説明

希釈装置および希釈方法

【課題】薬剤から精度よく希釈された処理液を提供すること。
【解決手段】本発明の希釈装置1は、薬剤を供給する薬剤供給管10および希釈液を供給する希釈液供給管12に接続されている、上記薬剤を1次希釈液に希釈する第1の希釈容器2と、上記第1の希釈容器2において希釈された上記1次希釈液を供給する、上記第1の希釈容器2に接続された1次希釈液供給管14、および上記希釈液供給管12から引き出される希釈液供給管、もしくは上記希釈液供給管12とは異なる他の希釈液供給管16に接続されている、1次希釈液を2次希釈液に希釈する第2の希釈容器4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を、使用に好適な濃度に希釈する希釈装置および希釈方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の処理液は、しばしば使用濃度よりも高い薬剤を希釈して使用する。使用濃度よりも遥かに高濃度の薬剤を現場で希釈して使用すれば、薬剤の運搬費用などのコストを大きく抑えることができる。この他に、薬剤を高純度の希釈液によって高倍率希釈すると、不純物(金属不純物およびパーティクルなど)を多く含む可能性のある薬剤を微量にしか使用しないので、高純度の処理液を提供することができる。このため、薬剤を正確に希釈する方法として、いくつか技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−533639号公報(平成17年11月10日公開)
【特許文献2】特開平8−262739号公報(平成8年10月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、処理液の調製に使用濃度よりも遥かに高濃度の薬剤を使用する利点は大きいが、公知の技術では使用濃度よりも遥かに高濃度の薬剤を正確に所望の濃度に希釈することが非常に困難である。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、薬剤を所望する濃度の処理液として正確に希釈できる希釈装置および希釈方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の希釈装置は、薬剤を供給する薬剤供給管および希釈液を供給する希釈液供給管に接続されている、上記薬剤を希釈液によって1次希釈液に希釈する第1の希釈容器と、上記第1の希釈容器に接続されて上記1次希釈液を供給する1次希釈液供給管、および上記希釈液供給管から引き出される希釈液供給管、もしくは上記希釈液供給管とは異なる他の希釈液供給管に接続されている、上記1次希釈液を希釈液によって2次希釈液に希釈する第2の希釈容器とを備える。
【0007】
また、本発明の希釈装置において、上記1次希釈液供給管が、上記第2の希釈容器に供給される上記1次希釈液を計量する1次希釈液計量容器を介して、上記第2の希釈容器に接続されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の希釈装置において、上記薬剤供給管が、上記第1の希釈容器に供給される上記薬剤を計量する薬剤計量容器を介して、上記第1の希釈容器に接続されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の希釈装置において、上記希釈液が、純水であり得る。
【0010】
また、本発明の希釈装置において、上記薬剤が、KOH溶液であり得る。
【0011】
また、本発明の希釈方法は、上記課題を解決するために、上記希釈装置を用いて薬剤を希釈する希釈方法であって、上記第1の希釈容器において、上記薬剤を上記希釈液によって2〜500倍希釈して上記1次希釈液を生成する1次希釈工程と、上記1次希釈液を上記第1の希釈容器から上記第2の希釈容器に供給する工程と、上記第2の希釈容器において、上記1次希釈液を上記希釈液によって2〜500倍希釈して2次希釈液を生成する2次希釈工程とを包含し、上記1次希釈工程の希釈倍率および上記2次希釈工程における希釈倍率をかけ合わせた希釈倍率が、500倍を越える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所望の濃度との誤差をなくして、薬剤から精度よく希釈された処理液を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一実施形態の希釈装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る希釈装置は、あらゆる濃度の薬剤を希釈して正確に所望の濃度にする希釈装置である。本発明に係る希釈装置は、特に薬剤の高倍率希釈に適している。図面を参照して説明する以下の記載において、本発明に係る希釈装置として、薬剤を高倍率希釈する希釈装置を例に挙げて説明する。
