説明

帯電部材用導電性ゴムローラ

【課題】通電劣化に優れ、耐感光体汚染性に優れ、さらに均一分散と抵抗制御を容易に達成し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる電子写真装置に用いられる帯電部材用導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性ゴム層を、原料ゴムが極性ゴムであり、カーボンブラックとして、平均一次粒子径が31nm以上50nm以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上180cm3/100g以下であるCB−Aと平均一次粒子径が90nm以上300nm以下であり、DBP吸収量が20cm3/100g以上80cm3/100gであるCB−Bを、質量比([CB−A]/[CB−B])が0.67以上3.00以下の割合で含み、かつ、CB−A及びCB−Bが、それぞれ、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下、20質量部以上45質量部以下であるものとする。なお、極性ゴムはNBRが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した画像形成装置(以下、「電子写真装置」ということがある)において帯電部材として用いる導電性ゴムローラ(以下、「帯電ゴムローラ」ということがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置における接触帯電方式の帯電部材は、導電性ゴムローラが使用されることが多い。
【0003】
帯電ゴムローラは、図1の概略断面図に示したように、導電性支持体(芯金)1の外周に導電性のゴム層2が形成されており、必要に応じて、その外周に抵抗調整、汚れ・ブリード防止等のために表面層3が設けられた複層の形態のものが多い。
【0004】
電子写真装置に用いられる帯電ゴムローラは、感光体と当接し、該感光体を均一に帯電する必要があり、感光体と一様なニップ幅を保つことが要求されている。したがって、導電性ゴム層は、当接による圧縮に対して充分な回復性を有する必要があり、ニップ幅を保持するために圧接して使用するのに適した低硬度化されていることが望まれている。
【0005】
しかし、導電性ゴム層を低硬度化するために多量の軟化剤や可塑剤を添加した場合、長期間、同一部を圧接したままで放置すると、導電性ゴム層から軟化剤、可塑剤等の低分子量物質がブリードして感光体を汚染することがある。
【0006】
電子写真装置に用いられる帯電ゴムローラは、半導電性領域(体積抵抗値で103Ωcmから108Ωcmの範囲)に導電性が制御されている。そのため、導電性ゴム層に4級アンモニウム塩などのイオン導電剤が添加されて、必要な抵抗値が達成される場合が多い。しかしながら、イオン導電剤を多量に添加すると導電性ゴムローラ表面にブリードし、感光体を汚染することが問題になる場合がある。
【0007】
一方、ブリードして感光体を汚染することが少なく、安価であるのでカーボンブラックを導電剤として添加する方法があるが、カーボンブラックは分散状態や集積構造によって抵抗値が変動し、帯電ゴムローラの抵抗値を制御することが困難となり易い。また、導電性ゴム層中の微小部分の分散状態によっては局所的な画像不良が発生するという問題もある。
【0008】
導電性の高いカーボンブラックは、導電性ゴム層内で一般的にカーボンブラック粒子同士がつながった構造となりやすく、すなわち、導電チャンネルを形成しやすく、そのため少量添加で導電性を付与するのに効果がある。導電性の高いカーボンブラックは、導電チャンネルの発達度を示す目安として、DBP吸収量が大きいことが知られている。しかし、均一に分散させることは難しく、偏在することが多い。したがって、導電性ゴムローラは少なからず抵抗ムラを有することとなり、電子写真装置の帯電ローラとして用いたときに、得られる画像に画像不良を引き起こす原因となり易い。
【0009】
例えば、カーボンブラックが多く偏在した微小な低抵抗部分では感光体が過帯電となり、結果として画像に白スジ、白ポチなどが現れ、画像不良を引き起こす。逆に、カーボンブラックが少なくて微小な高抵抗部分では感光体の帯電が不十分となり、黒ポチや黒スジなどの画像不良が発生する。
