説明

巻尺

【課題】計測物に配置した巻尺から離間した状態であっても、計測者が計測対象物を計測しやすいと共に、巻尺を使用する方向の如何に拘わらず計測者が計測しやすい巻尺を提供する。
【解決手段】巻尺本体11の幅方向端縁部において、最小単位の計測寸法に亘って形成されると共に最小単位の計測寸法を置いて形成された複数の面状目盛15、16と、巻尺本体11の長さ方向に対して斜めに配置された目盛数値13とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻尺の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等において様々な種類の巻尺が使用されている。一般に、巻尺には最小計測単位毎に配置された線状の目盛が配置されると共に、巻尺本体の幅方向に沿って長さ方向に対して直角に配置された目盛数値が表記され、計測対象物を上記線状の目盛に対応する目盛数値により計測する。
【0003】
このような一般の巻尺は、計測者が計測対象物に接近した状態で、上記線状の目盛が明確に視認できる距離の範囲において計測する場合には不都合はない。
しかしながら、計測者が計測対象物から所定距離、離間した状態で、上記のような線状の目盛が形成された巻尺を使用して計測対象物の計測を行う場合には、最小計測単位毎の線状の目盛は非常に細く形成され、かつ、相互に非常に近接した配置であることから、巻尺から離間した位置からは線状の目盛を認識することは困難であり、結果的に計測対象物の計測を行うことが困難な場合がある、という不具合があった。
【0004】
また、このような従来の巻尺を水平方向またはこれに順ずる方向に沿って伸ばして使用する場合には、上記目盛数値は直立した状態となり、計測者は上記目盛数値を容易に認識することができる。
しかしながら、このような従来の巻尺を垂直方向もしくはこれに準ずる立て方向に伸ばして使用する場合には、上記目盛数値は横方向に「寝て」しまい、計測者は目盛数値を非常に読みにくい、という不具合もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、計測者が計測物に配置した巻尺から離間した場合であっても、計測者が計測対象物を計測しやすいと共に、巻尺を使用する方向の如何に拘わらず計測者が計測しやすい巻尺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明にあっては、巻尺本体の幅方向端縁部において、最小単位の計測寸法に亘って形成されると共に最小単位の計測寸法を置いて形成された複数の面状目盛と、巻尺本体の長さ方向に対して斜めに配置された目盛数値とを有していることを特徴とする。
ここで「面状目盛」とは、JIS(日本工業規格)において規定されている「境目盛」であり、定義によれば「一定の長さを交互に異なった色で表し、色の境界を目盛線の中心とみなす目盛」である。また、「線状目盛」とは、同様に「線目盛」であり、「線で表す目盛」である。
従って、請求項1記載の発明にあっては、計測者は上記方形状の面状目盛の端縁部により計測対象物を計測する。
【0007】
請求項2記載の発明にあっては、上記面状目盛は、上記最小の計測寸法を幅寸法とする方形状に形成され、上記方形状の面状目盛の幅方向端縁部により計測対象物を計測することを特徴とする。
従って、請求項2記載の発明にあっては、計測者は、離間した位置からでも上記面状目盛を認識して、上記面状目盛の幅方向端縁部を基準として計測を行う。
【0008】
請求項3記載の発明にあっては、上記最小単位の計測寸法は1mmであって、1mmを幅寸法とする方形状の面状目盛が1mm置きに形成されていると共に、5mm及び各cmを指標する面状目盛は大型に形成されていることを特徴とする。
従って、大まかな計測の基本となる5mm及び各cmは大型に形成されていることから、計測者は、容易に5mm及び各cmを指標する面状目盛を容易に視認することができ計測対象物を計測することができる。
【0009】
請求項4記載の発明にあっては、上記5mm及び各cmに対応する面状目盛は、上記5mm及び各cmを指標する巻尺本体の内方へ突出する先端部を有することを特徴とする。
従って、請求項4記載の発明にあっては、計測者は上記先端部を目印にして5mm及び各cmを把握して計測する。
【0010】
請求項5記載の発明にあっては、上記目盛数値は、cm表記の目盛数値とm表記の目盛数値とからなり、100cm毎に、m表記の数値が記載されていると共に、上記m表記の各目盛数値は、cm表記の目盛数値とは異なる色彩で表記されていることを特徴とする。
【0011】
従って、請求項5記載の発明にあっては、計測者は、100cm毎に記載されているm表記の数値を把握して計測することができる。
【0012】
請求項6記載の発明にあっては、上記面状目盛及び斜めに配置された目盛数値は巻尺本体の一側面側に配置されていると共に、他側面側には最小単位毎に設けられた線状目盛及び長さ方向に対して直角に配置された目盛数値が配設されていることを特徴とする。
【0013】
