説明

帯状部材の搬送装置

【課題】走行側での接触を回避できるとともに積層装置においてコストを抑えて使用可能な、帯状部材の搬送装置を提供すること。
【解決手段】処理ローラ1,2及び少なくとも1つの搬送ローラ又はガイドローラ6によって帯状部材3を搬送する装置において、前記処理ローラ1,2の前方又は後方に配置された少なくとも1つの前記搬送ローラ又は前記ガイドローラ6を、ねじりローラ8として形成するとともに、その回転軸9が前記処理ローラ1,2の回転軸10,13に対して0°でない角度をなすよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ローラ及び少なくとも1つの搬送ローラ又はガイドローラによって帯状部材を搬送する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状部材は、多くの産業分野において搬送されることがある。その際、この帯状部材は、通常、繰出しローラから複数の搬送ローラ及び処理ローラを経て巻取ローラで巻き取られる。また、搬送ローラ及び処理ローラを通過した直後に帯状部材に更なる処理(例えば切断、圧延)を施すようにしてもよい。このとき、帯状部材の一方側に例えば1つの層を形成させることが知られている。この処理がなされた側を、以下「走行側」という。
【0003】
また、真空式積層装置内で帯状部材の走行側にシート層を取り付けることが知られている。このとき、帯状部材は、基層として処理ローラの表面部にわたって案内される。なお、この処理ローラを加熱用ローラ又は冷却用ローラとして形成することもできる。また、この処理ローラに対してシート源が配置されており、このシート源は、所定のプロセス条件下で積層材料から蒸気を生成する。そして、この蒸気は、シート層として基層の走行側に積層される。
【0004】
このようなものが図1に示されており、第1処理ローラ1は、第2処理ローラ2と同方向に回転するようになっている。第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2は、帯状部材3によって部分的に包囲されている。積層装置において帯状部材は基層となっており、この基層上にはシート層が取り付けられる(積層される)。そのため、シート源4が第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2と対向する位置に設けられており、このシート源4により基層3の走行側にシート層が積層されることになる。
【0005】
また、第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2にできる限り多く積層するために、複数の搬送ローラ又はガイドローラ6が設けられている。そして、これら搬送ローラ又はガイドローラ6により、帯状部材3がその走行側5でガイドされることになる。
【0006】
このような積層方法は、例えば、帯状の基層における有機物質を分離するために用いられる。特に発光手段や太陽光発電の用途でいわゆる小分子と呼ばれる有機半導体を大量生産する際には、帯状の基質における有機物質を分離するための設備について大きなコスト上の利点を得ることが可能である。このとき、走行側における接触が必要であり、この走行側では、加工された部材のカプセル化を防ぐよう有機層が分離される。
【0007】
また、複数の有機層を真空室内で場合によっては異なる層温度において互いに蒸着するために、例えば2mの直径を有する複数の冷却用ローラ又は加熱用ローラが必要となる場合がある。このとき、走行側における接触が回避される条件が維持されるべき場合には、図1に示す構成を使用することができない。必要な積層源の数若しくは大きさ、又は必要な基層の温度調整のために1つより多くの処理ローラを介した帯状部材のガイドが必要であれば、従来技術による複数の処理ローラが選択される。このような処理ローラにおいては、帯状部材は、ローラとのいかなる接触においても同様な回転で方向転換される。
【0008】
しかしながら、これにより、ローラの配置についての構造上の自由度が大きく制限されてしまうとともに、帯状部材のガイドについてコンパクトかつモジュール式の構造が達成し難くなってしまう。そのため、帯状部材のガイドのための必要空間が大きくなり、このような真空式積層装置のコストの上昇を招来することになってしまう。
【0009】