【0010】
また、導電性ゴム層に印加される電気的エネルギーや機械的な繰り返し圧縮によって、カーボンブラックの凝集体構造(ストラクチャー)が破壊されたり、ゴム自身が劣化したりすることで高抵抗化してしまう、いわゆる通電劣化の問題がある。
【0011】
全ゴム量に対するカーボンブラックの充填量が少ないと、ゴム中における導電パスあたりの電気的・力学的エネルギー負荷が大きくなるために、通電劣化が大きくなり易い。よって、硬度上昇による弊害が生じない範囲で、導電性に寄与するカーボンブラックの充填量は多い方が、通電劣化、均一分散、抵抗制御が良好になり好ましい。
【0012】
そのため、カーボンブラックを添加して分散状態や抵抗値を制御する手段として、体積抵抗率の小さいカーボンブラックと表面積が小さいカーボンブラックを併用することが提案されている。EPDM(エチレンプロピレンゴム)に体積抵抗率が1Ω・cm以下のケッチェンブラック(商品名)等のカーボンブラックと表面積が100m2/g以下のカーボンブラック(例えば、MTカーボンブラック)を併用することが提案されている(特許文献1)。
【0013】
しかし、DBP吸収量が小さく、かつ、平均一次粒子径が大きいカーボンブラックは導電性が殆どないので、導電性ゴム層の導電性の調整は体積抵抗率1Ωcm以下のカーボンブラックに依存することになる。体積抵抗率1Ωcm以下のカーボンブラックは窒素吸着比表面積が大きく、かつ、DBP吸収量が大きいので、導電性ゴム層内での分散状態が不安定になりやすく、抵抗値のばらつきが大きくなってしまう可能性がある。さらに、EPDMゴムは体積抵抗率が1012Ω・cmから1015Ω・cmと高いために、導電性の高いカーボンブラックを高充填する必要がある。そのため、導電性ゴム原料の粘度が高くなり加工時に弊害が生じる場合や、硬度の上昇によって帯電ゴムローラとしての帯電均一性に弊害が生じる場合がある。また、導電性の高いカーボンは凝集し易い(言い換えると、ストラクチャーが発達し易い)ので、前述したような部分的な過帯電による帯電ムラを生じる場合がある。
【0014】
また、平均一次粒子径が80nm以上のカーボンブラックと30nm以下のカーボンブラックを4:1〜1:4の量比でゴム中に配合することが提案されている(特許文献2)。
【0015】
しかし、主体となるゴムはNR(1010Ω・cm以上1015Ω・cm以下)を使用し、耐オゾン性能を向上させるためにEPDMを15%以上混合させる方法を用いている。そのため、平均粒子径が30nm以下であるカーボンブラックを多量に配さなければならず、硬度の上昇が懸念される。また、硬度の上昇を防ぐためにプロセスオイルを50%混合することから、帯電ゴムローラでは、特に表面層が薄膜の場合、ブリードしてしまい感光体汚染の起きることが懸念される。このように、体積抵抗率が高いゴムにカーボンブラックを配して導電性を付与する場合は、充填量の増加に伴い硬度が上昇し、帯電均一性に弊害が生じることがあり、硬度を下げるために可塑剤を用いると、表面層に制限が生じてしまう。
【0016】
体積抵抗率が低い代表的なゴムとして、エピクロルヒドリンゴムの一種であるエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(108Ω・cm以上109Ω・cm以下)がある。しかし、エピクロルヒドリンゴムでは、高温で加硫すると、エピクロルヒドリンゴム中の塩素が切断されて塩化水素が発生することがある。この塩化水素はポリマーや有機添加剤の結合を切断して、低分子量成分を生成し、感光体汚染の原因になる場合がある。この発生する塩化水素を補足する目的でハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの受酸剤や加工性を向上させる目的の充填剤として炭酸カルシウムなどを添加することがある。これらに含まれる金属元素は塩化水素と反応してハロゲン化金属を生じ、そのハロゲン化金属が水へ溶解して感光体に付着することがある。このために、エピクロルヒドリンゴムを導電性ゴム層に使用する場合には、これらの受酸剤や充填剤の使用に制限を設けたり、膜厚を厚くした表面層を設けたりするなどの対策が施されることが多い。しかしながら、帯電ゴムローラにおける最表面層を厚くした場合には静電容量が低下してしまい、帯電均一性や耐リーク性(感光ドラムにピンホールが生じた場合に生じる画像欠陥)が悪化してしまうことが想定される。
