置に対応している。スリーブを爪に対して走行させるためには、分離装置は弾性的に作用する複数の分離手段を有しており、これらの分離手段はスリーブを爪に対して摺動する。分離手段の弾性的な作用により、スリーブが爪との接触時に損傷されることが阻止される。
【0032】
このような弾性的に作用する分離手段は、例えばスリーブに載置された、緊締チャックの突出端部の方向に可動なブラシであってよく、このブラシは、スリーブ表面と接触しており、スリーブをまず摺動するが、しかしながら、スリーブと爪との接触後にスリーブ表面は損傷されない。
【0033】
別の弾性的に作用する分離手段がスリーブ表面に載置されており、緊締チャックの突出端部の方向に可動な摩擦面であってよい。この場合には分離手段とスリーブとの間の摩擦係数は、スリーブと緊締チャックとの間の摩擦係数よりも高い。
【0034】
分離手段の別の変化実施例がエアジェットであり、このエアジェットはスリーブ端部に作用し、突出端部の方向にスリーブに力を加え、この力はスリーブを摺動する。
【0035】
複数の分離手段がそれぞれ1つのスリーブのために使用されている場合には、スリーブを緊締チャックの支承端部から突出端部の方向に摺動する場合に、確かにスリーブと突出端部の方向の隣接スリーブとの間の間隔が増大するが、しかしながら、別の側では間隔が減少するという問題が生じる。それ故、全てのスリーブを同時に個別化する場合には調整手段が次のように、すなわち、それぞれ個別の分離手段の速度が突出端部の方向に増大するように作用することが必要である。
【0036】
有利な1構成では、このことは調整手段として、2つの分離手段の間に緊締されたばねがそれぞれ使用されることにより達成される。この場合に、突出端部に向いた分離手段がアクチュエータにより駆動される。最後のばね又は最後の分離手段は支承端部で不動のストッパに対して支持される。これにより、個別の分離手段は、アクチュエータの操作時に互いにアコーディオンに類似した形で互いにから離れる。
【0037】
本発明による位置決め装置は、有利には巻取り機内に組み込まれる。このためには、巻取り機は、位置決め装置を停止位置と作業位置との間で切換可能な手段を有している。この場合に、作業位置とは本発明による方法が実施可能な位置のことである。次いで位置決め装置は停止位置へもたらされる。
【0038】
一般に巻取り機は2つの緊締チャックを有しており、これらの緊締チャックは回転プレートにより巻取り位置と停止位置との間で切り換えられる。それ故、有利な構成では巻取り機は、位置決め装置の作業位置を、停止位置から移動した緊締チャックに追従させる手段を有している。
【0039】
本発明による位置決め装置は、同様にドッフィング装置内に組み込むことができる。このことは、もはや巻取りヘッドのために位置決め装置を設けなくてよいという利点を有している。
【0040】
次に本発明の実施の形態を図面につきさらに詳しく説明する。
【0041】
図1には、巻取り機1で本発明による方法を実施するための位置決め装置23が示されている。この巻取り機1は、連続的に供給される糸2をボビン5の形に巻き取る。このためには、前記巻取り機1は、ハウジング3に結合された綾振装置3.1を有しており、この綾振装置3.1はボビン軸線方向に糸1の綾振を行う。緊締チャック4に緊締されたスリーブ5.1の回転により、ボビン5が形成される。巻取りヘッド1は第2の緊締チャック7を有しており、この緊締チャック7は停止位置に位置している。前記緊締チャック4と同様に、この緊締チャック7は支承端部7.3で突出した形で支承されており、これにより、スリーブ8を突出端部7.2で押し込むことができる。ボビン5が最大直径に達した時点で、回転プレート6に結合された緊締チャック4及び7は、回転プレート6の回転により互いに切り換えられる。この場合、この段階の間に、糸走行部に挿入された糸ガイド9の役割は、糸2を次のように案内することである、すなわち、糸2が捕捉手段8.1を介してスリーブ8に沿って案内され、糸2が捕捉手段8.1により連行され、いま巻上げ位置に位置するスリーブ8でボビンが形成されるように案内することである。
【0042】
高い捕捉安全性が保証されているように、捕捉手段8.1が狭い許容差をもって緊締チャック7に位置していることが不可欠である。図1には巻取り機が示されており、この巻取り機1は4本の糸を同時に巻き上げる。しかしながら、8本又はそれよりも多い糸を同時に巻き上げる巻取り機も公知である。図1は、緊締チャック7に設けられたスリーブ8を、緊締チャック7へのこのスリーブ8の押込み直後に生じる状態で示している。突出端部7.2に最も隣接したスリーブ8に設けられた捕捉手段8.1の位置は、別のスリーブ8の長さ許容差により影響される。このことを阻止するためには位置決め装置23が設けられており、この位置決め装置23は、案内手段11により個々のスリーブ8をそれぞれそのスリーブの正確な位置へ緊締チャック7に沿って摺動する。緊締チャック4に設けられたスリーブ5.1に基づき、スリーブ5.1とスリーブ5.1との間には小さいギャップが提供されていることが判る。これらのギャップは前記位置決め装置23の作用の結果である。このためには位置決め装置23は案内手段11を有しており、これらの案内装置11は多数の爪12の形で形成されている。これらの爪12は、緊締チャック7の軸線方向に走行可能になっており、スリーブ8を緊締チャック7に沿ってこれらのスリーブ8の規定位置へ摺動する。