特許文献1には、走行側での接触を回避することが可能な積層装置が開示されている。ただし、この積層装置においては、処理ローラが設けられていない。基層の積層は、積層装置内部の基層の自由端側の平坦部上でなされるようになっている。しかし、処理ローラは、基層に対して、特に有機層を積層する場合に重要となる優れた冷却機能を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/094622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、走行側での接触を回避できるとともに積層装置においてコストを抑えて使用可能な、帯状部材の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、処理ローラの前方又は後方に配置された少なくとも1つの搬送ローラ又はガイドローラを、ねじりローラとして形成するとともに、その回転軸が処理ローラの回転軸に対して0°でない角度をなすよう構成したことにより達成される。ここで、ねじりローラの機能は、帯状部材の流れを、処理ローラの表面によって決定される帯状部材の流れへねじる(曲げる)ことにある。ねじりローラの概念の基となるこのようなねじりによって、帯状部材が走行側とは反対の背面側においてねじりローラにねじりによって接触することが達成できる。特に、帯状部材について、その中央部によりこれまで提起されてきた平面が不要となる。本発明によれば、この中央部は、室内方向へ搬送される。なお、従来技術においては、軸平行のローラによる帯状部材の搬送時にはこの室内に手を到達させることができなかった。
【0013】
また、ねじりは、互いに前後して配置されつつ回転軸が処理ローラの回転軸に対して0°でない角度をなす複数のねじりローラによってなされる。なお、これら複数のねじりローラ間に、その前方又は後方に位置するねじりローラと平行なガイドローラを設けてもよい。また、複数のねじりローラ及び/又は複数の処理ローラの直径及び回転速度は、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0014】
ねじりローラによる帯状部材の搬送によれば、例えば複数の処理ローラの共通の回転軸に沿った配置(この場合、対をなす2つのねじりローラにより、共通の回転軸上において帯状部材の側方のずれがプロセスローラ間の間隔だけ生じている。)などの複数の処理ローラについて走行側での接触がなされない様々なレイアウトを得ることが可能である。また、後述のように、他の好ましいローラ配置を達成することもできる。さらに、ねじりに基づき可能な帯状部材のレイアウトにより、従来の装置に比してコンパクトかつコストを抑えた構造を得ることも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、走行側での接触を回避できるとともに積層装置においてコストを抑えて使用可能な、帯状部材の搬送装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術による帯状部材の搬送を示す図である。
【図2】同軸に同様に回転する2つの処理ローラを備えた本発明による帯状部材の搬送装置を示す図である。
【図3】同軸に同様に回転する2つの処理ローラを備えた本発明による帯状部材の搬送装置を示す図である。
【図4】互いに隣接する2つの処理ローラを備えた本発明による帯状部材の搬送装置の正面図である。
【図5】図4に示す搬送装置の平面図である。
【図6】互いに角度をなすよう配置された2つの処理ローラを備える本発明による帯状部材の搬送装置を示す図である。
【図7】ねじり時における走行長の差を示す表である。
【図8】ねじりローラの様々な形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、図1に示す従来技術における要素と同様の機能を有する部材については、当該図1に示す符号と同符号を付している。
【0018】
図示の配置は積層装置において使用され、帯状部材3が基層を形成している。そして、この基層上で各層が分離される。図1に示すように、処理ローラ1,2に対向する位置にはシート源4が配置されており、このシート源4により基層(帯状部材)3の走行側5に層が設けられるようになっている。
【0019】
このような積層装置においては、処理ローラ1,2を特に冷却用ローラあるいは加熱用ローラとして形成することが可能である。これらローラは、プロセスローラとも呼ばれる。なお、これらローラは互いに異なる回転速度及び/又は直径を有するものであってもよい。
【0020】
また、帯状部材3が処理ローラ1,2の表面部における大部分と接しているのが好ましい。そのため、帯状部材の走行方向7に見て処理ローラ1,2の間及び/又はこれらの後方に複数の搬送ローラ又はガイドローラ6が配置されている。これら搬送ローラ又はガイドローラ6は、方向転換ローラとしての役割を担うものとなっている。また、図1に示すように、ガイドローラ6は、処理ローラ1,2と軸方向において平行に配置されている。しかし、搬送ローラ又はガイドローラ6は、帯状部材3の表面部において接触してしまう。本発明によれば、搬送ローラ又はガイドローラ6を後述のようにねじりローラとして形成したことで、上記のような接触が回避されるようになっている。
【実施例1】
【0021】
