説明

帯板の巻取装置及び巻取方法

【課題】内径が巻芯の外径に等しくかつ真円に近いトロイダルコアを得る。
【解決手段】本発明の帯板の巻取装置は、外周から内周に至り磁性帯板12が挿通可能なスリット13cを有し巻芯回転駆動機構20により回転して外周に帯板12を巻回する円筒状の巻芯13と、巻芯13に挿通されスリット13cに連通しスリット13cを通過した帯板12の先端部が進入可能な隙間26aが形成された係止棒26と、巻芯13に対して係止棒26を回転させ、スリット13cに対して隙間26aを移動させることにより磁性帯板12の先端部を咬持し、スリット13cに隙間26aを対向させることにより磁性帯板12の先端部を解放する係止棒回転駆動機構27とを備える。この帯板の巻取装置は、スリット13cが円筒状巻芯13の内面における接線に沿うように形成され、巻芯の外周面とスリットが交差する鈍角側角部13dに丸み付けが為されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯板を巻芯に巻回する帯板の巻取装置及び巻取方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電源ラインフィルタ等のインダクターとして用いられるトロイダルコイルは、リング状のトロイダルコアと、このトロイダルコアの周囲に絶縁材を介して巻回される導線とから成る。従来、この種のトロイダルコイルを構成するトロイダルコアとして、磁性帯板の先端を挟んだ巻芯を回転させてその磁性帯板を幾十にも巻回し、巻回された磁性帯板から巻芯を抜き取ることにより得られたリング状のものが知られている。そして、この帯板の巻取方法として、図9に示すようなものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的に、この帯板の巻取方法では、図9(a)に示すように、巻芯2をその外周面に開口した係止凹部2aを有する円柱状に形成し、図9(b)に示すように、この係止凹部2aに係止棒3を巻芯2の回転径方向から差し込んで磁性帯板4の先端部を折り返すことによりこの係止凹部2aに係止し、図9(c)に示すように、巻芯2及び係止棒3を互いに同期回転して磁性帯板4を巻芯2に巻回し、図9(d)に示すように、係止棒3を巻芯2に対して巻芯2の回転径方向に移動して磁性帯板4の先端部を解放した後に係止棒3及び巻芯2を磁性帯板4の巻取部4aから抜き取っている。そして、この帯板の巻取方法では、巻芯2を抜き取った後に解放された磁性帯板4の先端部をその弾性復元力によって既に巻回された磁性帯板4の内周面に沿うように湾曲させている。この方法であれば、磁性帯板4を幾十にも巻回した後の巻芯2に対して磁性帯板4の先端部を解放するので、巻芯2を円滑に抜き取ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−149233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の帯板の巻取方法では、磁性帯板4の先端部を係止する係止棒3を巻芯2の回転径方向から差し込む係止凹部2aを円柱状の巻芯2の外周面に開口して形成している。このため、図9(d)に示すように、その巻芯2に帯板4を巻取るとその係止凹部2aの開口において帯板4は直線的に巻取られ、その開口を渡る部分が直線状を成すことから、得られたトロイダルコアの内径が巻芯2の外径よりも小さくなり、その内径の管理が困難になる不具合があった。また、この巻芯2に磁性帯板4を幾十にも巻回すると、巻芯2を抜き取った後においても、係止凹部2aの開口を渡る直線部分がそのまま残存し、得られたトロイダルコアの内径が真円を描かない不具合もあった。
【0006】
この不具合を解消するためには、係止凹部2aの幅dを極力小さくすることが考えられるけれども、係止凹部2aの幅dを小さくするとその係止凹部2aに差し込まれる係止棒3の直径が小さくなり、その係止棒3により折り返される帯板4の先端が塑性変形して、係止棒3及び巻芯2を磁性帯板4の巻取部4aから抜き取っても、解放された磁性帯板4の先端部が巻回された磁性帯板の内周面に沿わない不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、内径が巻芯の外径に等しくかつ真円に近いトロイダルコアを得ることのできる帯板の巻取装置及び巻取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の帯板の巻取装置は、外周から内周に至り磁性帯板が挿通可能なスリットを有し巻芯回転駆動機構により回転して外周に帯板を巻回する円筒状の巻芯と、巻芯に挿通されスリットに連通しスリットを通過した帯板の先端部が進入可能な隙間が形成された係止棒と、巻芯に対して係止棒を回転させ、スリットに対して隙間を移動させることにより磁性帯板の先端部を咬持し、スリットに隙間を対向させることにより磁性帯板の先端部を解放する係止棒回転駆動機構とを備える。
