説明

帯状製品への溶液浸潤装置

【課題】塗布ローラによる帯状製品への浸潤において、帯状製品への浸潤溶液が塗布ローラの反対側の面に流出して煙霧質が発生するのを防止する。
【解決手段】帯状製品2を導くためのガイドローラ6と下降ローラおよび溶液を帯状製品2に塗布するための塗布ローラ5を有し、装置内を通して帯状製品2を進行方向Lに通過させるもので、その際、帯状製品2の、塗布ローラ5とは反対側の面に、帯状製品2上に直接置かれた飛散防止装置であるフィルム4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状製品を導くためのガイド手段および溶液を帯状製品に塗布するための塗布手段を有し、装置内を通して帯状製品を進行方向に通過させる、帯状製品への溶液浸潤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フィルム、フリース、紙あるいはニットといった帯状製品に機能的装備を施すことを目的とした、一般的に液体の化学薬品の帯状製品への浸潤が周知である。ここで取り扱われ得るのは、例えば着色、含浸、汚れ防止コーティング、ナノコーティング、抗菌コーティングなどである。
【0003】
このような方法および対応する装置は、例えばドイツ公開特許公報第102006038339号により周知である。ここでは、浸潤されるべき帯状製品は、部分的に薬品槽に浸されて回転する塗布ローラの上を通過して導かれ、該ローラによって槽内の薬品が帯状製品に塗布される。それぞれ塗布ローラの前後に配置された2本のガイドローラが、帯状製品を塗布ローラの上を通して導く機能を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ公開特許公報第102006038339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存技術で周知の装置における欠点は、塗布ローラ上の帯状製品との間の接触角、帯状製品速度、帯状製品坪量、塗布ローラ速度、および浸潤物質の粘性によっては、塗布ローラの頂点において浸潤物質が帯状製品を通り抜けて漏れ出る場合のあることにある。上述の要素によっては、漏出の度合いが非常に大きくなり得ることから、少なからぬ量の浸潤溶液が、帯状製品の、塗布ローラとは反対側の面において帯状製品から流出し、帯状製品の進行方向において周囲に放出され、結果として煙霧質が生じる。
【0006】
この煙霧質は様々な点で不利である。煙霧質はこのようにして装置の周囲表面に降下し、これによって周囲表面が汚染され、化学薬品によっては著しく侵食され得る。このような装置の汚染は長い間には装置の安全性を低下させ得る。床や階段への降下によって表面が滑りやすくなり、つまり装置で作業を行う作業員に怪我の危険が生じることになる。作業員はさらに、場合によっては健康を害する煙霧質による呼気の汚染にさらされている。周囲の装置構成要素、特に帯状製品の上方で延びる横材上に溶液が降下すると、これは再び帯状製品の上に滴り落ち、その結果品質に悪影響を及ぼし得る。最後に、煙霧質の周囲への漏出によってかなりの追加費用が必要となる。これは、塗布するべき物質の30%までが帯状製品を通り抜けて気化することによって、これを浸潤に用いることができないからである。
【0007】
これまでのところ、浸潤領域において帯状製品の上方に煙霧質を吸引するための吸引フードが設置されるが、これは設備面でより大きな出費となる上、帯状製品に対して構造上一定の間隔を開けないと設置することができない。この理由で、このような装置では浸潤された帯状製品のすぐ近くにおける溶液の気化、および/あるいは機械部品上への降下を防ぐことはできない。吸引フードの縁部領域に降下する溶液も、再び帯状製品上に滴り落ちる可能性がある。その上、吸引された溶液は通例もはや浸潤に用いることはできないことから、このような溶液の損失は依然として重大である。
【0008】
したがって本発明の課題は、上記の既存技術の欠点を克服する、帯状製品への溶液浸潤装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
該課題は特許請求項1の特徴を備えた装置により解決される。
【0010】
発明の好ましい実施例および発展的形態は従属請求項の対象である。
【発明の効果】
【0011】
発明に従った帯状製品への溶液浸潤装置は、帯状製品の、塗布手段とは反対側の面に飛散防止装置を有し、これが帯状製品上に直接置かれている点において優れている。
【0012】
