説明

帯電部材

【課題】Cセット画像の発生を抑制できる帯電部材の提供。
【解決手段】導電性基体2および弾性層3を有する帯電部材1であって、該弾性層は、樹脂を含有するシェルを有する中空粒子を含み、該シェルは、表面が金属層で被覆されていることを特徴とする帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において、接触帯電に用いられるローラ形状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」と呼ぶ)は、電子写真感光体に対して押し圧力により当接され、従動回転するように配置される。また、感光体との間に適切なニップ幅を確保し、安定した放電を行う為に帯電ローラには一般的にゴムを含む弾性層が設けられている。
かかる帯電ローラが長期間にわたって電子写真感光体と当接された状態で放置された場合、帯電ローラの電子写真感光体との当接部に、容易に回復しない変形、すなわち、圧縮永久ひずみ(以降、「Cセット」と呼ぶ)が生じる。なお、「Cセット」とは、コンプレッションセットの略である。かかるCセットにかかるひずみ量は、高温高湿環境下で増加する傾向にある。
【0003】
Cセットが発生した帯電部材を用いて電子写真感光体の帯電を行った場合、Cセットが発生している部分(以下、「Cセット部」と呼ぶ)が放電領域を通過する際に、均一な微小放電ギャップが維持できなくなる。これにより、Cセット部と非Cセット部とで帯電能力に差が生じてしまう。その結果、Cセット部に対応した位置において、長手方向の横黒スジ及び/又は横白スジといった画像濃度ムラ(以下、「Cセット画像」と呼ぶ)が発生する。また、Cセット画像は、帯電部材の印加電圧を直流電圧のみの電圧とした場合において、より発生し易い傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−293061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、Cセット画像の発生を抑制できる帯電部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、該弾性層は、樹脂を含有するシェルを有する中空粒子を含み、該シェルは、表面が金属で被覆されている帯電部材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子写真感光体との長期間の当接部へのCセットの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)、(b)は本発明の帯電部材(ローラ形状)の断面模式図である。
【図2】本発明の帯電ローラの電気抵抗値測定に用いる機器の模式図である。
【図3】本発明の中空粒子を模式的に示した断面模式図である。
【図4】本発明の電子写真装置の一つの実施の形態の断面模式図である。
【図5】本発明のプロセスカートリッジの一つの実施の形態の断面模式図である。
【図6】本発明の帯電ローラの製造に用いるクロスヘッド押出成形機の模式図である。
【図7】本発明の帯電ローラの製造に用いる高周波誘導加熱装置の模式図である。
【図8】本発明の帯電ローラの製造に用いる金型の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の帯電部材は、導電性基体上に樹脂を含有するシェルを有する中空粒子を含む弾性層を有しており、被帯電体(電子写真感光体)を帯電するために用いられる。そして、前記中空粒子は樹脂を含むシェルの表面に金属が被覆されている。
【0010】
このため、弾性層が電子写真感光体との当接部で圧縮荷重を受けて変形した場合においても、中空粒子のシェルが金属層によって補強されているため、弾性層に含まれる中空粒子のシェルの弾性回復力が高い。そのため、弾性層自体の変形からの回復力も向上する。
【0011】
さらに、中空粒子のシェルと弾性層構成材料の間に金属層を介在するため、中空粒子と弾性層構成材料の界面にすべりが生じて、前記弾性層構成材料から前記中空粒子に伝わるひずみが減少する。このため、弾性層に含まれる中空粒子の変形が低減する。前記界面にすべりが生じる理由としては、中空粒子の金属層と弾性層構成材料の親和性が低下するためであると考えられる。
【0012】
以上の機構によって、弾性層の耐圧縮永久ひずみ性が向上するため、帯電部材のCセット変形量が減少して、Cセット画像の低減が図られるものと考察している。
【0013】
また金属層の膜厚としては、0.1μm以上5μm以下が好ましい。膜厚をこの範囲内とすることで、金属層の変形からの弾性回復力を向上させることができる。膜厚が0.1μm以上とすることで、金属層の変形からの弾性回復力をより確実に維持させ得る。このため、帯電部材の弾性層への圧縮永久ひずみの発生をより確実に抑制することができる。また、前記金属の被覆厚みを5μm以下とすることで、中空粒子の圧縮強度が過度に大きくなることを抑制でき、弾性体多孔質層の硬度の過度の向上とそれに伴う電子写真感光体とのニップ幅の減少を抑えることができる。
【0014】
さらに、シェル外周面に被覆されている金属層が、すず、銀、金、銅、白金、チタンおよびニッケルから選ばれる金属を少なくとも一つ含むことにより、中空粒子の弾性回復力と圧縮強度の両立が可能となる。このため、本願発明においては、圧縮永久ひずみの低減と電子写真感光体との当接における適度なニップの確保が可能となる。
【0015】
<帯電部材>
図1に、本発明に係るローラ形状の帯電部材(帯電ローラ)の軸に対して直交する断面の概略図を示す。なお、本発明に係る帯電部材の形状はローラ形状に限られず、平板形状やベルト形状であってもよい。以下、図1に示した帯電ローラに基づき本発明について詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は、導電性基体2と弾性層3を有している帯電ローラ1である。
図1(b)は、導電性基体2と弾性層3、さらに弾性層3の上に表面層4を有する帯電ローラ1である。特に耐久性等が要求される場合、図1(b)のように、表面層を設けて、2層以上とすることが推奨される。
【0017】
