説明

巻線素子

【課題】本発明は、空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置されたコア部とを備える巻線素子において、振動を低減して騒音を低減し得る巻線素子を提供する。
【解決手段】本発明の巻線素子Daは、コイル1と、コイル1によって生じた磁束を通すコア部2aとを備えた巻線素子Daであって、コイル1は、長尺な導体部材を巻回した空芯コイルであり、コア部2aは、コイル1の外側に配置されるとともに複数の部材、例えば第1および第2コア部材21a、22aによって構成され、これら第1および第2コア部材21a、22aにおける当接面2sfaは、コイル1の軸方向に対して斜交または直交している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な導体を巻き回した巻線素子に関し、特に、磁束を通すコア部を備える巻線素子に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺な導体を巻き回した巻線素子には、回路にリアクタンスを導入することを目的としたリアクトル(コイル)や、電磁誘導を利用することによって複数の巻線(コイル)間でエネルギーの伝達を行うトランス(変成器、変圧器)等が知られている。このリアクトルは、例えば、力率改善回路における高調波電流の防止、電流型インバータやチョッパ制御における電流脈動の平滑化およびコンバータにおける直流電圧の昇圧等の様々な電気回路や電子回路等に用いられている。また、トランスは、電圧変換やインピーダンス整合や電流検出等を行うために、様々な電気回路や電子回路等に用いられている。このようなリアクトルやトランスにおいて、リアクトルでは、コイルで生じる磁束を環流するために、磁束を通すコア部が備えられ、また、トランスでは、外部への磁束漏洩を無くして一方のコイル(1次コイル)から他方のコイル(2次コイル)への効率的な磁気結合を行う磁気回路を形成するために、磁束を通すコア部(鉄心、ヨーク)が備えられている。
【0003】
このような巻線素子では、そのインダクタンスを調整するために、コア部には、ギャップが形成されることがある。このギャップは、エアギャップまたは非磁性材料のギャップ材を挟んだものとされる。このような巻線素子は、コイルを励磁すると、コア部には電磁力が作用し、このために振動が生じてしまう。特に、前記ギャップに振動が生じる。
【0004】
そこで、この振動対策を施したリアクトルとして、例えば、特許文献1に開示のリアクトルがある。図19は、特許文献1に開示のリアクトルの構成を示す図である。図19(A)は、外観構成図であり、図19(B)は、縦断面図であり、そして、図19(C)は、分解斜視図である。この特許文献1に開示のリアクトル1000は、図19において、コア部1010と、コイル1020とを備えて構成され、コア部1010は、円柱状の内側コア1011と、中空円筒状の外側コア1012と、上下一対の円板状の連結コア1013(1013U、1013L)とを備えて構成され、コイル1020は、巻線1021を備えて構成されている。巻線1021は、内側コア1011に巻き回され、これが外側コア1012の内側にはめ込まれる。そして、内側コア1011および外側コア1012の上面および下面には、上下一対の連結コア1013U、1013Lがそれぞれ接合される。巻線1021の両端部は、外側コア1012に形成された切欠1121から引き出される。そして、コア部1010が比透磁率5〜50の材料で実質的に構成される。このような構成のリアクトルは、ギャップを無くしたギャップレスのコア部1010を備えたいわゆるポット型のリアクトルであり、コア部1010をギャップレスとすることで振動問題を解消するとともに、コア部1010を比透磁率5〜50の材料で構成することで、所望のインダクタンスを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−112935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示のリアクトルでは、コア部をギャップレスとすることによって振動問題を解消しているが、コイル1020が、内側コア1011を除いた空芯コイル(そのインダクタンスを調整するために、前記空芯コイルの軸芯部内へ延びる凸部が連結コア1013U、1013Lの内面にあってもよい)とされた場合には、前記空芯コイルに交流電力が供給されると、コイルによって生じる電磁力がその周波数で変動し、連結コア1013U、1013Lが振動してしまう。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置されたコア部とを備える巻線素子において、振動を低減して騒音を低減することができる巻線素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる巻線素子は、1または複数のコイルと、前記コイルによって生じた磁束を通すコア部とを備えた巻線素子であって、前記コイルは、長尺な導体部材を巻回した空芯コイルであり、前記コア部は、前記コイルの外側に配置されるとともに複数の部材によって構成され、前記複数の部材における当接面は、前記コイルの軸方向に対して斜交または直交していることを特徴とする。そして、好ましくは、前記コイルは、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が該コイルの軸方向に沿うように巻回することによって構成される。
【0009】
このような構成の巻線素子では、コア部は、複数の部材によって構成され、これら複数の部材における当接面は、コイルの軸方向に対して斜交または直交している。ここで、コイルによって生じる磁力は、主に、コイルの軸方向に沿って生じる。したがって、このようなコイルの軸方向に沿って生じる磁力に対し、前記複数の部材における当接面は、コイルの軸方向に対して斜交または直交しているので、前記複数の部材における当接面同士が突き当たることによって前記複数の部材は、しっかりと当接され、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。このため、前記複数の部材における当接面は、コイルの軸方向に対して斜交していてもよいが、直交している方が効果的であって好ましい。
【0010】
また、他の一態様では、上述の巻線素子において、前記コイルの輪郭形状は、円筒形状であり、前記コア部は、前記コイルを内包するための円筒形状の空間を有するとともに、前記コア部の輪郭形状は、多角柱形状であることを特徴とする。
【0011】
このような構成の巻線素子では、コア部は、コア部の輪郭形状が円柱形状である場合に較べて肉厚な部分を有している。このため、このような構成の巻線素子は、コア部の剛性がより向上し、コア部の輪郭形状が円柱形状である場合に較べてその固有振動数を高周波側にシフトすることができる。
【0012】
また、他の一態様では、これら上述の巻線素子において、前記コイルの軸芯内部に少なくとも配置されるとともに、前記コイルの軸芯における両端部に対向する前記コア部の両部分を少なくとも連結する連結部材をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成の巻線素子は、連結部材をさらに備えるので、コイルの軸芯における両端部に対向するコア部の両部分の振動を抑えることができ、また、コア部の剛性がより向上するので、前記連結部材を備えない場合に較べてその固有振動数を高周波側にシフトすることができる。
【0014】
また、他の一態様では、上述の巻線素子において、前記当接面および前記コア部と前記連結部材との連結面のうちの少なくとも一方には、隙間を埋める隙間埋め材をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
このような構成の巻線素子は、当接面および連結面のうちの少なくとも一方に隙間埋め材をさらに備えることによって、前記隙間埋め材を備える当接面や連結面の密着性が向上し、振動をより抑制することが可能となる。
【0016】
また、他の一態様では、これら上述の巻線素子において、前記当接面には、隙間を埋める隙間埋め材をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成の巻線素子は、当接面に隙間埋め材をさらに備えることによって、前記隙間埋め材を備える当接面や連結面の密着性が向上し、振動をより抑制することが可能となる。
【0018】
