説明

巻締検査装置

【課題】
接触式の巻締検査装置にあっては、缶が台座上を転動せずに滑降するのを防止し、巻締部を全周に亘って確実に検査することができるものを提供する。
【解決手段】
本発明の巻締検査装置Aは、水平面に対して傾斜するように設けられ、上部に缶Cの周壁C2が周接するように載置されると共に、缶Cが自重で転動する走路となる直線状の台座2において、該台座2は、缶Cの周壁C2を吸引できるように、磁化されているか、または、磁石3が取り付られているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体で形成された円筒状の周壁を有し、少なくとも一方の側の開口部を巻締めして製缶した缶における、巻締部の形状を検査する巻締検査装置に係り、特に、缶が自重で転動する走路となる直線状の台座が、缶の周壁を吸引できるように、磁化されているか、または、磁石が取り付られているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶の巻締部の形状不良を検査する巻締検査装置にあっては、例えば、特許文献1に示したように、赤外線画像等の画像処理技術を利用した非接触式のものがある一方で、簡易に検査を行うことができるものとして、接触式の巻締検査装置が知られている。
【0003】
この接触式の巻締検査装置の一例としては、例えば、特許文献2の図5、図6に示したような、オフラインで抜き取り検査を行うものであり、マイクロメータを用いて巻締部における巻締厚さおよび巻締幅などを120°ごとに測定するものが知られている。
【0004】
これに対し、特許文献にはないが、オンラインでの全数検査が可能で接触式の巻締検査装置にあっては、例えば、巻締部の形状に見合った断面形状であって直線状の溝部を有するゲージを作製し、このゲージの溝部に巻締部を対応させて缶を転動させ、ゲージから外れるものは、不良品としてリジェクトするようなものが用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−63564号公報
【特許文献2】特開平7−60387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなオンラインでの全数検査が可能で接触式の巻締検査装置にあっては、簡易に巻締部の検査ができる反面、検査を行う多数の缶の中には、缶が台座上を転動せずに滑降してしまい、巻締部を全周に亘って検査することができず、不良品を良品と誤認し、良品中に不良品が混入するという問題点があった。
【0007】
この誤認は、特に、金属製の台座に油分が付着して缶との摩擦が小さくなる場合や、巻締部のバリ等が転動の障害となる場合に、顕著となる傾向がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、磁性体で形成された円筒状の周壁を有し、少なくとも一方の側の開口部を巻締めして製缶した缶における、巻締部の形状を検査する巻締検査装置であって、水平面に対して傾斜するように設けられ、上部に前記缶の前記周壁が周接するように載置されると共に、前記缶が自重で転動する走路となる直線状の台座と、この台座に並設され、前記巻締部の形状に見合った断面形状を有すると共に、前記巻締部を受け入れる直線状の溝部と、前記缶の他方の側の端部に当接し、該端部側の位置を規定する他方側端部位置規定部材と、前記缶を挟んで前記台座とは反対側に位置し、前記缶の上方側の位置を規定する上方側位置規定部材と、を備え、前記台座は、前記缶の前記周壁を吸引できるように、磁化されているか、または、磁石が取り付られている巻締検査装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の巻締検査装置において、台座の上部における缶の周壁に対向する部位には、部分的に凹部が設けられ、缶が転動するときに、前記台座と前記缶の周壁との間に隙間を生ずるように形成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の巻締検査装置によれば、台座は、缶の周壁を吸引できるように、磁化されているか、または、磁石が取り付られているため、缶が転動せずに滑降するのを防止することができ、巻締部の形状を全周に亘って確実に検査して不良品を確実に捕捉することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の巻締検査装置の効果に加え、台座の上部における缶の周壁に対向する部位には、部分的に凹部が設けられ、缶が転動するときに、前記台座と前記缶の周壁との間に隙間を生ずるように形成されているため、たとえ巻締部のバリが破断して台座に磁着したとしても、隙間にバリを収容することができ、以降の缶転動の障害になるのを防いで巻締検査を連続して円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の巻締検査装置の一実施例を示した概略的斜視図である。