【0017】
体積抵抗率が低い他のゴムとして、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR、109Ω・cm以上1010Ω・cm以下)が用いられる場合がある。しかし、NBRは主鎖に2重結合を有するために、紫外線や放電などの外的エネルギーによって劣化しやすい。
【特許文献1】特開平09−058077号公報
【特許文献2】特開平08−127675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の課題は、カーボンブラックを用いて通電劣化に優れ、耐感光体汚染性に優れ、均一分散と抵抗制御を容易に達成され、安定した均一帯電特性と出力画像品質が得られる電子写真装置用の帯電部材用導電性ゴムローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討し、ついに本発明に至った。ベースとなるゴム、カーボンブラックの粒子径とストラクチャーの組合せと配合比・量等を最適化することにより、通電劣化性がなく、感光体汚染性もなく、均一な分散と抵抗制御が容易であり、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が達成できた。これにより、良好な性能を有する帯電部材用導電性ゴムローラを提供できることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0021】
〔1〕導電性支持体の上に導電性ゴム層を有する帯電部材用導電性ゴムローラであって、導電性ゴム層が、ゴム成分として極性ゴムを含み、導電剤としてカーボンブラックを含んでおり、該カーボンブラックが、(A)平均一次粒子径が31nm以上50nm以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上180cm3/100g以下であるカーボンブラック(以下、「CB−A」と表す)と(B)平均一次粒子径が90nm以上300nm以下であり、DBP吸収量が20cm3/100g以上80cm3/100gのカーボンブラック(以下、「CB−B」と表す)を、質量比([CB−A]/[CB−B])0.67以上3.00以下で配合され、かつ、CB−A及びCB−Bが、それぞれ、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下、20質量部以上45質量部以下であることを特徴とする帯電部材用導電性ゴムローラ。
【0022】
〔2〕極性ゴムが、アクリロニトリル含有量が31.0%以上37.0%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムを含むことを特徴とする上記の帯電部材用導電性ゴムローラ。
【発明の効果】
【0023】
本発明の帯電部材用導電性ゴムローラは、耐通電劣化性に優れ、耐感光体汚染性に優れ、均一な分散と抵抗制御を容易にでき、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明の帯電部材用導電性ゴムローラの断面図を図1に示す。
【0026】
本発明にかかる帯電部材用導電性ゴムローラは、導電性支持体1の上に導電性ゴム組成物からなる導電性ゴム層2が形成されている。
【0027】
導電性支持体1としては、少なくとも表面が導電性を有し、導電性ゴムローラの支持体として機能するものであれば特に制限はない。その材料としては、例えば、SUS、鉄、銅、ステンレス、真鍮、導電性プラスチック等を使用することができる。導電性支持体の形状は、円柱状の他、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。また、導電性支持体は、通常、径が4.0mmから8.0mmの範囲が適当である。
【0028】
導電性ゴム層2は、少なくとも極性ゴムを含み、さらにカーボンブッラクを含む導電性ゴム組成物からなるものであり、その厚みは、導電性ゴムローラの使用目的にもよるが、通常、0.5mmから5.0mmの範囲が適当である。
【0029】
