説明

帯電防止層を備えた容器

乾燥粉末、顆粒、ペレット、気体、及び他の引火性物質のための容器、及びその製造方法。前記容器は、らせん状に巻回された開口断面を有するプロファイルによって形成される壁(11〜13)を有し、前記プロファイルの隣接する巻き管どうしが互いに接着している。本発明によると、前記プロファイルは、このプロファイルの内側面を形成する第1熱可塑性層(11)と、この第1熱可塑性の周囲に設けられ、プロファイルの外側面を形成する第2熱可塑性層(12)とを含み、前記第2熱可塑性層が帯電防止性を有する。本件の容器は、優れた機械的強度特性を有しており、容器内の電荷の蓄積を効果的に回避することができる。容器は、材料/粉末/ペレットなどの乾燥機として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された、乾燥粉末、顆粒、ペレット、気体、及び他の引火性物質のための容器に関する。
この種の容器の代表的なものは、両端に端部閉鎖部を備えた筒状の壁を有しており、この壁と端部閉鎖部が閉鎖された空間を形成する。
本発明はまた、請求項10の前提部に記載された容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクやサイロとしての大型の容器は、一般的に、乾燥粉末、顆粒、ペレットなどの大量材料の永久または中間保存のために用いられる。これらはまた、液体や気体を保存するのにも用いることができる。一般的に、タンクやサイロなどの容量は、100〜5000ヘクトリットルまたはそれ以上である。
【0003】
工業工程によっては、加工設備の保存ユニットにおいて静電荷が生じる危険性がある。このように静電荷によって、粒子が容器の壁に接着する可能性があり、電荷が蓄積すると、タンクに保存されている可燃性材料が引火する危険性がある。この現象は、通常、粉塵爆発と呼ばれる。
【0004】
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、及びポリ塩化ビニル(PVC)や類似の熱可塑性物質は、多くの工業用途に用いられ、上記の種類の保存サイロやタンクの製造に採用されている安価な材料である。しかしながら、非導電性材料の従来の熱可塑性物質であることは、上述した種類の静電荷発生の危険性がある場合の用途には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の少なくともいくつかの問題を排除し、容易に引火する材料を保存するための新規な容器構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パイプをらせん状に巻きつけることによって、電気的に伝導する表面層を備えた、導電性(散逸を含む)熱可塑性の壁を有する容器を提供して、その容器に筒状壁部分を形成するという概念に基づく。用いられるパイプは、非導電性で優れた機械的特性を有する少なくとも第1の内側層と、導電性の少なくとも第2の外側層とからなり、これらの2つのポリマー材料は共押出し可能である。
さらに、本発明による容器は、主に請求項1の特徴部に記載された特徴を有する。
【0007】
本発明による方法は、請求項10の特徴部に記載された特徴を有する。
本発明によって多くの利点が得られる。すなわち、少なくとも2つの材料を用いることによって、例えば、通常のPE−HDなどの従来の熱可塑性材料製のコア/内側層の方が、充填された外層材料よりも優れた機械的特性を備えることになる。これらの機械的特性とは、内圧抵抗、長期にわたる高い係数、優れたFNCT、及び優れた引張降伏特性である。
【0008】
一方、内側層によって付与される優れた機械的強度に鑑みて、外側層は、例えば、圧力段階分類などの厳しい要件を満たす必要がなくなる。材料が熱可塑性であるため、従来通り溶接が可能であり、構造壁パイプとしてコイル状に巻かれた多層パイプを備えた容器を構成することが可能になる。この概念は、競合解決策よりも、より費用効率の高い解決策として、末端顧客に利益を与える。
容器内の電荷の蓄積は、効率よく回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ポリエチレン製の構造壁パイプを示している。
【図2】図2は、本発明によるサイロの概略構造を断面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に述べる。
図1は、ポリエチレン製の構造壁パイプを示しており、内側に従来の熱可塑性材料の内側層、外側に帯電防止/導電性ポリマーを備えている。図2は、本発明によるサイロの概略構造を断面で示しており、筒状壁内で、底部に円錐端部を備えている。
【0011】
