説明

帯電防止性熱可塑性樹脂組成物

【課題】帯電防止性が優れていて、多様な製品の成型に使用することができ、特に、電機電子製品のハウジングまたは電機電子製品の製造工程に使用される運搬用トレイに使用されるのに適している熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂、陰イオン系帯電防止剤、および導電性金属酸化物を含む帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳細には、帯電防止性が優れていて、多様な製品の成型に使用される、帯電防止性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート/スチレン含有共重合体の混合物は、高いノッチ(notch)衝撃強度を維持して、加工性を向上させた樹脂混合物であるため、電機電子製品のハウジングまたは電機電子製品の製造工程に使用される運搬用トレイなどの射出物に主に使用される。しかし、樹脂組成物がかかる用途に使用されるためには、静電気による電子製品の被害を防止するための帯電防止性が不可欠である。
【0003】
樹脂組成物に帯電防止性を付与するために、主にアミン、アミド、4級アンモニウム塩などの窒素化合物、スルホン酸、脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、脂肪族ホスホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩などの帯電防止剤が使用される。しかし、このような帯電防止剤を単独で使用しても、電気電子分野で要求される10〜10Ω/□(sq)程度の帯電防止性を実現するのは困難あり、近年電気電子分野の事業が発展するのに伴って、さらに高い水準の帯電防止性が要求されているが、それを実現するのも無論不可能である。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2には、ポリエーテルエステルアミド系帯電防止剤を使用して帯電防止性樹脂組成物を製造する方法が開示されている。しかし、前記帯電防止剤を使用して実現することができる最大表面抵抗は、1010〜1012Ω/□(sq)程度である。
【0005】
また、特許文献3には、エチレンオキシド系帯電防止剤を適用した方法が開示されているが、これも、実現することができる表面抵抗は1011〜1013Ω/□(sq)程度に過ぎず、電気電子分野で要求される高い水準の帯電防止性を実現するのが困難な問題がある。
【特許文献1】米国特許第5,500,478号明細書
【特許文献2】米国特許第5,965,206号明細書
【特許文献3】米国特許第5,010,139号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来では電気電子分野で要求されるが、成し得なかった高い水準の帯電防止性を備えた帯電防止性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。また、本発明の他の課題は、電気電子分野で要求される、成し得なかった高い水準の帯電防止性を備えた熱可塑性樹脂組成物を含む、成型品を提供することである。
【0007】
ただし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した技術的課題に限定されない。また他の技術的課題は、当業者であれば下記の記載から明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、(A)熱可塑性樹脂と、(B)陰イオン系帯電防止剤と、(C)導電性(伝導性)金属酸化物と、を含む、帯電防止性熱可塑性樹脂組成物を提供することによって、前記課題を解決することができることを見出した。また、前記熱可塑性樹脂組成物を含む、成型品を提供することによって、前記課題を解決することができることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、帯電防止性が優れていて、多様な製品の成型に使用され、特に電機電子製品のハウジングまたは電機電子製品の製造工程に使用される運搬用トレイに使用されるのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示に過ぎず、本発明の技術的範囲はこれに制限されない。
【0011】
なお、本明細書中、特別な言及がない限り、「置換された」とは、ハロゲン原子、炭素数1〜30の線状または分枝状のアルキル基、炭素数1〜30のハロアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数2〜30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数2〜30のヘテロアリール基および炭素数1〜20のアルコキシ基からなる群より選択される置換基で置換されたことを意味する。
【0012】
また、本明細書中、特別な言及がない限り、「ヘテロ」とは、炭素原子がN、O、S、およびPからなる群より選択されるヘテロ原子で置換されたことを意味する。
【0013】
また、本明細書中、「共重合体」は、共重合体には、ランダム共重合体でも、交互共重合体でも、周期的共重合体でも、ブロック共重合体でもよく、如何なる構造の共重合体でもよい。また、ブロック共重合体としても、どのような構造を有するものでもよく、例えば、グラフト共重合体であってもよい。
【0014】
また、本明細書中、「樹脂」は、線形でも、分枝形でもよい。
【0015】
<本発明の第1>
本発明の第1は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)陰イオン系帯電防止剤と、(C)導電性金属酸化物と、を含む、帯電防止性熱可塑性樹脂組成物である。特に好ましくは、(A)熱可塑性樹脂100質量部と、(B)陰イオン系帯電防止剤0.1〜20質量部と、(C)導電性金属酸化物0.1〜20質量部と、を含む、帯電防止性熱可塑性樹脂組成物である。
【0016】
なお、「帯電防止性熱可塑性樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂100質量部と、(B)陰イオン系帯電防止剤0.1〜20質量部と、(C)導電性金属酸化物0.1〜20質量部と、を含む」とは、「帯電防止性熱可塑性樹脂組成物が、(A)熱可塑性樹脂と、(B)陰イオン系帯電防止剤と、(C)導電性金属酸化物とを含み、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)陰イオン系帯電防止剤が0.1〜20質量部含まれ、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(C)導電性金属酸化物が0.1〜20質量部含まれる」との意味である。
【0017】