導電性基体と弾性層、あるいは、順次積層する層(例えば、図1(b)に示す弾性層と表面層)は、接着剤を介して接着してもよい。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
【0018】
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
【0019】
接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、後に詳述する導電剤から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
【0020】
本発明の帯電ローラは、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗が、23℃/50%RH環境中において、1×10Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。
【0021】
一例として、図2に帯電ローラの電気抵抗の測定法を示す。導電性基体の両端を、図示しない軸受けにより感光体と同じ曲率の円柱形金属41に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属41を回転させ、当接した帯電ローラ1を従動回転させながら安定化電源43から直流電圧−200Vを印加する。この時に基準抵抗42に流れる電流を電流計44で測定し、帯電ローラの抵抗を計算する。本発明において、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとした。
【0022】
本発明の帯電ローラは、感光体に対して、長手のニップ幅を均一にするという観点から、長手方向中央部が一番太く、長手方向両端部にいくほど細くなる形状、いわゆるクラウン形状が好ましい。クラウン量は、中央部の外径と中央部から90mm離れた位置の外径との差が、30μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の帯電ローラは、表面の十点平均粗さRzjis(μm)が3≦Rzjis≦30であり、表面の凹凸平均間隔Sm(μm)が15≦Sm≦150であることがより好ましい。帯電ローラの表面粗さRzjis、凹凸平均間隔Smをこの範囲とすることにより、帯電ローラと電子写真感光体との接触状態をより安定にすることができる。これにより、感光体を均一に帯電することが容易になり、また表面の凸部の変形に伴う抵抗ムラを抑制し、ポチ画像の発生を抑制ため、より好ましい。
【0024】
表面の十点平均粗さRzjis及び表面の凹凸平均間隔Smの測定法について下記に示す。
JIS B0601−2001表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。Rzjisは、帯電部材を無作為に6箇所測定し、その平均値を示す。また、Smは、帯電部材を無作為に6箇所選び、そこにおける各10点の凹凸間隔を測定しその平均を測定箇所のSmとし、当該帯電部材のSmとして、6箇所の平均値を示す。
【0025】
また、本発明の帯電ローラは、電子写真装置の小型化および省スペース化を目的として、外径をφ12mm以下に設定することが望ましい。
【0026】
<導電性基体>
本発明の帯電部材に用いられる導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる弾性層等を支持する機能を有するものである。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属やその合金を挙げることができる。
【0027】
<弾性層>
弾性層には、中空粒子を分散してなるマトリックス材料を含む。マトリクス材料としては、ゴムや樹脂を用い得る。具体例を以下に挙げる。
エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、あるいはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等。
【0028】
中でも、抵抗調整が容易なエピクロルヒドリンゴム及びNBRが好ましい。
【0029】
エピクロルヒドリンゴムは、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができる。また、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることができるので、高分子弾性体として好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムとしては以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
【0030】
弾性層は、エピクロルヒドリンゴム単独でもよいが、エピクロルヒドリンゴムを主成分として、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有してもよい。その他の一般的なゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。また、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)の如き熱可塑性エラストマーを含有してもよい。上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、弾性層材料100質量部に対し、1〜50質量部であるのがより好ましい。
【0031】
弾性層の体積抵抗率は、23℃/50%RH環境下で測定して、10Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましい。また、体積抵抗率を調整するため、カーボンブラック、導電性金属酸化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の導電剤を適宜添加することができる。弾性層材料に極性ゴムを使用する場合は、特に、アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0032】
