帯電微粒子サンプリング装置および帯電量分布測定装置
【課題】微粒子の帯電状態を測定する測定装置に帯電微粒子を導入するサンプリング過程において帯電微粒子の帯電量が変化することを抑える帯電微粒子サンプリング装置を提供する。
【解決手段】サンプリング装置200は、スリット201、上側開口部202、FPC21A,21B、電圧印加装置300を備える。スリット201は、測定装置100に形成された帯電微粒子導入口108に対向するように配置される。上側開口部202は、トナー群400を受け入れる。FPC21A,21Bは、上側開口部202を介して内部に導入されたトナー群を、スリット201へと案内するガイド面を有する。電圧印加装置300は、FPC21A,21Bに形成された複数の電極群に交流電圧を印加し、ガイド面近傍に電界カーテンを形成する。
【解決手段】サンプリング装置200は、スリット201、上側開口部202、FPC21A,21B、電圧印加装置300を備える。スリット201は、測定装置100に形成された帯電微粒子導入口108に対向するように配置される。上側開口部202は、トナー群400を受け入れる。FPC21A,21Bは、上側開口部202を介して内部に導入されたトナー群を、スリット201へと案内するガイド面を有する。電圧印加装置300は、FPC21A,21Bに形成された複数の電極群に交流電圧を印加し、ガイド面近傍に電界カーテンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電状態が測定される帯電微粒子を帯電状態測定装置の内部に導く帯電微粒子サンプリング装置、およびこの帯電微粒子サンプリング装置を備えた帯電量分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナー粒子等の帯電微粒子の特性を管理する手法として、平均帯電量測定法や帯電量分布測定法が用いられることが多かった(例えば、非特許文献1。)。
【0003】
平均帯電量測定法の例としては、ファラデーケージ法およびブローオフ法が挙げられる。これらの平均帯電量測定法は、簡易な測定方法であり、古くから広く用いられていた。
【0004】
ところが、平均帯電量が規格範囲であってもトナーの「かぶり」や低印字濃度等の画質劣化が発生することがある。つまり、「かぶり」等の画質劣化はトナーの平均帯電量だけでは説明できない。
【0005】
そこで、平均帯電量測定法だけでは説明できない帯電微粒子の特性を管理することを意図した測定方法として帯電量分布測定法の検討が進められるようになった。
【0006】
帯電量分布測定法の従来例として、トナーが分散した空気の流速が一定になるように制御しつつ測定室内にトナーを導入するとともに、測定室内の電界を用いて個々のトナーの偏向量を測定することによって帯電量分布を求める装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、帯電量分布測定法の別の従来例として、一定周波数で音波振動を発生すると同時に、平行平板電極間に一様電界を形成し、その中にトナー粒子を通過させ、粒子の位相遅れと偏向量をレーザードップラー法によって測定する測定方法が挙げられる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、従来、水平方向に一様電界を形成し、鉛直方向に重力のみで帯電粒子を沈降させることによって、空気の流速制御を必要としない測定方法が用いられることがあった(例えば、非特許文献3参照。)。
【0009】
なお、従来技術の中には、進行波電界により帯電微粒子を水平方向に搬送することによって、帯電微粒子を帯電量分布測定装置に導入する技術を採り入れたものがあった(例えば、特許文献2,3参照。)。
【特許文献1】米国特許第4375673号明細書
【特許文献2】特開2002−311073号公報
【特許文献3】特開2001−116786号公報
【非特許文献1】木村正利、「現像剤測定法(2)−帯電量−」、電子写真学会誌、第30巻、第2号(1991)、168〜174頁
【非特許文献2】辻本広行、彼谷憲美、「E−SPARTアナライザによる帯電量測定に及ぼす空気吸引量と印加電圧の影響」、粉砕、No.35(1991)、48〜54頁
【非特許文献3】増田弘昭、後藤邦彰、折田伸昭、「エアロゾル粒子の帯電量分布測定」、エアロゾル研究、Vol.8、No.4(1993)、325〜332頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のいずれの従来技術でも、トナーを分離して測定部に導くサンプリングの過程において、トナーが他の部材と接触することによってトナーの帯電量が変化するという問題が発生する。
【0011】
また、帯電量分布測定法を採り入れた上述の従来技術のうち、特許文献1および非特許文献2に係る帯電量分布測定装置では、電界を形成している測定部における空気の流速を一定にするための制御手段が必要である。このような制御手段は一般的に高額であり、かつ、このような制御手段を設けることによって帯電量測定装置が大型化するという不都合があった。
【0012】
この発明の目的は、微粒子の帯電状態を測定する測定装置に帯電微粒子を重力沈降で導入するサンプリング過程において帯電微粒子の帯電量が変化することを抑える帯電微粒子サンプリング装置およびこの帯電微粒子サンプリング装置を備えた帯電量分布測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る帯電微粒子サンプリング装置は、帯電状態が測定される帯電微粒子群を帯電状態測定装置の内部に導く。帯電微粒子サンプリング装置は、本体、ガイド部材、および電界カーテン形成部を備える。本体は、帯電微粒子群を受け入れる第1の開口部を上側に有し、かつ、帯電微粒子群を排出する第2の開口部を下側に有する。ガイド部材は、第1の開口部から第2の開口部に向かって鉛直方向に沿って延びる帯電微粒子の流路を画定する。電界カーテン形成部は、ガイド部材におけるガイド面近傍に電界カーテンを形成する。
【0014】
帯電微粒子は、第1の開口部を介して帯電微粒子サンプリング装置の内部に導入され、さらに第2の開口部を介して帯電状態測定装置の帯電微粒子導入口に案内される。帯電微粒子サンプリング装置の内部において、ガイド部材によって案内されつつ帯電微粒子は第1の開口部から第2の開口部に導かれる。このとき、ガイド部材のガイド面近傍には、ガイド面と帯電微粒子との接触を防ぐための電界カーテンが形成される。このため、帯電微粒子サンプリング装置の内部を帯電微粒子が通り抜ける間、ガイド部材のガイド面と帯電微粒子とは非接触の状態に保たれる。
【0015】
このため、帯電微粒子を測定装置の内部に導入する際に、帯電微粒子が他の物体に接触しにくくなるため、帯電微粒子の帯電量の変化が起こりにくくなる。この結果、帯電微粒子の帯電状態の測定精度が向上する。
【0016】