【0043】
図2.1、図2.2及び図2.3には、本発明による方法を実施する場合の案内手段11の運動プロセスが示されている。まずスリーブ8が緊締チャック7に押し込まれる。このことは手により行われ、この場合にはそれぞれの個々のスリーブが緊締チャックに被せ嵌められる。別のスリーブ8を後から押し込むことにより、スリーブスタックが形成され、このスリーブスタックは緊締チャック7に沿ってストッパ10まで摺動される。同様に、前記スリーブスタックはドッフィング装置によって押し込むことができる。
【0044】
スリーブ8の押込み後には、それまでは停止位置に位置していた位置決め装置23が、緊締チャック7の軸線に対して垂直方向にスリーブ8に向かって走行せしめられる。このためには位置決め装置23は支持体15を有しており、この支持体15は案内装置16により緊締チャック7の方向に可動に案内される。支持体15にはスライダ14が設けられており、このスライダ14は緊締チャック7の軸線方向に可動になっている。スライダ14には爪12が組み付けられており、これらの爪12はスリーブ8に対してばね弾性的に作用する。
【0045】
位置決めの開始時には、前記スライダ14はここではストッパ18により規定されたス始端位置に位置している。図2.2に示したように、位置決プロセスは始端位置から終端位置へのスライダ14の走行により行われ、この終端位置ではスライダ14はストッパ17に衝突する。この場合に、スリーブ8にばね弾性的に作用する爪12の先端は、隣接した2つのスリーブ8の間のギャップ内にそれぞれ係合する。爪12と爪12との互いの間隔は、スリーブ8の長さよりも大きいことが判る。これにより、まず突出端部7.2に隣接した爪12が、向かい合ったスリーブ8を把持する。これによりこのスリーブ8は最も長い距離だけ摺動される。爪12により、次々にスリーブ8が連行され、規定位置へ摺動される。このことは図2.3に示されている。次いで支持体15は停止位置へ戻され、スライダ14は再び始端位置へもたらされる。
【0046】
図3には、スリーブエッジの択一肢が詳細に示されている。図2では、隣接した2つのスリーブ8の間のギャップ内に爪が係合する必要があったが、ここでは段部8.2により爪12の進入が簡易化されており、これにより、爪12のエッジ12.2はスリーブ8のエッジ8.4と確実に接触する。このために爪12をスリーブ8に対して押しつけるためにはよりわずかな力が必要であり、これにより、ここでは爪12がスリーブ8に沿って走行せしめられた場合にスリーブ8の表面によりわずかな損傷しか生じないことが、特にここでは有利である。図3では、段部8.2が、爪の運動方向で見てスリーブの終端部に設けられている。エッジ8.4はここではスリーブの始端部に設けられている。しかしながら、段部8.2とエッジ8.4とをスリーブ8の別の場所に設けることも可能である。
【0047】
図4は別の択一肢を詳細に示している。ここでは爪12が楔状の形状を有しており、この爪12はギャップ内へ容易に導入することができるようになっており、このギャップは、隣接したそれぞれ2つのスリーブ8の端部に設けられた面取り部8.3により生じる。ばね12.1が、ギャップ内への進入のために必要な力を加える。
【0048】
図5は位置決め装置の1変化実施例を示している。前記図面とは異なり、ここでは1つのみの爪12が設けられている。この爪12は保持体14.1に取り付けられており、この保持体14.1は緊締チャックの方向に可動にスライダ14に取り付けられている。このことは、ここでは回転ジョイントにより示されている。保持体14.1に結合されたジャーナル14.2が、カム14.3と協働する。このカム14.3は、爪12のエッジ12.2が軌道14.4を走行するように成形されている。これにより、それぞれのスリーブ8は次々に規定位置へ摺動される。
【0049】
図6には別の変化実施例が示されている。図5とは異なり、保持体14.1の運動はアクチュエータ14.5によりもたらされる。このアクチュエータ14.5は、センサ14.6がマーク14.7に基づき生ぜしめる信号に基づいて制御され、これにより、爪12のエッジ12.2は、図5に示した軌道14.4を走行する。
【0050】