以下、本発明による帯電防止性熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「熱可塑性樹脂組成物」とも称する)を構成する各成分について具体的に説明する。なお、本発明の技術的特徴以外の部分は、従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。
【0018】
(A)熱可塑性樹脂
本発明に使用されうる熱可塑性樹脂としては、特に制限はされないが、ポリカーボネート樹脂、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、スチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂)、ゴム変性スチレン系樹脂(ゴム変性ポリスチレン樹脂)、ナイロン系樹脂およびビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましくは、前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、スチレン系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、ナイロン系樹脂およびビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0019】
(A−1)ポリカーボネート樹脂
本発明に使用されうるポリカーボネート樹脂は、下記の化学式1:
【0020】
【化1】

【0021】
前記化学式1中、
Aは、単結合、置換または非置換の炭素数1〜5のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜5のアルキリデン基、置換または非置換の炭素数5〜6のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数5〜10のシクロアルキリデン基、CO、SおよびSOからなる群より選択される連結基であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基および置換、非置換の炭素数6〜30のアリール基およびハロゲン原子からなる群より選択される置換基であり、
およびnは、それぞれ独立して、0〜4の整数である、
で示されるジフェノール類と、
ホスゲン、ハロゲンホルメート、カーボネートおよびこれらの組合せからなる群より選択される化合物と、
を反応して製造されてなるものを含むと好ましい。ここで、ポリカーボネート樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用してもよい。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、上記化学式1の少なくとも1種から構成される。
【0022】
アルキル基、アルキレン基およびアルキリデン基は、それぞれ独立して、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0023】
炭素数1〜30のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基などが挙げられる。
【0024】
炭素数1〜5のアルキレン基としては、特に制限されないが、メチレン基、エチレン基、トリエチレン基、テトラエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基などが挙げられる。
【0025】
炭素数2〜5のアルキリデン基としては、特に制限されないが、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基などが挙げられる。
【0026】
炭素数3〜6のシクロアルキレン基としては、特に制限されないが、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。なお、シクロアルキレン基は、好ましくは炭素数5〜6である。
【0027】
炭素数6〜30のアリール基としては、特に制限はないが、フェニル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、トリチル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0028】
炭素数5〜10のシクロアルキリデン基としては、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基などが挙げられる。
【0029】
なお、これら置換基の例示は、本明細書中に挙げられる他の物質(例えば、本明細書中の「ビニル系単量体」など)にも、同様に適用されうるため、その物質を説明する際には、置換基の例示の説明を省略する。
【0030】
なお、前記化学式1で示されるジフェノール類は、2種以上が組合されて、ポリカーボネート樹脂の構成単位を構成してもよい。
【0031】
前記ジフェノール類の具体的な例としては、特に制限されないが、ヒドロキノン、レゾシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールAともいう)、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンなどが挙げられる。中でも、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンが好ましい。また、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンが特に好ましい。
【0032】
前記ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量も特に制限されないが、10,000〜200,000であると好ましく、15,000〜80,000であるとより好ましい。
【0033】
前記ポリカーボネート樹脂は、2種以上のジフェノール類から製造された共重合体の混合物であってもよい。
【0034】
また、前記ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はないが、線形ポリカーボネート樹脂、分枝形(branched)ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート共重合体樹脂などが挙げられる。
【0035】
前記線形ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0036】
前記分枝形ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はないが、トリメリット酸無水物、トリメリット酸などの多官能性芳香族化合物と、ジフェノール類および/またはカーボネートとを反応して製造されてなると好ましい。この際、前記多官能性芳香族化合物の含量にも特に制限はないが、分枝形ポリカーボネート樹脂総量に対して、0.05〜2モル%で含まれることが好ましい。