なお、ガイド部材は、ファンネル状(漏斗状)にすることが好ましい。ガイド部材をファンネル状(漏斗状)にすることによって、より多くの帯電微粒子が集められ、帯電微粒子が密になった状態で帯電量分布測定装置の方へ導入される。その結果、帯電微粒子の測定効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
微粒子の帯電状態を測定する測定装置に帯電微粒子を重力沈降で導入するサンプリング過程において帯電微粒子の帯電量が変化しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る帯電微粒子サンプリング装置(以下、単にサンプリング装置という。)200、および帯電量分布測定装置(以下、単に測定装置という。)100は、現像装置10の下方に配置される。現像装置10におけるトナーの帯電量分布測定を行なう際には、現像装置10から落下するトナーがサンプリング装置200を介して測定装置100内に集められる。
【0019】
現像装置10は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。現像装置10は、現像槽16、トナー供給ローラ14、現像ローラ13、およびトナー規制ブレード15を備える。現像槽16は、感光体に供給されるべきトナーを収容する。トナー供給ローラ14は、現像槽16内のトナーを現像ローラ13の周面に供給する。現像ローラ13は、感光体の周面にトナーを供給する。トナー規制ブレード15は、現像ローラ13の周面へのトナーの付着量を規制する。現像ローラ13とトナー供給ローラ14との間、および現像ローラ13とトナー規制ブレード15との間には、予め設定されたバイアス電圧が印加される。その結果、現像装置10内でトナーは帯電されるとともに、現像ローラ13の表面に一定の厚みを有するトナー層が形成される。
【0020】
現像装置10の近傍、具体的には、現像ローラ13の周面における現像装置10の外部に張り出した部分の近傍には、ブローオフノズル17が配置される。ブローオフノズル17は、現像ローラ13上に形成されたトナー層に対して圧縮空気50を噴射することによって、現像ローラ13の周面からトナー400を分離させてサンプリング装置200の方に落下させる。ブローオフノズル17による圧縮空気50の噴射は、現像ローラ13が設定された速度で矢印60で示す方向に回転している時に行なわれる。ブローオフノズル17による圧縮空気の噴射量は、測定装置100の内部の気流を乱さない程度の量に設定される。また、ブローオフノズル17は、電磁弁を用いて間欠的に空気の噴射を行なう。具体的には、15分の期間において3.5秒毎に0.5秒間噴射している。間欠的に空気の噴射をするのは測定装置100内部の気流の影響を少なくするためである。ただし、測定装置100内部の気流の影響が生じない場合には、ブローオフノズル17から連続的に空気を噴射しても良い。
【0021】
本実施形態では、ブローオフノズル17として、孔径0.3mmの先の細いノズルを用い、かつ、その先端を可能な限り現像ローラ13に接近させている。これは、少ない流量でトナーを吹き飛ばすことを意図したものである。ブローオフノズル17は、現像ローラ13の軸方向に沿って往復運動しつつブローする動作モード、または、設定された位置に静止しつつブローする動作モードによって動作するように構成される。
【0022】
図2に示すように、ブローオフノズル17によって吹き落とされたトナー400は、サンプリング装置200の内部に落下する。サンプリング装置200は、上方および下方にそれぞれ開放しており、測定装置100の上面に形成されたスリット状の帯電粒子導入口108にトナーを導く役割を果たす。本実施形態では、上側開放口202の幅W1は約120mmであり、下側のスリット201における幅W2は約1mmである。スリット201の幅W2は、帯電粒子導入口108のサイズに対応するように設定される。
【0023】
図3(A)に示すように、サンプリング装置200は一対のフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという。)21A,21Bを備える。FPC21A,21Bは、それぞれ測定装置100の帯電粒子導入口108にトナー400を案内する傾斜したガイド面を構成するように配置される。その結果、サンプリング装置200において下方にいくにしたがって、トナー400の案内経路が狭くなっている。なお、本実施形態では、FPC21A,21Bは左右対称に配置される。
【0024】
図3(B)に示すように、FPC21Aは、第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aを備える。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aは、それぞれ複数の線状電極から構成される。
【0025】
図3(C)は、FPC21Aの一部を示している。FPC21Aに適用される線状電極26A,26Bは、幅127μm、周期254μm、厚み12μmに設定される。線状電極26A,26Bは、ポリイミド基材24上に形成されており、ポリイミドコート25が施される。なお、ここでは、ポリイミド基材24は厚さ50μm、ポリイミドコート25は厚さ12.5μmに設定される。線状電極26Aは、第1の電極群22Aに接続されており、線状電極26Bは第2の電極群23Aに接続される。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aは、それぞれ電圧印加装置300Aに接続される。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aに、互いに180°位相が異なる交流電圧を印加することによって、電界カーテンが形成される。
【0026】
このように、隣り合う2つの電極に180度位相がシフトした電圧を印加することにより、定在波の電界カーテンが形成される。また、3組の電極群を用いた場合、隣り合う2つの電極に120度位相がシフトした電圧を印加することにより、進行波の電界カーテンが形成される。4組の電極群を用いた場合、隣り合う2つの電極に90度位相がシフトした電圧を印加することにより、進行波の電界カーテンが形成が形成される。
【0027】
本実施形態では、第1の電極群22A、第2の電極群23A、および電圧印加装置300によって本発明の電界カーテン形成部が構成される。なお、FPC21Bの構成は、FPC21Aと同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0028】