図7は、案内手段11として位置決め装置で使用可能となるあろう分離装置24を詳細に示している。スリーブ8の表面に爪12による損傷がもたらされることを阻止するためには、スライダ14に付加的に分離手段19が設けられている。この分離手段19は、スリーブ8との接触面に、例えば摩擦パッド又はブラシを有している。この分離手段19の役割は、スリーブ8の表面に摩擦力を伝達することである。
【0051】
図8は、位置決め装置23の特に有利な変化実施例を示している。前記図面とは異なり、ここでは爪12は不動である。その代わりにここでは分離装置24の分離手段19のみがスライダ14に結合されており、可動になっている。2つの分離手段19の間にはそれぞればね20が緊締されている。突出端部に設けられた分離手段19は、アクチュエータ21、例えばニューマチックシリンダに結合されている。アクチュエータ21が分離手段19に及ぼす力が全てのばね20を介して分配されるので、このことは、アクチュエータ21の運動時に分離手段19がアコーディオン状に互いに離れるように運動することをもたらす。このことは、スリーブ8の運動に課される要求にもちょうど対応している。
【0052】
このプロセスの間には、爪12はスリーブに対して柔らかくばね弾性的に押しつけられる。分離手段19、ひいてはスリーブ8のアコーディオン状の運動により、隣接したスリーブの間にはギャップが開くので、爪12は、よりわずかな力負荷時にも容易にはずんで入り込む。
【0053】
分離手段19のさらなる運動時には、それぞれの爪12の支承端部側に位置するスリーブ8が、いまギャップ内に位置する爪12に対して押しつけられる。分離手段19とスリーブ8との間には摩擦が作用するので、いま分離手段19はこの分離手段19の運動が終了するまでスリーブ8の下方を滑る。次いで位置決め装置23は再び戻し走行され、アクチュエータ21は出発位置へ運動せしめられる。図8ではそれぞれのスリーブ8に可動な分離手段19が対応配置されている。しかしながら、支承端部7.3に対応配置されたスリーブ8を運動させないことも可能である。なぜならば、最初のスリーブは既にストッパ10により十分に良好に位置決めされているからである。この場合には、支承端部7.3に対応配置された分離手段19及びばね20は必要ない。
【0054】
図9は、位置決め装置23に結合された巻取り機を示している。この巻取り機の機能は既に図1につき説明したので、ここでは詳細についてだけ言及する。既に記載のように、スリーブ8を有する緊締チャック7は停止位置に位置している。ボビン5の増大に伴い、回転プレート6は連続的に、又は時間間隔をおいてさらに回動せしめられる。旋回アームの形の運動手段22が位置決め装置23に結合されている。この旋回アーム22は巻取り機1のハウジング3に回動可能に結合されており、これにより、位置決め装置23を静止位置22.1並びに作業位置22.2へもたらすことができるようになっている。さらに運動手段22により、緊締チャック7の、回転プレート6によりもたらされた運動の作業位置22.2を追跡することが可能である。
【0055】
図10には、位置決め装置を有するドッフィング装置が示されている。このドッフィング装置13はボビンヘッドに向かって走行可能であり、プッシャ13.1によりスリーブ8を巻取り機1の緊締チャック7へ押し込む。同時にドッフィング装置13は片持ち梁13.2を有しており、この片持ち梁13.2には位置決め装置23が設けられている。この構成の利点は、複数のボビンヘッドのために1つのみの共通の位置決め装置23が必要なこることである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】巻取り機で本発明による方法を実施するための位置決め装置の1実施例を示す概略図である。
【図2】図2.1、図2.2及び図2.3は、本発明による方法を実施する場合の図1による位置決め装置の運動プロセスを示す図である。
【図3】スリーブエッジの択一肢を示す詳細図である。
【図4】爪及びスリーブエッジの択一肢を示す詳細図である。
【図5】位置決め装置の別の変化実施例を示す概略図である。
【図6】位置決め装置の別の変化実施例を示す概略図である。
【図7】分離装置の詳細図である。
【図8】位置決め装置の有利な変化実施例を示す概略図である。
【図9】位置決め装置を有する本発明による巻取り機を示す概略図である。
