説明

帯電量分布測定装置および帯電量分布測定方法

【課題】 重力沈降型の帯電量分布測定において、帯電量分布測定部の気流を乱すことなく帯電微粒子をサンプリングすることが可能な帯電量分布測定装置および帯電量分布測定方法を提供する。
【解決手段】 帯電量分布測定装置1は、帯電量分布測定部100、微粒子サンプリング部200、および微粒子分散部600を備える。帯電量分布測定部100は、導入された帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定する。微粒子サンプリング部200は、帯電量分布測定部100の上に配置される。また、微粒子サンプリング部200は、帯電微粒子を集めつつ帯電量分布測定部100に導入する。微粒子分散部600は、微粒子サンプリング部200の上に配置される。微粒子分散部600は、帯電微粒子を超音波振動によって分散させて微粒子サンプリング部200に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重力沈降によって帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定するための帯電量分布測定装置および帯電量分布測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナー粒子等の帯電微粒子の特性を管理する手法として、平均帯電量測定法や帯電量分布測定法が用いられることが多かった(例えば、非特許文献1。)。
【0003】
平均帯電量測定法の例としては、ファラデーケージ法およびブローオフ法が挙げられる。これらの平均帯電量測定法は、簡易な測定方法であり、古くから広く用いられていた。
【0004】
ところが、平均帯電量が規格範囲であってもトナーの「かぶり」や低印字濃度等の画質劣化が発生することがある。つまり、「かぶり」等の画質劣化はトナーの平均帯電量だけでは説明できない。
【0005】
そこで、平均帯電量測定法だけでは説明できない帯電微粒子の特性を管理することを意図した測定方法として帯電量分布測定法の検討が進められるようになった。
【0006】
帯電量分布測定法の従来例として、トナーが分散した空気の流速が一定になるように制御しつつ測定室内にトナーを導入するとともに、測定室内の電界を用いて個々のトナーの偏向量を測定することによって帯電量分布を求める装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、帯電量分布測定法の別の従来例として、一定周波数で音波振動を発生すると同時に、平行平板電極間に一様電界を形成し、その中にトナー粒子を通過させ、粒子の位相遅れと偏向量をレーザードップラー法によって測定する測定方法が挙げられる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、従来、水平方向に一様電界を形成し、鉛直方向に重力のみで帯電粒子を沈降させることによって、空気の流速制御を必要としない測定方法が用いられることがあった(例えば、非特許文献3参照。)。
【0009】
なお、従来技術の中には、進行波電界により帯電微粒子を水平方向に搬送することによって、帯電微粒子を帯電量分布測定装置に導入する技術を採り入れたものがあった(例えば、特許文献2、3参照。)。
【特許文献1】米国特許第4375673号明細書
【特許文献2】特開2002−311073号公報
【特許文献3】特開2001−116786号公報
【非特許文献1】木村正利、「現像剤測定法(2)−帯電量−」、電子写真学会誌、第30巻、第2号(1991)、168〜174頁
【非特許文献2】辻本広行、彼谷憲美、「E−SPARTアナライザによる帯電量測定に及ぼす空気吸引量と印加電圧の影響」、粉砕、No.35(1991)、48〜54頁
【非特許文献3】増田弘昭、後藤邦彰、折田伸昭、「エアロゾル粒子の帯電量分布測定」、エアロゾル研究、Vol.8、No.4(1993)、325〜332頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した帯電微粒子の特性を管理する手法の中でも、特に、重力沈降型の帯電量分布測定法を採用する場合には、測定されるべき帯電微粒子をサンプリングする際に、帯電量分布測定部の気流が乱れないようにすることが重要である。その理由は、帯電量分布測定部の気流が乱れると、測定精度の低下を招くからである。
【0011】
例えば、従来、測定されるべき帯電微粒子を分離・分散させるために、帯電微粒子をサンプリングする工程でブローエアが使用されることがあったが、そのようなブローエアも帯電量分布測定部の気流を乱す一因となっていた。
【0012】
