説明

帯電防止シート及びその製造方法

【課題】帯電防止機能に加えて、防汚染性、クッション性、軽量化、ハンドリング性、耐久性等にも優れた帯電防止シートを提供する。
【解決手段】不織布シートの下面にPEシート又はPPシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布し、前記PEシート又はPPシートの底面には帯電防止シートを積層したことを特徴とする帯電防止シート状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止シート及びその製造方法に関し、特に、その帯電防止シートは、電子部品等のメンテナンスや修理の際に床等に敷いて作業する帯電防止マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を扱う場合の作業時には、電子部品を静電気から保護する必要があるが、従来の単なるシートやマットではそれが充分ではなかった。そのために通常は、例えば非特許文献1に示すように、導電テーブルマット等導電性材料を練りこんだ手段(機能)を備えた高価な帯電防止マットを使用していた。
【0003】
これらのマットは、既に、非特許文献1乃至3に示すように多くの商品が市販されているが、一枚当たりの価格が高価なものであり、機のメンテナンスサービス会社等で大量に使用する場合には、安価で従来同等以上の効果が期待できる帯電防止マット(シート)が待たれている。
【0004】
しかしながら、現場作業時に電子部品等の部品を一時置いて作業をする保護シートとして使用する場合には、帯電防止機能及び除電機能に加えて、防汚染性、クッション性、軽量化、ハンドリング性、耐久性等にも優れている必要がある。更には、多くの場合は床に敷いて作業を行うために、床側からの静電気の移行も防止する必要がある。
【0005】
特許文献1(特開2001−310383号公報)には、安定した製膜、品質を達成することができる、フィルムと不織布との複合シートおよびその製造方法を提供することを課題として、「熱可塑性繊維からなる不織布を溶融紡糸し、紡糸後30分以内に該不織布と熱可塑性樹脂フィルムとを重ね合わせた後に延伸することを特徴とするフィルム−不織布複合シートの製造方法、およびその方法で製造されたフィルム−不織布複合シート」に関する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2(特開2010−47857号公報)には、耐突き刺し抵抗値や嵩高特性および耐通気度に優れた特徴を有しているので、ガラス工場等の防護不織布などに提供することを目的とした「高機能性繊維を主成分とする目付が100〜3000g/mの短繊維不織布であって、突き刺し抵抗値が100〜1000g、圧縮率が15〜50%、通気性が0.1〜30cm/cm/secであることを特徴とする不織布」に関する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3(特開2007−39852号公報)には、風合い等の硬化を防ぎながら、かつ、特殊な装置を用いなくとも優れた洗濯耐久性を有する制電性繊維布帛を提供すること課題として、「第4級アンモニウム塩型のポリマーおよび/またはポリアミン樹脂と、1分子中に2個以上のブロックイソシアネート基を有する熱反応型ブロックドウレタンと、オレイル基と2個以上のヒドロキシ基とを共に有する界面活性剤を含む帯電防止組成物を繊維布帛に付与してなる制電性繊維布帛」に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−310383号公報
【特許文献2】特開2010−47857号公報
【特許文献3】特開2007−39852号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.mmm.co.jp/electrical/static/mat/lineup.html#f_9600
【非特許文献2】http://www.achilles.jp/product/03/01/04/01/index.html
【非特許文献3】http://www.sigma−koki.com/pdf/jp/C090609.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、除電機能又は帯電防止機能に優れた帯電防止シートを提供することである。
【0011】
さらに、本発明が解決しようとする課題は、除電機能又は帯電防止機能に加えて、防汚染性、クッション性、軽量化、ハンドリング性、耐久性等にも優れた帯電防止シートを提供することである。
【0012】
さらに、本発明が解決しようとする課題は、除電機能又は帯電防止機能に優れた帯電防止シートの製造方法を提供することである。
