説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】初期及び、長期にわたって使用されても、像担持体との間に安定した空隙を維持できる、耐久性の高い帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】長尺状の導電性支持体201と、前記導電性支持体201上の外周面に電気抵抗調整層202と、を有し、前記導電性支持体201と像担持体101を一定の距離をおいて近接させ、前記導電性支持体201の両端部近傍で、少なくともその一部を前記電気抵抗調整層202上に有し、外周を帯電部材102よりも突出した非導電性の空隙保持部材203を別体で設けた帯電部材102において、前記空隙保持部材203の前記電気抵抗調整層202からの突出量が、帯電範囲に向けて減少する構成である帯電部材102、プロセスカートリッジ及び画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式において、像担持体に対して近接配置される帯電部材、前記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
特に複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式を採用した画像形成装置に使用する帯電部材、前記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式には、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。
帯電ローラを用いた帯電方式として、帯電ローラの経時性能を良好に保つために、非接触方式が開示されている(特許文献1、特許文献2)。帯電ローラと感光体との最近接距離(空隙)が50〜200μmになるように対向させ、帯電ローラに電圧を印加することにより、感光体の帯電を行うものである。この近接帯電方式では、帯電装置と感光体が接触していないために、接触帯電方式で問題となる「帯電ローラを構成している物質の感光体への付着」、「感光体を長期停止したときに生ずる、永久変形」は問題とならない。
また、「感光体上のトナー等が帯電ローラに付着することによる帯電性能の低下」に関しても、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるため、近接帯電方式が優れている。
しかしながら、近接帯電方式は接触帯電方式に比べ前述の利点があるが、以下の2つの問題があり、実用化が難しい。
(i)帯電部材と感光体との空隙の均一性確保
(ii)帯電部材と感光体との空隙が変動することによる帯電むら
帯電部材と感光体との最近接部での距離の均一性確保については、近接帯電装置で感光体の帯電を行う場合、画像を形成したときに帯電むらによる画像不良が発生しないためには、帯電部材と感光体との最近接部での距離のばらつきを小さく(望むべくは20μm程度に)抑える必要がある。
【0003】
特許文献1及び特許文献2では、帯電ローラと感光体間の空隙を保持する手段として、ローラ両端部に空隙保持部材であるスペーサリングを設ける方法が開示されている。しかしながら、これらの公報には空隙を精密に設定する具体的な手段の開示が無く、帯電ローラおよびスペーサリングの寸法精度がばらつくことによって空隙が変動してしまうという問題点があった。
特許文献3では、帯電ローラに用いられている弾性ゴムを用い、所定の厚みを持ったテープ状の空隙保持部材により、初期的にはこれらの不具合を解決している。しかしながら、前記方法で帯電ローラに用いられている弾性ゴムは経時での寸法変化が発生しやすく、長期間の使用において、感光体と帯電ローラ間の空隙を維持できないという問題点がある。また、テープ状部材の磨耗、帯電ローラとテープ状部材間へのトナーの進入、固着等により、長期間の使用において、感光体と帯電ローラ間の空隙を維持できないという問題点がある。
そこで、以上の問題点を解消する構成として、帯電ローラの両端部に空隙保持部材を設けた、特許文献4が提案されている(図9参照)。ローラの電気抵抗調整層と空隙保持部材の構成は、電気抵抗調整層の端部に空隙保持部材が形成され、空隙保持部材は、電気抵抗調整層の端面及び導電性支持体と接している。これにより、テープ状の空隙保持部材より長期の信頼性が向上した。
【0004】
また特許文献5では、空隙保持部材と電気抵抗調整層を同時加工(除去加工)を行うことにより、空隙を精密に制御することが可能となった。しかしながら、電気抵抗調整層と空隙保持部材とを別材料で形成する場合、吸水率の違いから、環境変動時の寸法変化量が異なるために、空隙量が変化してしまうという不具合がある。また、空隙保持部材と電気抵抗調整層はトナー固着性を考慮して異なった材質で形成するが、電気抵抗調整層の抵抗調整剤として、イオン導電剤が使用されているため、吸水性が高く、高温高湿時には、電気抵抗調整層が吸湿して寸法変動が発生する。空隙保持部材は、絶縁性及び、耐トナー固着性よりオレフィン系材料が望ましく、低吸水材料であるため、電気抵抗調整層に比べ高温高湿時の寸法変動量が小さく、環境変動で高精度に形成された空隙(段差)が変動してしまう。空隙保持部材は、帯電ローラに対して、外側から嵌め込み配置するよう構成するが、感光体ドラム表層との望ましい空隙は20μm〜100μm程度と非常に小さいため、通常空隙部材は薄くしなければならず、強度を維持できる体積を持たせられない。その場合、帯電ローラの端部に補強部を設けることが簡易で良い。しかしながら、経時において、帯電ローラの内側の電気抵抗層が上述のように膨張すると、補強部は変形せずに、感光体への突き当て部のみが持ち上げられ、空隙が変化するといった不具合が発生している。
【0005】
【特許文献1】特開平3−240076号公報
【特許文献2】特開平4−358175号公報
【特許文献3】特開2001−296723号公報
【特許文献4】特開2004−354477号公報