弾性層には、絶縁性粒子を含有させても良い。
【0033】
また、弾性層には、硬度等を調整するために、軟化油、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。可塑剤等の配合量は、弾性層材料100質量部に対して、好ましくは1質量部から30質量部であり、より好ましくは3質量部から20質量部である。可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることがより好ましい。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。
【0034】
更に、弾性層には、種々な機能を付与する材料を適宜含有させてもよい。これらの例として、老化防止剤、充填剤等を挙げることができる。
【0035】
弾性層の硬度は、アスカーC硬度で70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。アスカーC硬度が70°を超えると、帯電部材と感光体との間のニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる場合がある。ここで、アスカーC硬度とは基準規格アスカーC型SRIS(日本ゴム協会規格)0101を有する試験機を用いて測定した値である。
【0036】
弾性層の体積抵抗率は、弾性層に使用するすべての材料を厚さ1mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成して得た体積抵抗率測定試料を、上記表面層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。
【0037】
弾性層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0038】
弾性層の空孔率としては、特に限定はされないが、弾性層の硬度を小さくするために50%〜90%が好ましい。
【0039】
<中空粒子>
中空粒子の模式図を図3に示す。中空粒子50は、シェル52と前記シェルによって形成される中空部51(以下、シェルと中空部を併せて中空粒子本体53と呼ぶ)、および前記シェルの外周面に被覆された金属層54から構成される。
【0040】
中空粒子本体としては、粒子の内部が気泡となっている粒子を用いても良いし、粒子の内部に内包物質を含み、熱を加えることにより内包物質が膨張し、中空粒子本体となるいわゆる熱膨張性の中空粒子を用いても良い。
【0041】
シェルに用いる材質としては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニル芳香族化合物類、及び酢酸ビニルからなる群より選ばれるビニル単量体を含む重合性単量体のうち少なくとも一つを重合して得られる熱可塑性樹脂などがあげられる。
【0042】
中空粒子本体が熱膨張性である場合は、中空部に液体または気体を内包することができる。中空部に内包する液体または気体としては、中空粒子のシェルの軟化点以下の温度でガスになって膨張するもので、例えばプロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの低沸点液体が挙げられる。また、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカン、イソデカンなどの高沸点液体も使用可能である。さらに、加熱により熱分解してガス状になるADCA、OBSH、AIBNなどの化合物が多く用いられるが、これに限定されるものではない。導電性ローラを作製する際、ゴムの加硫を行う温度が一般的に150〜180℃である。この温度において加硫と発泡を同時に行う場合、高発泡の多孔質弾性層を形成するために、好ましくは、高沸点液体のノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルオクタン、イソオクタンがよい。
【0043】
これら中空粒子本体は、懸濁重合法、界面重合法、界面沈殿法、液中乾燥法といった公知の製法により製造することができる。
【0044】
懸濁重合法とは、分散安定剤を含有する水相中に、原料モノマーが添加されてなる油相を添加、攪拌混合して該原料モノマーの微細な液滴を形成させ、次いで加熱反応させ重合を行い、中空粒子本体を製造する方法である。具体的には、原料モノマー、前記内包物質、重合開始剤、及び架橋剤等を添加させた油相を調製する。次に、分散安定剤、分散安定補助剤等を添加させた水相を調製する。これら油相と水相を混合させ分散液を作製する。この分散液を攪拌混合し、加圧し、加熱反応させることにより、反応生成物を作製する。得られた反応生成物について、ろ過、水洗浄を行い、その後乾燥させることで所望の中空粒子本体を得ることができる。
【0045】
界面重合法とは、乳化分散剤と親水性原料モノマーが添加されてなる水相と、疎水性原料モノマーが添加されてなる油相とを混合させ作製した乳化分散液を加熱反応させ、水相と油相の界面において重合を行い、中空粒子本体を製造する方法である。具体的には、親水性の原料モノマー、乳化分散剤を添加させた水相を調製する。次に、疎水性の原料モノマー、前記内包物質、架橋剤を溶解させた油相をそれぞれ調製する。これら水相と油相を混合させ、攪拌混合させることで水相に油相が分散された乳化分散液を調製する。この分散液を攪拌混合し、加圧し、加熱させることで水相と油相の界面で重合が進行し、反応生成物が作製される。得られた反応生成物について、ろ過、水洗浄を行い、その後乾燥させることで所望の中空粒子本体を得ることができる。
【0046】
界面沈殿法とは、温度、pH、溶解度パラメータ等による溶媒と熱可塑性樹脂との溶解度の差を利用して熱可塑性樹脂を析出させ、カプセル化させる製法である。具体的には、まず、あらかじめ重合反応により作製した熱可塑性樹脂を、内包物質を含む溶剤に添加させる。この溶液に、該熱可塑性樹脂に対して溶解度の低い溶媒(貧溶媒)を添加することで、熱可塑性樹脂の粒子を析出させる。この際、貧溶媒に予め内包物質を添加しておいてもよい。または、該熱可塑性樹脂を内包物質を含む溶剤に溶解させ、その後、内包物質を含む貧溶媒を添加してもよい。あるいは、内包物質を含む溶剤に、該熱可塑性樹脂を加熱し溶解させ、その後冷却することで熱可塑性樹脂の粒子を析出させてもよい。いずれの方法においても、ろ過、洗浄、乾燥させることで所望の中空粒子本体を得ることができる。