サンプリング装置200の下方には測定装置100が配置される。図4に示すように、測定装置100は、平行平板電極(101,102)、上面板(103A、103B)、側面板106、底面板104、トナー粒子補集板105、電源111、112、平面状電極(109A,109B)を備える。平行平板電極(101,102)は、帯電微粒子であるトナーを電界によって偏向させるために鉛直方向に沿って配置される。上面板(103A、103B)は、厚み10mm程度のガラス板によって構成されており、取り外し自在な蓋体として機能する。上面板103Aおよび103Bは、それぞれの間に幅1mmのスリット状の帯電粒子導入口108が形成されるように配置される。上面板(103A、103B)としては、アクリル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂であっても良いが、帯電しにくいガラスが最適である。これは、上面板(103A、103B)の帯電によって、帯電粒子が付着したり、測定装置100内部の測定空間の電界を乱したりしないからである。
【0029】
側面板106は、アクリル板によって構成されており、測定装置100の内部の測定空間を取り囲むように配置される。底面板104は、測定装置100の底面を構成する。トナー粒子補集板105は、ガラス板によって構成される。電源111は、平行平板電極101に電圧を印加する。電源112は、平行平板電極102に電圧を印加する。平面状電極109A,109Bは、上面板103A,103Bにそれぞれ接続されるとともに、図示しない電圧印加部によって電圧が印加される。
【0030】
続いて、トナーの帯電分布の測定について説明する。帯電粒子導入口108を介して測定装置100内に導入されたトナーは、重力によって鉛直方法に力を加えられ、平行平板電極101,102間の電界によるクーロン力によって水平方向に力を加えられる。このとき、帯電量の大きなトナーは、電界による水平方向への移動量が大きくなるため、平行平板電極101,102の上部に付着する。一方、帯電量の小さなトナーは、電界による水平方向への移動量が小さくなるため、平行平板電極101,102の下部またはトナー粒子補集板105の上面に付着する。そして、トナーの付着位置や各付着位置におけるトナーの付着量を計測することで、トナーの帯電状態、具体的にはトナーの帯電量分布が測定される。
【0031】
ここで、簡単にトナーの帯電量分布の測定原理を説明する。
【0032】
平行平板電極101,102により作られる、重力の作用方向と直交する電界中でのトナーの終末沈降速度[m/s]は
水平方向
【0033】
【数1】
【0034】
鉛直方向
【0035】
【数2】
【0036】
で表せる。
【0037】
但し、
Cc:カニンガムの補正係数
q:トナー粒子一個の電荷量[C]
E:平行平板間の電界[V/m]
μ:空気の粘度[Pa×s]
Dp:トナー粒子の直径(顕微鏡法による円相当径で表したもの)[m]
mp:トナー粒子の質量[kg]
g:重力加速度[m/s2 ]
Ux:気流のx方向(電界の方向)の速度成分
Uy:気流のy方向(重力の方向)の速度成分
である。
【0038】
静止気流中での粒子の運動を考えると、気流の速度成分Ux,Uyは、共に0である。
【0039】
また、0.2μm以上の粒子ではカニンガム係数Ccは、略1であるので、トナーを測定する場合には、カニンガム係数Cc を測定する場合には、カニンガム係数Cc を1として取り扱うことができる。測定空間の上部中央から重力沈降した帯電粒子の付着位置(x,y)は、
【0040】
【数3】
【0041】
の関係で表される。
【0042】
上記(3)式より、付着位置と付着量から帯電量分布が求められる。
【0043】
続いて、図5、図6を用いて、電界カーテンを形成する適正な交流電圧について説明する。
【0044】
図5は、交流の周波数を500Hzに固定し、印加電圧の振幅を変化させたときのFPC(21A,21B)表面への付着トナー数を測定した結果を示す。図5に示すように、印加電圧の振幅の増加にともなって付着トナー数が減少した。つまり、印加電圧の振幅の増加によって、電界カーテンの効果が向上した。
【0045】
図6は、交流印加電圧の振幅を400Vに固定し、周波数を変化させたときのFPC(21A,21B)表面への付着トナー数を測定した結果を示す。図6に示すように、周波数の増加にともなって付着トナー数が減少した。つまり、周波数の増加によって、電界カーテンの効果が向上した。
【0046】
図7は、サンプリング装置200および測定装置100を用いてトナー粒子帯電量分布を測定した結果を示す。図7において、横軸は帯電量q/m(μC/g)であり、縦軸はトナー粒子のカウント数である。
【0047】
図4において、測定装置100底面のトナー粒子補集板105や、測定装置100側面の平行平板電極101,102に付着したトナーの(x,y)座標を計測し、式3に代入することにより、その付着場所のトナーの帯電量(q/m)が算出される。図7では、この帯電量を横軸にし、微小エリアの同一場所で計測されたトナーの個数を縦軸にすることによって、トナーの帯電量分布を表している。
【0048】
帯電量測定のために空間中に分離されたトナー400は、ブローオフによって現像ローラ13から分離されるために空間中に大きく広がってしまう。本実施形態のブローオフの場合、幅約100mmにわたって広がってしまう。このため、測定装置100の上面に向かって重力落下したトナーのうち、幅1mmのスリット状の帯電粒子導入口108に入って測定に寄与する割合は1/100程度となる。これに対して、サンプリング装置200を用いると、上側開放口202の幅W1が約120mmであるため、空間中に広がったトナー400をほぼすべて集めることができる。また、重力落下とともに電界カーテンによりトナーを中央部に集め、測定装置100の帯電粒子導入口108に導入することができる。このため、ブローオフしたトナーの利用効率が、サンプリング装置200を用いない場合に比較して約100倍となる。
【0049】
上述の実施形態では、2組の電極群(22A,23A)を用いて定在波の電界カーテンを形成する例を示したが、電界カーテンの形成手法はこれに限定されるものではない。例えば、3組以上の電極群を用いて進行波の電界カーテンを形成しても良い。
【0050】
また、上述の実施形態では、帯電量分布測定法にサンプリング装置200を用いているが、図8に示すように、サンプリング装置200をファラデーケージ500上に配置すれば、ファラデーケージ法やブローオフ法にもサンプリング装置200を適用することが可能である。
【0051】
さらに、測定装置100の上面板103Aおよび103Bに代えて、上面板107Aおよび107Bを用いても良い。上面板103Aおよび103Bの間には、帯電微粒子導入口114が形成される。帯電微粒子導入口114は、同一鉛直線上に配置された2つのスリット120、121を備える。スリット120、121は、それぞれ開口幅1mmのスリットである。2つのスリット120、121の間には、トナーを集めるための空間122が形成される。帯電微粒子導入口114にスリット120、121を設けたことによって、水平方向の速度成分を持つトナーが、測定装置100内に進入することが防止される。この結果、測定装置100における測定誤差が発生しにくくなる。ここでは、帯電微粒子導入口114に2重のスリットを持たせた構成を説明したが、帯電微粒子導入口114に3重以上のスリットを持たせることも可能である。
【0052】
