説明

帯電防止性ハードコート組成物及び光学物品

【課題】耐光性、耐湿熱性、耐熱性及び帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート組成物及びそれを用いた光学物品の提供。
【解決手段】本発明に係る帯電防止性ハードコート組成物は、成分A、成分B及び成分Cを含む。成分Aは、リンがドープされた酸化スズ微粒子である。成分Bは、分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物である。成分Cは、光重合開始剤である。このハードコート組成物では、成分Aの含有率が成分A及び成分Bの合計量に対して、20質量%以上55質量%未満である。上記酸化スズ微粒子の平均粒子径Daが1nm以上80nm以下である。上記酸化スズ微粒子の少なくとも一部は、シランカップリング剤により表面処理されている。好ましくは、上記成分Aにおけるリンの含有率は、成分Aの全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性ハードコート組成物及び光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製のフィルムやシートは、加工が容易であり且つ軽量であることから、幅広い用途で使用されている。しかし、プラスチック性のフィルムやシートには、表面が傷つきやすいという特性がある。また、プラスチック製のフィルムやシートは、一般に1×1014Ω/□以上の高い表面抵抗率を有するため、帯電しやすいという特性がある。この帯電容易性は、埃の付着、電子部材の誤作動等を引き起こしうるため、問題である。
【0003】
ところで、活性エネルギー線硬化型樹脂は、硬化時間が短く生産性が高い利点がある。更に活性エネルギー線硬化型樹脂は、塗膜の架橋密度を高くすることができ硬度や耐擦傷性を高くすることができる利点がある。このため活性エネルギー線硬化型樹脂は、ハードコート層として用いられている。
【0004】
活性エネルギー線硬化型樹脂への帯電を抑制する方法として、イオン伝導性を有する界面活性剤型帯電防止剤を用いる方法や、導電性金属酸化物微粉末を用いる方法が知られている。イオン伝導性界面活性剤は、透明性を損なうことなく帯電防止性を付与しうる特徴を有する。しかし、活性エネルギー線硬化型樹脂の架橋密度が高い場合、イオン伝導性界面活性剤の帯電防止性が発現しにくいという問題がある。また、導電性金属酸化物微粉末として、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)や、スズがドープされた酸化インジウム(ITO)が知られている。ATOやITOは、高い帯電防止性を発現しうる。しかしATOやITOは、1μm以上の膜厚を有するハードコート層に使用される場合、塗膜が青味を帯びるように着色したり、透明性が低くなったりといった問題が生じやすい。透明性が低くなることは、ヘイズが高くなること、あるいは、全光線透過率が低くなることを意味する。
【0005】
特開2006−306008号公報では、導電性を有する金属酸化物微粒子として、リンがドープされた酸化スズ微粒子が提案されている。この特開2006−306008号公報には、リンがドープされた酸化スズ微粒子を、分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物及び光重合開始剤と組み合わせることにより、帯電防止性、硬度、耐擦傷性及び透明性に優れた硬化膜層が得られる旨の記載がある。
【特許文献1】特開2006−306008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、耐光性、耐湿熱性、耐熱性及び帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート組成物について検討を行った。この検討の結果、酸化スズの光触媒性及び親水性が、ハードコート層の特性に影響しうることを見いだした。酸化スズの光触媒性に起因して、ハードコート膜の耐光性が低下しうる。酸化スズの親水性に起因して、耐湿熱性が低下しうる。特に屋外では、太陽光により、酸化スズの光触媒性や親水性が顕在化しやすい。このため、酸化スズの添加量が多いハードコート層を屋外で使用することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、耐光性、耐湿熱性、耐熱性及び帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート組成物及びそれを用いた光学物品の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る帯電防止性ハードコート組成物は、次の成分A、成分B及び成分Cを含む。
成分A:リンがドープされた酸化スズ微粒子
成分B:分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物
成分C:光重合開始剤
このハードコート組成物では、成分Aの含有率が成分A及び成分Bの合計量に対して、20質量%以上55質量%未満である。上記酸化スズ微粒子の平均粒子径Daが1nm以上80nm以下である。上記酸化スズ微粒子の少なくとも一部は、シランカップリング剤により表面処理されている。
【0009】
好ましくは、上記成分Aにおけるリンの含有率は、成分Aの全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下である。
【0010】
好ましくは、上記成分Bは、多官能(メタ)アクリレートとされる。
【0011】
本発明に係る光学物品は、上記の帯電防止性ハードコート組成物を用いて形成された帯電防止性ハードコート層を有している。上記光学物品において、上記帯電防止性ハードコート層の上側に反射防止層が設けられているのが好ましい。
【0012】
好ましい光学物品は、光学フィルム又は光学シートである。
【発明の効果】
【0013】
リンがドープされた酸化スズ微粒子及び上記成分Bにより、帯電防止性が高い硬化被膜が得られうる。また、リンがドープされた酸化スズ微粒子の配合量が抑制されているため、耐光性、耐湿熱性及び耐熱性が向上しうる。シランカップリング剤で処理された酸化スズ微粒子は、耐光性が向上するとともに、高い分散性を発現しうる。本発明により、耐光性、耐湿熱性、耐熱性及び帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート組成物及び光学物品が得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
本発明に係る帯電防止性ハードコート組成物(以下、単にハードコート組成物ともいう)は、次の成分A、成分B及び成分Cを含む。
成分A:リンがドープされた酸化スズ微粒子
成分B:分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物
成分C:光重合開始剤
【0016】
[成分A]リンがドープされた酸化スズ微粒子
この成分Aは、本発明のハードコート組成物を用いて形成されたハードコート層(以下、単にハードコート層ともいう)の帯電防止性と透明性とを高めるのに寄与する。
【0017】
成分Aは、市販品であってもよいし、製造されてもよい。成分Aの製造方法の一例として、リン酸の存在下において水酸化スズを沈殿させる工程、得られた水酸化スズの沈殿を窒素雰囲気下において乾燥する工程、前記乾燥された水酸化スズを窒素雰囲気下400〜750℃で焼成する工程及びこの上記焼成により得られた焼成物を粉砕する工程を含む製造方法が挙げられる。
【0018】
ハードコート層の導電性を高め、帯電防止性を向上させる観点から、成分Aにおけるリンの含有率(リンドープ量)は、成分Aの全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。ハードコート層の硬度、耐擦傷性及び耐湿熱性の観点から、成分Aにおけるリンの含有率は、成分Aの全質量に対して、5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0019】
成分Aの平均粒子径Daは、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましい。1nm未満の平均粒子径Daを有する成分Aは、製造が困難である。成分Aの平均粒子径Daは、80nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、35nm以下が更に好ましい。成分Aの平均粒子径Daが大きすぎる場合、成分Aが組成物中において沈降したり、ハードコート層の性質(透明性、平滑性、耐熱性及び耐湿熱性)が低下したりすることがある。なお本発明では、酸化スズ微粒子の少なくとも一部がシランカップリング剤で処理されている。このシランカップリング剤処理により、成分Aの平均粒子径Daが小さい場合であっても、凝集が生じにくい。即ち、シランカップリング剤処理により、成分Aの平均粒子径Daが小さい場合であっても、成分Aの分散性が向上しやすい。
【0020】
本願における平均粒子径Daの測定方法は、次の通りである。1gの成分Aを99gのイソプロピルアルコールで希釈した液を用いて成分Aの粒子を透過型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像から無作為に選択された100個の粒子の最大径Dを読み取り、この100個の平均値を求める。この平均値が、平均粒子径Daとされる。なお、成分Aの最大径Dとは、粒子の表面(輪郭線)に両端を有する線分のうち最も長い線分の長さを意味し、成分Aの撮影像の輪郭形状が真円である場合、その真円の直径である。
【0021】