また、他の一態様では、これら上述の巻線素子において、前記当接面を構成する複数の部材を互いに締結する締結部材をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
このような構成の巻線素子は、締結部材をさらに備えることによって、当接面の密着性が向上し、振動をより抑制することが可能となる。
【0020】
また、他の一態様では、上述の巻線素子において、前記締結部材は、当該巻線素子が取り付けられる被取り付け部材に、当該巻き線素子を固定する固定部材と兼用されていることを特徴とする。
【0021】
このような構成の巻線素子は、前記締結部材が固定部材と兼用されているので、別途に固定部材を用意する必要がなく、コストを低減することが可能となる。
【0022】
また、他の一態様では、これら上述の巻線素子において、前記コア部は、前記コイルの軸芯内部へ延びる凸部を有していることを特徴とする。
【0023】
このような構成の巻線素子では、前記凸部によってコイルの軸芯内部におけるコア部の上部と下部とのギャップ長を調整することができ、そのインダクタンスを調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる巻線素子は、空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置されたコア部とを備える巻線素子において、振動を低減して騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態における巻線素子の構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の巻線素子における当接面の他の構成を示す断面図である。
【図3】空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置された空芯コア部とを備える巻線素子に励起される共振モードを説明するための図である。
【図4】コア部における複数の部材間の当接面がコイルの軸方向に対して平行である比較例の巻線素子の構成を示す縦断面図である。
【図5】第2実施形態における巻線素子の構成を示す縦断面図である。
【図6】第2および第3実施形態の巻線素子のコア部における第1コア部材(第2コア部材)の構造を示す斜視図である。
【図7】第4実施形態における巻線素子の構成を示す縦断面図である。
【図8】第5実施形態における巻線素子の構成を示す縦断面図である。
【図9】第5実施形態の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合を説明するための図(その1)である。
【図10】第5実施形態の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合を説明するための図(その2)である。
【図11】第5実施形態の巻線素子において、締結部材が連結部材と兼用される場合を説明するための図である。
【図12】第6実施形態における巻線素子の構成を示す図である。
【図13】第1実施例および比較例における駆動周波数の変化に対する振動加速度の変化を示す図である。
【図14】コア部の輪郭形状の相違による固有振動数の相違を説明するための図である。
【図15】連結部材の有無および相違による固有振動数の相違を説明するための図である。
【図16】隙間埋め材の有無による固有振動数の相違を説明するための図である。
【図17】締結部材の有無による、温度の変化に対する振動加速度の変化を示す図である。
【図18】図8(B)に示す構造の巻線素子において、その振動分布を示す図である。
【図19】特許文献1に開示のリアクトルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0027】
本実施形態にかかる巻線素子は、1または複数のコイルと、前記コイルによって生じた磁束を通すコア部とを備えた巻線素子であって、前記コイルは、長尺な導体部材を巻回した空芯コイルであり、前記コア部は、前記コイルの外側に配置されるとともに複数の部材によって構成され、前記複数の部材における当接面は、前記コイルの軸方向に対して斜交または直交しているものである。このような巻線素子は、1個のコイルを備えて構成される場合には、例えばリアクトルとして機能し、また、複数のコイルを備えて構成される場合には、例えばトランスとして機能する。
【0028】
ここでは、リアクトルとして機能する巻線素子を例示するが、トランスとして機能する巻線素子も同様に構成することが可能である。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における巻線素子の構成を示す断面図である。図2は、第1実施形態の巻線素子における当接面の他の構成を示す断面図である。
【0030】
図1において、第1実施形態の巻線素子Daは、1個のコイル1と、コイル1に通電した場合にコイル1によって生じた磁束を通すコア部2aとを備えて構成され、例えばリアクトルとして機能するものである。
【0031】
コイル1は、絶縁被覆した長尺の導体部材を所定の回数だけ巻き回したものであり、通電することによって、磁場を発生するものである。コイル1は、例えば断面丸形(○形)や断面矩形(□形)等の絶縁被覆した長尺な導体部材を巻回することによって構成されてもよいが、本実施形態では、コイル1は、絶縁被覆した帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向がコイル1の軸AX方向に沿うように巻回することによって構成される。帯状とは、導体部材の厚さ(径方向の長さ)tよりも幅(軸方向の長さ)Wの方が大きい場合をいい、すなわち、幅Wと厚さtとの間に、W>t(W/t>1)の関係が成り立つ。このように本実施形態のコイル1は、いわゆるフラットワイズ巻線構造である。
【0032】
コア部2aは、コイル1に通電した場合にコイル1に生じる磁場による磁束を通す部材である。コア部2aは、コイル1の外側に配置される。より具体的には、コア部2aは、本実施形態では、図1に示すように、コイル1を内包するいわゆるポット型である。なお、コア部2aには、コイル1と電気的に接続するためにその端子を引き出す貫通孔や、後述する隙間埋め材をコア部2a内に注入するための貫通孔等の開口部が形成されていてもよく、図1に示すコア部2aは、実質的にコイル1を内包するものである。
【0033】
そして、コア部2aは、複数の部材によって構成されている。図1に示す例では、コア部2aは、2個の第1および第2コア部材21a、22aによって構成されている。第1および第2コア部材21a、22aは、生産性を向上させる観点から、同形である。第1および第2コア部材21a、22aは、コイル1の一方端部を覆う円板形状の円板部分211a、221aと、前記円板部分211a、221aの一方主面における縁周部分から略垂直に延びる円筒部分212a、222aとを備えて構成される。言い換えれば、第1および第2コア部材21a、22aは、コイル1における軸方向約半分の側面を覆うようにコイル1の外周を取り囲む円筒部分212a、222aと、前記円筒部分212a、222aの端面に連結される円板形状の円板部分211a、221aとを備えて構成される。前記コイル1を円筒形状の内部空間に内包させて、これら第1および第2コア部材21a、22aの各円筒部分212a、222aにおける各端面を互いに当接させることによってコア部2aが形成される。このようなコア部2aの軸を含む縦断面は、図1に示すように、ロ字形状である。これら第1および第2コア部材21a、22aの各円筒部分212a、222aにおける各端面を互いに当接させることによって形成される、これら第1および第2コア部材21a、22aにおける当接面2sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交している。図1に示す例では、前記当接面2sfaは、コイル1の軸AX方向に対して直交している。なお、前記直交する場合には、前記当接面2sfは、図1に示すように、前記当接面2sfaに直交する縦断面における前記当接面2sfaの形状が、一方端から他方端までの間において、“−”形状(一本線形状)である当接面2sfaである場合だけでなく、図2に示すように階段形状である当接面2sfbである場合であってもよく、また、前記斜行する場合には、前記当接面2sfにおける斜行方向と直交する縦断面における前記当接面2sfの形状は、一方端から他方端までの間において、“/”形状(斜めの一本線形状)である場合だけでなく、“V”形状や“W”形状等の折り返し形状(互いに異なる複数の斜行方向を持ち前記複数の斜行方向のうちの2つの斜行方向が交差している形状)であってもよく、“−”形状と“/”形状との組合せであってもよい。そして、コイル1に、直流電力や交流電力、例えば、極性の交番しないバイアスのある交流電力(交流電圧の電圧振幅以上の電圧値を有する直流電圧に前記交流電圧が重畳された電力;脈流電力)が給電されると、コイル1によって磁場が発生し、この磁場によってコイル1の軸芯部には、軸AX方向に沿った吸引磁力が生じる。この吸引磁力が当接面2sfに作用するが、コア部材は、当接されているので、吸引磁力に起因する振動を抑制することができる。