【0015】
本発明に係る希釈装置および希釈方法について、図1を用いて以下に説明する。本明細書において「高倍率希釈」とは、約500を超えて約250000倍以下に薬剤を希釈することを意味している。また、本明細書において「薬剤」とは、所望の用途に適する溶質濃度よりも高い濃度を有し、かつ希釈液による希釈の後に使用される、成分を溶解した原料を意味し、後段において使用する原液または洗浄液の原液を包含する。すなわち、高倍率希釈される「薬剤」は、使用濃度よりも遥かに高い濃度を有する溶液であり、その絶対的な濃度の範囲は特に限定されない。また、本明細書において「希釈液」とは、薬剤における溶質の濃度を所望の濃度にまで低減させるために使用する液体を意味する。すなわち、希釈液は、上記薬剤に加えることによって濃度を低減させるものであればよいので、上記薬剤の溶媒と同じ液体または異なる液体であり得る。
【0016】
〔希釈装置〕
本発明の一実施形態に係る希釈装置1の構成について、図1を用いて以下に説明する。図1は、薬剤の高倍率希釈に使用する希釈装置1の構成を模式的に示す図である。本実施形態において、原液として、希釈後に洗浄液として使用される溶液を使用し、かつ原液を希釈する希釈液として純水を使用する場合の、希釈装置1について説明する。図1において、各部材を繋ぐ実線は液体を通す管を示しており、かつ各部材を繋ぐ破線は電気的な接続を示している。よって、破線によって示される接続は、有線または無線の接続であり得る。また、破線の一端に付されている矢頭は、電気的な信号の伝わる向きを示している。
【0017】
図1に示されているように、希釈装置1は、配管10(薬剤供給管)および配管12(希釈液供給管)に接続され、かつ原液を希釈液によって希釈する1次希釈タンク2(1次希釈容器)と、配管14(1次希釈液供給管)および配管16(希釈液供給管)に接続され、かつ上記1次希釈液を希釈液によって希釈する2次希釈タンク4(2次希釈容器)を備える。配管10は、原液を溜めておく原液タンク20から1次希釈タンク2に原液を送る管であり、かつ配管12は、希釈液を溜めておく希釈液タンク22から1次希釈タンク2に希釈液を送る管である。配管14は、1次希釈タンク2から2次希釈タンク4に1次希釈液を送る管であり、かつ配管16は、希釈液タンク24から2次希釈タンク4に希釈液を送る管である。希釈装置1は、1次希釈タンク2において原液を低濃度の1次希釈液に希釈し、かつ2次希釈タンク4において1次希釈液を所望の濃度を有する洗浄液に希釈する。すなわち、希釈装置1は、原液を2段階希釈することによって高倍率希釈する装置である。
【0018】
ここで、原液を1段階において高倍率に希釈すると、ごく少量の原液を膨大な量の希釈液によって希釈することになる。よって、原液を供給する量および原液の濃度が、非常な精度において正確でなければ、希釈後に所望の濃度を有する溶液を調製することが困難である。しかし、上述のように本発明に係る希釈装置1は、2段階希釈によって原液を希釈するので、1段目の実測濃度に基づいて、2段目の希釈における1次希釈液および希釈液の量を決定することができる。つまり、高倍率の希釈を精度よく行うことができるので、所望の濃度を有する洗浄液を製造することが容易である。高倍率希釈用の原液を現場で希釈すると、容器への充填、容器、梱包および運搬などの費用が抑えられるので、薬剤の販売業者などから希釈した製品を購入する場合に比べて格段に安価である。また、高倍率希釈用の原液は、希釈に用いる原液を少量に抑えることができるので、希釈後の洗浄液に含まれる不純物の量を低減できる。すなわち、洗浄液などに使用する高純度の処理液を、コストを抑えて製造することができる。
【0019】