導電性ゴム層のベースとなるゴム原料としては、極性ゴムであることが必要であるが、本発明ではアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が最適である。NBRは、シアノ基を有し、極性が高い(SP値が大きい)ために、カーボンブラックの分散性に優れる。また、ブタジエンとアクリロニトリルがランダムに共重合しているために非結晶性であり、硬度の調整をしやすい。また、極性ゴムであるヒドリンゴムと異なり、ハロゲン(塩素)を含まないために、ハロゲンに起因した感光体汚染が発生しない。NBRのガラス転移温度(Tg)は高く、さらにブタジエン構造部での架橋性が良いために、加硫後のゴムの分子運動性が低くなり、低分子量物がブリードするのが抑制される。
【0030】
NBRは、アクリロニトリルの共重合量によって特性が左右される。すなわち、アクリロニトリルの共重合量が多いほど極性が高くなり、分子運動性は低下する。したがって、耐ブリード性能が向上し、オゾンの亀裂成長速度も小さくなって耐オゾン劣化性も向上する。但し、アクリロニトリルの共重合量が多くなりすぎると、寒冷環境でのゴム弾性が低下してしまう。一方、アクリロニトリルの共重合量が少ないと極性が小さくなるためにカーボンブラックの分散性が悪くなる。また、ブタジエンの共重合量が相対的に増えるために分子運動性が高くなって耐ブリード性能が悪くなる。したがって、アクリロニトリルの共重合量(すなわち、アクリロニトリル含有量)は31.0%以上37.0%以下(一般的に、中高ニトリルNBRと呼ばれる)であることが望ましい。
【0031】
本発明では、導電性ゴム層に用いるカーボンブラックとして、少なくとも平均一次粒子径が小さいカーボンブラック(A)(以下、「CB−A」と略す)と平均一次粒子径が大きいカーボンブラック(B)(以下、「CB−B]と略す)の2種を使用する。CB−Aは平均一次粒子径が31nm以上50nm以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上180cm3/100g以下であるカーボンブラックである。また。CB−Bは平均一次粒子径が90nm以上300nm以下であり、DBP吸収量が20cm3/100g以上80cm3/100gであるカーボンブラック(B)(CB−B)である。このように少なくとも2種類のカーボンブラックを使用することで所望の効果が発揮される。
【0032】
CB−Aは、本発明の導電性ゴム層における導電性、すなわち、体積抵抗率を下げる効果の大半を担っている。また、CB−Bは導電性の付与効果はほとんど無いが、平均一次粒子径が大きいために分散性に優れる。ゴムとカーボンブラックを混合する際、分散性の良いCB−Bが先ずベースゴム中に均一に分散する。CB−Bは平均一次粒子径が大きいので、CB−Aのストラクチャーがベースゴム中で形成される領域を制限する。言い換えると、CB−Bによって、CB−Aの導電パスが安定して形成される。また、導電性ゴム層中のCB−Aのストラクチャーの周囲に粒子径の大きいCB−Bが存在するために、CB−Aへの電気的・力学的エネルギー負荷を減らすことができる。NBRの劣化(分子切断)に伴って発生するストラクチャーの移動・再配置よる高抵抗化も防がれる。よって、通電劣化を防ぐことができる。また、CB−Bは、前記特性から分かるように硬度上昇への寄与が極めて小さいので、充填量を増やすことが可能となる。そのため、さらに通電劣化、均一分散、抵抗制御が良好になる。
【0033】
CB−Aの平均一次粒子径が小さく、DBP吸収量が大きい場合、少量で導電性を付与することができる。しかし、凝集性が高いために分散性が悪く画像均一性が悪くなり易い。さらに、分散条件や添加量に対しての抵抗変化や硬度の上昇が大きくなるために、平均一次粒子径は31nm以上、好ましくは37nm以上、DBP吸収量は180cm3/100g以下、好ましくは130cm3/100g以下が望ましい。
【0034】
また、平均一次粒子径が大きく、DBP吸油量が小さい場合、分散性が良化し抵抗変化も小さくなるが、導電性が低下するので添加量を増やさなければならず、その結果、粘度・硬度が上昇してしまうために、50nm以下、好ましくは42nm以下が望ましい。
【0035】