【0034】
このようなコア部2a(第1および第2コア部材21a、22a)は、所定の磁気特性を有する材料で構成される。例えば、コア部2aは、磁気的に等方性を有し、巻線素子Daに要求されるインダクタンスに応じた比透磁率を有する材料で構成される。コア部2aは、例えば、公知の常套手段を用いたプレス成形で製造されてもよいが、所望の磁気特性の実現容易性および所望の形状の成形容易性の観点から、例えば、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合物を成形したものであることが好ましい。軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合率比を比較的容易に調整することができ、前記混合比率を適宜に調整することによって、コア部2aの磁気特性を所望の磁気特性に容易に実現することが可能となる。また、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合物であるので、様々な形状に成形することができ、コア部2aの形状を所望の形状に容易に成形することが可能となる。
【0035】
この軟磁性粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属系材料であることが特に好ましい。
【0036】
このようなコア部2aは、例えば、公知の常套手段を用いることによって、軟磁性体粉末としての鉄粉と、非磁性体粉末としての樹脂とを混合して成形、例えば圧粉成形した所定の密度の部材であり、この部材は、一例を挙げれば、例えば、鉄粉の密度が7000kg/mであってヤング率が85GPaである。
【0037】
このような構成の巻線素子Daでは、コア部2aは、複数の部材、上述の例では2個の第1および第2コア部材21a、22aによって構成され、これら第1および第2コア部材21a、22aは、コイル1によって生じる吸引磁力が当接面2sfに作用する。そして、これら第1および第2コア部材21a、22aにおける当接面2sfは、コイル1の軸方向に対して斜交または直交している。ここで、コイル1によって生じる磁力は、主に、コイル1の軸方向に沿って生じる。したがって、このようなコイル1の軸方向に沿って生じる磁力に対し、第1および第2コア部材21a、22aにおける当接面2sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交しているので、第1および第2コア部材21a、22aにおける当接面同士が突き当たることによって、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。このため、第1および第2コア部材21a、22aにおける当接面2sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交していてもよいが、上述したように直交している方が効果的であって好ましい。
【0038】
図3は、空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置された空芯コア部とを備える巻線素子に励起される共振モードを説明するための図である。図3(A)は、1次共振モードにおけるコア部の共振状態の様子を示し、図3(B)は、2次共振モードにおけるコア部の共振状態の様子を示す。図4は、コア部における複数の部材間の当接面がコイルの軸方向に対して平行である比較例の巻線素子の構成を示す縦断面図である。
【0039】
より具体的に説明すると、空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置された空芯コア部とを備える巻線素子では、調査による知見として、図3に示すように、コイルの両端に対向するコア部の各部分における振動変位が面対称であるモードしか共振モードとして発現しない。このため、図4に示すように、コア部における複数の部材間の当接面がコイルの軸方向に対して平行である比較例の巻線素子では、コイルによる軸方向の吸引磁力がコア部に作用すると、前記コイルの軸方向に対して平行な当接面では、前記軸方向の吸引磁力に抗することができない。一方、本実施形態の巻線素子Daでは、上述したように、コア部2aにおける複数の部材間の当接面がコイル1の軸方向に対して斜交または直交しているので、前記軸方向の吸引磁力に抗することができ、その振動を抑制し、騒音を低減することができる。
【0040】
次に、別の実施形態について説明する。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態における巻線素子の構成を示す縦断面図である。第2実施形態の巻線素子Dcは、第1実施形態の巻線素子Da、Dbにおいて、そのインダクタンスを調整するために、空芯コイル1の軸芯部内へ延びる凸部を備えるものである。このため、コイル1は、第1実施形態の巻線素子Da、Dbと同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
第2実施形態の巻線素子Dcは、第1実施形態の他の態様にかかる巻線素子Dbの変形形態として構成することもできるが、ここでは、第1実施形態の巻線素子Daの変形形態として構成した場合について以下に説明する。
【0043】
この第2実施形態の巻線素子Dcにおけるコア部3は、第1実施形態の巻線素子Daにおけるコア部2aと同様に、コイル1に通電した場合にコイル1に生じる磁場による磁束を通す部材であって、コイル1の外側に配置されたいわゆるポット型であり、さらに、複数の部材、図5に示す例では、2個の第1および第2コア部材31、32によって構成されている。これら第1および第2コア部材31、32は、第1実施形態の第1および第2コア部材21a、22aと同様に、同形であって、コイル1の一方端部を覆う円板形状の円板部分311、321と、前記円板部分311、321の一方主面における縁周部分から略垂直に延びる円筒部分312、322とを備えて構成される。前記コイル1を円筒形状の内部空間に内包させて、これら第1および第2コア部材31、32の各円筒部分312、322における各端面を互いに当接させることによって形成される、これら第1および第2コア部材31、32における当接面3sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交している。ここで、コイル1によって生じる磁力は、主に、コイル1の軸方向に沿って生じ、この吸引磁力が当接面3sfに作用する。したがって、このようなコイル1の軸方向に沿って生じる磁力に対し、第1および第2コア部材31、32における当接面2sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交しているので、第1および第2コア部材31、32における当接面同士が突き当たることによって、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。
【0044】
そして、第2実施形態のコア部3では、コイル1の軸芯部に軸AX方向に沿って対向する、前記円板部分311、321における各内面には、コイル1の軸芯内部へ延びる凸部313、323がそれぞれ形成されている。これら凸部313、323は、図5に示す例では、側面が軸AX方向に対して斜行するテーパ面を有する円錐台形状である。
【0045】
このような構成の巻線素子Dcでは、前記凸部313、323によってコイル1の軸芯内部におけるコア部3の上部と下部とのギャップ長を調整することができ、巻線素子Dcのインダクタンスを調整することが可能となる。
【0046】
次に、別の実施形態について説明する。
【0047】
(第3実施形態)