【0037】
前記ポリエステルカーボネート共重合体樹脂としては、特に制限はないが、二官能性カルボン酸と、ジフェノール類およびカーボネートとを反応して製造されてなるものが好ましい。この際、前記カーボネートとしては、特に制限はないが、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)などが挙げられる。
【0038】
前記ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0039】
前記ポリカーボネート樹脂が、本発明の(A)熱可塑性樹脂に含まれる場合、機械的強度、耐衝撃性、および耐熱性を考慮すると、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは45〜100質量部で含まれ、より好ましくは60〜100質量部で含まれ、さらに好ましくは45〜95質量部で含まれる。
【0040】
(A−2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
本発明に使用されうるゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、特に制限されないが、ビニル系単量体5〜95質量%を、ゴム質重合体5〜95質量%にグラフト重合して製造されてなるものを含むと好ましい。なお、ビニル系単量体の「5〜95質量%」と、ゴム質重合体の「5〜95質量%」は、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体総量に対する割合である。
【0041】
前記ビニル系単量体は、特に制限されないが、スチレン、α−メチルスチレンなどの炭素数1〜4のα−アルキル基で置換されたスチレン、ハロゲンで置換されたスチレン、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1ビニル系単量体50〜95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニルN−置換マレイミドおよびこれらの組合せからなる群より選択される第2ビニル系単量体5〜50質量%と、を含むと好ましい。なお、前記第1ビニル系単量体の「50〜95質量%」と、第2ビニル系単量体の「5〜50質量%」は、ビニル系単量体の総量に対する割合である。
【0042】
前記ゴム質重合体は、特に制限されないが、ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレン/プロピレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム複合体およびこれらの組合せからなる群より選択されると好ましい。
【0043】
前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、単独で使用してもよいし、これらの2種以上の混合物の形態でも使用してもよい。
【0044】
前記炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類または炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類としては、特に制限されないが、それぞれ独立して、メタクリル酸またはアクリル酸のエステル類であって、2〜8個の炭素原子を含む、モノヒドリルアルコールから製造されたエステル類を含むと好ましい。
【0045】
前記メタクリル酸アルキルエステル類またはアクリル酸アルキルエステル類の具体的な例としては、特に制限されないが、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、アクリル酸エチルエステル、メタクリル酸プロピルエステルなどが挙げられる。これらのうちメタクリル酸メチルエステルが特に好ましい。
【0046】
前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の好ましい例としては、特に制限はないが、ブタジエンゴム、アクリルゴムまたはスチレン/ブタジエンゴムに、スチレン、アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を混合してグラフト共重合したものなどが挙げられる。
【0047】
また他の前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の好ましい例としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、またはスチレン/ブタジエンゴムに(メタ)アクリル酸メチルエステル単量体をグラフト共重合したものなどが挙げられる。
【0048】
前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体を製造する方法としては、特に制限されず、従来公知の知見を適宜参照し、あるいは、組み合わせることで適用できる。例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などを使用することができる。好ましくは、ゴム質重合体の存在下で、前記芳香族ビニル系単量体を投入し、必要に応じ、連鎖移動剤、重合開始剤を使用して、乳化重合または塊状重合させる方法である。
【0049】
前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、耐衝撃性、耐薬品性、円滑な加工特性およびコストを考慮すると、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部で含まれ、より好ましくは0.1〜20質量部で含まれる。
【0050】
(A−3)スチレン系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂
本発明の熱可塑性樹脂を構成する成分として、スチレン系樹脂またはゴム変性スチレン系樹脂が使用されると好ましい。
【0051】
本発明に使用されうるスチレン系樹脂の製造方法にも特に制限はないが、例えば、芳香族ビニル単量体を塊状重合、懸濁重合、または溶液重合することによって、製造することができる。
【0052】
前記芳香族ビニル単量体としては、特に制限はないが、スチレン、パラメチルスチレン、α−メチルスチレン、4−N−プロピルスチレンなどが挙げられる。中でも、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンを好ましく使用することができる。
【0053】
本発明に使用されうるゴム変性スチレン系樹脂は、前記芳香族ビニル単量体をゴムにグラフト重合させて補強したものである。
【0054】