【0013】
電子機器(パソコン、サーバ、ファックス、プリンター、セキユリテー装置、計測機器、銀行端末装置、各種ベンディングマシン等)或いはその部品を取り扱う現場においては、各パーツの保守・点検、修理等を行うときに、それぞれのパーツを一時保存しておく必要がある。そのために、床等にマットを敷いてパーツの一時保存エリアを確保することは従来から行われている。本発明は、その際に、一時保存するパーツを静電気(除電機能又は帯電防止効果)、汚れ(防汚性)及び水滴(吸水性)等から守る為に使用する耐久性があってハンドリング性の良好なシートを提供することを目的とする。
【0014】
より具体的には、本発明は、特に除電機能又は帯電防止機能に優れ安価な帯電防止シートを提供することである。さらに本発明は、除電機能又は帯電防止機能に優れた帯電防止シートの構造等製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のシート状物は、不織布シートの底面にPEシート又はPPシートを積層され、さらに前記不織布シートの上面には全面印刷を施されたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の帯電防止シート状物は、不織布シートの底面にPEシート又はPPシートを積層され、前記不織布シートの上面には全面印刷を施され、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布されたことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の帯電防止シート状物は、不織布シートの下面にPEシート又はPPシートを積層され、前記不織布シートの上面には全面印刷を施され、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布され、前記PEシート又はPPシートの底面には帯電防止シートを積層され、シートの両面に帯電防止効果を持たせたことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の帯電防止シート状物の製造方法は、不織布シートの底面にPEシート又はPPシートを積層し、さらに前記不織布シートの上面には全面印刷を施すことを特徴とする。本発明のシート状物の製造方法においては、既存のラミネート機械、及び印刷機械を使用することができる。
【0019】
さらに、本発明の帯電防止シート状物の製造方法は、不織布シートの底面にPEシート又はPPシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布することを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の帯電防止シート状物の製造方法は、不織布シートの下面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートと帯電防止ポリエチレンシートを積層した帯電防止積層ポリエチレンシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布することにより、前記帯電防止積層ポリエチレンシートの底面からも帯電防止が図れ、両面からの帯電防止効果があることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の帯電防止シート状物の製造方法は、不織布シートの下面にPEシート又はPPシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布し、前記PEシート又はPPシートの底面には帯電防止シートを積層し、シートの両面に帯電防止効果を持たせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上のような構成により、電子機器の徐電効果と帯電防止の効果を奏する帯電防止シートを提供するものである。
【0023】
さらに、本発明は、徐電効果と帯電防止の効果に加えて、防汚染性、クッション性、軽量化、ハンドリング性、耐久性等にも優れた効果を奏する帯電防止シートを提供するものである。
【0024】
従来使用されている一般的な導電性マットは、厚みが2mm程度で3kg/m程度であるが、本発明の帯電防止シートでは、厚みが0.2mm程度で80g/m程度が達成できる。また、安価に提供できるものである。
【0025】
さらに、本発明は、容易に徐電機能と帯電防止機能を備えた帯電防止シートの製造を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)(B)(C)は、本発明の各実施例を示すシートの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例のシート状物の製造工程図である。