図6は、第2および第3実施形態の巻線素子のコア部における第1コア部材(第2コア部材)の構造を示す斜視図である。図6(A)は、第3実施形態における第1コア部材(第2コア部材)を示し、図6(B)は、第2実施形態における第1コア部材(第2コア部材)を示す。
【0048】
第1および第2実施形態の巻線素子Da、Db、Dcでは、コア部2、3の輪郭形状は、円筒形状の内部空間に合わせてその相似形の円筒形状であったが、第3実施形態の巻線素子Ddは、そのコイル1の輪郭形状が円筒形状であり、そのコア部4が、このコイル1を内包するための円筒形状の空間を有するとともに、コア部4の輪郭形状が、多角柱形状であるものである。このため、コイル1は、第1および第2実施形態の巻線素子Da、Db、Dcと同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
第3実施形態の巻線素子Ddは、第1実施形態の巻線素子Da、Dbの変形形態として構成することもできるが、ここでは、第2実施形態の巻線素子Dcの変形形態として構成した場合について以下に説明する。
【0050】
この第3実施形態の巻線素子Ddにおけるコア部4は、第2実施形態の巻線素子Dcにおけるコア部3と同様に、コイル1に通電した場合にコイル1に生じる磁場による磁束を通す部材であって、コイル1の外側に配置されたいわゆるポット型であり、さらに、複数の部材、図6(A)に示す例では、2個の第1および第2コア部材41、42によって構成されている。これら第1および第2コア部材41、42は、同形であって、コイル1の一方端部を覆う輪郭(外形)四角形状の板部分411、421と、前記板部分411、421の一方主面における縁周部分から略垂直に延びる、断面が外形四角形状であって内形円形状である筒状部分412、422とを備えて構成される。前記コイル1を筒状部分412、422によって形成される円筒形状の内部空間に内包させて、これら第1および第2コア部材41、42の各筒状部分412、422における各端面を互いに当接させることによって形成される、これら第1および第2コア部材41、42における図略の当接面4sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交している。ここで、コイル1によって生じる磁力は、主に、コイル1の軸方向に沿って生じ、この吸引磁力が当接面4sfに作用する。したがって、このようなコイル1の軸方向に沿って生じる磁力に対し、第1および第2コア部材41、42における当接面4sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交しているので、第1および第2コア部材41、42における当接面同士が突き当たることによって、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。そして、第3実施形態のコア部4は、第2実施形態のコア部3と同様に、そのインダクタンスを調整するべく、コイル1の軸芯部に軸AX方向に沿って対向する前記円板部分411、421における各内面に、それぞれ形成されるコイル1の軸芯内部へ延びる凸部413、423を備えている。これら凸部413、423は、図6(A)に示す例では、側面が軸AX方向に対して斜行するテーパ面を有する円錐台形状である。
【0051】
そして、第3実施形態の巻線素子Ddにおけるコア部4では、第1および第2コア部材41、42を互いに当接することによって形成される、コイル1を内包するための空間は、円筒形状であって、その輪郭形状(外形形状)は、例えば三角柱形状、四角柱形状、五角柱形状および六角柱形状等の多角柱形状、図6(A)に示す例では、四角柱形状である。
【0052】
このような構成の巻線素子Ddでは、コア部4は、図6(B)に示す第2実施形態の第1および第2コア部材31、32を互いに当接させることによって形成されるコア部3のように、コア部の輪郭形状が円柱形状である場合に較べて、コイル1の外周に面するコア部4側壁部分における角部分に肉厚な部分を有している。このため、このような構成の巻線素子Ddは、コア部4の剛性がより向上し、コア部の輪郭形状が円柱形状である場合に較べてその固有振動数を高周波側にシフトすることができる。すなわち、コア部4の振動を抑制することが可能となっている。
【0053】
なお、コア部の輪郭形状が異なっても、コア部の側壁部分における最も薄い部分における肉厚が同じであれば、巻線素子Dの電磁気特性は、略同等である。
【0054】
また、第3実施形態の巻線素子Ddにおいて、コア部4における前記角部分には、巻線素子Ddが取り付けられる被取り付け部材(不図示)に、該巻線素子Ddを固定するための固定部材を係合させるための係合部がさらに設けられてもよい。図6(A)に示す例では、固定部材としてのボルトを挿通するための貫通孔414(424)がコア部4の第1および第2コア部材41、42における前記各角部分にそれぞれ設けられている。
【0055】
次に、別の実施形態について説明する。
【0056】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態における巻線素子の構成を示す縦断面図である。図7(A)は、第4実施形態の巻線素子における第1態様の構成を示し、図7(B)は、第4実施形態の巻線素子における第2態様の構成を示す。
【0057】
第4実施形態の巻線素子Deは、第1ないし第3実施形態の巻線素子Da、Db、Dc、Ddにおいて、コイル1の軸芯内部に少なくとも配置されるとともに、コイル1の軸芯における両端部に対向するコア部の両内面部分を少なくとも連結する連結部材をさらに備えるものである。このため、コイル1は、第1および第2実施形態の巻線素子Da、Db、Dcと同様であるので、その説明を省略する。
【0058】
第4実施形態の巻線素子Deは、第1および第2実施形態の巻線素子Da、Db、Dcの変形形態として構成することもできるが、ここでは、第3実施形態の巻線素子Ddの変形形態として構成した場合について以下に説明する。
【0059】
第4実施形態の巻線素子Deにおけるコア部3は、図7(A)および図7(B)に示すように、第3実施形態の巻線素子Ddにおけるコア部3と同様である。そして、第4実施形態の第1態様にかかる巻線素子De1は、図7(A)に示すように、コイル1の軸芯内部の一部分に配置されるとともに、コイル1の軸芯における両端部に対向するコア部3の両内面部分の一部分を連結する連結部材33をさらに備えている。より具体的には、連結部材33は、例えば、コイル1の内径(内直径)よりも小さい径(直径)である中実円柱形状であり、連結部材33の両端面は、第1および第2コア部材31、32における円板部分311、321からコイル1の軸芯部内へ延びる凸部313、323の各面にそれぞれ当接している。このような連結部材33は、例えば、エポキシ系樹脂等の樹脂、アルミナ等のセラミックス、および、ステンレス鋼等の金属等の成型体である。前記樹脂は、比較的剛性の高いものが好ましい。このような連結部材33は、後述するように、リング形状(環形状、ドーナツ形状)であってもよい。あるいは、第4実施形態の第2態様にかかる巻線素子De2は、図7(B)に示すように、第1および第2コア部材31、32を互いに当接することで形成されるコア部3の内部空間であってコイル1を除く空間に充填されている連結部材34をさらに備えている。この連結部材34は、例えばエポキシ系樹脂等の樹脂をコア部3に形成された貫通孔(不図示)からコア部3の前記空間に注入してその後硬化することによって形成される。あるいは、この連結部材34は、第1および第2コア部材31、32を互いに当接する前に予め、第1および第2コア部材31、32における前記当接後に前記空間となる部分に樹脂を流し込んで硬化させ、この後に、第1および第2コア部材31、32を互いに当接することによって形成されてもよい。前記樹脂は、比較的剛性の高いものが好ましい。このように連結部材34を形成することによって、連結部材34は、コイル1の軸芯内部のすべてに配置されるとともに、コイル1の軸芯における両端部に対向するコア部3の両内面部分のすべてを連結する部材となる。
【0060】
このような構成の巻線素子De1、De2は、連結部材33、34をさらに備えるので、コイル1の軸芯における両端部に対向するコア部3の両部分の振動を抑えることができ、また、コア部3の剛性がより向上し、前記連結部材33、34を備えない場合に較べてその固有振動数を高周波側にシフトすることができる。すなわち、コア部4の振動を抑制することが可能となっている。
【0061】