前記ゴムとしては、特に制限はないが、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンおよび2−エチル−1,4−ペンタジエンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、ブタジエンが好ましい。なお、前記ゴムは、ゴム変性スチレン系樹脂の総量に対して5〜15質量%で含まれるのが好ましい。
【0055】
前記スチレン系樹脂やゴム変性スチレン系樹脂の製造方法も特に制限はないが、例えば、懸濁重合、乳化重合または連続重合によって製造することができる。
【0056】
前記スチレン系樹脂またはゴム変性スチレン系樹脂の重量平均分子量も特に制限はないが、80,000〜400,000であると好ましい。
【0057】
前記スチレン系樹脂またはゴム変性スチレン系樹脂は、耐衝撃性および機械的強度を考慮すると、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜70質量部で含まれ、より好ましくは0〜50質量部で含まれる。
【0058】
(A−4)ナイロン系樹脂
本発明に使用されうるナイロン系樹脂は、従来公知のものを使用することができる。例えば、ε−カプロラクトンまたはω−ドデカラクタム(dodecalactam)などのラクタムを開環重合して製造されるポリアミド6(ナイロン6)などを使用してもよい。また、アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸(amino undecanoic acid)または12−アミノドデカン酸(amino dodecanoic acid)などのアミノ酸から製造されるナイロン重合体を使用してもよい。また、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンージアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンージアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンージアミン、5−メチルノナヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキサン)メタン、ビス(4−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族(alicyclic)または芳香族ジアミンと、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、リンフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルリンフタル酸などの脂肪族、脂環族、または芳香族ジカルボン酸と、から製造されるナイロンとの重合体を使用してもよい。なお、これら重合体の共重合体やこれらの混合物を使用してもよい。なお、このうち、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンを重合して製造されたポリアミドをナイロン66と称する。特に、これらのうちのナイロン6、ナイロン66、およびこれらの共重合体からなる群より選択されるものを使用することが好ましい。
【0059】
前記ナイロン系樹脂は、ホルム酸85%の使用および測定温度25℃の条件で、相対粘度が2.4〜3.8cpであることが好ましい。ナイロン系樹脂の相対粘度が前記範囲である場合、耐衝撃性などの機械的強度を確保することができ、成型を容易にして、商業的な側面で効率が向上する点好ましい。
【0060】
前記ナイロン系樹脂の数平均分子量(Mn)も、特に制限はないが、約20,000〜150,000であると好ましく、アミン末端グループの濃度は、20〜60mmol/kgであると好ましい。
【0061】
前記ナイロン系樹脂は、耐衝撃性、機械的強度、および耐熱性を考慮すると、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜70質量部で含まれ、より好ましくは0〜50質量部で含まれる。
【0062】
(A−5)ビニル系共重合体
本発明に使用されうるビニル系共重合体は、特に制限はないが、スチレン、α−メチルスチレンなどの炭素数1〜4のα−アルキル基で置換されたスチレン、ハロゲンで置換されたスチレン、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類およびこれらの組合せからなる群より選択される第1ビニル系単量体50〜95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニルN−置換マレイミドおよびこれらの組合せからなる群より選択される第2ビニル系単量体5〜50質量%と、を共重合して製造することができる。
【0063】
前記メタクリル酸アルキルエステル類またはアクリル酸アルキルエステル類の具体的な例としては、特に制限はないが、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸プロピルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸ペンチルエステル、メタクリル酸ヘキシルエステル、メタクリル酸ヘプチルエステル、メタクリル酸オクチルエステル、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、メタクリル酸プロピルエステル, アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸ペンチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル、アクリル酸ヘプチルエステル、アクリル酸オクチルエステルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸メチルエステルが好ましい。
【0064】
前記ビニル系共重合体は、本発明に使用されうるゴム変性ビニル系グラフト共重合体の製造時に副産物として生成されうる。特に、少量のゴム質重合体に過剰な量のビニル系単量体の混合物をグラフト重合させる場合や、分子量調節剤として使用される連鎖移動剤(chain transfer agent)を過剰に使用する場合に、より多く生成されうる。
【0065】
前記ビニル系共重合体の好ましい例としては、特に制限はないが、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルエステル単量体およびα−メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも2種を使用して製造されたものを含む。より好ましくは、前記ビニル系共重合体は、スチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルエステル単量体からなる群から選択される少なくとも1種、α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルエステル単量体からなる群から選択される少なくとも1種ならびに/またはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルエステル単量体からなる群から選択される少なくとも1種を使用して製造されたものを含む。中でも、スチレン、アクリロニトリルが好ましい。