ハードコート層の導電性の観点から、成分Aの含有率は、成分A及び成分Bの合計量に対して、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。耐光性、耐熱性及び耐湿熱性の観点から、成分Aの含有率は、成分A及び成分Bの合計量に対して、55質量%未満が好ましく、50質量%以下がより好ましい。成分Aの含有率が少なすぎる場合、ハードコート層による帯電防止性能が不十分となる。成分Aの含有率が多すぎる場合、酸化スズの光触媒性に起因して耐光性が低下すると考えられる。また、成分Aの含有率が多すぎる場合、酸化スズの親水性に起因して耐湿熱性が低下すると考えられる。耐光性、耐熱性及び耐湿熱性の向上により、屋外での使用に適したハードコート層が実現されうる。
【0022】
上記酸化スズ微粒子(成分A)の少なくとも一部は、シランカップリング剤により表面処理されている。通常、表面処理がなされていない酸化スズ微粒子は、粒子径が小さくなるほど凝集しやすくなり、ハードコート層の透明性を低下させる。しかし、シランカップリング剤により表面処理することで、平均粒子径Daが80nm以下と小さくされた場合でも、十分な分散性が維持されうる。また、シランカップリング剤により表面処理された酸化スズ微粒子が用いられることにより、ハードコート層の耐光性、耐熱性及び耐湿熱性が向上することも判明した。これは、光触媒性及び親水性を有する酸化スズ微粒子と成分Bとが直接接していないことによる効果、つまり、シランカップリング剤成分を介していることによる効果であると考えられる。
【0023】
酸化スズ微粒子の平均粒子径Daが80nm以下と小さくされた場合、酸化スズ微粒子の体積V1に対する酸化スズ微粒子の表面積S1の比率(S1/V1)が大きくなるため、酸化スズ微粒子の単位体積当たりの受光量が増加し、光触媒性が発現しやすい。シランカップリング剤処理されることにより、酸化スズ微粒子の表面を被覆するシランカップリング剤及び有機化合物が、酸化スズ微粒子の内部に到達する光(特に波長が343nm以下の光)を効果的に抑制しうる。この遮光効果により、酸化スズ微粒子の平均粒子径Daが80nm以下と小さくされた場合であっても、光触媒性の発現が抑制されうる。
【0024】
酸化スズ微粒子の分散性及び耐光性を高める観点から、シランカップリング剤の質量は、成分Aの質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。ハードコート層の強度及び導電性を高める観点から、シランカップリング剤の質量は、成分Aの質量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0025】
シランカップリング剤は限定されない。シランカップリング剤の具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0026】
特に好ましいシランカップリング剤は、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であり、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランおよびメチルビニルジエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0027】
[成分B]分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物
成分Bは、成分Aと併用されることにより、ハードコート層の硬度及び耐擦傷性を向上させうる。
【0028】
成分Bの具体例として、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリイソプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及び1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基とを有する単量体を用いたビニルエーテル基重合体が挙げられる。これらの成分Bは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
なお、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基とを有する単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)プロピル及び(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシイソプロポキシ)プロピルが挙げられる。
【0030】
成分Bに用いられうるウレタン(メタ)アクリレートとして、例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを反応させて得られる化合物を挙げることができる。このヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びトリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。これらのヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記ポリイソシアネートは、脂肪族系、芳香族系及び脂環式系のいずれのポリイソシアネートでもよく、例えば、メチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのポリイソシアネートのうち無黄変ウレタンとなるものが好適である。
【0032】
上記のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの組み合わせは特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの組合せ、及び、2−ヒドロキシエチルアクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの組合せが好適である。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法としては、例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート中のヒドロキシ基とポリイソシアネート中のイソシアネート基との割合(ヒドロキシ基:イソシアネート基)がモル比で1:0.8〜1:1となるように、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを反応容器に入れ、ジラウリル酸ジnーブチルスズなどの有機スズ化合物を触媒量加え、ハイドロキノシなどの重合禁止剤をさらに加え、反応温度30〜120℃、好ましくは50〜90℃で加熱して攪拌する方法などを挙げることができる。反応温度は、段階的に昇温することが好ましい。反応生成物中に、ウレタン(メタ)アクリレートがオリゴマー化したものが含まれていてもよい。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレートとして、各種の市販品が用いられてもよい。ウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、紫光シリーズ(日本合成化学工業(株)製)、ニューフロンティアR−1000シリ−ズ(第−工業製薬(株)製)、UA−306H(共栄社化学(株)製)、UF−8001(共栄社化学(株)製)、NKオリゴUシリーズ(新中村化学工業(株)製)、NKオリゴUAシリーズ(新中村化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0035】
成分Bの配合量は、成分A及び成分Bの合計量に対して、通常は45質量%より多くされ、好ましくは50質量%以上とされ、また、通常は80質量%以下、好ましくは75質量%以下である。成分Bの配合量が45質量%以下であると、硬化被膜の耐光性、耐熱性及び耐湿熱性が低下する。逆に、成分Bの配合量が80質量%を超えると、酸化被膜の帯電防止性が低下する。なお本願において、帯電防止性ハードコート組成物が硬化してなる被膜が、硬化被膜とも称される。
【0036】
[成分C]光重合開始剤
成分Cである光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生する。この成分Cにより、成分Bの重合反応が開始される。
【0037】
このような成分Cとして、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパンー1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒ
ドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキ
シシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチルー2−モルホリノ(4−チオメチルフェニ
ル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフ
ェニル)ブタノン、2−ヒドロキシー2−メチルー1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オ
ン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリル)フェ
ニル]−1−ブタノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香
酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’,−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルバーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(l−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、4−(ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;2,4,6−トリメチルべンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムなどのチタノセン類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などのオキシムエステル類;オキシフェニル酢酸,2−[オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニル酢酸,2−[2−オキソ−2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどのオキシフェニル酢酸エステル類;などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
これらの光重合開始剤のうち、アセトフェノン類及びベンゾフェノン類が好適であり、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、べンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンが特に好適である。
【0039】
成分Cの配合量は、成分A、成分B及び成分Cの合計量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。成分Cの配合量が、0,05質量%未満であると、充分な硬化が得られず、硬化被膜の硬度及び耐擦傷性が低下することがある。逆に、成分Cの配合量が20質量%を超えると、硬化被膜の特性がさらに向上することはなく、むしろ悪影響を及ぼす場合があるのに加え、経済性を損なうことがある。
【0040】
[その他の成分]
本発明の組成物には、成分A、成分B及び成分Cのいずれにも該当しない成分(その他の成分)が含まれていてもよい。このその他の成分として、下記の成分Dが例示される。
【0041】
本発明の組成物は、特に有機溶剤を含有する必要はない。しかし、塗工性などを考慮すると、本発明の組成物は、成分A、成分B及び成分Cを有機溶剤(以下において、「成分D」ともいう)に溶解又は分散させた形態であることが好ましい。
【0042】
成分Dとしては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなどのエステル類;イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性溶剤類:クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;などが挙げられる。これらの有機溶剤(成分D)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
成分Dの使用量は、成分A及び成分Bの合計量100質量部に対して、下限としては、0質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましく、上限としては、1000質量部以下が好ましく、800質量部以下がより好ましく、500質量部以下が更に好ましい。
【0044】
本発明の組成物には、さらに、目的に応じて、任意の適切な単官能重合性化合物が配合されうる。この単官能重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペ
ンタジエン−(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能重合性化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
本発明の組成物には、任意の適切な有機微粒子又は無機微粒子が配合されてもよい。このような有機微粒子又は無機微粒子は、得られる帯電防止性ハードコート層に目的に応じた機能を付与するために用いられる。この機能は、例えば、防眩性、光拡散性などである。帯電防止性ハードコート層に防眩性又は光拡散性を付与するに有用な微拉子の具体例としては、シリカなどからなる無機粒子;シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル材脂、ポリスチレン樹脂及びこれらの共重合樹脂から選ばれる1種又は2種以上からなる有機粒子;が挙げられる。これらの微粒子は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
なお、これらの微粒子の粒子径は、目的に応じた機能を付与するために用いられる従来公知の微粒子の粒径と同様とされればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下である。これらの微粒子の粒子径は コールターカウンター法により測定された体積平均粒子径である。また、これらの微粒子の形状は特に限定されず、例えば、真球状、楕円球状、針状、板状、鱗片状、破砕粒状などであり、好ましくは真球状又は楕円球状である。
【0047】
本発明の組成物には、必要に応じて、光増感剤、光重合促進剤、光重合禁止剤、無機充填剤、非反応性樹脂(例えば、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなど)、非導電性微粒子、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤などの添加剤が配合されうる。これらの添加剤の存在は、本発明の効果に影響を及ぼすものではない。これらの添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらの添加剤の配合量は、添加物の種類や使用目的などに応じて適宜調節されればよく、特に限定されるものではない。
【0048】
[帯電防止性ハードコート組成物の調製、使用及び用途]
本発明の組成物は、上記成分A、上記成分B及び成分Cに加え、必要に応じて、有機溶剤や添加剤等を加え、室温又は加熱条件下で攪拌(混合)することにより、容易に調製されうる。
【0049】
本発明の組成物は、基材に塗布され、乾燥された後、活性エネルギ−線が照射されて硬化される。この硬化により、基材上に帯電防止性ハードコート層としての硬化被膜が形成される。
【0050】
基材は特に限定されず、プラスチック製が好ましい。基材の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ラクトン環含有ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ABS、酢酸セルロースなどが挙げられる。ラクトン環含有ポリマーは、耐光性、耐湿熱性、耐熱性及び光学性能に優れる点で好ましい。基材の厚さは、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0051】
組成物の塗布方法として、従来公知の塗布方法が採用されうる。塗布方法として、例えば、ロールコート、リバースロールコート、マイクログラビアコート、ダイレクトグラビアコート、グラビアオフセットコート、キスコート、ダイコート、フローコート、カーテンフローコート、ブレードコート、エアーナイフコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷、浸漬法などが挙げられる。
【0052】
組成物の乾燥方法として、従来公知の乾燥方法が採用されうる。この乾燥方法として、例えば、自然乾燥、熱風乾燥、赤外線ヒーターや遠赤外線ヒーターによる乾燥などが挙げられる。乾燥条件は、組成物の粘度や塗膜の面積などに応じて適宜調節されればよく、特に限定されない。
【0053】
組成物(塗膜)を硬化させる活性エネルギー線として、例えば、電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、ガンマー線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線のうち、紫外線及び電子線が特に好適である。
【0054】
紫外線により硬化させる場合、波長が150〜450nmの範囲内の光を含む光源が用いられるのが好ましい。このような光源として、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。
【0055】
紫外線の照射照度は、特に限定されるものではないが、例えば、下限としては、好ましくは10mW/cm以上、より好ましくは20mW/cm以上であり、上限としては、4000mW/cm以下、より好ましくは2000mW/cm以下である。また、紫外線の積算光量は、特に限定されるものではないが、例えば、下限としては、好ましくは、10mJ/cm以上、50mJ/cm以上であり、上限としては、好ましくは10000mJ/cm以下、より好ましくは2000mJ/cm以下である。
【0056】
電子線により硬化させる場合、電子線の加速電圧は特に限定されず、例えば、下限としては、好ましくは10kV以上、より好ましくは20kV以上、更に好ましくは30kV以上であり、上限としては、500kV以下、より好ましくは300kV以下、更に好ましくは200kV以下である。また、電子線の照射量は特に限定されず、例えば、下限としては、好ましくは2kGy以上、より好ましくは3kGy以上、更に好ましくは5kGy以上であり、上限としては、500kGy以下、より好ましくは300kGy以下、更に好ましくは200kGy以下である。
【0057】
このようにして得られた硬化被膜の表面抵抗率は、好ましくは1×1014Ω/□未満、より好ましくは1×10Ω/□以上1×1011Ω/□以下とされうる。この範囲の表面抵抗率により高い帯電防止性が達成されうる。
【0058】
本発明の組成物は、帯電防止性、透明性、硬度及び耐擦傷性に優れる。更に、本発明の組成物は、高い耐熱性、耐湿熱性及び耐光性を有する帯電防止性ハードコート層を形成しうるので、例えば、光学フィルムや光学シートなどの光学物品に好適に使用されうる。
【0059】
[光学物品]