CB−Bは、平均一次粒子径が90nm以上300nm以下、かつ、DBP吸収量が20cm3/100g以上80cm3/100gであることが望ましい。平均一次粒子径が小さく、DBP吸収量が大きくなると、均一分散が難しく、CB−Aのストラクチャー形成を制御することができなくなるとともに、電気的・力学的エネルギー負荷の低減効果が無くなり、硬度も上昇してしまう傾向にある。平均一次粒子径が大きく、DBP吸油量も小さい場合は、CB−Aの粒子径との差が大きくなりすぎて、CB−Aのストラクチャー形成が上手く行われないことがある。
【0036】
CB−AとCB−Bの質量比([CB−A]/[CB−B])は0.67以上3.00以下が望ましい。この質量比が0.67未満では、CB−Bが多すぎるために、帯電ゴムローラとして使用するのに十分な抵抗値が得にくく、局所的な高抵抗部分ができてしまい、帯電不良が発生しやすくなる。一方、3.00より大きいと、CB−Aの特性が主体となってしまい、通電劣化が甚だしくなってしまう。
【0037】
CB−Aの配合量は、導電性ゴム層の全ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下が望ましい。30質量部未満ではゴム中の導電性を発揮するカーボンブラックの量が少なく抵抗値が安定しにくく、60質量部より多いと硬度が上昇してしまう。
【0038】
CB−Bの配合量は、導電性ゴム層の全ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上45質量部以下が望ましい。20質量部未満では、通電劣化の抑制効果が十分に得られず、45質量部より多いと、硬度が上昇するが通電劣化の抑制効果が飽和してしまい、局所的な高抵抗部分が発生することによる帯電不良が発生しやすい。
【0039】
本発明の帯電ゴムローラの導電性ゴム層は、その抵抗値Rrが1×103Ωcmから1×107Ωcmの範囲にあることが好ましい。この抵抗値Rrは、カーボンブラックの配合量以外にも、ゴムとカーボンブラックの混合条件によっても調整することができる。
【0040】
なお、帯電ゴムローラの抵抗値Rr(Ω・cm)の測定は以下のように行う。
【0041】
帯電ゴムローラを23℃、60%RH(NN環境)に24時間以上置いた後、導電性支持体の両端部に各500gの荷重をかけて径30mmのSUS製ドラムに圧接し、SUS製ドラムを30rpmで回転させ、帯電ゴムローラをつれ回りさせる。この状態で導電性支持体の露出部の一方から直流電圧(−200Volt)を印加し、SUS製ドラムに直列に接続した抵抗体(1kΩ)にかかる電圧を3秒間測定し、その平均値Vr(Volt)を求める。このVrを用いて、抵抗値Rrを下記式より算出する。
Rr=(200×103/Vr)×L×T/D
なお、ここで、L、T及びDは、それぞれ、導電性ゴム層の導電性支持体方向の長さ(cm)、帯電ゴムローラとSUSドラムのニップ幅(cm)、導電性ゴム層の厚さ(cm)である(図2参照)。
【0042】
導電性ゴム層は、ゴム原料及びカーボンブラック以外に、必要に応じて、可塑剤、充填剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、滑材、受酸剤などの配合剤が配されていても良い。なお、導電性ゴム層形成には、ゴム原料、カーボンブラックと共に加硫剤、加硫促進剤が配された組成物が使用されている。
【0043】
導電性ゴム層は、通常、以下のようにして製造される。
【0044】
ゴム原料に、カーボンブラック2種の他、充填剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、滑材、受酸剤等を配合し、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロールなどの混練機を用いて分散混練して導電性ゴム層用原料ゴム組成物を作製する。但し、本発明の帯電ゴムローラでは、ブリードの原因となる可塑剤、低分子材料等の使用量は極力少なくすることが望ましい。
【0045】
この原料ゴム組成物を、導電性支持体をセットした円筒状金型に注入する、クロスヘッドを備えたベント式押出し機にて導電性支持体と共に押出す、あるいは押出し機で円筒状に押出し、所定長さに切断し、次いで導電性支持体を挿入する。その後、未加硫の導電性ゴム層を、加硫缶やバッチ式熱風炉、連続加硫、プレス加硫などの方法で加硫する。
【0046】