図2には第1実施例が示されており、第1処理ローラ1が第2の処理ローラ2と共通の中心軸上に配置されている。これら第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2は、互いに逆方向に回転するようになっているとともに、帯状部材3によって部分的に包囲されている。
【0022】
帯状部材の走行方向7に見た第1処理ローラ1の後方にはねじりローラ8が回転軸9を有するよう配置されており、この回転軸8は、第1処理ローラ1の回転軸19に対して90°の角度をなすものとなっている。すなわち、回転軸9,10の投影が90°の角度をなすようになっている。
【0023】
また、ねじりローラ8の後方かつ第2処理ローラ2の手前には他のねじりローラ11が配置されており、該ねじりローラ11の回転軸12は、回転軸9に対して平行となっているとともに、第2処理ローラ2の回転軸13に対しては90°の角度をなすよう配置されている。したがって、図2に示すように、第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2を共通の中心軸に沿って配置することができ、対をなすねじりローラ8,11により、共通の回転軸上において帯状部材の側方のずれがプロセスローラ間の間隔だけ生じている。
【実施例2】
【0024】
図3には第2実施例が示されており、第1処理ローラ1が第2処理ローラ2と共通の中心軸上に配置されている。これら第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2は、同じ方向に回転するようになっているとともに、帯状部材3によって部分的に包囲されている。なお、これら第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2を互いに異なる回転速度及び/又は直径を有するようにすることも可能である。
【0025】
帯状部材の走行方向7に見た第1処理ローラ1の後方にはねじりローラ14が配置されており、このねじりローラ14は、第1処理ローラ1の回転軸10に対して鋭角αすなわち第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2の間隔に応じて30〜60°の角度をなすよう配置されている。すなわち、回転軸15,10の垂直な投影図は、このような角度αをなしている。
【0026】
また、帯状部材の走行方向7に見たねじりローラ14の後方かつ第2処理ローラ2の手前にはねじりローラ16が配置されており、その回転軸17は、回転軸15に対して平行となっている。また、この回転軸15は、第2処理ローラ2の回転軸13に対して約30〜60°の角度(鋭角)βをなしている。したがって、図3に示すように、第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2は、共通の中心軸に沿って配置されることになる。そして、ねじりローラ14,16の対により、共通の回転軸上において帯状部材の側方のずれがプロセスローラ間の間隔だけ生じている。
【実施例3】
【0027】
図4及び図5には第3実施例が示されており、第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2は、図1に示すものと同様に互いに平行な中心軸上に配置されている。これら第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2は、同方向に回転するようになっているとともに、帯状部材3によって部分的に包囲されている。
【0028】
また、帯状部材の走行方向7に見た第1処理ローラ1の後方にはねじりローラ18が配置されており、このねじりローラ18は、その回転軸19が第1処理ローラ1の回転軸10に対して直角をなしている。すなわち、図5に示すように回転軸10,19が互いに直交している。
【0029】
また、帯状部材の走行方向7に見たねじりローラ18の後方にはねじりローラ20が配置されており、その回転軸は、図4に示すように回転軸19に対して直角をなしている。また、帯状部材の走行方向7に見たねじりローラ20の後方にはねじりローラ22が配置されており、その回転軸23は、回転軸21に対して平行に配置されているとともに、図4に示すように、後続のねじりローラ24の回転軸25に対して直角をなすように配置されている。ここで、ねじりローラ24は第2処理ローラ2の手前に配置されており、このねじりローラ24の回転軸25は、回転軸15に対して平行となっている。そして、この回転軸25は、図5に示すように、第2処理ローラ2の回転軸13に対して直交するようになっている。
【0030】