【図3】本発明の第2の実施例の帯電防止シート状物の製造工程図である。
【図4】本発明の第3の実施例の帯電防止シート状物の製造工程図である。
【図5】本発明の第3の実施例の帯電防止シート状物の別工程の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、軽くてハンドリング性がよく、耐久性があって安価な帯電防止シートを提供するものであり、第1の実施例は、不織布シートにポリエチレンシートを積層して、不織布シートの上面全面に印刷を施したものであり、第2の実施例は、不織布シートにポリエチレンシートを積層して、不織布シートの上面全面に印刷を施し、更に印刷面の上に導電性塗料層を形成したものであり、第3の実施例は、不織布シートにポリエチレンシートを積層して、不織布シートの上面全面に印刷を施し、更に印刷面の上に導電性塗料層を形成し、ポリエチレンシートの下面に帯電防止ポリエチレンシートを積層したものである。
【0028】
電子部品を床に置いて作業することを考えると、実用性から、電気抵抗値は10の8乗Ωから10の14乗Ωが帯電防止領域と言われているが、望ましくは、10の7乗Ωから10の10乗Ωに入る方が実用上の問題が発生しにくい。床に、シートを敷いてその上で作業をする場合、そのシートの上には使用する工具類、新しい部品、古い部品等が乗ることになるが、パーツに静電気が帯びている場合が大いにしてある。特に、古いパーツに帯電していた静電気で、新しいパーツが損傷する場合がある。さらに、見落としてはならないのは、床に敷いたシートの上で作業するために床の材質等においては、床からの静電気が損傷の原因になることもあるという点である。また、人体に帯電した静電気の影響を受けることもある。
【0029】
このような種々の静電気に対して効果を的確に達成するためには、以下で説明する実施例3が最も望ましい。そのためには、シートの両面に帯電防止機能を持たせることが望ましい。その際、この帯電防止シートの静電気遮断層は不職布により構成している。また、静電気対策としては、静電気の流し易さが問題とされるものであるが、その順位基準は、帯電防止性、制電性、導電性、通電性の順で静電気の流し易さの順位となる。
【0030】
例えば、床面からの静電気の移行を抑止するためには、床面に接する面には、帯電防止処理をしたシートをラミネートするのが望ましい。この場合に、そのラミネートシートの厚みは30〜60μ程度が望ましい。安価に製造しようとするのであれば、市販のPEシート、PPシート或いはPETシート等を用いることも可能である。
【0031】
いずれの実施例においても使用される不織布は、静電気遮断層を構成するものであるが、クッション性と折りたたみ性及び耐久性から目付けは40〜100g/m程度のものが適切であるが、その目的に応じて厚くすることも薄くすることも可能である。材質は市販されているもので問題はないが、どちらかと言えば、湿度が高いと静電気が発生しにくいことは周知のとおりで、或る程度吸湿性があるものが望ましい。例えば、パルプ不織布やポリエステル不織布は好ましい。
【0032】
不織布の上面全面には、毛羽立ちを防止し、導電塗料の均一性を出すために全面ベタ印刷を施しておくことが望ましい。また、デザイン性からは、更にその上にカラー印刷等を施すことができる。次いで、印刷面全面に導電性塗料をコートする。全面印刷の目的は、効果は、導電性ポリマーの効果を高める関係がある。不織布の上面に全面印刷の後に導電性ポリマーを塗布することにより、導電性ポリマーの使用量が激減する。いずれにしろ、不織布の全面印刷は、印刷分野では新規なアイディアである。
【0033】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。図1(A)は第一の実施例を示し、図1(B)は第2の実施例を示し、図1(C)は第3の実施例を示すものである。なお、各実施例の図示においては、本実施例の使用状況においては床等に広げて使用するものであるが、表面を向けて使用する側を上面として描き、床等に接する側を底面として描いている。従って、本発明において、「上面」との用語は図示した状態においての上側を意味し、「底面」との用語は図示した状態においての下側を意味する。
【実施例1】
【0034】
本発明の第1の具体的実施例は、図1(A)に示すように、不織布シート10の底面にポリエチレンシート20(以下、「PEシート」という)或いはポリプロピレンシート20(以下、PPシートという)を積層(ラミネート)し、さらに不織布シートの上面には全面印刷面30を施したシート状物である。
【0035】
ここにおいて、不織布シート10の厚みは40〜100μ、PEシート20の厚みは30〜60μ程度が望ましく、不織布シート10の表面全面の印刷膜は1〜10μ程度が望ましい。不織布の全面印刷は、印刷分野では新規なアイディアである。