「プロファイル」という文言は、ここでは、「管」(またはパイプ)(つまり、開口断面を有する長尺の物体)と同じ意味で用いられる。「開口」とは、幾何学的形状を意味する。一般的に、特に好ましい材料の断面、または少なくとも断面の一部は、矩形またはほぼ矩形であるが、球形であっても楕円形であってもよい。開口断面は、上述したような1つまたはいくつかの幾何学的形状によって形成することができる。
【0012】
「構造壁」とは、らせん状に巻回された管によって構成されているため、中実壁よりも軽量の非中実壁であるが、同様の強度がある。
【0013】
容器の壁に関して用いられる「軽量」とは、構造壁が開口断面を備えた管またはプロファイルから形成されていることを示す。
【0014】
本発明によると、筒状の軽量壁構造は、上述したような共押出し材料からなる管で形成されており、その管をらせん状に巻回している。らせん状に巻回された管において、第2の層の外面の一部は、薄い容器の外面を形成しており、他の部分はその内面を形成している。
【0015】
多層プロファイルがコイル状に巻回されると、それぞれの巻き管が互いに固定されてタンク壁を形成する。
【0016】
図1は、上述したように形成された壁の断面図である。このように、大型で軽量の熱可塑性材料の管が、ほぼ矩形断面を有する熱可塑性材料の中空プロファイル1〜3を、筒状の回転ドラム回りにらせん状に巻回し、中空プロファイル1〜3の隣接する巻き管どうしを溶接4によって接合することにより、外壁2と内壁1と、これらの壁を接続するらせん状に延びる隔壁4とからなるとともに、これらの壁の間に同様にらせん状に延びるチャネル3がある軽量の管が得られる。
【0017】
一般的に、熱可塑性プロファイルは、筒状の回転ドラムまたは対応する支持体にらせん状に巻回され、管の隣接する巻き管どうしが、例えば溶接によって互いに接合される。
【0018】
中空部分またはプロファイルをらせん状に巻回することによって形成された樹脂製の管及びパイプと、そのような管及びパイプを製造する方法は、それらを接合する方法とともに、米国特許第5127442号、第5411619号、第5431762号、第5591292号、第6322653号、第6939424号に記載されている。軽量構造の容器端部壁を製造する方法は、第6666945号、第7347910号に開示されている。これらの特許の開示内容は、本願に引用して援用する。
【0019】
熱可塑性プロファイル(図1の参照番号1〜3)は、複数の層、一般的には2〜5つの層を有し、上述したように、それらのうち1つはプロファイルの内側層を形成し、1つは外側層を形成する。プロファイルの内側層は、ポリエチレン、特にHD−PEまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート、または他の熱可塑性材料から製造することができる。
【0020】
コア層を外囲する外側層は帯電を防止する。これは、永久導電性にされた熱可塑性材料からなる。熱可塑性材料は、第1の層と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。従って、外層は、ポリエチレン(例えば、HD−PE)またはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート、または他の熱可塑性材料から製造することができる。当然ながら、両方の層に同じまたは類似の熱可塑性材料を選択することによって、層どうしの優れた互換性を得ることができる。
【0021】
導電特性は、ポリマー材料に、カーボンブラックまたは金属粒子からなる充填剤などの導電粒子、導電繊維、または導電カーボンナノチューブなどのナノコンポジットを混合することによって得ることができる。層はまた、上記の導電粒子または繊維との組合せで、選択的にあるいは好適に、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロールなどの本質的に導電性をもつポリマー(ICPs)、またはアルカリ及び/またはアルカリ土類金属イオンまたはそれらの混合物を含有するイオノマーを含有していてもよい。好ましくは、材料は導電範囲において表面抵抗を有している。特に、表面抵抗は、1〜10ohm/sq(ASTM D−257)、特に、1〜105ohm/sqである。
【0022】
第1と第2の層の間の厚さ比は、一般的に、1:50〜50:1の範囲、例えば約1:20〜20:1、特に約1:15〜15:1の範囲である。好適な実施例では、内側層は、少なくとも外側層と同じ厚さであるか、最大で、外側層の約10倍の厚さである。
【0023】