また、配管14の途中には、1次希釈液計量ポット6(1次希釈液計量容器)が設けられている。このため、ポンプ36aによって循環させながら濃度計34aを用いて測定された濃度を有する1次希釈液を、1次希釈タンク2から2次希釈タンク4に対して直接に送るのではなくて、1次希釈液計量ポット6において計量された1次希釈液を2次希釈タンク4に送る。1次希釈液計量ポット6は、2次希釈タンク4よりも遥かに小さい容量(例えば、約1/80倍〜約1/100倍)でよいので、1次希釈液計量ポット6は、2次希釈タンク4よりも遥かに重量の小さい、少量の液体の測定に適したものを使用できる。また、重量の検出機器(ここでは、後述するロードセル30c)として、小さな重量を精度よく検出可能なものを採用可能である。よって、2次希釈タンク4において1次希釈液の量を測定する場合よりも、測定の精度が格段に向上する。このように、2次希釈タンク4に供給すべき1次希釈液の量をより正確に決定することができるので、より一層、濃度に誤差のすくない洗浄液を容易に製造することができる。
【0020】
また、配管10の途中には、原液計量ポット8(薬剤計量容器)が設けられている。このため、原液を原液タンク20から1次希釈タンク2に対して直接に送るのではなくて、原液計量ポット8において計量された原液を正確に1次希釈タンク2に送る。1次希釈液計量ポット6の場合と同様の理由から、原液計量ポット8における原液の測定の精度が格段に向上する。このように、1次希釈タンク2に供給すべき原液の量をより正確に決定することができるので、2次希釈タンク4に送られる1次希釈液を一定の濃度に保って、より一層、濃度に誤差のすくない洗浄液を容易に製造することができる。
【0021】
図1に示されるように、1次希釈タンク2にはロードセル30aが設けられ、2次希釈タンク4にはロードセル30bが設けられ、1次希釈液計量ポット6にはロードセル30cが設けられ、かつ原液計量ポット8にはロードセル30dが設けられている。ロードセル30a、30b、30cおよび30dのそれぞれは、プログラマブルコントローラ28に電気的に接続されている。ロードセル30a、30b、30cおよび30dは、1次希釈タンク2およびその内部にある1次希釈液、2次希釈タンク4およびその内部にある2次希釈液、1次希釈液計量ポット6およびその内部にある1次希釈液、ならびに原液計量ポット8およびその内部にある原液の、重量の合計のそれぞれを表す信号を、プログラマブルコントローラ28に送信する。また、配管10、配管12、配管14、配管16および配管18の途中には、バルブ32a、32b、32c、32d、32e、32fおよび32gがそれぞれ設けられている。バルブ32a、32b、32c、32d、32e、32fおよび32gのそれぞれは、プログラマブルコントローラ28に電気的に接続されている。バルブ32a、32b、32c、32d、32e、32fおよび32gは、プログラマブルコントローラ28からの信号に従って開閉する。よって、プログラマブルコントローラ28は、1次希釈タンク2、2次希釈タンク4、1次希釈液計量ポット6および原液計量ポット8に供給された液体の量を、ロードセル30a、30b、30cおよび30dからの信号に基づいて算出可能である。そして、プログラマブルコントローラ28の算出結果に基づく開閉信号によってバルブ32a、32b、32c、32d、32e、32fおよび32gを開閉して、原液計量ポット8への原液の供給量、1次希釈タンク2への原液および希釈液の供給量、1次希釈液計量ポット6への1次希釈液の供給量、ならびに2次希釈タンク4への1次希釈液および希釈液の供給量を調節可能である。
【0022】
なお、図1には示していないが、配管10の途中には、プログラマブルコントローラ28と電気的に接続されたポンプが設けられている。このため、プログラマブルコントローラ28からの動作信号に基づいて、原液タンク20から原液計量ポット8に、所望の量の原液および希釈液を供給することができる。また、希釈液タンク22からの配管は、希釈液タンク22に戻る循環用の配管、およびバルブ32bを介して1次希釈タンク2に到る配管12から構成される。同様に、希釈液タンク24からの配管は、希釈液タンク24に戻る循環用の配管、およびバルブ32fを介して1次希釈タンク2に到る配管12から構成される。希釈液は、希釈タンク22および24に備えられている循環用の配管内を能動的に流されている。つまり、バルブ32bおよびバルブ32fを開くと、1次希釈タンク2および2次希釈タンク4に希釈液が供給される。
【0023】