【図2】図1の概略的正面図である。
【図3】図1の概略的側面図である。
【図4】図1の使用状態を示した概略図であり、図6のX−X線で切断した断面図である。
【図5】図4の要部を拡大して示した概略的断面図である。
【図6】図1の使用状態を示した概略的正面図である。
【図7】図4の要部を拡大して示した概略的断面図である。
【図8】図7に対応し、図1の使用時における不良品の状態を図示した概略的断面図であり、図8(a)は巻締部不良の一例を、図8(b)は巻締部不良の他例を、それぞれ示している。
【図9】図4の他の例を示した概略的断面図である。
【図10】本発明の巻締検査装置により検査される缶の一例を示した概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例を、図1〜図3を参照して説明する。図1において、Aは、本発明に係る巻締検査装置であり、巻締検査装置Aは、図10に示したような、磁性体で形成された円筒状の周壁C2を有し、少なくとも一方の側の開口部を巻締めして製缶した缶C(本実施例にあっては、両側の開口部を巻締めしたものを例示)における、巻締部C1の形状を検査するものであって、概略的に、台座2と、溝部21と、他方側端部位置規定部材4と、上方側位置規定部材5とを備え、機台1に一体的に取り付けられている。
【0015】
台座2は、水平面に対して傾斜するように設けられ、上部に缶Cの周壁C2が周接するように載置されると共に、缶Cが自重で転動する走路となる直線状のもので、台座2は、缶Cの周壁C2を吸引できるように、磁化されているか、または、磁石が取り付られている(本実施例にあっては、台座2に磁石3を取り付けたものを例示)。
【0016】
この台座2は、ステンレス鋼等の金属材料や、アルミナやフェライト等のセラミック材料、ポリカーボネイト等の硬質プラスチック材料などにより形成されているが、磁性体あるいは非磁性体のいずれであってもよく、また、台座2自身が磁化しているものであってもよい。
【0017】
台座2に取り付けられる磁石3は、缶Cの周壁C2を吸引し、該缶Cが台座2上を滑降、即ち、缶Cが回転せずに滑りながら台座2上を降下するのを防止することができればよく、例えば、フェライト磁石、金属磁石、ボンド磁石などが用いられる。
【0018】
溝部21は、図1、図3に示したように、前述した台座2に並設され、缶Cの巻締部C1の形状に見合った断面形状を有すると共に、巻締部C1を受け入れる直線状のものである。この溝部21の断面形状は、巻締部C1の形状に見合うように精度よく形成され、巻締部C1が異常に変形している場合にあっては、該巻締部C1が溝部21に上手く収まらないように構成されている。
【0019】
他方側端部位置規定部材4は、図2、図3に示したように、周壁C2を挟んで缶Cの巻締部C1とは反対側(他方の側)の端部C3に当接し、該端部C3側の位置を規定するもので、溝部21と当接面41との水平方向の距離が一定になるように、台座2の長手方向に沿って設けられている。
なお、図3において、42は、他方側端部位置規定部材4を機台1へ固定するための取付部材を、43は、他方側端部位置規定部材4の水平方向の位置を調整するための調整用ボルトナットを、それぞれ示している。
【0020】
上方側位置規定部材5は、図2、図3に示したように、缶Cを挟んで台座2とは反対側に位置し、缶Cの上方側の位置を規定するもので、台座2の上面と当接面51との距離が一定になるように、台座2の長手方向に沿って設けられている。
なお、図2、図3において、52は、上方側位置規定部材5を機台1へ固定するための取付部材を、53は、上方側位置規定部材5の位置を調整するための調整用ボルトナットを、それぞれ示している。
【0021】
次に、上述した実施例のように構成される巻締検査装置Aの作用について、図4〜図8を参照して説明する。
【0022】
図4は、缶Cを、巻締検査装置Aに投入した状態を示しており、缶Cは、端部C3が他方側端部位置規定部材4の当接面41に当接すると共に、周壁C2の上端部が上方側位置規定部材5の当接面51により規定され、上方への移動が制限されている。
【0023】
