説明

帯鋸盤

【課題】開口部を簡単に閉塞でき開口部から切屑が飛散することを防止できる帯鋸盤を提供する。
【解決手段】無端状の帯鋸刃Bが巻回されて回転可能な一対のホイールの間に、帯鋸刃によって切断されるワークを載置するテーブが配置され、一方のホイールを収容した上部ハウジングと他方のホイールを収容した下部ハウジングとの間に立設された支柱10と、帯鋸刃を通過させる通路51を支柱に隣接して区画する区画壁50と、が設けられ、支柱と区画壁の前面との間に、帯鋸刃を通路に対して出し入れするために通路と連通させた開口部52が、支柱と平行に延設される帯鋸盤1において、開口部には、弾性材料によって形成されて開口部を閉塞する閉塞部材60を挿脱可能に差し込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無端状の帯鋸刃が巻回されて回転可能な一対のホイールをそれぞれ収容する上部ハウジングと下部ハウジングとの間に、前記帯鋸刃を通過させる通路が設けられた帯鋸盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一対のホイールの間に、無端状の帯鋸刃によって切断されるワークを載置するテーブルが配置され、一対のホイールの内の一方のホイールを収容した上部のハウジング部と、他方のホイールを収容した下部のハウジング部とを連結する側方部分を、ワークを切断する帯鋸刃が通過する通路とした帯鋸盤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ公報DE29904272U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、帯鋸盤では、上述した上部のハウジング部と下部のハウジング部との間に立設された支柱と、上記の帯鋸刃の通路を区画する区画壁の前面との間に、該通路と連通させた開口部が、支柱と平行に延設されている。この開口部は、帯鋸刃を前記通路に対して出し入れするために用いられている。
【0005】
しかしながら、上記の開口部を設けたままで、帯鋸刃を用いてワークを切断すると、区画壁から開口部を通じ、帯鋸刃に付着した切屑が飛散するといった不都合が生じていた。
【0006】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、開口部を簡単に閉塞でき該開口部から切屑が飛散することを防止できる帯鋸盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る帯鋸盤は、無端状の帯鋸刃が巻回されて回転可能な一対のホイールの間に、前記帯鋸刃によって切断されるワークを載置するテーブルが配置され、一方の前記ホイールを収容した上部ハウジングと他方の前記ホイールを収容した下部ハウジングとの間に立設された支柱と、前記帯鋸刃を通過させる通路を前記支柱に隣接して区画する区画壁と、が設けられ、前記支柱と前記区画壁の前面との間に、前記帯鋸刃を前記通路に対して出し入れするために該通路と連通させた開口部が、前記支柱と平行に延設される帯鋸盤において、前記開口部には、弾性材料によって形成されて該開口部を閉塞する閉塞部材を挿脱可能に差し込んだことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記閉塞部材は、前記開口部を閉塞した状態で、前記区画壁内における前記支柱の外側面を全長に亘って押圧する押圧部を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記閉塞部材の側面に、前記区画壁の開口部側端部が差し込み嵌合する切り欠き溝を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る帯鋸盤によれば、開口部に閉塞部材を差し込んで挿着するだけで、簡単に開口部を閉塞できる。これにより、帯鋸刃に付着した切屑が、前記区画壁から開口部を通じて飛散することを防止できる。
さらに、閉塞部材を開口部から取り外すことにより、簡単に開口部を開放させることができる。これにより、例えば、帯鋸刃を交換するために、前記通路に対して帯鋸刃の出し入れが必要になった場合には、開口部を通じて通路に対し容易に帯鋸刃を出し入れできる。
請求項2の発明によれば、区画壁内においては、押圧部が、支柱の外側面の全長に密着可能となる。これにより、押圧部と前記外側面との間に隙間が生じなくなるため、帯鋸刃に付着した切屑が、区画壁内から前記外側面に沿って開口部へ向かうことを阻止できる。