従って、請求項6記載の発明にあっては、線状目盛及び面状目盛、斜めに配置された目盛数値及び長さ方向に直角に配置された目盛数値の双方を使用して計測することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明にあっては、計測最小単位寸法に亘って形成された面状の目盛が計測最小単位置きに形成されていることから、計測者は、上記面状目盛の端縁部により計測対象物を計測することができる。
従って、従来の一般の巻尺において、計測最小単位毎に表記されている線状目盛は遠方からは視認しにくいが、本発明に係る上記面状の目盛は、線状目盛よりも大型であって、計測者は、面状目盛そのものを離間した位置からでも視認することができることから、巻尺から離間した位置からであっても計測対象物を上記面状目盛を介して一目して容易かつ正確、迅速に計測することができる。
【0015】
また、請求項1記載の発明にあっては、巻尺本体の長さ方向に対して斜めに配置された目盛数値を有していることから、本発明に係る巻尺を水平方向に沿って伸ばして使用した場合であっても、垂直方向に沿って伸ばして使用した場合であっても、目盛数値は斜めに配置されることから、計測者は、垂直方向及び水平方向のいずれの方向においても目盛数値を容易かつ正確、迅速に読み取ることができる。
【0016】
その結果、従来の巻尺のように、目盛数値が巻尺本体の幅方向に沿って直立すると共に長さ方向に対して直角に配置されている場合は、水平方向に沿って巻尺が配置された場合には読みとれるが垂直方向沿って配置された場合にはほとんど読みとれない、という事態を防止することができる。
【0017】
請求項2記載の発明にあっては、計測者は、離間した位置からでも上記面状目盛を視認して、上記面状目盛の幅方向端縁部を基準として計測を行う。
その結果、計測対象物と上記面状目盛の端縁部との位置関係において、計測者は離間した位置からも計測対象物の計測を行うことができる。
【0018】
請求項3記載の発明にあっては、上記最小単位の計測寸法は1mmであって、1mmを幅寸法とする方形状の面状目盛が1mm置きに形成されていると共に、5mm及び各cmを指標する面状目盛は大型に形成されていることから、5mm及び各cmという計測の単位を視認し易く、離れた位置からでも容易に計測対象物を計測することができる。
【0019】
請求項4記載の発明にあっては、上記5mm及び各cmに対応する面状目盛は、上記5mm及び各cmを指標する巻尺本体の内方へ突出する先端部を有することから、請求項3記載の効果に加えて、より5mm及び1cmの位置を視認して把握しやすい。
【0020】
請求項5記載の発明にあっては、上記目盛数値は、cm表記の目盛数値とm表記の目盛数値とからなり、100cm毎に、m表記の数値が記載されていることから、m単位での計測数値を一目して把握することができる。
【0021】
請求項6記載の発明にあっては、上記面状目盛及び斜めに配置された目盛数値は巻尺本体の一側面側に配置されていると共に、他側面側には最小単位毎に設けられた線状目盛及び長さ方向に対して直角に配置された目盛数値が配設されていることから、線状目盛及び面状目盛、斜めに配置された目盛数値及び長さ方向に直角に配置された目盛数値の双方を使用して計測することができ、その結果、離間した位置及び近接した位置から計測することもできる。
従って、計測対象物との距離、及びその他、具体的な状況に応じて使い分けることができる巻尺を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本考案に係る巻尺の一実施の形態を示し、巻尺の一側面を示す平面図である。
【図2】本考案に係る巻尺の一実施の形態を示し、巻尺の他側面を示す平面図である。
【図3】本考案に係る巻尺の一実施の形態を示し、巻尺の一側面を一部拡大して示す平面図である。
【図4】本考案に係る巻尺の他の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る巻尺10は、巻尺本体11の一側面部Aの幅方向端縁部において、最小単位の計測寸法(1mm)に亘って形成されると共に最小単位の計測寸法を置いて形成された複数の面状目盛12と、巻尺本体11の長さ方向に対して斜めに配置された目盛数値13とを有している。
【0024】
また、本実施の形態にあっては、図2に示すように、巻尺本体11の他側面部Bには、計測単位毎に設けられた一般的な線状目盛19及び幅方向に沿って記載された目盛数値20が配置されている。本実施の形態にあっては、白地の巻尺本体11上に黒色印刷により面状目盛12及目盛数値13が印刷されている。
【0025】
図1及び図3に示すように、上記面状目盛12は、上記最小の計測寸法である1mmを幅寸法とした略正方形状に形成され、上記正方形状の面状目盛12の幅方向端縁部14、14を基準として計測対象物を計測するように構成されている。
【0026】
本実施の形態にあっては、1mmを幅寸法とする方形状の面状目盛12が1mm置きに形成されていると共に、5mmを指標する面状目盛15及び各cmを指標する面状目盛16は大型に形成されている。
【0027】
