説明

帯鋸盤におけるブレードガード

【課題】帯鋸盤においての帯鋸刃交換を容易に行うことができ、かつ安全性の向上を図ることのできる帯鋸盤のブレードガードを提供する。
【解決手段】鋸刃ハウジング7に回転自在に備えられた駆動ホイール13と従動ホイール17に掛回したエンドレス状の帯鋸刃21を備えた帯鋸盤におけるブレードガードであって、前記駆動ホイール13と従動ホイール17との間に、前記帯鋸刃21の直線走行部分を覆う安全カバー41を備え、この安全カバー41は、前記鋸刃ハウジング7に一体的に備えた固定カバー45と、前記帯鋸刃21の直線走行部分の配置領域を開閉自在な開閉カバー47とを備え、前記固定カバー45に、切削液の流下を案内するための切削液流下案内部53を備え、前記開閉カバー47は常に閉じる方向に付勢してあり、かつ前記開閉カバー47を開状態に保持するための開状態ロック装置59を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば竪型帯鋸盤や横型帯鋸盤におけるブレードガードに係り、更に詳細には、帯鋸刃の交換時には帯鋸刃の交換を容易に行うことができ、また常態においては安全性の向上を図ることのできるブレードガードに関する。
【背景技術】
【0002】
帯鋸盤には横型帯鋸盤や竪型帯鋸盤があり、帯鋸刃が摩耗すると新しい帯鋸刃に交換されるものである。帯鋸盤においては、自動化を図るために帯鋸刃を自動的に行う各種の帯鋸刃自動交換装置が提案されている(例えば特許文献1,2,3参照)。
【特許文献1】特開平2−15913号公報
【特許文献2】特開平5−50326号公報
【特許文献3】特開平6−143026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、種々の帯鋸刃自動交換装置が提案されているものの、装置全体が大型化するので、手動でもって帯鋸刃の交換を行うことが多い。したがって、帯鋸盤の一例として横型帯鋸盤の場合の全体的構成及び帯鋸刃の交換を手動で行う場合の問題点について説明する。
【0004】
既に知られているように、帯鋸盤の一例としての横型帯鋸盤の全体的構成は、図1に示すごとき構成である。すなわち、横型帯鋸盤1は、ベースフレーム3に立設したガイドポスト5に沿って上下動自在な鋸刃ハウジング7を備えている。この鋸刃ハウジング7は、例えば油圧シリンダのごとき上下動用アクチュエータ9によって上下動されるものであり、この鋸刃ハウジング7の上部には左右方向に長いビーム部材11が備えられている。
【0005】
上記ビーム部材11における左右両側部には、駆動ホイール13を回転自在に内装した駆動ホイールハウジング15と、従動ホイール17を回転自在に内装した従動ホイールハウジング19が備えられている。そして、前記駆動ホイール13と従動ホイール17にはエンドレス状の帯鋸刃21が掛回してある。前記帯鋸刃21における歯先を、切断すべきワークWの方向に指向するように、帯鋸刃21を捻り起こして案内する左右の鋸刃ガイド23L,23Rを下端部に備えた左右のガイドアーム25L,25Rが前記ビーム部材11に取付けてあり、上記左右のガイドアーム25L,25Rのうち一方のガイドアーム25Lは、ワークWの大きさに対応して位置決め可能なように、他方のガイドアーム25Rに対して接近離反可能に構成してある。
【0006】
前記帯鋸刃21によって切断される前記ワークWを支持するために、前記ベースフレーム3上にはバイス装置27が備えられている。このバイス装置27はバイスベッド29の一側に固定バイスジョー31を備え、バイスベッド29の他側側に、前記ワークWを固定バイスジョー31へ押圧固定する移動バイスジョー33を備えた構成である。なお、この種のバイス装置27は公知であるから、バイス装置27の構成についてのより詳細な説明は省略する。
【0007】
上記構成により、バイス装置27にワークWを固定した状態において、駆動モータによって駆動ホイール13を回転駆動し、帯鋸刃21を走行駆動して、鋸刃ハウジング7を上昇位置から下降することによってワークWの切断が行われるものである。そして、帯鋸刃21が摩耗したような場合には、帯鋸刃21の着脱交換を行うものである。
【0008】
ところで、安全のために当然のこととして、前記駆動ホイールハウジング15及び従動ホイールハウジング19には、前記駆動ホイール13,従動ホイール17を覆う扉が開閉自在に取付けてあり、かつ前記駆動ホイール13と従動ホイール17との間における帯鋸刃21の直線走行部分(前記鋸刃ガイド23L,23Rの間の直線走行部分を切削作用直線走行部分とすると、切削作用を行わない非切削作用直線走行部分になる直線走行部分)を覆うブレードガードとして安全カバー35が前記ビーム部材11に沿って長く備えられている。
【0009】