【0009】
この帯板の巻取装置は、スリットが円筒状巻芯の内面における接線に沿うように形成され、巻芯の外周面とスリットが交差する鈍角側角部に丸み付けが為されることが好ましい。
【0010】
本発明の帯板の巻取方法は、巻芯を外周から内周に至り帯板が通過可能なスリットを有する円筒状に形成し、巻芯に挿通された係止棒のスリットに連通する隙間にスリットを通過した帯板の先端部を進入させ、巻芯に対して係止棒を回転させてスリットに対して隙間を移動させることにより磁性帯板の先端部を咬持し、巻芯を係止棒とともに回転させて磁性帯板を巻芯の周囲に巻回し、係止棒を巻芯に対して回転させてスリットに隙間を対向させることにより磁性帯板の先端部を解放し、巻芯を係止棒とともに巻芯に巻回された磁性帯板から抜き取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、磁性帯板の先端部を巻芯の回転径方向から差し込むスリットを形成しているけれども、このスリットの幅は帯板が挿通可能であれば十分であるので、従来のように係止棒を挿通させる必要はない。このため、このスリットの幅を著しく狭くすることにより、得られたトロイダルコアの内径を巻芯の外径に等しくさせることができる。また、スリットが巻芯の外周面と交差する断面における鈍角側の角部に丸み付けを行えば、そのスリットに挿通された帯板が滑らかにその外周に案内されるので、この角部において帯板が塑性変形するようなことはなく、係止棒とともに巻芯を巻回された磁性帯板から抜き取った場合、解放された磁性帯板の先端部が巻回された磁性帯板の内周面に確実に沿わせることができる。よって、本発明では、内径が巻芯の外径に等しくかつ真円に近いトロイダルコアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施形態の帯板の巻取装置を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】その巻芯を没入させた状態を示す図2に対応する断面図である。
【図5】その巻芯を没入させた状態を示す図3に対応する断面図である。
【図6】本発明の帯板の巻取方法を示す工程図である。
【図7】本発明の別の係止棒の形状を示す図1の拡大図に対応する図である。
【図8】本発明の更に別の係止棒の形状を示す図1の拡大図に対応する図である。
【図9】従来の巻取方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3に本発明の巻取装置10を示す。この帯板の巻取装置10は、矩形体から成る本体11の前面から先端が突出して回転可能に設けられその先端に磁性帯板12を巻回する巻芯13を備える。磁性帯板12としては、アモルファス金属からなるテープ状の薄板や、珪素鋼からなるテープ状の薄板等が例示される。図2及び図3に示すように、本体11の裏面側には巻芯13の軸方向に移動可能な軸受体14が設けられる。巻芯13は軸受体14にベアリング16を介して回転可能に支持された支持筒部13aと、その支持筒部13aに連続してその支持筒部13aと同軸に設けられた先端筒部13bを備える。一方、本体11には巻芯13と同軸上に貫通孔11aが裏面側から前面側に貫通して形成され、巻芯13における先端筒部13bはその貫通孔11aを通過して先端が本体11の前面から前方に突出するように構成される。この貫通孔11aの直径は、先端筒部13bの外径との差が帯板12の厚さ未満となるように、先端筒部13bの外径より僅かに大きく形成される。
【0015】
また、図1の拡大図に示すように、巻芯13の本体11の前面から突出する先端筒部13bは円筒状に形成され、その先端部分には外周から内周に至り帯板12が回転径方向外側から通過可能なスリット13cが形成される。このスリット13cは、円筒状巻芯13の先端縁から軸方向に延びて形成され、断面形状で見た場合に、巻芯13の内面における接線に沿うように形成される。そして、そのスリット13cが巻芯13の外周面と交差する断面における鈍角側の角部13dには丸み付けが為され、そのスリット13cに回転径方向外側から挿通された帯板12が滑らかにその外周に案内されるように構成される。
【0016】
また、この巻取装置10には、この巻芯13を回転駆動する巻芯回転駆動機構20が設けられる。図3に示すように、この実施の形態における巻芯回転駆動機構20は巻芯13に平行に軸受体14に取付けられた第1サーボモータ21を含み、この第1サーボモータ21の回転軸21aと巻芯13における支持筒部13aの端部にプーリ22,23がそれぞれ設けられる。これらのプーリ22,23にはベルト24が掛け回され、第1サーボモータ21における回転軸21aの回転がベルト24を介して巻芯13に伝えられ、これにより第1サーボモータ21は巻芯13を回転可能に構成される。