【図10】位置決め装置を備えたドッフィング装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 巻取り機、 2 糸、 3 ハウジング、 3.1 綾振装置、 4 緊締チャック、 5 ボビン、 5.1 スリーブ、 6 回転プレート、 7 緊締チャック、 7.1 緊締手段、 7.2 突出端部、 7.3 支承端部、 8 スリーブ、 9 捕捉手段、 8.2 段部、 8.3 面取り部、 8.4 エッジ、 9 糸ガイド、 10 ストッパ、 11 案内手段、 12 爪、 12.1 ばね、 12.2 エッジ、 13 ドッフィング装置、 13.1 プッシャ、 13.2 片持ち梁、 13.3 保持体、 14 スライダ、 14.1 保持体、 14.2 ジャーナル、 14.3 カム、 14.4 軌道、 14.5 アクチュエータ、 14.6 センサ、 14.7 マーク、 15 支持体、 16 案内装置、 17 終端位置のためのストッパ、 18 始端位置のためのストッパ、 19 分離手段、 20 ばね、 21 アクチュエータ、 22 フラップ、 22.1 停止位置、 22.2 作業位置、 23 位置決め装置、 24 分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸(2)を巻き上げるための巻取り機(1)の複数のスリーブを位置決めする方法であって、巻取り機(1)が、突出端部(7.2)で突出した、支承縁部(7.3)で回転可能に支承された、スリーブ(8)を支持するための緊締チャック(7)を有しており、前記スリーブ(8)が、個別に、又は集合的に該前記緊締チャック(7)に沿って突出端部(7.2)から支承端部(7.3)へ押し込まれるようになっている形式のものにおいて、緊締チャック(7)でスリーブ(8)を個別化し、位置決めし、スリーブ(8)の個別化及び位置決めを、同時に複数のスリーブのために行うか、又は個別のスリーブのために順次に行うことを特徴とする、糸(2)を巻き上げるための巻取り機(1)の複数のスリーブを位置決めする方法。
【請求項2】
押込み時に、スリーブ(8)を、緊締チャック(7)の支承端部(7.3)に設けられたストッパ(10)まで摺動する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
スリーブ(8)の個別化及び位置決めを、いずれか1つのスリーブ(8)に対して平行に支承端部(7.3)から突出端部(7.2)の方向に行い、爪(12)を、まず該爪(12)のエッジ(12.2)がスリーブ(8)のエッジ(8.4)に接触するまでの間運動せしめ、スリーブ(8)を形状接続的(formschluessig)に終端位置まで連行する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
運動の間に、ばね弾性的に爪(12)をスリーブ(8)に対して押しつける、請求項3記載の方法。
【請求項5】
スリーブ(8)を個別化し、位置決めするために、まず隣接した2つのスリーブ(8)を互いに引き離し、スリーブとスリーブとの間に形成されたギャップ内に前記爪(12)を挿入し、いずれか1つのスリーブ(8)のスリーブエッジ(8.4)を爪(12)に対して摺動する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法を実施するための、巻取り機(1)のための位置決め装置であって、巻取り機(1)が、突出端部(7.2)で突出した、支承端部(7.3)で回動可能に支承された、スリーブ(8)を支持するための緊締チャック(7)を有しており、スリーブ(8)が、個別に、又は集合的に緊締チャック(7)に、突出端部(7.2)から支承端部(7.3)へ押し込まれるようになっている形式のものにおいて、スリーブ(8)を個別化及び位置決めするための案内手段(11)が、緊締チャック(7)に設けられており、案内手段(11)が、スリーブ(8)の個別化及び位置決めを、多数のスリーブのために同時に、又は個別のスリーブのために順次に可能にすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法を実施するための、巻取り機(1)のための位置決め装置。
【請求項7】
案内手段(11)が、支持体(15)で保持されており、該支持体(15)が、巻取り機(1)の緊締チャック(7)に隣接して側方に配置されている、請求項6記載の位置決め装置。
【請求項8】
案内手段(11)が爪(12)を有しており、該爪(12)が、送り運動時に始端位置から終端位置まで緊締チャック(7)に対して平行に突出端部(7.2)の方向に可動になっており、第2のロック運動時に、緊締チャック(7)の軸線に対して垂直方向に可動になっており、前記爪(12)がエッジ(12.2)を有しており、該エッジ(12.2)が、スリーブ(8)のエッジ(8.4)に対応しており、送り運動が次のように、すなわち、爪(12)のエッジ(12.2)が、始端位置から終端位置への距離でスリーブ(8)のエッジ(8.4)に接触し、前記スリーブ(8)を連行し、爪(12)の終端位置が、スリーブ(8)の規定位置と一致しているようになっている、請求項6又は7記載の位置決め装置。
【請求項9】
スリーブ(8)毎に、1つの爪(12)が設けられている、請求項8記載の位置決め装置。
【請求項10】
全てのスリーブ(8)のために、1つの共通の爪(12)が設けられており、該爪(12)がスリーブ毎に送り運動を有しており、スリーブに割り当てられた送り運動の終了位置に、隣接したスリーブに割り当てられた送り運動の開始点が続いている、請求項6又は7記載の位置決め装置。
