説明

帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法、平版印刷版材料用支持体及び陽極酸化処理装置

【課題】 電力ロスが少ない、帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法を提供する。
【解決手段】 帯状アルミニウム板を電解槽に含まれる電解液中で陽極酸化処理する方法であって、電解液中で対向する陽極と陰極の間に帯状アルミニウム板を配置し、該陽極と該帯状アルミニウム板との間に通電部を有する電気絶縁体を配置し、該通電部は該帯状アルミニウム板の巾手方向長さに対して外側から10%の位置以内にあり、該帯状アルミニウム板の一部は該電気絶縁体の一部と密着しており、かつ、該電気絶縁体が該帯状アルミニウム板と同時に移動し、該通電部を通じて該陽極と該帯状アルミニウム板間に通電し、該帯状アルミニウム板の該陰極と対面する面に陽極酸化皮膜を形成することを特徴とする帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム板面に陽極酸化膜を形成する陽極酸化処理方法、及びそれにより処理された印刷版材料用支持体に関し、特に平版印刷版に用いられるアルミニウム支持体の陽極酸化処理方法及び平版印刷版材料用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷に用いられる平版印刷版の支持体としてアルミニウム板を用いることが知られている。
【0003】
平版印刷版の支持体として用いられアルミニウム板としては、保水性、耐刷性などの印刷適性を付与するため、その表面に粗面化及び陽極酸化処理が施されたものが広く用いられている。
【0004】
上記の陽極酸化処理する方法としては例えば、帯状金属板を電解液中で連続走行させ、該金属板とこの一表面上に展開する電極との間に電流を流すことにより該金属板を電解処理する方法において、該金属板の該電解処理が行なわれる領域における該電極とは支持体の反対側の裏面側に電気絶縁板を直接配置して該電解処理を行なうことを特徴とする帯状金属板の電解処理方法(例えば、特許文献1参照。)、電解液中を連続走行する帯状金属板の両面各側にそれぞれ電極を配置してなる電解処理装置において、該帯状金属板の一面のみを電解しようとする際には該帯状金属板と他面側電極との間に電気絶縁材料を配置して両者の間に電流が流れることを抑制し、該帯状金属板の両面を電解処理する際には該電気絶縁材料を前記の配置場所から移動させて該両面各側の両電極と該帯状金属板との間で電流が流れるようにし、前記両態様を反復可能とする手段を設けたことを特徴とする帯状金属板の電解処理装置を用いる方法(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0005】
また、陽極と陰極の間に帯状被処理物を配置して陽極酸化皮膜を形成するする方法、例えば、電解液が満たされている電解槽内において、(+)の電気を加電する給電電極と、(−)の電気が加電される電解電極を平行平面状に対極させ、同対極間を通過する連続帯状の被処理物の進行方向に、上記対極に対して夫々スリット板をそのスリット部と被処理物との間隙を数mm以内に近接して配設して仕切ると共に、上記スリット部から連続して被処理物の両側端耳部に、先端溝部を上記耳部と被処理物の厚さ方向の間隙を約1mm程度、かつ端耳部への嵌り込みの深さを通板機能の精度と関連して数mm以内にしてマスクセパレーターを平面状に配置して被処理物の表裏を別々に各電極の電場を囲むように区面せしめ、同区画部を電気的に独立させることにより上記被処理物内を流れる電解電流を表裏方向に流すことを特徴とする直流電解による連続コイルアルマイトの片面専用処理装置を用いる方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【0006】
しかしながら、これらの方法においても、まだ電力ロスが多く、効率的なアルミニウム板の陽極酸化処理が求められていた。
【特許文献1】特開昭57−47894号公報
【特許文献2】特公昭63−58233号公報
【特許文献3】特公昭58−24517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電力ロスの少ない、帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法、それに用いられる陽極酸化処理装置及び前記処理方法により得られる平版印刷版材料用支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0009】
1.帯状アルミニウム板を電解槽に含まれる電解液中で陽極酸化処理する方法であって、電解液中で対向する陽極と陰極の間に帯状アルミニウム板を配置し、該陽極と該帯状アルミニウム板との間に通電部を有する電気絶縁体を配置し、該通電部は該帯状アルミニウム板の巾手方向長さに対して外側から10%の位置以内にあり、該帯状アルミニウム板の一部は該電気絶縁体の一部と密着しており、かつ、該電気絶縁体が該帯状アルミニウム板と同時に移動し、該通電部を通じて該陽極と該帯状アルミニウム板間に通電し、該帯状アルミニウム板の該陰極と対面する面に陽極酸化皮膜を形成することを特徴とする帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。
【0010】