【0036】
この第1の実施例の帯電防止シートの具体的製造方法の一つを図2に示す。以下、図2に沿って具体的に説明する。
不織布シート10は、不織布シートロール110から巻き戻されてプロセスに供給される。一方、PEシート又はPPシート20は、PEシートロール又はPPシートロール120から巻き戻されてプロセスに供給される。PEシート又はPPシート20の表面に対しては、接着剤塗布ロール130により接着剤70が塗布される。その後に、不織布シート10とPEシート又はPPシート20は積層ロール140に導き入れられて、加圧接着され積層される。その後に、積層シート60は印刷ロール150に導き入れられて、積層シート60の不織布シート10側の面が全面印刷(インク槽35)され、全面印刷面30が形成される。その後に、不織布シート10側が全面印刷された積層シート60は、裁断ロール160に導かれて、所定形状に裁断される。
【実施例2】
【0037】
本発明の第2の具体的実施例は、図1(B)に示すように、不織布シート10の底面にPEシート20或いはPPシート20を積層(ラミネート)し、不織布シートの上面には全面印刷面30を施し、さらに印刷面の上面に導電性塗料を塗布(導電性塗料塗布面40)したシート状物である。
【0038】
ここにおいて、不織布シート10の厚みは40〜100μ、PEシート20の厚みは30〜60μ程度が望ましく、不織布シート10の表面全面の印刷膜は1〜10μ、導電性塗料の塗布厚は0.1〜10μ程度が望ましい。不織布の全面印刷は、印刷分野では新規なアイディアである。そして、不織布の全面印刷の後に、導電性塗料を塗布して導電性塗料塗布面40を形成する場合には、導電性塗料の使用量が劇的に少なくて済むものである。
【0039】
この第2の実施例の帯電防止シートの具体的製造方法の一つを図3に示す。以下、図3に沿って具体的に説明する。第2の実施例において第1の実施例の対象部分と同様の部分は、同一の符号を用いて説明している。
第1の実施例と同様に、不織布シート10は、不織布シートロール110から巻き戻されてプロセスに供給される。一方、PEシート又はPPシート20は、PEシートロール又はPPシートロール120から巻き戻されてプロセスに供給される。PEシート又はPPシート20の表面に対しては、接着剤塗布ロール130により接着剤70が塗布される。その後に、不織布シート10とPEシート又はPPシート20は積層ロール140に導き入れられて、加圧接着され積層される。その後に、積層シート60は印刷ロール150に導き入れられて、積層シート60の不織布シート10側の面が全面印刷(インク槽35)され、全面印刷面30が形成される。その後に、不織布シート10側が全面印刷された積層シート60は、導電性塗料塗布ロール155に導き入れられて、全面印刷された面に対して導電性塗料(導電性塗料槽45)が塗布されて、導電性塗料塗布面40が形成される。その後、積層シート60は裁断ロール160に導かれて、所定形状に裁断される。
【0040】
この第2の実施例の帯電防止シートにおいては、表面だけに導電層としての導電性塗料塗布面40を設けている。これにより、この帯電防止シートに電子部品等を置いた際には、電子部品等に帯電していた静電気は急速に除電される。
【実施例3】
【0041】
本発明の第3の具体的実施例は、図1(C)に示すように、不織布シート10の下面にPEシート20あるいはPPシート20を積層(ラミネート)し、不織布シートの上面には全面印刷面30を施し、さらに印刷面の上面に導電性塗料を塗布し(導電性塗料塗布面40)、PEシート20或いはPPシート20の底面には帯電防止PEシート50を積層(ラミネート)したシート状物である。
【0042】
この第3の具体的実施例では、不織布シート10の下面にPEシート20あるいはPPシート20を積層(ラミネート)し、更にその下面に帯電防止PEシート50を積層(ラミネート)することに代えて、PEシート20あるいはPPシート20の下面に帯電防止PEシート50を積層(ラミネート)した積層PEシート80を不織布シート10の下面に積層(ラミネート)したシート状物であっても良い。
【0043】
ここにおいて、不織布シート10の厚みは40〜100μ、帯電防止シートは20〜60μ程度が望ましく、不織布シート10の表面全面の印刷膜は1〜10μ、導電性塗料の塗布厚は0.1〜10μ程度が望ましい。なお、PEシート20単層の厚みは、第2の具体的実施例同様に30〜60μで良い。
【0044】
この第3の実施例の帯電防止シートの具体的製造方法の一つを図4に示す。以下、図4に沿って具体的に説明する。第3の実施例において第1及び第2の実施例の対象部分と同様の部分は、同一の符号を用いて説明している。