【0047】
液中乾燥法とは、溶媒にポリマーを溶解させ、分散剤を含む媒体中に加えて分散液を形成させた後に、溶媒を除去してカプセル化させる製法である。具体的には、まず、あらかじめ重合反応により作製した熱可塑性樹脂を、前記内包物質を含む溶剤に溶解させた樹脂溶液を調製する。次に、分散剤を添加した水性媒体中に該樹脂溶液を分散させ、加熱、減圧により溶剤を除去する。その後、ろ過、洗浄、乾燥させることで所望の中空粒子本体を得ることができる。
【0048】
本発明に係る中空粒子は、上記の方法により得た中空粒子本体のシェル表面に金属層を被覆することで得られる。金属層は、中空粒子が電子写真感光体との当接によって外力を受けて、変形を生じた時に、中空粒子の弾性回復力が効率的に発揮される状態が好ましい。具体的には面状や網目状、または鱗片状などの状態で、中空粒子本体のシェル外周面の全体または略全体に渡って被覆されていることが好ましい。
【0049】
中空粒子の金属層の膜厚の目安としては、0.1μm以上5μm以下が好ましい。金属層の弾性的性質を確実に発現させ得るためである。また、弾性層の硬度が過度に向上することも抑制できる。金属層の厚みは透過型顕微鏡(X線透過型顕微鏡)を用いて測定することが出来る。
【0050】
シェルを被覆する金属としては、すず、金、銀、チタン、白金、ニッケルから選ばれる1種または複数種の金属を用い得る。シェルの表面への金属層の形成方法としては、無電解めっき、スパッタリング、電気めっき、イオンプレーティングおよび真空蒸着法等が挙げられる。中でも、無電解めっき法が好適である。シェル内部に膨張性の気体や液体を含む場合は、中空粒子本体への圧力や温度の変化を与えずにシェル外周面への金属層の形成が可能であるためである。
【0051】
無電解めっき法とは、金属塩溶液から、被めっき面へ金属を析出させる方法である。無電解めっき法は、一般には、エッチング工程、触媒化工程、無電解めっき工程の工程により行われる。
【0052】
エッチング工程は、硫酸などのエッチング液で中空粒子シェルの外周面を腐食・粗化して、外周面を被覆する金属層の密着性を高める工程である。触媒化工程は、次の無電解めっき工程の析出に必要な触媒核を、中空粒子本体の外周面に析出させる工程であり、触媒核を活性化させる工程である。終工程である無電解めっき工程は、還元剤を含む無電解めっき液を使って、中空粒子シェル外周面に金属層を形成する。
【0053】
また、種々の金属を含む金属層を形成し得るスパッタリング法も好適に用い得る。スパッタリング法とは、コーティングする対象物を液体や高温気体にさらすことなく金属層の形成を行うことができる方法である。
【0054】
すなわち、金属層となる材料をチャンバー内に設置して、前記材料をターゲットとして設置し、高電圧をかけてイオン化させたアルゴンなどの希ガス元素や窒素を前記ターゲットに衝突させる。係る後、前記ターゲット表面の原子がはじき飛ばされ、中空粒子シェル外周面に到達して金属層を形成することが出来る方法である。
【0055】
多孔質弾性層に含まれる中空粒子の平均粒径については、特に限定されるものではない。しかし、電子写真感光体との当接において、均一ニップを確保して良好な帯電状態を得るためには、中空粒子の平均粒径は10〜1000μmが好ましく、より好ましくは50〜500μmである。
【0056】
<弾性体の製造方法>
弾性層の形成は、未膨張または既膨張の中空粒子を含む原料ゴム組成物を、予め所定の膜厚に形成されたシート形状又はチューブ形状にしたのちに、導電性基体に接着又は被覆して帯電部材予備成形体を作成する。次いで前記帯電部材予備成形体を円筒状のキャビティを有する円筒型または割型に設置して加熱発泡させて、所定の寸法を有する帯電部材を得る方法がある。
【0057】
その他に、前記円筒型に中空粒子を含む原料ゴム組成物と導電性基体を設置してから加熱架橋する方法も用いられる。
【0058】
さらに、前記帯電部材予備成形体を熱風炉などの高温雰囲気中にて自由発泡させた後に、プランジカット式の円筒研磨機で所定の外径寸法を有する帯電部材を得る方法も用いることができる。
【0059】
また、帯電部材予備成形体を得る方法として、クロスヘッドを備えた押出機を用いて、導電性基体と弾性層材料を一体的に押出して作製することもできる。クロスヘッドとは、電線や針金の被覆層を構成するために用いられる、押出機のシリンダ先端に設置して使用する押出金型である。
【0060】
特に本発明においては、
(1)熱可塑性樹脂からなるシェルに金属が被覆されている熱膨張性中空粒子を含有する原料ゴム組成物を導電性基体上に円筒状に被覆して帯電部材予備成形体を得る工程
(2)前記工程(1)で得られた帯電部材予備成形体を誘導加熱して、前記原料ゴム組成物中の前記熱膨張性中空粒子を加熱して、前記原料ゴム組成物を発泡させて帯電部材を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた帯電部材を熱風炉にて加熱する工程
を有することを特徴とする。
【0061】
熱風炉や加硫缶などの加熱装置を用いて、帯電部材予備成形体の弾性層中の熱膨張性中空粒子を発泡させて、多孔質弾性体とする場合は、帯電部材予備成形体の外周面側から内部に向けて加熱が行われる。このため、前記弾性体中に含まれる熱膨張性中空粒子の発泡よりも早く前記帯電部材予備成形体の外周面の架橋が進み、前記熱膨張性中空粒子の発泡が十分に進行しない場合があった。
【0062】
一方、本発明による製造方法では、弾性層中の中空粒子に金属層が被覆されているため、高周波によって前記弾性層に含まれる前記金属層が選択的に加熱される。このため、前記帯電部材予備成形体の外周面の架橋よりも早く前記熱膨張性中空粒子の発泡が進行するため、前記熱膨張性中空粒子の発泡を十分に進行させることが可能となる。
【0063】
熱膨張性中空粒子の発泡が不十分な場合は、所望の寸法の帯電部材を得ることが出来なくなる場合や所望の弾性層の硬度を得ることが出来ない場合がある。