2.前記電気絶縁体を複数のローラにより回転させることを特徴とする前記1に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。
【0011】
3.前記帯状アルミニウム板が平版印刷版材料用支持体であることを特徴とする前記1又は2に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。
【0012】
4.前記3に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法により陽極酸化処理されたことを特徴とする平版印刷版材料用支持体。
【0013】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法に用いられることを特徴とする陽極酸化処理装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、電力ロスの少ない、帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法、それに用いられる陽極酸化処理装置及び前記処理方法により得られる平版印刷版材料用支持体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を更に詳しく説明する。
【0016】
(帯状アルミニウム板)
本発明に係る帯状アルミニウム板は、帯状のアルミニウム板であり、その材質としては純アルミニウム板またはアルミニウム合金板どちらも用いることができる。
【0017】
アルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられ、各種圧延方法により製造されたアルミニウム板が使用できる。
【0018】
また、近年普及しつつあるスクラップ材およびリサイクル材などの再生アルミニウム地金を圧延した再生アルミニウム板も使用できる。
【0019】
(陽極酸化処理)
本発明に係る陽極酸化処理の前には粗面化処理(砂目立て処理)を施すのが好ましく、粗面化するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。
【0020】
脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0021】
次いで粗面化処理が施される。粗面化の方法としては、例えば、機械的粗面化方法、硝酸あるいは塩酸を主体とする電解による電解粗面化処理が挙げられる。
【0022】
機械的粗面化方法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0023】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後は、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0024】
硝酸を主体とする電解粗面化処理は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜2000C/dm2の範囲を用いることができるが、300〜1500C/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸、アルミニウムイオン等を加えることができる。
【0025】
上記の硝酸を主体とする電解粗面化処理後は、表面の酸化アルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.1〜2g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0026】
塩酸を主体とする電解液中での交流電解粗面化処理は、塩酸濃度は5〜20g/lであり、好ましくは6〜15g/lである。電流密度は15〜200A/dm2であり、好ましくは20〜150A/dm2である。電気量は400〜2000C/dm2であり、好ましくは500〜1500C/dm2である。周波数は40〜150Hzの範囲で行うことが好ましい。電解液の温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸、アルミニウムイオン等を加えることができる。
【0027】
上記の塩酸を主体とする電解液中で電解粗面化処理を施した後は、表面の酸化アルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.1〜2g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0028】
粗面化された表面の算術平均粗さ(Ra)は0.3〜0.8μmが好ましく、粗面化処理での電解液濃度、電流密度、電気量などの条件の組み合わせで制御することが出来る。
【0029】
本発明に係る陽極酸化処理方法は、上記のような粗面化の次に行われるのが好ましい。
【0030】
本発明に係る陽極酸化処理方法を図により説明する。
【0031】
図1(a)は、本発明の陽極酸化処理方法の1実施態様を示す側面図であり、実施例に用いた電解槽の側面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A′での断面図を示す。図2(a)は本発明に係る電気絶縁体の形状の例を示す平面図であり、B−B′での断面図を図2(b)に示す。図3は給電槽を有する従来の処理装置の1例を示す側面図である。
【0032】
図1において、帯状アルミニウム板1は、電解液2が満たされた電解槽3の中をローラ4を介して搬送されて陽極酸化処理される。