空芯コイルと該空芯コイルの外側に配置された空芯コア部とを備える巻線素子は、図3を用いて説明したような共振モードを備えることから、幅広い次数(多くの次数)の固有振動数を高周波側へシフトするために、コア部3の直径の約1/2における位置で連結部材33が当接することが好ましく、連結部材33は、コア部3の直径の1/2以上の直径を有することが好ましい。
【0062】
なお、このような連結部材33は、コイル1を製作する場合におけるコイル1の巻き芯を兼ねても良い。
【0063】
次に、別の実施形態について説明する。
【0064】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態における巻線素子の構成を示す縦断面図である。図8(A)は、第5実施形態の巻線素子における第1態様の構成を示し、図8(B)は、第5実施形態の巻線素子における第2態様の構成を示す。図9は、第5実施形態の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合を説明するための図(その1)である。図9(A)は、図8(A)に示す第1態様の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合における第1変形態様を示し、図9(B)は、図8(B)に示す第2態様の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合における第2変形態様を示し、図9(C)は、図8(B)に示す第2態様の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合における第3変形態様を示す。図10は、第5実施形態の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合を説明するための図(その2)である。図10(A)は、図8(A)に示す第1態様の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合における第4変形態様を示し、図10(B)は、図8(B)に示す第2態様の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合における第5変形態様を示し、図10(C)は、図8(B)に示す第2態様の巻線素子において、締結部材が固定部材と兼用される場合における第6変形態様を示す。図11は、第5実施形態の巻線素子において、締結部材が連結部材と兼用される場合を説明するための図である。
【0065】
第5実施形態は、上述の第1ないし第4実施形態の巻線素子Da、Db、Dc、Dd、deにおいて、前記当接面2sfa、2sfb、3sf、4sfを構成する複数の部材、上述では、第1および第2コア部材21a、22a;21b、22b;31、32;41、42を互いに締結する締結部材をさらに備えるものである。このため、コイル1は、第1および第2実施形態の巻線素子Da、Db、Dcと同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
第5実施形態の巻線素子Dfは、第1ないし第4実施形態の巻線素子Da、Db、Dc、Dd、Deの変形形態として構成することもできるが、ここでは、第3実施形態の巻線素子Ddの変形形態として構成した場合について以下に説明する。
【0067】
この第5実施形態の巻線素子Df1、Df2におけるコア部4a、4bは、第3実施形態の巻線素子Dcにおけるコア部4と同様に、コイル1に通電した場合にコイル1に生じる磁場による磁束を通す部材であって、コイル1の外側に配置されたいわゆるポット型であり、さらに、複数の部材、図8(A)および図8(B)に示す例では、2個の第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bによって構成されている。これら第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bは、第3実施形態の第1および第2コア部材41、42と同様に、同形であって、コイル1の一方端部を覆う輪郭(外形)四角形状の板部分411a、421a;411b、421bと、前記板部分411a、421a;411b、421bの一方主面における縁周部分から略垂直に延びる、断面が外形四角形状であって内形円形状である筒状部分412a、422a;412b、422bとを備えて構成される。前記コイル1を筒状部分412a、422a;412b、422bによって形成される円筒形状の内部空間に内包させて、これら第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bの各筒状部分412a、422a;412b、422bにおける各端面を互いに当接させることによって形成される、これら第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bにおける当接面4sf1、4sf2は、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交している。ここで、コイル1によって生じる磁力は、主に、コイル1の軸方向に沿って生じ、この吸引磁力が当接面4sf1、4sf2に作用する。したがって、このようなコイル1の軸方向に沿って生じる磁力に対し、第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bにおける当接面4sf1、4sf2は、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交しているので、第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bにおける当接面同士が突き当たることによって、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。そして、第5実施形態のコア部4a、4bは、第3実施形態のコア部4と同様に、そのインダクタンスを調整するべく、コイル1の軸芯部に軸AX方向に沿って対向する前記円板部分411a、421a;411b、421bにおける各内面に、それぞれ形成されるコイル1の軸芯内部へ延びる凸部413a、423a;413b、423bを備えている。これら凸部413a、423a;413b、423bは、図8(A)および図8(B)に示す例では、側面が軸AX方向に対して斜行するテーパ面を有する円錐台形状である。さらに、第5実施形態の巻線素子Df1、Df2は、第4実施形態の巻線素子Deと同様に、コイル1の軸芯内部に少なくとも配置されるとともに、コイル1の軸芯における両端部に対向するコア部4a、4bの両内面部分を少なくとも連結する連結部材43a、43bをさらに備えている。
【0068】
そして、第5実施形態の巻線素子Df1、Df2におけるコア部4a、4bの第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bには、軸AX方向に沿って形成された、締結部材71a、71bを挿通するための貫通孔415a、425a;415b、425bが設けられている。これら貫通孔415a、425a;415b、425bは、コア部4a、4bの第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bの中心位置(軸芯位置)に形成されている。さらに、第2態様の巻線素子Df2では、コア部4bの第1および第2コア部材41b、42bの中心位置に貫通孔415b、425bが設けられるだけでなく、コア部4bの第1および第2コア部材41b、42bの縁周部分にも、軸AX方向に沿って形成された、締結部材72(72−1〜72−4、72−2および72−4は不図示))を挿通するための貫通孔414b(414b−1〜414b−4、424b−1〜424b−4、414b−2および414b−4と424b−2および424b−4は不図示)が設けられている。締結部材71a、71b、72(72−1〜72−4)は、例えば、ボルトおよびナット等である。このような構成の巻線素子Df1、Df2では、第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bを互いに当接させ、前記貫通孔415a、425a;415b、425bに前記締結部材71a、71bのボルトを挿通させ、そして、前記ボルトおよびナットで第1および第2コア部材41a、42a;41b、42bが互いに締め付けられる。さらに、第2態様の巻線素子Df2では、前記貫通孔414b−1〜424b−4に前記締結部材72−1〜72−4のボルトをそれぞれ挿通させ、そして、前記各ボルトおよび各ナットで第1および第2コア部材41b、42bが互いに締め付けられる。