【0064】
<表面層>
本発明の帯電部材には、表面層を形成してもよい。表面層の厚さの目安としては、0.1μm以上100μm以下、特には、1μm以上50μm以下が好ましい。なお、表面層の膜厚は、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0065】
<電子写真装置>
本発明の帯電部材を備える電子写真装置の1例の概略構成を図4に示す。電子写真装置は、ドラム形状の感光体(以降、「感光ドラム」ともいう)601、感光ドラム601を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。感光ドラムは矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0066】
帯電装置は、感光ドラム601に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ1を有する。帯電ローラ1は、感光ドラムの回転に伴って従動回転し、帯電用電源612から所定の直流電圧を印加することにより、感光ドラムの表面を所定の電位に帯電する。感光ドラム601に静電潜像を形成する潜像形成装置607は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。
【0067】
現像装置は、感光ドラム601に近接又は接触して配設される現像ローラ602を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。転写装置は、接触式の転写ローラ604を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材603に転写する。クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材606、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。定着装置605は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を転写材603に定着し、機外に排出する。
【0068】
<プロセスカートリッジ>
感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置本体に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジ(図5)を用いることもできる。すなわち、帯電部材1が被帯電体601と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであり、該帯電部材が上記の帯電部材である。また、電子写真装置は、少なくとも、プロセスカートリッジ、露光装置及び現像装置を有し、該プロセスカートリッジが上記のプロセスカートリッジである。
【実施例】
【0069】
まず、本発明に係る中空粒子の製造例を説明する。
【0070】
[製造例1]中空粒子本体aの製造
重合反応容器に、水8Lと、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製)8質量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.2質量部を添加し、水性分散媒体を調製した。
次いで、原料モノマーとしてアクリロニトリル100質量部と、内包物質としてノルマルオクタン25質量部と、重合開始剤としてジクミルパーオキシド1.5質量部と、架橋物質としてメチルメタアクリレート1.0質量部からなる油性混合液を水溶性分散媒体に添加し、更に水酸化ナトリウム0.8質量部を添加することにより、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器(20L)内へ仕込み、加圧(0.2MPa)し、60℃で20時間反応させることにより、反応生成物を調製した。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥したのちに分級して、平均粒径が100μmの中空粒子本体aを得た。
【0071】
[製造例2]中空粒子本体bの製造
原料モノマーとして、塩化ビニリデンを使用した以外は、製造例1と同様な方法で平均粒径が100μmの中空粒子本体bを作製した。
【0072】
[製造例3]中空粒子本体cの製造
原料モノマーをスチレンに変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒径が100μm中空粒子本体cを得た。
【0073】
[製造例4]中空粒子本体dの製造
重合反応容器内に、イオン交換水200質量部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を添加し、水溶性分散媒体を調製した。
次いで、塩化ビニル50質量部、イソペンタン100質量部、n−ブチルアクリレート50質量部、トリメチローラプロパントリアクリレート1質量部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル1質量部からなる油性混合液を水溶性分散媒体に添加し、分散液を調製した。得られた分散液をホモジナイザーを用いて攪拌混合し、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、80℃で30分間反応させることで反応生成物を調整した。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥して得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥したのちに分級して、平均粒径が100μmの中空粒子本体dを得た。
【0074】
[製造例5]中空粒子本体eの製造