【0033】
陽極5及び陰極6は電解液2中で走行する帯状アルミニウム板1を挟んで対向して配置される。
【0034】
本発明に係る通電部とは、電気絶縁体8の、電解槽内で帯状アルミニウム板と対向する部分の電気絶縁体8に設けられた開口部をいう。尚、帯状アルミニウム板1と陽極5の間には固定電気絶縁体7が配置される。
【0035】
本発明に係る電気絶縁体8はベルト状で、ローラ4を介してエンドレス搬送される。そして、電気絶縁体8はゴム等の弾力性のある素材で形成され、図2に示すようにベルト端部10は固定電気絶縁体7と密着し、凸部11は帯状アルミニウム板1と密着する。電気絶縁体8に開けられた穴が通電部12となる。
【0036】
帯状アルミニウム板1を走行させつつ、陽極5と陰極6間に電圧をかけることにより通電部12を通じて陽極5から帯状アルミニウム板1に電流が流れ、さらに帯状アルミニウム板1から陰極6に電流が流れ、帯状アルミニウム板1の陰極6と対面する面に陽極酸化皮膜を形成する。この時、電気絶縁体8は帯状アルミニウム板1と凸部11で密着し帯状アルミニウム板1と等速度で走行する。
【0037】
固定電気絶縁体7は電解液槽1の壁と接触している。即ち電気絶縁体の陽極部側の電解液と陰極部側の電解液は、通電部のみを通じて繋がっている。
【0038】
また、帯状アルミニウム板と陽極との間の距離は、電力ロスの面から40〜60mmであることが好ましい。
【0039】
本発明においては、帯状アルミニウム板の厚さが0.15mm〜0.50mmである場合が好ましく、この場合通電する電流としては500〜10000A/m2が好ましい。
【0040】
帯状アルミニウム板を走行させる際の速さとしては、5m/分〜100m/分が好ましく、10m/分〜80m/分が特に好ましい。
【0041】
本発明に係る通電部即ち開口部の形状としては、図2(a)形状のスリットであってもよいし、直線に囲まれたスリット、電気絶縁体上の不連続な孔、編み目状の孔などの開口部であってもよい。
【0042】
上記固定電気絶縁体は、1015Ω以上の体積抵抗を有するものをいい、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンポリスチレンなどが挙げられるが、特に強度を兼ね備えたポリ塩化ビニールやポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0043】
本発明に用いられる電解槽は複数連続して設けられる方がより有効である。
【0044】
また上記開口通電部を通じて流れる電流としては、500A/m2〜20000A/m2が好ましい。
【0045】
陽極の材料としては、Tiのメッシュや、白金メッシュなどが用いられる。また、陰極の材料としては、カーボンやアルミニウムを用いることができる。
【0046】
これらは一体物でなくてもよく、例えば、50〜200mm長さの陽極を多数配置し、その間隙から、水素ガス等が陰極下面に溜まらないようにすることが好ましい。
【0047】
図3において、前段に給電槽31を配置し、後段に陽極酸化槽32を配置する。処理速度が速くなると大電流が必要になり、その場合は電源を2台、3台と分割して配置し、陰極をそれに応じて伸ばすことが必要になる。この場合、アルミニウムが抵抗となり、所望の電流が取れない場合があるので、処理速度が速くなるに従い、処理長さには限界があると推定される。
【0048】
本発明に係る電解液としては、硫酸または硫酸を主体とする電解液を用いて行うのが好ましい。
【0049】
硫酸の濃度は、5〜50質量%が好ましく、15〜35質量%が特に好ましい。電解液の温度は10〜50℃が好ましい。
【0050】
陽極酸化処理の処理電圧は18V以上であることが好ましく、20V以上であることが更に好ましい。
【0051】
本発明に係る平版印刷版材料用支持体の形成される陽極酸化皮膜量は、1.5〜4g/m2が好ましく、好ましくは2〜3g/m2である。
【0052】
陽極酸化皮膜量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、無水クロム酸:20gを1Lの水に溶解して作製)に、90℃で5分間浸漬し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0053】
陽極酸化皮膜にはマイクロポアが生成されるが、マイクロポアの密度は、400〜700個/μm2が好ましく、400〜600個/μm2が更に好ましい。
【0054】
陽極酸化処理されたアルミニウム板は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理、ポリビニルホスホン酸処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0055】
本発明の陽極酸化処理方法は、上述の電解槽と、この電解槽に電気を供給するための手段とを、備えた陽極酸化処理装置を用いることにより行うことができる。
【0056】
本発明に係る平版印刷版材料用支持体の陽極酸化処理を施されたアルミニウム板上に感光層を設け、感光性平版印刷版材料とすることができる。
【0057】
感光層は、画像露光により画像を形成し得るものであり、従来PS版の感光層として公知のポジ型、ネガ型の感光層を用いることができる。
【0058】
(ポジ型感光層)
ポジ型感光層に用いられる感光性物質としては、例えばo−ナフトキノンジアジド化合物が挙げられる。
【0059】