請求項3の発明によれば、切り欠き溝に開口部側端部が差し込み嵌合されると、閉塞部材が区画壁からずれることが防がれて、該閉塞部材を区画壁に安定して支持させることができる。これに伴って、開口部に閉塞部材が安定して差し込まれて、該開口部の閉塞性能が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の帯鋸盤の正面図である。
【図2】同帯鋸盤が備える上部ホイールハウジングを下方から見た断面図である。
【図3】閉塞部材を取り付けた同帯鋸盤の部分拡大正面図である。
【図4】閉塞部材を取り付けた同帯鋸盤の部分拡大断面図である。
【図5】閉塞部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、図1ないし図5を参照しつつ説明する。図1に示す帯鋸盤1は、コラム10と、上部ホイールハウジング20と、下部ホイールハウジング30と、ワークテーブル40と、帯鋸刃ハウジング50とを備えている。
【0013】
コラム10は、架台11の左側(図1中の左方)に立設されている。コラム10の上端には、上部ホイールハウジング20が設けられている。上部ホイールハウジング20の内部には、従動ホイール(図示せず。)が、回転自在に収容されている。なお、上部ホイールハウジング20は、本発明の上部ハウジングの一例である。
【0014】
図2に示すように、上部ホイールハウジング20の内部には、照明装置21が設けられている。照明装置21は、6個の発光ダイオード(図示せず。)を保持している。この照明装置21は、後述するワークに向けて、放射状に投光する。
【0015】
下部ホイールハウジング30は、架台11上であって、コラム10の下端に設けられている。下部ホイールハウジング30の内部には、駆動ホイール(図示せず。)が、回転自在に収容されている。この駆動ホイールは、モータの回転軸に取り付けられている。なお、コラム10は、本発明の支柱の一例であり、下部ホイールハウジング30は、本発明の下部ハウジングの一例である。
【0016】
ワークテーブル40は、帯鋸盤1の上下方向に所定の距離だけ離れた上記の上部ホイールハウジング20(従動ホイール)と上記の下部ホイールハウジング30(駆動ホイール)との間に設けられている。ワークテーブル40上には、ワーク(図示せず。)が載置される。ワークテーブル40には、帯鋸盤1の上下方向に該ワークテーブル40を貫通するスリット(図示せず。)が開口している。ワークテーブル40上には、傾斜定規41Aと、平行定規41Bとが設けられている。
【0017】
上記の従動ホイール及び駆動ホイールには、無端状の帯鋸刃B(図1参照。)が巻回されている。上記のモータを駆動させて、駆動ホイールを回転させることにより、帯鋸刃Bを、帯鋸盤1の上下方向に沿い、上記のスリットを通過して、上部ホイールハウジング20から下部ホイールハウジング30に向けて走行させる。帯鋸刃Bは、ワークテーブル40上に位置決めされたワークを切断する。なお、従動ホイールは、本発明の一方のホイールの一例であり、駆動ホイールは、本発明の他方のホイールの一例である。
【0018】
帯鋸刃ハウジング50は、図1ないし図4に示すように、上記のコラム10に隣接して帯鋸板1の上下方向に延設されている。図4に示すように、帯鋸刃ハウジング50の内部には、帯鋸刃Bが通過可能な帯鋸刃通路51が設けられている。このため、帯鋸刃ハウジング50により、帯鋸刃通路51は、コラム10に隣接して区画される。上記の駆動ホイールを回転させることに伴って、帯鋸刃通路51内では、帯鋸刃Bが、帯鋸盤1の上下方向に沿い、下部ホイールハウジング30から上部ホイールハウジング20に向けて走行する。なお、帯鋸刃ハウジング50は、本発明の区画壁の一例である。
【0019】
加えて、図4中の二点鎖線で示すように、コラム10と、帯鋸刃ハウジング50の前面との間には、開口部52が設けられている。開口部52は、コラム10と平行に帯鋸盤1の上下方向に沿って延設されている。開口部52は、帯鋸刃通路51と連通している。
【0020】
開口部52は、以下に説明するように、帯鋸刃Bを交換する際に、帯鋸刃通路51に対して該帯鋸刃Bを出し入れするために用いられる。帯鋸刃Bを交換する際には、ワークテーブル40からワークを取り外した上で、上部ホイールハウジング20及び下部ホイールハウジング30のそれぞれの扉を開放する。その後、従動ホイール及び駆動ホイールから古い帯鋸刃Bを取り外して開口部52及び上記のスリットを通過させて、上部ホイールハウジング20及び下部ホイールハウジング30の外部へ、古い帯鋸刃Bを取り出す。続いて、新しい帯鋸刃Bを、上部ホイールハウジング20及び下部ホイールハウジング30の外部から開口部52及び前記スリットを通過させて、従動ホイール及び駆動ホイールに巻回する。