本発明の光学物品は、本発明の組成物を用いて形成された帯電防止性ハードコート層を有する。この帯電防止性ハードコート層の厚みは、下限としては1μm以上が好ましく、上限としては、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。この厚みが1μm未満である場合、単層では硬度や耐擦傷性が得られにくい。この場合、別のハードコート層を形成し、その上に帯電防止膜を形成しない限り、帯電防止性とハードコート性(硬度及び耐擦傷性)が両立できない可能性がある。このように2層のハードコート層を設ける場合、1層のハードコート層とされる場合と比較して、生産性が低下する。帯電防止性ハードコート層の厚みが20μmを超える場合、硬化収縮によるフィルムのカールが問題となることがある。なお、帯電防止性ハードコート層等の厚み(膜厚とも称される)は、下記の実施例において記載した方法で決定されうる。
【0060】
光学物品は特に限定されず、例えば、転写箔フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム、偏光板、光学フィルター、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板シート、導光板シートなどの光学シート;等が挙げられる。上記ハードコートフィルムとして、ショーウィンドウ、自動車用ガラス、画像表示装置などに用いられるハードコートフィルムが挙げられる。上記画像表示装置の具体例として、例えば、液晶表示装置(LCD)、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネルなどが挙げられる。
【0061】
光学物品を構成する基材としては、本発明の組成物が塗布されうる上記基材が用いられうる。本発明の光学物品は、例えば、従来公知の光学物品に上記帯電防止性ハードコート層を形成することにより、製造することができる。
【0062】
本発明の光学物品は、帯電防止性ハードコート層に加えて、機能層が設けられてもよい。この機能層として、反射防止層が好ましい。この反射防止層は、低屈折率層である。この反射防止層は、帯電防止性ハードコート層の上に設けられる。反射防止層の厚みは特に限定されず、下限としては0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上であり、上限としては1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。機能層として低屈折率層が形成された光学物品として、反射防止フィルム等が挙げられる。反射防止フィルムにおいて、低屈折率層は、帯電防止性ハードコート層上に直接形成されてもよいし、帯電防止性ハードコート層との間に他の層が介在していてもよい。低屈折率層は、例えば、シリカ(SiO)薄膜、フッ化マグネシウム(MgF)薄膜、SiOゲル薄膜、シリカ又はフッ化マグネシウムからなる微粒子を含有する樹脂、フッ化ビニリデン(共)重合体などのフッ素樹脂、シリカ又はフッ化マグネシウムからなる微粒子を含有するフッ素樹脂等により構成されうる。シリカ(SiO)薄膜やフッ化マグネシウム(MgF)薄膜は、蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などにより形成されうる。SiOゲル薄膜は、SiOゾルを含むゾル液から形成される。低屈折率層に含まれる微粒子は、その内部及び/又は表面の一部に空隙を有していてもよい。低屈折率層の屈折率は、下限としては1.25以上が好ましく、上限としては、1.45以下が好ましく、1.40以下がより好ましい。この屈折率の測定条件は、波長が550nmであり、測定温度が25℃である。
【0063】
帯電防止性ハードコート層と低屈折率層との間に介在する他の層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。この他の層の具体例としては、例えば、低屈折率層と異なる屈折率を有する層などが挙げられる。反射防止フィルムにおいて、他の層の屈折率は、低屈折率層の屈折率よりも高いのが好ましい。このような高屈折率層が設けられることにより、より広い波長範囲において反射を低減することができる。
【0064】
反射防止フィルムにおける好ましい積層構成の具体例として、基材側から順に記載された次の積層構成が挙げられる。例えば、基材/帯電防止性ハードコート層/低屈折率層、基材/帯電防止性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、基材/帯電防止性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層などが挙げられる。なお、本明細書において、高屈折率層とは、低屈折率層よりも高い屈折率を有する層を意味し、中屈折率層とは、低屈折率層よりも高く、かつ高屈折率層よりも低い屈折率を有する層を意味する。波長が550nmであり且つ測定温度が25℃の条件下における高屈折率層又は中屈折率層の屈折率は、1.45以上、2.00以下である。より詳細には、中屈折率層の波長550nm(測定温度25℃)における屈折率は、好ましくは1.45以上、1.70以下であり、高屈折率層の波長550nm(測定温度25℃)における屈折率は、好ましくは1.55以上、2.00以下である。中屈折率層又は高屈折率層は、例えば、多官能性重合性化合物と高屈折率微粒子とを含む組成物から形成されうる。この多官能性重合性化合物の具体例としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。高屈折率微粒子の具体例としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化アンチモンが挙げられる。高屈折率微粒子の含有率が調整されることにより、中屈折率層又は高屈折率層の屈折率が制御されうる。他の実施形態において、中屈折率層又は高屈折率層として、化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)などの蒸着法により形成した無機酸化物の蒸着膜が挙げられる。屈折率を高める観点から、この無機酸化物として、酸化チタン及び酸化ジルコニウムが好ましい。なお、低屈折率層、中屈折率層及び高屈折率層の屈折率は、下記の実施例で記載する方法により求められ得る。
【0065】
他の実施形態において、本発明の光学フィルムは、防眩性フィルム又は光拡散フィルムである。防眩性フィルム及び光拡散フィルムは、前述した有機微粒子又は無機微粒子を含有する帯電防止性ハードコート組成物を基材上に塗布し、乾燥させた後、活性エネルギー線を照射することにより硬化させて帯電防止性ハードコート層を形成することにより作製されうる。
【0066】
本発明の光学物品は、本発明の組成物を用いて形成された帯電防止性ハードコート層を有し、この帯電防止性ハードコート層の厚みが1μm以上10μm以下であるのが好ましい。この場合、摩擦などに起因する接触面の帯電が抑制され、着色が少なく、透明性が高く、耐擦傷性が優れた光学物品とされうる。この光学物品では、帯電防止性ハードコート層への割れ目の発生が抑制されうる。この光学物品では、帯電防止性ハードコート層の基材からの剥離が抑制されうる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、以下において、「L」はリットルを示す。
【0068】
[実施例及び比較例における評価方法]
(1)膜厚及び屈折率
干渉式膜厚測定装置(F20、フィルメトリックス社製)を用いてフィルムの反射率を400〜800nmの範囲で測定し、nk−Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを反射率スペクトルの実測値から非線形最小二乗法によって求めて、コーティング層の膜厚と波長550nmにおける屈折率を求めた。この評価結果が下記の表で示される。本願では、帯電防止性ハードコート層の厚みが、単に「膜厚」とも称される。
【0069】
(2)表面抵抗率
JIS K6911に準拠して、デジタル絶縁計(東亜ディーケーケー社製、DSM8104)を用いて測定した。この評価結果が下記の表で示される。表面抵抗率が低いほど、帯電防止性に優れ、高評価である。
【0070】
(3)ヘイズ
JIS K7105に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて測定した。この評価結果が下記の表で示される。ヘイズが高いほど透明性が低い。ヘイズが高いほど低評価である。
【0071】
(4)全光線透過率
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて測定した。この評価結果が下記の表で示される。全光線透過率が低いほど透明性が低い。全光線透過率が低いほど低評価である。
【0072】
(5)透過色
JIS Z8722に準拠して、分光式色差計(日本電色工業社製、SE2000)を用いてC/2光源で測定した。この評価結果が下記の表で示される。
【0073】
(6)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4に準拠して鉛筆引っかき試験を行い、傷付きにより評価した。この評価結果が下記の表で示される。
【0074】
(7)耐スチールウール性
スガ試験機(株)製学振型耐磨耗試験機を用いて、#0000スチールウールを200g/cm荷重で20回往復させた後の傷の付き具合を目視で評価した。評価は5段階とされた。傷がない場合をA、傷が1〜5本の場合をB、傷が6〜10本の場合をC、傷が11〜20本の場合をD、傷が21本以上の場合をEとした。この評価結果が下記の表に示される。
【0075】
(8)耐光性
岩崎電気(株)製超促進耐候性試験装置を用いて試験を行い、100mW/cmの条件にて、100時間後にキムワイプを200g/cmの荷重で20回往復させた後の傷の付き具合を目視で評価した。評価は4段階とされた。傷がない場合が「◎」とされ、傷が1−10本の場合が「○」とされ、傷が11本以上の場合が「△」とされ、塗膜が剥離してしまう場合が「×」とされた。この評価結果が下記の表に示される。
