説明

巻尺のベルトクリップ

【課題】ベルトクリップによる携帯が難しい作業者のベルトに巻尺を係着する場合に、ベルトに設けた茄子環やDフックに巻尺をコンパクトに掛けることができる巻尺のベルトクリップを提供する。
【解決手段】ベルトクリップを、巻尺のケース1に固定するベース体2と、このベース体2に支持されて少なくともケース1との間に作業者のベルトが入る空間を形成するクリップ形態と外部のフック部材に係着する係着具形態に変化できる可動クリップ体3から構成して、可動クリップ体3を、初期位置のクリップ形態にしているときにはベース体2と係合させ、この係合を解除することによって係着具形態に変化させることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻尺を作業者のベルトに係着する際に用いる巻尺のベルトクリップに関し、より詳しくは、ベルトクリップを外部のフックに掛け易い形状に変化することができ巻尺のベルトクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻尺のベルトクリップは、図8に示すように、ヘアピン状に折曲形成したプレート体13のプレート間に作業者が装着するベルト14を挿嵌できるようになっていて、例えば、測定作業中に巻尺を一時保持する時や移動のため携帯する際にはプレート体13をベルト14に係着できる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、最近では作業者が装着するベルトに係着できるように構成された工具が格段に増えたため、ベルトもこれに対応すべく多くの工具を携帯できるよう同ベルトに茄子環やDフック等の吊り下げ具を多数並設して、ベルトに多くの工具を掛けて携帯できるようにしている。
【0004】
このため、巻尺をベルトクリップによって係着するスペースがベルトになくなり、止むを得ず、巻尺に有する手首に掛けて用いる手下げ用ストラップ(例えば、特許文献2参照)を同ベルトの茄子環やDフックに掛けて携帯する場合がある。
【0005】
しかしながら、手下げ用ストラップを茄子環やDフックに掛けて巻尺を携帯した場合、巻尺が作業者の太もも付近まで垂れ下がってしまうため、歩行の際や腰を落とした低い姿勢で行う作業の際に同巻尺が非常に邪魔になっていて、これにより、作業に集中できない恐れや、2次災害が生じる恐れがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3138286号公報(第1〜5頁、図1〜3)
【特許文献2】特開2001−174201号公報(第1〜4頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的とするところは、巻尺のベルトクリップに、ベルトクリップ本来の機能と、安全に外部のフック部材に係着できるフック係着機能を持たせて、ベルトクリップによる携帯が難しい作業者のベルトに巻尺を係着する場合に、このベルトに設けた茄子環やDフックに巻尺をコンパクトに掛けることができる巻尺のベルトクリップを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る巻尺のベルトクリップは、巻尺のケースに取り付けられ、作業者のベルトに係着するためのベルトクリップにおいて、ベルトクリップが、ケースに固定するベース体と、このベース体に支持され少なくともケースとの間に前記ベルトが入る空間を形成するクリップ形態と外部のフック部材に係着する係着具形態に変化できる可動クリップ体からなり、かつ可動クリップ体は、初期位置のクリップ形態にしているときにはベース体と係合していて、この係合を解除することによって係着具形態に変化させることができるように構成したものとしてある。
【0009】
また、前記可動クリップ体は弾性を有していて、この弾性によりクリップ形態にしている可動クリップ体のベース体に係合している部位が、係合部内の適正位置に維持されるように構成したものとしてある。
【0010】
また、前記可動クリップ体が係着具形態に変化した後、この係着具形態を維持できるように構成したものとしてある。
【0011】
また、前記ベース体と可動クリップ体のうち少なくとも可動クリップ体は弾性を有していて、この弾性により可動クリップ体の先端とケース面との間が外力によって離間可能であり、かつ弾性復元力によって初期位置に復帰できるように構成したものとしてある。
【0012】
また、前記可動クリップ体が、平面視において略U字状に形成した線状体からなり、かつ線状体の両遊端部における直交方向にはベース体に支持される回転軸がケース面とほぼ平行に接続され、この回転軸を中心に線状体をケース面の垂直方向に回動できるように構成したものとしてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の巻尺のベルトクリップによれば、同ベルトクリップの可動クリップ体を、巻尺の携帯者たる作業者のベルトに係着するためのクリップ形態と、外部のフック部材に係着できる係着具形態に、必要に応じて簡単に変化させることができる。