o−ナフトキノンジアジド化合物としては、特公昭43−28403号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸とピロガロール・アセトン樹脂とのエステルが好ましい。その他の好適なオルトキノンジアジド化合物としては例えば、米国特許第3,046,120号および同第3,188,210号明細書に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸とフェノール、ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがあり、特開平2−96163号公報、特開平2−96165号公報および特開平2−96761号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルがある。その方の有用なo−ナフトキノンジアジド化合物としては、数多くの特許等で公知のものが挙げられる。例えば、特開昭47−5303号、同48−63802号、同48−63803号、同48−96575号、同49−38701号、同48−13854号、特公昭37−18015号、同41−11222号、同45−9610号、同49−17481号公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0060】
o−キノンジアジド化合物は単独でも感光層を構成することができるが、アルカリ水に可溶な樹脂を結合剤(バインダー)として併用することが好ましい。この様なアルカリ水に可溶な樹脂としては、ノボラック型の樹脂があり、例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、o−、m−およびp−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(o−、m−、p−、m/p−およびo/m−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。また、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂も用いることができる。
【0061】
また、上記のポジ型の感光層中には、現像条件に対する処理の安定性(いわゆる現像ラチチュード)を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平2−96760号公報、同4−68355号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0062】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N、カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)およびアルキルイミダゾリン系(例えば、商品名レボン15、三洋化成(株)製)などが挙げられる。上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0063】
上記ポジ型感光層中には、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
【0064】
焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料も含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C142555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(C142000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。
【0065】
(ネガ型感光層)
また、ネガ型感光層としては、感光性ジアゾ化合物を含む感光層、光重合性感光層、光架橋性感光層などを有するものが挙げられる。
【0066】
感光性ジアゾ化合物としては、芳香族ジアゾニウム塩と反応性カルボニル基含有有機縮合剤、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類またはアセタール類とを酸性媒体中で縮合したジアゾ樹脂が好適に用いられる。その最も代表的なものにP−ジアゾフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物がある。これらのジアゾ樹脂の合成法は、例えば、米国特許第2,679,498号、同第3,050,502号、同第3,311,605号および同第3,277,074号の明細書に記載されている。更に、感光性ジアゾ化合物としては、特公昭49−48,001号公報記載の芳香族ジアゾニウム塩とジアゾニウム基を含まない置換芳香族化合物との共縮合ジアゾ化合物が好適に用いられ、中でもカルボキシル基や水酸基のようなアルカリ可溶基で置換された芳香族化合物との共縮合ジアゾ化合物が好ましい。本発明における感光性組成物中には、先に示したポジ型感光性組成物と同様に、塗布面質を向上するための界面活性剤を添加することができる。
【0067】
(マット層)
感光層の表面には、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、且つ焼きボケを防ぐため、マット層を設けても良い。
【0068】