この発明の目的は、重力沈降型の帯電量分布測定において、帯電量分布測定部の気流を乱すことなく帯電微粒子をサンプリングすることが可能な帯電量分布測定装置および帯電量分布測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る帯電量分布測定装置は、重力沈降によって帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定する。この帯電量分布測定装置は、帯電量分布測定部、微粒子サンプリング部、および微粒子分散部を備える。
【0014】
帯電量分布測定部は、導入された帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定する。
【0015】
微粒子サンプリング部は、帯電量分布測定部の上に配置される。また、微粒子サンプリング部は、帯電微粒子を集めつつ帯電量分布測定部に導入する。
【0016】
微粒子分散部は、微粒子サンプリング部の上に配置される。微粒子分散部は、帯電微粒子を超音波振動によって分散させて微粒子サンプリング部に供給する。微粒子分散部の構成の例として、帯電微粒子が通過可能な目開きのメッシュ部を有する底部を備えた微粒子収容部と、微粒子収容部に超音波振動を付与するように構成された超音波振動付与手段と、を備えるものが挙げられる。
【0017】
この構成においては、スクレーパ等によって微粒子分散部に回収される。そして、微粒子分散部に回収された帯電微粒子は、微粒子分散部において超音波振動を加えられ、気中に分離・分散する。超音波振動によって帯電微粒子の分離・分散を行うことにより、帯電微粒子の分離・分散のためにブローエアを用いる必要がなくなるため、帯電微粒子のサンプリングの際における気流の発生が最小限に抑えられる。したがって、帯電量分布測定部の気流の乱れが発生しにくくなり、帯電量分布測定部の測定精度の低下が防止される。
【0018】
また、上述の微粒子収容部および超音波振動付与手段に加えて、微粒子収容部に気流を与えるように構成された気流付与手段をさらに設けることが好ましい。
【0019】
この構成においては、スクレーパ等によって微粒子分散部に回収される。そして、微粒子分散部に回収された帯電微粒子は、微粒子分散部において超音波振動および弱い気流を加えられ、気中に分離・分散する。超音波振動および弱い気流によって帯電微粒子の分離・分散を行うことにより、帯電微粒子の分離・分散のために強いブローエアを用いる必要がなくなるため、帯電微粒子のサンプリングの際における気流の発生が最小限に抑えられる。したがって、帯電量分布測定部の気流の乱れが発生しにくくなり、帯電量分布測定部の測定精度の低下が防止される。
【発明の効果】
【0020】
重力沈降型の帯電量分布測定において、帯電量分布測定部の気流を乱すことなく帯電微粒子をサンプリングすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る帯電量分布測定装置1は、帯電微粒子分散供給部600(以下、単に分散供給部という)、帯電微粒子サンプリング部(以下、単にサンプリング部という)200、および帯電量分布測定部(以下、単に測定部という。)100を備える。分散供給部600、サンプリング部200、および測定部100は、鉛直下方向にこの順番に配置される。なお、本実施形態では、分散供給部600からサンプリング部200を通過してさらに下段の帯電量分布測定部100の底面までの距離が23cmに設定されている。
【0022】
現像装置におけるトナーの帯電量分布測定を行なう際には、現像ローラの表面からスクレーパ等を介してトナーが分散供給部600に回収され、分散供給部600から落下するトナーがサンプリング部200を介して測定部100内に集められる。なお、トナーの回収に用いるスクレーパは、トナーの帯電特性を変化させないような素材で構成されたものが好ましい。
【0023】
分散供給部600は、粉体供給容器601および超音波振動制御装置603を備える。粉体供給容器601は、底部に微細メッシュ602を備える。この実施形態では、粉体供給容器601は、帯電量分析される帯電微粒子として、例えば質量基準中位径8.7μmの粉砕トナーを収容するように構成される。微細メッシュ602の構成例として、直径28mm、目開き16μmの金属メッシュが挙げられるがこれに限定されるものではない。メッシュサイズは、測定対象の帯電微粒子の大きさに適したものを適宜選択すれば良い。
【0024】
超音波振動制御装置603は、粉体供給容器601に超音波振動を加える。ここでは、超音波振動制御装置603が20kHzの振動を粉体供給容器601に加えることにより、下段のサンプリング部200にトナーを分散供給する。この実施形態では、粉体供給容器601全体に超音波振動を加えているが、粉体供給容器601における微細メッシュ602にのみ超音波振動を加える構成を採用しても良い。
【0025】
この実施形態では、超音波振動後の待ち時間を約2分と設定した。この値は、次式で算出された沈降時間t(91秒)にマージンを加えたものである。
【0026】