上述の実施形態では、図10(A)に示す線状電極の構成を採用した。その理由は、重力沈降しているトナーに対して水平方向かつスリット201の長手方向の力を加えないためである。つまり、トナーがその水平方向の速度成分を持つと、本来付着すべき位置とは異なる位置でトナー粒子補集板105に付着するからである。
【0053】
しかしながら、図10(A)の構成の場合には、帯電微粒子の質量と電荷量によっては、スリット201の部分で帯電微粒子が静止して落下しないことがある。その理由は、下向きの重力と電界カーテンの上向きの静電気力が釣り合うことがあるからである。図10(A)の構成において、万一、スリット201にて帯電微粒子の滞留が生じる場合には、図10(B)に示す線状電極の構成を採用しても良い。図10(B)では、水平方向に配列された線状電極を示している。この構成において、互いに位相が180度異なる交流電圧を印加して定在波を形成することにより、帯電微粒子が壁面に付着することが防止される。さらに、図10(B)の構成では、図10(A)の構成に比較してスリット201にて帯電微粒子の滞留が生じにくい。なお、電極の構成として図10(A)または図10(B)のいずれの構成を採用するかは、測定する帯電微粒子の特性によって最適なものを適宜選択すれば良い。
【0054】
上述の実施形態では、図11(A)に示すように、ガイド部材面だけにFPC電極群を形成した。この構成において、万一、第2の開口部にトナーが付着したり、水平方向の速度成分を持つトナーが多く排出される場合には、図11(B)に示す構成を採用することが好ましい。
【0055】
図11(A)に示す構成では、第2の開口部において、電界カーテンを形成するFPCの端部や開口部の形状的な不連続性から電界が不均一となる場合がある。これに対して、図11(B)のようにFPC電極群をガイド面から第2の開口部まで十分に巻き込んだ構成とすることにより、電界形成が連続的となり効率的かつ垂直方向へのトナー排出が可能になる。
【0056】
また、2相定在波駆動電極の間に、GND電位またはフロート状態のダミー電極を設けても良い。例えば、図12に示すように、254μm周期で構成される第1の電極と第2の電極の中間に、第3の電極26Cを設けた電極構造とすることが挙げられる。第1の電極と第2の電極には互いに位相が180度異なる交流電圧を印加し、第3の電極は接地(0V)またはフロート状態として定在波を形成する。このように3組の電極とした場合、2組の電極構造よりも、より効果的に帯電微粒子が壁面に付着することを防止できた。その理由として、交流を印加する2組の電極間に第3の電極を設けることにより、電極間の電位を安定化することが挙げられる。つまり、電界カーテンが安定化して帯電微粒子の壁面付着防止効果が向上したからであると言える。
【0057】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電量分布測定手法の説明図である。
【図2】サンプリング装置および測定装置の概略構成を示す図である。
【図3】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図4】測定装置の概略構成を示す図である。
【図5】電圧値と電界カーテンの効果との関係を示すグラフである。
【図6】周波数と電界カーテンの効果との関係を示すグラフである。
【図7】サンプリング装置および測定装置によるトナー粒子帯電量分布の測定結果を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る帯電量分布測定手法の説明図である。
【図9】測定装置の上面板の構成の他の例を示す図である。
【図10】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図11】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図12】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10−現像装置
21A,21B−フレキシブルプリント配線板(FPC)
100−帯電量分布測定装置
200−帯電微粒子サンプリング装置
300−電圧印加装置
400−トナー群
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電状態が測定される帯電微粒子を帯電状態測定装置の内部に導く帯電微粒子サンプリング装置、およびこの帯電微粒子サンプリング装置を備えた帯電量分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナー粒子等の帯電微粒子の特性を管理する手法として、平均帯電量測定法や帯電量分布測定法が用いられることが多かった(例えば、非特許文献1。)。
【0003】
平均帯電量測定法の例としては、ファラデーケージ法およびブローオフ法が挙げられる。これらの平均帯電量測定法は、簡易な測定方法であり、古くから広く用いられていた。
【0004】
ところが、平均帯電量が規格範囲であってもトナーの「かぶり」や低印字濃度等の画質劣化が発生することがある。つまり、「かぶり」等の画質劣化はトナーの平均帯電量だけでは説明できない。
【0005】
そこで、平均帯電量測定法だけでは説明できない帯電微粒子の特性を管理することを意図した測定方法として帯電量分布測定法の検討が進められるようになった。
【0006】
帯電量分布測定法の従来例として、トナーが分散した空気の流速が一定になるように制御しつつ測定室内にトナーを導入するとともに、測定室内の電界を用いて個々のトナーの偏向量を測定することによって帯電量分布を求める装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、帯電量分布測定法の別の従来例として、一定周波数で音波振動を発生すると同時に、平行平板電極間に一様電界を形成し、その中にトナー粒子を通過させ、粒子の位相遅れと偏向量をレーザードップラー法によって測定する測定方法が挙げられる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、従来、水平方向に一様電界を形成し、鉛直方向に重力のみで帯電粒子を沈降させることによって、空気の流速制御を必要としない測定方法が用いられることがあった(例えば、非特許文献3参照。)。
【0009】
なお、従来技術の中には、進行波電界により帯電微粒子を水平方向に搬送することによって、帯電微粒子を帯電量分布測定装置に導入する技術を採り入れたものがあった(例えば、特許文献2,3参照。)。
【特許文献1】米国特許第4375673号明細書
【特許文献2】特開2002−311073号公報
【特許文献3】特開2001−116786号公報
【非特許文献1】木村正利、「現像剤測定法(2)−帯電量−」、電子写真学会誌、第30巻、第2号(1991)、168〜174頁
【非特許文献2】辻本広行、彼谷憲美、「E−SPARTアナライザによる帯電量測定に及ぼす空気吸引量と印加電圧の影響」、粉砕、No.35(1991)、48〜54頁