【0017】
また、この巻取装置10は、円筒状の巻芯13に挿通された係止棒26と、この係止棒26を回転駆動する係止棒回転駆動機構27を備える。係止棒26は円筒状巻芯13の内径より僅かに小さな外径を有する円柱状に形成され、巻芯13の全長に渡って挿通され、その状態で巻芯13に対して巻芯13の回転中心を中心として回転可能に構成される。図1の拡大図に示すように、この係止棒26の先端には、スリット13cを通過した磁性帯板12の先端部が進入する隙間26aが形成される。この隙間26aはスリット13cの延長線上における係止棒26の先端外周の一部をスリット13cに平行に切り欠くことにより巻芯13の内周面との間に形成される。
【0018】
図2及び図3に示すように、この実施の形態における係止棒回転駆動機構27は、その係止棒26の基端側に係止棒26と同軸に設けられた第2サーボモータ28を含み、この第2サーボモータ28はアングル部材29を介して軸受体14に固定される。この第2サーボモータ28の回転軸28aはカプリング31を介して係止棒26の基端に連結され、この回転軸28aの回転を直接係止棒26に伝えられるように構成される。この第2サーボモータ28を含む係止棒回転駆動機構27は、巻芯13に対して係止棒26を回転させ、その先端におけるスリット13cに対して隙間26aを移動させることにより、その磁性帯板12の先端部を挟み込んで咬持し、逆に帯板12を咬持した状態から係止棒26を回転させてスリット13cに隙間26aを対向させることにより磁性帯板12の先端部を解放するように構成される。
【0019】
図2に示すように、この巻取装置10は、軸受体14を本体11に対して巻芯13の軸方向に移動させる軸受体移動機構36が設けられる。この軸受体移動機構36は本体11に巻芯13を挟むようにその巻芯13の両側に巻芯13の軸方向に延びて設けられた一対のシリンダ37,37であり、このシリンダ37,37における出没軸37a,37aの先端に軸受体14が固定される。そして、このシリンダ37の出没軸37a,37aを没入させた図2に示す状態で巻芯13の先端が本体11の前面より突出し、この状態から図4に示すようにシリンダ37の出没軸37a,37aを突出させると軸受体14が本体11に対して巻芯13の軸方向に移動し、その軸受体14とともに巻芯13も移動してその先端が本体11の前面から本体11内部に没入するように構成される。なお、図1、図2及び図4における符号38は、巻芯13の先端が本体11内部に没入した状態で軸受体14が先端の折曲部38aに当接し、これにより軸受体14の移動範囲を制限する制限部材38を示す。
【0020】
そして、巻取装置10は図示しないコントローラを備え、このコントローラは、巻芯回転駆動機構20を構成する第1サーボモータ21、係止棒回転駆動機構27を構成する第2サーボモータ28及び軸受体移動機構を構成するシリンダ37,37を予め設定されたプログラムに基づき制御するように構成される。また、この巻取装置10には、図示しないが、磁性帯板12を供給する供給機構、磁性帯板12の途中を切断するカッタ、切断された磁性帯板12の終端部を溶接して固定する溶接機等が備えられる。
【0021】
次に上記巻取装置を用いて磁性帯板を巻回する本発明における帯板の巻取方法ついて説明する。
【0022】
図6(a)に示すように、図示しない供給機構から供給される磁性帯板12の先端部を巻芯13の先端に形成されたスリット13cにその回転径方向外側から挿入し、そのスリット13cに連通する係止棒26の隙間26aにスリット13cを通過した帯板12の先端部を進入させる。その後、図6(b)に示すように、係止棒回転駆動機構27(図2及び図3)により巻芯13に対して係止棒26を回転させてスリット13cに対して隙間26aを移動させ、これにより磁性帯板12の先端部をそのスリット13cと隙間26aとにより挟み込んで咬持し、磁性帯板12の先端部をスリット13cに挿通された状態でその巻芯13に係止させる。
【0023】
図6(c)に示すように、続いて、巻芯13を係止棒26とともに回転させて磁性帯板12を巻芯13の周囲に巻回する。この実施の形態では、巻芯回転駆動機構20を構成する第1サーボモータ21と係止棒回転駆動機構27を構成する第2サーボモータ28の双方を同期回転させ、巻芯13と係止棒26を等速度で同方向に回転させる(図2及び図3)。このときの回転方向は、巻芯13の内面における接線に沿うように形成されたスリット13cに挿通された帯板12が、巻芯13の外周面と交差する断面における鈍角側の丸み付けが為された角部13dに掛け回される方向とする。これにより、そのスリット13cに挿通された帯板12は滑らかに巻芯13の外周に案内され、その磁性帯板12を巻芯13の周囲に速やかに巻回することができる。そして、巻芯13と係止棒26を同期回転させることにより、巻芯13の内周面と隙間26aにより磁性帯板12の先端部を咬持した状態を維持しつつ巻芯13を回転させることができ、磁性帯板12を巻芯13に所定の回数だけ巻回した後にそれらの回転を停止する。磁性帯板12を巻芯13に巻回し終えると、磁性帯板12を図示しないカッタによって切断し、切断された磁性帯板12の終端部を溶接機40によって磁性帯板12の巻回部に溶接して固定する。