図6には、複数のねじりローラ26及びこれらの回転軸27が互いに対して、又は第1処理ローラ1若しくは第2処理ローラ2に対してそれぞれ0°でない角度(特に10°以上の角度)をなしたり、第1処理ローラ1及び第2処理ローラ2の様々な角度配置が可能であることが示されている。また、より多くのねじりローラ26が設けられるほど、ねじりによる帯状部材3への機械的な負荷が低減されることになる。
【0031】
図7に示す表には、ねじりに伴う帯状部材3における幅方向中央部と縁部の間の走行長の差の計算結果が示されている。この走行長の差は、更に帯状部材における温度変化(温度分布)又は第1処理ローラ1と第2処理ローラ2の間若しくはねじりローラ間のにおける温度変化(温度分布)によって変化する。このとき、この走行長の差が過大となる場合があり、帯状部材の縁部をその長さ方向の延びによって損傷するのを防ぐことなくこの帯状部材の長さ方向の延びによってこの走行長の差を調整することができない。このような場合には、損傷のほかに、過大な延びによって不都合なしわが発生してしまうこともある。これを回避するために、ねじりローラの形状を幅拡張ローラ(バナナ状ローラ=湾曲した軸を有するゴムローラ)又は湾曲した軸を有する一般的でフレキシブルなものとすることが考えられる。
【0032】
なお、ねじり角及び温度変化(温度分布)に応じて、ねじりローラを例えば図8に示すような他の形状としてもよい。
【0033】
このようにして、中央部と縁部の間の走行長の差を相殺し、しわの発生を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 第1処理ローラ
2 第2処理ローラ
3 基層(帯状部材)
4 シート源
5 走行側
6 搬送ローラ又はガイドローラ
7 帯状部材の走行方向
8,11,14,16,18,20,22,24,26 ねじりローラ
9,10,12,13,15,17,19,21,23,25 回転軸
α,β 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ローラ及び少なくとも1つの搬送ローラ又はガイドローラによって帯状部材を搬送する装置において、
前記処理ローラ(1;2)の前方又は後方に配置された少なくとも1つの前記搬送ローラ又は前記ガイドローラ(6)を、ねじりローラ(8)として形成するとともに、その回転軸(9)が前記処理ローラ(1;2)の回転軸(10;13)に対して0°でない角度(α;β)をなすよう構成したことを特徴とする装置。
【請求項2】
当該装置を帯状部材(3)への積層時に搬送するものとして形成し、
少なくとも2つの前記処理ローラ(1;2)によって前記帯状部材(3)を案内し、
前記帯状部材(3)への積層を前記処理ローラ(1;2)の外周部における少なくとも一部において行い、
前記帯状部材(3)を、互いに連続する少なくとも一対の処理ローラの間において少なくとも1つの前記搬送ローラ又は前記ガイドローラ(6)を介して案内し、
前記搬送ローラ又は前記ガイドローラ(6)を、ねじりローラ(8;14;18;20;22;24;26)として形成するとともに、前記帯状部材(3)における積層されない側、すなわち走行側とは反対側に接触させ、
前記ねじりローラ(8;14;18;20;22;24;26)の回転軸を前記処理ローラ(1;2)のうち少なくともいずれかの回転軸に対して平行とならないよう(すなわち傾斜させて)配置する
よう構成したことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ねじりローラ(8;14;18;20;22;24;26)の外面部を円筒状としないことを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記ねじりローラ(8;14;18;20;22;24;26)の外面部の形状を基本的に変形した円筒状に対応するよう形成し、この変形を円筒軸の湾曲により得るよう構成したことを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記ねじりローラ(8;14;18;20;22;24;26)を、湾曲した回転軸を有するフレキシブルローラとして形成したことを特徴とする請求項4記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−503797(P2013−503797A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527355(P2012−527355)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063127
【国際公開番号】WO2011/026997
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(595160477)フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (16)
【Fターム(参考)】