また、図1に示されるように、配管14には、1次希釈タンク2とバルブ32dとの間にポンプ36aが設けられている。ポンプ36aとバルブ32dとの間において配管14から分岐し、途中に濃度計34aを備え、かつ1次希釈タンク2に戻る配管が、さらに備えられている。濃度計34aおよびポンプ36aは、プログラマブルコントローラ28と電気的に接続されている。濃度計34aは、プログラマブルコントローラ28に1次希釈液の濃度を表す信号を送信する。ポンプ36aは、プログラマブルコントローラ28からの信号に基づいて、1次希釈液を1次希釈タンク2から2次希釈タンク4に向かう流れを作り出す。よって、一定量の原液および希釈液が1次希釈タンク2に供給され、かつバルブ32dを閉じた状態において、ポンプ36aを作動させると、1次希釈タンク2内の1次希釈液が一定の濃度に落ち着くまで攪拌することができる。バルブ32dを開いた状態において、ポンプ36aを作動させると、1次希釈タンク2から2次希釈タンク4に1次希釈液を送ることができる。
【0024】
また、図1に示されるように、2次希釈タンク4は、2次希釈液を2次希釈液タンク26に送る配管18と接続されている。配管18には、2次希釈タンク4とバルブ32gとの間にポンプ36bが設けられている。ポンプ36bとバルブ32gとの間において配管18から分岐し、途中に濃度計34bを備え、かつ2次希釈タンク4に戻る配管が、さらに備えられている。濃度計34bおよびポンプ36bは、プログラマブルコントローラ28と電気的に接続されている。濃度計34bは、プログラマブルコントローラ28に1次希釈液の濃度を表す信号を送信する。すなわち、2次希釈タンク4には、1次希釈タンク2と同様の構成が備えられているので、2次希釈タンク4内の2次希釈液は、1次希釈タンク2内の1次希釈液と同様に処理される。
【0025】
なお、本実施形態において、希釈装置1は、2つの希釈液タンク22および24を備えているが、いずれか1つを備える構成であり得る。例えば、希釈液タンク22のみを備える場合には、配管12から分岐する配管を引き出して、2次希釈タンク4に接続すればよい。そして、引き出した配管にバルブを設ければ、1次希釈タンク2または2次希釈タンク4のいずれか一方にのみ希釈液を供給することができる。
【0026】
ここで、原液として使用する好適なものとしては、これらに限定されないが、希釈して洗浄液として使用可能な溶液が挙げられる。希釈して洗浄液として使用可能な溶液としては、これに限定されないが、KOH溶液(例えば、KOH水溶液など)が挙げられる。また、500倍を越えて約250000倍以下に原液を希釈して使用する場合には、微量の原液を膨大な量の希釈液によって希釈するので、絶対的な濃度に関わらずあらゆる濃度の原液が本発明に係る希釈装置によって好適に希釈可能である。
【0027】
なお、本実施形態において、希釈装置1は、1種類の溶液からなる薬剤を希釈している。しかし、薬剤は、2種類以上の溶液の混合物であってもよい。すなわち、本発明に係る希釈装置は、数種類の溶液を混合した薬剤を、希釈液によって希釈する場合にも好適に適用できる。
【0028】
好適な希釈液としては、上記原液の希釈に好適であり、高倍率希釈した処理液の用途に適した液体が挙げられる。よって、本実施形態において例示した純水だけでなく、希釈および溶質の溶解に適した種々の溶媒を適宜選択すればよい。
【0029】
本実施形態において、配管10、12および16の途中にポンプを設ける構成を説明しているが、原液タンク20、希釈液タンク22および希釈液タンク24から他のタンクまたはポットに、原液および希釈液を供給できるものであればよい。上記ポンプに代わる構成の例としては、不活性なガス(例えば、N2)を用いたガス圧を利用して液体を送る構成などが挙げられる。
【0030】
1次希釈液タンク2および2次希釈タンク4としては、フッ素樹脂ライニングタンクなどが一般的であるが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレンまたは塩化ビニルを使用したタンクなど(例えば、いずれもニチアス、日本バルカー、淀川ヒューテックなどから入手可能である)、希釈する薬剤の種類に応じて適宜変更可能である。また、1次希釈液タンク2および2次希釈タンク4は、外気の吸引による汚染を回避するために、不活性なガス(例えば、N2など)によってシールされている。
【0031】
ポンプ36aおよび36bとして、ベローズポンプ、ダイアフラムポンプおよび磁気浮上ポンプなど(例えば、イワキ、日本ピラーなどから入手可能である)、種々の様式のポンプを使用可能である。ポンプ36aおよび36b内の液体と接する部分には、フッ素樹脂が使用されるが、上述のように、希釈する薬剤の種類に応じて適宜変更可能である。
【0032】
KOHにとって好適な濃度計34aおよび34bとしては、自動滴定装置および伝導率計が使用されるが、希釈する薬剤の性質に応じて適宜変更可能である。
【0033】