【非特許文献3】増田弘昭、後藤邦彰、折田伸昭、「エアロゾル粒子の帯電量分布測定」、エアロゾル研究、Vol.8、No.4(1993)、325〜332頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のいずれの従来技術でも、トナーを分離して測定部に導くサンプリングの過程において、トナーが他の部材と接触することによってトナーの帯電量が変化するという問題が発生する。
【0011】
また、帯電量分布測定法を採り入れた上述の従来技術のうち、特許文献1および非特許文献2に係る帯電量分布測定装置では、電界を形成している測定部における空気の流速を一定にするための制御手段が必要である。このような制御手段は一般的に高額であり、かつ、このような制御手段を設けることによって帯電量測定装置が大型化するという不都合があった。
【0012】
この発明の目的は、微粒子の帯電状態を測定する測定装置に帯電微粒子を重力沈降で導入するサンプリング過程において帯電微粒子の帯電量が変化することを抑える帯電微粒子サンプリング装置およびこの帯電微粒子サンプリング装置を備えた帯電量分布測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る帯電微粒子サンプリング装置は、帯電状態が測定される帯電微粒子群を帯電状態測定装置の内部に導く。帯電微粒子サンプリング装置は、本体、ガイド部材、および電界カーテン形成部を備える。本体は、帯電微粒子群を受け入れる第1の開口部を上側に有し、かつ、帯電微粒子群を排出する第2の開口部を下側に有する。ガイド部材は、第1の開口部から第2の開口部に向かって鉛直方向に沿って延びる帯電微粒子の流路を画定する。電界カーテン形成部は、ガイド部材におけるガイド面近傍に電界カーテンを形成する。
【0014】
帯電微粒子は、第1の開口部を介して帯電微粒子サンプリング装置の内部に導入され、さらに第2の開口部を介して帯電状態測定装置の帯電微粒子導入口に案内される。帯電微粒子サンプリング装置の内部において、ガイド部材によって案内されつつ帯電微粒子は第1の開口部から第2の開口部に導かれる。このとき、ガイド部材のガイド面近傍には、ガイド面と帯電微粒子との接触を防ぐための電界カーテンが形成される。このため、帯電微粒子サンプリング装置の内部を帯電微粒子が通り抜ける間、ガイド部材のガイド面と帯電微粒子とは非接触の状態に保たれる。
【0015】
このため、帯電微粒子を測定装置の内部に導入する際に、帯電微粒子が他の物体に接触しにくくなるため、帯電微粒子の帯電量の変化が起こりにくくなる。この結果、帯電微粒子の帯電状態の測定精度が向上する。
【0016】
なお、ガイド部材は、ファンネル状(漏斗状)にすることが好ましい。ガイド部材をファンネル状(漏斗状)にすることによって、より多くの帯電微粒子が集められ、帯電微粒子が密になった状態で帯電量分布測定装置の方へ導入される。その結果、帯電微粒子の測定効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
微粒子の帯電状態を測定する測定装置に帯電微粒子を重力沈降で導入するサンプリング過程において帯電微粒子の帯電量が変化しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る帯電微粒子サンプリング装置(以下、単にサンプリング装置という。)200、および帯電量分布測定装置(以下、単に測定装置という。)100は、現像装置10の下方に配置される。現像装置10におけるトナーの帯電量分布測定を行なう際には、現像装置10から落下するトナーがサンプリング装置200を介して測定装置100内に集められる。
【0019】
現像装置10は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。現像装置10は、現像槽16、トナー供給ローラ14、現像ローラ13、およびトナー規制ブレード15を備える。現像槽16は、感光体に供給されるべきトナーを収容する。トナー供給ローラ14は、現像槽16内のトナーを現像ローラ13の周面に供給する。現像ローラ13は、感光体の周面にトナーを供給する。トナー規制ブレード15は、現像ローラ13の周面へのトナーの付着量を規制する。現像ローラ13とトナー供給ローラ14との間、および現像ローラ13とトナー規制ブレード15との間には、予め設定されたバイアス電圧が印加される。その結果、現像装置10内でトナーは帯電されるとともに、現像ローラ13の表面に一定の厚みを有するトナー層が形成される。
【0020】
現像装置10の近傍、具体的には、現像ローラ13の周面における現像装置10の外部に張り出した部分の近傍には、ブローオフノズル17が配置される。ブローオフノズル17は、現像ローラ13上に形成されたトナー層に対して圧縮空気50を噴射することによって、現像ローラ13の周面からトナー400を分離させてサンプリング装置200の方に落下させる。ブローオフノズル17による圧縮空気50の噴射は、現像ローラ13が設定された速度で矢印60で示す方向に回転している時に行なわれる。ブローオフノズル17による圧縮空気の噴射量は、測定装置100の内部の気流を乱さない程度の量に設定される。また、ブローオフノズル17は、電磁弁を用いて間欠的に空気の噴射を行なう。具体的には、15分の期間において3.5秒毎に0.5秒間噴射している。間欠的に空気の噴射をするのは測定装置100内部の気流の影響を少なくするためである。ただし、測定装置100内部の気流の影響が生じない場合には、ブローオフノズル17から連続的に空気を噴射しても良い。
【0021】
本実施形態では、ブローオフノズル17として、孔径0.3mmの先の細いノズルを用い、かつ、その先端を可能な限り現像ローラ13に接近させている。これは、少ない流量でトナーを吹き飛ばすことを意図したものである。ブローオフノズル17は、現像ローラ13の軸方向に沿って往復運動しつつブローする動作モード、または、設定された位置に静止しつつブローする動作モードによって動作するように構成される。
【0022】
図2に示すように、ブローオフノズル17によって吹き落とされたトナー400は、サンプリング装置200の内部に落下する。サンプリング装置200は、上方および下方にそれぞれ開放しており、測定装置100の上面に形成されたスリット状の帯電粒子導入口108にトナーを導く役割を果たす。本実施形態では、上側開放口202の幅W1は約120mmであり、下側のスリット201における幅W2は約1mmである。スリット201の幅W2は、帯電粒子導入口108のサイズに対応するように設定される。
【0023】
図3(A)に示すように、サンプリング装置200は一対のフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという。)21A,21Bを備える。FPC21A,21Bは、それぞれ測定装置100の帯電粒子導入口108にトナー400を案内する傾斜したガイド面を構成するように配置される。その結果、サンプリング装置200において下方にいくにしたがって、トナー400の案内経路が狭くなっている。なお、本実施形態では、FPC21A,21Bは左右対称に配置される。