イオン交換水100質量部にNaCl 34質量部を溶解させる。水相として、アジピン酸ジエタノールアミン縮合物1質量部を溶解し、コロイドシリカ20%水溶液17質量部を加える。この水溶液をpH3.5に調製した。メタアクリル酸メチル(MMA)28質量部、アクリル酸メチル(MA)1.7質量部、アクリル酸(3.3)20質量部、EDMA 0.2質量部、AIBN 0.2質量部を混合して均一溶液とする。オートクレーブ中にてモノマー相にイソブタンを8.5質量部仕込み均一溶液とする。ここに前記水相を加えて、窒素置換し、反応温度65℃で9時間反応させる。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥したのちに分級して、平均粒径が100μmの中空粒子本体eを得た。
【0075】
[製造例6]中空粒子本体fの製造
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量:5000)325質量部に、1,000質量部のトルエンを添加し、さらに175質量部の多価イソシアネート化合物(キシリレンジイソシアナート/トリメチローラプロパン付加物(タケネートD110N、75重量%酢酸エチル溶液、武田薬品(株)製)を添加し、トルエン還流下に120℃で5時間反応を行った後、室温まで冷却し、トルエンを減圧除去し、ポリウレタン樹脂を得た。
得られたポリウレタン樹脂400質量部、黄酸化鉄12質量部、n−ヘキサン62質量部、酢酸エチル380質量部を混合し、あらかじめ作成したポリビニルアルコール0.5%水溶液2000質量部に滴下しながら分散した。得られた樹脂を濾紙濾過にて水中より取り出し、40℃の循風乾燥機にて乾燥した。さらに音波式分級機により解砕して篩い分け、平均粒径が100μmの中空粒子fを得た。
【0076】
[製造例7]中空粒子本体gの製造
ペンタン100質量部、テレフタル酸クロリド100質量部、メタキシレンジアミン100質量部、及びMEK120質量部を加えて溶解させた。これを油相とする。次いで、イオン交換水130質量部に乳化剤(キャリボンB(三洋化成工業社製))10質量部を溶解させた。これを水相とする。次に、上記水相と上記油相とを混合し、ホモミキサーを用いて分散させ、この分散液を60℃の条件で9時間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥したのちに分級して、平均粒径が100μmの中空粒子本体gを得た。
【0077】
[製造例8]中空粒子1の製造
160℃に調節された熱風炉にて中空粒子本体aを発泡させた後、無電解めっき法によって、ニッケルを金属層として被覆して中空粒子1を得た。得られた中空粒子1の粒径は264μmであり、透過型電子顕微鏡で測定した金属層の厚みは4.52μmであった。
【0078】
[製造例9〜14]中空粒子2〜7の製造
中空粒子本体の種類、金属層の厚みを下記表8に示したように変更した以外は、製造例8と同様にして、中空粒子2〜7を得た。
【0079】
[製造例15]中空粒子8の製造
中空粒子本体aに無電解めっき法によって、ニッケルを金属層として被覆して中空粒子8を得た。透過型電子顕微鏡で測定した金属層の厚みは9.53μmであった。
【0080】
[製造例16〜39]中空粒子9〜32の製造
中空粒子本体の種類、金属層の材質および金属層の厚みを表8に示したように変更した以外は、製造例15と同様にして中空粒子9〜32を得た。
上記製造例8〜39に係る中空粒子1〜32に関して、中空粒子本体の種類、金属層の材質、得られた中空粒子の粒径、金属層の厚みを表8にまとめて示す。
【0081】
(実施例1)
直径6mm、長さ252mmの快削鋼製の導電性基体に、シリコーンゴムとの接着性を向上させる目的で、プライマー(東レ・ダウコーニング製、商品名:DY39−051)を塗付し、150℃で30分間焼付けを行った。
【0082】
両末端にビニル基が置換した、25℃における粘度100Pa・sのジメチルポリシロキサン100質量部に、充填剤として石英粉末7質量部、およびカーボンブラック8質量部、中空粒子1を9部配合したものを液状シリコーンゴムのベース材料とした。石英粉末としては、Pennsylvania Glass Sand製のMin−USil(商品名)を用いた。カーボンブラックとしては、電気化学工業製のデンカブラック(商品名)の粉状品を用いた。このベース材料に、硬化触媒として白金化合物を微量配合したものと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン3質量部を配合したものを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴム(原料ゴム組成物1)とした。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基が置換したジメチルポリシロキサンに含有するビニル基1モルに対して、SiH基が1.1モルとなる量に相当する。
【0083】
次いで、図8に示したように、円筒形金型の中心部に上記軸芯体80を配置し、この円筒形金型内の注入口から金型のキャビティ101に上記液状シリコーンゴムを注入し、120℃で5分間、加熱硬化させ、さらに200℃で4時間加熱して、外径がφ12mmの帯電ローラ1を得た。
【0084】
[帯電ローラの弾性層に含有されている中空粒子の粒径と金属層の厚みの測定]
弾性層中の中空粒子を透過型電子顕微鏡(X線透過型顕微鏡)にて100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒径とする。結果を表9に示す。
【0085】
中空粒子の金属層の厚みは、体積平均粒径と同様にして、弾性層中の中空粒子をX線透過型顕微鏡にて任意の100箇所について金属層厚みを測定し、その平均値を平均金属層厚みとする。結果を表9に示す。
【0086】
[Cセット画像の評価]
図4に示す構成を有する電子写真装置(商品名:Color LaserJet 4700dn、ヒューレット・パッカード社製)を、記録メディアの出力スピード200mm/sec(A4縦出力)に改造した。上記のプリンタの画像の解像度は、600dpi、1次帯電の出力は直流電圧−1100Vである。また、図5に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンタ用のプロセスカートリッジ(ブラック)を用意した。