トナーは瞬間的に終末沈降速度vt に達すると仮定すると、下記ストークスの式から沈降時間tが下記の式によって算出される。
【0027】
【数1】

【0028】
図2に示すように、分散供給部600によって分散落下されたトナー400は、気流による乱れが無い状態でサンプリング部200の内部に静かに落下する。サンプリング部200は、上方および下方にそれぞれ開放しており、測定部100の上面に形成されたスリット状の帯電粒子導入口108にトナーを導く役割を果たす。本実施形態では、上側開放口202の幅W1は約120mmであり、下側のスリット201の幅は約1mmである。スリット201の幅は、帯電粒子導入口108のサイズとほぼ同じに設定される。
図3(A)に示すように、サンプリング部200は一対のフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという。)21A、21Bを備える。FPC21A、21Bは、それぞれ測定部100の帯電粒子導入口108にトナー400を案内する傾斜したガイド面を構成するように配置される。その結果、サンプリング部200において下方にいくにしたがって、トナー400の案内経路が狭くなっている。このように、ガイド部材をファンネル状(漏斗状)にする理由は、より多くの帯電微粒子が集め、帯電微粒子が密になった状態で帯電量分布測定部の方へ導入することによって帯電微粒子の測定効率を向上させるためである。なお、本実施形態では、FPC21A、21Bは左右対称に配置される。
【0029】
図3(B)に示すように、FPC21Aは、第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aを備える。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aは、それぞれ複数の線状電極から構成される。
【0030】
図3(C)は、FPC21Aの一部を示している。FPC21Aに適用される線状電極26A、26Bは、幅127μm、周期508μm、厚み12μmに設定される。線状電極26A、26Bは、ポリイミド基材24上に形成されており、ポリイミドコート25が施される。なお、ここでは、ポリイミド基材24は厚さ50μm、ポリイミドコート25は厚さ12.5μmに設定される。線状電極26Aは、第1の電極群22Aに接続されており、線状電極26Bは第2の電極群23Aに接続される。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aは、それぞれ電圧印加装置300に接続される。第1の電極群22Aおよび第2の電極群23Aに、互いに180°位相が異なる交流電圧を印加することによって、電界カーテンが形成される。
【0031】
このように、隣り合う2つの電極に180度位相がシフトした電圧を印加することにより、定在波の電界カーテンが形成される。また、3組の電極群を用いた場合、隣り合う2つの電極に120度位相がシフトした電圧を印加することにより、進行波の電界カーテンが形成される。4組の電極群を用いた場合、隣り合う2つの電極に90度位相がシフトした電圧を印加することにより、進行波の電界カーテンが形成される。
【0032】
本実施形態では、第1の電極群22A、第2の電極群23A、および電圧印加装置300によって電界カーテン形成部が構成される。電界カーテン形成部によって、サンプリング部200の内部を帯電微粒子が通り抜ける間、ガイド部材のガイド面と帯電微粒子とは非接触の状態に保たれる。このため、帯電微粒子を測定部100の内部に導入する際に、帯電微粒子が他の物体に接触しにくくなるため、帯電微粒子の帯電量の変化が起こりにくくなる。この結果、帯電微粒子の帯電状態の測定精度が向上する。なお、FPC21Bの構成は、FPC21Aと同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0033】
サンプリング部200の下方には測定部100が配置される。図4に示すように、測定部100は、平行平板電極(101、102)、上面板(103A、103B)、側面板106、底面板104、トナー粒子補集板105、電源(111、112)を備える。平行平板電極(101、102)は、帯電微粒子であるトナーを電界によって偏向させるために鉛直方向に沿って配置される。上面板(103A、103B)は、厚み5mm程度のガラス板によって構成されており、取り外し自在な蓋体として機能する。上面板103Aおよび103Bは、それぞれの間に幅1mmのスリット状の帯電粒子導入口108が形成されるように配置される。上面板(103A、103B)としては、アクリル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂であっても良いが、帯電しにくいガラスが最適である。これは、上面板(103A、103B)の帯電によって、帯電粒子が付着したり、測定部100内部の測定空間の電界を乱したりしないからである。