第1及び第2の実施例と同様に、不織布シート10は、不織布シートロール110から巻き戻されてプロセスに供給される。一方、帯電防止積層PEシート80は帯電防止積層PEシートロール180から巻き戻されてプロセスに供給される。帯電防止積層PEシート80の表面に対しては、接着剤塗布ロール130により接着剤70が塗布される。その後に、不織布シート10と帯電防止積層PEシート80は積層ロール140に導き入れられて、加圧接着され積層される。その後に、積層シート60は印刷ロール150に導き入れられて、積層シート60の不織布シート10側の面が全面印刷(インク槽35)され、全面印刷面30が形成される。その後に、不織布シート10側が全面印刷された積層シート60は、導電性塗料塗布ロール155に導き入れられて、全面印刷された面に対して導電性塗料(導電性塗料槽45)が塗布されて、導電性塗料塗布面40が形成される。その後、積層シート60は裁断ロール160に導かれて、所定形状に裁断される。
【0045】
この第3の実施例の帯電防止シートの上記具体的製造方法(図4)では、PEシート20あるいはPPシート20の下面に帯電防止PEシート50を積層(ラミネート)した積層PEシート80を用いた例を示したが、PEシート20あるいはPPシート20の下面への帯電防止PEシート50の積層(ラミネート)を別工程にて実施他例を図5に示す。以下、図5に沿って具体的に説明する。第3の実施例において第1及び第2の実施例の対象部分と同様の部分は、同一の符号を用いて説明している。
【0046】
第1及び第2の実施例と同様に、不織布シート10は、不織布シートロール110から巻き戻されてプロセスに供給される。一方、PEシート又はPPシート20は、PEシートロール又はPPシートロール120から巻き戻されてプロセスに供給される。PEシート又はPPシート20の表面に対しては、接着剤塗布ロール130により接着剤70が塗布される。その後に、不織布シート10とPEシート又はPPシート20は積層ロール140に導き入れられて、加圧接着され積層される。その後に、積層シート60は印刷ロール150に導き入れられて、積層シート60の不織布シート10側の面が全面印刷(インク槽35)され、全面印刷面30が形成される。その後に、不織布シート10側が全面印刷された積層シート60は、導電性塗料塗布ロール155に導き入れられて、全面印刷された面に対して導電性塗料(導電性塗料槽45)が塗布されて、導電性塗料塗布面40が形成される。その後、積層シート60は積層ロール170に導き入れられて、PEシート20或いはPPシート20側に帯電防止シート50が積層される。その後、積層シート60は裁断ロール160に導かれて、所定形状に裁断される。
【0047】
このように、第3の実施例は、静電気遮断層として機能する不織布の上面(静電気を帯電した電子部品等を載置する面)には、前記の静電気の流し易さの順位において最も高い(静電気を流し易い)通電性のある導電性塗料塗布面40を形成し、反対側の下面(床に接する面)には、順位において低い帯電防止性のある帯電防止PEシート50を形成したものである。これにより、本発明の帯電防止シートに載置した電子部品等の静電気の除電が速やかに行われ、かつ床からの静電気の移行も抑止できるものである。
【0048】
本発明の実施例として用いる帯電防止剤は、信越ポリマー株式会社製の導電性ポリマー塗料、日産化学工業株式会社製或いは丸菱油化工業株式会社製の帯電防止剤を使用するのが望ましい。
【0049】
本発明の帯電防止シートでの効果を検証するために以下の実験を行った。実験の対象としては(1)不織布/PEシート(帯電防止剤あり)、(2)不織布/PEシート(帯電防止剤なし)を使用し、静電気を帯電させる材料として(3)ナイロン100%、(4)ポリエチレン100%、(5)気泡シートを用いた。
【0050】
まず、初期値1として測定した値は、上記(1)乃至(5)の静電気の帯電量を調べるために、レーヨン100%の摩擦布を使用して、人手により(1)から(5)の試験片に対して水平方向に20回擦り付けてから静電気を測定した。測定器はシンド静電気株式会社製の表面電位測定器スタチロンTYPE−TL音叉振動式を用いて測定した。測定距離は50mmとした。
【0051】
これにより、上記各試験片の静電気の初期値1は以下のとおりであった(単位はV)。
(1)不織布/PEシート(帯電防止剤あり) 不織布面:0,PE面:−10
(2)不織布/PEシート(帯電防止剤なし) 不織布面:0,PE面:−100
(3)ナイロン100% −5,000
(4)ポリエチレン100% −8,000
(5)気泡シート −7,000
【0052】