選択的に、1つまたは複数の接着層が、層と層の間にあってもよい。コア/内側層と帯電防止/導電層との間には、液体または気体に対する、疎水性または親水性材料に対する、バリアを改変する少なくとも1つのバリア層を追加することも可能である。一実施例によると、バリア層は、エチレンビニルアルコールポリマー(EVOH)からなるか、またはこれを含むものである。この種のバリア層は、高揮発性の炭化水素の拡散を防ぐために用いられる。
【0024】
上述した種類のポリエチレンまたは他の熱可塑性材料は、容器に優れた機械的特性を付与する。
【0025】
表面材料(つまり管の外側層)は機械的特性を備えていることが好ましく、特に、ESCR値が一定のレベルである必要がある。このため、特に好適な実施例では、外側層は、内側層と同じまたは類似の種類の熱可塑性材料から作られており、外層は、永久帯電防止/導電性添加物を加えることによって導電性になる。
材料の壁厚さは約1〜20mm、特に約1〜10mmである。
【0026】
プロファイルは、溶接材料4として外層材料を用いて溶接される。よって、接合部で漏出がなく、タンクは、その面積の100%が周囲と同じ材料によって覆われることになる。構造壁及び硬質の端部キャップの構成をもつため、タンクは外圧に対して優れた抵抗を有し、これは埋設された装置では重要である。
【0027】
パイプの隣接した巻き管どうしが互いに適切に接着されると、少なくとも本質的には顆粒や粉末に対して、好ましくは、粉末、気体、液体に対して不透過性をもつ壁だけでなく、容器の内側層および外側層の両方に、均一導電表面を形成する。さらに、隣接する巻き管における材料によって、容器壁の内側面と外側面の間に導電ブリッジが形成される。
【0028】
図2は、本発明による容器の一実施例を示す。上述したように、乾燥材料、気体または液体材料を保存する本件のような容器10は、多層管によって形成された筒状壁12からなる。プロファイルは、従来の押出し加工、つまり、多層構造プロファイルの共押出しによって形成される。その結果、プロファイルは、第1熱可塑性材料の内側筒層と、第2の導電性熱可塑性材料の外側筒層とを有する。2つの熱可塑性材料で、中空内部11を形成する。
【0029】
容器10は、筒状壁の一端、好ましくは両端に端部閉鎖部14、15を有する。完全に機能するシステムを得るためには、これらの端部キャップは、永久的な帯電防止/導電性をもつ少なくとも1つの一体層を有することが必要となる。
【0030】
端部キャップは、適切な導電構成部材を材料に追加することにより、上述したように帯電防止性、または導電性にされた中実の熱可塑性材料から形成されていてもよい。
【0031】
1つの興味深い実施例によると、容器の少なくとも端部キャップの少なくとも1つは、多層構造の熱可塑性材料によって形成されており、1つの帯電防止性または導電性の層を有する。この種の一実施例では、キャップは、上述した種類の中空の管どうしを溶接することによって製造される構造壁によって形成される。
【0032】
端部キャップは、以下に説明するように、平坦な凹状部14、あるいは凸状または円錐状部15であってもよい。これらは、構造壁が構成される場合と同様に、溶接によって壁に固定される。硬質な端部キャップを備えることが好ましい。
【0033】
特に、容器の筒状部分が少なくとも垂直である場合は、下部の端部閉鎖部は、円錐部15として形成されて、容器に保存された材料の排出口17からの導出を規制するバルブ16を備えている。
【0034】
設置の際には、このシステムをアースしなければならない。このため、筒状壁の少なくとも一端の外層に電気配線を埋め込んでいることが好ましい。
【0035】
このタンク/サイロは、地上に、横方向または縦方向で独立型として設置してもよいし、任意の施設において、地表の下に設置してもよい。タンクが地面に埋設される場合は、追加的な利点として、優れた対重量環状剛性比を有するとともに、非常に柔軟な材料特性のため土砂移動に対処できる。これらの材料の他の利点は、倒伏することがなく、化学的特性が優れているということである。
【0036】
このタンク/サイロはまた、材料/粉末/ペレットのための乾燥機として機能することもできる。構造壁を使用すると、中空壁に比較して、内部真空が扱いやすくなる。この真空は、熱とともに、タンク/サイロに応用して、機能的で大規模な真空乾燥機を形成することができる。
【0037】
タンク/サイロの容量は、通常、2〜100立方メートルの範囲である。構造壁パイプは、315mm〜3000mmの外径に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
らせん状に巻回された開口断面を有するプロファイルによって形成される壁(1〜3,11〜13)を有し、前記プロファイルの隣接する巻き管どうしが互いに接着してある、
乾燥粉末、顆粒、ペレット、気体、及び他の引火性物質のための容器であって、