【0076】
(9)耐湿熱性
アドバンテック(株)製の恒温恒湿器中で60℃、90%RHの条件にて、250時間静置させ、試験前後のヘイズの変化量により評価した。評価は3段階とされた。ヘイズ値の変化量が0.1%未満の場合が「○」とされ、0.1%以上1.0%未満の場合が「△」とされ、1.0%以上の場合が「×」とされた。この評価結果が下記の表に示される。
【0077】
(10)耐熱性
エスペック(株)製の恒温器中で80℃の条件にて、250時間静置させ、試験前後のヘイズの変化量により評価した。評価は3段階とされた。ヘイズ値の変化量が0.1%未満の場合が「○」とされ、0.1%以上1.0%未満の場合が「△」とされ、1.0%以上の場合が「×」とされた。この評価結果が下記の表に示される。
【0078】
(11)コーティング組成物安定性(酸化スズ微粒子の分散性)
各例に係るコーティング組成物100mlを褐色試料瓶中で72時間静置した後、目視により沈殿物の有無を観察した。評価は2段階とされた。沈殿物がある場合が「×」とされ、沈殿物がない場合が「○」とされた。この評価結果が下記の表に示される。
【0079】
(12)平均粒子径Da
前述した方法により、平均粒子径Daを求めた。この結果が下記の記載及び表に示される。
【0080】
(13)リンドープ酸化スズ導電性微粒子のリンドープ量(リン含有率)
リンドープ酸化スズ導電性微粒子を1mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて蛍光X線分析を行い、リン由来ピークの強度比に基づいてリンドープ量(リン含有率)を求めた。この結果が、下記の記載及び表に示される。
【0081】
(14)質量平均分子量、数平均分子量
質量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム、東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。
【0082】
[製造例1]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子A−1の製造)
塩化スズ100g、リン酸5g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、550℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−1)を得た。なお得られた微粒子(A−1)の平均粒子径Daは6.3nmであり、この微粒子(A−1)のリン含有率は0.21質量%であった。
【0083】
[製造例2]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子A−2の製造)
上記微粒子(A−1)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながら、シランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)5gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−2)を得た。この微粒子(A−2)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。得られた微粒子(A−2)の平均粒子径Daは7.0nmであり、この微粒子(A−2)のリン含有率は0.19質量%であった。
【0084】
[実施例1]
上記微粒子(A−2)2.0g、多官能アクリレート(商品名「DPHA」、日本化薬社製)8.0g、光重合開始剤(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)0.2g及びイソプロピルアルコール30gを混合し、実施例1に係るコーティング組成物を調整した。この実施例1に係るコーティング組成物の組成が下記の表1に示される。このコーティング組成物の安定性が下記の表2に示される。
【0085】
上記実施例1に係るコーティング組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(HBPF8W、帝人デュポン社製:厚み100μm)に塗布した。塗布にはバーコーターが用いられた。塗布層を100℃で5分乾燥した後、高圧水銀灯で250mJ/cm2の紫外線を照射することにより硬化させ、ハードコート層を形成した。以上により、ハードコート層を有するコーティングフィルムを得た。得られたコーティングフィルムについて、膜厚、屈折率、表面抵抗率、ヘイズ、全光線透過率、透過色、耐スチールウール性、鉛筆硬度、耐湿熱性及び耐熱性を評価した。これらの結果が下記の表2に示されている。
【0086】
[実施例2から5]
各成分の量及び膜厚が下記の表に示される通りとされた他は実施例1と同様にして、実施例2から5に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例2から5に係るコーティング組成物の組成が下記の表1に示される。実施例2から5に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムの評価結果が下記の表2で示される。
【0087】
[実施例6]
多官能アクリレート(商品名「DPHA」、日本化薬社製)に代えて多官能ウレタンアクリレート(商品名「U−15HA」、新中村化学社製)が用いられ、膜厚が表2で示される通りとされた他は実施例3と同様にして、実施例6に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例6に係るコーティング組成物の組成が下記の表1に示される。実施例6に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムの評価結果が下記の表2に示される。
【0088】
[比較例1]
微粒子(A−2)の代わりに微粒子(A−1)が用いられ、膜厚が表2で示される通りとされた他は実施例3と同様にして、比較例1に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。比較例1に係るコーティング組成物の組成が下記の表1に示される。比較例1に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムの評価結果が下記の表2に示される。
【0089】
[比較例2及び比較例3]
各成分の量が表1に示される通りとされ、膜厚が表2で示される通りとされた他は実施例1と同様にして、比較例2及び3に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。比較例2、3に係るコーティング組成物の組成が下記の表1に示される。比較例2及び3に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムの評価結果が下記の表2で示される。
【0090】
[製造例3]
(ラクトン環含有樹脂フィルムの製造)
攪拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入管を付した30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)及び5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込んだ。次に、窒素を通じつつ、反応液を105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤である5.0gのt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC−75、化薬アクゾ(株)製)を添加すると同時に、10.0gのt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下、約105〜120℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0091】
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(Phoslex A−18、堺化学工業(株)製)を加え、還流下、約90〜120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を、ベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/hの処理速度で導入し、この押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、ラクトン環含有重合体L1の透明なペレットを得た。なお、ベントタイプスクリュー二軸押出し機の仕様及び条件は、バレル温度が260℃であり、回転数が100rpmであり、減圧度が13.3〜400hPa(10〜300mmHg)であり、リアベント数が1個であり、フォアベント数が4個であった。
【0092】
得られたラクトン環含有重合体L1について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.34質量%の質量減少が検知された。また、このラクトン環含有重合体L1は、質量平均分子量は144,000であり、ガラス転移温度が131℃であった。
【0093】
このラクトン環含有重合体L1のペレットを、20mmφのスクリューを有する二軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出し、ラクトン環含有重合体を主成分として含む厚さ約100μmのラクトン環含有樹脂フィルムF1を得た。
【0094】
なお、上記ラクトン環含有重合体L1に関する測定方法等は以下の通りである。
【0095】
(ダイナミックTG)