【0069】
なお、第5実施形態の巻線素子Df1、Df2では、連結部材43a、43bは、図8(A)および図8(B)に示すように、締結部材71a、71bを挿通するために、リング形状となっている。また、前記締結部材71は、上述のボルトおよびナットの他、例えば、リベットやクリップ等であっても良い。後述の固定部材も同様である。
【0070】
このような構成の巻線素子Df1、Df2は、締結部材71a;71b、72をさらに備えることによって、当接面4sf1、4sf2の密着性が向上し、振動をより抑制することが可能となる。
【0071】
そして、上述の第5実施形態における巻線素子Df1、Df2において、前記締結部材71a;71b、72(72−1〜72−4)は、図9(A)、図9(B)および図9(C)に示すように、当該巻線素子Df1、Df2、Df2が取り付けられる被取り付け部材100(100a、100b)、200(200a、200b)、300(300a、300b)に、当該巻線素子Df1、Df2、Df2を固定する固定部材と兼用されてもよい。被取り付け部材100、200、300には、締結部材(固定部材)71a;71b、72(72−1〜72−4)を固着させるための凹部101、201、301が形成されている。より具体的には、締結部材(固定部材)71a;71b、72(72−1〜72−4)にかかるボルトの一方端部に形成された雄ねじと螺着するために、凹部101、201、301の内周側面には、雌ねじが形成されている。被取り付け部材100、200、300は、例えば、基板、ケーシングおよび冷却部材等である。
【0072】
このような構成の巻線素子Df1、Df2、Df2では、第1および第2コア部材41a、42a;41b、42b;41b、42bを互いに当接させ、前記貫通孔415a、425a;414b、424b;414b、424bに前記締結部材71a;71b、72;71b、72のボルトを挿通させ、さらに、ワッシャー102a、202a(202a−1〜202a−4)、302a(302a−1〜302a−5)を介して被取り付け部材100、200、300の取り付けのための凹部101、201、301に螺着させて、巻線素子Df1、Df2、Df2が被取り付け部材100、200、300に固定されて取り付けられる。なお、これら第1ないし第3変形態様において、前記ワッシャー102a、202a、302aに代えて、前記ワッシャー102a、202a、302aの厚さに対応する高さの段部(凸部、段差部)102b、202b(202b−1〜202b−4)、302b(302b−1〜302b−5)が被取り付け部材100、200、300に形成されてもよい。言い換えれば、被取り付け部材100、200、300の面において、ワッシャー102a、202a、302aに対応する段部102b、202b(202b−1〜202b−4)、302b(302b−1〜302b−5)を除いた他の部分が僅かに凹んでいてもよい。図9(A)〜図9(C)には、段部102b、202b(202b−1〜202b−4)、302b(302b−1〜302b−5)が形成された場合を示している。また、これら図9(A)〜図9(C)に示す構成では、被取り付け部材100b、200b、300bに段部102b、202b、302bが設けられたが、前記段部102b、202b、302bに相当する凸部がコア部に設けられてもよい。例えば、図10(A)、図10(B)および図10(C)に示す巻線素子Df1’、Df2’、Df2”のように、前記ワッシャ102a、202a、302aに代えて、コア部4a’、4b’、4b”の第2コア部材42a’、42b’、42b”の面に、前記ワッシャ102a、202a、302aの厚さに対応する高さの凸部44a、44b(44b−1〜44b−5)、44b(44b−1〜44b−4)が形成されて設けられてもよい(言い換えれば、コア部4a’、4b’、4b”の第2コア部材42a’、42b’、42b”の面において、ワッシャー102a、202a、302aに対応する部分44a、44b(44b−1〜44b−5)、44b(44b−1〜44b−4)を除いた他の部分が僅かに凹んでいてもよい)。これら前記凸部44a、44b(44b−1〜44b−5)、44b(44b−1〜44b−4)における平面視での形状は、例えば円形や多角形等の任意形状でよい。図10(A)に示す第4変形態様では、中心位置1箇所で固定され、図10(B)に示す第5変形態様では、中心位置1箇所と周縁部分4箇所とで固定され、そして、図10(C)に示す第6変形態様では、周縁部分4箇所で固定される。なお、軸方向に垂直な断面が円形である円形コアの巻線素子も図8(A)、図9(A)および図10(A)に示すように、中心位置で固定されることが好ましい。
【0073】
このような構成の巻線素子Df1、Df2、Df2、Df1’、Df2’、Df2”は、前記締結部材71a、71b、72が固定部材と兼用されているので、別途に固定部材を用意する必要がなく、コストを低減することが可能となる。また、このような段部102b、202b(202b−1〜202b−4)、302b(302b−1〜302b−5)または前記凸部44a、44b(44b−1〜44b−5)、44b(44b−1〜44b−4)を設けることで、ワッシャー102a、202a、302aが不要となり、コア部4a、4b、4a’、4b’、4b”と被取り付け部材100、200、300との間における熱伝導性が改善され、組み立て工数が低減される。また、これら段部102b、202b(202b−1〜202b−4)、302b(302b−1〜302b−5)または前記凸部44a、44b(44b−1〜44b−5)、44b(44b−1〜44b−4)が設けられても、そのコア部4における形状変化は、僅かであるので、巻線素子Dfの固有振動数は、ほとんど変化が無く、著しく低下することもない。
【0074】
そして、このような構成の巻線素子Df1、Df2、Df2、Df1’、Df2’、Df2”において、前記ワッシャー102a、202a、302aを介して(または前記段部102b、202b、302bで、または前記凸部44a、44bで)被取り付け部材100、200、300に取り付けられる巻線素子Df1、Df2、Df2、Df1’、Df2’、Df2”の取付位置は、コア部4a、4b、4a’、4b’、4b”における振動変位が比較的小さい位置が好ましい。これによって被取り付け部材100、200、300に伝播する巻線素子Df1、Df2、Df2、Df1’、Df2’、Df2”の振動が抑制される。さらに、巻線素子Df1、Df2、Df2、Df1’、Df2’、Df2”が前記ワッシャー102a、202a、302aの厚さだけ被取り付け部材100、200、300から浮いているので(段部102b、202b、302bおよび凸部44a、44bの場合を含む)、コア部4a、4b、4a’、4b’、4b”の振動が被取り付け部材100、200、300に伝播することがさらに抑制でき、さらに効果的に、被取り付け部材100、200、300に伝播する巻線素子Df1、Df2、Df2、Df1’、Df2’、Df2”の振動が抑制される。この観点から、第2態様の巻線素子Df2が取り付けられ被取り付け部材200には、図9(B)に示すように、締結部材71bが対向する被取り付け部材200の位置には、貫通孔203が形成されてよく、あるいは、第2態様の巻線素子Df2が取り付けられ被取り付け部材300には、図9(C)に示すように、締結部材71bが対向する被取り付け部材200の位置には、凸部202b−5が形成されてよい。なお、空芯コイル1の軸芯部内へ延びる凸部の直径d(図9(C)参照)が、コア部4bの直径に較べて相対的に大きい場合には、コア部4bの中心位置での振動が小さくなる場合があり、このような場合に中心位置と周辺位置とで固定する図9(C)に示す態様が有利となる。
【0075】
また、上述では、締結部材71a、71b、72が固定部材と兼用されたが、締結部材71a、71bは、上述した、コイル1の軸芯内部に少なくとも配置されるとともに、コイル1の軸芯における両端部に対向するコア部の両内面部分を少なくとも連結する連結部材と兼用されてもよい。このような連結部材と兼用される締結部材71cは、より具体的には、図11に示すように、円柱形状のロッドの両端にナットを取り付けるための雄ねじが形成されているとともに、前記ロッドの中央付近に連結部材として機能する円柱部分が形成されている。
【0076】