【0066】
前記ビニル系共重合体の製造方法としても特に制限はないが、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊状重合で製造することができる。また、ビニル系共重合体の重量平均分子量も特に制限はないが、15,000〜300,000であると好ましい。
【0067】
また、他の好ましいビニル系共重合体としては、メタクリル酸メチルエステル単量体および/またはアクリル酸メチルエステル単量体から製造されたものでもよい。
【0068】
前記ビニル系共重合体の製造方法としても特に制限されないが、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊状重合で製造することができる。また、前記ビニル系共重合体の重量平均分子量も特に制限はないが、例えば、20,000〜250,000であると好ましい。また、必要に応じ、連鎖移動剤、重合開始剤など一般的な添加剤を使用することができる。
【0069】
他の好ましいビニル系共重合体としては、スチレンおよび無水マレイン酸の共重合体であると好ましい。また、連続塊状重合および/または溶液重合を利用して製造されると好ましい。
【0070】
前記スチレンおよび無水マレイン酸の組成比も、特に制限はなく、どのような範囲でもよい。ただ、好ましくは、無水マレイン酸の含有量が、ビニル系共重合体に対して5〜50質量%である。また、前記スチレンおよび無水マレイン酸の共重合体の分子量も、特に制限はないが、好ましくは重量平均分子量が20,000〜200,000である。また、粘度にも特に制限はないが、好ましくは固有粘度が0.3〜0.9である。
【0071】
前記ビニル系共重合体の製造に使用される炭素数1〜4のアルキル基で置換されたスチレン単量体としては、α−メチルスチレン以外にも、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレンなどを好ましく使用することができる。
【0072】
前記ビニル系共重合体は、単独またはこれらの2種以上の混合物形態でも使用することができる。
【0073】
前記ビニル系共重合体は、常用性、耐衝撃性、および耐熱性を考慮すると、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部で含まれ、より好ましくは0〜40質量部で含まれる。
【0074】
本発明の(A)熱可塑性樹脂は、好ましくは、(A−1)ポリカーボネート樹脂および(A−2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体を含む。より好ましくは、(A−1)ポリカーボネート樹脂、(A−2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体および(A−5)ビニル系共重合体を含む。
【0075】
(A−1)ポリカーボネート樹脂および(A−2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体を含む場合、常用性、耐衝撃性および耐熱性を考慮すると、好ましくは(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(A−1)ポリカーボネート樹脂45〜95質量部および(A−2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体1〜50質量部で使用する。より好ましくは、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(A−1)ポリカーボネート樹脂45〜95質量部、(A−2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体1〜50質量部ならびに(A−3)、(A−4)または(A−5)を4〜54質量部で使用する。
【0076】
(B)陰イオン系帯電防止剤
本発明に使用されうる陰イオン系帯電防止剤は、下記の化学式2:
【0077】
【化2】

【0078】
前記化学式2中、
は、置換または非置換の炭素数1〜5のアルキレン基、置換または非置換の炭素数5〜6のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数6〜10のアリーレン(arylene)基および置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択される連結基であり、
前記Rは、スルホン酸陰イオン、ホスホン酸陰イオンおよびこれらの組合せからなる群より選択される陰イオンであり、
前記R10は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの組合せからなる群より選択される陽イオンであり、
前記nは1〜35の整数であり、
前記mは0〜3の整数である、
で示される化合物であることが好ましい。
【0079】
炭素数6〜10のアリーレンとしては、特に制限されないが、フェニレン基などが挙げられる。
【0080】
前記化学式2中、Rとしては、スルホン酸陰イオンが好ましい。
【0081】
前記化学式2中、R10の好ましい例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、バリウム、マグネシウムなどの金属の陽イオンが挙げられる。好ましくは、ナトリウムイオン(Na)である。
【0082】
上記のうち、具体的には、アルカン(アルキル)スルホン酸ナトリウム(sodium alkane sulfonate)が好ましい。
【0083】
前記陰イオン系帯電防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物の形態で用いてもよい。また、前記陰イオン系帯電防止剤は、合成によって得られてもあるいは市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、クラリアント(Clariant)社のHostastat HS−1(登録商標)(SONa含有帯電防止剤(C2n+1−SONa))がある。
【0084】
また、前記陰イオン系帯電防止剤は、前記nの値が互いに異なる化合物を単独または混合された形態で使用することができる。
【0085】
前記陰イオン系帯電防止剤を混合した形態で使用する場合、前記nの値が互いに異なる陰イオン系帯電防止剤を共重合させた共重合体の形態で使用してもよい。または、前記nの値が互いに異なる陰イオン系帯電防止剤を単純に混合して使用してもよい。