【0034】
側面板106は、ガラス板によって構成されており、測定部100の内部の測定空間を取り囲むように配置される。底面板104は、測定部100の底面を構成する。トナー粒子補集板105は、ガラス板によって構成される。電源111は、平行平板電極101に電圧を印加する。電源112は、平行平板電極102に電圧を印加する。
【0035】
続いて、トナーの帯電分布の測定について説明する。帯電粒子導入口108を介して測定部100内に導入されたトナーは、重力によって鉛直下方向に力を加えられ、平行平板電極101、102間の電界によるクーロン力によって水平方向に力を加えられる。このとき、帯電量の大きなトナーは、電界による水平方向への移動量が大きくなるため、平行平板電極101、102の上部に付着する。一方、帯電量の小さなトナーは、電界による水平方向への移動量が小さくなるため、平行平板電極101、102の下部またはトナー粒子補集板105の上面に付着する。そして、トナーの付着位置や各付着位置におけるトナーの付着量を計測することで、トナーの帯電状態、具体的にはトナーの帯電量分布が測定される。
【0036】
ここで、簡単にトナーの帯電量分布の測定原理を説明する。
【0037】
平行平板電極101、102により作られる、重力の作用方向と直交する電界中でのトナーの終末沈降速度[m/s]は
水平方向
【0038】
【数2】

【0039】
鉛直方向
【0040】
【数3】

【0041】
で表せる。
【0042】
但し、
c :カニンガムの補正係数
q:トナー粒子一個の電荷量[C]
E:平行平板間の電界[V/m]
μ:空気の粘度[Pa×s]
p :トナー粒子の直径(顕微鏡法による円相当径で表したもの)[m]
p :トナー粒子の質量[kg]
g:重力加速度[m/s2
x :気流のx方向(電界の方向)の速度成分
y :気流のy方向(重力の方向)の速度成分
である。
【0043】
静止気流中での粒子の運動を考えると、気流の速度成分Ux 、U は、共に0である。
【0044】
また、近年実用化されている5〜10μmのトナー粒径ではカニンガム係数Cc は、略1であるので、トナーを測定する場合には、カニンガム係数Cc を1として取り扱うことができる。空気の粘度μは、1.8×10-5である。測定空間の上部中央から重力沈降した帯電粒子の付着位置(x、y)は、
【0045】
【数4】

【0046】
の関係で表される。
【0047】
上記の式(4)より、付着位置と付着量から帯電量分布が求められる。
【0048】
図5は分散供給部600における超音波振動時間とトナー落下量の関係を調べたものである。粉体供給容器601に0.03gから0.1gの様々な量のトナーを投入し、分散実験を行ない、振動時間と落下量の関係を測定した。このグラフより、投入量に依存せず、10秒から15秒で落下量が減衰していることが分かる。
【0049】
図6は投入量を0.05gとし、落下したトナーを10cm下部に設置したプレパラートで捕捉し、分散状況を観察したものである。振動時間を5秒、10秒、15秒、20秒としたときの写真をそれぞれ(A)、(B)、(C)、(D)に示す。振動時間とは関係なく、ほぼ良好な分散状態で落下していることが分かる。
【0050】
分散供給部600は粒子を凝集させず分散落下させることが目的であり、長時間振動させることによる装置の過熱を防ぐことや、落下した粒子のカウントのしやすさも考慮して、振動時間は15秒とした。また後述の実験におけるトナー投入量の基準値は0.05gとした。
【0051】
図7は、サンプリング部200のFPC21A、21Bに電界カーテンを形成する電圧を印加しない場合(A)と電圧を印加した場合(B)のFPC21A、21B上のトナー粒子付着状況を観察したものである。電圧を印加しないときにFPC21A、21B全面に観察される黒い点はトナーである。前述のFPC21A、21Bに800V、1kHzの電圧を印加することにより、トナーが全く付着していないことから、電界カーテンの効果が確認できる。
【0052】
図8は測定部100の測定部座標の詳細示す説明図である。測定部100の上部スリット108の位置を座標原点とし、水平方向をy軸、垂直方向をx軸とする。y軸方向原点の左右±3cmのところに垂直な平行平板電極が配置されている。電極の垂直方向の高さは7cmとし、平行電界の有効領域となる。
【0053】
この平行平板電極に印加する電圧を50V、100V、150V、200Vと変化させ、トナー粒子沈降位置の頻度分布を測定した結果をそれぞれ図9(A)、(B)、(C)、(D)に示す。ここで、垂直電極に付着したトナー粒子のx軸座標は、水平方向のy軸座標に換算して図示した。印加電圧が大きくなるにつれて、トナー粒子付着位置の分布はマイナスよりになり、分布形状はブロードになる。この傾向は、前述の測定原理の説明から理解できる。150V以上電圧を印加した場合、−3cmの座標近傍(グラフ中に○印)で大きな不連続点が発生する。これは、壁面と底面の角部に対応する座標で、角部の電界の歪等が原因と考えられる。