次に、上記(1)及び(2)の除電効果を検証するために、(3)から(5)の試験片に対して、人手によりレーヨン100%の摩擦布を使用して、水平方向に20回擦り付けて静電気を帯電させ、それ等静電気を帯電した各試験片を(1)不織布/PEシート(帯電防止剤あり)、(2)不織布/PEシート(帯電防止剤なし)の上に載せて静電気の変化を測定した。
【0053】
最初に、帯電させた試験片を載せた場合の除電効果を測定し、その後で各試験片を外して再度各試験片の静電気を測定した。その結果は以下の表1のとおりである。これによると、(1)不織布/PEシート(帯電防止剤あり)、(2)不織布/PEシート(帯電防止剤なし)共に、静電気を帯電した物体を載せた際の除電効果が極めて大きいことが実証され、それを外した場合でも帯電している静電気は半分程度にまで軽減されることが実証された。
【0054】
【表1】

【0055】
今回の実験においては以下のことが実証された。
(1)不織布/PEラミネート材料は、帯電が殆どないことが分った。
(2)不織布/PEラミネート材料の不織布面に帯電防止剤をベタ印刷の手法で塗った場合には、裏面のPE面にも効果があることが分った。
(3)不織布/PEラミネート材料に、PE・ナイロン等の帯電し蓄電しやすい材料を付着させると除電効果があり、不織布面に帯電防止剤をベタ印刷の手法で塗るとより効果の高いことが分った。
(4)このように、不織布に帯電防止剤のベタ印刷をし、帯電防止のPEラミネート材料を使用する第3の実施例は極めて高い帯電防止効果と除電効果が確実に達成できるものである。
【符号の説明】
【0056】
10 不織布
20 PEシート(PPシート)
30 印刷層
40 導電性塗料層
50 帯電防止PEシート
80 帯電防止積層PEシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シートの底面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートを積層され、さらに前記不織布シートの上面には全面印刷を施されたことを特徴とするシート状物。
【請求項2】
不織布シートの底面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートを積層され、前記不織布シートの上面には全面印刷を施され、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布されたことを特徴とする帯電防止シート状物。
【請求項3】
不織布シートの下面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートを積層され、前記不織布シートの上面には全面印刷を施され、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布され、前記ポリエチレンシート又はポリプロピレンシートの底面には帯電防止シートを積層されたことを特徴とする帯電防止シート状物。
【請求項4】
不織布シートの底面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートを積層し、さらに前記不織布シートの上面には全面印刷を施すことを特徴とするシート状物の製造方法。
【請求項5】
不織布シートの底面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布することを特徴とする帯電防止シート状物の製造方法。
【請求項6】
不織布シートの下面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートと帯電防止ポリエチレンシートを積層した帯電防止積層ポリエチレンシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布することにより、前記帯電防止積層ポリエチレンシートの底面からも帯電防止が図れ、両面からの帯電防止効果があることを特徴とする帯電防止シート状物の製造方法。
【請求項7】
不織布シートの下面にポリエチレンシート又はポリプロピレンシートを積層し、前記不織布シートの上面には全面印刷を施し、さらに該印刷面の上面に導電性塗料を塗布し、前記ポリエチレンシート又はポリプロピレンシートの底面からも帯電防止が図れるように、帯電防止効果がある帯電防止ポリエチレンシートを積層することを特徴とする帯電防止シート状物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255549(P2011−255549A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130453(P2010−130453)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000233491)株式会社日立システムズ (394)
【Fターム(参考)】