上記プロセスカートリッジから帯電ローラを取り外し、実施例1に係る帯電ローラを装着した。帯電ローラは、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた(図6)。このプロセスカートリッジを温度40℃、湿度95%RHの環境に1ヶ月間放置(苛酷放置)した。次に、プロセスカートリッジを温度23℃、湿度50%RHの環境で6時間放置した後に、前記電子写真装置に装填した。次いで、温度40℃、湿度95%の環境下にてハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力した。出力した画像を目視で観察し、下記の基準に基づいてCセット画像の有無、およびその程度を評価した。結果を表2に示す。
ランク1:Cセット画像の発生はなし。
ランク2:軽微なスジ状の画像が認められる。
ランク3:一部にスジ状の画像が帯電ローラのピッチで確認できる。
ランク4:スジ状の画像が目立ち、明らかに画質の低下していることが認められる。
【0087】
[Cセット量の測定]
画像出力後、プロセスカートリッジから帯電ローラを取り外し、Cセット部、及び非Cセット部における帯電ローラの半径をそれぞれ測定した。非Cセット部の半径とCセット部の半径の差がCセット量である。測定は、東京光電子工業(株)の全自動ローラ測定装置を用いた。帯電ローラ長手中央部、及び、その中央部から左右それぞれ90mm位置の3個所について、帯電ローラを1°毎に回転させ、Cセット部、非Cセット部に対応する位置の測定を行った。次に非Cセット部の半径の最大値とCセット部の半径の最小値の差を算出した。3箇所の中で最も半径の差が大きい値を本発明のCセット量とした。結果を表2に示す。
【0088】
[アスカーC硬度の測定]
帯電ローラ1のアスカーC硬度を下記の方法で測定した。すなわち、スプリング式硬さ試験機〔ゴム・プラスチック硬度計・アスカーC型:高分子計器(株)製〕を用いて、Vブロックにて帯電ローラの導電性基体両端が水平に支持した。次いで前記帯電ローラの軸方向中央部の外周面に、前記スプリング式硬さ試験機の押針の先端を接触させる。更に該試験機を1kgの荷重(試験機を含む全荷重)で垂直に加圧して、直ちに目盛りを読み取ることにより、測定された値を記録した。結果を表2に示す。
【0089】
(実施例2〜7)
実施例1において、中空粒子を中空粒子2〜中空粒子7に変更した以外は表2の通り、実施例1と同様にして帯電ローラ2〜7を作成した。評価結果を表9に示す。
【0090】
(実施例8)
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製棒に、カーボンブラックを4%含有させた熱硬化性接着剤を塗布し、換装したものを導電性基体として使用した。
【0091】
ゴム弾性層用の原料ゴム組成物製作にあたり、まず、下記表1に示す材料を50℃に調節した容量が6リットルの密閉型ミキサーにて15分間混練した。次いで、25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、原料ゴム組成物2を得た。
【表1】

【0092】
続いて、図6に示すクロスヘッド82および押出機81を具備する押出成形装置を用いて、導電性基体を中心軸として、同軸上に円筒状に原料ゴム組成物2を被覆して、原料ゴム組成物層の外径がφ10mmである帯電部材予備成形体80を得た。なお、図6における符号83は芯金送りローラである。
【0093】
得られた帯電部材予備成形体80に対して、図7に模式図を示すように、出力8KW、周波数30KHzの誘導加熱装置を用いて高周波を印加した。すなわち、帯電部材予備成形体80を高周波印加コイル91の内側に設置して、3分間高周波を印加して帯電部材予備成形体を発泡させて帯電ローラ8を得た。
【0094】
次いで、発泡した前記帯電部材予備成形体を熱風炉にて160℃で30分間加熱したのち、弾性層の端部を除去して、外径がφ12.5mm、長さが232mmの弾性層を有する帯電ローラを得た。この後に、前記帯電ローラの弾性層の外周面を、プランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨して、弾性層の外径をφ12mmに調整して帯電ローラ8を得た。評価結果を表9に示す。
【0095】
(実施例9〜14)
実施例8において、中空粒子を中空粒子9〜中空粒子14に変更した以外は実施例8と同様にして帯電ローラ9〜14を作成した。評価結果を表9に示す。
【0096】
(実施例15〜17)
実施例8において、中空粒子の添加部数を2部、5部及び20部に変更した以外は実施例8と同様にして帯電ローラ15〜17を作成した。評価結果を表9に示す。
【0097】
(実施例18)
下記表2に示す材料を25℃に温調した二本ローラ機にて10分間混練し原料ゴム組成物3を得た。
【表2】

【0098】
原料ゴム組成物として原料ゴム組成物3を用いた以外は実施例8と同様にして帯電部材予備成形体を得た。次いで帯電部材予備成形体を熱風炉にて160℃で45分間加熱したのち、弾性層の端部を除去して、外径がφ12.5mm、長さが224.2mmの弾性層を有する帯電ローラを得た。次いで、前記帯電ローラの弾性層の外周面を、プランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨して、弾性層の外径をφ12mmに調整して帯電ローラ18を得た。評価結果を表9に示す。
【0099】
(実施例19〜24)
実施例18において、中空粒子を中空粒子9〜14に変更した以外は実施例18と同様にして帯電ローラ19〜24を作成した。評価結果を表9に示す。
【0100】
(実施例25)
下記表3に示した材料の混合物を、25℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、原料ゴム組成物4を得た。実施例18において、原料ゴム組成物を原料ゴム組成物4とした以外は、実施例18と同様にして、帯電ローラ25を作成した。評価結果を表9に示す。
【表3】

【0101】
(実施例26〜28)
実施例25において、中空粒子を中空粒子9〜11に変更した以外は実施例25と同様にして帯電ローラ26〜28を作成した。評価結果を表9に示す。