【0086】
前記陰イオン系帯電防止剤は、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部で含まれ、好ましくは、0.1〜10質量部で含まれ、最も好ましくは、1〜5質量部で含まれる。0.1質量部未満や、20質量部超であると、優れた帯電防止性、耐熱性および機械的強度を確保することができない場合がある。
【0087】
(C)導電性金属酸化物
本発明に使用されうる導電性金属酸化物としては、特に制限はないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化クロミウムおよび酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、好ましくは、酸化亜鉛を使用することができる。
【0088】
また、前記導電性金属酸化物の導電性を向上するために、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫および/またはこれらの混合物等の元素を含ませてもよい。含ませる方法にも特に制限はないが、例えば、ドーピング、コーティング、混合などの物理的方法または化学的方法で結合して行えばよい。中でも、アルミニウムをドーピングしたものであるとよい。
【0089】
上記のうち、アルミニウムをドーピングした酸化亜鉛(Al-Doped ZnO)が最も好ましい。
【0090】
前記導電性金属酸化物は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物の形態で用いてもよい。また、前記導電性金属酸化物は、合成によって得られてもあるいは市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、日本のハクスイテック(Hakusui Tech)社の23−K(登録商標)(Al-Doped ZnO)がある。
【0091】
また、前記導電性金属酸化物の形状も特に制限されず、粒子状、繊維状、箔状、無定形などいかなる形状でも好ましい。
【0092】
前記導電性金属酸化物のうちの酸化亜鉛は、基本構成粒子(1次粒子)単体の状態でもよいし、前記基本構成粒子が融着して連結された2次凝集体の状態でもよい。好ましくは、前記2次凝集体が発達した構造であることが好ましい。
【0093】
また、前記酸化亜鉛の平均粒径にも特に制限はないが、基本構成粒子の平均粒径が300nm以下であり、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。なお、10nm以上であることも特に好ましい。
【0094】
前記導電性金属酸化物は、本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部で含まれ、好ましくは、0.1〜10質量部で含まれ、最も好ましくは、0.1〜5質量部で含まれる。0.1質量部未満や20質量部超であると、優れた帯電防止性、耐熱性および耐衝撃性などの機械的物性を確保できない場合がある。
【0095】
(D)その他の添加剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記構成成分以外にも、各々の用途により、酸化防止剤、難燃補助剤、滑剤、離型剤、核剤、熱安定剤、補強剤、無機物添加剤、顔料、染料などの一般的な添加剤を含むことができる。これらは単独で用いてもよいし、混合物の形態で用いてもよい。また、それぞれの添加剤についても、単独で用いてもよいし、混合物の形態で用いてもよい。
【0096】
前記酸化防止剤としては、フェノール型、ホスファイド型、チオエーテル型またはアミン型酸化防止剤を好ましく使用することができる。中でも、ヒンダードフェノール(hindered phenol)系酸化防止剤が好ましい。
【0097】
前記難燃補助剤としては、臭素系、クロリン系、リン系またはメタルヒドロキシ系などを使用することができる。
【0098】
前記熱安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、燐酸またはこれらの混合物を使用することができる。中でも、ペンタエリトリトルジホスフェート(pentaerythritol diphosphite)系熱安定剤が好ましい。
【0099】
前記離型剤としては、フッ素含有重合体、シリコンオイル、ステアリン酸の金属塩、モンタン酸の金属塩、モンタン酸エステルワックスまたはポリエチレンワックスを使用することができる。
【0100】
前記無機物添加剤としては、石綿、タルク、セラミック、硫酸塩などを使用することができる。前記無機物添加剤の含量にも特に制限はないが、好ましくは本発明の(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して0〜60質量部で含まれ、より好ましくは、1〜40質量部で含まれる。
【0101】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来公知の知見を適宜参照しあるいは組み合わせて製造することができる。例えば、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物の構成成分およびその他の添加剤を同時に混合した後で、圧出機内で溶融圧出して、ペレット形態に製造することができる。
【0102】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、1010Ω/□(sq)以下の表面抵抗を有すると好ましく、1010Ω/□(sq)未満の表面抵抗を有するとより好ましく、10Ω/□(sq)以下の表面抵抗を有するとさらに好ましく、10Ω/□(sq)以下の表面抵抗を有すると特に好ましい。なお、本明細書中「表面抵抗」の値は、実施例の欄で測定された方法による値を意味するものとする。
【0103】
<本発明の第2>
本発明の第2は、本発明の第1の熱可塑性樹脂組成物を含む、成型品である。より具体的には、本発明の第1の熱可塑性樹脂組成物を使用して製造された成型品である。
【0104】
本発明の第1の熱可塑性樹脂組成物は、多様な成型品に使用することができる。特に、電機電子製品の住宅製品(ハウジング、housing)または電機電子製品を製造する工程に用いられる運搬用トレイなどとして使用することが適している。無論、この用途に限定されるものではない。
【実施例】
【0105】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0106】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造に使用される各構成成分は、下記の通りである。
【0107】