【0014】
これにより、ベルトクリップによる係着が難しい茄子環やDフックを設けた作業者のベルトに巻尺を係着する場合は、クリップ形態にしているベルトクリップの可動クリップ体を係着具形態に変化させることにより同可動クリップ体がベルトの茄子環やDフックに掛けるに適した形状になり、この係着具形態に変化した可動クリップ体をベルトの茄子環やDフックに掛けることによって巻尺をベルトクリップによる係着ができない作業者のベルトに携帯することができ、かつしっかりと携帯できるので、この携帯する巻尺が落下する恐れもゼロに等しく安全に携帯できる。
【0015】
また、ベルトの茄子環やDフックに掛けた巻尺は必要以上に垂れ下がらないのでコンパクトに吊り下げておくことができ、したがって歩行の際や腰を落とした低い姿勢で行う作業の際にも同巻尺が大きく揺動したり床面上を引きずることもまずなく、作業に集中することができる。
【0016】
そして、ベルトクリップにおける可動クリップ体を安価で成形し易い弾性を有する金属の線状体で形成すれば、ベルトクリップの製造に掛かる材料費や成形費を抑制できて、形状が変化しない一般的なベルトクリップの製造費と比しても極僅かな上昇に留められるので、巻尺の市販価格を改定することもなく、従来と同じ価格でより便利で安全な巻尺を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るベルトクリップを設けた巻尺を示す斜視図。
【図2】ベルトクリップの可動クリップ体を変化させた状態を示す斜視図。
【図3】図1における可動クリップ体の変化過程を示した図。
【図4】係着具形態の可動クリップ体を固定できるベルトクリップを示す図。
【図5】本発明に係るベルトクリップの一例を示す図。
【図6】ベルトクリップの使用状態を示す図。
【図7】ベルトクリップの使用状態を示す図。
【図8】従来のベルトクリップを設けている巻尺を示す斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るベルトクリップを、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本発明のベルトクリップは、図1に示すように、巻尺のケース1に固定されるベース体2と、ベース体2に対して回動できるように設けた可動クリップ体3からなっている。
【0020】
ベース体2は、例えば金属加工品や樹脂成型品等からなっていて、ケース1上に同ケース1を固定するための雄ねじ4によって固定している。
【0021】
可動クリップ体3は、例えば弾性を有する金属や樹脂等の線状体からなっていて、図1に示した初期位置にあってクリップ形態になっているとき、可動クリップ体3のアーム部3aがベース体2の係合部たる凹所5、5に係合している。
【0022】
そして、ベース体2の凹所5、5に係合している可動クリップ体3のアーム部3aは、可動クリップ体3に有する弾性により凹所5、5内の適正位置に維持されるようにしている。
【0023】
また、可動クリップ体3は、回転軸7、7がベース体2の軸受6、6に支持されていて、この回転軸7、7を中心にアーム部3aをケース1面の垂直方向に回動することにより、図2に示すように、可動クリップ体3を図1のクリップ形態の状態からほぼ180度回動した係着具形態に変化できるようにしている。
【0024】
そして、可動クリップ体3は、クリップ形態にしている時、可動クリップ体3とケース1面との間に巻尺の携帯者たる作業者のベルト8(図6を参照)を入れることのできる空間たるベルト挿通部9(図6を参照)を形成できるようにしている。
【0025】
さらに、可動クリップ体3は、作業者のベルト8(図6を参照)を同可動クリップ体3の先端10側より挿通部9(図6を参照)に入れることができるよう素材の性質による弾性によって可動クリップ体3の先端10とケース1面との間が外力によって離間できて、また弾性復元力によって初期位置に復帰できるようにしている。
【0026】
以下、上述のように構成した本発明に係る巻尺のベルトクリップの作用について説明する。
【0027】
図3にて、可動クリップ体3が初期位置にあって図1に示したクリップ形態になっている状態から、図2に示した外部のフック部材に係着できる係着具形態に変化させる場合を説明する。
【0028】
先ず、図3中の(a)に示すように、ベース体2の凹所5、5に係合している可動クリップ体3のアーム部3aにおける凹所5、5に係合している部位の近傍を、同外方よりアーム部3aの凹所5、5内への弾性復元力に抗して図中の矢印A、A方向に押し込んで、可動クリップ体3のアーム部3aとベース体2の凹所5、5との係合を解除する。
【0029】
次いで、図3中の(b)に示すように、ベース体2の凹所5、5との係合を解除した可動クリップ体3のアーム部3aを図中の矢印B方向に引き起こし、図3中の(a)のクリップ形態になっている状態からほぼ180度回動させる。