【請求項11】
終了位置がストッパにより規定されており、該ストッパに爪(12)が対応している、請求項8から10までのいずれか1項記載の位置決め装置。
【請求項12】
終了位置が、センサ(14.6)により検出され、該センサ(14.6)が、爪の位置又は運動せしめられたスリーブの位置を検出する、請求項8から10までのいずれか1項記載の位置決め装置。
【請求項13】
案内手段(11)が、分離装置(24)を有しており、該分離装置(24)が、スリーブを、分離手段(19)の弾性的な力作用により、緊締チャック(7)に沿って摺動する、請求項6から12までのいずれか1項記載の位置決め装置。
【請求項14】
複数の爪(12)が設けられており、該爪(12)が、緊締チャック(7)の軸線の方向に配列されており、前記爪(12)が、エッジ(12.2)を有しており、該エッジ(12.2)が、スリーブ(8)のそれぞれ1つのエッジ(8.4)に対応しており、スリーブ(8)の規定位置を次の形で規定する、すなわち、スリーブ(8)が、規定位置で緊締チャック(7)の突出端部(7.2)の方向の運動から遮断されるようになっており、1つ又は複数の弾性的に作用する分離手段(19)が提供されており、該分離手段(19)が、スリーブ(8)を、緊締チャック(7)の軸線に対して平行に、かつ突出端部(7.2)の方向に運動せしめる、請求項13記載の位置決め装置。
【請求項15】
分離手段(19)が、突出端部(7.2)の方向に可動な、スリーブ(8)に載置されたブラシである、請求項13又は14記載の位置決め装置。
【請求項16】
分離手段(19)が、スリーブ(8)に載置可能な摩擦面を有する、突出端部(7.2)の方向に可動な部分である、請求項13又は14記載の位置決め装置。
【請求項17】
複数の分離手段(19)が、それぞれ1つのスリーブ(8)のために使用されており、該スリーブ(8)を分離するための分離手段(19)が、突出端部(7.2)の方向に運動せしめられるようになっており、調整手段(20)が提供されており、該調整手段(20)が、個別の分離手段(19)の互いの運動を次のように調整する、すなわち、運動の間に進んだ距離が、支承端部(7.3)から見て分離手段から分離手段(19)へ増大するように調整する、請求項14から16までのいずれか1項記載の位置決め装置。
【請求項18】
調整手段(20)が、ばねから成っており、該ばねが、隣接した2つの分離手段(19)の間にそれぞれ緊締されており、アクチュエータ(21)が、突出端部(7.2)に配置された最後の分離手段(19)を運動せしめる、請求項17記載の位置決め装置。
【請求項19】
案内手段(11)が、複数の空のスリーブ(8)に糸を巻き上げるための巻取り機(1)の装着を行うためのドッフィング装置(13)で保持されている、請求項6から18までのいずれか1項記載のの位置決め装置。
【請求項20】
複数の空のスリーブに糸(2)を巻き上げるための巻取り機(1)であって、該巻取り機(1)が、突出端部(7.2)で突出した、支承端部(7.2)で回転可能に支承された、スリーブ(8)を支持するための緊締チャック(7)を有しており、スリーブ(8)が、個別に、又は集合的に、緊締チャック(8)に沿って突出端部(7.2)から支承端部(7.3)へ押込み可能になっている形式のもにおいて、請求項6から18までのいずれか1項記載の位置決め装置(23)が設けられており、該位置決め装置(23)が、停止位置(22.1)と作業位置(22.2)との間で切換可能であることを特徴とする、複数の空のスリーブ(8)に糸(2)を巻き上げるための巻取り機(1)。
【請求項21】
緊締チャック(7)が不動ではなく、位置決め装置(24)が、運動手段(22)を有しており、これにより、位置決め装置の作業位置(22.2)が、緊締チャック(7)の場所に適合される、請求項20記載の巻取り機(1)。

【図1】
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【図2.1】
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【図2.2】
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【図2.3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−504070(P2007−504070A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525718(P2006−525718)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009827
【国際公開番号】WO2005/023694
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】