このような構成の巻線素子Df3では、連結部材と兼用されている締結部材71cの両側から、前記貫通孔415a、425aを介して、第1および第2コア部材41a、42aが互いに当接され、さらに、締結部材71cの前記両端にナットが螺着されて締め付けられ、第1および第2コア部材41a、42aが締結される。
【0077】
次に、別の実施形態について説明する。
【0078】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態における巻線素子の構成を示す図である。図12(A)は、縦断面であり、図12(B)は、上面図(下面図)である。
【0079】
第1ないし第5実施形態における巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Dfは、コイル1を実質的に内包するいわゆるポット型であるが、第6実施形態の巻線素子Dgは、コイル1の一部がコア部5外に露出するものである。このため、コイル1は、第1ないし第5実施形態の巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Dfと同様であるので、その説明を省略する。
【0080】
この第6実施形態の巻線素子Dgにおけるコア部5は、コイル1に通電した場合にコイル1に生じる磁場による磁束を通す部材であって、コイル1の外側に配置され、さらに、複数の部材、図12に示す例では、2個の第1および第2コア部材51、52によって構成されている。これら第1および第2コア部材51、52は、同形であって、コイル1の一方端部の一部を覆う矩形板形状の矩形板部分511、521と、前記矩形板部分511、521の一方主面における互いに対向する一対の側部部分から略垂直にそれぞれ延びる各側壁部分512−1、512−2;522−1、522−2とを備えて構成される。前記矩形板部分511、521は、一方辺の長さがコイル1の外径(外直径)よりも大きくされている一方、他方辺の長さがコイル1の外径よりも小さくされている。これら第1および第2コア部材51、52の各側壁部分512−1、512−2;522−1、522−2における各端面を互いに当接させることによってコア部5が形成され、その縦断面は、図12に示すように、ロ字形状である。コイル1は、矩形板形状部分511、512の対角線の各交点を結ぶ軸とコイル1の軸とが互いに一致するように、このロ字形状のコア部5内に配置される。そして、これら第1および第2コア部材51、52における当接面5sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交している。ここで、コイル1によって生じる磁力は、主に、コイル1の軸方向に沿って生じ、この吸引磁力が当接面5sfに作用する。したがって、このようなコイル1の軸方向に沿って生じる磁力に対し、第1および第2コア部材51、52における当接面5sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交しているので、第1および第2コア部材51、52における当接面同士が突き当たることによって、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。
【0081】
このように第6実施形態の巻線素子Dgは、コイル1が外部から見える構造であって、コイル1の両端部に少なくとも対向するコア部部分(図12に示す例では、矩形板部分511、521)と、コイル1の外周面でこれらコア部部分を連結するコア部部分(図12に示す例では、側壁部分512、522)とを備えて構成されている。
【0082】
なお、第6実施形態の巻線素子Dgにおけるコア部5の側壁部分512、522の内面は、コイル1の外周に沿うように形成されていてもよい。
【0083】
このような構成によっても、第6実施形態の巻線素子Dgは、第1実施形態の巻線素子Daと同様に、第1および第2コア部材51、52における当接面5sfは、コイル1の軸AX方向に対して斜交または直交しているので、第1および第2コア部材51、52における当接面同士が突き当たることによって第1および第2コア部材51、52は、しっかりと当接され、その振動を抑制することができ、騒音を低減することができる。
【0084】
なお、上述の第1ないし第6実施形態における巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dgにおいて、前記当接面および前記コア部と前記連結部材との連結面のうちの少なくとも一方には、隙間を埋める隙間埋め材をさらに備えてもよい。上述の第1ないし第5実施形態における巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dgは、例えば、ナノメートルオーダの非常に微小な振動変位を、複数のコア部材を前記当接面で互いに突き当てることによって抑えているが、コア部材の表面における例えば凹凸や加工公差等によって前記当接面の密着性が良好ではないと、前記振動変位を良好に抑えることが難しくなる。そのため、このような構成の巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dgは、当接面に隙間埋め材をさらに備えることによって、当接面の密着性が向上し、振動をより抑制することが可能となる。隙間埋め材は、前記ナノメートルオーダの振動変位を抑えるべく当接面の密着性を高めるものであるから、箔状の薄い部材でよく、好ましくは当接面の凹凸に馴染みやすい部材がよく、例えば、樹脂の箔(薄板)や金属の箔(薄板)や紙等を用いることができる。なお、樹脂は、接着性を有する必要はないが、接着性を有していてもよい。このように接着性は、必要ではないので、使用後であっても、巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dgを分解して点検することも可能である。
【0085】
なお、このような隙間埋め材をさらに備える場合では、上述した第5実施形態の巻線素子Df1、Df2のようにこのような締結部材71a;71b、72(72−1〜72−4)をさらに備えることで、前記隙間埋め材に前記締結部材71a;71b、72によって与圧を作用させることによって、高温時における隙間埋め材の剛性劣化が抑制され、温度変化に対する振動抑制効果が安定的となる。
【0086】
また、上述の第1ないし第6実施形態における巻線素子Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dgでは、コア部が2個の第1および第2コア部材によって形成される場合について説明したが、コア部は、任意の個数のコア部材によって形成されてよい。例えば、コア部は、3個の第1ないし第3コア部材によって形成され、第2コア部材は、コイル1の外周面を覆う円筒形状の部材であり、第1および第3コア部材は、同形であって、前記第2コア部材の円筒形状における両端部にそれぞれ連結される円板形状の部材である。
【0087】
次に、実施例について説明する。
【0088】
(実施例)
図13は、第1実施例および比較例における駆動周波数の変化に対する振動加速度の変化を示す図である。図13の横軸は、駆動周波数(kHz)であり、その縦軸は、振動加速度である。○は、第1実施例の結果を示し、●は、比較例の結果を示す。
【0089】
第1実施例の巻線素子は、図5に示す第2実施形態の構造の巻線素子であり、比較例の巻線素子は、図4に示す構造の巻線素子である。なお、これらの測定において、振動加速度は、以下の実施例の測定においても同様に、各駆動周波数において前記吸引磁力が等しくなる条件で測定され、図5に示すように、巻線素子の端部位置で測定された。
【0090】
図13に示すように、比較例の巻線素子は、約11kHzで振動加速度がピークとなっており、この約11kHzが固有振動数であるが、第1実施例の巻線素子は、約13kHzで振動加速度がピークとなっており、この約13kHzが固有振動数である。このように第1実施例の巻線素子は、比較例の巻線素子と較べて固有振動数が高周波側にシフトしており、振動がより抑制されている。このため、第1実施例の巻線素子は、比較例の巻線素子と較べて、より高い駆動周波数まで、共振することなく使用することができる。
【0091】
図14は、コア部の輪郭形状の相違による固有振動数の相違を説明するための図である。図14には、図6(A)に示す構造のコア部4を備える巻線素子(図14の右欄)および図6(B)に示す構造のコア部3を備える巻線素子(図14の左欄)における1次共振モード(図14の上段)および2次共振モード(図14の下段)の固有振動数がそれぞれ示されている。図14には、コア部4、3を一体物でモデル化した場合におけるシミュレーション結果が示されている。