ロードセル30a、30b、30cおよび30dとしては、精度が1/5000以上のものが好ましいが、希釈する薬剤の量などに応じて適宜選択すればよく、ほんの一例としてグローバルウェイング社製のロードセルが挙げられる。本実施形態においては、1次希釈タンク2、2次希釈タンク4、1次希釈液軽量ポット6および原液計量ポット8の中にある液体の量を測定するためにロードセルを使用しているが、他のものでも代用可能である。例えば、液体の量を測定のために、ロードセルに代えてレベル計を使用し得る。
【0034】
以上のように、本発明に係る希釈装置1を使用すれば、原液を高倍率に多段階希釈して、正確に所望の濃度を有する溶液を得ることができる。
【0035】
〔希釈方法〕
次に、図1の希釈装置1を用いた原液を高倍率希釈する方法について、以下に説明する。なお、〔希釈装置〕の項における説明と重複する場合は、説明を省略するか、または簡単な記載に留める。
【0036】
本発明に係る希釈方法は、原液を供給する配管10および希釈液を供給する配管12に接続されている1次希釈タンク2において、上記原液を上記希釈液によって2〜500倍希釈(例えば、80〜100倍希釈)して1次希釈液を生成する1次希釈工程と、1次希釈タンク2において希釈された1次希釈液を供給する配管14、および配管16に接続されている2次希釈タンク4において、1次希釈液を希釈液によって2〜500倍希釈(例えば、80〜100希釈)して2次希釈液を生成する2次希釈工程とを包含し、上記1次希釈工程の希釈倍率および上記2次希釈工程における希釈倍率をかけ合わせた希釈倍率が、500倍を越える。
【0037】
上述のように原液を多段階希釈することによって、高倍率(例えば、500倍を越えて約250000倍以下)に希釈した所望の処理液を、所望の濃度との誤差を生じることなく、容易に製造することができる。1次希釈および2次希釈の倍率として80〜100倍を選択した場合を例に挙げて、各工程の詳細を以下に説明する。
【0038】
(1次希釈工程)
1次希釈工程において、1次希釈タンク2内において原液を80〜100倍希釈する。まず、プログラマブルコントローラ28からの指示に基づいてバルブ32aを開く。また、プログラマブルコントローラ28からの指示に基づいて、配管10上にあるポンプ(図示せず)を動作させる。これによって、原液は原液計量ポット8に送られる。プログラマブルコントローラ28は、原液計量ポット8に接続されたロードセル30dからプログラマブルコントローラ28に送られる信号に基づいて、原液計量ポット8の重量を算出する。算出された値が、原液計量ポット8の重量と、所望の量の原液の重量とを合計した値に達すると、プログラマブルコントローラ28は、バルブ32aに信号を送って、バルブ32aを閉じる。なお、以下において、プログラマブルコントローラ28が他の構成を動作させるための信号の送信に関する記載を、説明の便宜上省略し、プログラマブルコントローラ28が他の構成をどのように動作させるのかについてのみ記載する。
【0039】
プログラマブルコントローラ28は、バルブ32bを開き、かつバルブ32dを閉じる。これによって、希釈液が希釈液タンク22の循環用の配管から配管12に流れて、1次希釈タンク2に送られる。1次希釈タンク2にもロードセル30aが接続されているので、1次希釈タンク2と供給された希釈液との合計の重量が所望の値に達すると、プログラマブルコントローラ28は、バルブ32bを閉じる。
【0040】
ここで、原液計量ポット8に送られる原液の量と、1次希釈タンク2に送られる希釈液の量とは、1:80〜100の比率である。
【0041】
1次希釈タンク2への希釈液の供給後に、プログラマブルコントローラ28は、バルブ32cを開く。原液計量ポット8は、1次希釈タンク2の上方に位置するので、原液は、重力に従って原液計量ポット8から1次希釈タンク2に送られる。これによって、原液が希釈液によって希釈されて1次希釈液を生成する。
【0042】
プログラマブルコントローラ28はポンプ36aを動作させる。ポンプ36aは、図1の下から上に向かって1次希釈タンク2内の1次希釈液を流す。バルブ32dが閉じられているので、1次希釈液は、濃度計34aが設けられている配管を流れて1次希釈タンク2内に戻る。つまり、1次希釈タンク2内の1次希釈液を循環させて攪拌しながら、濃度計34aを用いて1次希釈液の濃度を測定する。これは、濃度計34aからプログラマブルコントローラ28に送られる1次希釈液の濃度を示す信号が一定になるまで続けられる。
【0043】