【0021】
本実施形態では、上述した帯鋸刃Bの交換を可能としつつ、開口部52からワークの切屑が飛散することを防ぐため、後述のように、開口部52に閉塞部材60を挿脱可能とした。開口部52からワークの切屑が飛散することを防ぐ場合には、開口部52に閉塞部材60を挿着する。
【0022】
閉塞部材60は、ポリプロピレン等の合成樹脂(弾性材料)によって形成されている。図3ないし図5に示すように、閉塞部材60は、嵌合片部61と、押圧片部65とによって、断面が略L字形状を成す長尺部材である。
【0023】
嵌合片部61は、該嵌合片部61の側面に形成された切り欠き溝62(図4参照。)を用い、帯鋸刃ハウジング50の前面と嵌合する。切り欠き溝62は、開口部52の延設方向と平行な嵌合片部61の長手方向に沿うように、開口部52の側端部53(図4参照。)に対向する嵌合片部61の側面から該嵌合片部61の左端に向けて凹設されている。開口部52の延設方向における切り欠き溝62の一端は、嵌合片部61の下端に達しており、該延設方向における切り欠き溝62の他端は、嵌合片部61の天面部61Aに接して該嵌合片部61の内部に位置する。なお、嵌合片部61の側面は、本発明の閉塞部材の側面の一例である。
【0024】
図5に示すように、突出片部63は、嵌合片部61の上端部の外面から前方へ突出している。押圧片部65は、嵌合片部61の左端縁から該嵌合片部61の背面側に向けて伸延している。
【0025】
次に、閉塞部材60を開口部52に挿脱する方法を説明する。閉塞部材60は、以下に説明するようにして、開口部52に挿着される。例えば、作業者は、上部ホイールハウジング20の扉を開放した状態で、帯鋸刃ハウジング50の上端から、図4に示すように、開口部52の側端部53に、切り欠き溝62を差し込む。
【0026】
その後、作業者は、上記の天面部61Aが帯鋸刃ハウジング50の上端面に当接するまで、指で突出片部63を押し下げながら、下部ホイールハウジング30側に向けて、閉塞部材60を移動させる。これによって、図4に示すように、切り欠き溝62に側端部53が嵌合することにより、嵌合片部61が側端部53に嵌合して安定的に支持されると共に、図1及び図3に示すように、嵌合片部61が、帯鋸刃ハウジング50の上下方向における所定の位置に位置決めされる。
【0027】
加えて、押圧片部65は、合成樹脂によって形成されていることから変形し易い。したがって、嵌合片部61が側端部53に嵌合した状態で、押圧片部65が、開口部52から帯鋸刃ハウジング50内へ入り込むと、該帯鋸刃ハウジング50内におけるコラム10の外側面15を全長に亘って押圧するように変形する。このため、押圧片部65が前記外側面15に密着可能となり、押圧片部65と外側面15との間に隙間が生じなくなる。これにより、開口部52が閉塞される。なお、押圧片部65は、本発明の押圧部の一例である。
【0028】
一方、閉塞部材60は、以下に説明するようにして、開口部52から取り外しできる。作業者は、上述したような閉塞部材60を開口部52に挿着する場合とは逆に、指で突出片部63を押し上げながら、上部ホイールハウジング20側に向けて、閉塞部材60を徐々に移動させる。これにより、上記の切り欠き溝62が上記の側端部53に沿って摺動すると共に、押圧片部65が上記の外側面15に沿って摺動しながら、上部ホイールハウジング20側に向けて、閉塞部材60が押し上げられる。
【0029】
その後、作業者が、上述の切り欠き溝62の一端が帯鋸刃ハウジング50の上端面を越えるまで、閉塞部材60を押し上げると、切り欠き溝62と側端部53との嵌合が解除されることにより、嵌合片部61と側端部53との嵌合が解除されると共に、押圧片部65が、弾性変形して外側面15を押圧する前の状態に戻る。その結果として、開口部52から閉塞部材60を抜き取ることができ、コラム10と帯鋸刃ハウジング50の前面との間に、開口部52を開放させることができる。
【0030】
<本実施形態の効果>