【0092】
図14に示すように、図6(B)に示す構造のコア部3を備える巻線素子における1次共振モードおよび2次共振モードの固有振動数は、それぞれ、5480Hzおよび10740Hzである一方、図6(A)に示す構造のコア部4を備える巻線素子における1次共振モードおよび2次共振モードの固有振動数は、それぞれ、6320Hzおよび11700Hzであり、コア部の外形形状の変更により、コア部に肉厚部分をさらに設けた方がその固有振動数が向上している。このように図6(A)に示す構造のコア部4を備える巻線素子は、図6(B)に示す構造のコア部3を備える巻線素子に較べて、固有振動数が高周波側にシフトしており、振動がより抑制され、より高い駆動周波数まで、共振することなく使用することができる。
【0093】
図15は、連結部材の有無および相違による固有振動数の相違を説明するための図である。図15の横軸は、駆動周波数(kHz)であり、その縦軸は、振動加速度である。
【0094】
図15には、図5に示す連結部材の無い構造の巻線素子における測定結果(測定位置中央位置;○、測定位置端部位置;△)、図7(B)に示す第2態様の連結部材の有る巻線素子における測定結果(測定位置中央位置;●、測定位置端部位置;▲)、および、図7(A)に示す第2態様に相当するが連結部材がリング形状である場合の巻線素子における測定結果(測定位置中央位置;□、測定位置端部位置;■)が、それぞれ、示されている。
【0095】
図7(B)に示す第2態様の連結部材の有る巻線素子における前記連結部材には、室温でのヤング率が10GPa以上の、例えば、2液硬化型のエポキシ系樹脂が用いられ、コア部が形成された後に、前記樹脂が前記コア部内へ流し込まれ、コア部が密閉された後に、その内部で前記樹脂が硬化された。また、前記リング形状の連結部材には、比較的ヤング率が高く、そして、その温度依存性が小さいことから、セラミックス、例えば、アルミナを90質量%以上含み、ヤング率が250GPa以上のセラミックスが用いられた。
【0096】
図15に示すように、連結部材が無い巻線素子では、約6〜7kHzの間にあった固有振動数が16kHzよりも少なくとも高くなっている。このように連結部材を備えることによって、巻線素子は、連結部材を備えない場合に較べて、固有振動数が高周波側にシフトしており、振動がより抑制され、より高い駆動周波数まで、共振することなく使用することができる。
【0097】
図16は、隙間埋め材の有無による固有振動数の相違を説明するための図である。図16の横軸は、駆動周波数(kHz)であり、その縦軸は、振動加速度である。
【0098】
図16には、図5に示す構造の巻線素子において、隙間埋め材が無い場合における測定結果(測定位置端部位置;△)および隙間埋め材が有る場合における測定結果(測定位置端部位置;○)が、それぞれ、示されている。隙間埋め材には、室温でのヤング率が10GPa以上の、例えば、2液硬化型のエポキシ系樹脂(接着剤ではない)が用いられた。
【0099】
図16に示すように、隙間埋め材が無い巻線素子では、固有振動数が約13kHzであったが、隙間埋め材が有る巻線素子では、固有振動数が約14.5kHzであった。このように隙間埋め材を備えることによって、巻線素子は、隙間埋め材を備えない場合に較べて、固有振動数が高周波側にシフトしており、振動がより抑制され、より高い駆動周波数まで、共振することなく使用することができる。
【0100】
図17は、締結部材の有無による、温度の変化に対する振動加速度の変化を示す図である。図17の横軸は、コア部表面の温度(℃)であり、その縦軸は、振動加速度である。
【0101】
図17には、図7(B)に示すように連結部材を内部空間に充填した場合の巻線素子における測定結果(測定位置中央位置;○、測定位置端部位置;△)、および、図7(B)に示すように連結部材を内部空間に充填した場合であって、図8(B)に示すように締結部材で第1および第2コア部材を締結部材としてのボルトおよびナットによって締結した場合の巻線素子における測定結果(測定位置中央位置;●、測定位置端部位置;▲)が、それぞれ、示されている。駆動周波数は、10kHzであり、前記ボルトおよびナットは、M6であり、8Nmのトルクで締め付けられた。これら巻線素子の温度上昇は、連続駆動による自己発熱に起因するものである。
【0102】
図17に示すように、締結部材を備えない場合では、コア部表面の温度上昇に伴ってその振動も増大しているが、締結部材を備える場合では、コア部表面の温度が上昇しても振動が略一定であり、振動の温度依存性が略解消している。これは、締結部材による締め付けにより連結部材の軟化が抑制されたものと思われる。
【0103】
図18は、図8(B)に示す構造の巻線素子において、その振動分布を示す図である。この実施例の巻線素子は、図8(B)を用いて説明した巻線素子Df2の構造のものである。図18には、この実施例の巻線素子Df2におけるコア部4bの上面(コア部41bの上面)(または下面(コア部42bの下面))の振動分布が示されている。測定位置は、或る1つの対角線を約45度ずつ回転させた場合に生じ得る各線上において、縁周位置(端部位置)、中心位置、および、縁周位置と中心位置との間の中間位置の3個の各位置である。また、中心位置の振動変位の大きさを1として各測定位置の測定結果を規格化している。図18から分かるように、コア部4bにおける振動変位の比較的小さい位置は、縁周位置であり、その振動変位の比較的大きい位置は、中心位置である。したがって、このような構造の巻線素子Df2は、図9(B)に示すように、コア部4bの縁周位置で被取り付け部材200に巻線素子を取り付けることによって、被取り付け部材200に伝播する巻線素子Df2の振動が抑制される。
【0104】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0105】
Da、Db、Dc、Dd、De、Df、Dg 巻線素子
1 コイル
2、3、4、5 コア部
21、31、41、51 第1コア部材
22、32、42、52 第2コア部材
43 連結部材
71、72 締結部材
100、200、300 被取り付け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のコイルと、前記コイルによって生じた磁束を通すコア部とを備えた巻線素子であって、
前記コイルは、長尺な導体部材を巻回した空芯コイルであり、
前記コア部は、前記コイルの外側に配置されるとともに複数の部材によって構成され、前記複数の部材における当接面は、前記コイルの軸方向に対して斜交または直交していること
を特徴とする巻線素子。
【請求項2】
前記コイルの輪郭形状は、円筒形状であり、
前記コア部は、前記コイルを内包するための円筒形状の空間を有するとともに、前記コア部の輪郭形状は、多角柱形状であること
を特徴とする請求項1に記載の巻線素子。
【請求項3】
前記コイルの軸芯内部に少なくとも配置されるとともに、前記コイルの軸芯における両端部に対向する前記コア部の両部分を少なくとも連結する連結部材をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線素子。
【請求項4】
前記当接面および前記コア部と前記連結部材との連結面のうちの少なくとも一方には、隙間を埋める隙間埋め材をさらに備えること
を特徴とする請求項3に記載の巻線素子。
【請求項5】
前記当接面には、隙間を埋める隙間埋め材をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線素子。
【請求項6】
前記当接面を構成する複数の部材を互いに締結する締結部材をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の巻線素子。
【請求項7】
前記締結部材は、当該巻線素子が取り付けられる被取り付け部材に、当該巻き線素子を固定する固定部材と兼用されていること
を特徴とする請求項6に記載の巻線素子。
【請求項8】
前記コア部は、前記コイルの軸芯内部へ延びる凸部を有していること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の巻線素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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