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解または希釈し、過剰のヘキサンまたはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:差動型示差熱天秤(Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG、(株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 100ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下に制御)
【0096】
(ラクトン環構造の含有割合)
ラクトン環含有重合体L1のすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる質量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において質量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による質量減少から、脱アルコール反応率を求めた。すなわち、ラクトン環構造を有する重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の質量減少率の測定を行い、得られた実測値を実測質量減少率(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の質量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)を理論質量減少率(Y)とする。なお、理論質量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中における脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値を脱アルコール計算式:
1−(実測質量減少率(X)/理論質量減少率(Y))
に代入してその値を求め、百分率(%)で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。
【0097】
上記製造例で得られたラクトン環含有重合体L1のペレットにおいてラクトン環構造の含有割合が計算された。メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(質量比)は組成上20.0質量%であるから、このラクトン環含有重合体L1の理論質量減少率(Y)は、(32/116)×20.0≒5.52質量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測質量減少率(X)は0.34質量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.34/5.52)≒0.938となる。よって、ラクトン環含有重合体L1の脱アルコール反応率は93.8%である。そして、この脱アルコール反応率分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体の当該共重合体組成における含有率(質量比)に、脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環構造の含有率(質量比)に換算することにより、当該共重合体におけるラクトン環含有割合を算出することができる。ラクトン環含有重合体L1中における2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率が20.0質量%、算出した脱アルコール反応率が93.8%、分子量が116の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがメタクリル酸メチルと縮合した場合に生成するラクトン環構造の式量が170であることから、ラクトン環含有重合体L1におけるラクトン環構造の含有割合は27.5(20.0×0.938×170/116)質量%であった。
【0098】
(重合体の熱分析)
ラクトン環含有重合体L1の熱分析は、示差走査熱量計(DSC−8230、(株)リガク製)を用いて、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50ml/minの条件で行った。ラクトン環含有重合体L1のガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に準拠して、中点法で求めた。
【0099】
[実施例7]
(基材フィルムにラクトン環含有樹脂フィルムを用いた実施例)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えて、上記製造例により得られたラクトン環含有樹脂フィルムF1が用いられ、膜厚が表2で示される通りとされた他は実施例3と同様にしてコーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例7に係るコーティング組成物の組成が下記の表1に示される。実施例7に係るコーティング組成物及びコーティングフィルムの評価結果が下記の表2で示される。
【0100】
[製造例4]
(重合性ポリシロキサン(M−1)の合成)
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン144.5g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6g、水19.0g、メタノール30.0g及び5.0gのアンバーリスト15(商品名、オルガノ社製の陽イオン交換樹脂)を入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、この蒸留塔に接続させた冷却管及び留出口を設け、常圧下でフラスコ内温約80℃まで2時間かけて昇温し、メタノールが留出しなくなるまで同温度(約80℃)で保持した。更に、2.67×10kPaの圧力下90℃の温度で、メタノールが留出しなくなるまで保持し、反応を更に進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾別し、数平均分子量が1,800の重合性ポリシロキサン(M−1)を得た。
【0101】
[製造例5]
(有機ポリマー(P−1)の合成)
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及びN2ガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤として260gの酢酸n−ブチルを入れ、N2ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を110℃まで加熱した。ついで12gの上記重合性ポリシロキサン(M−1)、19gのtert−ブチルメタクリレート、94gのブチルアクリレート、67gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート、48gのパーフルオロオクチルエチルメタクリレート(ライトエステルFM−108、共栄社化学社製)及び2.5gの2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)を混合した溶液を滴下口より3時間かけて滴下した。滴下後も同温度で1時間攪拌を続けた後、0.1gのtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを30分おきに2回添加し、さらに2時間加熱して共重合を行った。この結果、数平均分子量が12,000であり質量平均分子量が27,000である有機ポリマー(P−1)が酢酸n−ブチルに溶解した溶液P1を得た。得られた溶液の固形分は48.2%であった。
【0102】
[製造例6]
(有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)の合成)
攪拌機、2つの滴下口(滴下口T1及び滴下口T2)、温度計を備えた500mlの四ツ口フラスコに、200gの酢酸n−ブチル及び50gのメタノールを入れておき、内温を40℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、10gの上記溶液P1、30gのテトラメトキシシラン及び5gの酢酸n−ブチルからなる混合液(原料液A)を滴下口T1から2時間かけて滴下するとともに、これと並行して、5gの25%アンモニア水、10gの脱イオン水及び、15gのメタノールからなる混合液(原料液B)を滴下口T2から2時間かけて滴下した。滴下後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管及び留出口を設け、40kPaの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノール及び酢酸n−ブチルを固形分が30%となるまで留去し、有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)を得た。この分散体(S−1)は、有機ポリマー複合無機微粒子が酢酸n−ブチルに分散した分散体であり、この有機ポリマー複合無機微粒子において、無機微粒子と有機ポリマーの比率(無機微粒子/有機ポリマー)は70/30であった。この比率は質量比である。この有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径は23.9nmであった。なお、分散体(S−1)の評価は以下の方法により行った。
【0103】
(有機ポリマー複合無機微粒子中における無機微粒子と有機ポリマーとの比率)
上記分散体(S−1)が、1.33×10kPaの圧力下、130℃で24時間乾燥された。この乾燥物の元素分析がなされ、灰分が測定された。この灰分を有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子含有量とすることにより、上記比率を求めた。