従来の前記安全カバー35の構成は、図2に示すごとき構成である。すなわち、安全カバー35は、前記駆動ホイール13と従動ホイール17とに掛回した帯鋸刃21の非切削作用の直線走行部分に対応して前記ビーム部材11の下面に取付けてある。この安全カバー35の前側(図2において右側であって、横型帯鋸盤1の正面側)の側縁37は、帯鋸刃21の直線走行部分を覆うようにL形状に屈曲してあり、この側縁37の屈曲部には、帯鋸刃21に付着して滴下した切削液を適宜の液溜め等に流下案内する樋状の切削液流下案内部39が形成してある。そして、帯鋸刃21の交換時に、帯鋸刃21を取り出すために、前記側縁37の端縁37Aと前記ビーム部材11の下面11Aとの間に適宜間隔の間隙が形成してある。
【0010】
前述のごとき従来の構成において、帯鋸刃21の着脱交換を行う場合には、駆動ホイール13に対して従動ホイール17を近接する方向へ移動して帯鋸刃21の張力を緩めると共に、駆動ホイールハウジング15,従動ホイールハウジング19における扉を開いて、駆動ホイール13,従動ホイール17から帯鋸刃21を取り外すものである。この際、前記安全カバー35内に位置する帯鋸刃21は、張力が緩められたことにより前記安全カバー35の上面に接触した状態にある。
【0011】
したがって、帯鋸刃21を取り出すときには、安全カバー35における側縁37の端縁37Aとビーム部材11の下面11Aとの間隙から取り出し用の工具を内部へ差入れて、帯鋸刃21を取り出すものである。よって、安全カバー35における側縁37が邪魔になり、帯鋸刃21の取り出しが厄介であるという問題がある。そこで、前記側縁37の端縁37Aとビーム部材11の下面11Aとの間隙寸法を大きくすると、保守点検時に手を入れ易くなり危険であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、鋸刃ハウジングに回転自在に備えられた駆動ホイールと従動ホイールとに掛回したエンドレス状の帯鋸刃を備えた帯鋸盤におけるブレードガードであって、前記駆動ホイールと従動ホイールとの間に、前記帯鋸刃の直線走行部分を覆う安全カバーを備え、この安全カバーは、前記鋸刃ハウジングに一体的に備えた固定カバーと、前記帯鋸刃の直線走行部分の配置領域を開閉自在な開閉カバーとを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記帯鋸盤におけるブレードガードにおいて、前記固定カバーに、切削液の流下を案内するための切削液流下案内部を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
また、前記帯鋸盤におけるブレードガードにおいて、前記開閉カバーは常に閉じる方向に付勢してあり、かつ前記開閉カバーを開状態に保持するための開状態ロック装置を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安全カバーは、固定カバーと回転自在な開閉カバーとを備えた構成であるから、帯鋸刃の直線走行部分を確実に覆うことができ、安全性の向上を図ることができると共に、帯鋸刃の取り出しを容易に行い得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態について説明するに、前述した従来の構成と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。
【0017】
図3を参照するに、本実施形態に係る安全カバー41は、従来の安全カバー35と同様に、駆動ホイール13と従動ホイール17との間において帯鋸刃21の非切削作用の直線走行部分を覆うように、ビーム部材11に沿って左右方向(図3において紙面に垂直な方向)に長く設けてある。より詳細には、安全カバー41は板材から構成してあって、ボルト等の如き複数の取付具43によってビーム部材11の下面11Aに着脱可能に取付けた固定カバー45とこの固定カバー45に開閉自在に取付けた開閉カバー47とを備えている。
【0018】
前記固定カバー45が前記帯鋸刃21の前記直線走行部分に対応した直線走行部分対応部49は前記帯鋸刃21の帯幅より幅広の平面部に構成してある。この直線走行部分対応部49において前記帯鋸刃21の鋸歯21Tよりも前側(図3において右側,帯鋸盤1における正面側)には、三角形状の突出部51が屈曲形成してあり、この突出部51を屈曲形成したことにより、前記直線走行部分対応部49と前記突出部51が前記帯鋸刃21の鋸歯21Tに対応(対向)した内側の傾斜面との間の屈曲部には、樋状の切削液流下案内部53が形成されている。
【0019】
前記突出部51の頂部51Tの高さ位置は、前記直線走行部分における帯鋸刃21の高さ位置より僅かに高い位置であって、前記ビーム部材11の下面11Aと前記頂部51Tとの間の間隙から前記下面11Aに沿って直線的に手を入れた場合、前記手が帯鋸刃21の鋸歯21Tに直接的に触れることのない高さに設定してある。前記突出部51の外側(前記鋸歯21Tから離反する側)には、前記直線走行部分対応部49とほぼ同一平面のフランジ部53が備えられており、このフランジ部53には、前記開閉カバー47が開閉可能に取付けてある。
【0020】