(A)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂の構成成分として、下記の物質を使用した。
【0108】
(1)ポリカーボネート樹脂
重量平均分子量(Mw)25,000のビスフェノールA型ポリカーボネートを使用した。
【0109】
(2)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
ブタジエンの含有量が58質量部になるようにブタジエンゴムラテックスを投入し、スチレン29質量部、アクリロニトリル13質量部、および脱イオン水150質量部を添加して、反応物を製造した。前記反応物に、添加剤であるオレイン酸カリウム1.0質量部、クメンヒドロパーオキシド0.4質量部、およびメルカプタン系連鎖移動剤0.3質量部を添加して、5時間の間75℃で維持して反応させて、ABS(acrylonitrile-butadiene-styrene)グラフトラテックスを製造した。
【0110】
前記製造されたグラフトラテックスの総量に対して1質量%の硫酸溶液を添加して、凝固させた後で乾燥して、粉末状態のゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂を製造した。
【0111】
(3)スチレン系樹脂またはゴム変性スチレン系樹脂
スチレン系樹脂またはゴム変性スチレン系樹脂の中で、ゴム変性ポリスチレンを用い、該ゴム変性スチレン系樹脂として、(株)第一毛織のHG−1760Sを使用した。
【0112】
(4)ナイロン系樹脂
ホルム酸85%の使用および測定温度25℃の条件で、相対粘度が2.8cpで、数平均分子量(Mn)が約80,000であるZig Sheng社(台湾)のナイロン6 TP−4210を使用した。
【0113】
(5)ビニル系共重合体
スチレン72質量部、アクリロニトリル28質量部、および脱イオン水120質量部を混合して反応物を製造し、前記反応物にアゾビスイソブチロニトリル0.3質量部、メルカプタン系連鎖移動剤0.2質量部、およびトリカルシウムホスフェート0.5質量部を添加して、懸濁重合して、SAN(styrene-acrylonitrile)共重合体樹脂を製造した。前記共重合体樹脂を水洗、脱水、および乾燥して、粉末状態のSAN共重合体樹脂を製造した。
【0114】
(B)陰イオン系帯電防止剤
クラリアント(Clariant)社のHostastat HS−1(登録商標)(SONa含有帯電防止剤)を使用した。
【0115】
(C)導電性金属酸化物
導電性酸化亜鉛として、日本のハクスイテック(Hakusui Tech)社の23−K(登録商標)(Al-Doped ZnO)を使用した。
【0116】
<実施例1〜4>
前記各構成成分を下記の表1に示した含有量で、混合器に添加して混合物を製造し、前記混合物100質量部に対してヒンダードフェノール(hindered phenol)系酸化防止剤(IRGANOX 1076)0.2質量部およびペンタエリトリトルジホスフェート(pentaerythritol diphosphite)系熱安定剤(DOVERPHOS S-9228)0.2質量部をさらに添加して混合して、L/D=35、Φ=45mmの二軸圧出機を利用して圧出して、圧出物をペレット形態に製造した。前記ペレットを射出温度240〜280℃で10oz射出機を利用して試片に製造した。
【0117】
<比較例1〜5>
下記の表1に示したように各構成成分およびこれらの含有量を調節したことを除いては、実施例1と同様に実施して、試片を製造した。
【0118】
[実験例]
前記実施例1〜4および比較例1〜5で製造した試片を、23℃、相対湿度50%の条件で48時間放置した後、ASTM(American society for testing and materials)規格によって物性を測定した。
【0119】
表面抵抗は、10cm×10cm試片に対して表面抵抗測定器(三菱ケミカル(Mitsubishi Chemical)社、MCP-HT450)およびURSプローブ(URS probe)を使用して、試片に500Vの電圧を印加して測定した。
【0120】
ノッチアイゾッド(izod)衝撃強度は、1/8’’試片に対してASTM D256規格によって測定した。
【0121】
外観評価は、10cm×10cm試片の表面に発生した銀色線(silver streak)の発生程度によって、発生しない場合を「良好」、1部位〜3部位に発生した場合を「不良」、3部位を超える場合を「非常に不良」に区分した。
【0122】
その結果を下記の表1に示した。
【0123】
【表1】

【0124】
前記表1から、本発明による実施例1〜4の試片は、10〜10Ω/□(sq)の表面抵抗を示すことが確認できた。
【0125】
反面、非常に少ない量の陰イオン系帯電防止剤を単独で使用した比較例1の場合には、実施例1〜4と比較して、表面抵抗が全く減少せず、導電性金属酸化物を単独で使用した比較例4の場合にも、表面抵抗が全く減少しないことが確認できた。
【0126】
また、陰イオン系帯電防止剤を単独で使用した比較例2および3は、表面抵抗が1010Ω/□(sq)未満に減少せず、特に、比較例3は、衝撃強度が非常に低下することが確認できた。
【0127】
また、比較例5は、導電性金属酸化物を過剰に使用しても、実施例1〜4と類似した表面抵抗を示すが、衝撃強度が顕著に低下することが確認できた。
【0128】
本発明は、前記実施例に限定されず、互いに異なる多様な形態に実施され、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更しなくても他の具体的な形態に実施されるということが理解できる。したがって、以上で記載した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂100質量部と、
(B)陰イオン系帯電防止剤0.1〜20質量部と、
(C)導電性金属酸化物0.1〜20質量部と、
を含む、帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、スチレン系樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂、ナイロン系樹脂およびビニル系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂を含む、請求項1または2に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、ポリカーボネート樹脂45〜95質量部およびゴム変性ビニル系グラフト共重合体1〜50質量部を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記陰イオン系帯電防止剤が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部で含まれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記導電性金属酸化物が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部で含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネート樹脂が、