図3に示すように、上記5mm及び各cmに対応する面状目盛15、16は、巻尺本体11の内方へ突出する先端部を有している。即ち、5mmに対応する面状目盛15にあっては、巻尺本体11の内方へ突出する三角状先端部15aが形成されると共に、各cmに対応する面状目盛16にあっては、同様に巻尺本体11の内方へ突出する、面状目盛16本体部16bよりも幅広に形成された三角状先端部16aを有している。
【0028】
また、図1及び図3に示すように、本実施の形態にあっては、cm単位を指標する面状目盛16に対応して設けられた各目盛数値13は、巻尺本体11の長さ方向に対して45度に近接した角度で配置されている。
上記目盛数値13は、cm表記の目盛数値13aとm表記の目盛数値13bとからなり、100cm毎に、m表記の目盛数値13bが記載されている。なお、本実施の形態にあっては、上記m表記の各目盛数値13bは赤色に形成されると共に、cm表記の目盛数値13aは黒色に形成されている。
【0029】
以下、本実施の形態に係る巻尺10の作用について説明する。
本実施の形態に係る巻尺10を用いて計測対象物である建築物等を計測する場合で、巻尺10を水平方向に沿って配置して建築物の各部位を計測する場合には、計測者は離間した位置からでも、上記面状目盛12を視認することができ、上記面状目盛の幅方向端縁部14、14を基準として建築物の各部位等を容易かつ、正確、迅速に計測することができる。
この場合、上記各目盛数値13は長さ方向に対して45度に近接した角度により形成されていることから、計測者は、容易かつ正確に各目盛数値13を視認することができる。
【0030】
また、本実施の形態に係る巻尺10を用いて計測対象物である建築物等を計測する場合で、巻尺10を垂直方向に沿って配置して建築物の各部位を計測する場合には、上記同様に計測者は離間した位置からでも、上記面状目盛12を視認することができ、上記面状目盛の幅方向端縁部14、14を基準として建築物の各部位を計測することができる。
さらに、この場合、上記各目盛数値13は長さ方向に対して45度に近接した角度により形成されていることから、容易に各目盛数値13を容易かつ迅速に視認することができる。
【0031】
なお、本実施の形態にあっては、白地の巻尺本体11上に黒色印刷により面状目盛12及目盛数値13が印刷されている場合を例に説明したが、上記実施の形態に限定されず、図4に示すように、巻尺本体11において、2cm置き毎に設けられた目盛数値13b、13cを包含するように2cm置きに他の色彩を施した色違い部18を形成してもよい。
【0032】
このように色違い部18を2cm置きに設けた場合には、上記目盛数値13の遠方からの視認性がより高まり、離間した位置から巻尺10により計測対象物を容易かつ迅速に計測することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 巻尺
11 巻尺本体
12 面状目盛
13 目盛数値
14 幅方向端縁部
15 面状目盛
16 面状目盛
17 線状目盛
18 色違い部
19 線状目盛
20 目盛数値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻尺本体の幅方向端縁部において、最小単位の計測寸法に亘って形成されると共に最小単位の計測寸法を置いて形成された複数の面状目盛と、巻尺本体の長さ方向に対して斜めに配置された目盛数値とを有していることを特徴とする巻尺。
【請求項2】
上記面状目盛は、上記最小の計測寸法を幅寸法として方形状に形成され、上記方形状の面状目盛の幅方向端縁部により計測対象物を計測することを特徴とする。
【請求項3】
上記最小単位の計測寸法は1mmであって、1mmを幅寸法とする方形状の面状目盛が1mm置きに形成されていると共に、5mm及び各cmを指標する面状目盛は大型に形成されていることを特徴とする請求項2記載の巻尺。
【請求項4】
上記5mm及び各cmに対応する面状目盛は、巻尺本体の内方へ突出する先端部を有することを特徴とする請求項3記載の巻尺。
【請求項5】
上記目盛数値は、cm表記の目盛数値とm表記の目盛数値とからなり、100cm毎に、m表記の数値が記載されていると共に、上記m表記の各目盛数値は、cm表記の目盛数値とは異なる色彩で表記されていることを特徴とする請求項1記載の巻尺。
【請求項6】
上記面状目盛及び斜めに配置された目盛数値は巻尺本体の一側面側に配置されていると共に、他側面側には最小単位毎に設けられた線状目盛及び長さ方向に対して直角に配置された目盛数値が配設されていることを特徴とする請求項1記載の巻尺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−232314(P2011−232314A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105845(P2010−105845)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000114961)ヤマヨ測定機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】