【0104】
(平均粒子径)
1gの上記分散体(S−1)を99gの酢酸n−ブチルで希釈した溶液を用いて、透過型電子顕微鏡により粒子を撮影し、任意の100個の粒子の直径を読み取り、その平均を平均粒子径として求めた。その他の点については上記平均粒子径Daと同様にして、分散体(S−1)に含まれる微粒子の平均粒子径が測定された。
【0105】
[製造例7]
(低屈折率層用塗布液の調製)
9gの上記分散体(S−1)、1gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、0.1gのイルガキュア184及び240gのメチルイソブチルケトンを混合し、低屈折率層用塗布液K1を調整した。
【0106】
[実施例8]
(反射防止フィルム)
実施例2において作製されたコーティングフィルムのハードコート層上に、上記の低屈折率層用塗布液K1をバーコーターを用いて塗布し、100℃で5分乾燥した後、高圧水銀灯で1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させることにより、膜厚が0.1μmである低屈折率層が形成された。この結果、ハードコート層上に低屈折率層を有する積層フィルムが得られた。得られた積層フィルムについて、反射率、表面抵抗率、ヘイズ、全光線透過率及び鉛筆硬度を測定した。表面抵抗率、ヘイズ、全光線透過率及び鉛筆硬度の測定方法は上述した通りである。この積層フィルムの評価結果が下記の表3で示される。
【0107】
なお、積層フィルムの上記反射率は以下の方法により測定した。フィルムの反射防止膜側とは反対側の面をスチールウールで粗面化し、更に黒色インキを塗り、反射防止膜側の面の入射角5゜における鏡面反射スペクトルを紫外可視分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて測定して、反射率の最小値を求めた。この反射率の最小値が、「反射率」として下記の表3で示される。
【0108】
[製造例8]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−3)の製造)
塩化スズ100g、リン酸5g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2.5gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、520℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−3)を得た。なお得られた微粒子(A−3)は、平均粒子径Daが28.9nmであり、リン含有率が0.19質量%であった。
【0109】
[製造例9]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−4)の製造)
上記微粒子(A−3)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながら、シランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)1.2gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンドープされた酸化スズ微粒子(A−4)を得た。この微粒子(A−4)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−4)の平均粒子径Daは30.2nmであり、この微粒子(A−4)のリン含有率は0.17質量%であった。
【0110】
[製造例10]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−5)の製造)
塩化スズ100g、リン酸5g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液3.0gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、500℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−5)を得た。この微粒子(A−5)の平均粒子径Daは73.8nmであり、この微粒子(A−5)のリン含有率は0.21質量%であった。
【0111】
[製造例11]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−6)の製造)
上記微粒子(A−5)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)0.5gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−6)を得た。この微粒子(A−6)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−6)の平均粒子径Daは75.8nmであり、この微粒子(A−6)のリン含有率は0.21質量%であった。
【0112】
[製造例12]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−7)の製造)
塩化スズ100g、リン酸5g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液5.0gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、480℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−7)を得た。この微粒子(A−7)の平均粒子径Daは120.9nmであり、この微粒子(A−7)のリン含有率は0.21質量%であった。
【0113】
[製造例13]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−8)の製造)
上記微粒子(A−7)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)0.3gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−8)を得た。この微粒子(A−8)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−8)の平均粒子径Daは123.1nmであり、この微粒子(A−8)のリン含有率は0.20質量%であった。
【0114】
[製造例14]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−9)の製造)
塩化スズ100g、リン酸1.9g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、550℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−9)を得た。この微粒子(A−9)の平均粒子径Daは9.3nmであり、この微粒子(A−9)のリン含有率は0.08質量%であった。
【0115】
[製造例15]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−10)の製造)
上記微粒子(A−9)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)3.8gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−10)を得た。この微粒子(A−10)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−10)の平均粒子径Daは10.5nmであり、この微粒子(A−10)のリン含有率は0.07質量%であった。
【0116】
[製造例16]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−11)の製造)
塩化スズ100g、リン酸9.3g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、550℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−11)を得た。この微粒子(A−11)の平均粒子径Daは8.0nmであり、この微粒子(A−11)のリン含有率は1.96質量%であった。
【0117】
[製造例17]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−12)の製造)
上記微粒子(A−11)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)4.3gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−12)を得た。この微粒子(A−12)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−12)の平均粒子径Daは8.8nmであり、この微粒子(A−12)のリン含有率は1.83質量%であった。
【0118】
[製造例18]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−13)の製造)
塩化スズ100g、リン酸15.5g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、550℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−13)を得た。この微粒子(A−13)の平均粒子径Daは12.9nmであり、この微粒子(A−13)のリン含有率は5.00%であった。
【0119】
[製造例19]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−14)の製造)