本実施形態の帯鋸盤1では、上述したように、開口部52に、閉塞部材60を挿脱可能に差し込むことができ、該開口部52に閉塞部材60を差し込んで挿着することで、開口部52を閉塞した。このため、開口部52に閉塞部材60を差し込むだけで、簡単に開口部52を閉塞できる。これにより、例えば、帯鋸刃Bに付着していた切屑が帯鋸刃ハウジング50(帯鋸刃通路51)内に滞留していた場合であっても、帯鋸刃Bの走行によって発生した回転気流により、該切屑が開口部52を通じて帯鋸刃ハウジング50内から飛散することを防止できる。
さらに、上述の如く、開口部52に差し込んだ閉塞部材60を、該開口部52から取り外すことにより、簡単に開口部52を開放させることができる。これにより、上述したような古い帯鋸刃Bを新しい帯鋸刃Bに交換する際には、開口部52を通じて帯鋸刃通路51から古い帯鋸刃Bを取り出したり、開口部52を通じて帯鋸刃通路51に対し、容易に新しい帯鋸刃Bを入れることができる。
【0031】
また、上述したように、押圧片部65は、開口部52を閉塞した状態で、帯鋸刃ハウジング50内におけるコラム10の外側面15を全長に亘って押圧するように変形するため、該帯鋸刃ハウジング50内においては、押圧片部65が、前記外側面15に密着可能となる。これにより、押圧片部65と外側面15との間に隙間が生じなくなるため、帯鋸刃Bに付着していた切屑が、帯鋸刃ハウジング50内から外周面15に沿って開口部52に向かうことを阻止できる。
【0032】
さらに、上述したように、開口部52の側端部53に、切り欠き溝62を差し込んで嵌させることにより、閉塞部材60が帯鋸刃ハウジング50からずれることが防がれて、該閉塞部材60を帯鋸刃ハウジング50に安定して支持させることができる。これに伴って、開口部52に閉塞部材60が安定して差し込まれて、該開口部52の閉塞性能が良好になる。
【0033】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば、上述した実施形態では、閉塞部材60が、上部ホイールハウジング20と下部ホイールハウジング30との間に設けられた帯鋸刃通路51と連通する開口部52を閉塞する例を説明したが、これに限定されない。例えば、上述した実施形態とは異なり、閉塞部材は、上述の従動ホイールを収容した左側ホイールハウジングと、上述の駆動ホイールを収容した右側ホイールハウジングとの間を連結する帯鋸刃通路と連通する開口部を閉塞するものであってもよい。
【0034】
また、上述した実施形態では、合成樹脂によって、閉塞部材60を形成した例を示したが、これに限定されず、合成ゴム等の弾性材料によって、閉塞部材60を形成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・帯鋸盤、10・・コラム、15・・コラムの外側面、20・・上部ホイールハウジング、30・・下部ホイールハウジング、40・・ワークテーブル、50・・帯鋸刃ハウジング、51・・帯鋸刃通路、52・・開口部、53・・開口部の側端部、60・・閉塞部材、62・・切り欠き溝、65・・押圧片部、B・・帯鋸刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の帯鋸刃が巻回されて回転可能な一対のホイールの間に、前記帯鋸刃によって切断されるワークを載置するテーブルが配置され、一方の前記ホイールを収容した上部ハウジングと他方の前記ホイールを収容した下部ハウジングとの間に立設された支柱と、前記帯鋸刃を通過させる通路を前記支柱に隣接して区画する区画壁と、が設けられ、前記支柱と前記区画壁の前面との間に、前記帯鋸刃を前記通路に対して出し入れするために該通路と連通させた開口部が、前記支柱と平行に延設される帯鋸盤において、
前記開口部には、弾性材料によって形成されて該開口部を閉塞する閉塞部材を挿脱可能に差し込んだことを特徴とする帯鋸盤。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記開口部を閉塞した状態で、前記区画壁内における前記支柱の外側面を全長に亘って押圧する押圧部を備えることを特徴とする請求項1に記載の帯鋸盤。
【請求項3】
前記閉塞部材の側面に、前記区画壁の開口部側端部が差し込み嵌合する切り欠き溝を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯鋸盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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