【0024】
図3(B)に示すように、FPC21Aは、第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aを備える。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aは、それぞれ複数の線状電極から構成される。
【0025】
図3(C)は、FPC21Aの一部を示している。FPC21Aに適用される線状電極26A,26Bは、幅127μm、周期254μm、厚み12μmに設定される。線状電極26A,26Bは、ポリイミド基材24上に形成されており、ポリイミドコート25が施される。なお、ここでは、ポリイミド基材24は厚さ50μm、ポリイミドコート25は厚さ12.5μmに設定される。線状電極26Aは、第1の電極群22Aに接続されており、線状電極26Bは第2の電極群23Aに接続される。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aは、それぞれ電圧印加装置300Aに接続される。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aに、互いに180°位相が異なる交流電圧を印加することによって、電界カーテンが形成される。
【0026】
このように、隣り合う2つの電極に180度位相がシフトした電圧を印加することにより、定在波の電界カーテンが形成される。また、3組の電極群を用いた場合、隣り合う2つの電極に120度位相がシフトした電圧を印加することにより、進行波の電界カーテンが形成される。4組の電極群を用いた場合、隣り合う2つの電極に90度位相がシフトした電圧を印加することにより、進行波の電界カーテンが形成が形成される。
【0027】
本実施形態では、第1の電極群22A、第2の電極群23A、および電圧印加装置300によって本発明の電界カーテン形成部が構成される。なお、FPC21Bの構成は、FPC21Aと同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0028】
サンプリング装置200の下方には測定装置100が配置される。図4に示すように、測定装置100は、平行平板電極(101,102)、上面板(103A、103B)、側面板106、底面板104、トナー粒子補集板105、電源111、112、平面状電極(109A,109B)を備える。平行平板電極(101,102)は、帯電微粒子であるトナーを電界によって偏向させるために鉛直方向に沿って配置される。上面板(103A、103B)は、厚み10mm程度のガラス板によって構成されており、取り外し自在な蓋体として機能する。上面板103Aおよび103Bは、それぞれの間に幅1mmのスリット状の帯電粒子導入口108が形成されるように配置される。上面板(103A、103B)としては、アクリル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂であっても良いが、帯電しにくいガラスが最適である。これは、上面板(103A、103B)の帯電によって、帯電粒子が付着したり、測定装置100内部の測定空間の電界を乱したりしないからである。
【0029】
側面板106は、アクリル板によって構成されており、測定装置100の内部の測定空間を取り囲むように配置される。底面板104は、測定装置100の底面を構成する。トナー粒子補集板105は、ガラス板によって構成される。電源111は、平行平板電極101に電圧を印加する。電源112は、平行平板電極102に電圧を印加する。平面状電極109A,109Bは、上面板103A,103Bにそれぞれ接続されるとともに、図示しない電圧印加部によって電圧が印加される。
【0030】
続いて、トナーの帯電分布の測定について説明する。帯電粒子導入口108を介して測定装置100内に導入されたトナーは、重力によって鉛直方法に力を加えられ、平行平板電極101,102間の電界によるクーロン力によって水平方向に力を加えられる。このとき、帯電量の大きなトナーは、電界による水平方向への移動量が大きくなるため、平行平板電極101,102の上部に付着する。一方、帯電量の小さなトナーは、電界による水平方向への移動量が小さくなるため、平行平板電極101,102の下部またはトナー粒子補集板105の上面に付着する。そして、トナーの付着位置や各付着位置におけるトナーの付着量を計測することで、トナーの帯電状態、具体的にはトナーの帯電量分布が測定される。
【0031】
ここで、簡単にトナーの帯電量分布の測定原理を説明する。
【0032】
平行平板電極101,102により作られる、重力の作用方向と直交する電界中でのトナーの終末沈降速度[m/s]は
水平方向
【0033】
【数1】
【0034】
鉛直方向
【0035】
【数2】
【0036】
で表せる。
【0037】
但し、
Cc:カニンガムの補正係数
q:トナー粒子一個の電荷量[C]
E:平行平板間の電界[V/m]
μ:空気の粘度[Pa×s]
Dp:トナー粒子の直径(顕微鏡法による円相当径で表したもの)[m]
mp:トナー粒子の質量[kg]
g:重力加速度[m/s2 ]
Ux:気流のx方向(電界の方向)の速度成分
Uy:気流のy方向(重力の方向)の速度成分
である。
【0038】
静止気流中での粒子の運動を考えると、気流の速度成分Ux,Uyは、共に0である。
【0039】
また、0.2μm以上の粒子ではカニンガム係数Ccは、略1であるので、トナーを測定する場合には、カニンガム係数Cc を測定する場合には、カニンガム係数Cc を1として取り扱うことができる。測定空間の上部中央から重力沈降した帯電粒子の付着位置(x,y)は、
【0040】
【数3】
【0041】
の関係で表される。
【0042】
上記(3)式より、付着位置と付着量から帯電量分布が求められる。
【0043】
続いて、図5、図6を用いて、電界カーテンを形成する適正な交流電圧について説明する。
【0044】
図5は、交流の周波数を500Hzに固定し、印加電圧の振幅を変化させたときのFPC(21A,21B)表面への付着トナー数を測定した結果を示す。図5に示すように、印加電圧の振幅の増加にともなって付着トナー数が減少した。つまり、印加電圧の振幅の増加によって、電界カーテンの効果が向上した。
【0045】
図6は、交流印加電圧の振幅を400Vに固定し、周波数を変化させたときのFPC(21A,21B)表面への付着トナー数を測定した結果を示す。図6に示すように、周波数の増加にともなって付着トナー数が減少した。つまり、周波数の増加によって、電界カーテンの効果が向上した。
【0046】
図7は、サンプリング装置200および測定装置100を用いてトナー粒子帯電量分布を測定した結果を示す。図7において、横軸は帯電量q/m(μC/g)であり、縦軸はトナー粒子のカウント数である。