【0024】
図6(d)に示すように、続いて、係止棒26を巻芯13に対して帯板12を咬持した方向と逆方向に回転させてスリット13cに隙間26aを対向させ、これにより磁性帯板12の先端部を解放する。続いて、図6(e)に示すように、巻芯13を係止棒26とともに巻回された磁性帯板12から抜き取る。図4及び図5に示すように、この抜き取りは、軸受体移動機構36により軸受体14を本体11に対して巻芯13の軸方向に移動させることにより行われる。具体的には、巻芯13の両側に巻芯13の軸方向に延びて設けられた一対のシリンダ37,37における出没軸37a,37aを突出させ、制限部材38先端の折曲部38a(図4)に軸受体14が当接するまで軸受体14を本体11に対して移動させ、これにより巻芯13の先端を本体11の前面から本体11内部に没入させる。
【0025】
ここで、本体11に形成されて巻芯13の先端筒部13bが貫通して設けられた貫通孔11aの直径と先端筒部13bの外径との差が帯板12の厚さ未満であるので、巻芯13の先端が本体11の前面から本体11内部に没入する際に、その先端筒部13bに巻回された帯板12の一部又は全部が貫通孔11aと先端筒部13bの間の隙間に入り込むことはない。このため、巻芯13の先端が本体11内部に没入する際に、巻芯13の先端筒部13bに巻回された帯板12の側面は本体11の前面に当接して巻芯13の先端側に移動し、巻芯13の没入が完了した段階でその巻回された帯板12から巻芯13は抜き取られることになる。
【0026】
この巻芯13の抜き取りに際して、スリット13cに挿通されて隙間26aに進入した帯板12の先端部も、その巻回された帯板12の巻芯13の先端側への移動に伴って巻芯13及び係止棒26の先端側に移動し、巻芯13が抜き取られた段階でそのスリット13c及び隙間26aから離脱することになる。そして、巻芯13を係止棒26とともに巻回された磁性帯板12から抜き取ると、図6(e)の矢印で示すように、スリット13c及び隙間26aから離脱した磁性帯板12の先端部は、その弾性復元力によって既に巻回された磁性帯板12の内周面に沿うように円弧状に湾曲する。これにより巻回された磁性帯板12から成るトロイダルコア18を得ることができる。
【0027】
以上のように磁性帯板12を巻芯13に巻回した後、係止棒26を巻芯13に対して回転させることにより、巻芯13に対して磁性帯板12の先端部を解放するので、巻回された磁性帯板12から成るトロイダルコア18から係止棒26及び巻芯13を円滑に抜き取ることができる。よって、得られるトロイダルコア18の品質、歩止まりの向上がはかられる。
【0028】
また、本発明では、磁性帯板12の先端部を巻芯13の回転径方向から差し込むスリット13cを形成しているけれども、このスリット13cの幅D(図1)は帯板12が挿通可能であれば十分であるので、従来のように係止棒を挿通させる必要はない。このため、このスリットの幅Dは、図9に示す従来の係止凹部2aの幅dより著しく狭くすることができる。よって、図6(c)に示すように、巻芯13に帯板12を巻取っても、スリット13cが開口する巻芯13の外周において帯板12が直線的に巻取られるようなことはない。この結果、得られたトロイダルコア18の内径を巻芯13の外径に等しくさせることができる。
【0029】
また、スリット13cが巻芯13の外周面と交差する断面における鈍角側の角部13dに丸み付けを行い、そのスリット13cに回転径方向外側から挿通された帯板12が滑らかにその外周に案内されるようにしているので、この角部13dにおいて帯板12が塑性変形するようなことはなく、係止棒26とともに巻芯13を巻回された磁性帯板12から抜き取った場合、解放された磁性帯板12の先端部を巻回された磁性帯板12の内周面に確実に沿わせることができる。よって、本発明では、内径が巻芯13の外径に等しくかつ真円に近いトロイダルコア18を得ることができる。
【0030】