【0030】
そうすると、図3中の(c)に示すように、ベルトクリップの可動クリップ体3を外部のフック部材への係着に適する係着具形態に変化できて、図7に示すように、この変化した可動クリップ体3を作業者のベルト8のフック部材11に係着すれば、巻尺を安全にかつ邪魔なく携帯することができる。
【0031】
また、図4に示すように、ベース体2に凹所12、12を設けて、可動クリップ体3のアーム部3aを図1に示したクリップ形態になっている状態からほぼ180度回動して図2に示した外部のフック部材に係着できる係着具形態に変化させた際にアーム部3aが凹所12、12に係合して、係着具形態を維持できるようにする場合がある。
【0032】
また、図5に示すように、可動クリップ体3の回転軸7、7におけるそれぞれの端面が対向するようにベース体2の軸受6、6にて支持する場合もある。
【0033】
また、可動クリップ体3は、本実施例に示すような平面形状が略U字状のものの他にも、平面視において略V字状のものや、図8に示した従来のベルトクリップにおけるプレート体13と同じように、薄いプレート状にする場合がある。
【0034】
また、可動クリップ体3の回転軸7、7における遊端部がそれぞれ外方を向いてベース体2の軸受6、6にて支持しているもの(図1)は、少なくとも回転軸7、7の両遊端部をカバーして、作業者の衣服等が引っ掛からないようにする場合がある。
【0035】
また、外部のフック部材に係着できる係着形態に変化させた可動クリップ体3を初期位置に戻してクリップの形態にしたとき、可動クリップ体3のアーム部3aがベース体2の凹所5、5における所定の抜け止め部(図示は省略)を自動的に超えてこの凹所5、5内に案内されるようにする場合がある。
【0036】
また、実施例では可動クリップ体3とベース体2との係合部を凹所5、5としているが、ベース体2に設ける係合爪や切り欠き部等を可動クリップ体3との係合部にする場合がある。
【0037】
また、ベース体2は基本的には不可動であるが、作業者のベルト8(図6を参照)を可動クリップ体3の先端10側より挿通部9(図6を参照)に入れる場合など、ベース体2における例えば可動クリップ体3の回転軸7、7を支持するための軸受6、6もしくはこの近傍部分を可動クリップ片3と協動させる場合がある。
【符号の説明】
【0038】
1 ケース
2 ベース体
3 可動クリップ体
3a アーム部
4 雄ねじ
5 凹所
6 軸受
7 回転軸
8 ベルト
9 ベルト挿通部
10 先端
11 フック部材
12 凹所
13 プレート体
14 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻尺のケースに取り付けられ、作業者のベルトに係着するためのベルトクリップにおいて、ベルトクリップが、ケースに固定するベース体と、このベース体に支持され少なくともケースとの間に前記ベルトが入る空間を形成するクリップ形態と外部のフック部材に係着する係着具形態に変化できる可動クリップ体からなり、かつ可動クリップ体は、初期位置のクリップ形態にしているときにはベース体と係合していて、この係合を解除することによって係着具形態に変化させることができるように構成してなる巻尺のベルトクリップ。
【請求項2】
前記可動クリップ体は弾性を有していて、この弾性によりクリップ形態にしている可動クリップ体のベース体に係合している部位が、係合部内の適正位置に維持されるように構成してなる請求項1に記載の巻尺のベルトクリップ。
【請求項3】
前記可動クリップ体が係着具形態に変化した後、この係着具形態を維持できるように構成してなる請求項1に記載の巻尺のベルトクリップ。
【請求項4】
前記ベース体と可動クリップ体のうち少なくとも可動クリップ体は弾性を有していて、この弾性により可動クリップ体の先端とケース面との間が外力によって離間可能であり、かつ弾性復元力によって初期位置に復帰できるように構成してなる請求項1に記載の巻尺のベルトクリップ。
【請求項5】
前記可動クリップ体が、平面視において略U字状に形成した線状体からなり、かつ線状体の両遊端部における直交方向にはベース体に支持される回転軸がケース面とほぼ平行に接続され、この回転軸を中心に線状体をケース面の垂直方向に回動できるように構成してなる請求項1に記載の巻尺のベルトクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42303(P2012−42303A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182913(P2010−182913)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000165882)原度器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】