下記の化学式1:
【化1】

前記化学式1中、
Aは、単結合、置換または非置換の炭素数1〜5のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2〜5のアルキリデン基、置換または非置換の炭素数3〜6のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数5〜10のシクロアルキリデン基、CO、SおよびSOからなる群より選択される連結基であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基および置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基からなる群より選択される置換基であり、
およびnは、それぞれ独立して0〜4の整数である、
で示されるジフェノール類と、
ホスゲン、ハロゲンホルメート、カーボネートおよびこれらの組合せからなる群より選択される化合物と、
を反応して製造されてなるものを含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体が、
スチレン、炭素数1〜4のα−アルキル基で置換されたスチレン、ハロゲンで置換されたスチレン、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類およびこれらの組合せからなる群より選択される第1ビニル系単量体50〜95質量%と、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニルN−置換マレイミド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2ビニル系単量体5〜50質量%と、を含む、ビニル系単量体5〜95質量%を、
ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレン/プロピレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム複合体およびこれらの組合せからなる群より選択されるゴム質重合体5〜95質量%に、グラフト重合して製造されてなるものを含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂が、スチレン、パラメチルスチレン、α−メチルスチレンおよび4−N−プロピルスチレンからなる群より選択される1種以上の芳香族ビニル単量体を重合して製造されたものを含み、
前記ゴム変性スチレン系樹脂が、スチレン、パラメチルスチレン、α−メチルスチレンおよび4−N−プロピルスチレンからなる群より選択される1種以上の芳香族ビニル単量体を、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,4−ペンタジエンおよびその混合物からなる群より選択されるゴムに、グラフト重合して製造されてなるものを含む、請求項2〜8のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記ナイロン系樹脂が、ナイロン6、ナイロン66およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記ビニル系共重合体が、
スチレン、炭素数1〜4のα−アルキル基で置換されたスチレン、ハロゲンで置換されたスチレン、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、およびこれらの組合せからなる群より選択される第1ビニル系単量体50〜95質量%と、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル類、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル類、無水マレイン酸、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニルN−置換マレイミド、およびこれらの組合せからなる群より選択される第2ビニル系単量体5〜50質量%と、
を共重合して製造されてなるものを含む、請求項2〜10のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記陰イオン系帯電防止剤が、下記の化学式2:
【化2】

前記化学式2中、
は、置換または非置換の炭素数1〜5のアルキレン基、置換または非置換の炭素数5〜6のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素数6〜10のアリーレン基、および置換または非置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基からなる群より選択される連結基であり、
前記Rは、スルホン酸陰イオン、ホスホン酸陰イオンおよびこれらの組合せからなる群より選択される陰イオンであり、
前記R10は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの組合せからなる群より選択される陽イオンであり、
前記nは、1〜35の整数であり、
前記mは、0〜3の整数である、
で示される化合物を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記導電性金属酸化物が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化クロミウムおよび酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
前記導電性金属酸化物が、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、錫、および/またはこれらの組合せからなる元素をさらに含む、請求項13に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂組成物が、1010Ω/□(sq)未満の表面抵抗を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成型品。

【公開番号】特開2009−161758(P2009−161758A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334716(P2008−334716)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(308010354)第一毛織株式会社 (14)
【Fターム(参考)】