なお、ここでは、原液を原液計量ポット8において計量した後に、原液を1次希釈タンク2に送っている。しかし、この手順は、希釈する原液の量をより正確にするための工程であり、必要でなければ省略してもよい。また、原液を1次希釈タンク2に送るために重力を利用しているが、原液計量ポット8内に不活性なガス(例えば、N2)を送って、そのガス圧によって原液を1次希釈タンク2に供給してもよい。この場合には、原液を能動的に移動させるので、1次希釈タンク2および原液計量ポット8との位置関係は、自由に選択すればよい。
【0044】
このように、1次希釈タンク2において80〜100倍に希釈された原液の1次希釈液は、次の2次希釈工程に使用される。
【0045】
(2次希釈工程)
2次希釈工程において、2次希釈タンク4内において原液の80〜100倍希釈液である1次希釈液を、さらに80〜100倍に希釈する。まず、プログラマブルコントローラ28は、バルブ32eを閉じ、かつバルブ32dを開いて1次希釈液を1次希釈液計量ポット6に送る。(1次希釈工程)の項に記載した、ポンプ36aによる1次希釈液の搬送動作によって、1次希釈液が1次希釈液計量ポット6に送られる。1次希釈工程と同様に、1次希釈液計量ポット6に接続されたロードセル30cからプログラマブルコントローラ28への信号に基づいて、1次希釈液が1次希釈液計量ポット6に所望の量まで供給されると、プログラマブルコントローラ28は、バルブ32dを閉じ、かつポンプ36aの動作を停止させる。
【0046】
プログラマブルコントローラ28は、バルブ32gを閉じ、かつバルブ32fを開く。これによって、希釈液が、希釈液タンク24の循環用の配管から配管16に流れて、2次希釈タンク4に供給される。プログラマブルコントローラ28は、ロードセル30bからの信号に基づく算出値が所望の値に達すると、バルブ32fを閉じる。
【0047】
ここで、1次希釈液計量ポット6に送られる1次希釈液の量と、2次希釈タンク4に送られる希釈液の量とは、1:80〜100の比率である。
【0048】
2次希釈タンク4への希釈液の供給後に、プログラマブルコントローラ28は、バルブ32eを開く。1次希釈液計量ポット6は、2次希釈タンク4の上方にある。よって、1次希釈液は、重力に従って1次希釈液計量ポット6から2次希釈タンク4に送られる。これによって、1次希釈液が希釈液によって希釈されて2次希釈液を生成する。
【0049】
プログラマブルコントローラ28は、ポンプ36bを動作させて2次希釈タンク4から2次希釈液を排出させる。ここで、バルブ32gが閉じられているので、2次希釈液は、濃度計34bが設けられている配管を流れて、2次希釈タンク4に戻る。2次希釈液を循環させて攪拌しながら、濃度計34bはプログラマブルコントローラ28に濃度を表す信号を送り続ける。濃度計34bからの信号に基づく算出値が一定の値に収束して所望の数値になると、プログラマブルコントローラ28はバルブ32gを開いて、2次希釈液タンクに2次希釈液を送る。
【0050】
なお、ここでは、1次希釈液を1次希釈液計量ポット6において計量した後に、1次希釈液を2次希釈タンク4に送っている。しかし、この手順は、希釈する1次希釈液の量をより正確にするための工程であり、必要でなければ省略してもよい。また、1次希釈液を2次希釈タンク4に送るために重力を利用しているが、1次希釈液計量ポット6内に不活性なガス(例えば、N2)を送って、そのガス圧によって1次希釈液を2次希釈タンク4に供給してもよい。この場合には、原液を能動的に移動させるので、2次希釈タンク4および1次希釈液計量ポット6との位置関係は、自由に選択すればよい。
【0051】
以上の1次希釈工程および2次希釈工程を経て、原液が高倍率希釈される。上述のように、本発明に係る希釈装置1を用いた希釈方法によれば、原液を所望の正確な濃度を有する溶液に希釈することができる。
【実施例】
【0052】
本発明に係る希釈装置1および希釈方法を用いて実施した例を、以下に示す。
【0053】
(実施例1)
希釈する原液として公称されている濃度が40重量%のKOH水溶液を使用し、かつ希釈液として純水を使用して、洗浄液として使用する溶液を調製した。希釈装置の構成は、上述の実施形態における希釈装置1と同様のものである。より詳細には、以下の通りである。1次希釈タンク2および2次希釈タンクとして、フッ素樹脂ライニングタンク(ニチアス社製)を使用した。ポンプ34aおよび34bとして、液体と接する部分がフッ素樹脂からなるベローズポンプ(イワキ社製)を使用した。濃度計として、自動滴定装置を使用した。ロードセル30a〜dとしては、グローバルウェイング社製のロードセルを使用した。