【0102】
(実施例29)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が14質量%となるように調整した。
【0103】
この溶液714.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対し下記表4成分を加え、混合溶液を調製した。
【表4】

(*1)変性ジメチルシリコーンオイル「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)
(*2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物。なお、当該ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
【0104】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。その後、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。
【0105】
次に、この表面層用塗布溶液を用いて、実施例25で作製したローラ(帯電ローラ25)に1回ディッピング塗布した。塗布後、常温で30分間以上風乾し、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、実施例25で作製したローラ上に表面層を形成した帯電ローラ29を得た。
【0106】
ここで、ディッピング塗布は以下の通りである。浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させて行った。
【0107】
作製した帯電ローラ29について、帯電ローラの弾性層に含有されている中空粒子の金属層厚み、粒径の測定、Cセット画像の評価、Cセット量の測定、アスカーC硬度を実施例1と同様に行った。結果を表9に示す。
【0108】
(実施例30)
下記表5に示す材料を混合し、ナイロン樹脂の表面層塗布液を調整した。
【表5】

上記材料を、実施例29と同様にペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。その後、ガラスビーズを濾過により除去し、表面層用塗布液を得た。この表面層用塗布液を用いて、実施例25で作製したローラ(帯電ローラ49)に1回ディッピング塗布した。常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて150℃で1時間乾燥して、実施例25で作製したローラ上に表面層を形成した帯電ローラ30を得た。
【0109】
作製した帯電ローラ30について、帯電ローラの弾性層に含有されている中空粒子の金属層厚み、粒径の測定、Cセット画像の評価、Cセット量の測定、アスカーC硬度を実施例1と同様に行った。結果を表9に示す。
【0110】
(実施例31)
下記表6に示す材料を用いて、アクリル樹脂の表面層用塗布液を調整した。
【表6】

上記材料を混合して表面層塗布液を得た。この表面層用塗布液を用いて、実施例25で作製したローラ(帯電ローラ25)にリング塗工により塗布した。塗布後に常温で30分間以上風乾した後、電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)を用いて電子線を照射した。電子線の照射条件は、加速電圧150kV、線量1200kGy、酸素濃度300ppm以下である。上述のようにして、実施例25で作製したローラ上に表面層を形成した帯電ローラ31を得た。
【0111】
作製した帯電ローラ31について帯電ローラの弾性層に含有されている中空粒子の粒径の測定、Cセット画像評価、Cセット量の測定、アスカーC硬度の測定を実施例1と同様に行った。結果を表9に示す。
【0112】
(実施例32)
下記表7に示す材料を25℃に冷却した二本ローラ機にて10分間混練して、原料ゴム組成物5を得た。原料ゴム組成物として、原料ゴム組成物5を用いた以外は実施例8と同様にして帯電ローラ32を得た。帯電ローラ32の評価結果を表9に示す。
【表7】

【0113】
(実施例33〜46)
実施例32において、中空粒子を中空粒子16〜29に変更した以外は実施例32と同様にして帯電ローラ33〜46を作成した。評価結果を表9に示す。
【0114】
(実施例47〜49)
実施例8において、中空粒子を中空粒子30〜32に変更した以外は実施例8と同様にして帯電ローラ47〜49を作成した。評価結果を表9に示す。
【0115】
(比較例1)
実施例13おいて、中空粒子13を中空粒子本体aに変更した以外は、実施例8と同様にして帯電ローラ50を製作した。製作した帯電ローラ50について、帯電ローラの弾性体層に含有されている中空粒子の粒径の測定、Cセット画像の評価、Cセット量の測定を実施例1と同様に行った。評価結果を表9に示す。
【表8】

【0116】
【表9】

【符号の説明】
【0117】
1・・・帯電部材
2・・・導電性基体
3・・・弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、
該弾性層は、樹脂を含有するシェルを有する中空粒子を含み、
該シェルは、表面が金属層で被覆されていることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記金属層の厚さが、0.1μm以上5μm以下である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記金属層が、すず、銀、金、銅、白金、チタンおよびニッケルからなる群から選ばれる1種または複数種の金属を含有する請求項1または2に記載の帯電部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−230306(P2012−230306A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99443(P2011−99443)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】