換言すれば、本発明が意図する機械的保護装置は、同装置の下で帯状製品を塗布手段の上を通して移動させ、帯状製品周辺に拡散する煙霧質を既にその発生地点で効果的に防ぐことができる。さらに、発明に従って飛散防止装置が帯状製品の上に直接置かれることになるため、浸潤薬品の気化、したがって塗布溶液の損失を完全に防ぐことができる。帯状製品の上に置かれた飛散防止装置によって、帯状製品への浸透はむしろむらのない均質的なものになる。帯状製品を通り抜ける溶液によって、帯状製品に面した側の飛散防止装置面が濡れるが、後続する帯状製品によって直ちに拭き取られる。帯状製品の厚さによっては、浸潤薬品が漏出することで帯状製品が完全に浸潤され、両面共に同じ性質を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】発明に従った装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態においては、塗布手段として、浸潤溶液の入った槽内で回転する塗布ローラ少なくとも1本が装備され、同ローラ上を通過して帯状製品が導かれる。一定の領域において塗布ローラに取り付けられたカバーストリップによって縞状の塗布も実行され得る。基本的に他の塗布機構、例えばスプレー塗布も可能である。
【0015】
ガイド手段としては主として、ガイドローラに加えて下降ローラを少なくとも1本備えており、これらを用いて帯状製品が真っ直ぐ弛まずに、塗布手段、特に塗布ローラの上を通過して導かれ得る。その際下降ローラは通例高さ調整が可能であり、したがって帯状製品が塗布ローラに接触するようにローラの位置を選ぶことができる。
【0016】
発明に従った飛散防止装置は、本発明の実施形態においては、十分な耐薬品性を有するフィルムとして形成されている。該フィルムは特に好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えばデュポン社のテフロン(登録商標)で知られている)製である。このようなフィルムは液体不透過性であるので、フィルムが帯状製品を覆っている領域においては、如何なる浸潤薬品も流出し得ない。該フィルムは極めて柔軟に帯状製品に適合することができ、製造および準備にあまり費用がかからない。さらにPTFEは耐薬品性が非常に高いことにおいて優れており、侵食性のある薬品によっても侵食されない。さらに、摩擦係数が非常に低いので、密着した装着にもかかわらずPTFEフィルムは移動される帯状製品に対して過度な抵抗を生み出さず、僅かな摩損しか生じない。表面張力が僅かであるために、PTFEは非常に浸潤されにくく、したがって、既に詳述したように、帯状製品を通り抜ける溶液は後続する帯状製品によって直接拭き取られ、永続的にフィルムに付着しない。発明に従ったPTFEフィルム製の飛散防止装置の形態の他に、PTFEを基材として製造された他の材料、例えばPTFEでコーティングされた帯状織物あるいはPTFEの細帯状フィルムで織った織物なども考慮される。
【0017】
本発明の提案に従って、主としてフィルムとして形成された飛散防止装置は、浸潤を行う領域を覆って、すなわち、塗布ローラ使用の場合、一般に塗布ローラの頂点、および、頂点の前後に延びる、例えばそれぞれ最長1m、主としてそれぞれ最長0.75mの領域を覆って帯状製品の進行方向Lに広がり、また、少なくとも帯状製品の全幅を覆って広がる。この方法で、塗布手段周辺の一定領域から外への帯状製品からの溶液飛散を完全になくすことができる。
【0018】
特に好ましい発明の実施形態においては、飛散防止装置が固定手段によって帯状製品に固定される。ここでは、例えば、帯状製品の進行方向Lに対して横に延びる少なくとも2本の中空管を取り上げることができ、この間に飛散防止装置の両端が装着されている。固定手段は高さが調整可能であることが好ましく、したがって固定手段の位置を相応に決定することによって、フィルムを張り渡して、進行する帯状製品上に押し付け、場合によっては、張力を高めるために帯状製品内に容易に押し下げることができる。
【0019】
さらに、固定手段によって結合した帯状製品とフィルムが塗布ローラに押し付けられることから、塗布ローラ表面への一定の接触面圧が生み出され、塗布ローラ、帯状製品およびフィルムの間に空所が生まれたり、あるいは帯状製品が塗布ローラの上ではためき始めたりすることなく、帯状製品への均等な浸潤が実行され得る。
【0020】
このような発明の形態においては、飛散防止装置として使用されるフィルムを単に帯状製品上に置くこと(疎水的製造)も、固定手段を相応に調整することによって帯状製品への所定の接触面圧を生み出すこと(親水的製造)も可能である。以下に、実施例に基づき、添付の図面を参考に、本発明のより詳細な説明が行われる。
【0021】
図1において全体として1で示した帯状製品への溶液浸潤装置は、ガイドローラ6ならびに、矢印H2に従って高さ調整可能に導かれた下降ローラ7を有し、これらによって、帯状製品2は塗布ローラ5の上を通過して所定の帯状製品速度で進行方向Lに導かれる。塗布ローラ5は化学薬品3を満たした槽9に部分的に浸され、該槽内で回転する。化学薬品3は帯状製品2への浸潤に用いられ、塗布ローラ5の頂点Sの領域において接触することで帯状製品2へと移される。
【0022】
帯状製品の、塗布ローラ5とは反対側の面において、フィルム4として形成されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の飛散防止装置が帯状製品2の上に置かれている。フィルム4の厚さは例えば0.1mm〜1mmであり、図1においては、特に帯状製品2の厚さと比べて縮尺通りに示されてはいない。フィルム4は、浸潤が行われる塗布ローラ5の頂点Sの領域、ならびに該頂点の前後に延びる、それぞれ0.5mの領域を覆って帯状製品2の進行方向Lに広がる。進行方向Lに対して横に、フィルム4は帯状製品2の全幅を覆って広がる。