【特許文献5】特開2005−91818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、初期及び、長期にわたって使用されても、像担持体との間に安定した空隙を維持できる、耐久性の高い帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
また、空隙量の精密制御による異常放電の発生を防止し、環境変動時の空隙隙保持部と電気抵抗調整層部の空隙量変化の防止する帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明は、長尺状の導電性支持体と、前記導電性支持体上の外周面に電気抵抗調整層と、を有し、前記導電性支持体と像担持体を一定の距離をおいて近接させ、前記導電性支持体の両端部近傍で、少なくともその一部を前記電気抵抗調整層上に有し、外周を帯電部材よりも突出した非導電性の空隙保持部材を別体で設けた帯電部材において、前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層からの突出量が、帯電範囲に向けて減少する構成であることを特徴とする帯電部材である。
本発明は、前記空隙保持部材の突出量変更範囲が、前記電気抵抗調整層の範囲内であることを特徴とする。
本発明は、前記空隙保持部材の最大突出部が、前記電気抵抗調整層の外側に配置することを特徴とする。
本発明は、前記記載の帯電部材が、像担持体上に近接配置されていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
本発明は、前記記載の帯電部材を有することを特徴とする画像形成装置である。
本発明は、前記記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、前記解決するための手段によって、初期及び、長期にわたって使用されても、像担持体との間に安定した空隙を維持できる、耐久性の高い帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することが可能となった。
また、空隙量の精密制御による異常放電の発生を防止し、環境変動時の空隙隙保持部と電気抵抗調整層部の空隙量変化の防止する帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0010】
図1、図2は、画像形成装置の帯電ローラとして使用される導電性部材の構成を示した断面図である。説明は一般的な例として、帯電部材102を帯電ローラとしているが、例えば、空隙保持部材203を摺動性の高い材質にすることや、空隙保持部材203だけを像担持体である感光体101と従動回転できれば、帯電部材102はローラ(回転体)で無くとも、同様の効果は得られる。
帯電ローラ102は、近接帯電方式であって、導電性支持体201と、電気抵抗調整層202と、空隙保持部材203とを備えている。導電性支持体201は、長尺の円柱形状を呈しており、この端部には、帯電ローラ102に電圧を印加するためのパワーパック105(電圧印加電源)が接続される。
電気抵抗調整層202は、導電性支持体201を中心軸として周面部に設置された円筒状である。
空隙保持部材203は、電気抵抗調整層202の両端外周面に設置された円筒状を呈している。
【0011】
帯電ローラ102は、感光体ドラム101に対して加圧され、両端の空隙保持部材203が当接されて配置される。この帯電ローラ101は近接帯電方式となっており、電気抵抗調整層202の外径が空隙保持部材203の外径に対して僅かに小径に形成されることで、電気抵抗調整層202の外表面と感光体ドラム101の外表面との間には空隙が形成されている。
さらに、帯電ローラ102は、空隙保持部材203が感光体ドラムの画像形成領域外の領域(非画像形成領域)に当接するようにして設置されている。この状態で帯電ローラ102に電圧を印加することにより、感光体ドラム101の画像形成領域を帯電させることが可能である。
【0012】
帯電ローラ102と感光体ドラム101は互いに対向する面を持ちながら、回転駆動させている。互いに回転することで、同一面の通電ストレスを順次散らして寿命を延ばすことが可能となる。
また、感光体ドラム101と帯電ローラ102とは互いに円筒形状を呈している必要は必ずしもなく、楕円筒状であってもよい。これは、感光体ドラム101の外周表層と、帯電ローラ102の電気抵抗層202の空隙が同一であることを前提とし、例えば、帯電ローラ102の電気抵抗層202と空隙保持部材203の突出量略一定であるような形状が望ましい。
【0013】
近接帯電方式における帯電ローラ102は、空隙の間隔を所定間隔にかつ均一に保つ必要がある。空隙が大きくなると、帯電ローラ102に対する電圧引加条件を高くする必要があり、感光体ドラムの電気的劣化や異常放電が発生しやすくなるためであり、好ましくは100μm以下である。
【0014】
以下、空隙保持部材203の詳細形状を示す。
空隙保持部材203は、帯電ローラ102の両端部に補強部を設けて、外側から嵌め込むように構成している。突き当て部は、この補強部の外周面を含んで構成している。補強部の外周と、幅において必ずしも一致しなくても、補強部を含んでいれば、強度も確保でき、また経時で電気抵抗層202が膨張しても影響を受け難くなり、好ましい。
空隙保持部材203の外径は、帯電ローラの端部から、画像領域内へ向かい、順次小さく構成する。外径を小さくする手段としては、テーパ−状の形状(図3参照)、面取り(図4参照)、R形状(図5参照)等のどれでも効果は同じである。外径の変化の開始点は、任意でも良いが、帯電ローラの電気抵抗層202の範囲内において行うことで、経時に電気抵抗層202の膨張が大きいことによる空隙保持安定としては効果が大きい。電気抵抗層202が膨張して、外径が大きくなることで、空隙保持部材203の電気抵抗層とオーバーラップした部分が押し広げられたことにより、外径が大きくなるが、その分、テーパ−などで外径を減らして、感光体ドラムとの接触を軽減できる(図6参照)。
【0015】
