説明

巻線部品

【課題】 巻線端部であるリード部を精度良く固定し、同時にリードピン部分を固定する際の作業性を向上させること。
【解決手段】 表面が絶縁されている磁性コアと、磁性コアに巻かれた巻線と、磁性コアを支持する端子台を備え、巻線端部であるリード部3はさらに柔軟性を持つ絶縁材4により覆われ、端子台には溝部52が設けられ、溝部52に絶縁材4に覆われたリード部3が収容され、絶縁材4の外周面と溝部52の内側表面との間の摩擦力により、巻線の端部近傍が端子台に固定されている巻線部品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に用いられる巻線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機に用いられる従来の巻線部品として、例えば特許文献1のような磁性コアの外周に巻線を施したトロイダルチョークコイル等が知られている。
【0003】
図3は、特許文献1記載の巻線部品の構成を示す概略図である。
【0004】
特許文献1には、プラスチック製の巻枠55に、これに巻く巻線2のリード部の基部が嵌合されてこれを把持するように位置決めするピンクランプ部56と、このピンクランプ部56に嵌合されたリード部の基部につながる折曲部の外角部分に対向し、リード部がピンクランプ部56に対してピン長手方向にスライド変位するのを阻止するストッパ部57を一体に形成した巻線部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−20148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノイズ対策等に用いられる巻線部品のリード処理としては、回路基板へ半田実装を行った後に、回路基板底面より突出しているリード部の余線を、他の導体部との接触を避けるために切断もしくは折り曲げて製造されていた。しかし、近年の半田実装工程においてはこのような余分なリード処理工程を省くことが要請されている。
【0007】
上述のようなリード処理を行わない工程にするためには、巻線端部のリード部の位置固定精度を高めなければならない。
【0008】
特許文献1に記載された巻線部品では、巻線のリード長公差をストッパ部である程度規制できるが、巻線のスプリングバックや回路基板への実装時の熱、さらには輸送時の振動や衝撃などにより巻線端部のリード部がピンクランプ部とストッパ部との間の隙間の分だけピン長手方向にスライド変位してしまうという課題がある。
【0009】
また、巻線のスプリングバックによる応力がピンクランプ部とストッパ部との間に掛かることで、巻枠全体にゆがみが生じるという課題もある。
【0010】
さらに、巻線のリード部の特殊な曲げ加工による工数増大、生産効率の低下が生じるという課題もある。
【0011】
従って本発明の目的は、巻線端部のリード部を精度良く固定し、同時にリードピン部分を固定する際の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、表面が絶縁されている磁性コアと、磁性コアに巻かれた巻線と、磁性コアを支持する端子台を備え、巻線端部はリード部を構成し、リード部の表面の一部が柔軟性を持つ絶縁材により覆われ、端子台には溝部が設けられ、溝部に絶縁材に覆われたリード部が収容され、絶縁材の外周面と溝部の内側表面との間の摩擦力により、リード部が端子台に固定されている巻線部品としている。
【0013】
さらに、本発明におけるリード部は、絶縁材と共に溝部の最奥部で固定され、最奥部の溝幅は、最奥部近傍の溝幅より大きく、最奥部近傍の溝幅はリード部の線径より大きく、絶縁材の外径よりも小さいことが望ましい。
【0014】
このような構成にすることで、巻線端部であるリード部を端子台の溝部の最奥部で固定し、溝に沿って真っ直ぐな状態でリード部を固定することができるため、リード部の位置決め精度をさらに向上することができる。
【0015】
また、本発明における端子台は、磁性コアを囲う枠部と、磁性コアの支持部を備え、枠部の外周部に溝部が設けられていることが望ましい。
【0016】
このような構成にすることで、磁性コアから引き出されたリード部を絶縁材で覆い、張力を掛けながら枠部外周部の溝部に押し込むことで簡単にリード部を固定することができる。
【0017】
さらに、本発明における磁性コアは枠部に沿った扁平な形状であり、枠部は溝部近傍が磁性コア高さよりも低くなるよう窪んでいることが望ましい。
【0018】
このような構成にすることで、発明品の巻線部品は全体として薄型化することができ、さらに、回路基板などに実装する際、またはその後工程で、巻線の磁性コアから溝部まで引き回される部分が引っ掛けられて断線することを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明における絶縁材は熱収縮チューブであることが望ましい。
【0020】
熱収縮チューブは巻線へ取り付ける作業性が良好である上、熱収縮チューブは巻線を締め付ける力によって、巻線へ確実に固定される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、巻線のスプリングバックの影響を受けることなく、リード部を端子台に摩擦力によって精度良く固定することができ、固定する際の余分な曲げ加工も不要となる。