なお、円筒状金型を使用する場合、加硫を金型内で完了しても、金型から取り出した後でも、また、金型内で一次加硫し、取り出して二次加硫を行っても良い。原料ゴム組成物が円筒状に押し出されたものにあっては、押出し機から押し出されてすぐに連続加硫処理され、加硫されたものを切断し、導電性支持体を挿入することでもよい。この場合は、挿入後に二次加硫を行うこともできる。なお、いずれの方法であっても、導電性支持体にゴム層を形成した後、端部を突き切る等して、端部を整えることが好ましい。特に、導電性支持体と共に原料ゴム組成物が押し出される場合は、加硫前に端部を整えておくことが望ましい。また、クロスヘッド押出し機によって導電性支持体と未加硫ゴム組成物を同時に押出すと、導電性支持体とゴムとの締め代が無くなり、加硫後のゴムローラにかかる応力を少なくなり、主鎖に2重結合を有するNBRを用いても大幅に耐オゾン劣化性が向上できる。
【0047】
上記したようにして、導電性支持体の周りに導電性ゴム層を形成したローラは、そのままでも十分に帯電ゴムローラとして使用可能であるが、乾式研磨や湿式研磨などの研磨加工することで、表面特性や形状を調整することができる。
【0048】
本発明の帯電ゴムローラは、さらに導電性ゴム層の上に耐感光体汚染性、耐リーク性、均一帯電性等の機能を調整するため、表面層が形成されていることがある。表面層を設ける場合、表面層の膜厚は薄い方が望ましい。これは、帯電ゴムローラの静電容量が大きくなり、耐ピンホールリーク性や帯電均一性も向上できるためである。但し、表面層が薄いと耐ブリード性が悪くなる。
【0049】
表面層は柔軟性、耐磨耗性及び機械強度のある高分子バインダーを結着樹脂とし、この樹脂中に導電剤を分散して抵抗調整して使用されることが多い。高分子バインダーとしては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂等が使用される。その場合、高分子バインダーを溶剤に溶解し、その中に導電剤を加え、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、ペイントシェーカーなどの塗料分散機を用いて分散する。これを浸漬塗工、スプレー塗工、ロールコートなどの塗工方法によって導電性ゴム層の外周に塗布する。さらに熱風循環乾燥機や赤外線乾燥炉などを用いて溶剤を除去して導電性ゴム層の上に表面層を形成する。
【0050】
また、本発明の帯電ゴムローラに表面層を設けない場合には、上記表面層の形成の代わりに、電子線、紫外線、X線、赤外線、プラズマなどのエネルギー線を照射して、導電性ゴム層の最表面を高架橋化することも好ましい。中でも、特に紫外線による高架橋化が好ましい。紫外線を照射することで最表面層の静電容量を大きくすることができ、また、粘着性や摩擦係数が低下するので、トナーや外添剤が導電性ゴムローラ表面へ付着するのが防止される。
【0051】
例えば、紫外線照射する場合、低圧水銀ランプを用いた紫外線照射装置を用い、帯電ゴムローラを回転させながら紫外線照射することで導電性ゴム層を均一に表面処理することができ、良好な表面性能の帯電ゴムローラが得られる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例、比較例を例示して本発明を具体的に説明する。
【0053】
以下の実施例、比較例で使用した原料を示す。
【0054】
1)原料ゴム
・NBR:アクリルニトリルブタジエンゴム『N230SV』(商品名、JSR株式会社製、アクリルニトリル量35.0%)
【0055】
2)カーボンブラック
「CB−A」
・A1:『ダイアブラックSH』(商品名、三菱化学株式会社製、平均一次粒子径31nm、DBP吸収量128cm3/100g)
・A2:『ダイアブラックHA』(商品名、三菱化学株式会社製、平均一次粒子径32nm、DBP吸収量103cm3/100g)
・A3:『シーストG−116』(商品名、東海カーボン株式会社製、平均一次粒子径38nm、DBP吸収量133cm3/100g)
・A4:『#3050B』(商品名、三菱化学株式会社製、平均一次粒子径50nm、DBP吸収量175cm3/100g)
・A5:『ケッチェンブラックEC』(商品名、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製、平均一次粒子径30nm、DBP吸収量360cm3/100g)