【0054】
1次希釈において、0.183kgの40重量%のKOH水溶液を、16.14kgの純水によって希釈した。つまり、1次希釈において原液を89.2倍に希釈した。KOH水溶液の量は原液計量ポットのロードセルを用いて、純水の量は1次希釈タンクのロードセルを用いて、それぞれ測定した数値である。1次希釈後のKOHの濃度は、濃度計の測定結果から、0.435重量%であった。
【0055】
2次希釈において、2.386kgの0.435重量%のKOH水溶液を、197.55kgの純水によって希釈した。つまり、2次希釈において1次希釈後のKOH水溶液を83.8倍に希釈した。1次希釈後のKOH水溶液の量は、1次希釈液計量ポットのロードセルを用いて、純水の量は、2次希釈タンクのロードセルを用いて、それぞれ測定した数値である。2次希釈後のKOHの濃度は、濃度計の測定結果から、0.00525重量%(52.5ppm)であった。この濃度は、当初想定していた洗浄液に好適な濃度(0.00520重量%(52ppm))の誤差範囲(±0.0005重量%)に収まっており、この2段階希釈後のKOH水溶液は、洗浄液として好適に使用され得る。この2段階希釈において、40重量%のKOH水溶液は、7475倍に希釈された。
【0056】
本発明に係る希釈装置および希釈方法を用いれば、KOH水溶液を高倍率に希釈する際に、精度よく希釈可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、洗浄液などの原液といった薬剤の希釈に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
2 1次希釈タンク(第1の希釈容器)
4 2次希釈タンク(第2の希釈容器)
6 1次希釈液計量ポット(1次希釈液計量容器)
8 原液計量ポット(薬剤計量容器)
10 配管(薬剤供給管)
12 配管(希釈液供給管)
14 配管(1次希釈液供給管)
16 配管(希釈液供給管)
18 配管
20 原液タンク
22 希釈液タンク
24 希釈液タンク
26 2次希釈液タンク
28 プログラマブルコントローラ
30a〜d ロードセル
32a〜f バルブ
34a、b 濃度計
36a、b ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を供給する薬剤供給管および希釈液を供給する希釈液供給管に接続されている、上記薬剤を希釈液によって1次希釈液に希釈する第1の希釈容器と、
上記第1の希釈容器に接続されて上記1次希釈液を供給する1次希釈液供給管、および上記希釈液供給管から引き出される希釈液供給管、もしくは上記希釈液供給管とは異なる他の希釈液供給管に接続されている、上記1次希釈液を希釈液によって2次希釈液に希釈する第2の希釈容器と
を備えることを特徴とする希釈装置。
【請求項2】
上記1次希釈液供給管が、上記第2の希釈容器に供給される上記1次希釈液を計量する1次希釈液計量容器を介して、上記第2の希釈容器に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の希釈装置。
【請求項3】
上記薬剤供給管が、上記第1の希釈容器に供給される上記薬剤を計量する薬剤計量容器を介して、上記第1の希釈容器に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の希釈装置。
【請求項4】
上記希釈液が、純水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の希釈装置。
【請求項5】
上記薬剤が、KOH溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の希釈装置。
【請求項6】
請求項1に記載の希釈装置を用いて、薬剤を希釈する希釈方法であって
上記第1の希釈容器において、上記薬剤を上記希釈液によって2〜500倍希釈して上記1次希釈液を生成する1次希釈工程と、
上記1次希釈液を上記第1の希釈容器から上記第2の希釈容器に供給する工程と、
上記第2の希釈容器において、上記1次希釈液を上記希釈液によって2〜500倍希釈して2次希釈液を生成する2次希釈工程と
を包含し、
上記1次希釈工程の希釈倍率および上記2次希釈工程における希釈倍率をかけ合わせた希釈倍率が、500倍を越えることを特徴とする高倍率希釈用の希釈方法。

【図1】
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