【0022】
さらに、リード部表面が絶縁材で保護されているため、リード部を端子台に固定する際の巻線へのストレスや断線を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明品の一例を示す斜視図。図1(a)は全体斜視図、図1(b)、図1(c)は分解斜視図
【図2】図1における本発明品の溝部付近の拡大図。図2(a)は巻線固定前、図2(b)は巻線固定後。
【図3】特許文献1記載の巻線部品の構成を示す図。図3(a)は上面図、図3(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0025】
図1(a)は本発明品の一例を示す斜視図である。図1(b)、図1(c)は図1(a)の分解斜視図である。
【0026】
磁性コア1表面には巻線2が施され、巻線端部であるリード部3は、その一部が絶縁材4により覆われている。リード部3は絶縁材4と共に磁性コア1を囲う枠状の端子台5に設けられた溝部52に張力を加えながら挿入されている。磁性コア1から溝部52まで引き回される巻線2の断線を防ぐため、溝部52の近傍は、端子台上端部53よりも低くなるような窪み部54となっている。
【0027】
なお、磁性コア1の外周には端子台5と接続するための突出部12が、磁性コア1の厚み方向中心軸より円周を等分するよう、少なくとも二箇所以上設けられている。
【0028】
一方、端子台5にも突出部12に対応する位置の各々に受け部51が設けられ、突出部12と受け部51は各々接着剤等の固定手段により固定される。
【0029】
また、磁性コア1には隔壁部11が設けられ、巻線2が二つに分割されてコモンモードチョークコイルを構成しているが、隔壁部11を設けずにインダクタやトランス等を構成してもよい。
【0030】
磁性コア1は、例えばトロイダル状の軟磁性体を樹脂製のコアホルダーに収容した構成とすることで表面を絶縁することができるが、これに限られない。
【0031】
絶縁材4は、熱収縮チューブ、絶縁テープ、シリコーン樹脂等の柔らかい樹脂性チューブ、巻線表面に形成された柔らかい樹脂の皮膜等あるが、柔軟性のある絶縁材であれば、これに限られない。
【0032】
図2は図1における本発明品の溝部付近の拡大図である。図2(a)は巻線固定前、図2(b)は巻線固定後を表している。溝部52は最奥部で溝幅が広がっているため、絶縁材4を設けたリード部3は溝部52の最奥部で固定される。
【実施例】
【0033】
特許文献1にあるピンクランプ部とストッパ部によるリード部の固定を行った場合、端子台より突出するリード部の長さ公差は+/−2.0mmであった。
【0034】
一方、巻線の線径、磁性コア、端子台の寸法を同等にした本発明品の端子台より突出するリード部の長さ公差は+/−0.5mmと、より狭い公差に抑えることができた。
【符号の説明】
【0035】
1 磁性コア
11 隔壁部
12 突出部
2 巻線
3 リード部
4 絶縁材
5 端子台
51 受け部
52 溝部
53 端子台上端部
54 窪み部
55 巻枠
56 ピンクランプ部
57 ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が絶縁されている磁性コアと、前記磁性コアに巻かれた巻線と、前記磁性コアを支持する端子台を備え、前記巻線端部はリード部を構成し、前記リード部の表面の一部が柔軟性を持つ絶縁材により覆われ、前記端子台には溝部が設けられ、前記溝部に前記絶縁材に覆われた前記リード部が収容され、前記絶縁材の外周面と前記溝部の内側表面との間の摩擦力により、前記リード部が前記端子台に固定されていることを特徴とする巻線部品。
【請求項2】
前記リード部は、前記絶縁材と共に前記溝部の最奥部で固定され、前記最奥部の溝幅は、前記最奥部近傍の溝幅より大きく、前記最奥部近傍の溝幅は前記リード部の線径より大きく、前記絶縁材の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の巻線部品
【請求項3】
前記端子台は、前記磁性コアを囲う枠部と、前記磁性コアの支持部を備え、前記枠部の外周部に前記溝部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線部品。
【請求項4】
前記磁性コアは前記枠部に沿った扁平な形状であり、前記枠部は前記溝部近傍が磁性コア高さよりも低くなるよう窪んでいることを特徴とする請求項3に記載の巻線部品。
【請求項5】
前記絶縁材は熱収縮チューブであることを特徴とする巻線部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−42046(P2013−42046A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179175(P2011−179175)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】