・A6:『HTC #G』(商品名、新日化カーボン株式会社製、平均一次粒子径64nm、DBP吸収量80cm3/100g)
【0056】
「CB−B」
・B1:『MTカーボンブラック N990』(商品名、Engineered Carbons Inc.製、平均一次粒子径280nm、DBP吸収量38cm3/100g)
・B2:『旭カーボン#15』(商品名、旭カーボン株式会社製、平均一次粒子径122nm、DBP吸収量41cm3/100g)
・B3:『旭カーボン#51』(商品名、旭カーボン株式会社製、平均一次粒子径91nm、DBP吸収量67cm3/100g)
・B4:『旭カーボン#50H』(商品名、旭カーボン株式会社製、平均一次粒子径85nm、DBP吸収量110cm3/100g)
【0057】
3)充填剤、加硫剤等
・炭酸カルシウム:『ナノックス#30』(商品名、丸尾カルシウム株式会社製、平均一次粒子径700nm、DBP吸収量30cm3/100g)
・酸化亜鉛:亜鉛華2種
・ステアリン酸亜鉛:
・TBZTD:加硫促進剤、テトラベンジルチウラムジスルフィド『ノクセラーTBZTD』(商品名、大内新興化学工業株式会社製)
・硫黄:加硫剤
【0058】
実施例1〜10、比較例1〜10
原料ゴムとして、NBR 100質量部を用い、これに対して、表1に示すカーボンブラックを表1に示す量を用いた。その他原料として、炭酸カルシウム 20質量部、酸化亜鉛 5質量部、ステアリン酸亜鉛 1質量部、硫黄(加硫剤)1.2質量部及びTBZTD(加硫促進剤)4質量部を配合し、10分間混練して、未加硫の導電性ゴム層用の原料ゴム組成物を作製した。
【0059】
次に、90℃に設定したクロスヘッドを用いた直径50mmベント式押出し成型機によって、導電性支持体(SUS製、φ6.0mm、長さ258.0mm)に同軸状に原料ゴム組成物を押出した。導電性支持体の端部10.0mmのゴム分を切り離して未加硫ゴム組成物の長さを238.0mmにした。その後、熱風乾燥炉中で160℃/1時間加熱加硫し、加硫後の導電性ゴム層の表面を、乾式研磨機によって研磨して、ゴム層中央の外径をφ8.5mm、ゴム層端部の外径をφ8.25mmのクラウン形状にした。
【0060】
最後に、研磨済みのゴムローラを低圧水銀ランプにて、紫外線強度60mW/cm2で、ゴムローラを30rpmで回転させながら、100秒間照射して、帯電ゴムローラを得た。
【0061】
なお、比較例4では、CA−Bに代えて炭酸カルシウム30質量部を用いた(下記表1では、「B5」と表示した)。
【0062】
上記したようにして得た帯電ゴムローラの性能について、抵抗値、通電劣化、画像均一性及び感光体汚染を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0063】
[抵抗値、通電劣化]
前記した抵抗値の測定での抵抗値の算出におけるL、T、Dは、上記によりL=238.0cm、D=1.25cmとした。また、Tは、ガラス板に帯電ゴムローラを載せて導電性支持体の両端部に各500gの荷重をかけた状態で、ガラス板下からニップ状態をビデオマイクロで撮影して求めたところ、0.05cmであった。
【0064】
抵抗値の測定を行った後、−200Voltを印加したまま、SUS製ドラムを30rpmで回転させて、帯電ゴムローラをSUS製ドラムに30分間つれ回りした。その後、再び抵抗値を測定し、初期抵抗値Vr0と30分通電後の抵抗値Vr30から、初期抵抗値の低下率(%)(=100(Vr0−Vr30)/Vr0)を求め、通電劣化の指標とし、これが15%以内であれば実用上問題が無いとした。
【0065】
[画像均一性]
作製した帯電ゴムローラを電子写真感光体と一体に組み込まれるプロセスカートリッジに組み込み、A4紙縦出力用のレーザービームプリンターに装着した。このレーザービームプリンターは反転現像方式であり、画像解像度は600dpiである。なお、23℃、60%RH環境に24時間置いた後、ハーフトーン画像と実用画像(写真画像)を出力した。得られた画像を目視により、帯電ゴムローラの導電性ゴム層中のカーボンブラックの分散の不均質さや硬度が高くなり感光ドラムに対する当接が不均一になったことが原因で生じる白・黒ポチ、白・黒スジ等の画像不良を観察した。その結果から、画像均一性を下記基準で評価した。