前記プロファイルが、このプロファイルの内側面を形成する第1熱可塑性層(1,11)と、この第1熱可塑性の周囲に設けられ、パイプの外側面を形成する第2熱可塑性層(2;12)とからなり、前記第2熱可塑性層が帯電防止性を有することを特徴とする容器。
【請求項2】
前記第1熱可塑性層(1,11)が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、およびポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の群から選択されるポリマー材料である請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第2熱可塑性層(2,12)が、導電範囲において抵抗を有する導電性をもつ請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記第2熱可塑性層(2,12)が、導電性または散逸性の粒子、繊維、管またはポリマー、またはそれらの混合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
前記第2熱可塑性層(2,12)が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、およびポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の群から選択されるポリマー材料である請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記第2熱可塑性層(2,12)が、導電性粒子、導電性繊維、導電性ナノコンポジットまたは導電性ポリマー、またはそれらの混合物を混合することによって、永久的に導電性をもたせたポリマー材料からなる請求項4に記載の容器。
【請求項7】
前記内側層と前記外側層との間に1〜3の中間層が設けられ、前記層が、接着層およびバリア層から選択される請求項1〜6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
前記プロファイルの隣接する巻き管どうしが互いに溶接(4)されている請求項1〜7のいずれかに記載の容器。
【請求項9】
前記プロファイルの巻き管が、前記壁の前記内側および外側の両方に、本質的に均一な導電表面を形成するように互いに溶接(4)され、前記容器壁の内側面と外側面の間に、隣接する巻き管の材料によって導電性ブリッジが形成されている請求項8に記載の容器。
【請求項10】
開口断面を有する軽量のプロファイル(1〜3,11〜13)を用意する工程と、
前記プロファイルをコイル状に巻いて筒状壁を形成する工程と、
隣接するプロファイルの巻き管どうしを溶接する工程とを含み、
乾燥粉末、顆粒、ペレット、気体、及び他の引火性物質を保存するための容器を製造する方法であって、
前記プロファイルを用意する工程が、前記プロファイルの内側面を形成する第1熱可塑性層(1,11)と、前記プロファイルの外側層を形成するとともに帯電防止性を有する第2熱可塑性層(2,12)とを共押出しする工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第2熱可塑性層(2,12)が、導電性粒子、導電性繊維、導電性ナノコンポジットまたは導電性ポリマー、またはそれらの混合物を混合することによって、永久的に導電性をもたせたポリマー材料からなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロファイルの巻き管が、前記壁の前記内側および外側の両方に、本質的に均一な導電表面を形成するように互いに溶接され、前記容器壁の内側面と外側面の間に、隣接する巻き管の材料によって導電性ブリッジ(4)が形成されている請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の容器の材料/粉末/ペレットの乾燥機としての使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526566(P2011−526566A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515510(P2011−515510)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050594
【国際公開番号】WO2010/000941
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(501302256)
【住所又は居所原語表記】KAPELLBACKSVAGEN 240 FI−65370 VASA, FINLAND
【Fターム(参考)】