また、上記実施の形態では、巻芯13に対して係止棒26を回転させる係止棒回転駆動機構27として第2サーボモータ28を用いるので、係止棒26を回転させるトルク及び回転量を制御することができる。このため、磁性帯板12の先端部を隙間26aがスリット13cとともに咬持する力を、巻芯13に巻取る帯板12の種類により調整することが可能となる。一方、係止棒回転駆動機構27として第2サーボモータ28を用いても、巻芯回転駆動機構20における第1サーボモータ21により巻芯13及び係止棒26を互いに同期回転させることにより、巻芯13を回転させる際に磁性帯板12の先端部を咬持した状態を維持することに支障を来すことはない。但し、係止棒回転駆動機構27が第2サーボモータ28を含むことに限定するものではなく、サーボモータを用いることなく、巻芯13に対して係止棒26を回転させるような他の機構を用いても良い。
【0031】
なお、上述した実施の形態では、スリット13cの延長線上における係止棒26の先端外周の一部をスリット13cに平行に切り欠くことにより巻芯13の内周面との間に形成された隙間26aを説明したが、この形状に限定されるものではなく、この隙間26aは、例えば係止棒26の先端外周の一部を切削又は切り欠くことにより巻芯13の内周面との間に形成されるものであって、スリット13cに対して移動することにより磁性帯板12の先端部を咬持可能である全ての形状を含むものとする。例えば、図7に示すように、断面がへの字を為すようにスリット13cに平行な平行部26bとスリット13cに対して傾斜してそのスリット13cに向かってそのスリット13cとの間隔が広がる傾斜部26cとを備えるようなものであっても良く、図8に示すように、係止棒26の先端外周の一部又は全部を切削してその先端形状を係止棒の中心軸から中心が偏倚した真円又は楕円とし、その外周面を巻芯13の内周面との間に生じる隙間26aとしても良い。
【0032】
図7及び図8に示すような隙間26aであれば、図7(a)及び図8(a)に示すように、傾斜部26c又は湾曲面により磁性帯板12の隙間26aへの挿入が容易となるとともに、図7(b)及び図8(b)に示すように、係止棒26を回転させると、その傾斜部26c又は湾曲面が帯板12に面接触してスリット13cとともにその先端部を挟むことになるので、帯板12の先端部がその挟み込みに基づいて損傷するようなことを回避することが期待できる。
【符号の説明】
【0033】
10 巻取装置
12 磁性帯板
13 巻芯
13c スリット
13d 鈍角側角部
20 巻芯回転駆動機構
26 係止棒
26a 隙間
27 係止棒回転駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周から内周に至り磁性帯板(12)が挿通可能なスリット(13c)を有し巻芯回転駆動機構(20)により回転して外周に前記帯板(12)を巻回する円筒状の巻芯(13)と、
前記巻芯(13)に挿通され前記スリット(13c)に連通し前記スリット(13c)を通過した前記帯板(12)の先端部が進入可能な隙間(26a)が形成された係止棒(26)と、
前記巻芯(13)に対して前記係止棒(26)を回転させ、前記スリット(13c)に対して前記隙間(26a)を移動させることにより前記磁性帯板(12)の先端部を咬持し、前記スリット(13c)に前記隙間(26a)を対向させることにより前記磁性帯板(12)の先端部を解放する係止棒回転駆動機構(27)と
を備えた帯板の巻取装置。
【請求項2】
スリット(13c)が円筒状巻芯(13)の内面における接線に沿うように形成され、前記巻芯(13)の外周面とスリット(13c)が交差する鈍角側角部(13d)に丸み付けが為された請求項1記載の帯板の巻取装置。
【請求項3】
巻芯(13)を外周から内周に至り帯板(12)が通過可能なスリット(13c)を有する円筒状に形成し、
前記巻芯(13)に挿通された係止棒(26)の前記スリット(13c)に連通する隙間(26a)に前記スリット(13c)を通過した前記帯板(12)の先端部を進入させ、
前記巻芯(13)に対して前記係止棒(26)を回転させて前記スリット(13c)に対して前記隙間(26a)を移動させることにより前記磁性帯板(12)の先端部を咬持し、
前記巻芯(13)を前記係止棒(26)とともに回転させて磁性帯板(12)を前記巻芯(13)の周囲に巻回し、
前記係止棒(26)を前記巻芯(13)に対して回転させて前記スリット(13c)に前記隙間(26a)を対向させることにより前記磁性帯板(12)の先端部を解放し、
前記巻芯(13)を前記係止棒(26)とともに前記巻芯(13)に巻回された磁性帯板(12)から抜き取る
ことを特徴とする帯板の巻取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−16609(P2011−16609A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161324(P2009−161324)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】