【0054】
上記の式(4)を用いて、上記図9(A)、(B)、(C)、(D)の横軸を座標[cm]から帯電量[mC/kg]に換算したものをそれぞれ図10(A)、(B)、(C)、(D)に示す。図10(C)、(D)の○印で示した部分が上記角部近傍である。この角部近傍の±4mmの位置のデータを除いて、図10(A)、(B)、(C)、(D)を重ね合わせたものを図11に示す。平行平板電極に印加する電圧による測定差が少ないため、帯電量分布が良好に測定できていることがわかる。
【0055】
本測定に用いたトナーを、ファラデーケージにて測定した結果、−0.97[mC/kg]であった。前述のグラフで示した結果と良く整合しており、本装置の測定精度を確認することができた。
【0056】
上述の実施例においては、粉体供給容器内に帯電したトナーのみを投入して実験した結果を例示したが、平均粒径6.7μmのトナーと平均粒径40μmのキャリアの混合物を投入して行った実験においても、同様の良好な帯電量分布測定結果が得られた。このときのメッシュサイズは上述の実施例と同じ目開き16μmのものを用いた。この場合、メッシュサイズは、その目開きがトナーを通過させるがキャリアを通過させない大きさであることが好ましい。
【0057】
図12(A)および(B)は、分散供給部600における粉体供給容器601のバリエーションである粉体供給容器611の構成を示す。粉体供給容器611の基本構成は上述の粉体供給容器601と同様である。ただし、この粉体供給容器611は、容器内部の粉体に対して気流を与える気流付与手段605を備える。気流付与手段605は、空気ノズル609を4個備えたノズル部608、ノズル部608に連通するダクト部606、ダクト部606に気流を導入する気流導入部607を備える。
【0058】
空気ノズル609は、粉体供給容器611の底部に配置された微細メッシュ602に対して、斜め方向から気流を与えるように構成される。気流導入部607から微細メッシュ602に与えられる気流は、ノズル流速が5〜10m/s、微細メッシュ602における平均流速が0.1m/s程度の弱い気流である。
【0059】
この実施形態では、等角度間隔に配置された4つの空気ノズル609から微細メッシュ602に対して約45度の角度をもって気流を与えることにより、微細メッシュ602の全域に気流を行き渡らせるように構成しているが、気流の導入手法はこれには限定されない。例えば、微細メッシュ602上にて渦状の気流が発生するように気流を導入することも可能である。
【0060】
微細メッシュ602の構成例として、上述と同様に、直径28mm、目開き16μmの金属メッシュが挙げられるがこれに限定されるものではない。メッシュサイズは、測定対象の帯電微粒子の大きさに適したものを適宜選択すれば良い。
【0061】
この実施形態では、帯電量分析される帯電微粒子として、平均粒径8.7μmのトナーと平均粒径40μmのキャリアの混合物を粉体供給容器611に投入して実験を行った。
【0062】
超音波振動制御装置603は、粉体供給容器611に超音波振動を加える。ここでは、超音波振動制御装置603が28kHzの振動を粉体供給容器611に加えることにより、下段のサンプリング部200にトナーを分散供給する。この実施形態では、粉体供給容器611全体に超音波振動を加えているが、粉体供給容器611における微細メッシュ602にのみ超音波振動を加える構成を採用しても良い。
【0063】
図13(A)は、粒子を供給する前の微細メッシュ602の写真である。同図(B)は、前記トナーとキャリアの混合物を投入後、超音波振動のみを加えた後の微細メッシュ602の外側の写真である。大部分のトナーは分散され微細メッシュ602を通過しているが、一部のトナーが微細メッシュ602に付着している様子が観察される。トナーが帯電しているため、超音波により一旦分散されメッシュを通過したトナーが、鏡像力により微細メッシュ602の裏面に再付着したものと考えられる。
【0064】
同図(C)は、超音波振動と気流とを併用した場合の微細メッシュ602の外側の写真で、トナーがほとんど付着していない様子が観察される。超音波により分散・分離したトナーに対して、弱い気流を加えることにより、微細メッシュ602の裏面への再付着を防止でき、分散・供給効率を大幅に向上できることが確認できた。
【0065】
図14は、上述の超音波振動と気流とを併用した場合の帯電量分布測定結果である。粒子径8.7μm近傍の帯電量が−2〜−3mC/kgの結果が得られた。前述の超音波振動のみの場合の結果が、約−1mC/kgであったことから、帯電量の大きいトナーも分散供給でき、測定精度を向上できることが確認できた。
【0066】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電量分布測定装置の概略説明図である。