図5は、図4に図示した溝部21付近を拡大したもので、正常な巻締めが行われた場合、同図に示したように、缶Cの巻締部C1下端部は、溝部21内にきっちり収まった状態となり、図6に示したように、投入部61より投入された缶Cは、水平面に対して傾斜するように設けられた巻締検査装置Aの台座2上を転動しながら降下し、出口部62から排出される。
【0024】
ここで、不良品の検出(捕捉)について詳述すると、巻締部C1の形状と溝部21の形状との関係を図7に示したが、巻締部C1の形状が、缶Cの全周に亘って巻締厚さTおよび巻締幅W共に正常である場合(巻締厚さT=T1、巻締幅W=W1)、該巻締部C1が溝部21内にきっちり収まるもので、缶Cの周壁C2は台座2に当接し、図示していない周壁C2の上端部が上方側位置規定部材5とは干渉せず、缶Cは、台座2上を円滑に転動しながら降下し、出口部62(図6参照)から排出される。
【0025】
一方、巻締部C1の形状が、缶Cの周方向における一部または全部において異常(不良)である場合、図8(a)に示したような巻締厚さTの異常(T2>T1)にあっては、巻締部C1が溝部21内に収まらず、図8(b)に示したような巻締幅Wの異常(W2>W1)にあっては、巻締部C1がバンク22に乗り上げ、いずれの場合であっても缶Cが矢印d方向に浮き上がり、図示していない周壁C2の上端部が上方側位置規定部材5に干渉し、缶Cの転動が阻止されて台座2の中途で該缶Cが停止、即ち、不良品として捕捉することができる。
【0026】
このとき、缶Cの周壁C2は、磁性体で形成されているため、該周壁C2が台座2に吸引されて滑ることなく転動し、巻締部C1の形状を全周に亘って検査して不良品を確実に捕捉することができる。
【0027】
ところで、図7に示したように、台座2の上部における缶Cの周壁C2に対向する部位には、部分的に凹部23が設けられ、缶Cが転動するときに、台座2と缶Cの周壁C2との間に隙間を生ずるように形成するようにしてもよい。この凹部23を設けることにより、たとえ巻締部C1のバリが破断して台座2(磁石3)に磁着したとしても、隙間にバリを収容することができ、以降の缶C転動の障害になるのを防いで巻締検査を連続して円滑に行うことができる。
【0028】
なお、上述した実施例にあっては、缶Cの底部(端部C3)を巻締めしたものについて示したが、図9に示したように、缶Cの底部(端部C3)を周壁C2と一体的に形成したものであってもよい。
【0029】
また、上述した実施例にあっては、台座2に磁石3を取り付ける例について示したが、台座2自身が磁化しているもの(磁石で形成された台座)であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
A 巻締検査装置
C 缶
C1 巻締部
2 台座
21 溝部
3 磁石
4 他方側端部位置規定部材
5 上方側位置規定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体で形成された円筒状の周壁を有し、少なくとも一方の側の開口部を巻締めして製缶した缶における、巻締部の形状を検査する巻締検査装置であって、
水平面に対して傾斜するように設けられ、上部に前記缶の前記周壁が周接するように載置されると共に、前記缶が自重で転動する走路となる直線状の台座と、
この台座に並設され、前記巻締部の形状に見合った断面形状を有すると共に、前記巻締部を受け入れる直線状の溝部と、
前記缶の他方の側の端部に当接し、該端部側の位置を規定する他方側端部位置規定部材と、
前記缶を挟んで前記台座とは反対側に位置し、前記缶の上方側の位置を規定する上方側位置規定部材と、を備え、
前記台座は、前記缶の前記周壁を吸引できるように、磁化されているか、または、磁石が取り付られていることを特徴とする巻締検査装置。
【請求項2】
台座の上部における缶の周壁に対向する部位には、部分的に凹部が設けられ、缶が転動するときに、前記台座と前記缶の周壁との間に隙間を生ずるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の巻締検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−148320(P2012−148320A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9337(P2011−9337)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512096344)