図7は、電子写真方式の画像形成装置の概略図である。101は静電潜像が形成される感光体ドラム、102はドラム状の感光体101に接触あるいは近接配置されて帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラ、103はレーザー光あるいは原稿の反射光等の露光、104は感光体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ、105は帯電部材102に電圧を印加するための電圧印加電源、106は感光体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ、107は給紙部から搬送されてきた記録紙、108は転写処理後の感光体101をクリーニングするためのクリーニング装置、109は感光体101の表面電位を測定する表面電位計である。
また、図8に示すように、感光体ドラム101、帯電ローラ102、現像ローラ104、クリーニング装置108を包括するプロセスカートリッジが画像形成装置内に設置される場合もある。
そして、画像形成装置では次のような手段で、画像の形成を行う。
(1)帯電ローラ102が、感光体ドラム101の表面を所望の電位に帯電する。
(2)露光装置が、感光体ドラム101に画像光を投射して、所望の画像に対応する静電潜像を、感光体ドラム101上に形成する。
(3)現像ローラ104が、静電潜像をトナーによって現像し、感光体ドラム101上にトナー像(顕像)を形成する。
(4)転写ローラ106が、感光体ドラム101上のトナー像を、記録紙107に転写する。
(5)クリーニング装置108が、転写されず感光体ドラム101上に残留したトナーを清掃する。
(6)転写ローラ106によって、トナー像を転写された記録紙107は、不図示の定着装置へと搬送される。定着装置は、トナーを加熱及び加圧して記録紙107上に定着する。
上記の(1)から(6)の手順を繰り返すことによって、記録紙107上に所望の画像が形成されていく。
【0016】
以上のように本発明では、導電性支持体201上の周面、両端近傍に設置された空隙保持部材203を電気抵抗調整層202からの突出量を帯電範囲に向けて減じていく構成としたことで、経時に渡って、帯電部材102が寸法変動しても、安定した距離を維持できる。
また、帯電部材102の最も経時寸法変動が大きい電気抵抗調整層202の範囲において、空隙部材の突出量を減じているため、経時寸法変動の影響を受け難くできる。
さらに、空隙保持部材203の最大外径部を寸法変化の最も少ない電気抵抗調整層202の外側に設けることで、初期・経時に渡って、帯電部材102と像担持体101の距離を一定に維持できる。
また、帯電部材102をプロセスカートリッジに組み込むことで、交換容易なカートリッジを提供でき、プロセスカートリッジを電子写真画像形成装置に搭載することで、高画質を得ることができると共に、長期に渡って安定した画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画像形成装置の帯電ローラとして使用される導電性部材の構成を示した断面図である。
【図2】画像形成装置の帯電ローラとして使用される導電性部材の構成を示した断面図である。
【図3】テーパ−状の形状を示す図である。
【図4】面取りを示す図である。
【図5】R形状を示す図である。
【図6】電気抵抗層が膨張した図である。
【図7】電子写真方式の画像形成装置の概略図である。
【図8】電子写真方式の画像形成装置の概略図である。
【図9】従来の導電性部材の構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0018】
101 感光体ドラム(像担持体)
102 帯電ローラ(帯電部材)
103 露光
104 現像ローラ
105 パワーパック(電圧印加電源)
106 転写ローラ
107 記録紙
108 クリーニング装置
109 表面電位計
201 導電性支持体
202 電気抵抗調整層
203 空隙保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の導電性支持体と、
前記導電性支持体上の外周面に電気抵抗調整層と、
を有し、
前記導電性支持体と像担持体を一定の距離をおいて近接させ、前記導電性支持体の両端部近傍で、少なくともその一部を前記電気抵抗調整層上に有し、外周を帯電部材よりも突出した非導電性の空隙保持部材を別体で設けた
帯電部材において、
前記帯電部材は、
前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層からの突出量が、帯電範囲に向けて減少する構成である
ことを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
請求項1に記載の帯電部材において、
前記帯電部材は、
前記空隙保持部材の突出量変更範囲が、前記電気抵抗調整層の範囲内である
ことを特徴とする帯電部材。
【請求項3】
請求項1に記載の帯電部材において、
前記帯電部材は、
前記空隙保持部材の最大突出部が、前記電気抵抗調整層の外側に配置する
ことを特徴とする帯電部材。
【請求項4】
プロセスカートリッジは、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の帯電部材が、像担持体上に近接配置されている
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
画像形成装置は、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の帯電部材を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置は、
請求項4に記載のプロセスカートリッジを有する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−15255(P2008−15255A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186764(P2006−186764)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】