本発明に係る感光性平版印刷版材料の感光層としては、現像処理を特に必要としないプロセスレス平版印刷版材料に使用される感熱画像形成層を用いることもできる。
【0069】
本発明の平版印刷版材料用支持体を用いた感光性平版印刷版材料は画像露光後必要に応じ現像処理が施され、平版印刷版として平版印刷に供することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0071】
(支持体1〜4の作製)
0.24mm厚、JIS1050のアルミニウム板を、連続して処理する図1又は図2でしめされる装置(使用した装置は表1に示す)を用い、5%水酸化ナトリウム水溶液中、60℃、10秒間、脱脂処理を行った後水洗し、10%硝酸水溶液中、25℃で10秒間浸漬して中和した後、水洗した。
【0072】
このアルミニウム板を、塩酸11g/L、溶存アルミニウム1.5g/Lの水溶液中で、温度30℃、電流密度8kA/m2で10秒間電解粗面化を行った後、1%水酸化ナトリウム水溶液中で20℃、10秒間処理し、更に10%硝酸水溶液中25℃で10秒間浸漬して中和した後、水洗し、支持体1〜4を作製した。陽極酸化膜の質量はいずれも、2.5g/m2であった。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から、本発明の陽極酸化処理方法は、電力ロスを少なくして、アルミニウム板上に陽極酸化被膜を形成することができることが分かる。
【0075】
(ポジ型感光性平版印刷版の製造)
上記支持体1〜4上に下記のポジ型感光性組成物を乾燥付き量が2g/m2となるように塗布して、ポジ型感光性平版印刷版を製造した。
【0076】
ポジ型感光性組成物
ナフトキノン(1,2)−ジアジド−(2)−5−スルホニルクロリドと、ピロガロール−アセトン樹脂(重量平均分子量2500)とのエステル化物(結合率20%)
5部
フェノール:m−クレゾール:p−クレゾール=5:57:38(質量比)の混合フェノール類とホルムアルデヒドとのノボラック樹脂(重量平均分子量5500)
20部
ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−(2)−5−スルホニルクロリドと、p−tert−オクチルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂(重量平均分子量1800)とのエステル化物(結合率50%) 0.25部
3,4−ジメトキシ安息香酸 1.25部
2−トリクロロメチル−5−[β−(2−ベンゾフリル)ビニル]−1,3,4−オキサジアゾール 0.25部
ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学社製) 0.25部
メチルセロソルブ 200部
得られた感光性平版印刷版材料を画像露光、及び現像処理して、印刷版を作製して、印刷を行ったところ、いずれも良好な印刷物が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の陽極酸化処理方法の1態様を示す図である。
【図2】本発明に係る電気絶縁体の形状の例を示す図である。
【図3】給電槽を有する従来の処理装置の1例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 帯状アルミニウム板
2 電解液
3、32 電解槽
4 ローラ
5 陽極
6 陰極
7 固定電気絶縁体
8 電気絶縁体
9 外側
10 ベルト端部
11 凸部
12 通電部
21 電気供給手段
31 給電槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状アルミニウム板を電解槽に含まれる電解液中で陽極酸化処理する方法であって、電解液中で対向する陽極と陰極の間に帯状アルミニウム板を配置し、該陽極と該帯状アルミニウム板との間に通電部を有する電気絶縁体を配置し、該通電部は該帯状アルミニウム板の巾手方向長さに対して外側から10%の位置以内にあり、該帯状アルミニウム板の一部は該電気絶縁体の一部と密着しており、かつ、該電気絶縁体が該帯状アルミニウム板と同時に移動し、該通電部を通じて該陽極と該帯状アルミニウム板間に通電し、該帯状アルミニウム板の該陰極と対面する面に陽極酸化皮膜を形成することを特徴とする帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。
【請求項2】
前記電気絶縁体を複数のローラにより回転させることを特徴とする請求項1に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。
【請求項3】
前記帯状アルミニウム板が平版印刷版材料用支持体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法により陽極酸化処理されたことを特徴とする平版印刷版材料用支持体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯状アルミニウム板の陽極酸化処理方法に用いられることを特徴とする陽極酸化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−70694(P2007−70694A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259086(P2005−259086)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】