○:画像不良が全く無い。
△:実用画像には画像不良は無いが、ハーフトーン画像に観察される。
×:実用画像、ハーフトーン画像の両方に画像不良が観察される。
【0066】
[感光体汚染]
作製した帯電ゴムローラと電子写真感光体を一体に支持するプロセスカートリッジに組み込み、その状態で、温度40℃、95%RHの恒温恒湿槽に10日間放置した後、23℃、60%RH環境にてハーフトーン画像を出力した。その後、カートリッジから感光体を取り出し、光学顕微鏡を用いて倍率100倍で感光体表面を観察した。ハーフトーン画像及び感光体表面の観察結果から、感光体汚染を下記基準で評価した。
○:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の画像不良が無く、感光体表面にもブリードによる付着物や割れが観察されない。
△:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の画像不良は無く、感光体表面に割れは無いが、付着物が観察された。
×:ハーフトーン画像に感光体汚染起因の画像不良が見られ、感光体表面に付着物又は割れが発生していた。
【0067】
【表1】

【0068】
本発明の範囲内にある実施例では、通電劣化が12%以内であり、画像均一性は実施例8を除き○であり、感光体汚染は○となり、帯電ローラとして優れた特性が得られた。なお、実施例8では総カーボンブラックが多いことによる局所的な高抵抗部分が存在し、帯電均一性が△となった。
【0069】
比較例1〜〜10では、感光体汚染はいずれもまるであるが、カーボンブラックの種類や使用量が本発明の範囲外であるために、通電劣化が15%超であったり、画像均一性が×と悪かった。なお、比較例4では、一次粒子径の大きなカーボンブラックBが入手できなったので、代わりに、平均一次粒子径700nm、DBP吸収量30cm3/100gの炭酸カルシウムを使用した。平均一次粒子径が大きすぎるために通電劣化が30%と極めて悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】帯電ゴムローラの断面図である。
【図2】帯電ゴムローラの側面図(下図)と断面図(上図)である。
【符号の説明】
【0071】
1 導電性支持体(芯金)
2 導電性ゴム層
3 表面層
4 SUS製ドラム
D 導電性ゴム層の厚さ
L 導電性ゴム層の長さ
T 帯電ゴムローラとSUSドラムのニップ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体の上に導電性ゴム層を有する帯電部材用導電性ゴムローラであって、
導電性ゴム層が、ゴム成分として極性ゴムを含み、導電剤としてカーボンブラックを含んでおり、
該カーボンブラックが、(A)平均一次粒子径が31nm以上50nm以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上180cm3/100g以下であるカーボンブラック(以下「CB−A」と表す)と(B)平均一次粒子径が90nm以上300nm以下であり、DBP吸収量が20cm3/100g以上80cm3/100gであるカーボンブラック(以下、「CB−B」と表す)を、質量比([CB−A]/[CB−B])0.67以上3.00以下で配合され、かつ、CB−A及びCB−Bが、それぞれ、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下、20質量部以上45質量部以下であることを特徴とする帯電部材用導電性ゴムローラ。
【請求項2】
極性ゴムが、アクリロニトリル含有量が31.0%以上37.0%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電部材用導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−256908(P2008−256908A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98362(P2007−98362)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】