より詳細には、前記開閉カバー47は、前記帯鋸刃21の直線走行部分の配置領域を開閉するもので、すなわち前記ビーム部材11の下面11Aと前記固定カバー45との間の開口部55を開閉するものであって、ヒンジ57を介して前記固定カバー45に開閉可能に取付けてある。そして、前記開閉カバー47は、例えばトーションスプリングなどのごとき適宜の付勢手段(図示省略)によって前記開口部55を閉じる方向へ常に付勢されている。そして、前記ビーム部材11の下面には、前記開閉カバー47に当接して閉じた状態の位置を規制するストッパ59が備えられている。
【0021】
そして、前記開閉カバー47を開状態に保持するための開状態ロック装置59が備えられている。より詳細には、前記開閉カバー47には回転軸61が回転自在に備えられていると共に、この回転軸61には、前記開閉カバー47の開閉を行うと共に回転軸61の回転を行うためのリング状の把持部63が一体的に取付けてある。さらに、前記回転軸61には、係止凹部65A(図4参照)を備えた係止部材65が一体的に取付けてある。前記係止部材65は、図3に想像線で示すように、開閉カバー47を開状態に保持するときに、前記固定カバー45に突出して備えた被係止部67に前記係止凹部65Aを係止して、開閉カバー47を開状態に保持するものである。
【0022】
以上のごとき説明より理解されるように、前記開閉カバー47は、常態においてはビーム部材11の下面11aと固定カバー45との間の開口部55を閉じた状態に保持するので、保守点検時に不用意に帯鋸刃21に触れることを防止でき、安全性の向上を図ることができるものである。そして、帯鋸刃21の着脱交換時には、前記開閉カバー47を開状態に保持することができ、開閉カバー47が邪魔になるようなことはない。また、帯鋸刃21の張力を緩めることによって帯鋸刃21が固定カバー45の直線走行部分対応部49に接触した状態にあっても、突出部51が三角形状であることにより、当該突出部51の内側の傾斜面に沿って手袋をした手や、帯鋸刃21を取り出すための適宜の取出し工具等を挿入し易く、帯鋸刃21の取り出しを容易に行い得るものである。
【0023】
すなわち、前記構成によれば、前記開口部55を開閉カバー47によって閉じることができることにより、前記ビーム部材11の下面11Aと前記突出部51の頂部51Tとの間隔を大きく広げた場合であっても安全性を確保できるものである。したがって、安全性の向上を図ると共に帯鋸刃21の着脱交換の容易化を図ることができるものであり、前述したごとき従来の問題点を解消することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の横型帯鋸盤の全体的構成を示す正面説明図である。
【図2】従来のブレードガードの構成を示す側断面説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るブレードガードの構成を示す側断面説明図である。
【図4】開閉状態ロック装置の正面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 横型帯鋸盤
7 鋸刃ハウジング
11 ビーム部材
11A 下面
13 駆動ホイール
15 駆動ホイールハウジング
17 従動ホイール
19 従動ホイールハウジング
21 帯鋸刃
21T 鋸歯
35,41 安全カバー
39 切削液流下案内部
45 固定カバー
47 開閉カバー
49 直線走行部分対応部
51 突出部
51T 頂部
55 開口部
57 ヒンジ
59 開状態ロック装置
63 把持部
65 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸刃ハウジングに回転自在に備えられた駆動ホイールと従動ホイールとに掛回したエンドレス状の帯鋸刃を備えた帯鋸盤におけるブレードガードであって、前記駆動ホイールと従動ホイールとの間に、前記帯鋸刃の直線走行部分を覆う安全カバーを備え、この安全カバーは、前記鋸刃ハウジングに一体的に備えた固定カバーと、前記帯鋸刃の直線走行部分の配置領域を開閉自在な開閉カバーとを備えていることを特徴とする帯鋸盤におけるブレードガード。
【請求項2】
請求項1に記載の帯鋸盤におけるブレードガードにおいて、前記固定カバーに、切削液の流下を案内するための切削液流下案内部を備えていることを特徴とする帯鋸盤におけるブレードガード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の帯鋸盤におけるブレードガードにおいて、前記開閉カバーは常に閉じる方向に付勢してあり、かつ前記開閉カバーを開状態に保持するための開状態ロック装置を備えていることを特徴とする帯鋸盤におけるブレードガード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−202250(P2009−202250A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44809(P2008−44809)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【出願人】(504279326)株式会社アマダカッティング (65)
【Fターム(参考)】