【0047】
図4において、測定装置100底面のトナー粒子補集板105や、測定装置100側面の平行平板電極101,102に付着したトナーの(x,y)座標を計測し、式3に代入することにより、その付着場所のトナーの帯電量(q/m)が算出される。図7では、この帯電量を横軸にし、微小エリアの同一場所で計測されたトナーの個数を縦軸にすることによって、トナーの帯電量分布を表している。
【0048】
帯電量測定のために空間中に分離されたトナー400は、ブローオフによって現像ローラ13から分離されるために空間中に大きく広がってしまう。本実施形態のブローオフの場合、幅約100mmにわたって広がってしまう。このため、測定装置100の上面に向かって重力落下したトナーのうち、幅1mmのスリット状の帯電粒子導入口108に入って測定に寄与する割合は1/100程度となる。これに対して、サンプリング装置200を用いると、上側開放口202の幅W1が約120mmであるため、空間中に広がったトナー400をほぼすべて集めることができる。また、重力落下とともに電界カーテンによりトナーを中央部に集め、測定装置100の帯電粒子導入口108に導入することができる。このため、ブローオフしたトナーの利用効率が、サンプリング装置200を用いない場合に比較して約100倍となる。
【0049】
上述の実施形態では、2組の電極群(22A,23A)を用いて定在波の電界カーテンを形成する例を示したが、電界カーテンの形成手法はこれに限定されるものではない。例えば、3組以上の電極群を用いて進行波の電界カーテンを形成しても良い。
【0050】
また、上述の実施形態では、帯電量分布測定法にサンプリング装置200を用いているが、図8に示すように、サンプリング装置200をファラデーケージ500上に配置すれば、ファラデーケージ法やブローオフ法にもサンプリング装置200を適用することが可能である。
【0051】
さらに、測定装置100の上面板103Aおよび103Bに代えて、上面板107Aおよび107Bを用いても良い。上面板103Aおよび103Bの間には、帯電微粒子導入口114が形成される。帯電微粒子導入口114は、同一鉛直線上に配置された2つのスリット120、121を備える。スリット120、121は、それぞれ開口幅1mmのスリットである。2つのスリット120、121の間には、トナーを集めるための空間122が形成される。帯電微粒子導入口114にスリット120、121を設けたことによって、水平方向の速度成分を持つトナーが、測定装置100内に進入することが防止される。この結果、測定装置100における測定誤差が発生しにくくなる。ここでは、帯電微粒子導入口114に2重のスリットを持たせた構成を説明したが、帯電微粒子導入口114に3重以上のスリットを持たせることも可能である。
【0052】
上述の実施形態では、図10(A)に示す線状電極の構成を採用した。その理由は、重力沈降しているトナーに対して水平方向かつスリット201の長手方向の力を加えないためである。つまり、トナーがその水平方向の速度成分を持つと、本来付着すべき位置とは異なる位置でトナー粒子補集板105に付着するからである。
【0053】
しかしながら、図10(A)の構成の場合には、帯電微粒子の質量と電荷量によっては、スリット201の部分で帯電微粒子が静止して落下しないことがある。その理由は、下向きの重力と電界カーテンの上向きの静電気力が釣り合うことがあるからである。図10(A)の構成において、万一、スリット201にて帯電微粒子の滞留が生じる場合には、図10(B)に示す線状電極の構成を採用しても良い。図10(B)では、水平方向に配列された線状電極を示している。この構成において、互いに位相が180度異なる交流電圧を印加して定在波を形成することにより、帯電微粒子が壁面に付着することが防止される。さらに、図10(B)の構成では、図10(A)の構成に比較してスリット201にて帯電微粒子の滞留が生じにくい。なお、電極の構成として図10(A)または図10(B)のいずれの構成を採用するかは、測定する帯電微粒子の特性によって最適なものを適宜選択すれば良い。
【0054】
上述の実施形態では、図11(A)に示すように、ガイド部材面だけにFPC電極群を形成した。この構成において、万一、第2の開口部にトナーが付着したり、水平方向の速度成分を持つトナーが多く排出される場合には、図11(B)に示す構成を採用することが好ましい。
【0055】
図11(A)に示す構成では、第2の開口部において、電界カーテンを形成するFPCの端部や開口部の形状的な不連続性から電界が不均一となる場合がある。これに対して、図11(B)のようにFPC電極群をガイド面から第2の開口部まで十分に巻き込んだ構成とすることにより、電界形成が連続的となり効率的かつ垂直方向へのトナー排出が可能になる。
【0056】
また、2相定在波駆動電極の間に、GND電位またはフロート状態のダミー電極を設けても良い。例えば、図12に示すように、254μm周期で構成される第1の電極と第2の電極の中間に、第3の電極26Cを設けた電極構造とすることが挙げられる。第1の電極と第2の電極には互いに位相が180度異なる交流電圧を印加し、第3の電極は接地(0V)またはフロート状態として定在波を形成する。このように3組の電極とした場合、2組の電極構造よりも、より効果的に帯電微粒子が壁面に付着することを防止できた。その理由として、交流を印加する2組の電極間に第3の電極を設けることにより、電極間の電位を安定化することが挙げられる。つまり、電界カーテンが安定化して帯電微粒子の壁面付着防止効果が向上したからであると言える。
【0057】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電量分布測定手法の説明図である。
【図2】サンプリング装置および測定装置の概略構成を示す図である。
【図3】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図4】測定装置の概略構成を示す図である。
【図5】電圧値と電界カーテンの効果との関係を示すグラフである。
【図6】周波数と電界カーテンの効果との関係を示すグラフである。
【図7】サンプリング装置および測定装置によるトナー粒子帯電量分布の測定結果を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る帯電量分布測定手法の説明図である。
【図9】測定装置の上面板の構成の他の例を示す図である。
【図10】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図11】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図12】サンプリング装置におけるFPCの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10−現像装置
21A,21B−フレキシブルプリント配線板(FPC)
100−帯電量分布測定装置