上記微粒子(A−13)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)2.6gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−14)を得た。この微粒子(A−14)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−14)の平均粒子径Daは14.3nmであり、この微粒子(A−14)のリン含有率は4.79質量%であった。
【0120】
[製造例20]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−15)の製造)
塩化スズ100g、リン酸0.5g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、550℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−15)を得た。この微粒子(A−15)の平均粒子径Daは7.1nmであり、この微粒子(A−15)のリン含有率は0.01質量%であった。
【0121】
[製造例21]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−16)の製造)
上記微粒子(A−15)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)4.8gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−16)を得た。この微粒子(A−16)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子の(A−16)の平均粒子径Daは8.0nmであり、この微粒子の(A−16)のリン含有率は0.008質量%であった。
【0122】
[製造例22]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−17)の製造)
塩化スズ100g、リン酸22.3g及びケイ酸ナトリウム1gをメタノール150gに溶解して溶液を調整し、この溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して沈殿物を生成させた。この沈殿物を窒素雰囲気下で乾燥させた後、窒素雰囲気下、550℃で焼成し、生成物を粉砕して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−17)を得た。この微粒子(A−17)の平均粒子径Daは14.2nmであり、この微粒子(A−17)のリン含有率は6.21質量%であった。
【0123】
[製造例23]
(リンドープ酸化スズ導電性微粒子(A−18)の製造)
上記微粒子(A−17)100gをジュースミキサーに入れ、攪拌しながらシランカップリング剤KBM−503(信越化学工業社製)2.4gをメタノール20gに溶解させた溶液を加え、30分攪拌した後、150℃で1時間乾燥して、リンがドープされた酸化スズ微粒子(A−18)を得た。この微粒子(A−18)は、表面がシランカップリング剤処理されており、有機化合物により被覆されている。この微粒子(A−18)の平均粒子径Daは15.6nmであり、この微粒子(A−18)のリン含有率は6.05質量%であった。
【0124】
[実施例A]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−4)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Aに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Aの評価結果が下記の表5に示される。
【0125】
[実施例B]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−6)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Bに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Bの評価結果が下記の表5に示される。
【0126】
[比較例A]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−8)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。比較例Aに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この比較例Aの評価結果が下記の表5に示される。
【0127】
[実施例C]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−10)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Cに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Cの評価結果が下記の表5に示される。
【0128】
[実施例D]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−12)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Dに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Dの評価結果が下記の表5に示される。
【0129】
[実施例E]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−14)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Eに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Eの評価結果が下記の表5に示される。
【0130】
[実施例F]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−16)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Fに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Fの評価結果が下記の表5に示される。
【0131】
[実施例G]
上記微粒子(A−2)に代えて上記微粒子(A−18)が用いられた他は実施例3と同様にして、コーティング組成物及びコーティングフィルムを得た。実施例Gに係るコーティング組成物の組成が下記の表4に示される。この実施例Gの評価結果が下記の表5に示される。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
表に示されるように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。これらの評価結果から、本発明の優位性は明らかである。比較例1と他の例との比較により、シランカップリング剤処理による顕著な効果が示されている。比較例2及び比較例3と他の例との比較により、リンドープスズ微粒子の配合割合に起因する効果が示されている。比較例2は、リンドープスズ微粒子の配合割合が少ないため、表面抵抗率が大きい。比較例3は、リンドープスズ微粒子の配合割合が多いため、耐湿熱性、耐熱性及び耐光性の評価が低い。比較例Aと他の例との比較により、微粒子の平均粒子径Daに起因する効果が示されている。比較例Aは、平均粒子径Daが大きいため、ヘイズ、全光線透過率及び透過色の評価が低い。実施例C、D、E、F及びGにより、リンドープ量(リン含有率)に起因する効果が示されている。リンドープ量が少なすぎる場合、表面抵抗率が大きくなりやすい。リンドープ量が多すぎる場合、鉛筆硬度が低下しやすい。リンドープ量が多すぎる場合、耐光性、耐熱性及び耐湿熱性が低下しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、ハードコート組成物及びこれを用いた光学物品等に適用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A:リンがドープされた酸化スズ微粒子、成分B:分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、及び成分C:光重合開始剤を含有し、成分Aの含有率が成分A及び成分Bの合計量に対して、20質量%以上55質量%未満であり、
上記酸化スズ微粒子の平均粒子径Daが1nm以上80nm以下であり、
上記酸化スズ微粒子の少なくとも一部が、シランカップリング剤により表面処理されている帯電防止性ハードコート組成物。
【請求項2】
上記成分Aにおけるリンの含有率は、成分Aの全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の帯電防止性ハードコート組成物。
【請求項3】
上記成分Bが多官能(メタ)アクリレートである請求項1又は2に記載の帯電防止性ハードコート組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の帯電防止性ハードコート組成物を用いて形成された帯電防止性ハードコート層を有する光学物品。
【請求項5】
上記帯電防止性ハードコート層の上側に反射防止層が設けられている請求項4に記載の光学物品。
【請求項6】
光学フィルム又は光学シートである請求項4又は5に記載の光学物品。

【公開番号】特開2009−155440(P2009−155440A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334597(P2007−334597)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】