【0023】
フィルム4はそれぞれガイドローラ6と下降ローラ7に面した両端において、進行方向Lに対して同じく横に延びる中空管として形成された固定手段8に装着されている。該手段によってフィルム4は帯状製品2の上で固定される。この目的で、固定手段8は矢印H1、H3に従って高さ調整可能に形成されており、したがって、フィルム4はまず帯状製品2に沿って導かれ、次に帯状製品2の上に押し付けられ、場合によっては張力を向上させるために織物内に容易に押し下げられ得る。高さ調整は両方の固定手段8に等しく作用するか、あるいは各固定手段8に固有の独立した高さ調整が配置されている。さらに、結合したフィルム4と帯状製品2は、固定手段8によって一定の接触面圧で塗布ローラ5の上に押し付けられる。これによって、塗布ローラ5、帯状製品2およびフィルム4の間に、溶液が溜まり得る空所が生じることなく、帯状製品2に化学薬品3を均等に浸潤させることができる。この操作方法は親水的製造と呼ばれる。
【0024】
フィルム4は、塗布ローラ5の領域において帯状製品2を通り抜ける一部の化学薬品3が、帯状製品2から離れて周囲に移るのを防ぐ。このようにして、周囲の装置構成要素、床、および室内の空気の汚染が防止され、かなりの量の化学薬品3が節約され得る。同時に煙霧質を吸引するための吸引装置を使用する必要がなくなり、これによって設備が簡素化される。
【0025】
図1に従った操作方法の変化型において、帯状製品2が真っ直ぐ塗布ローラ5の上を通過して延びるが、その際、飛散防止装置として用いられるフィルム4が帯状製品2との面接触を維持したままであるように、固定手段8に加えて通常高さ調整可能な下降ローラ7も調整され得る。この操作位置は疎水的製造とも呼ばれる。
【0026】
要約すれば、ここに記載の発明によって、帯状製品に溶液を浸潤させる際の煙霧質の発生、およびそれに伴う全ての不利益を防ぎ、結果として特に浸潤溶液の明確な節約につながる装置が供給されると言える。
【0027】
さらに、発明に従った装置の特に優れた長所は、その柔軟性および装置改造の容易さにある。したがって飛散防止装置を高い費用をかけずに様々な寸法の帯状製品に適合させ、全く異なる形態の装置に、後からの追加であっても、組み込むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状製品(2)を導くためのガイド手段および溶液(3)を帯状製品(2)に塗布するための塗布手段を有し、装置内を通して帯状製品(2)を進行方向(L)に通過させる装置で、帯状製品(2)の、塗布手段とは反対側の面に、帯状製品(2)の上に直接置かれた飛散防止装置が備わっていることを特徴とする、帯状製品(2)への溶液(3)浸潤装置。
【請求項2】
塗布手段として、塗布ローラ(5)を少なくとも1本備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ガイド手段として、ガイドローラ(6)に加えて、下降ローラ(7)を少なくとも1本備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
飛散防止装置がフィルム(4)として形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
飛散防止装置がポリテトラフルオロエチレンを基材として製造されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
飛散防止装置が、浸潤を行う領域、ならびにその領域の前後に延びる、それぞれ最長1m、主としてそれぞれ最長0.75mの領域を覆って帯状製品(2)の進行方向(L)に広がり、また、少なくとも帯状製品(2)の全幅を覆って進行方向Lに対して横に広がることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
飛散防止装置が固定手段(8)によって帯状製品(2)の上に固定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
固定手段(8)が少なくとも2本の中空管で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
固定手段(8)が高さ調整可能であることを特徴とする請求項7または8に記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−56330(P2013−56330A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194728(P2012−194728)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(510252841)ライフェンホイザー ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー マシーネンファブリーク (3)
【Fターム(参考)】