200−帯電微粒子サンプリング装置
300−電圧印加装置
400−トナー群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電状態が測定される帯電微粒子群を帯電状態測定装置の内部に導く帯電微粒子サンプリング装置であって、
前記帯電微粒子群を受け入れる第1の開口部を上側に有し、かつ、前記帯電微粒子群を排出する第2の開口部を下側に有する本体と、
第1の開口部から第2の開口部に向かって鉛直方向に沿って延びる前記帯電微粒子の流路を画定するガイド部材と、
前記ガイド部材におけるガイド面近傍に電界カーテンを形成する電界カーテン形成部と、
を備えたことを特徴とする帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項2】
前記電界カーテン形成部は、前記ガイド部材に形成された複数の電極群と、前記複数の電極群に交流電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項3】
前記複数の電極群は、互いに位相が180度異なる交流電圧が印加される第1の電極および第2の電極からなることを特徴とする請求項2に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項4】
前記複数の電極群は、互いに位相が180度異なる交流電圧が印加される第1の電極および第2の電極、およびフロート状態または0Vにされる第3の電極からなることを特徴とする請求項2に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項5】
前記帯電微粒子の流路の断面積が下方ほど狭くなるように、前記ガイド部材が配置されることを特徴とする請求項2に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、互いに対向し、かつ、互いの間隔が下方ほど狭くなるように配置された一対の板状部材を備えることを特徴とする請求項5に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項7】
前記複数の電極群は、水平方向に延びるようにそれぞれ構成された複数の線状電極を備えることを特徴とする請求項6に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項8】
前記複数の電極群は、前記ガイド部材の傾斜方向に延びるようにそれぞれ構成された複数の線状電極を備えることを特徴とする請求項6に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項9】
前記複数の電極群は、前記ガイド面から第2の開口部外側に張り出すように形成されることを特徴とする請求項6に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項10】
気流を用いない重力沈降で帯電微粒子群の帯電量分布を測定する帯電量分布測定装置であって、
上面に形成された帯電微粒子導入部の上に、請求項1に記載の帯電微粒子サンプリング装置を備えたことを特徴とする帯電量分布測定装置。
【請求項11】
前記帯電微粒子導入部は、同一の鉛直線上に配置された複数のスリットを備えることを特徴とする請求項10に記載の帯電量分布測定装置。
【請求項1】
帯電状態が測定される帯電微粒子群を帯電状態測定装置の内部に導く帯電微粒子サンプリング装置であって、
前記帯電微粒子群を受け入れる第1の開口部を上側に有し、かつ、前記帯電微粒子群を排出する第2の開口部を下側に有する本体と、
第1の開口部から第2の開口部に向かって鉛直方向に沿って延びる前記帯電微粒子の流路を画定するガイド部材と、
前記ガイド部材におけるガイド面近傍に電界カーテンを形成する電界カーテン形成部と、
を備えたことを特徴とする帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項2】
前記電界カーテン形成部は、前記ガイド部材に形成された複数の電極群と、前記複数の電極群に交流電圧を印加する電圧印加部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項3】
前記複数の電極群は、互いに位相が180度異なる交流電圧が印加される第1の電極および第2の電極からなることを特徴とする請求項2に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項4】
前記複数の電極群は、互いに位相が180度異なる交流電圧が印加される第1の電極および第2の電極、およびフロート状態または0Vにされる第3の電極からなることを特徴とする請求項2に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項5】
前記帯電微粒子の流路の断面積が下方ほど狭くなるように、前記ガイド部材が配置されることを特徴とする請求項2に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、互いに対向し、かつ、互いの間隔が下方ほど狭くなるように配置された一対の板状部材を備えることを特徴とする請求項5に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項7】
前記複数の電極群は、水平方向に延びるようにそれぞれ構成された複数の線状電極を備えることを特徴とする請求項6に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項8】
前記複数の電極群は、前記ガイド部材の傾斜方向に延びるようにそれぞれ構成された複数の線状電極を備えることを特徴とする請求項6に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項9】
前記複数の電極群は、前記ガイド面から第2の開口部外側に張り出すように形成されることを特徴とする請求項6に記載の帯電微粒子サンプリング装置。
【請求項10】
気流を用いない重力沈降で帯電微粒子群の帯電量分布を測定する帯電量分布測定装置であって、
上面に形成された帯電微粒子導入部の上に、請求項1に記載の帯電微粒子サンプリング装置を備えたことを特徴とする帯電量分布測定装置。
【請求項11】
前記帯電微粒子導入部は、同一の鉛直線上に配置された複数のスリットを備えることを特徴とする請求項10に記載の帯電量分布測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−3513(P2007−3513A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142817(P2006−142817)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
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