【図2】サンプリング部および帯電量分布測定部の概略構成を示す図である。
【図3】サンプリング部におけるFPCの概略構成を示す図である。
【図4】帯電量分布測定部の概略構成を示す図である。
【図5】分散供給部における超音波振動時間とトナー落下量の関係を示すグラフである。
【図6】分散供給部から落下した粒子の分散状況を示す写真である。
【図7】サンプリング部のFPCに電界カーテンを形成する電圧を印加しない場合(A)と電圧を印加した場合(B)のFPC上のトナー粒子付着状況を示す写真である。
【図8】帯電量分布測定部の測定部座標の詳細説明図である。
【図9】帯電量分布測定部におけるトナー粒子沈降位置の頻度分布を測定した結果を示す図である。
【図10】帯電量分布を測定した結果を示す図である。
【図11】帯電量分布を測定した結果を示す図である。
【図12】分散供給部の粉体供給容器の他の構成例を示す図である。
【図13】トナーを供給する前(A)、トナー供給後超音波振動のみを加えた場合(B)、およびトナー供給後超音波振動と気流とを加えた場合(C)における粉体供給容器の金属メッシュの状態を示す写真である。
【図14】粉体供給容器にトナー供給後超音波振動と気流を加えて分散供給した場合の帯電量分布測定結果である。
【符号の説明】
【0068】
1−帯電量分布測定装置
21A、21B−フレキシブルプリント配線板(FPC)
100−帯電量分布測定部
200−帯電微粒子サンプリング部
300−電圧印加装置
400−トナー群
600−分散供給部
601−粉体供給容器
602−微細メッシュ
603−超音波振動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力沈降によって帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定する帯電量分布測定装置であって、
導入された帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定する帯電量分布測定部と、
前記帯電量分布測定部の上に配置され、帯電微粒子を集めつつ前記帯電量分布測定部に導入する微粒子サンプリング部と、
前記微粒子サンプリング部の上に配置され、帯電微粒子を超音波振動によって分散させて前記微粒子サンプリング部に供給する微粒子分散部と、
を備えた帯電量分布測定装置。
【請求項2】
前記微粒子分散部は、
帯電微粒子が通過可能な目開きのメッシュ部を有する底部を備えた微粒子収容部と、
前記微粒子収容部に超音波振動を付与するように構成された超音波振動付与手段と、
を備えた請求項1に記載の帯電量分布測定装置。
【請求項3】
前記微粒子分散部は、
帯電微粒子が通過可能な目開きのメッシュ部を有する底部を備えた微粒子収容部と、
前記微粒子収容部に超音波振動を付与するように構成された超音波振動付与手段と、
前記微粒子収容部に気流を与えるように構成された気流付与手段と、
を備えた請求項1に記載の帯電量分布測定装置。
【請求項4】
前記微粒子サンプリング部は、
空間中に分散供給された帯電微粒子群を受け入れる第1の開口部を上側に有し、かつ、前記帯電微粒子群を排出する第2の開口部を下側に有する本体と、
第1の開口部から第2の開口部に向かって鉛直方向に沿って延びる前記帯電微粒子の流路を画定するガイド部材と、
前記ガイド部材におけるガイド面近傍に電界カーテンを形成する電界カーテン形成部と、
を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の電量分布測定装置。
【請求項5】
前記帯電微粒子は、トナーとキャリアの混合物であり、
前記メッシュ部の目開きは、前記トナーを通過させるが前記キャリアを通過させない大きさであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の帯電量分布測定装置。
【請求項6】
重力沈降によって帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定するための帯電量分布測定方法であって、
測定されるべき微粒子に超音波振動を付与することによって、前記微粒子を分散するステップと、
空間中に分散された前記帯電微粒子を集めつつ、前記帯電微粒子の帯電量の分布特性を測定するための帯電量分布測定部に導入するステップと、
帯電量分布測定部に導入された前記帯電微粒子の帯電量の分布特性を、重力沈降によって測定するステップと、
を含む帯電量分布測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−2941(P2009−2941A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131911(P2008−131911)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】